【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「ぐっ」
口の中に血の匂いが拡がる。
ビビアンが自分で口の中の一部を噛み切ったからだ。
なにしろ、ロウに口づけされて、口の中を舌で愛撫された瞬間、痺れるような快感が全身を覆った。
ロウの与える快感は、コゼによる身体の弛緩よりも余程に脅威に感じた。
それで、咄嗟に口を噛み切った。
疼いて熱くなりかけた感覚がまともになる。
「おっと」
ロウはさっとビビアンを離して、路地の壁にビビアンの身体を押しつけるようにした。
口を中を噛み切ったときに、一緒にロウの舌も噛み千切ってやろうかと思ったが、うまく身体を離された。
案外にこっちの動きに敏感だ。
歯の中に隠している解毒剤を歯で破いて飲む。
弛緩していた身体が力を取り戻すのがわかる。
「あれ? 回復した?」
「ロウ様、離れてください──。わたしが対応します」
エリカが剣を抜いて、さっとロウの前に出てくる。
その横では、コゼがビビアンに身構えている。
一瞬ではわからないが、コゼの手の中には、小さな針が幾つか隠れているのがわかる。
おそらく、その先端に塗ってあった毒剤がビビアンの身体を一瞬弛緩させたのだろう。
しかし、ビビアンはこんなときのために、いつも口の中に解毒剤を隠すようにしている。
それが役に立った。
「ちっ」
ビビアンは苛つきに、思わず舌打ちしてしまった。
後手に縛られた指を縄抜けで解こうとするが、なぜかうまくいかないのだ。
仕方なく、後手に両手を拘束されたまま、ビビアンは、エリカとコゼに距離をとるようにじりじりとさがった。
だが、背中は壁だ。
すぐに追い詰められる。
跳躍して逃亡もできるが、ふたりはかなりの猛者だ。
隙も見つからない。
そのとき、ふたりの背後にいるロウがくすくすと笑った。
「縄抜けはできないよ。ビビアンは、その気にならないはずだからね。あなたは俺に捕まりたがっている。なにしろ、前に俺に何度も何度も精を注がれているからね。実のところ、あのとき、あなたに淫魔師の支配をしなかったわけじゃない。ただ、活性化しなかっただけだ。だから、こうして、唾液の呼び水だけで、あなたを操ることもできる」
淫魔師の支配──?
操り――?
なにを馬鹿なと思ったが、ロウの言葉が終わった瞬間に、縄抜けをしようとしていた指がビビアンの意思を裏切るように動かなくなった。
さっきのように薬剤で弛緩をされたというものとは違う。
ビビアンの思考自体がロウへの抵抗をやめたのだ。
自分自身の身体の反応に、ビビアンは驚愕してしまった。
「淫魔師?」
言葉だけは知っている。
精液の力で女を支配するという伝承の存在だ。
だが、淫魔師など、実際には精力自慢の男の自尊の単語であり、本当に精液で女を支配することができる能力など、あり得ないと思っている。
いや、ビビアンだけがそう思うだけじゃなく、それが世間一般の考えだ。
言葉そのものは存在するが、実際には存在してない。
淫魔師とはそういうものだ……。
だが、そんなものが本当に存在する?
しかし、いまのビビアンの身体の反応……。
本当に操られている……?
「信じる必要はないよ。いずれにしても、もう一度愛し合おうよ。ところで、口の中の傷は治しておいたよ。それだけで、すでに俺に支配されているのがわかるんじゃない?」
ロウが顔に笑みを浮かべながら言った。
傷……?
そして、はっとする。
さっき噛み切ったはずの口の痛みがない。
血の味も消えている。
治療した?
魔道も遣えないはずのロウが?
怪我や病気を癒す光魔道は、魔道遣いでも高位技術だ。
「どういうこと?」
ビビアンは当惑した。
「だから、愛し合うのさ。それでわかる。ビビアンも、それを求めているんじゃないかな? 少なくともビビアンの身体はね」
ビビアンは舌打ちした。
あの廃神殿での出逢いのあと、ビビアンは、目の前の女ふたり、さらに、シャングリアという女騎士、そして、いまは第三神殿の神殿長になったスクルズとともに、ロウたちと十日間ほど温泉宿で愛し合った。
あれは、確かに素晴らしい体験だった。
性愛に関しては百戦錬磨のつもりだったビビアンだったが、目の前のロウを前にしては少女も同然だったのを覚えている。
確かに、あのときの快感は身体が忘れさせてもらえない。
このロウの与える快感に我を忘れて、ただただ十日間を愉しんだ。
女間者としての任務を忘れて、ひたすらに肉欲をむさぼる日々はなんと甘美だったことか……。
しかも、このロウの精力は、ほとんど無尽蔵としか思えず、四人もの女を相手に怒張が萎えるということがなかった。
いくらでも女たちの求めに応じて、相手をしてくれるのだ。
ビビアンも夢中になって、ほかの女たちと一緒に、ロウの性器をむさぼったっけ……。
実のところ、あれはすごかった。
しかも、いまでも、あの日々がビビアンにつきまとう。
異様な身体の火照りとともに、ふつふつと、あのときの快感が甦って来ることがあるのだ。
収めようとしても、収められない身体の熱さ……。
これが襲いかかると、ビビアンはどうしようもない疼きに見舞われるのだ。
もしかして、あのときの余韻だろうかなと、最初の頃は思った。
だが、その火照り具合は、日に日に高まっていった。
ほかの男を抱いても満足できない。
ロウはとにかく特別だった。
特別だ。
性愛にかけては、ビビアンがこれまで一度も出逢ったことのない男だ。
本音をいえば、ビビアンの身体は、確かに再びロウに抱かれることを欲している。
しかし、抱かれてしまえば、さすがに存在がばれるし、ロウが王家に関わる人物だとわかった以上、不用意な接触は避けるべきだと自重した
だが、ロウの周りを調べながら、ロウに会わない日々は、狂おしい性の飢餓感として、ビビアンを苦しめもした。
それは事実だ。
だから、ロウが口にした、ビビアンの身体がロウを求めているということについては、否定はできない。
性愛で男に負けたという事実は口惜しくもあるし、いままでの人生で保ってきた自負心と誇りのようなものが崩れるのを目の当たりにするのは、呆然とするものがあったが、もう一度ロウに抱かれたい──。
そう考えているビビアンの一部があるのは事実だ。
しかし、それを口にするわけにはいかない。
「まあ、あんたがいい男なのは、認めるけどね」
とりあえず、ビビアンはそれだけを言った。
そのあいだも、注意深く三人を見ている。
エリカとコゼは、すぐにでもビビアンに飛びかかってこれそうだが、ビビアンとロウが語り始めたので、いまは静観している感じだ。
だが、ビビアンが動けば、躊躇なく飛びかかってくるだろう。
一方で、いまのこの時間は、ビビアンにとってもありがたい。
コゼの毒薬により一時的に弛緩した身体が、歯に隠していた解毒剤を飲むことで回復をしてきている。だんだんと力が戻るのがわかる。
こうなったら、うまくロウを人質に取れればいいのだが……。
エリカもコゼも、ロウを人質に取られれば、絶対に抵抗しない。
そんな予感はある。
このふたりにとって、第一優先はロウだ。
だが、なんの武芸の心得もないようなロウが得体の知れない力を持っているのもわかっている。
さっき冒険者ギルドで、なにもない宙から短銃を出してみせた技や、あのアーサーを衝撃で吹き飛ばした不思議な力……。
ロウは決して油断してはならない男だ。
アーサーの評価は、あの出来事の後である、いまの今でも低いみたいだが、ビビアンはとんでもない凄腕じゃないかと思っている。
「どうせ、逃げられない。諦めて俺に支配されなよ。あんたがタリオの間者であることは、あのときから気がついていた。そのときには、タリオ公国は敵じゃなかったから、気にもしなかったけど、俺の女たちに手を出そうとするなら話は別だ。あんたには、俺に寝返ってもらう。俺の女を守るためだ」
「冗談じゃないよ。ロウには助けられたし、感謝もしている。あんたがいい男だったのは覚えているし、確かにあたしの身体はあんたを忘れてない。でも、これとそれとは別だよ。あたしが寝返る? 笑わせないでよ。それよりも、あんたは、ハロンドール王家にとって、どういう存在? なんで、そんなに影響力があるんだい? 王妃があんたに従うようにも思えるのはなんで?」
ビビアンの調査の限り、王妃アネルザがかなりのところで、ロウに便宜を図っているのは確かだ。
それは単に愛人だということだけでは、異常なほどだ。
また、あのスクルズがロウに惚れ抜いているのは、ビビアンは肌で知っている。
そのスクルズが預かっている第一王女のアンだから、ロウもアンのことは知らない存在でもないのかもしれない。
また、潜入調査で詳しいことまでわからなかったが、少なくとも王太女になったイザベラの侍女たちは、ロウのことをよく知っている気配だ。
だから、もしかしたら、このロウと王太女はそれなりに親しいのではないかとも勘ぐっている。
なにしろ、イザベラが王太女になる契機となったキシダインの起こしたイザベラ襲撃で、イザベラを助けたのはロウたちだ。
ロウはその功績で子爵の地位をもらったのだ。
命の恩人であるロウをイザベラが親しくしないはずはない気がする。
この事件を境にするように、あんなに仲が悪かった王妃とイザベラの関係が、劇的に改善されているが、もしかして、その間に立ったのもロウではないかと、ビビアンは推測している。
まさか、本当に淫魔師としての支配?
「俺たちは仲間だ。愛し合うことで、お互いを裏切ることがない絶対の絆を結ぶ。いまから、ビビアンにも、その絆に加わってもらう」
「だから、そんなことできるわけないと言ったよ。お願いだよ。あんたには恩もあるし、義理もある。争いたくない。いまだって、あまりに不利なことは、アーサーには喋ってない。最小限のことしか、アーサーには報告してないんだ」
事実だ。
あれから、諜報員としては、部下を外されたかたちになり、ひとりハロンドール王国の王都に潜入する命を受けたビビアンは、それを利用して、ロウやその周辺についてそれなりに調べた。
コゼがどうやら逃亡奴隷らしいということも、その調査の中でわかったが、例えば、アーサーには、コゼの気の毒な境遇については説明したが、逃亡奴隷であるということについては隠した。
教えれば、それについても、なにか利用するのではないかと思ったのだ。
「ビビアン、もう一度言うけど、あなたが俺たちの仲間に加わるのは決定事項だ。それで、アーサーがなにを考えているのか教えてもらう。でも、強引に操りたくない。そんなことをすれば、ビビアンの心に何かしらの悪い影響が出る。だから、ビビアンには、望んで仲間に加わって欲しい……。まあ、いずれにしても、屈服してもらう。コゼに意地悪をした仕返しくらいはしないとね」
「意地悪?」
コゼがちょっと首を傾げた。
まるで、なんのことなのか、わからないという仕草だ。
もしかして、さっきのこと覚えていない?
だとしたら、ロウは自分の女にそんなこともできる?
やっぱり、ロウが淫魔師だというのは、本当──?
ならば、これは最大級に重要な情報だ。
この世に淫魔師という者が実際に存在している……。
信じられないが、だんだんと信じる気になってきた。
そもそも、だとすれば、三人の女傑や王妃、高位魔道遣いのスクルズ、おそらく、さっきの態度で予想しているが冒険者ギルドのミランダも、ロウに親しい感情を抱いているということについて、全部説明できる。
女を精の力で支配する淫魔師……。
それがロウ……。
「あんたって、本当に淫魔師?」
ビビアンは言った。
ロウはにっこりと笑った。
その表情に淀みはない。
ビビアンは背に冷たいものが流れるのがわかった。
ならば、自分の中にも、そのロウの支配が入り込んでいるのか……。
それで縄抜けをする意思を失わされた……。
危険だ……。
この男は限りなく危険だ……。
殺さなければ……。
ビビアンの本能がそれを訴える。
仕方がない……。
殺したくはないが……。
両手が封じられていても、こいつを殺す手段はいくらでもある。
ビビアンは脚に力を込めた。
「足技に気をつけろ、ふたりとも……。なにか仕込んでいるかもしれない」
そのとき、ロウがすかさず言った。
ビビアンは息を呑んだ。
「エリカ、全体はあんたに任せるよ。でも、こいつの足技と仕込んでる暗器にはあたしが対応する」
コゼがわずかに前に出た。
ビビアンは身構えた。
針──?
コゼが手に持っている投げ針を飛ばすことを狙っているのはわかる。
「ビビアン、あなたは、おそらく、いまの大公のアーサーに仕えるのを心の底からよしとはしていない……。あなたの心には常に不満がある。それは口にも出していた。だから、俺に寝返ったとしても、自分の心に裏切るわけじゃない。下賤な物言いだけど、すでに身体は屈服している。あとは心がそれに追いつくだけだ。
ロウが言った。
ビビアンは顔をしかめた。
「あたしを説得するつもりなの? あり得ないわよ──」
「説得じゃない。教えているだけだ。その方が楽だということを……。それに、すでにあなたはさっき俺の唾液を吸った。すでに勝負はついている……。膝を折るんだ……」
「えっ?」
ロウが言葉を発した瞬間に、ビビアンの両膝が突然に力を失い、ビビアンはその場に跪くかたちになった。
すかさず、足首に二本の針が飛んで刺さった。
コゼの投げ針だ。
物理的にも足が動かなくなる。
「ご主人様、裸にして武装解除しますか?」
コゼがさっと近づいて、ビビアンの背後に回って襟首を掴む。ビビアンの首には、コゼの持つ小さな刃物の刃が突きつけられた。
エリカはまだ、注意深く、ビビアンに剣を向けて睨んでいる。
さすがに、もう逃げられない……。
ビビアンは悟った。
口の中の解毒剤はもうない。
ビビアンの身体は、再び脱力してしまっている。
「必要ない。もうビビアンは抵抗しない。そうだよね? あなたは俺を傷つけることはできない……」
ロウが近づいてくる。
その言葉をかけられることで、ビビアンはロウに対する敵意がすっと抜けるのがわかった。
心を操る……?
ビビアンはぞっとした。
本物だ……。
恐怖が全身を走り始める。
「怖がらなくて大丈夫よ、エレイン……。いや、ビビアンね。ご主人様は、気持ちよくしてくれるわ……。」
コゼが言った。
しかし、そのコゼも軽口は叩くが、まだ緊張は解いていない。
いまだに用心深くビビアンを見張っている。
一方で、エリカは剣を収めた。
「わたしは、路地の入り口を見張っています。なるべく、早くお願いします。コゼ、任せたわ」
そのままエリカが離れていく。
早く終わる?
なに──?
ロウがエリカに向かって口を開く。
「すぐ終わる。その後はお仕置きだ。ただのお仕置きじゃあ満足しないだろうし、心も折れないだろう。だから、ビビアンには、いままでに体験したことのないような恥辱を準備している。最後にはご褒美だ。お仕置きは、俺たちの仲間になる儀式のようなものだから、悪く思うなよ」
ロウがビビアンの身体を掴む。
コゼがさっと刃物を引く。
後手で指縛りにされている身体を反転させられて、路地の壁側に頭を向かされた。
コゼがビビアンの首と胴体を押さえ、地面に跪いたまま、ビビアンが地面に頭をつけさせられた。
手足の力を抜いている弛緩剤とおそらく、なんらかのロウの暗示の言葉が、ビビアンに抵抗力を失わせる。
ビビアンは、簡単にロウに向かって後ろを向けて、お尻だけを高くあげる格好にされた。
「うわっ、なによ──」
ビビアンは思わず声をあげた。
ロウが後ろから、町娘の恰好のビビアンのスカートを捲りあげて、下着を下に引っ張ったのだ。
両腰を横から持っているロウの手とは別の手が伸びて、その下着を切り去ったのがわかった。
コゼだろう。
「や、やめてっ」
ビビアンは悲鳴をあげた。
やっと、この場で犯されるということがわかったのだ。
身体を犯されるのは苦痛じゃない。
男の身体をむさぼるのは大好きだし、こんな路地のような野外で男と愛し合った経験は数限りなくある。
だが、ロウに精を注がれれば、心を支配される。
それを恐怖したのだ。
「小娘みたいな悲鳴をあげないのよ」
コゼが笑って、ビビアンから切り去った下着を口の中に強引に押し込んできた。
さらに、素早く革紐のようなものを口に咥えさせられて、布が口から出せないようにされる。
「んんんっ」
ビビアンは地面につけている顔をのけ反らせた。
服の上からだが、ロウが片手でビビアンの胸の膨らみを交互に愛撫し始めたのだ。
「んんうっ」
やっぱりロウの手はすごい。
耐えようしても耐えきれない鋭い愉悦が瞬時に襲いかかってきた。
服の上からちょっと触れられただけでこれなら、直接に触られたらどうなるのか──?
いまさらながら、ビビアンはロウとの性愛の怖さを思い出してきた。
ロウがビビアンの胸を揉みながら、お尻の亀裂に舌を這わせる。
「んひいっ」
あまりもの甘美さと衝撃に、ビビアンは地面方向に落としている上体をぴんと反らして、悲鳴をあげた。
さらに、次々に快感を注ぎ込まれる。
「んぐうっ」
ビビアンは喉の奥で呻かずにはいられなかった。
ロウの舌がお尻を這い回る。
片手が股間に伸びる。
さらに胸の愛撫……。
峻烈な衝撃が次々にビビアンを撃ち抜く。
「んんっ、んんんっ、んんっ」
快感が全身を駆けまわる。
支配される──。
それがわかった。
だが、それもいいかと思うほどに、体内に込みあがる欲情のうねりは甚大だ。
身体がどんどん燃えあがる。
いま、どんな状況で、ここがどこであるかということもわからなくなる。
思考が溶けていく。
それとともに、すべての対抗心が快感の中に消えていく。
気持ちいい――。
耐えられない。
もう、どうでもいい……。
これがあればいい……。
ビビアンはそう思い始めてきた。
そして、ロウの舌がお尻の穴に強引にねじ込まれてきた。
「んああああああっ」
深い芳烈なまでの歓喜に、ビビアンは我を忘れた。
一気に快感が飛翔して、絶頂を迎えそうになる。
だが、すっとロウの愛撫が一瞬とまる。
絶頂が遠のき、ビビアンは焦燥感で狂いそうになった。
「んぐううっ」
ビビアンはおねだりをするように腰を振った。
もしも、手足が自由だったら、ビビアンは強引にロウを抱き倒して、すぐにでも怒張を股間に貫かせて快感をむさぼったに違いない。
だが、いまは手足が弛緩され、コゼがビビアンの身体を押さえてもいる。
ロウから与えられるものしか得られない。
それがもどかしい──。
「んっ、んんっ、んんっ」
欲しい──。
身体に潜む性感のすべてがロウを求めている。
本当になにもかもどうでもよくなった。
このまま欲情に支配されて、快感を極め続けたい。
そう思った。
すると、ロウが後ろで笑った気がした。
「いきますね」
ロウが頭をビビアンのお尻側からあげて、体勢を変えるのがわかった。
次の瞬間、ビビアンの尻たぶの下にロウの怒張が当たるのを感じた。
そのまま、一気に股間に突きたててくる。
「んふううううっ」
声は出せないが、ロウの怒張が入ってくるあまりの衝撃に、燃えさかっていた欲情という欲情が全身を歓喜させる。
次に深々と身体を貫く怒張がすっと引かれる。
「んあああ」
ビビアンは全身をがくがくと震わせた、
ただ、貫くだけでもビビアンを追い詰めた怒張がいよいよ抽送を開始したのだ。
二度、三度と律動が繰り返させる。
股間からとめどない愛液が迸るのがわかる。
全身の震えがとまらない。
早くもビビアンは、またもや絶頂を迎えようとした。
「んはあっ、んふううっ、ふっ、んふうう」
猿ぐつわをされて声が出せないのがもどかしいほどに、ロウに与えられる歓喜は峻烈だ。
もういいや……。
ビビアンに諦めのような感情が込みあがる。
こんなに気持ちいいのだ。
それに、ロウの周りの女たちは誰も彼も幸せそうだ。
あの中にビビアンも加わる──?
もしかしたら、悪くない……?
いや、まったくもって悪くないか……。
あのアーサーに仕えるよりも、ロウたちに与する方が遥かに愉しいに決まっている。
どうして逡巡をしていたのか、わからなくなってきた。
どちらをビビアンが真に求めているかなど、自明の理のはずなのに──。
「ビビアン、あなたを奪います──。アーサーの手元から……」
ロウが激しく怒張を抜き挿ししながら静かに言った。
ビビアンは誰の者でもない──。
ましてや、アーサーのものじゃない。
奪うも、奪われるもない。
ビビアンがアーサーに仕えるのは、アーサーの前の大公のときからのしがらみであり、前の大公には世話になっていて、愛人でもあったし、それで……。
「んあああっ」
思念を吹き飛ばさせるような大きな愉悦が五体を貫いた。
しかも、さらに律動を受けて、その愉悦を上回る新しい快感が送り込まれる。
そして、それさえも上回る次の大きな快感が──。
「んんんあああ──」
すべての官能という官能が燃えたつような歓喜のうねりに襲われて、ビビアンは絶頂を迎えた。
ビビアンの全身に快感を極めた衝撃が貫き、精を胎内に放たれたと思った。
ロウの怒張が少し大きくなり、精の迸りが子宮に近いところに、どくとく当たっているのをはっきりと感じたのだ。
ロウに支配された──。
今度こそわかった。
いや、すでに支配されていたのだ。
ただ、それを自覚させられただけだ。
なんとか抵抗しようとしたのが可笑しくなる。
ビビアンは猿ぐつわをされたままくすくすと笑ってしまった。
「なにが可笑しいの?」
コゼがビビアンの口から布を取り去った。
「なにも……可笑しく……ないか……。あーあ、支配されたんだなあと思ってね」
ビビアンは言った。
だが、はっとした。
急に冷たいものがお尻の中に注ぎ込まれてきたからだ。
なんだ──?
「逃げられないよ……。絶対に……」
咄嗟に逃げようとしたが、ロウの言葉で、なにかの力が心に加わり、一切の抵抗心を奪われる。
ビビアンは動けなくなってしまった。
そのあいだも、液体のようなものが注がれる感触は続いている。
やがて、やっとそれが終わり、いつの間にか差し込まれていたらしい管のようなものが抜かれるのがわかった。
しかし、すぐに次の管が差し込まれる。
「な、なにをしているのよ、ロウ──。ちょ、ちょっと──」
ビビアンは懸命に後ろ側に顔を向けた。
ロウがビビアンのお尻に頭の大きさほどの袋を当てている。それをロウが搾って中身をビビアンに注ぎ込んでいるのだ。
もしかして、浣腸袋──?
ビビアンも性愛については百戦錬磨を自負しているので、そういう変態的な性の遊びも知らないことはない。
無論、自分がそれをされたことはないが……。
ロウがビビアンのお尻の中に注いでいるのは、その袋に入っていた浣腸液に間違いない。
ふと見ると、すでに空になっている浣腸袋が横に落ちている。
浣腸をされたということが信じられなかったが、それが事実であることを、すぐに圧迫してきた便意と下腹部に一気に迫った鈍痛によって、ビビアンに悟らせる。
「な、なにすんのよ──」
ビビアンはロウに振り返って怒鳴ったが、そのままロウに腕をとられて、強引に立ちあがらされた。
ロウは、数個のうずらの卵のような物体を手に持っている。
なにかわからずに、ビビアンは首を傾げた。
だが、それよりも、急激に襲ってきた便意に、ビビアンは顔をしかめた。
厠に……。
だが、周りにすぐに駆けこめるような厠はない。
それよりも、いまだに後手を指縛りされたままだ。
おそらく、ロウはこれを解くという意思を失わせる暗示をビビアンにかけたままなのだろう。
ビビアンには、縄抜けとしようという意思が湧き起こらない。
「ビビアン、さっきも言ったけど、これから俺たちの仲間になる洗礼だ。それに、アーサーのことは気に入らないし、そのアーサーに俺たちのことを喋ったのはビビアンなんだろう。だから、罰は受けないとね」
「罰?」
ビビアンはロウを睨んだが、すると街娘の装束の下から、すっと胸に向かって手を差し込まれた。
「あっ」
ビビアンは思わず身体を崩しかけた。
ロウの指が乳首に触れたのだ。
この男の愛撫は本当に神がかりだ。
ただ触れるだけで、信じられない愉悦が襲いかかる。
だが、いまは……。
ビビアンは必死にお尻を締めつけた。
「な、なに?」
ロウの手はすぐに出ていったが、乳首に違和感がある。
さっきの異物を両乳首に貼りつけられたというのはすぐにわかった。
なにかの粘性物も付着してあったのだろう。
ぴったりとなにかが乳首にくっついている。
「右に曲がるときには右の乳首が振動する。そうしたら、右に進む……。左が振動したら左に向かうんだ」
ロウが言った。
次の瞬間、右の乳首に貼りついた異物が急に振動をした。
「いやっ」
ビビアンは悲鳴をあげた。
だが、一瞬後にまるで小娘のような声をあげたことに、ビビアンは赤面してしまった。
すぐに振動はとまったが、ロウはにこにこしている。
ビビアンは歯噛みした。
「と、とにかく、な、なに、くだらないことをさせようと……」
ビビアンはロウに悪態を突こうとしたが、はっとして身体を硬直させてしまった。
ロウの身体が屈んで、スカートの中に手を入れてきたのだ。
「あなたは、粋な女性だからね。仲間になる洗礼の遊びも、粋なものにしたよ」
「なにが粋よ――。ふざけないで」
ビビアンは怒鳴ったが、やっぱり、ロウの悪戯を振りほどけない。
股間に異物を貼り付けられて、スカートから手が抜かれる。
「そのまま、前に進むときには、股の玩具が動く。そのときは、そのまま前に進んでいく」
「ちょ、ちょっと──」
身体を捩じって避けようとしたが、ロウだけじゃなく、コゼにも身体を掴まれて阻まれる。
普通なら、たとえ後手に縛られていても、ビビアンだったら、いくらでも逃げようもあるのだが、どうしても抵抗できない。
淫魔師だというロウに支配されたことで、抵抗する心を奪われたのだ。
ロウは本物だ――。
「試してみるか?」
クリトリスに違和感がある。
やっとわかったが、おそらく、さっき手に持っていたうずらの卵状の小さな物体だ。それを粘性体のようなものを使って、股間にも両乳首にも貼りつけたのだ。
「おうっ」
股間から沸き起こった衝撃に、ビビアンは膝を折った。
その瞬間、お尻から排便を漏らしそうになり、顔を蒼くしてしまった。懸命に耐える。
この振動もすぐにとまる。
「じゃあ、玩具の誘導に従って歩いてきてくれ。俺の許可なく、ほかの厠に行けない暗示を与えておくよ。それと、誰にも助けを求められない暗示もね。指を縛られていても、俺以外には抵抗もできるだろうから、変な男がいたら、容赦なく倒せばいい。ただし、街中で洩らさないように気をつけてね」
ロウがビビアンから身体を離す。
ビビアンはびっくりした。
まさか、このまま放置して立ち去ろうとしている?
「ま、待ちなさいよ──。どこにいくのよ──」
ビビアンは怒鳴った。
こうしているあいだも、下半身を駆け巡る便意に襲われ続けている。
「ある場所で、ビビアンを待ってるよ。普通に歩けば、半ノスもかからない。なんとか辿り着けば、厠で排便をさせてあげる。間に合わなければ、そこら辺で垂れ流すしかないね。隠れてしようという狡いのはだめだよ。それもできない暗示を与えとく」
またもや、なにかの力が頭に加わるのがわかった。
まさか、ロウが口にしたとおりの暗示をかけられたのか?
ビビアンはぞっとした。
「じゃあね、ビビアン──。淫具が教える場所で待っている。これが、あなたへの罰と仕返しだ。それじゃあ健闘を祈るよ」
ロウが離れていく。
ビビアンは唖然とした。
「健闘じゃなくて、奮闘かもね」
コゼも笑いながらロウについていく。
「ま、待ちなさい──」
ビビアンは急いで追いかけようとした。
だが、股間と右の乳首に急に振動が発生して、ビビアンはがくりと身体をその場で折り曲げた。
「ああっ、いやあっ」
ビビアンは必死にお尻を締めつけた。
お尻を内側から圧迫する力に、その場に崩れそうになった。
そのあいだに、ロウもコゼも、路地から見えなくなる。多分、さっきエリカが向かった方向だ。
右乳首と股間の玩具はいまでも小さな振動を続けている。
右に進めということ……?
しかし、ロウたちがいなくなった方向とは反対側だ。
「あっ、くっ」
振動が強くなる。
ビビアンは仕方なく、右方向に身体を向けて歩み出した。
右に進むと、振動がなくなった。
とりあえず、ほっとする。
だが、振動で誘導するということは、なんらかの手段でビビアンを見張っているということだろうか……?
どこかで見ている?
しかし、最早なんの気配もない。
そもそも、いまでも逆らおうとする気持ちが生まれてこない。
ロウたちを追いかけるのは無理だ。
ビビアンは屈辱に震えながら、お尻に全ての力を集めて、ふらつく足どりのままで、歩き始めた。