【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
一郎は三階の廊下をひとりで進んで、今度は、前もって教えられているアネルザの部屋に向かった。
やはり、アネルザが控え室から出てくるのを待ち構えているような貴族の集団があったが、イザベラのところとは異なり、彼らは控え室の目の前からは追い払われて、距離を取らされている。
その横をすり抜けながら、フードをしたまま進む。
訝しげなたくさんの視線を感じたが、すでに、アネルザの老家人が気を遣って部屋の外で待っていてくれて、護衛の位置からもあっさりと内側に入れた。
フードで顔を隠していたので、それを外すと家人がにっこりと微笑んだ。
にこやかに一郎を部屋に通す。
もちろん、本人はそのまま廊下に留まったままだ。
部屋の中には、アネルザだけでなく、サキも待っていた。
サキは妖魔の姿ではなく、王の寵姫としての人間女の姿である。
「おう、
「この部屋から行くがいい。チャルタもピカロも準備万端のようじゃ」
サキとアネルザが言った。
アネルザには、すでに万が一のことを考えて、王に淫魔術をかけてしまうつもりだと説明している。
王に操り術を仕掛けるなど、この国に対する謀反もいいところだが、アネルザはなにも言わない。ただ、にこにこしているだけだ。
もちろん、サキたち妖魔に異存があるわけじゃなく、特にこれを阻害するものなどなく、あっさりと終わると思う。
チャルタとピカロのふたりには、この三日、一郎の精を溜めさせ続けた。
今朝だって、わざわざ後宮に忍び込み、ふたりを犯して精を注ぎ込んである。
これから、王とサキュバスのふたりは、この就任式の控室で抱き合うことになっている。
そのとき、サキュバスふたりは、一郎から三日間注がれた精を王に舐めさせる。
それを隠れて見守り、一郎がすかさず淫魔師の縛りを刻んでしまうというだけの仕事だ。
万が一にも失敗はないと思う。
ルードルフ王など、支配を刻まれたということさえ気がつかないだろう。
王を守るはずの王宮魔道師長も、昨日のうちに、サキュバスたちがついに支配に置いたと報告を受けたばかりだ。
「言っておくけど、アネルザ、これは、万が一の保険なんだ。別にこの国を取って喰おうというつもりはないんだぞ」
「はいはい、まあ、そういうことにしておこう。“ほけん”というのがどういう意味なのか知らんがな」
アネルザが意味ありげに微笑んだ。
一郎は首を竦めた。
まあいい……。
「それよりも、少しくらいは、チャルタとピカロを待たせてもいいんだろう。なんか、さっきアン殿たちを抱き、ノヴァを抱き、その後、イザベラ姫様とシャーラと侍女たちも抱いて、愛の配達人の気持ちなんだ。よければ、骨を折ってくれたお礼をしたいんだけどね」
一郎は言った。
すると、アネルザとサキがお互いに顔を見合わせて、そして、にっこりと微笑んだ。
「もちろん、主殿の命令であれば、骨を折ることなど当然だが、主殿が愛してくれる機会なら、どんなときでも逃したくはないな」
「サキと並んで犯されるというのも一興だ。愉しみだ」
ふたりが示し合わせていたかのように大きなテーブルに突っ伏して、一郎にお尻を向けてスカートをめくった。
サキを後宮に預けていることから、本来、後宮を管理する役目であるアネルザに労を折ってもらっているのだが、このふたりは気が合うのか、種族の垣根を越えてかなり仲がいい。
いまも、並んで犯されるという状況に、くすくすとお互いに笑って、期待を隠さない。
一郎よりも歳上の女傑だが、こうして抱くときは可愛いふたりだ。
ふたりとも、スカートの下は完全なノーパンだった。
一郎はふたりに近づいていくと、ふたりの腰に左右の手を這わせ始めた。
たちまち、ふたりのふくよかなお尻が淫らに悶え始めた。
最初にどちらにしようかと迷ったが、まずはサキの尻たぶに手をかけた。
ゆっくりとした愛撫を与えて快感を増幅させながら、時折強烈な快感を加えていく。
あっという間に、サキは激しく悶え狂ったようになる。
一郎は下半身を露出させると、おもむろにサキの股間に怒張を挿入した。
「あっ、しゅ、主殿――」
たちまちに、サキが悶え狂った。
女陰にずぶずぶと肉杭を打ち込む。
「おっ、おおっ、好き、これが好き、おっ、おっ、おおうっ」
サキが雌の声をあげる。
律動を続けると、サキはあられもない声をあげ、全身をひくひくとうごめかせながら、サキが一郎の怒張を締めつける。
「ああっ、気持ちいい、主殿……」
サキが身体をくねらせながら絶頂した。
一郎はすぐには許さず、さらにサキを連続絶頂で昇天させてから、精を放った。
「待たせたね、アネルザ」
「それほどでもない。よろしく頼む。そなたの前では、わたしもはしたない女になりそうだ」
腰が抜けたサキから怒張を抜き、すぐにアネルザに向かう。
愛撫するでもなく、アネルザの股間はたっぷりと濡れていた。
すぐ横でいき狂うサキにあてられて快感を燃えあがらせてしまったのだろう。
一郎はすぐにアネルザに挿入した。
サキ同様に後背位だ。
「どうだ、アネルザ、気持ちいいか? 男の側と、女の側のどっちでいきたい?」
一郎は、アネルザの股間を後ろから男根で貫きながら、ゆさゆさとそのふくよかな尻を揺すりあげた。
「も、もちろ……うわっ、はああっ」
一郎に後ろから犯されているアネルザが返事をしようとしたが、そこをすかさず、膣の中でアネルザがもっとも感じる場所を狙って亀頭の先端で突きあげる。
一瞬にして頭が白くなるような快感を送り込まれたアネルザは、満足に言葉を継ぐことができなくなったらしく、その代わりに派手に嬌声を吐き出す。
それと同時に、またもやアネルザの性感値の数値が絶頂に向けて跳ねあがってしまったので、アネルザの股間に生やしているふたなりの男根の根元をぐっと手で締めて射精を阻止するとともに、淫魔術を遣ってアネルザの女の快感を絶頂寸前の状態で寸止めの歯止めをかけてやった。
「ああっ、そ、そんなああっ、こ、これは、あああああっ、やああ、やめてくれ、ロウ殿──」
アネルザがテーブルに突っ伏していた身体を弓なりにして、激しく声をあげた。
十分な快感を得ているにもかかわらず、男側でも女側でも絶頂することができないアネルザは狂乱している。
「おいおい、王妃様……」
しかし、そのあまりの大きな声には、一郎も苦笑してしまった。
一郎が仕掛けているとはいえ、なにしろ、ここは第三神殿に隣接して準備されている王妃アネルザのための控室だが、一郎が記憶する限り、防音の結界などは施していなかったはずだ。
部屋内こそ、一郎とアネルザとサキの三人しかいないが、扉の外にはあの老家人がいるし、アネルザの護衛たちだって、完全に部屋の中を放っているわけじゃないだろう。壁や扉越しに、聞き耳くらいはたて、万が一のことがあれば飛び込んでくるくらいの用心はしているはずだ。
いくらなんでも、派手すぎる。
「主殿のせいではないか……。まあ、だが、気にするな。主殿が王妃の愛人であることは、公然の秘密らしいぞ。むしろ、お主と王妃の関係が広まれば広まるほど、お主の影響力も大きくなるというもののようじゃ。なにしろ、この我が儘王妃を虜にしている愛人殿だからな。だから、多少は問題ない」
ひと足先に一郎と愉しみ、やっと脱力状態から回復してきたらしいサキが横から口を挟んできた。
アネルザに挿入している男根を抽送し、アネルザの股間の中に感じる快楽のもやを強く弱くと擦らせながら、一郎は視線をサキに向ける。
サキは妖魔将軍としての姿ではなく、一郎の言いつけで人間族の絶世の美女に変身し、国王ルードルフの寵姫として後宮に潜り込んでいる。
いつものサキも悪くないが、あの女好きの好色王がのめり込むだけあり、人間族の女の今の見た目は本当に美しい。
しかも、まだ交合の余韻いっぱいの色っぽい表情をしていて、一郎に熱っぽいまなざしをうっとりと向けている姿は、一郎の欲情をさらに刺激する気がした。
たったいま、このサキに精を注いだばかりだが、淫魔師である一郎の性欲はほとんど無尽蔵だ。
この後、スクルズのところに挨拶に行き、そして、神官長の就任式の最中に凌辱をするという約束もあるし、その前に一郎の尻を狙っているかもしれない変態国王を淫魔術で操るための仕掛けをするという作業もある。
忙しいのだ。
だが、もっとサキもアネルザも犯したい──。
その欲望がまたもや頭をもたげてくる。
「そういう国王の寵姫殿が王妃殿下と愛人男が愛し合っている場所に一緒にいてもいいのか? 子爵になりあがった冒険者の俺が好色なのはそろそろ有名になりつつあるしな。サキまで俺の恋人だと勘繰られてしまうんじゃないのか」
一郎はアネルザを犯しながら言った。
「問題あるまい。わしとアネルザは仲がよい。同じ男を相手にするくらいのことは不自然ではない」
サキが言った。
だが、そういう倫理観ではなく、国王の寵姫が別の男と身体の関係があるという噂が立つことが問題になるのではないかと主張しているのだ。
まあ、妖魔に人間族の価値感は通用しないのだろう。
一郎はそれ以上、主張するのはやめた。
それに、身を守るために一郎がやらせていることとはいえ、サキが別の男のものである演技をするのは、気持ちのいいことではない。
一郎の女であるという噂が立つのであれば、それはそれで好ましい気もする。
「ああ、あんっ、あああっ、も、もう、おおっ、ああっ」
一郎はさらにアネルザを責め続けた。
絶頂しそうになっては責めを引きあげ……。
絶頂したとしても淫魔術で寸止めしてそれを許さず……。
それを繰り返す。
アネルザは半狂乱になった。
「あああっ、いぐううっ、いきたいいいっ、ろ、ろうどのお──。も、もう、堪忍──。堪忍じゃああ」
やがて、アネルザの声はますます大きくなり、悲鳴のように部屋に響き渡っている。一郎が腰を引くたびに、必死になって息を吸い、突き入れるたびに絶息するように吐き出すということを繰り返す。恍惚の表情はますます強くなっており、もう自分がどういう状況で、ここがどこであるかなど、まったく知覚できなくなったかのようだ。
もう、いいだろう。
それに、一郎もそろそろ、この王妃に精を吐き出したい。
一郎は寸止め状態だったアネルザの身体を解放してやった。
「ああ、あううううっ」
次の瞬間、最初にふたなりペニスから勢いよく白濁液が飛び出した。
もっとも、男の精液に見えても、実際にはアネルザの愛液だ。
さらに、腰が激しく痙攣をしはじめ、アネルザの身体はテーブルの上で限界まで身体を反り返り、ついにアネルザも女の方でも快楽の頂点を極めていった。
「あああ、おおおおっ、あああっ」
アネルザが絶頂しながら叫んだ。
淫魔術による寸止めを解除したことで、一気に溜まっていた絶頂が何度も繰り返しているのだ。
アネルザは、信じられないくらいに長い時間、絶頂をし続けている状態になった。
「……いくよ」
一郎はこれでもかというほどの力で締めつけるアネルザの股を感じながら、アネルザの子宮に向かって精を弾き飛ばした。
「ああ、い、いいっ、いいっ、いいいいっ──」
反り返ったアネルザの身体がうつ伏せのままがくりと脱力する。
長い長い絶頂状態がやっと途切れたらしい。
アネルザがそのままテーブルからずり落ちそうになったので、一郎は慌てて上から抱きとめて、テーブルに乗せ直した。
「あれっ? ねえ、アネルザ……。王妃様……」
一郎は男根を抜いて、軽くアネルザの頬を叩いて揺さぶったが、寝息のような音を立てるだけで、ほとんど無反応だ。
どうやら、軽く気を失ってしまったらしい。
「やり過ぎじゃ、主殿……。このアネルザは就任式の開始までに、まだまだ会見の予定があるはずだぞ。行列を作って並んでいる連中を強引に待たせて、主殿との時間を作ったのだ。抱き潰してどうする」
サキが笑いながら言った。
「つい、夢中になってね……。でも、行列か……。姫様のところも凄まじかったけど、王妃様も人気者なんだね」
控え室から離されていたが、アネルザのところに並んでいた貴族たちを思い出した。
「王がこのところ政務を顧みんのでな。自然と王太女と王妃に面談の希望が集まる。国王ではなく、王妃が政務を動かしているのがわかっているしな。まあ、最近は、イザベラよりはましのようだが……」
もともと政務嫌いの王だったらしいが、いよいよ政務に目を向けないようになったのは一郎のせいだろう。サキ、チャルタ、ピカロといった性技に優れた妖魔や淫魔を送り込み、彼女たちとの性交のことしか考えられないようにしてやった。
一度、身体を求められてから怖くなり、絶対に一郎に目を向けなくするための処置だ。
政務を蔑ろにさせる意図はなかったが、まあ、その分、王妃や王太女に権力が集まるようなので、一郎としても都合がいいかもしれない。
「アネルザも、このところ政務も真面目にこなしているみたいだね。以前はそうでもなかったはずだけど」
「主殿がいるからだろう。少しでも、お主の立場をよくしようと頑張っておるのだ。健気じゃぞ」
サキが微笑みかけた。
一郎は、そのサキの顔に、ズボンをあげないまま、股間を向ける。
些かの躊躇いも示すことなく、サキは精を放ったばかりの一郎の男根を口に咥えて、舌で掃除を始めた。
「それにしても、最初はどうなることかとも心配したが、人間族の女の姿もなかなか様になっているじゃないか、サキ。後宮生活も大きな粗相をすることもないし、むしろ、美貌の寵姫として評判も高いと聞く。肩苦しい思いもあるだろうが、よくやってくれている。ありがとう」
一郎は、掃除フェラをさせながら、サキの頭を撫ぜる。
遠国の地位のある貴族の娘ということになっているサキだが、妖魔が扮しているとは思えないほど、令嬢としていい評判しか耳に入らない。
清楚で……。
朗らかで……。
少しも高慢な性質のないさばけた気安さがある美貌の令嬢……。
それがサキの評判だ。
誰のことなのだと笑いたくなるが、一流の妖魔なので、人間の王宮に入って、人間族の令嬢のふりをするのも難しいことではないのかもしれない。
それにしてもだ。
考えてみれば、このサキは、妖魔将軍とも称されていて、魔族、妖魔の世界では一目も二目も置かれる存在であり、力の強い眷属を百匹でも二百匹でも集められるらしい。
なによりも、サキ自身が妖力にも長け、膂力にも勝り、さらに空間を操る特殊能力を持っている伝説的な女怪物である。
そのサキを性の力で支配し、ほかの女と性交をした後始末をさせているのだと考えると、改めて、もしかしたら、自分もこの世界にやって来て、それなりの存在になったのではないかと錯覚してしまう。
「主殿の命令だからな……。サキュバスのふたりも、なかなかに愉快な連中だ。愉しくやっておる」
一郎の合図で股間から口を離したサキがにっこりと微笑みかけた。
屈託のない、引き込まれるような笑みだ。
サキほどの妖魔に、こんな表情をさせているのだと思うと、一郎は嬉しくなった。
「これからも、世話になる、サキ。その代わり、いっぱい愛するから。俺のためにな」
「おう、わしはいつでも主殿ために動いておるぞ。それと、いつでも後宮に来い。この王妃や、二匹のサキュバスどもとともに大歓迎する」
そのときだった。
「あ、ああ……ロ、ロウ殿……」
やっと、アネルザが目を覚ましたようだ。
一瞬、状況がわからなかったみたいだが、すぐにはにかんだような表情を浮かべて、服装を整え始める。
だが、股間を布のようなもので拭こうとする仕草を示しだしたので、それはやめさせた。
「股を拭くのは駄目だ、アネルザ。式典のあいだ、俺が注いだ精をしっかりと股に入れたまま参加してもらおう。下着も禁止だよ。股をしっかりと締めつけてね。さもないと、結構注いだから、他人の前で、俺の精が脚に垂れてきても知らないよ」
一郎はアネルザが手に持った布を取りあげて言った。
「ロウ殿は本当に鬼畜だな。わたしは、この後、辺境侯とも会うのだぞ。粗相などあっては、面倒な相手だ。このわたしも気を遣う相手なのに、面談の前に、股も拭かせてもらえぬのか?」
不満そうに言っているが、口元は我慢できないかのように笑みを浮かべている。
一郎の理不尽な命令が満更でもないようだ。
時間が少し経ったところで回復しつつあった「快感値」の数字がまた下がってきたことからも、それがわかる。
あの集めた女奴隷を後宮で嗜虐責めにしていた王妃が、いつの間にか、すっかりとマゾ体質になったものだ。
「……その代わり、いい子だったら、後でご褒美をあげますよ、王妃殿下……」
一郎はお道化た口調でアネルザを顔を自分に向けさせ、アネルザの顎をそっと持った。
唇を重ねる。
「ああ……」
アネルザはまるで少女のように顔を赤くしながらも、重ね合わせている唇を開いて、一郎の舌を迎え入れた。
一郎は、アネルザの口の中の性感帯をしっかりと確認しながら、その口の中を甘く溶け込むように舌で愛撫した。さらに、アネルザの舌全体が性感の集中を示しだしたところで、その舌先を抜き取らんばかりの強さで吸いあげていく。
「あ、ああっ、はああっ」
アネルザが喘ぎ声をあげ、その口の横からひと筋、ふた筋と涎が落ちていくのがわかった。
しばらく、アネルザとの口づけを愉しんでから、一郎はアネルザを解放した。
すると、アネルザは、その途端に全身から力が抜け落ちたようになり、一郎にぐったりと身体を預けさせてきた。
「さすがは主殿だな。そのアネルザも、主殿にかかっては、無垢の少女そのものじゃ。まあ、わしも人のことは言えんが」
サキが笑った。
アネルザはまだ力が入らないのか、一郎の胸に身体を預けて荒い息をしている。
「はあ、はあ、はあ……。き、気持ちよかった……、ロウ殿……」
アネルザが口を開くのもつらそうに、そう言った。
「さあ、その辺境侯とやらに会うんだろう? しっかりしなよ、アネルザ」
一郎はアネルザを立ちあがらせ、サキに合図をした。
少しばかり、予定よりも遅くなったが、これから、この神殿内に準備した秘密の経路を使って、国王の控室の裏側に潜入するのである。
そこでは、一郎の意図を汲んだチャルタとピカロの二匹のサキュバスが、その股間に溜め込んだたっぷりの一郎の精を国王のルードルフに舐めさせているはずである。
王が一郎の精を口にすれば、王を一郎の淫魔術の支配下に置くことができる。
一郎の身体に興味があるらしい、あの変態に対する万が一の場合の処置だ。
この部屋から人気のない場所に隠れて向かう秘密の経路が準備されていて、本来、そこに進むためにこの部屋にやって来たのだ。
サキも立ちあがった。
「ああ、気をつけてな、ロウ殿」
アネルザがだるそうに吐息をつきながら言った。
静まりかけていた性交の余韻が、いまの口づけですっかりと戻って来てしまったらしい。
「そういえば、辺境侯って、誰?」
大して興味もなかったが、部屋を出ていきかけて、何気無く訊ねた。
アネルザのさっきの口ぶりでは、大切な客のように聞こえたのだ。
国王に対してだって、まったく敬意を示さず、気が進まなければ、平気で誰との面談でも、やめてしまうアネルザだ。真面目になったとはいえ、貴族との関係における傍若無人ぶりには、そんなに変化はない。
そのアネルザが気を遣う相手とは珍しいと思った。
だが、一郎の問いに、アネルザはきょとんとした表情になる。
「おい、主殿、辺境侯というのが誰か知らんのか? 呆れたのう」
一郎の横にいるサキが笑った。
「有名な人物なのか?」
「辺境侯は、わたしの父だ。本当にロウ殿は貴族世界に興味がないのだな。だが、わたしの父親も知らんかったとは、ちょっと寂しいのう」
アネルザが笑った。
一郎はさすがに赤面してしまった。
「お、俺にとっては、アネルザはアネルザだ。お前が王妃だから愛するわけじゃないし、権力には興味はない。アネルザはいい女だ。俺にとっては、それで十分なんだ」
慌てて言った。
だが、確かに、何度も身体を合わせている女の係累も承知していないなんて、男としては失礼なことに違いない。
ましてや、どうやら、アネルザの父親は、それなりの大貴族様だったらしい。
承知していて、当然のことのようだ。
「おう、今度はちょっと嬉しいのう……。だが、いつぞやも言ったが、ロウ殿も、すでに子爵の爵位を持ち、陛下自らの推薦で枢機卿に任じられ、さらに、わたしやイザベラにも親しい立派な貴族だ。味方も敵も、まったく知らないでは、いつ足をすくわれるやもしれんぞ。王妃になったことで籍は抜けておるが、わたしは辺境侯であるマルエダ家の長女だ。辺境侯はこの王国にひとつであり、王族の公爵家に継ぐ上位貴族になる。役に立つやもしれんから、覚えておいてくれ」
アネルザが豪快に笑った。