【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「なんだ、いきなり」
シャングリアが怒って、迫ってきた護衛の胸を突き飛ばした。
「いかん、やめろ、シャングリア」
一郎は声をあげたがもう遅い。
ひとりが突き飛ばされると、ほかの護衛の顔色が変わり、一斉に腰の剣に手をかけた。
護衛たちのステータスを確認する限り、一対一ならば、シャングリアが勝つだろうが、護衛の数は四人だ。シャングリアひとりでは勝ち目はない。
一郎は戦うつもりで、懐の短銃に手をかけた。
そのとき、薄っすらと床と宰相のフォックスの身体全体に青い光が灯った気がした。
一郎の魔眼の能力には、一郎が戦うと決めたとき、相手の弱点が青く光るというもうひとつの力がある。
それが作動したのだ。
一郎は床についている足の裏から粘性物を発生させて、護衛たちの靴を床に貼りつけた。
「うわっ」
「おっ」
「な、なんだ?」
護衛たちの体勢が崩れる。
その隙をついて、フォックスの腰の短剣をさっと抜くと、フォックスの喉に刃先を押しつけた。
「全員、止まれ。さもないと、どうなっても知らんぞ」
一郎は叫んだ。
そのときには、護衛たちの足を密着させた粘性物は消滅させている。
護衛たちにしても、なぜ、いきなり足を取られたのかを理解することはできないだろう。
「き、貴様……」
一郎に刃物を突き付けられたフォックスが真っ蒼になった。
「護衛たちを落ち着かせてください。シャングリアもだ。お前、気が短すぎるぞ」
怒鳴った。
「シャングリアだと……?」
フォックスは、やっと女騎士がシャングリアだと気がついたようだ。
「全員、やめよ」
そして、慌てたように護衛たちに言った。
護衛が距離を取るのを確認して、一郎は短剣を引いて、フォックスの腰の鞘に戻す。
「ご無礼、お許しください」
すっと頭をさげる。
一郎が剣を引くと、フォックスの顔色が再びさっと変化した。
今度は、真っ赤になる。
まずいな……。
怒り心頭のようだ……。
一郎は悟った。
当然といえば、当然だろう。
戦闘を回避するための、とっさの手段とはいえ、この国の宰相に剣を向けたのだ。
なんとか、うまく収めないと、今後、この国で生きていけない。
「宰相様、このボルグ卿は、王妃殿下に招かれて、部屋に向かうところなのです」
思わぬ事態に、そばで蒼い顔をしていたアネルザの老家人が、やっとのこと口を開いた。いきなり始まった喧騒に身体を硬直させてしまっていたようだ。
「王妃殿下?」
フォックスが目を丸くしている。
「なんの騒ぎじゃ」
そのとき、声がした。
アネルザだ。
廊下の騒動に気がついて、わざわざ姿を見せてくれたのだろう。
とにかく、この場を収めるために、アネルザの権威を利用させてもらおう……。
一郎が王妃の重要人物だとわかれば、このフォックスも、一郎たちに対する捕縛などは躊躇してくれるはずだ。
まあ、恋多き王妃で有名なアネルザだ。
いまさら、広まって困る醜聞もないだろう。
「アネルザ」
一郎はことさらわざとらしく喜んだ声をあげて、アネルザに寄っていった。
王妃を呼び捨てにしたことで、フォックスや護衛がびっくりしている。
アネルザも怪訝な表情になった。
構わずに、一郎はアネルザを両手で抱き締める。
「わっ、ロ、ロウ?」
アネルザが驚いた声を出した。
一郎は、そのまま、アネルザの口を吸う。
「んっ、んんつ……」
アネルザが当惑して、喉で音を鳴らす。
だが、やるとなったら、全力の口づけだ。
一郎は、アネルザの口の中の赤く灯る性感帯を舌で強く擦りまくる。
すると、赤い部分が増えたので、さらにそこを擦る。次々に変化する性感帯を強く弱く舌で刺激する。
気がつくと、かなりの長いキスになった。
さすがに、周りが騒然となる。
「……アネルザ……」
一郎は口づけをしながら、かすかに口を離して、アネルザの耳元で事情を語って、話を合わせてくれとささやいた。
そして、口づけを続ける。
アネルザが軽く頷いた。
しかし、アネルザは腰が抜けたようになってしまって、一郎が身体を支えてやらなければ、立っていられないほどになった。
だんだんと重みが加わるアネルザの身体をぐっと抱える。
一郎がアネルザから身体を離したときには、アネルザは軽く達した感じになったようだ。
折につけ、一郎の快楽調教を受けているアネルザだ。
全身のどこを愛撫しようとも達してしまうような、一郎好みの感じる身体になってしまっている。
すでに、アネルザの股間がびっしょりとなるほどに濡れているのが一郎にはわかった。
感度抜群の可愛い女だ。
一郎はほくそ笑んだ。
「はあ、はあ、はあ……。フォ、フォックス、見ての通りだ。このボルグは、わたしの……愛人だ。粗相があったなら……そ、それに免じて許せ」
アネルザが荒い息をしながら言った。
一郎のことをアネルザが、愛人と紹介したことに、宰相のフォックスは驚いている。
ただ、少し前まで、王妃宮の地下に、国王の後宮に匹敵するような性の相手をさせる奴隷を大勢集めた奴隷宮を作っていたようなアネルザだし、愛人をとっかえひっかえするのも有名だった。だから、新しい愛人のひとりやふたりも珍しくもないはずだ。
一郎としては、そんな愛人のひとりとでもしておけば、宰相も事を荒立てようとは、考えないだろうと判断したのだ。
できれば、今後とも可能な限り、目立ちたくはないのだが、そろそろ潜伏したままでいるには、一郎も有名になりすぎているところもあったし、まあ、潮時だと思う。
「ボルグ……卿……。おう、あの例の……」
フォックスが眼を丸くした。
なにか思い出したことがあるようだ。
まあ、表には出てないが、新しい宰相ともなれば、キシダイン事件で一郎たちが果たした役割は承知しているだろう。
途端に一郎に対する敵意が消えて、顔に柔和そうな表情が浮かびあがる。
「これは、もしかして、宰相のフォックス様でしたか? 知らぬこととはいえ、大変なことをしました。陛下から、分不相応の爵位まで賜りましたが、実は作法も知らぬ冒険者です。どうか水に流してください」
一郎は大袈裟に頭を下げた。
「こちらこそ、知らぬこととはいえ、わけも訊ねずに失礼した。ブライトン家のフォックスだ……。しかし、さすがは、
フォックスは、アネルザがあいだに入ったことで、一転して慇懃な態度になった。しかも、まるで、一郎に媚びるような笑みまでする。
これには、一郎もちょっと驚いた。
また、顔こそ知らなかったものの、一郎のことは知っていたようだ。
そして、「後程、客席で」とアネルザに、丁寧な挨拶をして立ち去っていった。
「ふう、助かったよ、アネルザ。シャングリアの短気で、宰相とひと悶着起きるところだった。他人の前でアネルザが困るんじゃないかと思ったが、あのくらい仲良しのところを見せておかないと、新宰相にどんな目に合わされるかわからんしなあ」
一郎はアネルザに言った。
「なあに、お前になぶられるのは歓迎だ。それに、あの男にそんな根性はない。キシダインの後、イザベラがやりやすいように、人畜無害の男を宰相に据えただけだ」
「人畜無害?」
「そうだ。あの男に対する世間の評価がそれだ。キシダインの頃は、権力を持った相手におもねるくらいしか取り柄がなかったのだ。それでも、キシダインからは無視されておったから、キシダイン派の追放の網にもかからんかった。宰相とはいえ、お前が気にするような男ではないぞ」
アネルザが豪快に笑った。
「剣を向けたことも、あっさりと許してくれたな。さすがはアネルザの神通力だ」
「もともと小心者だ。キシダインと対決したお前と争う気概などない。たまたま機嫌が悪かったのだろう。まあ。あいつも、折角の私財をはたいた闘技会なのに、思惑の外れたことがあって、虫の居所が悪かったのだ。普段はもっと、おおらかな男だぞ」
「思惑が外れた?」
「ああ、そうだ……。いや、そもそも、それは、そなたのせいだったな。ならば、絡まれるのも仕方ないか」
アネルザがさらに笑った。
一郎は首を捻った。
「俺のせい?」
「まあ、続きの話は奥でな。わたしの控え室に来るといい」
アネルザが悪戯っぽく笑う。
まるで、少女のような屈託のないその表情に、一郎は苦笑していまう。
いずれにしても、一郎と関係するようになって、もっとも変化したのはアネルザだと思う。
初めて会ったアネルザは、とにかく、常に不機嫌で、誰彼となく苛ついているという印象だった。
だが、最近では、一郎は、上機嫌に笑っているアネルザしか見たことがない気もする。
「それでは、私はここで……。刻限になれば、声をかけに参ります……。では、ボルグ卿、アネルザ様をよろしくお願いいたします」
アネルザの老家人が声をかけた。
どうやら、一郎をアネルザに引き渡して、ついては来ないようだ。本来、いかなる場合でも王妃と一介の貴族男をふたりきりにしないと思うが、おそらく、あらかじめアネルザに、そういう指示を受けているのだろう。
アネルザはわかったというように手を振り、そのまま一郎たちを控え室に案内し始めた。
この気さくな感じが、本来のアネルザなのだろうとなんとなく思った。
一郎は歩きだした。
シャングリアもついてくる。
「しかし、さっきはすごかったな。ロウの体さばきの見事なこと。お前があんなに素早いとは驚いた。フォックスに、あっという間に剣を突きつけたときなど、横のわたしまでびくついたぞ」
すると、ずっと黙っていたシャングリアが、興奮したように言った。
視線を向けると、顔が上気している。
「なんだ、なんだ? そんなに、こいつがすごかったか、シャングリア?」
アネルザが興味深そうに、振り返った。
「そうだ。まさに、電光石火の早業だったぞ、王妃殿下。殿下にも見て欲しかった。きっと、惚れ直したに違いない」
一郎は苦笑した。
びくついたのは一郎だ。
シャングリアが、相手が宰相とわかっていながら、突っかかったときには、一時はどうなることかと思った。
一郎が宰相に刃物を向けたのも、最悪シャングリアが罪に問われないためだ。武器を向けるまでのことをすれば、シャングリアが宰相の部下に手を出したことなど、どうでもいい小事になる。
「なにを言っている。部屋に入ったら、罰だからな、シャングリア。向こう見ずにもほどがあるぞ。お前の短気で大騒ぎになるところだった。アネルザの家人もいたんだから、大人しくしてれば、収まったんだ」
一郎は怒鳴った。
「えっ?」
シャングリアは困惑した声をあげた。
案の定、深い考えなどなかったのだ。
「とにかく、部屋に着いたらお仕置きだ。覚悟しておけよ」
一郎がそう言うと、シャングリアが「ええっ」と声を出した。
横でアネルザが、声をあげて笑った。
アネルザの部屋の前には、衛兵らしき者はいなかった。
おそらく、事前に追い払ったのだと思う。これも許されないことのような気がするが、アネルザだから許されるのだろう。
一郎は、アネルザの案内で部屋の中に入った。
部屋の中に入ると、かなり広い場所にいくつもの長椅子があり、広いテーブルに果物や肉、また、酒と思われる瓶が並べられていた。
そして、手前の長椅子から、談笑が聞こえてきた。
話し声はミランダだった。
相手は、浅黒い肌をした老いた男だ。
ステータスを覗くと、「興業主」というジョブがあった。
レベルは、“20”だ。
かなりの実力と思っていい。
だが、具合も悪そうだ。
生命力の数値が“10”くらいしかない。人間族の場合、基準値は“50”なので、かなり低い。
病気というよりは、老いだろう。外見でも、そんな感じだ。
「依頼の件はわかった。あとで連絡するわ」
ミランダが言うと、興業主は一礼をして、杖をつきながら部屋を立ち去った。
やはり、かなり足元が弱々しい。
「いまのが、クエストの依頼人か?」
一郎は、ミランダに向かい合うように長椅子に腰かけて言った。
この闘技場で、指名クエストの説明をするというのは、事前に受けていた。だが、王妃の控え室で待っているとは思わなかった。
「まあ、わたしが仲介する依頼でな。あの興行主には昔から世話になったのだ。戦えなくなった闘奴を回してもらったりしてな。だが、近く引退するらしい。それで思い残すことがあって、その解決を冒険者ギルドに依頼してきたというわけだ」
アネルザが口を挟んだ。
「引退?」
「老いだ。闘奴を闘わす興行主としては、もう身体がついていかんとこぼしていたな」
「それで、さっきの老夫の依頼をわたしたちに指名されるというわけだな?」
一郎の隣に腰かけたシャングリアが、横から言った。
すると、ミランダが首を横に振った。
「正確にはわたしたちではないわね。ロウによ。ロウ単独。あなたが断れば、依頼そのものをギルドは断るわ。多分、ほかの誰にも無理だと思うから」
「随分と買いかぶられたものだな。なんだい、俺にしかできない依頼というのは?」
一郎は笑った。
「マーズという女闘奴を知ってる? 新人として二年前に闘奴になってから、どんなに強い相手であっても圧倒的に勝ってしまう、連戦負けなしの有名な闘奴よ」
「知らん。そういうのは疎くてね」
一郎は肩を竦めた。
「だったら、今日のセミイベントを観てて。それにマーズという闘奴少女が登場するわ。さっきまでいた男は、その闘奴を所有している興業主よ。でも、今日の試合は勝つと思う。しかも、圧倒的にね……。それくらいマーズは強いの。依頼の内容は、そのマーズに敗北の味を教えることよ」
一郎は驚愕した。
「冗談言うなよ。闘奴なんかと戦って勝てるわけないだろう。俺をなんだと思ってるんだよ。最低に弱い闘奴でも、俺なんかひと太刀目で首をはねられる」
「剣は遣わないわ。あなたのやり方でいいのよ。相手は闘いが専門の闘奴なんだから、試合のやり方はこっちの言い分にさせる……。素手でやり合えばいいわ。場所も闘技場のような場所でなく、練習場みたいなところでやる……。とにかく、闘技のような状況でそのマーズをやっつけてくれればいいのよ」
「同じことだ。首をはねられる代わりに、首の骨を折られるだけだ」
一郎は呆れて言った。
「お互いに、とどめを刺すのはなしよ。ちゃんと約束させるから」
ミランダが言った。
「ミランダ、いくらなんでも、ロウと無敵の闘奴では話にならん」
シャングリアだ。
「そうかなあ。あたしのロウの評価は高いわよ。相手が闘奴でも、寝技になれば無敵なんじゃない?」
「無敵を気取った覚えはないよ、ミランダ。そもそも、なんで、わざわざ、敗北の味を教えないとならないんだ?」
一郎は訊ねた。
「それが闘奴として一皮剥けるために必要なんだそうよ。負けることを知らない闘奴は、闘いが雑になり、そのうちに、ちょっとした相手にやられて、呆気なく死んでしまう。そういうものなのだそうよ。本当は、興行主自身が時間をかけてマーズにそれを悟らせたいんだけど、引退を決めたことで、その暇がなくなったということよ」
「はあ」
一郎は気のない返事をした。
「普通は下積み時代に、負けの経験を先輩闘奴から植えつけられるものだけど、マーズは強すぎたのよ。闘奴になって新米のときから無敵で、いまもそうよ。あの興業主は何百人もの闘奴を育てている。彼はマーズのような逸材が、そのうちあっさりとやられるのを心配してるのよ」
「知るかよ。俺には勝てんと言ってるんだ。新米時代から負け知らずだと? なおさら、俺が勝てるか」
一郎は吐き捨てるように言った。
「いや、わたしも、ロウなら勝てると思うな。マーズは女だ。女闘奴なのだぞ」
別の椅子に座っているアネルザが口を挟んだ。
視線を向けると、にこにこと笑っている。
「女ねえ……」
一郎は眉をひそめた。
「そう……。美貌の少女闘奴マーズ。屈強な男闘奴を相手にして、負け知らずの無敵を誇っている闘奴界の人気者よ。だけど、あんたなら勝てるんじゃない? 素手の格闘で腰布一枚で戦うのよ……。要は、“世の中には強い者はいくらでもいる。無敵などとんでもない”。それをマーズにわからせればいいんだから」
「あの興業主は、闘いの最中にお前が、マーズの腰布を剥ぎ取るようなことをしても、構わないと言っているぞ。つまりは、そういう闘いなのだ。闘いの場は、そういうことができる場所を整える」
ミランダに続いて、アネルザも言った。
どうやら、闘いにかこつけて、マーズという女闘奴を犯せということのようだ。
確かに、一郎は勝負がセックスなら、負けない気はしないが……。
しかし、相手は戦闘のつもりでくるのだ。
うーん……。
「さっきも言ったが、あの興業主には、以前から戦えなくなった闘奴を性奴隷として回してくれたりして、世話になったのだ。その恩があったので、ミランダを紹介してやったところでな。できれば、力を貸してやってくれ」
アネルザがさらに言った。
そしてアネルザは、もう性奴隷を融通してもらう付き合いはないから、安心しろとも笑った。
「まあいいわ。返事は今日のマーズの試合を観てからでいい。でも、いい返事を期待してるわね、ロウ」
ミランダが立ちあがった。
「なんだ。もっとゆっくりしていかんのか、ミランダ?」
アネルザが声をかけた。
「そうしたいけど、ほかにも用事があるのよ、殿下……。じゃあね……。あんたには、ほかにも指名依頼があるんだけど、まあ、それは次の機会でね」
ミランダは通路に出る扉に向かった。
そして、思い出したよう一郎に振り返った。
「いい忘れていたけど、マーズは生娘よ。十六歳。性にはまったくの
ミランダがにやりと笑った。
そして、部屋の外に出ていった。
十六歳の生娘の女闘奴──。
戦えば、鍛えた熟練の男闘奴でも勝てない無敗の英雄……。
それを格闘にかこつけて、試合中に犯す……。
そして、完全に屈服させる……。
それが今回の依頼か……。
まあいい……。
とにかく、後で考えよう。
それよりも、やるべきことをしよう……。
やりたいことというべきかもしれないが……。
「まあいい……。いずれにしても、まだ時間はあるんだろう? じゃあ、ふたりとも、下だけ脱いで、腰から下はすっぽんぽんになれ。シャングリアはさっきの罰で尻叩き十回だな。アネルザは助けてくれたお礼のセックスだ。早くしろ」
一郎の言葉に、シャングリアとアネルザが顔を真っ赤にした。