【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「驚きましたよ。思ったよりも大きいんですね。わざわざ、胸巻きを強く縛って大きいのを隠していたんですか? だけど、これからはしないことです。かたちが崩れてますよ。これも、直しましょうね」
喋りながらロウの手は休むことなく、ヴァージニアの乳房を揉み続けている。
とても丹念に……。
粘り強く……。
根元から官能を掘り起こすかのようにゆっくりとだ。
特段に変わった揉み方ではない。
むしろ平凡だといっていいだろう……。
最初こそ、一気に快感が弾けるような刺激を感じてしまい驚愕したが、それからは一転して、静かな波の範疇に収まっていた。
耐えられる限度の疼きであり、それについては少し安心もした。
だが、それでもヴァージニアは濃密な欲望を胸を刺激されることで感じずにはいられなかったし、次第に息があがるのを隠すことが難しくなってきていた。
やはりこの男は、女の身体を扱うことは上手だと認めざるを得ないと感じた。
ロウの胸への愛撫はかなりの時間になっている。
いずれにしても、胸が大きいことはヴァージニアが自分の身体について気に入らないことのひとつだ。
普通にしていれば、どうしても男の眼を引くくらいに、乳房が大きいのだ。
だから、普通はロウの言葉の通りに、しっかりと胸を締めつけるようにして胸の大きさを服の下に隠していた。
これがこんな風に露見させられるだけではなく、思うままに触られる羽目になるとは……。
とにかく、ロウは執拗だった。
また、一見作業的なのに、時折からかうように的確に快感を与えてくることもあったし、だんだんと身体の芯から熱くなるような苦悶が漏れ出てくる底知れない疼きをそこに発生させてもくる。
ヴァージニアは一段と心を引き締めねばならず、奥歯をぎしぎしと喰い縛った。
身体の中のなにかが変えられようとしている。
それをじわじわと味わわされている……。
そう思うと、次第に恐怖を覚えずにはいられなかった。
「い、いい加減に……し、してよ……。も、もうわかったでしょう……。こ、こんなことをいくらしても無駄なんです。こ、こんなことをして、屈服するわけないんです」
とにかくヴァージニアは爪先立ちの片脚に必死に力を入れながら声をあげた。
この男に感じるのは憤怒であり、軽蔑であり、悪寒でなければならないはずなのだ。
だが、追い詰められている。
それがわかりかけてきただけに、ヴァージニアはそれを納得したくなかった。
「ああ、もしかしたら、胸で達したいんですか? そんな風にすることでもできますよ。だけど、あなたにはまずは身体を変えていくような責めが効果的だと判断したんです。でも、お望みなら一気に絶頂するような胸揉みだってできますよ。だけど、片足で立っていられるかな?」
ロウがくすくすと笑った。
胸で一気に絶頂……?
なにを馬鹿なと思った。
そのときだった。
ロウが胸を揉む動きが変化した。
「あっ、なにっ? ああっ」
ヴァージニアは拘束された身体を左右に捻って悶えた。
なにがどう変わったかはわからないが、一転してロウの愛撫が劇的に変わったのだ。
とにかく、気を持ち直す。
しかし、ロウの手つきは一瞬ごとに変わり、乳房だけが中心だったのに乳首への刺激も加わったり、機械的に動いていただけの手の動きも、左右で強弱や調子を変えられたりして、なにをされるのか全くわからなくなった。
次々に閃光のようなものを頭に感じてしまい、身体が浮きあがる心地になる。
甘美な快感がヴァージニアに駆け巡り、全身ががくがくと震えた。
なにこれ──?
ヴァージニアは狼狽えた。
「ほらほら、しっかりと立って――。それとも、支えてあげましょうか?」
ロウが笑いながら、一方の乳房から手を移動して、足首をあげられて横向きになっている脚の腿をスカートの中に手を入れて下から担ぐようにした。
「あっ、や、やめなさい──。ひ、卑怯よ……。さ、触らないで──」
ヴァージニアは悲鳴をあげた。
スカートの中に入れているロウの手がもぞもぞと動いて、くすぐるように擦るのだ。それがだんだんと下着のない股間に近づく。
「俺がなにをしようと自由でしょう。まさか、勝負が胸揉みで終わるとは思ってないでしょう……? まあいいでしょう。じゃあ、さっきの通りに、静かな胸揉みにしましょう。その方があなたにもわかるはずです。しっかりと味わってください」
ロウがスカートから手を出して、ヴァージニアの胸を触り直す。
再び愛撫が始まる。
たったいまの火がついたような胸揉みとは異なり、とても静かで単調な手の動きになった。
しかし、はっきりとわかったのは、この男は手加減をしていたという事実だ。
あのままで胸を揉まれたら、本当にヴァージニアは胸だけで達するという醜態をさらしたのかもしれない。
それくらい、一瞬のあいだだけ垣間見せくれたロウの愛撫は神がかり的だった。
「な、なにを味わうというのです──。と、とにかく、無駄なことです。ば、馬鹿みたいです」
ヴァージニアは荒い息をしながら言った。
息を乱していることなど知られたくなかったが、まだ沸騰しかけた快感の余韻が続いていて、ヴァージニアは懸命に息を欲していた。
こんなに乱れるのは、多分、ロウが唾液と一緒に口にさせたという媚薬のせいだろう。
さもなければ、あんなにヴァージニアの身体が一気に快感に陥るなんてことはあり得ない。ヴァージニアは媚薬のことを思い出して、自分を引き締めた。
とにかく、そうに決まっている。
「馬鹿なことですか? まあ、ゆっくりやりましょう。ここでは無限の時間がある。収納術はご存知でしょう? 亜空間に物を収容して、それを自由自在に取り出す技です。そうやって収納した物は、いくら時間が経っても、いつまでも変化せずに保管できます。食料などを入れても、いつまでも新鮮なままです。それは亜空間の中では、ほとんど時間が経たないからです。わかりますか?」
「だ、だから、なんだというのですか──? くっ」
ヴァージニアは思わず声をあげてしまった。
ロウの指がほんの少し尖りきっている乳首に触れたのだ。それだけで、甘い声をはしたなくあげてしまった自分をヴァージニアは恥じた。
「可愛い声ですね。もう少し聞かせてくれますか?」
馬鹿な……とは思ったが、また反対側の手が揉みあがる乳房の先端側でちょんと乳首を動かす。
強烈な疼きが迸る。
「あんっ」
また声をあげてしまった。
ヴァージニアは羞恥でかっと熱くなった。
「わかりますか? いかせるも、いかせないも、俺の自由自在だということです。そうやって、冷静さを保てるのは、さっきも言いましたが、そっちの方が、あなたが変化を自覚できるからですよ。だから、しっかりと味わってくださいね」
ロウが再び静かな胸揉みに変わりながら言った。
そのからかうような物言いに、ヴァージニアはかっとなる。
「まどろっこしいいい方ばかりしないで──。なにを味わうというのですか──」
怒鳴った。
すると、ロウが耳元に口を近づけたのがわかった。
息をとともに、ロウの声が耳に吹きかかる。
「もちろん、あなたの身体が淫乱に変わっていくのを味わうことですよ……。取り返しのつかないくらいに身体をいじり変えられて、あなたは最後には俺に屈服します……。それを味わうんです……」
「な、何度も言わせないで。わたしは屈服しないと言っているでしょう――」
ヴァージニアは怒鳴った。
だが、ロウは余裕たっぷりに、ちょっと鼻で笑ったただけだ。
その態度にも腹が立つ。
「胸だけでは絶頂させませんよ。そうしようと思えばできますけどね……。ああ、そうそう、亜空間の話でしたね……。つまりは、ここがその亜空間ということです。だから、ここでは時間が経たないんです。ほとんどね……。従って、その気になれば、一日でも二日でも、胸揉みを続けることができます……。そういうことですよ」
「い、一日──? な、なにをおっしゃっているのですか──」
冗談じゃない。
もちろん、言葉の上だけのことなのはわかっている。
ここが本当に、時間が経たない亜空間の中だとしてもである。
「本当ですよ? よければやりましょうか? ああ、だけど、今回はやめときます。いくら外の時間と関係がなく、腹も減らず、眠たくもならないといっても、しっかりとここで過ごした記憶は残りますしね。俺も時間的な限界はあります。まだ調教しなければならない侍女たちが五人残っている」
「じょ、冗談じゃありません──。まだ、若い侍女たちを犯す気なのですか──。しかも、調教などと──。恥ずかしくはないのですか──。そんないやらしい言い方──」
ロウは本当に飽きることがないかのように、胸を揉み続ける。
しかも、単調のようでそうではなく、徐々に刺激のやり方に変化をつけてもいっているみたいだ。
ヴァージニアはだんだんと息もあがってきたし、いつの間にかかなりの汗を自分がかいていることを自覚せずにはいられなかった。
「恥ずかしくはないですよ……。ありがたいとは思っていますけどね……。それに誓ったじゃないですか。あなたが俺に屈服したら、侍女たちを全員性奴隷にするのを認めると……」
ロウがくすくすと笑った。
「わ、わたしは屈服しません──」
不安定になっている意思を奮い立たせるようにヴァージニアは毅然と言った。
「そうかな? もうかなり、堕ちてきていると思いますけどね? かなり淫靡な身体になりましたよ。見てみますか、自分の身体を……」
ロウの言葉が終わると同時に、目の前に大きな姿見が出現した。
「あっ、えええっ?」
もう、突然になにかが現われたり消えたりすることには驚かなかったが、姿見に映っているものを見るなり、ヴァージニアは悲鳴をあげてしまった。
正面の鏡にあるのは、ヴァージニアであってヴァージニアではなかった。
胸を剥き出しにして、片脚を大きくあげさせられて、ロウが胸を揉んでいるので、ヴァージニアには違いなかったが、後ろで束ねていた髪をおろされているヴァージニアは、随分と若々しかった。
肌は十代の頃のように瑞々しく、顔にあった小皺のようなものは消滅している。
いや、若々しいだけじゃない。
眼はぱっちりとひと回り大きくなり、一重のはずの瞼がくっきりと二重になっている。
どことなく小顔になり、鼻筋も美しくなっていて、自分でもかなりの美貌だと感じた。
「こ、これ……」
どういうことだと思ったが、そういえば、さっきおかしなことをロウが口走っていたことを思い出した。
「治療」だとか、なんとか……。
この男は女の外見を美しくする魔道まで遣うのか?
ヴァージニアは全身の力が抜けるのを感じるとともに、信じられなくて目を丸くした。
また、ロウのいうとおりに、胸を揉まれ続けているヴァージニアは、とてもいやらしい顔をしていて、身体も淫靡さを噴き出すかのようにいやらしくねっとりと光っていた。
勃起している乳首も、とろんとした表情も、ヴァージニアが完全に欲情に耽っているのを示している。
自分はこんな顔を晒しているのだ。
これについても、呆気にとられた。
「こ、これは……?」
とにかく、ヴァージニアは唖然としてロウを振り返った。
女を若くする魔道などあり得るのか……?
「本来、美しい顔立ちなんですから、このくらいの変化は髪をおろしたことによる印象の違いで誤魔化せますよ。堕ちた後の条件を出してから、堕とすのは好きじゃないんですけどね……。俺の女になれば、女は美しくなり、俺の能力もあがります。女側の能力もね。決して一方的に搾取されるわけじゃないです……。だから、安心して屈服してください……」
ロウが笑った。
特殊な仕掛けで嘘をついているということもあり得るが、そんなことをしてなにが得なのかわからないし、このことではっとすることもあった。
侍女たちも口にしていたのだが、最近になってイザベラとシャーラが急に美しくなったと感じていた。もともと若くて美しいふたりだったので、それほどには騒がれないが、女というものはそういうことには敏感だ。
ふたりが次第に妖艶まで備えていくかのように変わっていくのは、イザベラに仕えるようになってすぐにヴァージニアも思った。
また、今日、久しぶりに垣間見たアネルザ……。
改めて驚いたが、アネルザは年齢はヴァージニアと変わらぬ四十代のはずだ。
しかし、近くに寄ることができてわかったが、あれは無理した化粧で、年齢を重ねた雰囲気を作っているだけであり、接近すると、そんなものじゃあ誤魔化せない肌の張りもあるし、顔も若い。
多分、まったく知らない者が外見だけで判断すれば、三十歳前後くらいだと考えるのではないだろうか……。
だから、本当のことなのだ……。
ロウは、そういう魔道も遣うのだ……。
ヴァージニアは唖然とした。
「……俺に堕ちたくなりましたか?」
ロウがくくくと喉の奥で笑う。
ヴァージニアは顔を激しく振った。
「いいえ──。女をたぶらかすまやかしを使う邪道の術の使い手だと確信しただけです。あなたが有能な魔術遣いだということはわかりました。だけど、くだらない」
ヴァージニアは気力を総動員して声を張りあげた。
とにかく、なにがあろうとも、このロウに負けるわけにはいかないのだ。
すると、鏡越しのロウがちょっと驚いたように目を見開いたのがわかった。
おかしな術で見た目を若くすれば、それだけで女が堕ちるとでも考えていたのだろうが……。
浅はかな……。
「なるほど……。根っからの男嫌いの堅物というわけですね……。これは堕としがいがありますね」
ロウが指を喰い込ませていたヴァージニアの乳房を乳首側から胸板に押しつけるようにして、力強く全体的に捏ね回してきた。
「くっ、んくっ」
ヴァージニアは竦みあがった。
身体の底で静かになっていたものが一気に掘り起こされた感じになったからだ。片足で立っている脚が急にがくがくと震えた。
すると、ロウの手がスカートの腰の横に伸びて、留め具をぱちんと外して、腰の紐を解いた。
いつもは上下一体型の女官服だが、今日はたまたま、最近流行りの上衣とスカートが分かれる形式のものだったのだ。
腰部分の張りを失ったスカートの腰の横部分が大きく拡がり、すとんと足首に向かって落ちそうになる。
「きゃあああ」
スカートの中は下着を取りあげられて、無防備に局部を晒しているだけだ。
ヴァージニアは悲鳴をあげた。
しかし、スカートは持ちあがっている脚側の腿に引っ掛かって、辛うじて床に落ちるのは阻止された。
斜めに垂れ下がって、かすかだが陰毛が少しだけ露出している。
「動かない方がいい。あまり動くと落ちますよ」
ロウがとまっている側のスカートを外側ずらすように動かす。
「や、やめて、なにが面白いのですか、こんなの──」
ヴァージニアは腰を振ってロウの手を払いのけたくなり、慌てて、その欲求を押さえた。
そんなことをすれば、スカートはばっさりと落ちるだろう。
いまは、片脚に引っ掛かってとまっているだけなのだ。
しかも、いまにもずれ落ちそうだ。
「そうそう。動かないことです。いくら気持ちよくてもね……。黙って受け入れる。それができたら、恥ずかしい姿をさらすのが、それだけ後になります」
一郎が指を鳴らした。
すると、ずっと上にあがっていた片足を吊っていた鎖がさがり、だんだんと脚がさがってくる。
だが、脚がさがるということは、引っ掛かっているスカートが下に落ちるということだ。
ヴァージニアは慌てた。
「や、やめてください──。さげないで──。お願いです──」
絶叫した。
逆に脚をおろすまいと、懸命に膝を上にあげたままでいる。
だが、そんな姿勢を保てるわけもなく、膝ががくりと落ちる。
スカートもその分、床に落下しそうになる。
「ああっ」
ヴァージニアは絶望の声を出した。
しかし、脚の下降はすぐに止まり、スカートも落ちないで済んだ。
「脚をおろして欲しいのかと思えば、あげていて欲しいとはね。じゃあ、最初はこの体勢のまま犯してあげますよ。それがお望みなら……。どうします?」
ロウが笑った。
ヴァージニアは歯噛みした。
馬鹿にされているのがわかるからだ。
しかも、まるで少女のように悲鳴をあげて、この男に慈悲を乞いてしまった。
それだけはやるまいと、心に決めたつもりだったのに……。
ロウがまたもや両手で本格的な胸揉みを再開する。
ヴァージニアはもはや必死に耐えるしかなかった。
「質問しているんですよ。どうするんですか?」
すると、ロウが耳元で少し大きな声で言った。
ヴァージニアはびくりとした。
「な、なんですか?」
「このまま立ったままで犯すのがいいかと訊ねているんです。それとも、やはり抱くときには寝台で犯されたいですか? ただし、寝台で抱くときには、縄で縛られてもらいます。どっちがいいですか? このまま? それとも、縄で縛られて寝台?」
ロウが胸を揉みながら言った。
ヴァージニアはかっとなった。
「わ、わたしは調教を受け入れると言ったんです──。なにも縛るだなんて──」
胸を揉まれながらヴァージニアは言った。
だんだんとせりあがる快感の昂ぶりで、意識をしないと思わず甘い声を出してしまいそうだ。
ヴァージニアは大きく息をしながら、なんとか恥ずかしい声を出さずに口を開くことに成功した。
「縛られるというのも調教を受け入れるということに含まれますよ。それとも、あなたは勝負の約束を破るんですか? 俺には矜持を要求していて、自分はそれを守らないと?」
ロウがわざとらしく呆れた声を出す。
ヴァージニアはぐっと唇を噛んだ。
口惜しいけど、ロウの言う通りだった。
身体を奪われるのは既定の話なのだ。調教も承知した。その条件での勝負だ。ロウに勝負の結果を要求するなら、ヴァージニアだって約束を守る必要はある。
「も、もちろん守ります……。わ、わかりました。縛ってください。受け入れます。その代わり、寝台で抱いてください……。あっ、うんっ」
今度は昂ぶりの声を出してしまった。
話している最中に、ロウが嫌がらせのように、乳首を刺激したのだ。
いずれにしても、気がつくといつの間にか両方の乳房が愉悦のざわめきを次々と燃え広がる感じになっている。
ずんずんと胸から股間に響く感覚だ。
目の前の鏡に映る若々しくなった自分がいやらしく淫情に耽った表情になっているのがわかる。
「わかりました。じゃあ、あと一ノス揉み続けます。そのあいだ、強い責めも自重しますし、絶頂に到達するような激しい愛撫は与えません。ただ、ぶすぶすとくすぶるような焦らしがあるだけです。その気になれば、一ノスなんてあなたはもちません。だけど、今はあなたの身体と心を作り変えるのが目的なので、あえて、ゆっくりと責めさせてもらいます。だから、スカートを落とさないようにしてくださいね。みっともなく身体を動かして、スカートを落とせば、この恰好のまま股間に淫具を突っ込みます」
ロウが笑った。
一ノス──。
それが、どんなに異常な時間なのかは理解できる。
しかし、ロウはするのだろう。
そして、そんなことをされれば、本当に全身がおかしくなってしまうというのもわかる。まだ、四分の一ノスも経っていないと思うが、すでに爛れるように胸が熱い。
「ど、どうとでもすればいいでしょう──。ちょ、調教なんでしょう──」
だが、ヴァージニアは気丈に言った。
鏡の中のロウがにやりと笑った。
「いい根性ですね。ご褒美に二ノスにしましょう。片側一ノス。合計二ノスです。そのあいだ、絶頂することなんてないので安心してください」
ロウが胸揉みに力を入れてきた。
ヴァージニアは絶望的になった。
*
「終わりですよ。頑張りましたね……」
突然だった。
がらがらと鎖の音がしたかと思ったが、そのときにはぐらりと身体が床に倒れてしまっていた。
あげられていた脚と吊られていた両手の枷に繋がっている鎖が一気に緩んだのだ。
「わっ」
ほとんど朦朧としていたヴァージニアはまったく無防備だった。
しかも、長時間にわたってくすぶるような官能の焦燥の中にいた身体は、ほとんど脱力していて、受け身をとることもできなかった。
顔をぶつける。
そう思ったが、緩んでいる腕を顔の前に出すこともできない。
そのまま前のめりに、顔から床に落ちていく。
「きゃああっ」
ヴァージニアは悲鳴をあげた。
その身体がぐんと持ちあがる。
両手の鎖が完全には緩んでおらず、上体が床と激突する寸前で、身体が支えられたのだ。
そして、ゆっくりと腕が下降する。
全身が床に倒れ込んだところで、両手首に嵌まっていた枷が消滅した。足首の手錠もだ。
ヴァージニアは慌てて、スカートをあげようとした。
留め具を外されて腰紐を緩められていたスカートは倒れ込んだときに、完全に膝から下に落ちてしまい、腰から脱げていたいのだ。
だが、そのスカートの裾をロウが足で踏みつけた。
「あっ、なにを……」
「なにをじゃないですよ。さっさと寝台に進むんです。それにしても、すごいですね。胸だけで、まるで何度も達したかのように股が濡れているじゃないですか。そんなに胸だけで気持ちよかったですか」
ロウがスカートを踏んだまま、ヴァージニアの上衣にまだ残っていたシャツの襟首を掴んで力強く引っ張る。
「あっ、やっ」
シャツは一番下のぼたんを除いてすべて外して左右にはだけていたので、ロウの力で残りのぼたんが弾け飛び、そのまま両腕を後ろに引っ張られるようにして、ロウに、最後の服を脱がし奪われてしまった。
「両手を背中に……」
ロウが言った。
ヴァージニアは咄嗟に両手で胸を隠そうとしたが、自分でも驚くくらいに力が入らない。
しかも、逆らう気持ちも消し飛んでいる。
隠しかけていた胸の前で、ロウに声をかけられて、ヴァージニアの腕はぴたりととまってしまった。
「二ノスもかけて、さんざんに揉んだ胸ですよ。今更隠しても仕方ないじゃないですか。それよりも、腕を背中です。調教を受け入れると言ったのをお忘れなく。言っておきますが、俺の調教はまだ始まってもいないくらいですよ。それとも、勝負などやめて、屈服しますか?」
ロウが嘲笑のような声を出した。
長い時間の胸への愛撫で消滅しかけていた気力が、ロウの笑いで力を取り戻す。
そうだ──。
この男との勝負だったのだ……。
ヴァージニアは調教を受け入れて、ロウはそのヴァージニアを屈服させる……。
そういう勝負だ。
勝負の分は、ヴァージニアにある。
ヴァージニアはいくら絶頂しようと、追い詰められようとも、屈服したと口にしなければいいだけだ。
勝てる勝負だ。
「じょ、冗談じゃありません……。く、屈服など……。ば、馬鹿にしないで……」
ヴァージニアは両手を背中に回した。
すると、その腕に縄がさっとかかったのかわかった。
一瞬前まで、縄など持っていなかったのだから、またまた不思議な術で出現させたのだろう。
両手首が背中の中ほどで交差させられて、縄が絡みつき、その両手首を縛った縄が、前側にまわって両乳房の上下を固く締めあげてきた。
「くっ、ううっ」
縄がぐっと最後に締められたとき、不覚にもヴァージニアは変な声を出してしまっていた。
身動きできないくらいに縛められたことで、なぜか急に股間の奥がぐっと熱くなったような感覚が襲ったからだ。
「効いてきたみたいですね……。気持ちがいいんでしょう……。もう病みつきになりますよ」
ロウがくすくすと笑った。
ヴァージニアは縄掛けをされたまま、顔を振り向かせてきっとロウを振り返って睨んだ。
「な、なにが効いてきたというのですか──。それと、その下品な笑いをやめてください──」
ヴァージニアが怒鳴ると、ロウが笑顔を消して驚いたような表情になった。
「これは驚きました。本当です……。俺の計算では、それだけ念を入れて身体をいじれば、もう逆らえなくなると思ったんですけどね。かなり、手を加えたのに……」
「て、手を加えたって、なんですか──?」
ヴァージニアは大声をあげた。
だが、なにかがおかしい。
それは感じた。
縄掛けをされたときに急に込みあがった子宮の奥の疼きがとまらないのだ。
それどころか、どんどんと大きくなる。
じわじわと股間から樹液のように亀裂から愛液が滲むのがわかる。
ヴァージニアは慌てて内腿をさっと引き締めた。
そして、はっとした。
「も、もしかして、また媚薬を……?」
胸揉みを開始する前に、この男はヴァージニアに媚薬を施したと口にしたではないか。もしかしたら、同じことをやったのかと思ったのだ。
さもないと、やっと胸を揉まれるのをやめてもらえたというのに、こんなにも落ち着かない感じになるのは不自然だ。
身体が熱いのだ。
かっかと燃えている。
長かった胸揉みの余韻が残っているのとは違う。
これは別のものだ。
すると、ロウが再び微笑みを浮かべて顔を横に振った。
「そんな一時的なものじゃありませんよ。もっと本質的なものです。長い時間をかければ、俺は女の身体をいじれるんです。俺はただ胸揉みをしたんじゃないんです。それを通じて、ずっとあなたの身体を探り、あなたの中にある被虐の性欲を徹底的に活性化させたんです。つまり、あなたの心とは別に、まずは身体を作り変えたんです。縛られたり、侮辱的に扱われれば悦ぶ身体にね……。いまのあなたは、痛みさえも気持ちいいですよ……」
ロウがまた笑った。
唖然とした。
なにを馬鹿なと思ったのだ。
「信じてないですね。試しますか……。普通なら、痛みを気持ちいいなんで思わないですよね。でも、俺の淫魔力を注がれて、被虐欲の塊のような肉体に変わったあなたの身体は……」
ロウが近づき、縄尻をとってヴァージニアのお尻を高くあげるようにさせた。
「やあっ」
ヴァージニアは逃げようとしたが、散々に続けられた胸揉みの影響でまだ脱力をしている。
思い切り尻たぶに、ロウの平手が食い込んだ。
景気のいい音がして、ヴァージニアはお尻に激痛を覚えた。
「んぎいいっ、ひゃん」
悲鳴をあげたが、その次に不可思議な快感のようなものが迸った。
まるで優しい愛撫を受けたかのような強い疼きだ。
まさか……。
自分でも不覚だと思ったが、それよりも、お尻を叩かれて、ちょっと気持ちがいいと感じるなど、常識では考えられない。
ロウはさっき、ヴァージニアの身体を作り変えたと言ったか?
「多分、あなたはもう逃げられませんよ。心で否定しても、身体は俺の調教を受け入れます。心が追いつくのはすぐですね。こうやって、動けない身体を触られるのは、自分でも驚くくらいに感じるでしょう?」
ロウが横脇辺りをすっとひと撫でした。
「ああっ、いやっ」
ヴァージニアは、それまでになく上体をおののかせて悲鳴に近い声をあげた。
どうして……?
そもそも、そんなところを触られたくらいで、こんなにも露わな反応をするはずがないだ。
だが、現実はヴァージニアの意識とは無関係に、強烈な甘美感を裸体の下に走らせていた。
「こうすれば、もっとわかる……。さあ、寝台まで歩いてください。俺に犯されるためにね……。調教を受け入れると誓ったことをお忘れなく」
突然として視界が消失した。
目隠しをされたのだ。
「ああ、こ、怖い──」
ヴァージニアは自分でも信じられないくらいに身体を震わせてしまった。
「俺の声を頼りに進むといい。そのまま真っ直ぐです。さあ──」
ロウが強く怒鳴った。
ヴァージニアは完全に混乱していたが、とにかく言われるまま進もうとした。
だが、ちょっと立とうとしただけで、足がもつれてひっくり返ってしまった。
なんとか肩で避けて、顔を床に打ちつけるのは避けれたが、倒れたために寝台の方向がわからなくなってしまった。
「あ、あのう……。どっちですか? わ、わからなくて……」
ヴァージニアは急に心細くなって言った。
相変わらず、腰に力が入らない。
あの長い乳房への愛撫がこんなにもヴァージニアを脱力させているとは思わなかった。
「こっちですよ。さあ……。立てなければ這ってでも来るんです。それが調教です。そして、これからが本当の調教です……。その被虐に作り変えられた肉体で、あなたの気丈な矜持がどこまで保つか……。示してください……」
ロウの声がした。
言葉は侮辱的だが、心細かったところに、ロウの言葉が耳に入ったことで、不思議な安堵感が襲った。
ヴァージニアは膝立ちのまま、ゆっくりとロウの声をめがけて歩みを進めた。