※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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256 真夜中の襲撃者(1)─誘拐クエスト

「随分と美味しいクエストさ。女ひとりさらって、金貨十五枚かい。こりゃあ、こたえられないねえ。魔獣退治とかいうと、どうしても不慣れなあたしたちだけど、人間相手ならどうということもない。ミランダもあたしたちを選ぶとは、まあ、見る目はあるさ」

 

 ゼノビアが喉の奥でくくくと笑った。

 シズは、その横で、王都の通りを歩いていたが、なんとなく気になることがあって、ゼノビアほどには有頂天にはなれなかった。

 そもそも、人をさらうという仕事というと、この王都でエリカにちょっかいを出したときのことを思い出す。

 あのときに受けた恐怖心と絶望感は、シズの心に消すことのできない心の苦痛として、いまだに残っている。

 同じ冒険者だし、しかも、あの目立つロウたちのパーティなので、偶然目にすることもあるのだが、そんなときはシズは、急いで物陰に隠れて、極力ロウを避けるようにしていた。

 ロウを見かけると震えがとまらなくなるのだ。

 

 すぐ近くにエリカも暮らしているのだから、改めて訪ね、旧交を温めたいという気もするだのが、あのロウと接触するなど、恐怖しかない。

 だから、直接に関与するわけではないといえ、ロウ=ボルグに関わる女を捕まえろというミランダから与えられた秘密のクエストには、そもそも気が乗らないのだ。

 

 王都にある旅人を相手とする宿屋街の通りである。

 そこを、シズとゼノビアは歩いていた。

 ミランダから指示のあった「黒エルフ族の若い女」という人物を探すためだ。

 昨日の夜に呼び出されて、冒険者ギルドに顔を出せば、いきなり個室に連れ込まれて、ミランダから秘密クエストというのを言い渡された。

 それが、このクエストだ。

 とにかく、ミランダによれば、昨日のことだが、ロウとエリカを探している得体の知れない女が突然に冒険者ギルドにやって来たのだという。

 その人物を探して、さらって連れて来いというのが、クエストの内容だ。

 

 報酬は、金貨十五枚──。

 着手金として、すでに五枚を受け取っている。

 金貨十五枚といえば、この王都で小さな家なら一軒家を丸ごと買えるくらいの額だ。一度のクエストの報酬として、常識的な金額ではない。

 だからこそ、シズは、この報酬が本クエストの危うさを物語っている気がしたのだ。

 また、ミランダからは、このクエストについては、絶対に秘密厳守。いかなる状況にあっても、冒険者ギルドとしてのクエストだと悟られるなと、くどいくらいに念を押されている。

 つまりは、口止め料込みの、その報酬額なのだ。

 その見知らぬ女がやったことといえば、ロウの居場所を冒険者ギルドで訊ね回ったということだけだ。

 ほかに咎などない女の自由を奪って連れてくるなど、もちろん違法だろう。

 だから、この報酬だ。

 

 それくらいはわかる。

 しかし、それにしても、あのミランダは、ロウのことになると、どれだけ過保護になるというのだろう。

 ちょっと接触を図ろうとした女を違法を厭わずに、誘拐を命じるなど……。

 まったく、公私混同も甚だしい。

 

 いずれにしても、シズはできれば、ゼノビアに断って欲しかったクエストだが、ゼノビアは大喜びで受けた。

 それでこうやって、とりあえず、手掛かりを求めて捜し歩いているということだ。

 いまのところ、探す当てになるのは、当該人物が褐色エルフの女ということだけだ。

 褐色エルフというのは、エルフ族では珍しい肌の黒いエルフ族であり、ナタル森林の北東部に幾つかの集落に分かれて暮らしている森エルフ族になる。

 エルフ族の中でも、特に排他的な傾向のある一族たちであるので、そもそも、人間族の国に出てくることが難しい。

 

 ミランダからは、褐色エルフの女を見つけたら、その女がロウを探している女かどうかを確認してから、生け捕りにしてさらって来いと指示を受けているが、ここで褐色エルフを見つければ、まず間違いなく、狙いの人物だろう。

 褐色エルフが偶然にも、ふたりも三人も、王都に入って来ているとは思えない。

 たとえ複数いたとしても、かなりの高確率で、同じ目的をもって王都にやってきた仲間だろう。

 従って、とりあえず、この王都では珍しい肌の黒いエルフ族の情報を探し、それで居場所を特定できたら、ゼノビアの毒で昏倒させてさらってくるというのが大まかな作戦だ。

 確かに、金貨十五枚の仕事としては、簡単のような気はする。

 

「なんだい、浮かない顔をしているじゃないの、シズ。大丈夫だよ。なんて事のない仕事さ。肌の黒いエルフ族なんて、ここでは目立つ。今日中に……。まあ、今日でなければ、明日には情報にぶつかるさ。そしたら、毒針を打ち込んで、さっさとさらう。それだけだよ」

 

 ゼノビアが笑った。

 果たしてそうだろうか……。

 なにか、嫌な予感もするんだけど……。

 

「でも、この前、とても怖かったから……。ロウに関わるクエストというのが気になるのよ」

 

 シズは正直なところを言った。

 もっとも、そのロウは、ダンジョン化した洞窟における特異点の除去というクエストを受けて、数日前に王都を留守にしている。

 王都にいないのはわかっているので、こんなに怯える必要はないのだろうけど……。

 

「また、それかい? 可愛いシズだね。大丈夫だよ。あたしがついてる。ちょっとおいで」

 

 宿屋街といえば、それなりに人通りもあるのだが、ゼノビアはシズを路地に連れ込んで、人気の無いところを探して、物陰に隠すようにした。

 そして、いきなり路地の石壁に背中を押しつけられるようにされた。

 

「ゼノビアお姉様?」

 

 シズは当惑して小さな声をあげた。

 しかし、ゼノビアはあっという間に、シズの両手を背中に回させて、片手でさっとシズの両方の親指の付け根を縛ってしまう。

 怖ろしいほどの早業であり、いきなりシズは両手を封じられてしまった。

 

「あっ、お姉様」

 

「声を出さないんだよ。それとも、大きな声を出して見物人を作りたいのかい?」

 

 ゼノビアがくすくすと笑いながら、スカートの下から手を差し込むとともに、上衣の裾からも手を入れて、シズの胸と股間を愛撫し始めた。

 

「あっ、そんな」

 

 シズは身悶えた。

 しかし、シズの身体を知り尽くしているゼノビアが、シズの弱いところを次々に刺激する。

 あっという間に力が入らなくなり、シズは脱力して抵抗などできなくなってしまった。

 だが、誰もいない物陰とはいえ、白昼であり、しかも、すぐそばは人通りの多い通りだ。

 世間話をしながら通り過ぎていく通行人の声がひっきりなしに聞こえる。

 そんなところで、シズはゼノビアから破廉恥な愛撫を受けているのだ。

 羞恥と恥辱で、極限なまでの緊張感に追い込まれ、シズはめくるめく被虐の陶酔に襲われてしまった。

 

 誰かに見られたら……。

 でも、気持ちいい……。

 

 とにかく、シズは懸命に声を押し殺した。

 だが、ゼノビアはそんなシズの困惑が愉しいのか、いよいよ責めを強くする。

 胸巻きの下に指を差し込まれて乳首を転がすように動かされ、股間の下着の中にも指が入り、肉襞の中に指を挿入させながらクリトリスを刺激される。

 

「んんっ、んんんっ、んんんっ」

 

 強いものが込みあがった。

 シズの小柄な身体が大きくのけ反り、硬直した太腿にどっと愛液が噴きだして、内腿に伝わったのがわかった。

 

「ふふふ、派手に気をやったわね。これで心配なことは消えた? いいから、あたしに任せなさい。こんなのなんてことのない仕事よ」

 

 ゼノビアが耳元でささやいた。

 息を吹き掛けられて、シズはびくりと反応する。

 そんなシズを笑いながら、ゼノビアが羞恥で俯いてしまったシズの服装を整えて、指縛りも解放する。

 シズはゼノビアに抱きついてしまった。

 

「ああ、お姉様、幸せです……。お姉様だけは、あたしから、いなくならないでくださいね」

 

「当り前よ。あんたは、あたしの可愛い猫だからね。永遠に離してなんかやらないよ。覚悟おし」

 

 ゼノビアもシズを抱き締め返してくれながら、シズの頭を撫でる。

 いつの間にか、シズの身体から言いようのない不安のようなものがなくなっていることに気がついた。

 

 それにしても……。

 

 実のところ、褐色エルフといえば、シズはひとりだけ、思い浮かべる人物もいる。

 だが、伝え聞いたことによれば、彼女は、まだナタル森林にいるはずであり、エランド・シティというエルフ族の都にある森林内で唯一の冒険者ギルド支部で、フリーの冒険者をしているはずだ。

 こんなところにいるはずはない……。

 だけど、万が一、あの女だったら……。

 

 そのときは、シズは全力をもって逃亡するだろう。

 なにが苦手だといって、ロウ=ボルグという男も怖かったが、そのロウよりもずっと、シズはその女エルフが苦手だ。

 

 まさか、イライジャではないよね……。

 

 シズはまだ脱力して怠い身体をゼノビアにもたれかからせながら、再び宿屋通りに戻った。

 

 

 *

 

 

 聞き込みによる手掛かりが見つかったのは、その日の夕方だった。

 褐色エルフの女が宿泊している宿を見つけたのだ。

 もっとも、まだ戻ってはおらず、また、前払いで連泊の手続きはしているものの、昨夜は戻っておらず、その前は戻ったが、その前日もいなかったということで、毎日戻るわけでもないようだった。

 荷物も残してはおらず、もしかしたら、戻って来ない可能性もあると、宿屋の亭主も首を傾げながら語った。

 

 前払いで手続きをしながら、宿泊はしないなど不思議だと思ったが、さらに聞き込んだところ、同じように不規則な連泊をしている宿屋がもう一軒あった。

 両方の宿屋で耳にしたことを総合すれば、その女は二軒の宿屋で部屋を同時に借り、どちらかの宿で宿泊をするということを繰り返しているみたいだとわかった。

 なんで、そんなことをするのかは謎だ。

 

 もしかしたら、用心深いのかもしれないが、それ自体が、彼女が怪しい立場であるということを物語っている気がした。

 シズとゼノビアは話し合って、それぞれの宿屋にひとりずつ泊まり、情報を探ることにした。

 なにかあったら、お互いにすぐに連絡を取り合えるように、通信用の魔道具も準備した。

 この日については、結局、褐色エルフは、ふたりの宿屋の両方に現れずに、ゼノビアとも連絡をして、そのまま分かれて宿泊を続けようということにした。

 

 シズは、久しぶりにひとり寝で寝台に滑り込んだ。

 もちろん、褐色エルフの部屋だという扉には特殊な魔道具を仕掛けて、誰かが中に入れば、シズに信号が入るようにもしている。

 そして、そのまま寝入ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腕がシズの身体をぎゅっと抱き締めてくる。

 まだ朦朧とした意識の中で、シズはうっとりとその気持ちのいい感触に身を委ねた。

 こうやって、誰かに抱き締められながら寝るのは安心する。

 

 シズは、親のない子供であり、母親の故郷だという森エルフの比較的大きな里でシズは育った。

 里の名は「自由エルフの里」といい、周辺ではもっとも大きなエルフ族の集落だった。

 

 シズの母親はエルフ族だが、父親は人間族だったそうだ。

 いずれにしても、シズには両親の記憶はまったくない。母親はシズを産むのと引き換えに命を失い、父親は人間族だということしかわかっていない。

 だから、シズはエルフ族であって、エルフ族ではない。

 ハーフ・エルフ族──。

 つまりは、合いの子である。

 

 自由エルフの里には、シズのような孤児を引き取る大きな施設があり、その里だけではなく、近隣の里からも孤児になった子供が預けられていて、シズはそこで何十人ものエルフ族の孤児たちの集団で育った。

 

 だが、シズはその外観からいつも浮いていた。

 確かに、シズの外観の一部はエルフ族特有の美しい肌を持ち、人間族に比べて目立つやや長い耳を持つ。

 しかし、シズの半分の人間の血は、シズの身体をエルフ族にしては随分と小柄にし、さらに、顔立ちもエルフ族というよりは、人間族に近い童顔にさせていた。

 エルフ族は子供といえども、誰も彼も、特有の美しい顔立ちをしているのだ。

 シズの顔と身体は、エルフ族の集団に入ると、明らかに違和感があった。

 

 集団とは違う異質の存在……。

 それは、そのことをもって、ほかのエルフ族の子供たちがシズを意地悪の対象にする十分な理由になった。

 しかも、シズはまったく魔力がない。

 エルフ族にとって魔道を遣えないということはあり得ることではなく、蔑みと苛めの標的にシズがなるのは当然だった。

 だから、シズは苛められっ子であり、常に仲間外れだった。

 

 そんな苛められる日々から脱却したのは、七歳のときだ。

 近隣の里から、ふたりの子供が新しい孤児として預けられてきたのだ。

 ひとりは、シズと同じ歳の白エルフ──。

 もうひとりは、肌の黒い、二歳上の褐色エルフ──。

 エリカとイライジャだ。

 

 エリカはとにかく強くて、剣でも体術でも誰もかなわなかった。すでに、大人の男でもエリカには歯が立たない者がいたくらいだ。

 また、イライジャはとても頭がよかった。

 物知りで、時にずる賢く、なによりも、人の上に立つのが相応しいような不思議な貫禄があった。

 

 エリカとイライジャは、別に前からの知り合いということではなかったようだが、シズのいた里の孤児院の施設にやって来て意気投合し、あっという間に、このふたりが孤児たちのリーダーのような存在になった。

 シズはいきなりやって来て、歳上の男の子たちをも差し置いて、すぐに全員を牛耳ったエリカとイライジャに憧れた。

 このふたりのように強くなりたいと思った。

 そして、接近した。

 

 すると、そのふたりも、ほかのエルフ族の子供とは違っている可愛らしいシズの外観が気に入ってくれて、いつもそばにいる存在として、シズを受けれてくれた。

 ふたりと仲良くなったことで、シズに対するいじめは皆無となり、シズの幸せな日々が始まった。

 

 それからは、いつも三人一緒だった。

 シズがそれを求めたということもあるだろう。

 常に三人──。

 

 遊ぶときも……。

 勉強するときも……。

 武術の稽古をするときも……。

 食事のときも……。

 身体を洗うときも……。

 そして、こうやって寝るときも……。

 

 魔道のできないシズをふたりは馬鹿にしなかったし、そもそも、イライジャもまた、そんなに魔道が得手というわけでもない。

 しかし、集団のリーダーだ。

 

 このことは、シズに自信をくれたし、ふたりはシズに武術を教えてくれた。

 シズは、魔道の代わりに、誰にも負けない剣を身につけようと、それから今までにまして剣技の稽古に励むようになった。

 

 シズがエリカとイライジャに性愛のようなことをするようになったのは、それから五年後……。

 十二歳のとき……。

 

 シズには縁はなかったが、エリカもイライジャも、武術のみならず、エルフ族として魔道訓練を受けていた。

 特にエリカは、魔道の能力も高く、上級魔道組だった。

 

 そして、理由はわからないが、上級魔道の訓練の中には、自慰や仲間同士の性愛を積極的にするというものがあり、その相手として、エリカは、イライジャとシズにそれを求めたのだ。

 シズにしてみれば、いまでも意味不明なのだが、上級魔道師として魔力を高めるには、つまりは好色であることが望ましいのだという。

 その因果関係はわかっていないものの、好色であればあるほど、飛躍的に魔道力があがるという事実だけはわかっていて、このエルフ族の里でも、高位魔道師として見込みのある子には、童子、童女の時代から、そうやって早熟な性愛に目覚めさせるということをやっていたのだ。

 それを切っ掛けに、シズは、エリカとイライジャと、お互いに肉体を愛撫し合う「恋人」の関係になった。

 

 あれから、ずっとシズは、何年間もひとりで寝たことはなかった。

 常に、エリカ、または、イライジャ……、あるいは両方と一緒に寝た。

 肌と肌をくっつけて……。

 こんな風に……。

 

 三人で愛し合うときには、支配するのはイライジャだった。

 エリカもシズも、ただただイライジャに遊ばれて、気持ちのいいことをされて悶え狂う。

 そんな関係だった。

 イライジャは、どこで覚えるのか、縄遣いが上手で、イライジャに縛られると、いつも身動きのできない苦痛と恥ずかしさとともに、たとえようのない恍惚感を味わったものだった。

 

 シズは幸せだった。

 とにかく、シズはずっと三人は一緒だと思っていた。

 三人の関係は、死ぬまで続くものと信じ込んでいたし、結婚の約束だってした。

 それなのに……。

 

 それなのに、イライジャが里を訪れた同じ褐色エルフの男性と恋に落ちて、里を出ていったのは、三人が秘密の関係になった三年後……。

 イライジャが十七歳のときであり、シズとエリカが十五歳のときだ。

 

 イライジャは里を出ていき、エリカもまた、それを機会に里を出ると告げて、シズの前からいなくなった。

 シズは裏切られたと思った。

 一生、三人一緒だと思っていたのに……。

 それから、ずっとシズはこうやって、眠るときにシズを抱き締めてくれる存在を探していた。

 

 そして、ゼノビア……。

 やっと見つけた人生の伴侶……。

 二度と離さないと言ってくれた……。

 シズの大切な人……。

 

 こうやって、いつもシズを温かく抱きしめて寝てくれる……。

 懐かしい感触……。

 シズは相手を抱き締め直そうとして、腕が動かないことに気がついた。

 

 まあいいか……。

 

 シズが抱き締めなくても、その相手はシズをぎゅっと抱いてくれている。

 それで、十分にシズは満足だ。

 

 いい匂い……。

 

 強く抱きしめられて、ちょっと息が苦しい。

 だけど、苦しいのはいい。

 好きな人の肌を感じないよりも、ずっと幸せだ。

 シズは声を漏らした。

 

 だが、誰の肌の香りだろう?

 まだ眠気で痺れているシズの頭は働かない。

 ゼノビアではない気がする……。

 だけど、懐かしい……。

 

 耳元に息が吹きかけられた。

 そのくすぐったさに、力が抜けそうになる。

 昔からシズは耳が敏感だった。

 よく、イライジャとエリカからからかわれ、身動きできないようにされて、何度も何度も、左右から耳を刺激される悪戯をされたりした。

 おかげで、耳に息を吹きかけられるだけで下半身が痺れるようになってしまい、いまでも、耳打ちされるときなどは、自分が感じていることを隠さなければならなかったりする。

 

 その耳の刺激が続いている。

 シズの官能が刺激され、身体が熱くなる。

 だんだんと意識がはっきりとしてくる。

 

 はっとした。

 誰──?

 

 ゼノビアではない──。

 彼女は、褐色エルフの女を探すために、もうひとつの宿屋を見張っているはずだし、そもそも、この肌の香りと雰囲気は、ゼノビアじゃない──。

 

「ふふふ……。やっと、起きたのね、シズ……」

 

 耳元でささやかれた。

 誰かがシズの身体の上に乗っている。

 一方でシズの両手両脚を寝台の四隅に伸ばして、手首と足首を縛られていた。

 しかも、ちゃんと服を着て寝ていたはずなのに、完全な全裸だ。

 シズは驚愕した。

 

「んんんぐうう」

 

 叫ぼうとした。

 真っ暗で相手の姿はよくわからない。

 だが、ゼノビアではないということだけは、確実にわかる。

 しかし、口の中に布が入っていて、その上からさらに布を咥えさせられて頭の後ろで縛られている。

 猿ぐつわをされているのだ。

 

 誰──?

 シズは恐慌状態になった。

 

「誰かがわたしを探しているのに気がついて、昼過ぎから逆に罠を張って、その二人組が離れて見張りをするような状況を作ったのよね。だけど、まさか、シズとはねえ……。わたしもびっくりしたわ……。だけど、探す相手がわたしだということは知らなかったみたいね……。つまり、あんたらは、わたしだということを知らずに、わたしを探していた。そうよね……?」

 

 拘束されたシズの上に乗っている女が耳の穴に息を吹き込む。

 

「んんっ」

 

 腰の辺りの力が抜けそうになり、反対側に顔を動かすが、しかし、女はしっかりとシズの頭を抱えていて、反対側の耳にも指を入れて愛撫する。

 

「んんふううっ」

 

 シズは身体を竦みあがらせた。

 だが、ぎしぎしと手首と足首に嵌まった革紐のようなものが鳴るだけだ。

 やがて、そうやっているうちに、闇に眼が慣れて来て、薄っすらと相手の顔がわかるようになる。

 

 しかも、この声……。

 まさか……。

 

「しかも、急いで調べたところによれば、あんたたち冒険者のパーティなんだって? だったら、これはクエストで受けたのよね……? 一体全体、どういう経緯でわたしなんかの調査をクエストで受けることになったのか、洗いざらい喋ってもらうわね、シズ」

 

 イライジャ……。

 まさかのイライジャだ──。

 

 シズは愕然とした。

 本当に、謎の褐色エルフ女というのはイライジャだったのか……。

 だけど、そうだとすれば、ロウとエリカ訪ねてきたのは、ミランダが心配して、クエストにまでしたような、そんなに危険な意味はない?

 だって、イライジャとエリカは旧知の仲だし、もしかして、普通に訪ねて来ただけ?

 

 それにしても、なんでこんな状況に……?

 眠っていたとはいえ、素っ裸にされて縛られるまで気がつかないなど……。

 すると、イライジャがくくくと笑った。

 

「動顛しているようだけど、あんたたちは冒険者としてはまだまだね。シズもあんたの今の相棒の女も腕っぷしがあることは、離れて見張っていてわかったけど、無闇に聞き込みするなんて愚策よ。いきなり、知らない相手が自分を探せば、すぐに用心するでしょう。今頃は、向こうも、わたしが部屋に仕掛けた睡眠香でぐっすりよ……。どっちでもよかったけど、シズの方が気心知っているし、あんたの身体に訊ねることにするわね」

 

 睡眠香……?

 そんなものを仕掛けられていた?

 気がつかなかった。

 だが、あれは無色無臭で、確かにわかりにくい。

 しかも、事前でも、事後にでも気付け薬を身体に入れれば、すぐに覚醒するし、効果がなくなる。

 身体に害もなく、扱いやすい毒としてシズもゼノビアもよく使う。

 まさか、そんな単純な手に引っ掛かるとは……。

 

 おそらく、イライジャは気付け薬を服用しているのだろう。そして、睡眠香の影響で寝入ってしまったシズの服を脱がせて拘束すると、シズにその気付け薬を嗅がせて覚醒したのだと思う。

 さっきの朦朧とした夢心地は、睡眠香が抜けていくときの独特の感覚だったに違いない。

 

「んんんんっ」

 

 それはともかく、とにかく、事情を説明することだ。

 でも、クエストの内容は話せない。

 それをイライジャにわかってもらわないと……。

 

「さて、じゃあ、そろそろ始めるわね。だけど、もしかして、クエスト条件に口止めも入っているかもしれないから、訊問はしばらく、あんたを可愛がってからにするわ……。だけど、懐かしいわねえ……。昔はこうやって、三人で遊んだものね。もう一度、エリカも入れて、三人で遊びたいわね」

 

 イライジャが唇で耳を、手を乳房と股間に這わせてきた。

 シズはたちまちに翻弄された。

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