【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「ス、スクルズ様?」
ヴァージニアが声をあげた。
一郎はその狼狽えぶりがなんとなく可笑しくてくすりと笑った。
すると、ヴァージニアがきっと鋭い眼光で一郎を睨んだ。
怖いねえ……。
一郎は苦笑した。
「あなたは姫様付きの新しい女官になられたヴァージニアさんですね。心配いりませんよ。ロウ様がすべてを導いてくださります。なにもかも、ロウ様に委ねれば、それですべてが楽になるのです。どうか信じてください」
スクルズが満面の笑みを浮かべて、はっきりと言った。
だが、王都でも有名な神殿長代理を務めている敬虔なはずの美貌の巫女が、なにも考えずに男と性行為をしろと勧めるのはどうなのだろう。
言われた侍女たちも、ヴァージニアも顔を引きつらせている。
だが、王女と王妃、さらに、王都でもっとも人気のある美貌の巫女……。たとえ、それが性行為であろうとも、これだけのそうそうたる人物に強要されて断るなど、並大抵の根性がないとできないだろう。
さて、どうなるかな……。
一郎は目の前の侍女たちを見た。
いずれにしても、すでに一郎は無理矢理であろうとも、彼女たちの全員を抱くことをもう決めている。
彼女たちがキシダインの出世欲のための使い捨ての道具代わりに使われないためにもそれが必要なのだ。
侍女たち九人はどう反応していいかわからないかのように、すっかりと押し黙ってしまっている。
もっとも、そのうちのふたりは明らかに怯えきっている。
淫魔術や魔眼を駆使するまでない……。
そのふたりが今回、イザベラに毒を盛ろうとした犯人だ。
「しょ、承服できません──。か、彼女たちはまだ若く、全員が婚姻前であり、それなのに……」
しかし、ヴァージニアが沈黙を破るように叫んだ。
この状況で反抗するなど、さっきも思ったが、なかなかの根性だ。並大抵の気概ではできない。
正論は正論……。
そう主張できる強さが彼女にはあるようだ。
まあ、ヴァージニアとしては、自分こそがなにも言えなくなってしまった侍女たちを守らないとならないとでも思ったのかもしれない。
きつい顔をして厳しそうだが、反面、面倒見もいいのだろう。
そんな感じだ。
「ヴァージニア、興奮するな。まあ、この侍女たちを仕切る立場でもある女官としての立場も理解できるし、職責を全うしようとするそなたの態度は悪くはない。だが、これに限っては、どうあっても、そのロウに抱かれてもらうぞ。決定事項だ」
アネルザが口を挟んだ。
ヴァージニアはそのアネルザに毅然と向き直る。
「わ、わかるように説明してください。なにゆえに、彼に、侍女たちが抱かれねばならないのです。まったく理解できません」
「血の誓いならず、精の誓いというところか? こいつに抱かれればわかる。裏切れない刻印が心に刻み込まれると思えばいい」
アネルザがあっさりと言った。
侍女たちがどよめいた。
また、ヴァージニアは顔色を変えた。
「わ、わたしたちに操心の術を? それとも呪い?」
「察しがいいな。まあ、そんなようなことだ」
アネルザの言葉に、さらにヴァージニアが蒼くなる。
すると、スクルズがくすりと笑った。
「なんの問題もないのですよ。呪いのようなものではありません。祝福とお思いください。このロウ様は皆さんを幸せにしてくれます。さあ、すべてをロウ様に……」
さらにスクルズが言った。
さすがに一郎は声をあげて笑ってしまった。
「まあ、可笑しいですか、ロウ様?」
スクルズがきょとんとしている。
一郎はスクルズに視線を向けた。
「うん、いつもそうだけど、スクルズは俺を身びいきし過ぎじゃないかな。俺は俺の都合で女を無理矢理にものにするだけだ。鬼畜なものさ」
一郎は亜空間から一束の縄を出した。
どうせなら、愉しもうと決めた。
目の前の処女軍団を縛って破瓜をする。
考えてみれば、なかなかに愉快なイベントかもしれない。
「そ、その縄はなんなんですか。なにをするつもりなんです──」
すると、ヴァージニアが真っ赤な顔をして金切り声をあげた。
だが、かなり動揺している気配だ。期待を裏切らない人のようだ。彼女のような気の強い年輩の女性が一郎の性技でどれだけ
“ヴァージニア
人間族、女
イザベラ専属女官
年齢40歳
ジョブ
官吏(レベル5)
生命力:50
攻撃力:10(素手)
経験数
男1
淫乱レベル:D
快感度:400↓(下降中)”
ところで、ステータスを見る限り、年齢のわりには経験が少ないようだ。
また、これも一郎にはわかるが、わざと地味にしているが、結構可愛い顔をしている。おそらく女らしい部分をあえて隠している感じだ。
その辺りの事情をじっくりと、身体を解しながら解き明かしていくのも愉しそうだ。
一郎はにやりと微笑んだ。
また、淫乱レベルがDなどというのは、かなりの老婆か、幼児でないとあり得ないのだが、ほぼほぼ愛撫には反応しないというレベルである。
その辺にも事情がありそうである。
ところで、ステータスにあるヴァージニアの快感値が下がり気味なのはなぜだろう。
媚香の気流を流しているのは、侍女たちの方なのでヴァージニアには向かっていない。また、その気流が効果をあげているのは明白で、侍女たちはまだ無意識だとは思うが、顔は全員が赤くなってきておいて、もじもじと内腿を擦る仕草を始める者も出てきた。
だから、ヴァージニアに影響を及ぼしているのは、さっきクグルスに勧められたフェロモンの発出だろうか。
試しに、ヴァージニアに合わせるように、身体から出すフェロモンの波動を修正してみる。そんなことやり方もわからないはずなのに、やろうとすれば簡単にできた。
さすがは淫魔師の身体だ。
すると、ヴァージニアの顔が目に見えて、さらに真っ赤になった。
やはり、フェロモンか……。
「な、なにを見ているのですか──。いやらしい──」
ヴァージニアが真剣な表情で怒鳴った。
だが、これは怒りというよりは照れだろう。
自分に沸き起こった心と身体の変化に戸惑ったに違いない。
まだ淫魔の刻みをしていないので想像でしかないが、間違いない。
一郎はこと女に関しては、絶対に勘を誤らない自信がある。
ただ、一介の冒険者とはいえども、こうやって、王妃や王女のいる状況で、たったひとりだけ椅子に座り、わざわざ実際には彼女たちよりも一郎が優位な立場であることを示しているのだ。
しかも、彼女の主人ともいえるイザベラが、一郎の愛人であることを自ら示している。
それにも関わらず、この態度をとれるというのはかなりの性格だ。
「ロウがいやらしいのは認めるな……。だが、わたしの想い人だ。口を慎め、ヴァージニア」
イザベラがぴしゃりと言った。
「申し訳ありません。つい……」
さすがに王女に直接に叱られては、ヴァージニアも口をつぐんだ。
「ヴァージニアさん、皆さん、なにもお考えになる必要はないのですよ。ただ従えばいいのです。さあ、ロウ様に愛してもらってください。これは皆さまにとって、大変な幸運ですよ」
すると、スクルズがさらに言った。
一郎は微笑んだ。
「スクルズ、ただなにも考えずに従えというのは言い過ぎだ。彼女たちに精の刻みをするのは決定しているが、できれば、彼女たちには考えた末に応じて欲しい。だから、こうして説得しているのさ」
「これは至りませんでした……。では、皆さん、考えた末に、ロウ様にすべてを委ねて従うのです。さあ、どなたから愛して頂くのですか?」
「スクルズ様、そ、それはあんまりかと……」
ヴァージニアはさっきと比べて、ちょっと控えめに抗議した。
だが、一郎は、それを制してスクルズを見る。
どうにもわかってないようだ。
「まるで、俺が神様でもあるような口ぶりだね。だけど、残念ながら、俺はそこまでの男じゃないよ。ただの好色男だ」
「いいえ、ロウ様はわたしにとっては神様のようなものです。命をくださり、心の平穏と幸せを頂きました。ロウ様は間違いなくクロノス様であり、ロウ様に出逢えたことこそ、神のお導きだと思っております」
一郎の冗談交じりの戒めにも、スクルズはすかさず言い返してきた。微笑んではいるが、内心の頑迷さも垣間見える。
これはわざと言っているのではなく、心の底から、そう思っている気配だ。
ふと見ると、スクルズの堂々とした一郎の追従に、ヴァージニアたちも唖然としている。
盲信は嬉しくないことはないが、ある意味危険だ。
一郎はここでちゃんとスクルズに言っておいた方がいいと判断した。
「だったら、スクルズもなんでも言うことをきくのか? だが、スクルズの価値観に合わなくて、どうしても聞き入れられないことだってあるだろう。そんなときには従えないはずだし、従わなくてもいい。鬼畜は別にしてね」
「いいえ、従います。鬼畜も含めてです……。どうか、なんなりとご命じください」
スクルズがお道化たように、微笑んだまま軽く頭を下げた。
一郎は頬を綻ばせた。
「だったら、もしも、俺が世界を滅ぼしたいと言ったら? さすがに、それは従えないだろう?」
「では世界を滅ぼしましょう。わたしにどこまでできるかわかりませんが……」
これには一郎は噴き出してしまった。
「滅ぼすのは世界ではないであろう。ほかにある」
アネルザが笑って口を挟んだ。
一郎とスクルズのやり取りに苦笑をしている。
「確かにね……。だけど、世界はともかく、だったらもう少しスカートは短い方がいいな。その巫女服は丈が長すぎるよ」
なんとなく一郎は言った。
スクルズが身に着けている巫女服は神殿界の伝統的なものであり、丈はふくらはぎくらいまである。
しかし、一郎は短いスカートが好きなのだ。
だから、エリカもシャングリアも、スカート丈はこの世界には珍しい膝よりも上だ。
最近ではミランダも短い。
どうして、わざわざいまそれを主張したくなったかわからないが、スクルズがなんでも一郎に従うと言ったのでなんとなく、前から思っていたことを口にしたくなったのだ。
「これは至りませんでした」
しかし、スクルズは微笑んだままさっと魔道を放った。
すると、巫女服のスカートの半分以上がばっさりと切断されて床に落ち、スクルズの白い腿が半分以上露わになった。
これには一郎だけでなく、侍女たちも驚くとともに圧倒されたみたいだ。
ざわめきが起きる。
とにかく、本当になんでも一郎に従うのだと思った。
もしかしたら、本当に世界を敵に回しても平気なのかもしれない。
「シャーラ、わたしのスカートもすべて短くせよ。二度と長い丈のものははかん」
イザベラがスクルズに対抗するように言った。
一郎はほくそ笑んだ。
「ともかく、ロウ殿に抱かれてもらうぞ、お前たち……。脅迫されてイザベラを殺そうとしておきながら、男に抱かれよという命令に従えないというのは理解できん。王女暗殺は本人のみならず、一族連座の罪だ。それを放免してやろうというのだ。こんな好条件はあるまい」
アネルザが咳ばらいをして言った。
「だ、だけど、ここにいる者の全員が犯人では……」
ヴァージニアが口を挟む。
「同罪だ。この状況であれを防げなかった時点で、全員が死を賜っても不自然ではない。言い訳のできん大罪だ。何度目の暗殺未遂だ?」
アネルザは一蹴した。
よくはわからないが、そういうものなのだろう。
まあ、王女暗殺未遂だ。
しかも、これが最初でもない。
この国の王にしても、血の繋がった娘がこれだけ命の危険に晒されているのに無関心というのも異常だ。
確かに、本当は、度重なる王女の毒殺未遂など、王の逆鱗に触れて、全員が死を賜っても不自然でないのかも……。
「そんな……」
「そんなではないわ、ヴァージニア……。それをこのロウ殿と性交をするだけで、不問にするどころか、これ以上ないような幸運の扉を示してやったのだ。それを断る方がどうかしている」
ヴァージニアの言葉にアネルザが続けた。
「幸運の扉?」
ヴァージニアが怪訝な表情になった。
アネルザの言葉の意味を考えようとしているようだ。
「わからんのか。鈍いのだな。そもそも、お前たちのような下級貴族の令嬢や貴族の血でもないお前たちが、なぜ、イザベラの侍女でおられる? それはキシダインという後継者候補がこのイザベラを眼の仇にしているからだ。だが、早晩、キシダインはいなくなる。そうなれば、お前たちの居場所などないぞ。しかし、イザベラは、そのお前たちに将来を保証しようとしているのだぞ。この男と交わることでな」
アネルザがにやりと笑った。
だが、ヴァージニアは首を傾げたままだ。
「あ、あのう……。意味がわかりません……」
「まだ、わからぬか? これは我ら女の同盟だ。どうとでも考えよ。ただ、この男と交われば、わたしはお前たちを仲間だと認めて、絶対に見捨てんことを約束しよう。なによりも、この男が見捨てまい。そういう男だ、この男は……。わたしやマアは強姦してでも平気で抱く癖に、どうにも、いまは、この期に及んで強引にお前たちを抱くのを躊躇っているようだ。わたしにはその優柔不断は理解できんがな。」
アネルザが一郎を見た。
一郎は肩をすくめた。
「優柔不断はひどいな。でも、約束しよう。俺は一度自分の女と定めた君たちを見捨てないよ。君たちもまた、俺を裏切られなくなる。そのことによって、ほかの女たちとも強い結びつきができる。アネルザはそう言っているのさ」
一郎は言った。
実のところ、一郎はただ優柔不断なのではない。
ただ奴隷にするのとは異なり、自由な意思を持った支配となれば、どんな形でもいいので、彼女たちが自らの意思で一郎の支配を受け入れるという過程が必要になる。
ヴァージニアは眉をひそめた。
「もしかしたら、あなたは……ロウ殿は、王女様の愛人というだけじゃなく、もしかして、王妃様とも……?」
ヴァージニアだ。
「アネルザだけじゃないさ。シャーラも、スクルズも……。ここに家庭教師でやって来るおマアもそうだ。ほかにもいる。約束するよ。俺の女になってくれれば、その全員が君たちの味方になる」
一郎ははっきりと言った。
侍女たちが目に見えて動揺したのがわかった。
また、腿を擦り合わせるような仕草もはっきりとしたものになっている。何人かはもう立っているのもつらそうだ。
「さっきヴァージニアが言っておったが、この先に良縁を望むのであれば、この王妃アネルザが責任をもって世話をしてやってもよい。生涯をイザベラに尽くしてくれるというのであれば、それもありがたい。とにかく、ここはロウに抱かれて、わたしらの仲間になるがよい。それで、なにもしないよりも遥かによい未来が約束される。まさに幸運の扉だ」
「さっきも申したが、わたしは貴族の血も、口の葉の乗せた忠誠の言葉も信用せん。だが、そこにいるロウの認めた女であれば、わたしは信用する。さっさと決断せよ」
アネルザに続き、イザベラが苛ついたように怒鳴った。
一郎は続いて口を開いた。
「それと、言っておこうと思うが、俺が君たちを抱くときには、ひとりずつ、もしくは二名ずつくらいで抱かしてもらう。抱いているあいだに、少なくとも最初だから、ほかの女にあまり見られるのは気になるだろうしね」
すると、侍女のひとりがすぐにさっと手をあげた。
一郎はにやりと微笑んだ。
最初のひとりだ。
トリアだった。最初にこの厳粛な集まりのなかでひとり笑い声をあげた侍女だ。
おそらく、最初に手をあげるのは彼女だと思った。
どんなことでも、最初に現状を打破して、事を起こそうとするのは勇気がいる。
だが、トリアについては、さっき空気を読まずに、あの緊張した雰囲気の集まりの中で、くすりと笑ってしまってヴァージニアを怒らせたくらいのおおらかな気性だ。
なんとなくだが、最初に手をあげるような気がした。
それに、彼女は一郎を話したいことがあるはずなのだ。
「わかった。じゃあ、君から始めよう、トリアさん」
一郎は立ちあがった。
トリアを手招きする。
すると、トリアが数歩前に出たが、床に引っ掛かるように足をよろけさせた。
気づかれないように流していた媚香がかなり身体を脱力させていたのだ。
「おっと」
一郎はトリアに手を伸ばして身体を支える。
「ま、待ってください。わたしも……」
すると、さらに手をあげた侍女がいた。
ノルエルという侍女だ。三人ほどいる貴族出身ではない侍女である。
そういう仕来りには疎い一郎だが、一国の王女ほどの侍女に、庶民出身の娘が混じれるというのは、随分とイザベラ王女の侍女には成り手がないということかもしれない。
まあ、イザベラのところにあがれば、この国最大の公爵家であるハロルド公とその派閥に睨まれるのだ。
国王が政治に無関心で、娘の暗殺未遂が繰り返されているのに、見て見ぬふりでは、まあそれもやむを得ないのだろうか。
それはともかく、トリアに続いて、ノルエルという侍女が名乗りをあげたのは意外だった。
トリアに対してノルエルについては、ずっと大人しいという雰囲気だったからだ。
いわゆる「ファーストペンギン」のタイプではない……。
「ノルエル……」
すると、ほっとトリアが安堵する表情になった。
その顔で一郎はなんとなく察した。
なるほど、そういうことか……。
“トリア
人間族、女
イザベラ王女の侍女
アンジュ―男爵家次女
年齢18歳
……
……
経験数
なし
……”
“ノルエル
人間族、女
イザベラ王女の侍女
年齢16歳
……
……
経験数
なし
……”
だが、ふたりとも、男、女に関わらず経験数はない。
まあ、女同士の場合は、ただの肌のふれあい程度では数には入らず、淫具を使用するような淫らな男女の行為に準じるような関係にならなければ数には入らないようなので、まあ、その程度なのだろう。
「ちょ、ちょっと待ちなさい、あなた方は……」
そのとき、ヴァージニアの大声が部屋に響いた。
だが、そのときには、一郎はふたりの手を握り、亜空間にふたりを連れ込んでいた。
「えっ?」
「なに?」
景色が一変して、なにもない空間になる。
一郎がときどき女を抱くのに使っている場所だ。
風景などなにもないのだが、事前に持ち込んでいる大きな寝台がある。また、吊りプレイに使う大きな梁付きの台もある。
ほかにも、亜空間に収容しているものであれば、なんでも空間から持ってくることも可能だ。
ここは空間があるようでなく、ないようで、ちゃんと存在する不思議な場所なのだ。
また、時間さえもない。
亜空間の中の時間の流れと、外の時間の流れは全く異なり、ここで三日過ごしても、一瞬程度しか経っていないようにできる。
だから、亜空間に食べ物を収容しても、いつまでも腐ることもないというわけだ。
無論、ここで性交をしても、亜空間の外では全く時間を使わないでいられる。
どういう絡繰りになっているかは理解できないが、そういうことなのだ。
「亜空間術だ。まあ、魔道の一緒とでも考えてくれればいい」
一郎がふたりを導いたのは、その事前に置いてあった寝台の上だ。
三人で寝台の中心に丸くなるように座って、お互いを見ている態勢だ。それくらいこの寝台は広い。
「こ、これ、魔道ですか……」
「……あ、あのう……、ここはどこでなのでしょうか……?」
ふたりは呆然としている。
しかも、亜空間術というのが理解できないようだ。
まあ、当然かもしれない。
スクルズも、ベルズも、知られている魔道ではない技だという。高位魔道であれば、収容術という技もあるが、生きているものを収容する概念はないという。ましてや、術者そのものも入ってしまうなど、どういう魔道の理屈になるのか想像もつかないという。
まあ、一郎としては、実際に術が駆使できるのだから、理屈などどうでもいいが……。
「それよりも、トリアさん……。ここは俺たち三人だけしかいない。ちょっと込み入った話をしたいんじゃないかな? そのとき、ノルエルちゃんはいてもいいか? ここで話すことはこの三人の誰かが口にしない限り、外に漏れることはない。だが、ノルエルちゃんに聞かせたくない話であれば、彼女には話が終わるまで、別に待っていてもらってもいい」
一郎は言った。
すると、トリアの顔が真顔になった。
どうでもいいことだが、なんとなく、一郎はトリアに“さん”をつけ、ノルエルには“ちゃん”と付けていた。
ふたりの醸し出す雰囲気のなせることだったが、二歳しか変わらないが、トリアが大人の女の雰囲気があることに比べれば、ノルエルはまだ少女の幼さが表情にも態度にも残っている。
「トリア様……」
ノルエルが不安そうにトリアを見た。
しかし、すぐにトリアは首を振る。
そして、不意に挑むように一郎を睨むように見つめてきた。
「いいえ、ノルエルはここにいて……。ロウさん、多分ですけど、ロウさんは、今回の毒殺未遂について、わたしを疑っていますよね?」
「えっ?」
声をあげたのはノルエルだ。
一郎は微笑んだままでいた。
正直にいえば、彼女のことは疑っていない。
今回毒をイザベルに仕掛けようとしたのは彼女ではない。それは一郎の勘だ。
しかし、だが、呼び出しを受けて小離宮に来るまでは、彼女が犯人なのではないかと思っていた。
マアが調べたキシダインの手が伸びている二軒の家のうちのひとつが、トリアの実家のアンジュ―家だったからだ。
「どうしてそう思う?」
一郎はそれだけを言った。
トリアは一郎に、さらに挑むような視線を向けてきた。
「わかりますとも……。わたしの実家は数年前に襲った領地の冷害のために大きな借金を背負っています。いまは利子が膨らみ、かなりのまとまった額になっています。ですが、最近になって、その借金をしている商家がキシダイン公と非常に昵懇だということがわかったのです。そして、キシダイン公の使いという人がやって来て、わたしの父に逆らえない条件をつきつけて、わたしに姫様に毒を盛れと迫りました」
「えっ──」
ノルエルが目を丸くしている。
トリアとノルエルは、仲がよさそうだと思ったが、ノルエルはトリアのそういう事情は知らなかったようだ。
とても驚いている。
「逆らえば、わたしの弟と妹が借金奴隷として連れていかれます。わたしの実家のような貴族とは名ばかりの小さな家では、ハロルド公であるキシダイン公様には逆らうことはできません。でも、わたしはやっていません。まだ毒とやらは受け取ってもいません。受け取っても捨てるつもりでした」
さらに、トリアが一気に言った。
一郎は頷いた。
「よく打ち明けてくれたね……。もちろん、信じるよ。じゃあ、心置きなく愛し合おうか。とりあえず、裸になって股を拡げてもらおうかな。よく、俺に見えるようにね」
一郎は言った。
トリアがきょとんとした。
「えっ、それで終わり……ですか……? でも……。ずっとシャーラ様とかが、わたしを警戒しているのは気がついてたし、わたしは疑われているのはわかっていたんです」
トリアとしては必死の告白だったのだろう。
また、シャーラの主張のとおり、マアからの情報として、一郎はキシダインの手が回っている二軒の侍女の実家を教えていた。
その情報に接して、シャーラは集中的に、その実家のふたりの侍女を調べたはずだ。
だから、自分が疑われていることを承知したに違いない。
シャーラは気がつかないようにやったつもりだったと思うが、トリアは思ったよりも勘がいいのだろう。
それで疑われていることも気がついたのだと思う。
だが、とにかく、ただの勘だが、一郎はひと目見て彼女ではないことを悟った。それに、広間に集まっていた侍女たちの中には、毒の入っている容器をまだ隠して持っていたままの女をふたり見つけたのだ。
だからこそ、一郎は侍女たちの全員に性奴隷の刻みをしてしまおうと思った。
つまりは、キシダインは一郎やマアの予測よりも、深く侍女たちに手を出しているということがわかったからだ。
「ああ、終わりだ。君は犯人じゃない。俺は言ったはずだ。犯人は知っているとも……。それよりも、まずは裸になって股を開くんだ。そして、ノルエル、君も裸になって、まずはそのトリアの股を舐めるんだ。いいというまでね。君たちはそういう関係だろう?」
一郎がにやりと笑うと、ふたりがはっとしたように真っ赤になった。