【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
【ナタル森林国・エランドシティ】
「カサンドラ太守夫人におかれましては、ご機嫌麗しゅう……」
夜会の宴もたけなわとなった頃合いを見計らって、会場に姿を見せたパリスは、上級エルフたちの集まる賑やかな宴を横切って、真っ直ぐに夜会の中心にいるカサンドラに向かって歩いていった。
そして、さっと腰を屈めて挨拶をする。
ナタルの森に位置するエルフ族の都と称されるエランド・シティ──。
エランドは、都市全体が二層に分離しており、もちろん、支配階級のエルフ族は上層地区に住む。上層部だけに注目すれば、浮いていることになるので、浮遊都市とも称される。
その上層部の中心となる水晶宮で行われている定例の夜会である。
集まっている者のほとんどはエルフ族であり、しかも、人間族でいえば、貴族階級にあたる上級エルフたちだ。
美貌で知られるエルフ族たちだが、その中でも上級エルフともなれば、さすがにひとりひとりの美しさだけでも、言語に尽くしがたい。
それがこうやって、豪華な宝石や装束に包まれて、何十人も集まっているのだ。
これはこれで、まるで、吟遊詩人の語る物語の一篇を切り抜いたような光景ではないかと思った。
そして、その宴の中心にいるカサンドラは、ひと際美しく輝いている。
人間族であれば、すでに老境に達するどころか、とうに墓の中にいる年齢ではあるが、長命のエルフ族にあっては、まだまだ色香の漂う見目麗しき貴婦人だ。
しかも、彼女こそ、このエランド・シティの統治を、エルフ族の長老たるガドニエル女王から直々にも申し渡されている太守夫人である。
本来の太守は彼女の夫であるエリサリオンであるが、三年前にエルフの魔道でも治療できない病に倒れて、寝台から離れられない生活を送っている。
いまや、彼女こそ、このエルフ族の支配するエランド・シティの事実上の最高責任者なのだ。
そのカサンドラが、パリスの姿を認めて、ぱっと顔を赤くした。
二箇月ぶりのエランド・シティへの訪問になるが、パリスの訪問のたびに、同じように相好を崩す。
そんなに嬉しいか、雌犬め……。
パリスはほくそ笑んだ。
「パリスか……。ひ、久しいな……」
彼女の周りには、十人ほどの男女が集まって、談笑をしていたが、カサンドラがそれを中断して、パリスに身体を向けたため、さっと人の波が引いたような状態になった。
エルフ族ではないパリスではあるが、このエランド・シティでは、太守代行をしているカサンドラの相談役という地位を与えられている。
表向きの任務は、外国を飛び回って情報を集め、それをカサンドラに伝えるという、エルフ族の外交の一端を手伝うような役目だ。
エルフ族ではない者が、エルフ族の行政に関わるのは多くはないが、珍しいことではない。
エランド・シティにおける政務庁の水晶宮だが、表向きには諸種族の合一の都市ということになっていて、エルフ族以外の相談役も幾人かはいるのだ。
特に、人間族は、下層地区を加えると、エルフ族よりも多くいるくらいなので、エルフ族に次いで、政務庁には集まっていると思う。
従って、パリスがここに現れても訝しむ者もいないし、カサンドラ直属の相談役なのだから、案内なしに目通りすることも当然ということだ
パリスは、屈めた腰を真っ直ぐにすると、すっとカサンドラに歩み寄った。
だが、カサンドラにしかわからぬ表情で、カサンドラを威圧する。
カサンドラの美貌がぎょっとしたように怯えで歪んだ。
可愛い仕草だ。
パリスは思った。
だが、その怯えの下には、これから始まる「仕打ち」を想像して、彼女の期待があるのを見抜いている。
離れていたのは、二箇月間だったか?
パリスにとってはなんでもない期間だが、パリスに飼育され、パリスの与える嗜虐的な調教から離れられない身体になってしまったカサンドラにとっては、長すぎる月日だったに違いない。
「い、いつ戻ったのじゃ……?」
カサンドラが顔を紅潮させたまま言った。
その顔はすでに真っ赤であり、目元は潤み、薄っすらと涙さえ滲んでいる。
嬉しいのだろう。
まるで少女のような反応だが、仕方のない反応かもしれない。
なにしろ、このエランド・シティでもっとも高位の地位にあるカサンドラには、パリスによって開発されてしまった淫情の身体を癒してくれる相手が誰ひとりとしていない。
いや、相手になってくれたところで、パリスでなければ、彼女を慰めることは不可能だ。
そうなるように躾けた。
二箇月前に、予告なしに、カサンドラの前からいなくなったパリスを求め、身体が火照り続け、癒されることのない焦燥と官能に苦しみ、愛人の男エルフとの交合や激しい自慰でも消えていかない官能への飢餓感に襲われる続けたはずだ。
この身分の高いエルフ女はマゾだ。
しかも、かなりの重度の……。
それは、「ご主人様」以外からの責めで満足などできない……。
パリスがそのようにしたのだ。
カサンドラの身体を……。
心を……。
エルフの都たるエランド・シティの実質的な最高行政官の地位にあるカサンドラは、二年もかけてパリスに、じっくりと調教され続けた、パリスの雌犬だ。
最初の出会いからそうだったわけじゃないが、パリスはそのように躾けて、いたぶられるほどに欲情するど変態女に、ゆっくりと仕込んでやった。
もちろん、そんなことは誰も知らない。
エランド・シティの太守夫人ともあろうものが、得体の知れない余所者の愛人などということを……。
ましてや、雌犬などと……。
パリスは、思わず喉の奥で笑ってしまった。
点在する里ごとに自治区が分かれ、全体としての政治的な結束の低いエルフ族だが、森エルフの中心であるエルフ女王のガドニエルの影響力と支配力は大変なものである。
だが、ガドニエルは、もう数十年もイムドリス宮と呼ばれている結界の奥に引っ込んでいて、ナタル森林に点在する各エルフの里をまとめる行政的な仕事をしているのは、このエラルド・シティにある行政庁である。
その行政庁は、外観から「水晶宮」と呼ばれており、太守はその水晶宮の最高権威者だ。
また、結界に包まれる亜空間に存在するイムドリス宮にいるガドニエルに会うには、この水晶宮の最奥にある転移門を使わなければ、辿り着くことはできない。
その転移門を管理するのも太守だ。
つまり、二重の意味で、エラルド・シティの太守は、ナタル森林全土に影響を与えるほどの権力者ということだ。
その女傑が、ただの旅の商人の小僧ということになっているパリスに怯える光景は愉快だ。
もっとも、ここに集まっているエルフ族には、パリスのことを見た目通りに、十歳程度の人間族の少年と思っている者は皆無だろう。
なにしろ、二年前にここに始めてやって来たとき、パリスは人間族の十歳の少年の姿だった。
それから、頻繁に通っているが、相変わらず、パリスの見た目は十歳の少年のままだ。
そんなことは、パリスが本当に十歳の人間族であれば、ありえないし、長命族のエルフ族は、外観と本当の年齢が合致しないことが珍しいことではないことに慣れている。
「先ほど、到着したばかりです。まずは、太守夫人にご挨拶をと思いまして……。それと、少しばかり内密の話もございます……」
パリスは小声ながらも、しっかりと周りの者に聞こえるように言った。
カサンドラが「ひっ」と小さく息を飲むのがわかった。
パリスは、思わず吹き出したくなった。
もちろん、彼女の反応は、パリスが早速、カサンドラになにかをしようということを悟ったからこその恐怖の反応ではあるが、それを嫌がる仕草を示すのは、決して演技ではない。
心からの反応だ。
だが、どんなに心が嫌がっても、その心の底にある本能のようなものが、パリスからの嗜虐を求めてしまうのだ。
それこそが、パリスが刻み込んだ被虐の性癖だ。
おそらく、ここでいきなり強姦してやっても、口では拒否をしながら、カサンドラはパリスが命じれば、これだけの者がいる前でも、パリスの前で股を開く。
どうしても、そうしてしまうのだ。
また、そういう風に調教した。
カサンドラが、パリスから離れるのは不可能だ。
「は、話か……。な、ならば、別室で……」
カサンドラが周囲が訝むくらいに激しく数回頷き、なにかを従者らしき者に告げようとした。
パリスはそれを制した。
「な、なんじゃ……?」
カサンドラは怪訝な表情をパリスに向けた。
「ここで十分です。防音の結界をかけてください」
パリスは静かに言った。
だが、即座に周りを覆わせたのは、カサンドラではなく、パリスの結界だ。
しかも、防音だけではなく、幻視までかけている。
周りにいた者たちからすれば、カサンドラが、パリスの申し出に応じて防音の結界をかけたようにしか思えないだろうし、ふたりが薄透明の結界の中で立ち話をしているようにしか見えないはずだ。
しかし、それは幻視だ。
実際に中でなにをしようとも、パリスが幻視を解除しない限り、周囲にはなにもわからない。
「仕事だ、カサンドラ──。最近のことだが、ナタル森林の一角で特異点が発生し、大量の瘴気が噴出するという現象が発生した。とにかく、とんでもない量だ。すぐに封鎖されてわからないが、どうやって、それを発生させたのかを知りたい。詳細な位置もわからん。だが、黒エルフの集落が集まっている北東域だ。すぐにやれ」
パリスは一転して口調を変化させた。
公然の関係ではないので、他者がいるときには、さっきまでのようにパリスがへりくだる喋り方をして、ふたりきりのときには、逆にパリスが尊大な態度をとる。
だから、口調の変化はいつものことなのだが、カサンドラはパリスが口にした内容に、きょとんとしている。
「特異点? しかし、このところ、あちこちに特異点が発生して……。水晶宮は本来、エランド・シティのみの管轄なので、ほかの里のことは……。瘴気がどうしたというのじゃ?」
カサンドラは首を傾げている。
実のところ、パリスは、あまりカサンドラに、行政官としての権限を積極的に使う命令をしたことはない。
だから、いきなり行政府を動かせと指示をされて、かなり当惑しているようだ。
そもそも、このナタル森林の全土で拡がっている特異点の異常発生と魔獣の増加について、パリスは、カサンドラに知らぬ存ぜぬで、あまり動くなと仄めかしていた。
それが一転して、詳しく調査しろという指示だ。
カサンドラが戸惑うのは当然だろう。
パリスはカサンドラの胃袋を拳で突きあげた。
「ふぐわっ」
呻くと同時に、カサンドラの女体が前のめりに曲がって浮きあがる。
拳には威力を十倍にする呪術を覆わせている。
カサンドラの四肢が一気に脱力していく。
「俺の命令には質問するな。俺は奴隷にいちいち理由を訊ねられるのが好きじゃないんだ」
跪いたために、パリスと同じほどの高さになったカサンドラの首に、すっと魔道具を伸ばした。
幻視術を仕込んでいる首輪だ。
これをさせると、パリスが思うままの幻視を周囲に投影することができる。もちろん、首輪を装着していることもわからなくなる。
念を込めた。
これで、結界を解除しても、この宴に参加しているほかの者には、カサンドラの恰好がどんな状況になろうとも、たったいままでの状態の着飾った姿の幻視が映り続ける。
「あが、があっ、はが……」
カサンドラは四つん這いになって、必死に息をしようともがいている。
パリスは、そのカサンドラのドレスの襟首を掴み、一気に縦に引き破った。
カサンドラが仰向けにひっくり返る。
「あっ、ああっ──。な、なにを──」
ドレスの下は下着だ。
カサンドラの肢体は、人間族であれば、まだ二十代でも通用するだろう。
さらに引き破る。
カサンドラは本能的に服を破られるのを防ごうとするが、そのときには、容赦なく蹴りあげてやった。
だんだんと抵抗が少なくなり、どんどんとカサンドラの美しい肌が露わになる。
すると、うっすらと肌に浮かびあがっている「隷属の紋章」が腹に出現する。
無論、これにも、幻視の術が常時かかっていて、誰の目にも映ることはない。
例外は、術をかけられたカサンドラ自身とパリスだ。
愉しい。
エルフ族を従える最高行政官でありながら、この女はこうやって、公然の中でいたぶられても、俺に逆らうことができないのだ。
身体を両手で隠そうとしたカサンドラの身体を両手で起こし、その腹に今度は膝をめり込ませた。
「んふううっ」
カサンドラの口から舌が飛び出るとともに、胃液のようなものが少し噴き出した。
「汚ねえなあ」
パリスは苦笑しながら、再び四つん這いになったカサンドラから、今度は腰から下のスカート部分を横方向に千切り取った。
もう、カサンドラは抵抗しなかった。
ただ、床に額を擦りつけて、涙目になって口を開くだけだ。
おそらく、まだ満足に息ができないのだろう。
パリスは、ズボンについたカサンドラの体液を破り奪ったドレスの布で拭く。
拭いた後は、さっと放り投げた。
布が空中で消滅する。
「カサンドラ、まだ、太守夫人気どりでいやがるのか? お前の身体に俺の呪術による隷属の呪いが刻まれている限り、お前は俺の人形だ。人形が意思を持って、命令に質問をしたり、疑念を抱く必要はねえ。ただ、服従するだけだ。覚えておけ」
パリスはやっと荒い呼吸を始めたカサンドラに言い放った。
このエルフ族の太守夫人に、呪術までかけて支配を完全にしたのは、半年前のことだ。
いまや、本当の意味で、完全にパリスの雌奴隷だ。
隷属の紋章は、隷属する側の心からの同意がなければ、絶対に受け入れさせることはできない。
だが、このエルフ女は、パリスの調教を受け、ついには、隷属の紋様も受け入れたのだ。
エルフ族は長命族だけあり、伴侶のいる者でも、貞操に対する観念が低い。
なにしろ、百年以上夫婦をしているのだ。
しかも、老いはなく、いつまでも若々しい外観と身体を保持する。
当然に、伴侶以外との異性との交合もおおらかになる。
この太守夫婦も、お互いの貞操を守り続けたのは、婚姻十年までのことであり、それからは、お互いの性には不干渉の関係に移行したそうだ。
珍しいことではなく、エルフ族間の夫婦関係では当たり前のことだ。
むしろ、伴侶のほかに、異性と関係を持たない夫婦の方が例外だ。
例外は、
ただ、性におおらかなエルフ族の夫婦の関係であっても、伴侶以外の異性とは、完全に性行為だけの関係に徹するという不文律はある。
この太守夫人も、ほかのエルフ族たちと同じように、パリスと出逢う以前には、何人かの性行為だけを行う愛人を数名保持していた。
そして、ちょっとした興味で、ローム地方からやって来た「少年の姿をした大人の人間族」を閨に連れ込んだ。
それからは簡単だ。
最初の一日目に、パリスとの性交から離れられない快感を与え、繰り返す逢瀬に、激しすぎる被虐の性癖を徹底的に刻み込んでいった。
あれから二年……。
いまや、完全にパリスの雌犬だ。
こうやっている行為そのものだって、口や態度では嫌がるものの、股ぐらはべっとり濡れているに違いない。
完全に堕とすのに半年もかからなかった。
半年前には、エルフの女長老に指名されたエランド・シティの管理者ほどの立場であるにもかかわらず、パリスに隷属する「隷属の紋章」さえも受け入れた。
奴隷の紋章を受け入れさせてからは、それを絶対に知られないことと、パリスとの関係を完全に秘匿することを命じている。
こうやっていたぶるのは、素直にパリスへの隷属を受け入れているカサンドラへの「ご褒美」だ。
「脱げよ、
パリスはわざと下品な言葉でカサンドラを呷った。
カサンドラの顔が羞恥で歪むとともに、顔どころか全身が興奮で充血したようになる。
「わ、わかった……。め、命令のとおりに……」
カサンドラは膝立ちのまま、びりびりに破れている衣装を脱ぎ始める。
一方で、パリスは、脱いだそばから、パリスは布切れを消していく。
ついには、胸当てと小さな下着までカサンドラは脱衣した。
パリスは陰毛に包まれているカサンドラの股間を見た。
案の定、信じられないくらいに濡れている。
まだなにも愛撫はしていない。
暴力と侮蔑を与え、結界で遮断しているとはいえ衆人環境の中で素っ裸にしてやっただけだ。
それなのに、カサンドラの股間は真っ赤に熟れきって、愛液が太腿の内側にまで滴り落ちている。
「立て、結界を解く……。ああ、その前に、贈り物をしてやろう。エルフの年増女が少しでも早く、俺を寝室に呼び出したがるようにな」
まだ殴られた影響が残っているのか、カサンドラが足元をふらつかせたまま立ちあがる。幻視がかかっているとはいえ、カサンドラからすれば、ただの全裸だ。
さすがに恥ずかしいのか、パリスの前では手でさっと股間と乳房を隠した。
しかし、パリスが舌打ちをすると、顔を蒼くして、隠していた手を体側に移動させた。
パリスは収納魔道を遣って「格納」していた空間から小瓶を取り出した。
カサンドラがそれに気がついて、一瞬で顔色を蒼くした。
なにをされるのかがわかっているのだ。
この強烈な掻痒剤の効果は、たっぷりとこのエルフ女の身体に染みついている。
だが、この女は、これを塗られることで、どんな醜態をこの宴ですごす残りの時間に晒さなければならないかをわかっていながら、逆らおうとはしない。
これまでに刻んだ、この女に対するパリスの調教が、カサンドラからパリスに逆らう意思を失わせているのだ。
隷属の紋章を刻んでいるので、『命令』を与えれば拒否できないのだが、いまでは、そんなものを使わなくても、この女は大抵のことは受け入れる。
すでに、それくらいに感覚は麻痺している。
パリスは、小瓶の中の掻痒剤をたっぷりと膣の中に塗り込んでやった。
「ううっ、んんんっ」
塗ったのは、ただの掻痒剤ではない。
魔道の薬剤である。
塗れば一瞬後から、痒みの苦しみが始まるという特別性だ。
すぐに、カサンドラは裸身をがくがくと震わせて、全身を真っ赤にして汗をかき始めた。
「め、い、れ、い、だ……。宴が終わって、寝室に俺を呼び出すまで、自分の股間に触ることを禁じる。なにかを当てることも禁止だ。そうやってずっと震えていろ」
パリスは意地悪く、カサンドラの耳元でささやいてやった。
今度は、支配効果のある「命令」による呪縛だ。
これでもう、カサンドラは、どんなことがあっても、痒みを解消することができない。
呼吸も荒くなり、口から息を吐きだすたびに小鼻を開いている。
まあ、これもふたりの約束事のようなものだ。
つまりは、ごっこ遊びだ。
「う、ううう……。む、無理……。こ、このままなんて、無理じゃ……」
食い縛る歯のあいだからカサンドラの苦悶の声が出る。
パリスはそれを無視した。
「なにが無理だ。そう言いながらも、苛められてしっかりと欲情するのがお前だろう。お前といい、あいつといい、エルフ族の年増というのは、マゾというのが決まり事なのか? あいつも、痒み責めが大好きだぜ」
パリスは笑った。
カサンドラがはっとした表情になる。
欲情しきった顔が一瞬だけ、真顔になる。
「お、お嬢様は……。お嬢様は無事なの? い、いつ、ここに連れてきてくれるの──?」
カサンドラが言った。
パリスはその質問には答えなかった。
返事の代わりに、いまや完全に勃起しているカサンドラの肉芽に手を伸ばし、指で数回弾いた。
「んふううっ」
カサンドラはそれだけの刺激で、全身を突っ張らせて、激しいよがり声をあげた。
「あいつのことはそのうちだ──。それよりも、さっきの話だが、とにかく、どこの里のことなのか特定しろ。誰が、どうやってやったのかもだ。とにかく、小さな情報でもいいから、わかったことがあれば、すぐに俺を呼び出せ。そのたびに、こうやって調教してやる」
パリスはにやりと笑う。
カサンドラの相好が崩れた。
躾けられるということに悦んで、股で涎を垂らしやがる。
しかも、ちょっとした情報があるたびに、パリスが来るのだ。
この女は必死になって、この事案の調査を指示するに違いない。
雌犬め……。
それにしても、今回のことを知ったときには驚いた。
いま、ナタル森林を覆っている瘴気と魔獣の発生の原因を作っているのは、実はパリスだ。
だから、どの場所で、どの程度の瘴気が発生し、さらにそれにより魔獣が何体くらいこっちに溢れたかということまで把握している。
だが、あの黒エルフの集落密集地域で発生した、短時間の瘴気の大発生は、パリスの管轄の外であり、規格外だった。
ほんの短い時間だったにも関わらず、びっくりするような瘴気量が発生している。
パリスがやらせているような小さな亀裂ではない。
とてつもない亀裂だ。
それが起こったのだ。
すぐに調べさせようとしたが、あまりにも、呆気なく封印されなおしたようであり、特定できなかった。
だが、知りたい。
あれほどの瘴気が発生したのなら、かなりの大きな亀裂ができたと思う。
また、検知した瘴気も濃密だ。だから、最初から強力な魔獣が発生している。
パリスの作らせるものは、最初は小さな亀裂しか生まれないので、強力な魔獣を出現させるほどの瘴気が充満できるのには、時間もかかる。従って、それまでに、エルフどもに邪魔されて、封印されてしまうことが多い。
実際、カサンドラに邪魔させたエランド・シティ周辺については、かなりの特異点に発展し、魔獣も強力になりつつあるが、ほかの地方は、収束されてしまったところも多い。
まったく、エルフ族というのは、狩猟種族を称するだけあり、魔獣に対しても、うまく対応している。
なかなかに忌々しい。
いずれにせよ、あの一気に大きな特異点を作る方法がわかれば、パリスの野望は遠からず実現することになる。
「わ、わかったわ……」
カサンドラがぶるぶると震えながら言った。
いよいよ痒みが我慢できなくなったのだろう。
パリスは、それに満足して、結界を解いた。
「ひっ」という短い悲鳴がカサンドラの口から鳴ったが、パリスはそれを無視して、恭しく見えるように完璧な仕草で、貴人に対する礼をとった。
「申し訳ありませんが、そういうことで、よろしくお願いします、太守夫人」
パリスはそう告げると、さっときびすを返した。
「ま、まっ……」
待ちなさい──?
あるいは、待ってください──?
もしかしたら、そんな言葉を口にしようと思っていたのかもしれない。
しかし、かなり長かったカサンドラとパリスの結界内の会話を訝しんでいたほかの高位エルフたちが、あっという間にカサンドラを囲むのがわかった。
太守夫人として、事実上のエルフ族の行政を担う最高責任者だ。
一言でもカサンドラと会話をしたいという者は大勢いる。
あっという間に、カサンドラは夜宴の客人たちに囲まれた。
素っ裸で股間に掻痒剤を塗りたくった状態で……。
パリスは、カサンドラをそのままに出口に向かった。
幻視の首輪をつけられた全裸姿で痒み剤を塗られて置き去りにされたカサンドラだが、それでも、宴を中途退出することはないだろう。
隷属の首輪による「命令」がなくても、いまのカサンドラには、パリスに逆らうという発想はできない。
まだ、終宴まではかなりあるので、そのあいだ、たっぷりと痒みと羞恥の苦悶に浸ってくれるに違いない。
完全に退出する前に、少し離れたところで振り返ると、パリスはカサンドラのいる場所に視線を向けた。
そこには、素っ裸で全身を真っ赤にして身体を震わせながら、着飾ったエルフたちに囲まれているカサンドラの姿があった。
ここからでもわかるくらいに、痒みの苦痛と裸体を晒す羞恥に、いまにも気絶せんばかりになっている。
幻視の首輪のおかげで、誰ひとりとしてカサンドラが衣類をまとっていないことに気がつかないようであるが、本人は自分が裸であることを自覚しないわけにはいかないし、気が狂うほどの痒みが股間を襲っているという苦痛もある。
それにもかかわらず、あの状態では、痒みをまぎらわすために、太腿を擦り合わすことさえ許されないのだ。
そんな不自然な動きをすれば、幻視の効果があっても、カサンドラの痴態は露わになってしまう。
たっぷりと嗜虐の快感を愉しむといいぜ、婆あ──。
パリスは、にやりと微笑むと、そのまま宴の会場を後にした。
(2部・第1話『混沌の幕開け』終わり、第2話『遠方からの依頼人』に続く)