【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「えっ?」
ロウがヴァージニアの手を握った瞬間に、一瞬にして、周囲の景色が消滅した。
周りにはなにもなかった。
少し離れたところに、大きな寝台がある。
寝台というよりは、大きな台であり、人が二十人くらいは楽に横になれるのではないだろうか。柔らかそうな寝台の床部の上に、やはり柔らかそうな敷布や毛布がところどころに整頓されて置いている。
ほかには何もない。
壁さえもなく、真っ白な世界が拡がっているだけだ。
「こ、ここはどこですか──?」
素裸に腰に大きな布を巻いただけのロウは、まだヴァージニアの腕を握っていたが、ヴァージニアはそれを振りほどくようにしながら怒鳴った。
「俺の能力のひとつですよ、ヴァージニア。ところで、ジニーと呼んでもいいですか? ヴァージニアというのは、いかにも長くてね」
ロウがにこにこしながら言った。
「お断りです」
ヴァージニアはぴしゃりと言った。
その次の瞬間、不意に片側の手首に革枷が出現した。
しかも、すでに手首に嵌まった状態でだ。また、すでに嵌まっている枷には、短い鎖で繋がったもうひとつの革枷がある。しかも、その鎖には長い鎖もついていて、それが上に向かっていた。
「あっ」
ヴァージニアは、鎖の先を見ようと顔を上にあげた。すると、ずっと上側に太い木製の梁があり、そこに滑車のようなものがあって、鎖はその滑車に繋がっていた。
よく見ると、ヴァージニアはその太い梁を支える左右の二本の柱の中心に立っていたのだ。
ここが寝台だけしかない不思議な場所というのは間違いだ。正確には、寝台とこの奇妙な吊り台しかない奇妙な場所だ。
とにかく、ヴァージニアは、びっくりしてしまった。
「だったら、呼ばれたくなったら、そう言ってください」
ロウがまだ装着されていない側に手首を掴んで、もう一方の革枷に嵌めてしまった。
抵抗する間もない。
あっという間のことだった。
しかも、嵌めるとき、中心の鎖から半分が消滅して、ヴァージニアの手首で出現するという感じで嵌められたのだ。
ヴァージニアは目を見張った。
「な、なにを──?」
とにかく、ヴァージニアは慌てて外そうとした。だが、どういう構造になっているのか不明だが、鍵穴のようなものも、枷を外すための突起のようなものもない。まるで最初からそうであるかのように、ぴったりとひと繋がりの輪である。
ヴァージニアは手枷の嵌まった手首と、しばらく胸の前で格闘した。
「俺じゃないと外せませんよ。亜空間の別の場所に収容して、あなたの手首の外側に再び出現させる。それをしたんです。梁にぶら下がる鎖も好きな場所に出現できます。別の場所に置いているのを出してるだけですから」
ロウはヴァージニアの真ん前になっているが、目の前で自分の片方の手首に同じように嵌まった状態で手錠を出現させた。そして、消滅させる。
ヴァージニアはびっくりした。
「あなたは、魔道遣い……?」
物を特殊な空間に置いておき、必要なときに取りだすという技は、確か「収納術」という魔道だ。しかも、かなりの高位魔道のはずだ。
だから、ロウは高位魔道遣いに違いない……。
しかし、我ながら馬鹿な質問をしたと思った。
そもそも、一瞬にして、こうやって見知らぬ場所に、「移動術」で転送をしたのだ。
魔道でなくて、なんなんだというのだ。
いや……。
移動術でさえないのか……?
どう見ても、ここは現実の場所とは思えない。
そういえば、トリアたちは、一瞬だけ消滅したあとで、長くどこかで過ごしてきたかとしか思えないような状態で戻ってきた。
まるで、かなりの長いあいだ、ロウと性交をしてきたかのような……。
「調教」……。
そして、ヴァージニアは、トリアが口にした言葉を思い出してしまった。
その瞬間、ヴァージニアは急に動揺してしまい、かっと自分の身体が熱くなるのを感じた。
すると、小さな笑い声がした。
はっとなった。
ロウだ……。
いつの間にか、ヴァージニアをじっと観察するように、腕組みをして見つめている。
ヴァージニアは、急に恥ずかしさを感じた。
「な、なにを見ているのです──。見ないでください──」
思わず顔をそむけた。
わからないが、どうにもこのロウに見つめられると、鼓動が激しくなって緊張が全身に走るのを感じる。
特別に美男子というわけでもないし、若くもないこの男に、ヴァージニアが忘れているはずの「何か」を感じそうになってしまうのだ。
それがヴァージニアを極端にロウを意識させてしまうようだ。
「あっ」
すると、不意に手首の枷が上昇を始めた。
顔をあげると、滑車が手錠に繋がった鎖を引きあげている。
当然に両腕がどんどんと上にあがっていく。
「や、やめなさい──。やめてっ、鎖をあげないでください──」
ヴァージニアは抵抗をしようとしたが、そんな手段などない。
どんどん鎖はひきあがり、やがて、真っ直ぐに身体が伸びて、ぴんと身体が伸びあがるほどになった。
それでも、鎖の引きあげはとまらない。
ヴァージニアは恐怖した。
このままでは、脚が離れて宙吊りになってしまうと思ったのだ。
そして、本当に脚が浮く。
「いやああっ、やめてください──。お願いです──」
ヴァージニアは絶叫した。
すると、鎖の引きあげがとまった。
足先は辛うじて爪先だけが床に残っている状態だ。
「そうやって、可愛くお願いができたら、あなたの魅力が引きあがりますよ。侍女たちも、もっとあなたを慕うようになる。あなたの噂は知っています。とても厳しい方だそうですね……。他人にも、自分にも……。仕事はできるけど、男嫌いだとか……」
ロウがすぐ脇に寄って来て、爪先立ちのせいで少しせり出しているかたちのお尻をスカートの上からするすると撫でおろしてきた。
「うっ、や、やめなさい──」
思わず息を吸い込んで顔をしかめた。
男の劣情をはっきりと込めた手つきだったのだ。
手を避けようとしたいのだが、爪先立ちでやっと身体を支えているだけなのだ。そんな余裕はない。
「また、命令口調になりましたね……。ここでは、あなたはお願いをするだけです。もちろん、俺がお願いをきくかどうかはわかりませんけどね。でも、いまはお願いをすることは許してあげますよ。しばらくしたら、そのお願いも禁止しますけどね……」
ロウがヴァージニアの耳元でささやきながら笑う。
しかも、手はヴァージニアのお尻を縦横無尽に這いまわっている。
「くっ」
ヴァージニアは歯噛みした。
なんでもないような手つきなのに、ロウに触れられる場所が異常なほどに感じるのだ。
さざ波のような疼きがお尻から股間の奥に向かって次々に走り寄ってくる。
ヴァージニアは歯を食い縛った。
「思ったよりはいいお尻ですね。年齢の割にはと言っては失礼ですが、まだまだ弾力もあるし、かたちも崩れてない。ちゃんと運動もしているんですね。健康にも気を使っている。それがわかりますよ」
「や、やめるのです──。こんなことをして、なにが面白いのです──」
お尻を撫ぜまわすロウのいやらしい手つきに耐えかねて、ヴァージニアは吊られた二の腕越しにロウを睨んだ。
とにかく、お尻を撫でまわすのをやめさせたかった。
さもないと、甘い声が口から出てしまいそうだ。
まるで、なにか特殊なことでもしているかのように、ロウの手による刺激がびりびりとヴァージニアの身体の芯に響き渡ってくる。
「とても面白いですよ。ただお尻を触られるだけで、こんなにも追い詰められている女官長殿を眺めるのがね……。賭けてもいいですが、確かめてみましょうか? 下着の中はもう濡れているでしょう?」
ロウがお尻から手を離して、後ろから、さっとスカートの中に手を入れてくる仕草をした。
ヴァージニアは驚愕した。
「ああっ、やめてっ、やめてください──。お願いです──」
腰を必死に前に出して絶叫した。
すると、スカートの中から膝の上くらいまで這いあがりかけていたロウの手がすっと引く。
ヴァージニアは心の底からほっとした。
ロウの言ったことは本当だったのだ……。
ヴァージニアの下着の中は確かにすでにべっとりと濡れている。
そんな姿を男に知られるのは死んでも嫌だ。
「やっとお願いができましたね。いい子ですよ」
ロウが前に回って来て、片手をヴァージニアの顔の前に出すような仕草をした。
次の瞬間、女官としての上着の上衣がその手の中に出現した。
「あっ」
ヴァージニアは声をあげた。
ロウの手に現れたのは、ヴァージニアがたった今まで身に着けていた上衣だったからだ。
両手を吊られているヴァージニアの上半身は、前ぼたんで留めている上着の下の薄い服だけになっている。
その下は乳房を包む胸巻きだけだ。
身に着けているものを取り去るなんて──。
ヴァージニアは驚きよりも恐怖した。
この男はなんなのか……。
「びっくりしましたか? こんなこともできますよ」
さらに、次の瞬間、胸を包んでいる布がロウの手の上の上衣に出現する。
「ひっ」
乳房に巻いている布が取り去られて、すっと無防備になったのがはっきりとわかった。
本当に身に着けているものを奪っているのだ。
なんという高位魔道遣い……。
こんな男が王都にいるだなんて、ヴァージニアは心の底から驚愕した。
いや、そんなことよりも、薄い上衣のシャツは薄っすらと肌の色が見えるほどに少し透けているはずだ。
胸巻きが取り去られたことで、胸どころか、その頂点の乳首まで透けるのではないか。
ヴァージニアは必死に身体を捻って、正面から眺められるのを防ごうとした。
「本当に可愛い仕草をしますね。じゃあ、今度はどんな可愛い姿を見せてくれますか?」
ロウが笑って宙に手を振った。
すると、上衣も胸巻きも溶けるように手から消滅した。
その代わりに、小さな白い布がその手に出現する。
「えっ?」
違和感があった。
ヴァージニアは目を見開いた。
「きゃああああ」
そして、絶叫した。
股間がすっと涼しくなり、スカートの中の局部が直接に外気を感じるのがはっきりとわかったのだ。
ロウが手に出したのは、ヴァージニアのスカートの下の下着だ。
「な、なにをするんです――」
ヴァージニアはぎゅっと内腿を締めつけた。
ロウがくすくすと笑って、下着を自分の鼻に近づける。
はっとした。
ヴァージニアはかっと赤面するのがわかった。
「いやあっ、やめてください。そんなことはしないで──。お願いです」
悲鳴をあげた。
たったいままではいていて、ヴァージニアが股間を濡らした証拠がはっきりと残っている下着だ。
そんなものを嗅がれたくない。
「やっぱり、濡れていましたね……。こういうことも満更でもない。そうなんでしょう?」
ロウは余裕たっぷりに言った。
宙に下着を放るような仕草をする。
下着が消える。
もうだめだ。
怖い……。
圧倒的な力を目の前で示されて、ヴァージニアは自分が完全に追い詰められているのを感じた。
逃げられない……。
怖い……。
「さて、始めましょうか……」
ロウがさらに接近して、ヴァージニアのすぐ前に立つ。
「は、始めるって……なにを……」
ヴァージニアは息を飲んだ。
呼吸が苦しいのだ。
そして、激しい鼓動が収まらない。
ときどきする。
このロウに見つめられると……。
「調教ですよ……。忘れたんですか?」
ロウが笑った。
そして、かざした手に今度は一組の金属の手枷を出す。その片側の輪には、また、長い鎖が繋がっていた。慌てて鎖の先を見上げると、梁にぶら下がっている手首を吊っている滑車とは別の滑車がそこにあり、鎖の先が繋がっている。
これも魔道……?
あんなのはなかったはずだ。
ヴァージニアは目を見張った。収納術?
だが、ロウが動いたのに気がつき、急いで視線を戻す。
「ああ、いやっ」
気がついたときにはもう遅い。
爪先立ちの片側の足首にその手錠の片側が嵌まっていた。
いや、気がついたところで、抵抗の手段などなかっただろう。
しかも、その足首に嵌められた手錠に繋がっている鎖がゆっくりと上昇する。
「ひっ、いやっ」
片足が浮く。
あっという間に、腿が水平になるくらいまであがった。
ロウが手を伸ばして、突っ張りかけていたスカートを横向きになっている脚の膝上までまくる。
だが、ゆっくりと鎖はあがり続けていて……。
「や、やめてください。お願い――。お願いです――」
絶叫した。
スカートの中にはなにもないのだ。
このままでは……。
「いやあああ、許しえっ、許してえっ」
ヴァージニアは泣き叫んだ。
すると、鎖がとまった。
片足は水平よりも少し上くらいだ。
ヴァージニアは斜めになっている身体を両手で吊られている鎖を掴むようにして支えた。
「そんなに、悲鳴をあげるなんて……。若い侍女たちの方が聞き分けはよかったですよ。ところで、訊こうと思ってたんですが、わざと女っぽく見えないように、無理して地味な装いをしてますよね。なんでです?」
ロウがヴァージニアの後頭部に手を伸ばして、ひとつに丸く束ねていた髪を解いて伸ばした。
ふっさりとした髪が肩にふわりとかかる。
「やだっ」
咄嗟に頭を振って、ロウの手を振りほどこうとした。
しかし、そのまま後頭部に手を置いたまま、ぐいと引き寄せられた。
「ちょっと悪戯しようかな? 地味にすることが不可能なくらいに見た目をよくしましょう。眼の周りの筋肉を張るように
ロウがよくわからないことを口にした。そして、強引に唇を奪われた。
「んんっ」
逃げようとするが、顔を両手で押さえられて舌を入れられる。
なぜか力が抜けて、身体がかっと熱くなり……。
大量の唾液が注がれ……。
これが、さっき王妃たちが受けていた口づけ……。
確かに力が抜ける。
なんだこれ?
まるで、性行為そのもののようにいやらしくて、身体にびりびりと疼いて……。
子宮の奥がかっと熱くなって……。
危険……。
この口づけは危険……。
「んんっ、んんっ、や、やめっ」
本能的に恐怖した。
これ以上、この口づけを続けられると……。
そのあいだも、ロウの舌は無遠慮にヴァージニアの口の中を蹂躙して唾液を飲まされる。
身体が爛れるように気持ちよくなる。
とにかく必死に抵抗して、やっと口をロウから離した。
「残念だな。抵抗されて……。ならば、脚をもっとあげますか? あれっ? ところで、思ったよりも、かなり雰囲気が変わっちゃったな。また、アネルザに叱られるか……。まあいいか。もっと変えますか? 鼻筋も高さが目立つように治療しましょう。顔の脂肪も治療で減らしますね。小顔の方が美人が惹きたちますしね……。でも、あまり若返ると、別人に変身したみたいになるんで、あとは全身の肌や内臓筋肉を若返らせるくらいでやめますね」
相変わらずおかしなことを口にしながら、ロウがヴァージニアから顔を離して笑った。
しかし、はっとした。
脚が再びあがりだしたのだ。
足首が腰よりも高くなった。
たくしあげられたスカートがすっと内腿に落ちてくる。
「ああっ、やめてください。お願いします――」
必死で言った。
とにかく、「お願い」という言葉が合図になり、やめてくれるのはわかってきた。
すると、片足の引きあげが中断する。
ほっとしたが、スカートもまくれている。覗き込めば完全にヴァージニアの秘部は丸見えだ。
すると、ロウが片手を前に出す。
次の瞬間、男根の形をした物体がそこに出現した。男根の模擬には付け根に小さな小枝のようなものも付いている。
「いやああ、な、なんなんですか、それは?」
さらに、その男根の模型がうねうねと動き出したのを見て、ヴァージニアは悲鳴をあげた。
すると、吊っている片手首の手枷だけが突然に外れた。
ヴァージニアはとにかく、手を伸ばして捲くれたスカートを急いで伸ばす。そのまま、必死でスカートの前を押さえた。
「これを股に突っ込むのと、それとも、俺に胸を揉まれるのをどっちがいいですか? 好きな方を選んでください。この淫具を突っ込まれたいなら、そのままで……。でも、胸を選ぶなら、自分でぼたんを外して乳房を外に出してください。どっちでもいいですよ。今度はお願いはなし。なにしろ、選択肢をあげているんですから」
ロウが言った。
ヴァージニアはかっとなった。
「ふ、ふざけないで──。こ、こんなことをして、なにが面白いんですか? 馬鹿じゃないですか? 低俗です。卑劣です。揉むなら揉めばいいでしょう。あなたは、無理矢理にできるんですから──」
「じゃあ、揉んでもいいんですね? だったら、乳房を出すんですよ。それとも、こっちにしますか? もう濡れているでしょう? 確かめましょうか? 多分、このくらいの淫具を挿入できるくらいまでにはなっているとは思うんですけどね……。だけど、性経験が一回だけじゃあ、処女と一緒かな? 若いときに一回だけですか? 本当は美人なのに、そう見えないようにしているのは、そのときになにかありましたか?」
ロウが笑みを浮かべたまま、あがっている脚の腿に手を置く。
スカートの裾を付け根に向かってめくるような仕草をしていく……。
「やっ、やめて──」
ヴァージニアは自由になっている手で必死にスカートを押さえた。
それにしても、どうしてこの男は、ヴァージニアの経験が若いときの一度だけということを知っているのか……。
まさか、それを知って、またヴァージニアを小馬鹿にしようとしているのか?
ヴァージニアは鼻白んだ。
ロウが手を離す。
「もちろん、その手を繋げ直すこともできるし、逆さ吊りにだってできますよ。だけど、俺はヴァージニアに選ばせてあげているんです。どっちですか? 胸? それとも、淫具?」
ロウがまだ動いている淫具をわざとらしくスカートの中に移動させる動きをする。
「も、揉みたいなら、揉めばいいでしょう、この卑怯者──」
叫んだ。
だが、一郎は手の中の淫具をさっと消滅させて、ヴァージニアの前に立ち直した。
「淫具はまた出せますよ。ああいう張形だけで二百種類あります。淫具を選べば、その二百種類を全部味わってから解放しましょう。あなたの貞操は守られるかも……。まあ、だけど、そのときも、途中であなたが俺の本物で犯して欲しいと、お願いしてくる自信はありますけどね」
ロウがお願いという言葉を強調して言った。
やっぱり、この男はわかって、ヴァージニアの「お願い」という単語に反応させていた。
ヴァージニアは歯噛みした。
「わ、わたしはもう二度と、男にお願いなんてしないわ──。あ、あなたがあのことを知っているなら……」
「あのこと?」
ロウが首を傾げた。
その表情は、ヴァージニアの過去のことを知っていたという様子はない。なにを言っているのかわからないという雰囲気だ。
「知って……いるわけじゃないのね……。それで馬鹿にしているわけでも……。でも、わたしが一度しか経験がないって知っていたし……」
ロウが誰かから、ヴァージニアの昔の恥を耳にして、からかっているわけではなさそうだ。
さっきから時々心を抉るような的確な言葉を使うので、少し勘違いをしていた。
ロウの顔を見ればわかる。
心の底から、ヴァージニアが仄めかしたことがわからないという顔をしている。
「なんのことかわかりませんが、まあいいでしょう。俺の女になりませんか? 俺の女は大勢いますが、必ず大切にしましょう。あなたも来てください。さあ、胸を出して……。それとも淫具?」
ロウがにやりと笑い直して、再び淫具を出した。
どきりとした。
今度は別の淫具だ。
しかも、ふた周り以上も大きい。
あんなものを入れられれば、ヴァージニアは毀れてしまう。
ぞっとした。
「も、揉みたいならそうしてください。自分がどれだけ、哀れな男か実感できるだけよ。わ、わたしは男には屈服しないわ──」
ヴァージニアは残っている気力を総動員して、片脚に力を入れ直し、できるだけ身体を真っ直ぐにした。
負けるものか──。
二度と男には屈服しない──。
そう決めたのだ──。
絶対に……。
心を引き締めると、ロウとの口づけで熱くなった気がしていた身体が、すっと正常になるのがわかった。
ヴァージニアは少し冷静になった。
「……やっぱり、昔なにかあったんですか? 屈服しないなんて……。本当に随分と男嫌いなんですね……。シャングリアとは別のタイプか……。だったら、俺と勝負しますか? 俺はあなたをセックスで屈服させます。だから、俺の調教を受け入れるんです。それで屈服しなかったら、あなたを解放します。それどころか、侍女たちには二度と手を出さないと約束してもいい」
ロウが自信たっぷりに言った。
かっと腹が煮える。
この男はなんてことを口にするのだ。
しかも、絶対にヴァージニアが屈服すると思っている。
この男とのセックスで……。
「セ、セックスなんかに屈服するわけがないでしょう。頭がおかしいんじゃないですか──」
「だったら、受け入れて損はないでしょう。あなたは聡明な人のようだから、もはや犯されることからは逃げられないとはわかっているでしょう。どうせ犯されるんです。だったら、勝負すればいい。そのときに、屈服しなかったら、あなたの勝ちだ。俺はあなたの言うことに従いましょう」
「わたしの言うことに従う……?」
ヴァージニアは眉をひそめた。
「……あなたの奴隷になりますよ……」
ロウが耳元に近づいて囁き、顔を離してから、にやりと笑った。
ヴァージニアはどきりとした。
また、吸い込まれるような魅力をこの男に感じてしまったのだ。
ついつい、目を逸らす。
すると、ロウがヴァージニアの顎を掴んで、真っ直ぐにロウの顔に向けた。
「なにをするんです──」
ヴァージニアはスカートから手を離して、ぱしりとロウの手を払った。
「でも、もしも、屈服すれば、俺の奴隷になるんです。いいですね?」
ロウが微笑む。
今度は、その微笑みで、ヴァージニアは逆に我に返る。
負けるものか……。
この女を見下すような男に、ひと泡ふかせてやる。
それだけでも、その勝負とやらを受け入れる価値はあるのではないか……。
なにしろ、ヴァージニアがセックスで屈服するなどあり得ないのだから……。
たとえ、この男に何十回犯されようとも……。
「やりましょう──。約束は守りなさい。わたしが屈服しなければ、あなたはわたしの奴隷です。命令に従ってもらいます──」
「面白い。では、乳房を出してください」
ロウが両手を拡げた。それで気がついたが、いつの間にか、二度目に出した怖ろし気な淫具はなくなっている。
まあ、それはいい……。
とにかく、受けてやる──。
その馬鹿馬鹿しい勝負を……。
「では、勝負よ」
ヴァージニアは自由になっている片手で胸のシャツのぼたんを外していく。
指先が震えるのがわかったが、懸命にヴァージニアは自分を奮い立たせた。
最後のひとつを残して全部のぼたんを外すと、ヴァージニアはシャツを左右に分けて胸を出した。
そのとき、ちょっと違和感を覚えた。
なんとなく、胸に張りがあり、しかも随分と肌が瑞々しいなような……。
「俺の精を注げば、特別治療術は安定します。俺が負けても、治療を解くような無粋なことはしませんよ。あなたがどうして、男嫌いになったかは知りませんが、いまのあなたを見たなら、その原因を作った男は後悔するんでしょうね」
またまた、意味の分からないことを言い、ロウが背中に回る。
「とりあえず、胸を揉みましょう。まさか、胸だけで屈服しないですよね? まだまだ、続きはあるのはわかるでしょう。あっ、腕は繋ぎ直しておきますよ」
ロウの手が後ろから、自由になっていた手首を掴んで上にあげた。
ヴァージニアは抵抗しなかった。
革枷の外側に手首が触れたかな、と思ったときには、再び手首に枷が嵌まっていた。
本当に不思議な術だ……。
ヴァージニアは手で吊られている鎖を握り直しながら思った。
そして、ロウの手が乳房の下に伸びてくる……。
ヴァージニアは身を引き締めた。
「だ、だけど、誓ってください──。あなたの矜持に懸けて──。わたしが屈服しなければ、あなたはわたしに従うんです──」
「だったら、あなたも誓ってください。俺の調教を受け入れると……」
「わかってます。誓いましょう」
ヴァージニアは緊張で口の中に溜まった唾液を呑み込みながら言った。
「もう一度口にして……。口にすれば、それが身体に伝わる……。言葉とはそういうものです……」
ロウが耳元でささやく。
なにをわからないことを……。
まあいい……。
「あなたの調教を受け入れます……。あなたがわたしとの勝負の誓いを守ることと引き換えに」
「俺も誓います……。あなたを屈服させれなかったら、あなたの奴隷になってもいい」
ロウが言った。
すると、突如として身体がかっと熱くなるのがわかった。
びっくりした。
全身から汗が噴き出てくる。
これは異常だ……。
「言い忘れてましたが、俺の唾液には媚薬の効果もあるんですよ。話のあいだは、その効果を中断させてました。いまの誓いを合図に、再び活性化させたということです……。では、勝負といきましょう」
ロウが左右の手でヴァージニアの乳房をすくいあげるようにして持った。
揉み始める。
「あっ、な、なに──?」
瞬時に、愉悦の大波のようなものがそこから弾け飛び、ヴァージニアは思わず狼狽の言葉を叫んでしまった。