【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「はがあああっ」
エリカが十度目の電撃でまたもや、ひっくり返った。
抵抗感を抱くと自動的に電撃が発するようになっている首輪の魔道具だ。
ゼノビアは呆れてしまった。
ねちねちといたぶりながら、このエルフ女を自ら素裸にさせるつもりなのだが、なかなかに頑なで、結局まだスカートと靴を脱いだだけだ。
その間に、十度も電撃でのたうち回ったということは、十回、ゼノビアに襲いかかろうとしたということだろう。
普通ならば、どんなに繰り返しても、三回で心が萎える。
余程に気が強いに違いない。
もう一度、水を飲ませてもいいが、それでは、エリカに恥をかかせることにはならない。
依頼は、まずはエリカに恥辱を与えることなのだ。
エルフ族はプライドが高い。
そのプライドを徹底的にへし折る。
それが、「依頼人」であるシズの第一の望みであり、シズを裏切ったエリカへの懲罰なのだ。
そして、最終的には、エルフ族の「死」を贈る。
だが、なかなか骨が折れそうだ。
ゼノビアはやり方を変えることにした。
魔道通信で隣室に待機して、この部屋の様子を眺めているはずの彼女に、こっちに来る準備をするように伝えた。
「無様ね、エリカ。いい加減に抵抗が無駄なことを悟りなさいよ。そんなに、下着を脱ぐのが嫌なの? いいわ。じゃあ、上を先にしましょう。脱いで」
ゼノビアは魔道の紐を出現させると、呻き声をあげるだけで、うつ伏せに倒れたまま動かないエリカの首輪に、その魔道の紐を繋げた。
白く光る紐が首輪と密着する。
光の紐の反対側は天井だ。
紐を短くして、無理矢理立たせる。
「んぐううっ」
引き上がる紐で首が締まるかたちになったエリカが、両手で首輪を掴んで立つ。
しかし、首輪はぴったりとエリカの首に密着しているので、指を入れる隙間などない。
ゼノビアは、わざと嘲笑してやった。
「一度、首でぶら下がってみる? そうすれば、裸になる気になるかもね」
「ふ、ふざけるな……。も、目的を言いなさいよ……。あ、あんたの……依頼人は誰よ……?」
エリカが息も絶え絶えに言った。
水責めと繰り返された電撃で、エリカの体力はかなり奪われている。
健脚を誇るエルフ族のエリカも、もうふらふらだ。
ゼノビアは、エリカの問いには返事をせずに、首に繋がっている魔道紐をさらに短くする。
天井に繋がる紐が吊り上がっていく。
「ひぎいいっ」
エリカの足が爪先立ちになって、背がぴんと伸びた。
部屋に呻き声が迸った。
「服を素直に脱ぐ気になったら言いなさい。紐を緩めてあげるから」
魔道紐がさらに短くなった。
ついに、エリカの足は完全に宙に浮いた。
「んぐううっ、ぬぐうっ。脱ぐうっ」
エルフが絶叫した。
ゼノビアは紐を緩めた。
エリカの足が再び床につく。
「はあ、はあ、はあ……」
エリカが荒い息をしながらも、こっちをすごい形相で睨んだ。
「はぎゃあああ」
次の瞬間、またもや電撃でエリカが全身をのけ反らせる。
十一回目か……。
敵意を持つなと諭されても、どうしても無意識に、ゼノビアに反意を抱いてしまうのだろう。
ただ、これでは埒があかない。
ゼノビアは一旦、首輪から電撃が流れる仕掛けを魔道で解除した。
「ほら、ほら、立って、服を脱ぐのよ」
ゼノビアは椅子に座ったまま、杖を向ける。
エリカが顔をさっと蒼ざめた。
さすがに、恐怖の色が顔に出ている。
やっと、エリカが上衣に指をかけた。
脱いだ服がエリカの足下に落ちる。
続いて、中衣も脱がせ、エリカは胸を包む胸当てと腰の小さな下着だけになった。
「次は下着ね。その前に、脱いだものを蹴って、こっちにやるのよ」
エリカが脱いだ上衣とスカートがエリカの足元にあったのたが、ゼノビアはそれを蹴らせた。
寄ってきた衣類を魔道の杖で燃やして、一瞬で灰にしてやる。
脱いだものを燃やされるという屈辱で、エリカの顔が歪んだ。
しかし、さすがに悪態をつくのは自重したようだ。
エリカは口惜しそうに、歯噛みしただけだった。
そのとき、背後の扉がとんとんと向こう側から叩かれた。
準備ができたようだ。
ゼノビアは入ってくるように声を返す。
エリカが怪訝な表情になった。
「コゼ──」
入ってきた女の姿に、エリカが悲鳴をあげた。
外からやって来た人物は、後手にした両手首と足首に革枷を嵌めたコゼの姿だ。
「……エ、エリカ……」
彼女は口を開くのもやっとという感じで、荒い息をしながら言った。
ちゃんと服は着ているが、まるで拷問を受けたことが明らかであるかのように、あちらこちらが破けている。
しかも、顔色は悪く、顔全体に赤い発疹がある。
すべて、ゼノビアがやったことだ。
「コゼ、あんた、なにをされたの? 顔の発疹はなによ──」
首輪に繋がった魔道紐で立たされているエリカが絶叫した。
エリカの視線は真っ直ぐにコゼを見ている。
そのコゼは、後手に拘束され、足枷同士が短い鎖で繋がっていて、よちよち歩きしかできないという哀れな姿だ。
「わ、わかんない……。し、神殿に向かおうとしたら、突然、大勢の集団に捕まって……。気がついたら、ここに……」
「大勢の集団?」
エリカは戸惑っている。
おそらく、エリカは、自分を捕らえたのは、ゼノビアともうひとりの女くらいの少数だと考えていたはずだ。
実際にエリカをいたぶっているのが、ゼノビアだけだったことからも、そんな印象を抱いていたと思う。
それなのに、コゼがほかにも仲間がいるという言及をしたので驚いたようだ。
これでいい……。
正体不明の敵に対しては、大きな恐怖感が募る。
どんなことでも、エリカを追い詰める材料になってくれれば、それでいい。
コゼの出現も半分はそれが目的だ。
人質としての価値は未知数だったが、顔色を変えているエリカの姿を観察する限り、コゼを「人質」にすれば、エリカは従いそうだ。
やはり、大切な仲間なのだろう。
ゼノビアはよちよちと歩いてきた彼女の襟首をむんずと掴んで、ゼノビアの腰かける椅子の下に引き倒すようにして、無理矢理に腰を落とさせた。
その首に、わざとエリカに見えるように懐から出した針を近づける。
「も、もう……やめて……」
泣きそうなコゼの声だ。
しかし、抵抗はない。
ちくりと針先を首の横に刺した。
「う、うううっ」
ぶるぶると苦しそうに震え出したコゼの姿に、エリカが顔色を変えた。
「なにをしたのよ──。答えなさい、ゼノビア──」
エリカが血相を変えた。
「なんてことないわ。ただの致死性の毒針を刺しただけよ。抵抗できなくするために少しずつ毒を与えているのよ。コゼの顔の発疹はそのためよ」
ゼノビアは言った。
エリカがさらに顔を蒼くした。
「お、お願い……。も、もう解毒剤を……。手遅れになるわ……」
足元から怯えきったコゼの声がした。
本当に哀れそうな口調だ。
ゼノビアは嘲笑で返す。
「エリカに言うのね、コゼ……。あんたを殺すことは依頼にはないし、たまたま、エリカと一緒にいたから捕まえただけだから、解毒剤を打って助けてもいいわ。ただし、そのエリカが素直に素っ裸になったらね」
「解毒剤? 解毒剤があるのね? だったらコゼにそれを……」
エリカが怒鳴った。
ゼノビアは、思い切り床を足で踏んで大きな音を鳴らした。
「素っ裸になれと命令してるでしょう、エリカ──。さもないと、友達は死ぬわ。このままだと、残り一刻というところね。それまでに解毒剤を打たないと確実にコゼは死ぬわ。この女が死ぬのは、お前のせいよ──」
ゼノビアは怒鳴り返した。
エリカが顔を引きつらせて絶句する。
「エリカ……、助けてよ……」
足元で声がする。
コゼだ。
しかし、実際には、彼女の声の響きからは、彼女の複雑な感情が見え隠れしている。
少なくとも、ゼノビアにはそれがわかった。
「コ、コゼに解毒剤を打つのよ。約束よ」
エリカが憤然とした様子で胸当ての紐に手をかけた。
普段は締めつけて戦闘などの邪魔にならないようにしている豊かそうな乳房が、胸当てを外すことであらわになり、存在を主張するようにぶるりと揺れる。
「あらっ、ちょっと待ちなさい。手をどけて」
ゼノビアは大きな声をあげた。
エリカがさっと両手で隠したので、よく見えなかったが乳首の先に金属のようなものがあったように見えたのだ。
エリカは面白いくらいに顔を真っ赤にしたが、すぐに諦めたように乳房から手を外した。
果たして、エリカの両乳首には、きらきらと光る宝石が埋め込まれた小さな金属の輪っかが嵌め込まれていた。
ゼノビアは呆気にとられて、少しのあいだエリカの裸身に見入ってしまった。
そして、はっとした。
「下よ。下も脱ぎなさい。コゼを助けたければね」
「くっ」
エリカは口惜しそうにしたが、素直に最後の一枚も床に放った。
ゼノビアはすかさず、下着類を魔道で燃やす。
これで、このエリカには身につける衣類はなくなった。
この部屋には、布切れ一枚存在しない。
勝手に逃げようにも、逃げることもできなくなったはずだ。
改めて、エリカの裸身を眺める。
「へえ……」
ゼノビアは声を出していた。
金属の輪っかは、股間にも嵌められていた。
エルフ族特有の完璧に美しい裸身に装着された乳首と股間の宝石付きの金属は、妙にいやらしくて、そして、扇情的だった。
気は怖ろしく強く、正確もお転婆なのはすでにわかったが、とにかく外見は美しい。しかも、美しいだけでなく、すごく色っぽいのだ。
女のゼノビアから見ても……、いや、女が嗜好のゼノビアにとっては、素晴らしい獲物だ。
ゼノビアは笑うよりも、ちょっと欲情してしまった。
「早くコゼに解毒剤をしなさい──」
エリカが怒鳴った。
それで、ゼノビアはいまは、エリカに恥辱を与える作業の最中であることを思い出した。
とりあえず、エリカの首輪に繋がっている魔道の紐を消す。
「それを履きなさい。履けば魔道がかかって外れなくなるわ」
次いでゼノビアは、ひと組の靴を魔道で出現させた。
ただの靴じゃない。
踵の部分に棒状の高い踵がついていて、それを履けば、つま先立ちの不自然な格好でしか歩けなくなり、大抵の者は満足に歩くこともできなくなる。
しかも、長い踵の下の棒状の部位は、左右で微妙に長さが違っていて、バランスがおかしくなるようにも細工をしている。
それを見たエリカが怪訝な表情になった。
「な、なによ、これ。それよりも、コゼに解毒剤を……」
「あんた次第ね。解毒剤は打つわ。あんたがちょっとした遊戯に応じたらね」
「遊戯? なんの遊戯よ?」
エリカが顔に怒りを浮かべたのがわかった。
「なんだって、いいでしょう。早くその靴を履くのよ。こうやって、喋っているあいだも、刻一刻とコゼは死に近づいているわよ」
ゼノビアはわざと酷薄そうに言った。
「エリカ、お願い……。助けて……」
そのとき、苦しそうにコゼが呻いた。
エリカがはっとしたような表情になる。
そして、覚悟したように靴を履いた。
ゼノビアはその様子を眺めて、コゼを出したのはいい判断だと思った。
エリカは余程に、このコゼを殺したくはないようだ。
このまま、コゼを人質にしておけば、どんなことでも言うことを聞きそうだ。
「は、履いたわ……。きゃあっ」
エリカは一度立ちあがったが、あまりに不自然な体勢だったので、すぐにひっくり返りそうになった。しかし、足を踏ん張って、辛うじてそれに耐える。
さすがは戦闘種族のエルフ族であろう。
ゼノビアは感心した。
「部屋の隅に丸太ん棒があるでしょう。それを肩に乗せなさい。両手は横に拡げて、しっかりと取っ手を握るのよ」
部屋の隅には、あらかじめ準備してある丸太ん棒がある。
長さはエリカの身長ほどであり、太さはエリカの二人分というところだ。
おそらく、人間族の女では持ち上げることは不可能だろう。
エルフ族でも、かなりつらいはずだ。
エルフは、歯噛みをするような顔になりながらも、やっぱり大人しく丸太を抱えた。
「くっ、うう……」
エリカは呻きながらも、自分の身体の数倍もある丸太を肩に乗せて抱えあげた。
両手は命じたとおり、水平に左右に伸ばして、丸太に添わせるようにして、金具を握っている。
ゼノビアは魔道を跳ばして、丸太についている金具ごとエリカの手首から先を丸太に埋め込んだ。
これでエリカは丸太を離せない。
「なっ──?」
エリカが驚いて絶句した。
「部屋の隅をぐるぐる回りなさい。とりあえず、五周よ」
ゼノビアは砂時計を出して、手すりの上にひっくり返して置いた。
「な、なによ、それ」
エリカが怒鳴った。
だが、苦しそうだ。
膝が早くもがくがくと震えているし、全身から汗が吹き出してきて、前屈みの身体の下にぽたぽたと落ち始めている。
「言ったでしょう。ただの遊戯よ。条件を達成すれば、コゼに解毒剤を打つわ。早く始めた方がいいんじゃない。砂時計はもう動いているわ。砂が落ちきる前に、回り終わらないとならないんだからね」
ゼノビアは笑った。
エリカはぎょっとした顔になる。
しかし、一度弱々しく息をしているコゼに目をやってから、諦めたように歩きだした。
だが、さすがにつらいようだ。
しかも、特殊な靴を履かされていて、まともに歩くことも、ままならないのである。
さらに、苛酷な水責めと電撃で、体力は根こそぎ奪ってもいる。
エリカは汗だくになりながら、必死で部屋を五周回り終わったものの、砂時計は三周目の途中で砂を落とし終わっていた。
「全然、駄目じゃない。お前の頑張り次第で、コゼが生きるも死ぬも決まるのよ。お前の頑張りはその程度? もう一度やりなさい。遊戯に失敗するごとに、コゼに致死性の毒を追加するからね。すでに結構毒を注入してるし、何針目で死ぬかしら」
ゼノビアは笑いながら、コゼの首に毒針をすっと突き刺した。
「やめてえっ」
エリカがすさまじい声で絶叫した。
*
「仲間を救いたいという気合が足りないようね。お前には、これをサービスしてやるわ。いやなら、抵抗してみなさい。コゼは死ぬだろうけどね」
ゼノビアが近づいて来た。
いつの間にか、手に小壺を持っている。
その中には刺激臭のする油剤が入っていた。それが、ゼノビアの手によって、秘裂に塗り込められ、さらにお尻の穴や乳首にもたっぷりと塗られる。
「くっ」
そのあいだも、エリカの背骨と腰は重い丸太がのしかかって、いまにも崩れそうな重圧をかけ続けられていた。
一瞬でも気を抜くとたちまちに倒れてしまいそうな重さだ。
しかし、一度倒れてしまうと、絶対に立てない。
エリカはそう思って、足を踏ん張り続ける。
だから、ゼノビアがどんなにいやらしく指を動かしても、ほんの少しもそれを抵抗することができない。
「ふらつくんじゃないわよ。まだ、これで終わりじゃないからね」
ゼノビアがしつこいくらいに、局部と乳首に薬剤を揉みあげては、こね回す。
この女がエリカに興味があるわけではなく、エリカにいやらしい声を出させて侮蔑するのが目的であるのは明らかだ。
エリカは、必死になって歯を食い縛って、口から喘ぎ声が洩れそうになるのを耐えた。
だが、ゼノビアはかなり愛撫上手だった。
女の身体を燃えあがらせるのは、随分と得意な感じだ。
慣れた手つきで、エリカの粘膜や胸をなぞってきて、エリカはたちまちに快感を引き起こされた。
「う、うう……く、んん……」
食い縛った歯から、どうしても声が洩れ出てしまう。
そもそも、掻痒剤が塗られた場所から急激に猛烈な痒みが拡がってくるのだ。
それを愛撫により癒される気持ちよさは、耐えようと思っても我慢できるものではない。
「ほら、これがいいんじゃないの?」
ゼノビアがいままでわざとらしく触れなかった三個のピアスに代わる代わる刺激を与え出す。
「ああっ、いやっ、はんんっ」
エリカは衝撃で倒れそうになるのを懸命に足を踏ん張って耐える。
ゼノビアが嘲笑った。
「ちゃんと真っ直ぐに立つんだよ、エルフ女。どんな気分か言ってごらんよ。エルフ族は誇り高い種族と言われているんでしょう? それがこんな歩きにくい踵の高い靴を履かされて、素っ裸で丸太を担いで、何度も何度も、やり直しで歩かされるのはどんな気持ちなの?」
「コ、コゼに解毒剤を……う、打って……。くっ……うう……。あ、あんたの狙いは、わたしなんでしょう……?」
エリカは返事の代わりに言った。
椅子のところでうずくまっているコゼは、すでにぐったりとしていて、かなり呼吸が荒い。
肌の露出している顔や首には、赤い発疹が浮かびあがっていて、得体の知れない毒を注入されているのは間違いないと思った。
「あたしは、どういう気持ちか言えって、命令しているのよ。それとも、コゼを殺そうかしら」
ゼノビアは、さっと指から小さな針を出した。
それを持って、つかつかとコゼのいる方向に戻っていく。
「み、惨めで、恥ずかしいわよ──」
エリカは慌てて言った。
ゼノビアが振り返って、満足そうに微笑んだ。
「そうでしょうね、まともなエルフ族なら、耐えきれないくらいに惨めで恥ずかしいことだと思うわ。でも、足りないわね……。エルフ族のあんたに、とても耐えられない恥辱と死をもっと与えないとね……」
ゼノビアはそう言って、椅子までいって座り直した。
だが、足元で荒い息をしているコゼには、手はかけなかった。
とりあえず、エリカはほっとした。
それにしても、まるで誰かに伝えているような物言いだった。
依頼を受けて、エリカに復讐をしているという意味のことを口にしていたし、このゼノビアを雇った者は、どこかでこの光景を眺めているのだろうか……?
エリカは訝しんだ。
「やり直しよ。気合を入れてやったんだから六周ね」
ゼノビアが椅子の手すりの砂時計をひっくり返す。
エリカは、仕方なく、重い脚を引きずるようにして歩き出した。
普通の状態でも、これだけの丸太を担いで歩くのはつらい。
それにもかかわらず、足には歩きにくいおかしな靴を履かされているし、水飲みと電撃拷問の疲労は、まだエリカの体力をかなり削いでいる。
いまは、まともに歩くこともできない。
すぐに呼吸が乱れ始めた。
六周を歩き終わったときには、やはり、砂時計の砂は落ちきっていた。
しかも、砂時計が尽きたのは、まだ言われた距離の半分も歩き終わっていなかった。
それでも、最後まで歩かないとコゼに毒を追加すると言われたので、疲労困憊になりながらも、エリカは、必死で六周を回ったのだ。
「エルフ女なら、もっと歩けるはずね。それでも、戦闘種族のエルフ? やり直しよ」
「うう……」
膝ががくがくと震えていたが、エリカは再び回り始める。
命令に従わずに休息すれば、ゼノビアはコゼに毒を追加する口実にするだろう。
ゼノビアの目的は、最終的にはエリカを殺すことのようだが、できるだけエリカを侮蔑するというのも、ゼノビアへの依頼の内容になっているようだ。
だからこそ、エリカを侮辱するためだけの目的で、コゼを惨たらしく殺す可能性も否定できない。
このまま放っておかれれば、そうなりそうだ。
エリカとしては、腹が煮えそうなこの恥辱に耐えて、ゼノビアの命令に従うしかない。
それに、歩いているうちに、踵の高いこの靴の歩き方もわかってきた。
だんだんとコツを掴んできたと思う。
さっきよりも、速く歩けそうだ……。
そして、やっと六周が終わった。
今度の六周は、さっきよりも速かった。
だが、やはり、二周分近くも時間が足りなかった。
「やり直し」
ゼノビアが嬉しそうに言った。
「くっ」
エリカは足を前に出す。
すぐに開始するのは、そうすれば、コゼに毒を足されるのを防げるからだ。
しかし、その代わり、エリカの足腰は悲鳴をあげている。
とにかく、間に合わせるために、エリカは歩幅を大きくした。
脚が引きつるように痛みだす。
だが、休むわけにはいかない……。
「うう……。くっ……」
半分ほど回ったところで、エリカは呻き声をあげた。
乳首と股間を強烈な痒みが襲ってきたのだ。
いよいよ、本格的に掻痒剤が暴れ出したようだ。
「ああっ、うううっ、ぐううっ」
ほとんど気力だけで歩いた。
今度は、砂時計がいつ落ち終わったということさえ、見る余裕はなかった。
「まあまあ、速くなったけど、結局、時間内ということでは、五周も終わらなかったじゃない。砂時計が落ち終わりまでに六周を回るのよ。やり直し──」
「うう……」
エリカは丸太を担いで歩き出す。
次と、その次は最後の六周目の途中で砂時計が尽きた。
もう少しだった。
だが、さらに次は五周目で砂時計は終わってしまった。
そして、次──。
今度は、四周の途中……。
全部、六周まで回っているのだが、砂時計が終わるまでに歩き終わる距離はだんだんと短くなっている。
「やり直しよ、豚──」
ゼノビアの叱咤が飛ぶ。
またもや、四周目の途中で砂は尽きた。
もう、エリカには体力は残っていない。
もはや、立っているのでやっとだ。
「む、無理よ……」
エリカは弱音を吐いた。
とりあえず、まだ周回が残っているので歩いているが、すでに限界は超えたと思う。
だが、六周歩かないと、やり直しの機会ももらえない。
なんとか、早く成功しないと、このままコゼが死ぬ──。
「やる気がないからよ。続けなさい」
「む、無理だったら──。せ、精一杯やっている──。で、でも、痒いのよ……。な、なんとかして……」
エリカは激昂して叫んだ。
股間の痒さは絶望的なものになろうとしていた。
本当は暴れまわりたいくらいの痒みなのだが、下手に動くと体勢を崩してしまうので、じっとしていなければならない。歩くだけじゃなく、じっと立っているだけでも、凄まじい拷問だ。
「やる気がないようね。コゼに毒を足すわ。どうやら、そっちが望みのようだし」
椅子に足を組んでいるゼノビアがコゼの髪を掴んで引き寄せる。
エリカははっとした。
「あ……あ……」
コゼはさっきから、ほとんど言葉を発しない。
ただ、目を大きく開いて、エリカがゼノビアの拷問を受けるのを見守るだけだった。
いまも、乱暴をされたのに、されるがままだ。身体がもう動かないのか、首筋に針が近づいたのがわかるはずなのに、抵抗しようともしない。
「ま、待って、今度はやる。やるから──」
エリカは急いで叫んだ。
これ以上、コゼに毒を足させるわけにはいかないのだ。
すると、ゼノビアの針がコゼの首のほんの少し手前で静止した。
「……それとも条件を変える? それに応じるなら、コゼに毒を足すのは勘弁してあげるわ。それだけでなく、六周のところを五周に減らしてあげる。なんとか、五周なら間に合いそうだしね」
「わ、わかったわ……」
エリカには、応じるしかなかった。
「じゃあ、コゼ、立つのよ……」
ゼノビアがコゼに向かって怒鳴った。
コゼが虚ろな表情で、苦しそうにゼノビアに顔を向ける。
「……あの豚エルフの股ぐらに、この張形を挿してきなさい。逆らえば、魔道で一気に毒を活性化させるわよ。そうしたら、あんたは即死する……。ほら、一時的に毒の苦しみを緩めてあげるわ。ただし、ちょっとでもおかしな動きをすれば、やっぱり全身に毒を回らせるからね」
ゼノビアが言った。
その手の上に、男性器の張形が出現した。
『取り寄せ』の魔道だ。
だが、エリカはそれを見て、思わず顔をしかめてしまった。
ゼノビアが魔道で出した張形は、全体がうねうねと蠕動運動をしていたのだ。
それを股間に挿入して、歩けということだろう。
エリカはさすがに鼻白んでしまった。
あんなものを入れられれば、五周どころか、一周だって歩けるかどうか怪しい。
「……ふうう……」
コゼが大きく息を吐いた。
ゼノビアの魔道で楽になったのか、床にしゃがみ込んで静止していた体勢から、ゆっくりと立ちあがる。
そして、ゼノビアから振動を続ける張形を受け取った。
それを持って、ゆっくりと近づいて来る。
「……ご、ごめん、エリカ……」
コゼが張形を手にして、エリカの正面までやって来た。
「い、いいのよ……」
とりあえず言った。
しかし、エリカは近くまでやって来たコゼに、奇妙な違和感を覚えた。
なにがおかしいということはわからない。
だが、見た目はコゼなのだが、醸し出す雰囲気がどことなく、いつもと異なる気がした。
そのコゼが、ぺろりと口の周りを舐めた。
エリカに張形を挿していたぶるのをなにか悦んでいるような表情に、エリカの疑念はさらに膨らんだ。
コゼには嗜虐癖があり、エリカに淫靡で過激な性的悪戯をすることは、日常のことだ。
だが、一方でコゼは非常に人見知りだ。
そんな自分の性癖を他人の前で公開したりしない。
コゼが嗜虐癖を起こすのは、親しい者のあいだでのことだけだ。
エリカのことを苛めるのが特にコゼが好んでいるのは知っているが、ゼノビアのような第三者の前で責めることを悦ぶのは違和感がある。
いずれにしても、いまは目前に迫っている追加される責め苦のことだ。
とにかくエリカは、せめて張形を挿入されても立っていようと、膝に力を入れた。
コゼが張形の先端を股間に当てる。
「んふうっ」
痒みに襲われている股に張形の振動が伝わって来て、エリカはそれだけで悶絶しそうになった。
一方で、コゼは不意に素っ頓狂な声を出す。
「あれ?」
コゼが焦ったような声を出した。
「どうしたのよ?」
少し離れて椅子に座っているゼノビアが立ちあがった。
エリカも視線を股間に向けた。
なにが起きているかわかった。
コゼが張形を挿し込もうと、ぐいぐいと力を入れているにも関わらず、突然にエリカの股が石にでもなったように、挿入を拒否しているのだ。
しかし、エリカはなにもしていない。
そもそも、たとえ股間に力を入れたところで、油剤を塗られている股はそれが潤滑油代わりになって、コゼが挿し込もうとする張形を簡単に受け入れてしまうはずだ。
そして、一瞬後、エリカはなにが起きているかを理解した。
ロウの淫魔術だ──。
少し前だが、ロウはエリカをはじめとして、自分の女たちに、不思議な印を刻んでいた。
それは、ロウ以外の存在に犯されそうになると、ロウが女たちの身体に充満させている淫魔力が働いて、股が石のように固くなって挿入を拒否するのだ。
つまり、エリカの意思に関係なく、エリカの身体が自動的に固まって、他者から男根や男根を模したものを挿入されるのを防ぐのである。
さっきのゼノビアの指くらいだと、その印が作用することはないが、張形くらいになれば、確実にロウの刻んだ紋章が局部への侵入を拒否する。
もっとも、その拒否の対象は、ロウの淫魔力が働いていない者だけに限ったことだ。
ロウの命令で、お互いに玩具で悪戯し合うこともあるし、それについては、おかしな力が発動しないように施されている。
それにも関わらず、目の前のコゼは、ロウがエリカに刻んだ印に拒否されて、エリカに張形を挿し込むことができないでいる。
それが意味するのはひとつしかない……。
「うああああっ」
エリカは最後の力を振り絞るようにして、丸太を担がされている上体を大きくひねった。
「ひぎいっ」
頭を丸太にぶん殴られるかたちになったコゼが、床にひっくり返った。
「な、なにをするのよ──」
ゼノビアが怒りの声をあげた。
だが、怒っているのはこっちだ。
コゼに……いや、コゼに変身している偽者の身体めがけて、丸太を打ち下ろした。
ロウの施した淫魔師の印に反応して、エリカへの「挿入」を拒否されるということは、この女がコゼではないということだ。
ゼノビアは魔道遣いだ。
だから、なんらかの魔道具を使えば、他の者をコゼに変身することもできたのだろう。
それとも、このコゼの偽者も魔道遣いであるかだ……。
「ぶふうっ」
腹にエリカが担いでいる丸太を叩きつけられた偽者が、口から胃液を吐いた。
だが、すぐに強引に丸太の下から這い出る。
その動作は、さっきまでの死にそうな弱々しいものではない。
やはり、あれも演技だったようだ。
いずれにしても、これでわかった。
ゼノビアと、このコゼの偽者は仲間だ。
ふたりで、エリカを騙して、からかっていたのだ。
「ちっ……。あんたはさがって……。もう一度、弱らせるわ。捕まえて水責めにしてやる。そうすれば、人質がいなくても、言いなりになると思う……。考えてみれば、そっちの方が面白いかもね」
ゼノビアが杖を手にして、エリカに向けた。
「い、痛いわねえ……。あ、相変わらずのお転婆馬鹿……。ちっと綺麗になったと思ったけど、中身は変っていないわ……」
まだ跪いたままのコゼの偽者が悪態をつく。
相変わらず……?
何者が変身しているかわからないが、なんだかエリカのことを知っている感じだ。
もしかして、こいつが、エリカに恨みを持つという依頼人?
だが、エリカはどうすることもできない……。
まだ、丸太を肩に担がされたままであり、振り下ろした丸太をもはや動かすことも不可能だ。
コゼが偽者だとわかったところで、ゼノビアの拷問を無抵抗で受け続けなければならないという状況には変化はない。
「きゃあああ──」
そのとき、突如として、ゼノビアが手にしていた魔道の杖が後ろに吹っ飛ぶとともに、ゼノビアが自分の身体を両手で抱くようにしてうずくまった。
エリカは呆気にとられた。
「ああ、ああ、ああああっ」
ゼノビアが床に這いつくばって、苦しそうに悲鳴をあげ続ける。
強い電撃でも浴びているような感じだ。
「お、お姉さま?」
コゼの偽者が悲鳴のような声をあげて、ゼノビアに振り返る。
「ふぎいっ」
しかし、そのコゼの偽者も、姿の見えない巨人にでも踏んづけられたかのように、突然に床に手足を伸ばして、貼りついてしまった。
そのまま身動きできない気配である。
「拷問を受けるエリカがあんまり色っぽかったんで、もう少し見物していてもよかったがな……。もう一度、水責めともなれば、興醒めだ──。エリカを毀されては堪らん。お前らの拷問ごっこは終わりだ」
転送術で誰かが次々に出現する気配とともに、不意に背後から声がした。
「ロ、ロウ様──」
エリカは叫んだ。
声は間違いなくロウの声だった。
だが、丸太が重くて、声がした背後を振り返ることができない。
それでも、懸命に視線を向ける。
やっぱり、ロウだ。
それだけじゃなく、コゼとシャングリア、さらに、スクルズまでいる。
武器を手にして、ゼノビアたちに向けている。
なにも持っていないのはロウだけだ。
「お、お前たちは、エ、エリカの仲間か……? だ、だが、どうして……? 追跡ができないように魔道で処置していたのに……。なんでここが……?」
ゼノビアが呻くように言った。
そのゼノビアは、いまでは四つん這いの恰好になっている。
その体勢で身動きできなくされたようだ。
おそらく、スクルズの魔道だろう。
コゼの偽者も、床にうつ伏せに貼りついたままだ。
「あんたが何者かは知らないけど、ここにいるのは、王都でも右に出る者はいない大魔導師。第三神殿の神殿長スクルズ殿だぞ──。ついでに言えば、俺は自分の女が連れ去られても、どこに向かったのかが、わかるような処置を女たちに刻んでいる……。ふたり掛かりなら、あんたの魔道なんて、簡単に破ることができた。追いかけてくるのは簡単だったよ」
ロウが笑った。
「でも、ちょっと時間がかかりました。間に合いはしましたけど……」
スクルズの呑気そうな声も聞こえた。
「ごめんね、エリカ。あんたがその丸太を担がされて歩き始めた頃には、この城外の廃屋の裏に辿り着いたんだけど、ご主人様がエリカが色っぽいから、もう少し見物していたいとか言っちゃって……」
コゼだ。
「本当に、ロウは悪趣味なのだ、エリカ」
シャングリアの困ったような声もあった。
よくわからないが、どうやらここは王都の城門の外のどこかの廃屋らしい。
ロウたちの物言いによれば、スクルズの助けも借りて、ロウたちは、少し前に、ここにやって来れたのだが、ロウの趣味でちょっとのあいだ見物していたようだ。
シャングリアの言い草ではないが、それはあまりにも悪趣味だ。
さすがに、エリカもむっとした。
「……その丸太は魔道で腕が食い込んでいるようですね。すぐに外しますね」
スクルズの落ち着いた声がした。
「それはまだいい。それよりも、うちのエリカが痒み剤で苦しんでいるからね。それを癒してあげないと……。それまで、この連中を無力化しておいてくれ。絶対に逃がさないようにね。もしも、逃がしたりしたら、厳しく罰を与えるよ」
「まあ、そんなことを言われてしまっては、わざと失敗してしまいそうですわ」
スクルズが軽口を言う。
「大丈夫ですよ、ご主人様。あたしたちがいますから……。シャングリア、あたしの偽者を頼むわ。あたしは、ゼノビアという女につくから」
コゼとシャングリアがさっと移動する。
ふたりが、それぞれに床に貼りついているふたりの女に武器を向ける。
一方でロウが身動きのできないエリカに近づいてきて、後ろに立った。
どうやら、この場で犯しそうな気配だ。
「やめろ──。エリカに触るな、この下衆男──」
そのとき、コゼの偽者が絶叫した。
エリカは驚いてしまった。
「どうやら、エリカに確執があるようだな。まあ、あんたが何者なのかは、ゆっくりと後で訊いてやるよ……。その身体にね……」
ロウがからかうような口調で言った。
そして、ズボンと下着をおろして、エリカの尻たぶを両手で掴むと、背後からずぶりとエリカの局部に一物を突き入れた。
また、両手で乳房を掴んで荒々しく揉み始めもする。
「はあ、ああ、ロ、ロウ様、ありがとうございます──。ふわああっ」
痒みに狂っていた乳房と股間に開始されたロウの責めに、エリカはなにもかも忘れて、大きな嬌声をあげてしまった。
ロウに犯される快感にかかっては、さっき抱きかけていた怒りも収まるしかない。
気持ちいい……。
もうエリカには、それしか考えられなかった。
「け、汚らわしい──。汚い男の手でエリカに触るんじゃない」
そのとき、再びコゼの偽者が絶叫した。