【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「ほうら、捕まえたぞ、この鬼畜男め」
アネルザが一郎の襟首を掴んだ。
「やっと来たね、ロウ──」
さらにミランダも飛びかからんばかりに、一郎に抱きついてくる。
気がつくと、一郎が抱えて来た酒瓶は、ミランダに奪われていた。
そのまま、引きずられるように、上半身が裸の女二人に挟まれて床に座らされる。
「お、お前ら酔ってんな──。それにしても、ここにある酒を全部二人で空にしたのか? 料理だって大変なものじゃないか。随分と派手に飲み食いしたものだなあ」
一郎は呆れて言った。
部屋にある卓は広いものだったが、そこにびっしりと大皿が置いてあり、半分以上はすっからかんになっている。酒瓶は五十本はあるだろう。
ことごとく飲み尽くしている。
第一、ふたりとも怖ろしく酒臭い。
「料理はわたしが運ばせたんだ。酒はミランダが持って来たものさ。それでも足りないから、わたしが代金を払って、買いに行かせたんだ」
「そうだよ、ロウ──。そもそも、べルズには、あんたを呼んで来いとさんざんに言ったんだ。なんで、すぐに来なかったのよ。どうせ、あの三人娘と遊んでいて、あたしたちなんかに構う気になんかならなかったんだろう」
ミランダが一郎の襟首をぐっと片手で掴んだ。
その力が怖ろしく強い。
一郎は必死になって、それを振りほどいた。
「げほっ、げほっ……。な、なに言ってんだ。俺は呼び出されて、すぐ来たぞ」
一郎は咳込みながら言った。
「な、なんだって? ロウ殿、あんたは酷い奴だよ。わたしたちがあんたに会いたがっていることを知っていながら、知らんふりをしたんだね」
だが、一郎の言葉など、まったく耳に入らなかったのか、アネルザが血相を変えた口調で怒鳴った。
「それは本当かい、アネルザ──? やっぱり、あんたは人でなしだ、ロウ……。聞いておくれよ、アネルザ──。こいつは、このあいだ、あたしを襲って顔に袋を被せて犯したんだ。しかも、抵抗できないように毒で痺れさせてね……。あたしがどんなに惨めな気持ちになったかわかるかい」
「わたしなんか、最初のときには逆さに吊るされたさ……。そして、スカートが捲くれるのを防ごうとする手を、こいつはあの三人娘に電撃鞭で代わる代わる打たせたんだ……。しかも、こいつは、いまでもわたしの股間に疑似男根をこさえて苦しめるんだ。こうやってね」
アネルザが一郎の股間をズボンの上からむんずと掴んだ。
そして、もさもさと動かしてくる。
「う、うわっ、ちょ、ちょっと、やめろよ」
一郎はさすがに声をあげた。
しかも、結構アネルザは力が強い。
そのアネルザが酔った力で睾丸をぐりぐりと掴むので痛いのだ。
だが、前から迫るアネルザに対して、ミランダが後ろから一郎を支えるように挟んでいるので、一郎は逃げることもできない。
「やめるもんかよ。この女たらしめ──。わたしは、この歳でひとりの男にこうまで心が縛られるとは思わなかった。お前と会ってから、このアネルザともあろう者が、四六時中、お前のことばかり考えている。どうしてくれる。責任をとれ、この鬼畜男」
「待ちなよ、アネルザ、まずは裸にしようよ。こいつに、いつもあたしたちが受けている仕打ちと同じことを味わわしてやろう」
ミランダがけらけらと笑った。
そして、いきなり一郎の上衣を左右に引き千切って、強引に一郎の胸板を剥き出しにした。
「い、痛い」
一郎は声をあげた。
ミランダが怪力で無理矢理に破った服を背中に引っ張ったので、両腕が破られた服とともに後ろに捩じられるかたちになったのだ。
「おお、こうやって肌を改めて眺めると、なんかぞくぞくするよ……。おおお……」
アネルザが前側から一郎の頬に自分の頬をくっつけるとともに、一郎の裸の胸に自分の大きな乳房を擦りつけるようにした。
おかしな声は、一郎の胸に乳首を擦りつけたときに性感を刺激されたアネルザの甘え声だ。
「アネルザ、狡いよ。半分はあたしのものさ」
すると、ミランダが一郎の前側に回って来て、アネルザの反対側から、同じように一郎の胸に乳房を擦りつけててくる。
一郎はふたりの女に床に倒されて、上から乗っかられる体勢になった。
まったく、こいつらは……。
一郎はすっかりと酔っているふたりの姿に呆れてしまった。
スクルズを通したベルズの話によれば、ミランダの計らいで、かねてからのわだかまりをなくすため、お互いに遺恨のありそうなシャーラとアネルザが呼び出されて、ここで腹を割った話し合いをしていたということのはずだ。
それが、どうして、こんなことになったのか……。
もっとも、予想はつく。
おおかた、ミランダが腹を割った話となれば酒だと思って、この大量の酒を持ち込んだのに違いない。
だが、すっかりとミランダとアネルザが酔ってしまったのではないかと思う。
「ああ、ロウ殿、この歳になって恥ずかしいと思うが、わたしはお前に夢中だ。なんでも言うことをきくから、いつまでも、わたしをお前の女のひとりに加えていてくれ。そのうち、ルードルフを脅して、爵位でも領地でもなんでも貰ってやるから」
アネルザが頬と胸を一郎の身体に擦りつけながら、甘えた声をあげた。
爵位などいるか……。
そう言おうとしたが、一郎の顔に急にミランダの顔が迫った。
そして、そのミランダの唇に口を塞がれる。
なにかが入って来た……。
酒だ……。
ミランダが一郎に酒を口移しで飲ませたのだ。
「とにかく、ロウ、あんたも飲んでおくれよ。たまには、あたしととことん付き合ってくれてもいいだろう」
唇を離したミランダが、けらけらと笑いながら嬉しそうに言った。
どうでもいいが、猛烈に強い酒だ。
喉が焼けたようになって、一瞬にして全身がかっと熱くなった。
「おっ、だったら、わたしの酒も受けてくれ、ロウ殿。こっちは、わたしからの愛の酒だ」
アネルザが起きあがって、同じように酒を口で含んで一郎に飲ませて来た。
仕方なく、一郎はそれも受ける。
あまり酒を重ねたくはなかったが、断れば暴れ出すのではないかと思ったのだ。
それにしても酒が強い。
一郎はあっという間に、酔ったような心地になった。
「はははは、ロウ、あんたは酒には弱いんだね? このくらいの酒でそんなに真っ赤になっちゃって……。希代の鬼畜男のくせにだらしないんじゃないかい? こりゃあ、面白いねえ。このあたしや、アネルザ、それに三巫女だけでなく、姫様にシャーラ、
ミランダが一郎の上に半身を重ねたまま笑った。
なにがそんなにおかしいのか……。
もっとも、一郎も、酔っ払い相手では、なるべく大人しくしていることが得策だということは承知している。
「……あまり酒を飲む機会もなくてね」
とりあえず、それだけを言った。
「それにしても、ミランダ、あんたは面白い女だね。そうとわかっていれば、もっと早く付き合うんだった。なによりも、酒の飲み方が豪快でいい──。さっきも言ったけど、このアネルザは、これからは冒険者ギルドの後見人のひとりだよ。イザベラもあんたも、わたしの仲間だ。絶対に誰にも手を出させはしない。安心しておくれ」
アネルザが大きな声をあげる。
すると、なにがおかしいのか、またもやミランダが大声で愉しそうに笑った。
いずれにしても、ふたりとも床に仰向けになっている一郎の身体に添い寝をして乗ったままだ。
一郎は観念することにした。
とにかく、この感じであれば、ふたりはすっかりと打ち解けたようだ。
肝心のシャーラとアネルザが心を許し合うようになったのかはわからないが、少なくとも、ミランダはこの国の正王妃のアネルザを呼び捨てにするほどに親しい感じにもなっている。
「……そういえば、シャーラとは仲良くなったのか、アネルザ? さっきは逃げていったみたいだったが……」
一郎は訊ねた。
「シャーラかい? もうわかったから、帰らせてくれと繰り返していたが、そういえば、いなくなったねえ。まさか、帰ったのかい?」
すると、アネルザが怪訝な顔になった。
横でまたもや、ミランダが気でもおかしくなったように笑う。
あまり、酒に酔ったところなど見たことはないが、ミランダが笑い上戸とは知らなかった。さっきから笑ってばかりだ。
「さっきロウと入れ替わりに消えたじゃないかい。気がつかなかったのかい、アネルザ」
ミランダが笑いながらアネルザをからかう。
「わかんなかった……。くそっ、このわたしがお詫びの印に、シャーラに犯されてやると言っていたのに……。あいつ逃げたんだね。やっぱり、あいつは意気地なしだ。だから、キシダインにつけ込まれるんだ」
アネルザが憤慨したように言った。
犯されてやるつもりだった……?
いや、あれはどう見ても、アネルザがシャーラに馬乗りになって襲い掛かっていた。決して、シャーラに犯されようとされていた姿とは思えない。
いずれにしても、このふたりは、ずっとこうやって泥酔して、シャーラやベルズを困らせていたに違いない。
それにしても、逃亡したシャーラはともかく、ベルズはまだ部屋の外でこの部屋の様子を窺っているはずだ。
スクルズも三人娘もだ……。
それなのに、顔を出す気配さえない。
畜生……。
あいつら……。
「いや、シャーラはよくやっているよ。度重なるキシダインやあんたの刺客からイザベラを守り続けているんだからね。あのエルフ族の魔道戦士は大したものだ、アネルザ」
ミランダが笑うのやめて、真顔で言った。
すると、アネルザの表情が一変した。
「……言っておくけど、わたしはイザベラの命を奪おうとしたことはないよ。そんな怖ろしいことなんて想像もしていなかった……。そうとわかっていたら、キシダインを説教していたさ……。もちろん、わたしがキシダインの口車に乗せられて、イザベラに度々意地悪をしたのは認めるけど、殺そうとするなんてとんでもない話さ。それだけは信じておくれよ、ミランダ──」
アネルザは今度はぼろぼろと涙を流しだす。本当に鬱陶しい。
「信じるよ。信じるともさ、アネルザ。お前がそんなひどいことするわけがない」
すると、ミランダも一緒になって泣き出す。
挟まれている一郎は嘆息した。
「た、ただ、わたしは、アンをなんとか王妃にしてやりたかったのさ……。王になる望みはないけど、せめて王妃にね。あの娘は嫡子なんだ──。本来なら王太女になるべき女なんだ。母として、アンのことを心配していただけなんだ。信じておくれよ、ミランダ」
アネルザがぼろぼろと涙をこぼし続ける。
今度は泣き上戸か──
「……信じているよ、アネルザ。あたしたちはもう親友さ。そう誓ったろう」
「そうだ──。わたしらは親友だ。そして、同じ男に征服された女だ。これからも仲良くしよう」
アネルザが満面の笑みを浮かべた。
とにかく、泣いたり、笑ったりと忙しいことだ。
「じゃあ、仲良くなってよかったじゃないか。ところで、そろそろ、退いてくれないか」
一郎はとりあえず言った。
どうでもいいけど、こいつらはずっと一郎に添い寝するかたちで、左右から押さえつけているのだ。
「なんだって、ロウ──。あたしたちの愛を受けられないというのかい──? やっぱり、あたしたちが若くないから気に入らないんだろう」
「聞き捨てならないね、ロウ殿。わたしたちのことを年増扱いするのかい。これでも、まだ女ぶりは捨てたもんじゃないはずさ──。見てごらんよ。このミランダの肌を──。ドワフ族は年齢を重ねないというからね。まるで少女の肌じゃないかい。まあ、さすがにミランダに比べれば、わたしは見劣りするけどね……」
「いやいや、アネルザ、そんなことないさ。あんたも綺麗だよ──。よし、こうなったら、あたしらを年増扱いしたロウを懲らしめようよ。こいつが好きなレイプをしよう。ただし、襲うのはあたしらで、襲われるのはロウだ。あたしは、一度、この鬼畜男は、自分の女たちと同じ目に遭うべきだと思っていたんだ──。教育のためにね……。それをするのは、あたしたちのような歳上の女の役目だと思わないかい」
「思うよ──。じゃあ、ロウ殿、あたしたちを年増と言った仕返しだよ」
アネルザが笑いながら、一郎のズボンに手をかけた。
一郎は驚いた。
「ま、待ってたら──。いつ、俺がふたりを年増扱いした──。わ、わっ、わっ、待てって」
一郎はズボンを緩め始めるアネルザを阻止しようと、アネルザの手を払いのけようとした。
だが、体勢を戻したミランダが、一郎を背後から羽交い絞めにして、それを防ぐ。
一郎は、あっという間に、女ふたりに素裸にされてしまった。
「こうやって、押さえているから犯してしまいな、アネルザ」
ミランダが愉しそうに言った。
そのミランダは、すごい力で一郎を捕まえている。
「わかった。悪いけど最初にこいつをもらうね。その代わり、次はあんただ。わたしばかり、いい思いをするのは申し訳ないもの。今度はわたしがロウ殿を押さえつけるね」
アネルザがそう言いながら、下に身に着けていた長いスカートを脱ぎ始める。
やがて、下着まで脱いだアネルザは、一郎の腰の上に跨り、騎乗位でそのまま乗って来るような仕草で腰を落とし始めた。
仕方ない……。
ここは、酔っ払い女ふたりに付き合ってやるか……。
一度相手をすれば、ちょっとは大人しくなるだろう。
酔いも精の力で飛ばすことも可能と思う。
そうしたら、廊下で様子を窺っているはずの女たちをこっちに呼んでやる。
静かになるまで、一郎に泥酔したふたりを押しつけようとしても、そうは問屋が卸すものか──。
いずれにしても、とにかく、ふたりを抱き潰して静かにさせるか……。
一郎はまだ半勃ちだった一物を勃起させた。
ミランダとアネルザが、一瞬息を飲み、そして、ごくりと唾を飲み込んだのがわかった。
*
「だ、大丈夫なんですか、ベルズ殿? ロウ様にみんな押しつけて……。やっぱりみんなで入った方が……」
エリカは三度目くらいの声をかけた。
ミランダとアネルザをロウとともに閉じ込めている部屋の前だ。
ベルズが部屋に防音の結界をかけたので、中の様子は漏れ聞こえることはないが、ベルズから、おおよその中の様子は教えてもらった。何度か中の様子も確認してもらった。
とにかく、それによれば、話をしていて酒を飲み過ぎたアネルザとミランダは、いつの間にか泥酔してしまい、シャーラとベルズに絡んで大変だったらしい。
特に、酔っ払ってからはロウをここに呼べと大騒ぎをし、それに閉口したベルズは、スクルズに助けを求め、そのスクルズが屋敷までやって来て、ロウをここに連れて来たというわけのようだ。
「おふたりとも、日ごろの鬱憤が溜まっていたのかもしれませんね。それでお酒を飲んで、それが発散してしまったのでしょう」
スクルズがにこにこと言った。
「鬱憤が溜まるのもわかるし、それを酒にはらしても結構だ。だが、なぜ、それをここでするのだ。いい迷惑だ。冗談じゃない」
ベルズは不満そうに言った。
「まあ、ベルズ、そんなこというものではないわ……。このあいだ、ロウ様も言われたじゃないの。近く、キシダイン公とロウ様は対決をしなければならないのよ……。いえ、もう始まってるわ。そのために、みんなの心をひとつにしようというミランダの計らいじゃないの」
「それはわかっておるよ、スクルズ……。でも、なんでそれがわたしのところなのよ。よいか。もう一度言う。な、ん、で、わたしのところでなんだ?」
ベルズがまた言った。
「ところで、いま、どんな状況なのだ、ベルズ殿?」
シャングリアが口を挟んだ。
すると、ベルズが耳を扉につける仕草をする。防音の結界はベルズのものなので、ベルズになら中の様子はわかる。
「静かだな……。さっきまでは、ロウ殿が激しくふたりを抱いている様子だったかな。いまは、ちょっと静かだ……」
「なら、終わったの?」
コゼが首を傾げながら言った。
とにかく、こっちに聞こえるのは、とりあえず音だけのようだ。ベルズは一心に聞き耳を立てる仕草を続けている。
「うわっ」
そのとき、扉のところにいたベルズが突然に声をあげた。
さらに、次の瞬間、扉が大きな音をたてて揺れた。
そして、ベルズの顔色が変わった。
「どうしたの、ベルズ?」
スクルズが声をかけた。
「ミ、ミランダだ。扉を開けないと、扉をぶち破ると騒いでいるぞ……。どうしよう、スクルズ……?」
ベルズは蒼い顔になっている。
扉はベルズによって魔道の施錠がかかっているのだ。
「やっぱり、入るべきです。ロウ様もお怒りかも」
「そうね。行こう」
「そうだな」
エリカの言葉に次いで、コゼとシャングリアも同意の声をあげる。
「……では、わたしたちもいきましょう」
スクルズが床に置いていた追加の酒瓶を持った。
エリカたちも、慌てて他の瓶を手に取る。
「開けるぞ」
ベルズが声をかけて扉を開いた。
「来たね……」
扉の前にいたのは、腕組みをしたミランダだ。
顔は赤く、ゆらゆらとしている。
まだ十分に酔っている感じだ。
ただ、一応はちゃんと衣類を身に着けていて、にこにこと笑っている。
しかし、眼は据わっていた。
「お、遅くなりました。追加のお酒を手に入れるのに、手間取ってしまって……。でも、いま戻ったところでした」
スクルズが作り笑いをしながら言った。
「くだらない嘘は結構だよ、スクルズ……。それよりも、扉を閉じて、みんなこっちに来いよ。酒はこっちに置け……。それから、ベルズ殿、部屋の中の声は外に響かないように処置した方がいいと思うぞ」
部屋の奥で床に座っているロウが言った。
ロウが胡坐に座っている脚のあいだには、それを枕にしているアネルザが寝息を立てていた。アネルザは素裸だが、アネルザ自身の衣類が毛布替わりに掛けられている。
ベルズが慌てたように扉を閉じた。
酒瓶はミランダに回収される。
「とにかく、そこに並んで座れ、お前ら。ただし、下は全部脱ぐんだ」
ロウが言った。
「し、下? な、なんで?」
ベルズが声をあげた。
すると、ミランダが思い切り足で床を鳴らした。
「返事は“はい”──。口応えしないのよ。あんたたち、どうやら、ロウにあたしたちを押しつけて、外に逃げていたらしいじゃないのよ。だから、ロウが今度はあんたらを罰すると言っているのよ。つまりは、あんたらへの躾をやり直すということよ」
ミランダが怒鳴った。
エリカは、その言葉で、ロウがどうやら酔っ払いふたりのいる部屋にひとりだけ放り込まれた仕返しをしようとしているのだと悟った。
想像だが、酔っ払ってロウに絡んだアネルザとミランダは、すっかりとロウに抱き潰されて牙を抜かれ、今度はロウの言いなりになってしまったということに違いない。
アネルザは交合の疲れで寝入ってしまったようだが、体力のあるミランダが、ロウの下僕役を任じているというわけだ。
「わ、わかりました。脱ぎます。でも、そんなに怒らないでください」
スクルズがしょげたようになって、ロウに示された場所まで進むと巫女服のスカートを脱ぎ始めた。
「あのう、ロウ様……」
エリカも言い訳しようとした。
だが、ロウに阻まれた。
「聞こえなかったのか、エリカ。俺はなんと言った?」
怒鳴り声ではないが、明らかにロウはちょっと腹をたててるみたいだ。
慌てて、エリカはスカートに手をかける。
コゼとシャングリアもそれに倣ってる。
少し遅れて、ベルズは渋々という感じで続いて巫女服の下を脱ぎだす。
そして、五人で下半身からスカートや下着を脱いで裸になると、ロウが座っている前に並んで正座になった。
ミランダは、まるで囚人を見張る監視人のように、五人の真横に立つ。
「さあ、ミランダ、準備を……」
ロウが言った。
すると、ミランダが料理の載っているテーブルから椀を持って来た。それになみなみと酒を注ぐ。
瓶の四分の一近くが、そこに溜まる。
さらに、後ろから五個の皿を取り出して、それぞれの目の前に置かれた。
シャングリアは、皿の上にあったものにぎょっとした。
それは皮を剥かれた細長い山芋に違いなかった。
掻痒感を沸き立てるような粘りっこい汁が表面で光っている。
「……すごいだろう。こんなものまで、亜空間に収納してるんだ。俺の亜空間に古今東西の責め具を集めて、いつでも、ありとあらゆる嗜虐ができる調教アイテムボックスにするのが俺の夢だ」
どうやら、山芋は亜空間にしまっていたらしい。
「じゃあ、それで自慰をして絶頂しろ。一番、遅かったものには、その酒を一気飲みしてもらう。泥酔してぶっ倒れても、治療薬は準備してあるから心配するな。じゃあ、始め──」
ロウが言った。
「なっ」
「えっ」
「そ、そんな……」
「その酒を?」
「なに?」
エリカを含めた五人の女から一斉に声が放たれた。
当然だ。
目の前にあるのは山芋だ。
そんなもので自慰をすれば……。
「もう始まっているぞ、お前たち……。嫌ならやめてもいいが、酒は無理矢理に飲ませるぞ。ただし、尻の穴からな。尻から酒を入れられれば大変だぞ。あっという間に泥酔するし、酒の混じった汚物は垂れ流しになるしな」
ロウが言った。
エリカはぞっとした。
ロウは、やると言ったらするだろう。
エリカは、目の前の山芋に手を伸ばした。
横目で見ると、ほとんど同時に、コゼもシャングリアもスクルズも山芋を手に取っている。
ベルズだけがまだ躊躇っていた。
「……山芋だけを使えよ。手で直接に局部や胸を触るのは反則だ」
ロウが笑いながら言った。
エリカは泣きそうな気持ちになりながらも、山芋の先端で肉芽を押し揉み始める。
隣のスクルズは、手で挿入部を隠すようにしながら、いきなり局部に抜き挿しを始めたようだ。
すぐに鼻息が荒くなっているから下手をすれば負けそうだ。
「早く、始めなくていいんですか、ベルズ殿? それとも、酒浣腸にしますか? だったら、待ってください。すぐに支度しますので」
ロウが動き出す気配を示した。
「や、やるわよ。やります──。やればいいのだろう。だけど、なんでわたしがこんな目に……」
ベルズがやけくそのように叫び、山芋を掴んだ。
しかし、そのベルズからも、すぐに甘い声が洩れ始めた。両端のシャングリアとコゼからも喘ぎ声が聞こえてきた。
エリカは焦る気持ちとともに、股間を山芋で擦る手を速めた。
「あっ、それから、言っておくけど、これは一回で終わりじゃないからな。少なくとも十回は繰り返す。その度に自慰で達しては、誰かが酒を飲むことになる。倒れても酒浣腸してやる。覚悟しておけ」
ロウが鬼畜に笑った。
エリカはぞっとなった。
*
「あははははは、愉しいです、ロウ様──。ひゃはははは──」
頭の線が一本外れたようなけたたましい笑い声とともに、部屋中に電撃の雨と火の玉が交差した。
「ひいいっ」
「うあああっ」
「ス、スクルズ──。や、やめなさい──」
「スクルズ」
「んぎいいいっ」
「うわああっ」
「うわっ、スクルズ」
「うわあっ」
一郎も頭を庇うように床に這いつくばって、横から飛んで来た火の玉をやり過ごした。
ミランダ、シャングリア、アネルザ、ベルズ、エリカ、コゼもそれぞれに左右に飛んで電撃と炎の玉を避けている。
「い、いい加減にしなさい、スクルズ──」
すっかりと酔いが醒めた感じのミランダが、スクルズを怒鳴りあげた。
「はははは、ミランダままは、怒りんぼなんだからあ」
だが、酔っ払ったスクルズがミランダに指をさす。
ミランダがさっと顔色を変えた。
瞬時に横っ跳びに身体を飛ばす。
すると、たったいままでミランダがいた場所に火の玉が飛び、そのまま後ろの壁を真っ黒に焦がした。
横に跳んで避けたミランダの顔が蒼くなっている。
それは一郎も同じだ。
あんなのをまともに受けていたら、ミランダは下手をすれば大けがだ。
いや、即死かも……。
「ス、スクルズ、お前はミランダを殺すつもりか──? 酔って魔道の力加減がわかんなくなってると言っておるのが、わからんのか? いい加減にやめよ──」
ベルズがスクルズの肩をがっしりと掴んだ。
今度は、一転してスクルズが泣きそうな顔になる。
「な、なによ、ベルズ……。そうやって、ロウ様のことを独り占めしようとしているんでしょう……。ひどいわよ。わたしだって、ロウ様が好きなのに……。本当に、本当に好きなのに……」
スクルズがべそをかきだした。
「……な、なんで、わたしがロウ殿を独占など……。そもそも、なんでそんな話になるのだ……?」
ベルズが当惑した顔になった。
一郎もそう思った。
だが、酔っ払いの言葉に論理は通用しないだろう。
話に脈絡がないなどと主張しても、意味はあるとも思えない。
すると、ベルズに掴まれていたスクルズの顔がぱっと破顔した。
「なあんてね……。うそよ、うそ──。ベルズも大好きよ。大好きだから、ベルズのことくすぐっちゃう」
スクルズの言葉が終わるとともに、けらけら笑い出した。
ベルズが奇声をあげて、その場にがくりとうずくまった。
「ひいっ、やめ、やめて、スクルズ──。ひいいいっ、くすぐりの魔道なんて……はははは……あひいいっ、く、くるひいっ……くるひっ、ひいっ、ひいいっ、はははは──」
なにが起きたのかわからないが、ベルズが顔を真っ赤にし、身体を抱くようにして床をのたうち回り始めた。
おそらく、なんらかの魔道により、ベルズの身体がくすぐられている状態になっているのだと思う。
ベルズは下半身が裸体のままなので、のたうち回る姿はかなり卑猥なのだが、そのあられもない恰好もいとわず、脚をばたばたと暴れさせている。
それを見て、ミランダとアネルザはスクルズを諫めるどころか、さらに距離を置くように壁にさがった。もちろん、エリカとコゼもだ。固まって、一郎とともに部屋の隅に逃げている。
「とにかく、前に出なさい、コゼ。ロウ様を守るのよ」
「だったら、あんたが前に行きなさいよ、エリカ」
しかも、自分たちに、あのおかしな魔道をかけられてはたまらないと判断したに違いない。争うようにほかのひとりを前に出そうとしている。
「だ、駄目だ。開かない。出られないぞ」
一方で、もうひとりのシャングリアは、いつの間にかスカートをはき直し、扉のところで外に逃げるドアを開けようとしている。
しかし、スクルズが結界をかけ直したのか、ベルズが魔道を解いたにも関わらず、開かないようだ。
「ロ、ロウ──。こうなったら、酔ったスクルズを止められるのはあんたしかないわよ。なんとかしてよ──」
「そ、そもそも、わたしが寝ているあいだに、なにが起きたのだ? スクルズはどうしたのだ──?」
ミランダに続いて、アネルザも顔色を変えて悲鳴のような声をあげた。
このふたりもすっかりと酔いが醒めてしまったのは間違いない。
なんでこんなことになったのかというと、一郎が五人に強要した酒のせいだ。
ちょっとした懲らしめと悪戯半分のつもりで、五人に山芋の自慰を命令し、一番遅かった者に椀一杯の酒の一気飲みを強要した。
逆らえば酒浣腸だという脅しに、五人は懸命に山芋の汁で股間に猛烈な痒みが襲われるのを厭わず、それぞれに自分の股間に山芋で擦り始めたが、実は、女たちの身体を淫魔術で支配している一郎が介入していた。
つまり、一郎は、五人の女が順番に負けるように細工をして、全員に椀一杯の酒を飲ませようと企んだのだ。
そして、それは簡単だ。
一番最後に絶頂させたい女の快感を制御して、いきそうになってもいけないように淫魔術で操ればいいだけだ。
実際にそれは成功した。
一郎の淫魔術の細工で、一度目はベルズが酒を一気飲みし、二回目はスクルズにした。
その頃には、五人とも山芋の痒みの苦しみが頂点に達した感じになり、いよいよ面白いことになりそうだと思っていた矢先だった。
突如として、スクルズの様子が一変して、「愉しくなってきた」と言いながら、電撃魔道と火の玉をそこら中にまき散らし始めたのだ。
つまりは、今度はスクルズが椀一杯の酒で泥酔してしまい、常軌が逸したようになってしまったということだ。
驚いたが、ベルズが言うには、スクルズが酒をまともに飲んだのは、これが初めてかもしれないということであり、ベルズもまた、スクルズが酔ったらどうなるかは知らなかったようだ。
とにかく、部屋中を飛び交う凄まじい電撃と火球に、女たちの全員から股間の痒みも酒の酔いも、あっという間に吹っ飛んだらしい。
寝ていたアネルザもびっくりして飛び起き、何事かと目を丸くした。
そして、いまも、一郎も含めた全員で逃げ惑っているところだ。
「ロ、ロウ──。あんたが責任をとりなさい。スクルズを正気に戻して──」
ミランダが叫んだ。
「それはわかってるけど……」
それはわかっているので、さっきから淫魔術を駆使して、スクルズの酔いを醒まそうと努力しているが、どうやら淫魔術は酒の酔いとは相性が悪いらしく、効果はないようだ。
「仕方ない……」
とにかく、一郎はまたもや飛んでいた電撃の球体をやり過ごして、スクルズに駆け寄ろうとした。
だが、エリカがぐいと腕を掴む。
「お待ちください。危ないです」
しかし、一郎はエリカの手をそっと外す。
「大丈夫だ。まさか、スクルズも俺を殺しはせんさ。酔っててもね」
一郎は魔道でくすぐられているベルズをさらに手でくすぐって遊んでいるスクルズに駆け寄ると、その身体を思い切り抱き締めた。
「あんっ、ロウ様──」
抱きしめられたスクルズが嬉しそうな声をあげた。
「ス、スクルズ、悪かった──。俺だ。ロウだ──。大丈夫か……? とにかく、落ち着いてくれ。魔道を遣うのをやめるんだ」
一郎はスクルズを抱き締めたまま言った。
すると、スクルズは顔に満面の笑みを浮かべて、一郎に首を向ける。
「はーい、ぱぱ――。スクルズは、ぱぱの言うことなら、なんでも言うことをきいちゃいまーす」
スクルズが明るく言って、一郎に向かって、にっと白い歯を見せる。
「ぱぱ?」
なんで、ぱぱなのだと、突っ込みたくなったが自重した。
いま、スクルズを否定するようなことを口にしたら、この酔っ払い魔道遣いが、今度はどんな危険な魔道を飛び散らせるかわかったものじゃない。
「はあ、はあ、はあ……」
横でベルズが脱力した。
やっとスクルズのくすぐりの魔道から解放されたのだろう。
そのまま、起きあがることもできずに、荒い息を続けている。
しかし、すぐにスクルズが一郎に体重をかけるようにして、押し倒してきた。
一郎の腿に、なにも身に着けていないスクルズの股間をごしごしと擦りつけてくる。
「ああっ──。ねえ、ぱぱ、スクルズ、お股が痒いの……。ねえ……。スクルズは、ぱぱのお仕置きが欲しいの……。スクルズを思い切りいじめて欲しいの。ねえ、犯して、ぱぱ……」
そして、スクルズは一郎の首に両手を回して、幼児返りしたウルズを思わせる舌足らずの言葉遣いをした。
それにしても、「ぱぱ」だって──?
しかも、なんで、スクルズは子供のような物言いをするのだ……?
いずれにしても、いまはスクルズをなだめることだ。
「わ、わかった……。犯してやる。その代わりに、エッチしたら静かに寝るんだぞ。約束だぞ」
「うん」
一郎が言うと、スクルズが元気よく頷いた。
本当に、幼児返りしているような姿だが、これは酔って幼児のようになったというよりは、幼児返りの真似をして遊んでいるというのが実態だろう。
とにかく、性交で疲れさせれば、酒の酔いもあるから、大人しくなるはずだ。
一郎はスクルズを仰向けに倒して、その上にのしかかる体勢になる。
いずれにしても、もう二度とスクルズには、酒は飲ませるものかと誓った。
そのとき、スクルズがぶるりと身体を震わせた。
「どうした?」
思わず一郎は訊ねた。
すると、スクルズの顔が真っ赤になった。
「ち、ちっち……。スクルズ、ちっちしたい……。ぱぱ、おしめして……。スクルズ、一度、ぱぱにそれをしてもらいたかったの……」
スクルズが恥ずかしそうに言った。
「えっ、おしめ……? いまから犯すんだろう……?」
一郎としては、さっさとスクルズを抱き潰して寝かせるつもりだっただけに、つい不満のような口調で言ってしまった。
「ええっ、やってくれないの、ぱぱ──?」
スクルズが悲鳴のような声をあげ、一郎の身体の下でさっと両手を天井に向ける。
また、魔道だ──。
一郎は瞬間的に逃げ出しそうになった。
「ロウ様――」
エリカの悲鳴が聞こえた。
「ロ、ロウ、おしめよ、おしめ──。大丈夫よ、スクルズ。ロウはあんたの相手をしてくれるわ──。ほら、ロウ、おしめをしてあげなさい──」
だが、壁に張りついたようにしているミランダが、慌てて口を挟んだ。
また、ベルズが駆け出し、棚から数枚の布を出す。
「ほら、これで頼む」
そして、投げるように一郎に渡すと、ベルズもミランダたちと同じように壁際まで逃げていく。
「スクルズ、おしめだぞ」
とにかく一郎は、いつもウルズにやってあげるように、スクルズの股におしめをした。
そのあいだ、スクルズは両手を顔にあてて、恥ずかしそうにしていた。だが、手のひらからこぼれる顔に満面の笑みが浮かんでいるのがわかった。
「ほら、終わったぞ」
一郎は声をかけた。
「……あ、ありがとうございます……。お、おしっこします……。見てください……」
すると、スクルズは顔を真っ赤にして、一郎だけに聞こえるような小さな声でささやいた。
今度は、幼児語ではない。
その直後、スクルズに巻いた布におしっこの染みが浮かび、それがどんどんと大きくなっていく。
「ああ、恥ずかしい……恥ずかしいです……。ぱぱ、恥ずかしい……。で、でも、嬉しいかも……。ふふふ、ロウ様はお優しいから……。だから、大好きです」
スクルズは顔を真っ赤にしながらも、本当に嬉しそうににこにことしている。
一郎は思わず苦笑した。
「じゃあ、すっきりしたところで、みんなに迷惑をかけたおしおきだ」
「ああ、スクルズにお仕置きしてくださーい」
スクルズが嬉しそうに言った。
一郎は、放尿の終わったスクルズからおしめを外すと、急いでズボンと下着を脱いで、まだ尿まみれになったままのスクルズの股間に一気に怒張を貫かせた。
「ああんっ」
すると鼻から抜けるような甘い声がスクルズから迸り、まるで赤ん坊が親に縋りつくような必死の様子で、スクルズが一郎に抱きついてきた。
「あ、ああっ、ロウ様ああああ、ああああ、き、気持ちいいですう。あああっ」
一郎が律動を開始すると、スクルズが大袈裟すぎるような悶えかたをして、さっそく一回目の絶頂をする。
とりあえず、一郎はそれに合わせて精を放った。
「スクルズ? スクルズ?」
しかし、驚いたことに、スクルズはそのまま眠ってしまった。
一郎を抱き締めたまま……。
「まだよ、まだ……。完全に寝るまでそのままにして。お願いよ」
ミランダが必死の口調でささやく。
一方でスクルズは、これ以上ないというような幸せそうな笑顔で、一郎の身体の下ですーすーと寝息をかき続けだした。
(第29話『嵐の前の嵐』終わり)