※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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257 真夜中の襲撃者(2)─昔馴染み

「んくっ、んふっ」

 

 イライジャの愛撫が続いている。

 四肢を縛る革紐は、若干緩く直されていた。

 しかし、それはシズを自由にさせるわけではなく、イライジャが好き勝手に、シズの身体を愛撫することができるようにだ。

 それと、身悶えるシズの抵抗を愉しむためだと思う。

 イライジャ自身が、笑いながらそう言った。

 

「んふううっ、んんんっ」

 

 シズは必死で拘束を解こうとしている。

 しかし、縄掛けの得意なイライジャの縛りが簡単に緩むことはなさそうだし、イライジャはシズの耳を舐め、背中を愛撫し、内腿の付け根を焦らすように刺激してくる。その刺激に翻弄されるシズには力が入らない。

 まだ、本格的な強い快感ではないものの、全身が痺れるように疼きが走り回り、シズの抵抗力を失わせていく。

 多分、それが狙いなのだろう。

 また、イライジャはまるで自分自身の身体であるかのように、シズの敏感な背中の場所を探し当てて、撫でさすり、くすぐり、それとも、軽く抓るようにしたりと、次々に刺激の仕方も変えてくる。

 しかも、股間の付け根のもどかしくてぎりぎりのところを愛撫しながらだ。

 そのたびに、シズは振り回され、震え、悶え乱れた。

 

「そろそろ、猿ぐつわを外す? 大騒ぎしないと約束したら、外してもいいわ」

 

 イライジャの手が背中から胸に移動してきた

 もう一方の手は相変わらずに、シズの大股開きの股間をまさぐっている。しかし、いまだに肝心な部分には一度も触れない。

 ただ、すでにすっかりと自分の股間が濡れていることをシズは気がついていた。

 

「んんっ」

 

 シズは必死に首を縦に振った。

 イライジャの手が口に伸び、猿ぐつわが外されて、口から布を取りだしてくれた。

 

「んはっ、はあ、はあ、はあ……、イ、イライジャ、こ、こんなことは……や、やめ、て……」

 

「こんなことって、なあに?」

 

 イライジャの指がクリトリスに伸びてすっと撫であげた。

 

「あふううっ」

 

 シズは本能的に脚を閉じようとしたが、足首の革紐に阻まれて、微かに寝台を振動させただけだ。

 腕も頭の上側に大きく開いたままで動かすことはできないし、シズはイライジャのされるがままになるしかなかった。

 

「お、お願い、もうやめて──。イ、イライジャをどうこうしようと思ったわけじゃないわよ。ご、誤解よ──。あ、あたしたちは別のクエストで……」

 

 とにかく、クエストのことをイライジャに話すわけにはいかないのだ。

 それがクエスト条件だし、なんとか誤魔化せば……。

 

「ならいいわ。もう、そんなことどうでもよくなった。可愛いシズに久しぶりに触れていると、昔を思い出してきてね。あなたをもう一度躾なおしたくなったわ。今夜は朝まで遊びましょうよ。そしたら、もう一度訊ねるわ」

 

 イライジャがくすくすと笑った、胸や局部を強く刺激してくる。

 一気に淫らな感覚が倍増して、シズは大きな悲鳴をあげた。

 いずれにせよ、シズの言葉は、まったく信用されなかったみたいだ。

 すると、イライジャがくすくすと笑った。

 

「あんまり大きな声を出さない方がいいんじゃない。安宿だから壁は薄いわよ。まあ、真夜中だし、両隣の客も寝ているかもしれないけど」

 

 イライジャがすっと愛撫の手を緩めて、また周辺を探るような刺激に変えた。

 シズは悶え震えた。

 イライジャの魂胆はわかっている。

 つまりは、シズを完全に性的に屈服させる気なのだ。

 それから、必要な情報を聞き出すつもりなのだろう。

 そして、このままイライジャの巧みな愛撫を受け続ければ、確実にシズは屈服する。

 シズはそう思った。

 

「ほら、もっとあんたを見せて……。昔みたいに、わたしに甘えてくれないの? 可愛い、シズ」

 

 イライジャが愛撫を続けながら、耳元でささやく。

 ぞくぞくと痺れのような快感が全身に走る。胸と局部の翻弄するような刺激が続く。

 どんどんと押し寄せる淫らな感覚に、シズは頭を右に左にと振りながら、なんとか正気を保とうとした。

 やっぱり、イライジャは、責め上手だ。

 そして、地獄のような愛撫だ。

 なかなか触れて欲しい場所には刺激を与えてくれず、ぎりぎりのところばかりを狙って延々と責め続けてくる。

 感覚はどんどんと高まるのに、なかなか満たされない。

 そうかと思うと、さっと一瞬だけ強い刺激を欲しい場所に与えたりし、シズがそれに沈もうとすると、再びさっと逃げてしまう。

 

 心が乱れる。

 もうどうなってもいいという感情が襲う。

 シズの中に、本当に屈服されてしまうという恐怖が湧き起こる。

 とにかく、逃げないと……。

 シズはやっと我に返った。

 大きな声で助けを呼べば……。

 

「おっと、相変わらず、駄々っ子ね」

 

 シズが声をあげようと、大きく息を吸い込んだとき、イライジャの指が首の横を突然に深く突いた。

 その瞬間、喉の力が小さくなり、息がしにくくなった。

 

「ふはっ、はっ、はあっ、はっ、な、なに? なん……なの……」

 

 シズは混乱した。

 また、大きな声を出したつもりなのに、ささやくような声しか出ない。

 しかも、息ができない。

 精一杯に呼吸して、やっと普通に息が吸えるくらいだ。

 イライジャの「経絡突き」だと悟った。

 故郷の里で別れるときには、すでにイライジャはその技を身に着けていたが、イライジャは「経絡」という身体のあちこちにある「つぼ」に気を注ぐことによって、相手の身体を弛緩させたり、痺れさせたりすることができるのだ。

 いま、喉を弛緩させる経絡を押されたのだとわかった。

 

「はっ、はっ、く、苦しい……。イ、イライジャ……、く、苦しいの……」

 

 息ができない。

 だんだんと苦しくなる。

 必要な息が十分に吸えないので、頭がぼうっとしてくる。

 シズは恐怖に襲われた。

 

「逃げたりしないで、シズ……。そうしたら、元に戻すわ。それに、もう切なくなったんじゃない。正直に言ってよ」

 

 シズは首を横に振った。

 思い切り、股間を強く掻きまわして欲しい。

 でも、おそらく、それを口に出したら、シズは負ける。

 イライジャに屈服させられて、完全に軍門に下ってしまうことは目に見えている。

 

「な、ない……。そ、そんな……ことない……。そ、それよりも、息を……。はあ、はあ、はあ……」

 

 シズは哀願した。

 もうだめだ。

 本当に苦しい。

 呼吸を半分以下に抑えられて、こんなに愛撫をされ続ければ、このまま死んでしまう。

 すると、イライジャがさっきの首の横を再び強く押す。

 足りなかった息が一気に入ってくる。

 

「また助けを呼ぼうとしたら、もう一度息をとめるからね、シズ」

 

 イライジャがそう言って、股間を強く刺激してきた。

 

「あっ、ああっ」

 

 シズは身体を大きくのけ反らせて悶えた。

 

「さあ、思い出そうね、シズ……。あんたは、わたしのねこだったのよ。可愛い、可愛い、シズ……。甘えん坊で……寂しがりやで……」

 

 イライジャは肌に密着するような薄いシャツを身に着けていたが、それをさっと脱いだ。

 胸巻きはすでに外されいて、イライジャの乳房が露出する。

 乳首は勃起していた。

 シズは、イライジャもまた、興奮しているのだとわかり、少し嬉しくなった。

 ズボンも脱ぐ。

 イライジャが腰の小さな下着一枚だけになる。

 

「イ、イライジャ──」

 

 思わずシズは声をあげた。

 吸い込まれるような優しい瞳がシズを受けとめる。

 シズの中に、あの懐かしい里の日々が思い起こされてくる。

 

「さあ、ふたりで愉しみましょう……。昔のように……。昔と一緒よ」

 

「昔と……」

 

 そのとき、イライジャがシズの上にぴったりと重なるようになり、イライジャの乳首をシズの乳房と乳首に重ねるようにして、擦りつけてきた。

 指がすっと股間の亀裂に挿入してくる。

 シズの敏感な場所をその指がぐっと押した。

 

「ああっ、ああああっ、んはあああっ」

 

 シズは声をあげてしまった。

 慌てて口を閉ざすが、淫らで痺れるような快感がシズを襲っている。

 

 そして、イライジャの愛撫が続く。

 どれくらい時間が流れたのか……。

 もう、なにも考えられない。

 自分がどうしてここにいて、いまどういう状況なのか考えられなくなる。

 それよりも、イライジャとシズの時間に浸りたい。

 いまだけ……。

 いま、この瞬間だけでいいので、あの愉しかった里の日々に……。

 

「あうううっ、イライジャ姉さん──あああっ」

 

 シズは激しく身悶えた。

 そして、イライジャの名を昔の呼び方で叫ぶ。

 乳首と乳首を擦る遊びに、シズは翻弄される。

 甘く鋭い感触のあとに、イライジャの肌の温かみが伝わり、それが快感の余韻にように全身に響く。

 

「んふうう」

 

 そして、股間の中を刺激される。

 クリトリスをくすぐられる。

 一気に快感が暴発する。

 

「やあっ、やっ、ああっ」

 

「ああ、き、気持ちいい……。あふうっ」

 

 シズだけでなく、イライジャも胸の刺激で悶えている。

 嬉しかった。

 イライジャも感じているのだと思った。

 シズは乳房が擦って来るのに合わせて、今度は自分から擦りつけるように、胸を出した。

 

「あああっ」

 

 イライジャの眉間に快感の縦皺が寄る。

 その瞬間、イライジャがシズの股間の刺激をさらに大きくした。

 

「んぐうううっ」

 

 全身に衝撃が走った。

 一気に絶頂が迫ってくる。

 だが、すっとイライジャの手が股間から離れる気配がした。

 

「ああ、待って、このまま──」

 

 シズは腰を持ちあげて、イライジャの指を追いかけるようにしながら、思わず声をあげた。

 

「だったら、なにか言うことがあるんじゃないの?」

 

 イライジャが笑った。

 いま、イライジャは上体を起こして、シズの胸から離れている。

 股間の指は、腰をあげているシズの局部ぎりぎりのところまで引いていた。

 

「い、いかせて──。イライジャ姉さん、このままいかせて──」

 

「よくできました……。可愛いわ、シズ……」

 

 イライジャが戻ってきた。

 股間に深く指を挿入して、肉芽とともに強い刺激を与えてくる。

 さらに、身体を倒して、シズの唇にイライジャの口を重ねてきた。舌が挿入してきて、口の中と舌を舐められる。

 

「んふうううっ」

 

 シズは絶頂した。

 快感が迸り、全身が震えた。

 ぱっとなにかが弾けた。

 一気に身体が脱力する。

 

「さっきは気持ちよさそうだったわね……。だけど、可愛いシズ……。まだまだ、終わりじゃないわよ。さっき、あんたの荷物から見つけたんだけど、こんなものも持っているのね」

 

 一瞬だけ頭が真っ白になって、なにもかもわからなくなってしまったが、気がつくと、寝台から降りていたイライジャが、股間に張形を生やしていた。

 シズとゼノビアが愉しむための玩具であり、男性器をかたどったものを腰に革ベルトで巻いて繋ぐものだ。

 ゼノビアは、それで「男」になって、シズを責めるのだ。

 それを、イライジャが下着の上から身に着けている。

 

「さあ、続きをしましょう。朝までは長いわ……」

 

 イライジャが妖艶な笑みを浮かべて、再び寝台にあがってきた。

 

 

 *

 

 

 ミランダは苦虫を噛み潰しているような気持ちになっていた。

 目の前にいる褐色エルフの女は、ミランダとその女のあいだにあるテーブルに、一個の透明の小さな球体を乗せていた。

 鶏の卵ほどの大きさの半透明の球体であり、「映録球」という魔道具だ。

 記録をした映像と音を半透明の立体映像として再生してくれる記録具であり、王都では広く扱われている消耗品だ。

 安価ではないが、高額でもないので、魔道具を扱う店ならどこででも、また、いくらでも買える。

 

 それはいいのだが、ミランダが困惑したのは、この女が持ち込んだ映録球の記録だ。

 さっき、再生した記録では、寝台に仰向けにして縛りつけられているシズが汗みどろの朦朧とした表情で、ミランダから目の前の女を襲えとクエストを受けたと語っていた。

 どういう経緯で、シズが自白させられたか不明だが、胸から下を掛け布で覆っていたシズの身体は裸だろう。

 なんとなくそんな感じだった。

 つまりは、シズは、この女を捕らえようとして、逆に捕まり、色責めにかけられて、すべて自白してしまったということか……。

 面倒なことになったと思った。

 

 それにしても、あいつらめ……。

 失敗するにしても、やり方があるだろう。

 なにもかも、ぶちまけて記録にまで録られるなど……。

 ミランダは内心で舌打ちした。

 

「それで、イライジャだったかしら? あんたは、なにを言いたいの?」

 

 ミランダは言った。

 冒険者ギルドにある上級者パーティー用の個室のひとつだ。

 まだ、早朝といえる時間だったが、目の前の女が襲撃でもせんばかりの勢いでここにやって来て、ミランダを呼び出し、この部屋に案内させると、ふたりきりで、さっきの映録球の記録を再生したというわけだ。

 ミランダの問い掛けに、イライジャという女はにっこりと微笑んだ。

 

「まず、はっきりさせておきたいのは、そこにあるのは唯一の記録じゃないということよ。すでに十数個は複製して、わたしが無事にここを出なければ、あちこちに、ばら蒔かれる手筈になっているわ。善良でなんの罪もない異国の訪問者をこのギルドが襲撃させたという証拠よ。それが拡散すれば困るんじゃない?」

 

「あちこちって、どこよ?」

 

 困るというほどでもないが、確かにギルドの醜聞にはなるだろう。どうにでも揉み消せる案件ではあるものの、拡散の仕方によっては、ギルド長であるイザベラや、イザベラの保護者のような立場になっているアネルザに迷惑がかかるかもしれない。

 アネルザは、いま、テレーズという女官長とのあいだで、王宮支配の主導権争いの真っ最中だ。

 まさか、このギルドが足を引っ張るわけにはいかない。

 

「あちこちは、あちこちよ。あなたに説明する必要はないと思わない? まあ、ばら蒔かれれば、困るところと思ってちょうだい」

 

 ミランダは嘆息した。

 なかなかに、したたかな女みたいだ。

 

「じゃあ、要求は? それとも、ただ文句を言いに来たの?」

 

「まさか」

 

 すると、イライジャががばりと頭をさげた。

 ミランダは驚いてしまった。

 

「ロウとエリカに会わせて。わたしは、怪しい者でもなんでもないわ。それと、教えて――。あなたのところにいるロウ=ボルグとエリカという(シーラ)・ランクの冒険者は、一年半以上前にナタル森林からこの国にやって来た移民のふたりに間違いないのね? あのふたりは生きてるの? そうなのよね?」

 

 イライジャが頭をあげる。

 女の態度の急変に、ミランダは面食らう思いになった。

 

「なによ、あんた? そもそも、あんたは何者なの?」

 

 とりあえず訊ねた。

 なんとなくだが、心配したようなロウとエリカを狙う刺客の類いには見えない。

 改めて考えると、この目の前のイライジャは大した武術の腕はないだろう。

 刺客とは思えない。

 もっとも、エルフ族だから、魔道が得手なのかもしれないが、ミランダにはイライジャから、それほどの魔道力も感じない。

 まあ、高位魔道遣いなら、自分の魔力は完全に隠してしまうから、イライジャがそれかもしれないが、どうにも、ミランダにはイライジャが刺客のような仕事をするような女には見えないのだ。

 すると、イライジャは首に提げていた鎖を服の下から出して、ミランダに示した。

 鎖の先には、冒険者であることを示す紋章付きの銀の丸い金属版が付いている。銀は(ブラボー)・ランクを示す。

 

「あんた、冒険者だったの?」

 

 ミランダは、首飾りを受け取りながら言った。

 次いで、自分の魔力をそれに通す。

 ハロンドール王国全域の冒険者ギルドを統括するミランダのみに許される特別の魔道だ。

 

 ギルドのタグから、イライジャの情報が頭に流れ込む。

 所属は、ナタル森林国のエランド・シティの冒険者ギルド……。

 登録名は、イライジャ――。

 パーティーは誰とも組んでおらず、フリー ――。

 罰則や規定違反の記録はない……。

 この場でわかるのは、それくらいだが、奥で検索器にかければ、さらにこれまでに受けたクエストの記録までわかるだろう。

 

「記録を照会してもらっていいわ。もしも、ここのロウとエリカが、ナタルの森林から、一年半くらい前にやって来た移民のふたりなら、ふたりにどうしても会いたいのよ。エリカとわたしは、幼馴染みよ。ロウとは、まあ、親しい仲というところかしら」

 

「親しい仲?」

 

 ミランダは小首を傾げた。

 すると、イライジャはうっすらと微笑んだ。

 

「男と女の仲よ。まあ、一度だけだけど……。いえ、二度か……。お陰で、里を追い出されて、いまはフリーの冒険者よ……」

 

 そして、イライジャは真顔に戻った。

 

「さあ、わたしの手の内は明かした。教えてちょうだい。彼はどこ? 生きてるんでしょう? あんたから、言うわけにはいかないなら、ナタルの里のイライジャが訪ねて来たと、彼らに伝えるだけでいいわ。大切な話があるのよ」

 

 イライジャは真剣な表情だ。

 ミランダは確信した。

 これは、“白”だ。

 

 そのときだった。

 部屋の奥側の扉が開いて、アネルザが入ってきた。

 ミランダは、イライジャがここに飛び込んできた時点で、即座に王宮のアネルザに、“ほっとらいん”で連絡をとっていた。

 アネルザは、隣の部屋でずっとミランダとイライジャのやり取りを聞いていたはずだ。

 この部屋の様子を覗く仕掛けを隣室に備えさせている。

 ここは、個室の中でもそういう目的にも使える特別な部屋なのだ。

 

「えっ?」

 

 突然に乱入してきたアネルザに、イライジャが呆気にとられた表情になる。

 一方で、アネルザは、ミランダとイライジャがそれぞれに腰かけている向かい合う長椅子のうち、ミランダのいる側に無造作に座った。

 

「ミランダ、こいつは問題ない。ただの知り人だったようだ。すまんかったな。お前をさらうように指示したのは、わたしだ。なにしろ、ロウには何人か敵がおるものでな」

 

 アネルザが言った。

 イライジャが怪訝な顔になる。

 

「あのう……。あなたは……?」

 

 イライジャはどう反応していいか、わからない感じだ。

 まあ、そうだろう。

 アネルザの装束からすれば、ひと目で上級階級の女性であることはわかるはずだ。

 しかし、喋り方は独特の粗野な雰囲気であるので、接したばかりでは、アネルザがどういう立場の相手なのかはわかりにくいと思う。

 

「この国の王妃のアネルザだ」

 

 イライジャが目を丸くした。

 そして、慌てたように立ちあがりかける。

 だが、アネルザが手でそれを制する。

 

「よい。どうせ、お前がロウの女だというなら、ならば、同じ立場だ。わたしもまた、ロウの女だからな。ロウにすっかりと支配されてしまった愛人のひとりだ」

 

 アネルザがからからと笑った。

 

「ええっ?」

 

 イライジャが絶句した。

 

「アネルザ、それは……」

 

 さすがに、ミランダはたしなめた。

 まだ、ロウとどの程度の関係なのかわからない。いきなり、あからさまにしすぎだ。

 しかし、アネルザは手をひらひらと身体の前で軽く振る。

 

「構わん。こいつは、確かにわたしらの仲間なのだろう。ロウの女というのは本当に違いない。なんとなくだが、わたしにはわかる……」

 

「信用してもらって、ありがとうございます」

 

「そして、ロウはいま、クエストで王都にはおらん。性の相手をする女を四人連れていっている。その中のひとりが、さっき言っていたエリカだな」

 

「ええっ? あの純真で誠実そうなロウが? こっちで、そんなにたくさんの愛人が?」

 

 イライジャが呆気にとられたような声をあげた。

 しかし、むしろ、ミランダはイライジャの物言いに驚いた。

 

「純真で誠実? 誰のことだ? ロウのことを話しておるのではないのか? あのとんでもなく好色で女たらしの……」

 

 アネルザも首を傾げている。

 

「もちろん、ロウのことですけど……。エリカをとても大事にしていて……。わたしが強引に迫ったときには、なんか気後れしたみたいな態度で……。まあ、その後はとても上手でしたけど……」

 

 イライジャが懐疑的な顔になる。

 しかし、すぐにはっとなったように、顔を赤らめて口をつぐんだ。

 アネルザにつられて、赤裸々に語りすぎたと思ったのだろう。

 

「セックスが上手なところは一致してるな。しかし、鬼畜だろう?」

 

 アネルザが言った。

 

「鬼畜というほどでも……。縛られはしましたけど……。でも、あのう、同じロウですよね?」

 

「多分な……。だが、あの男が純真だと? 王妃のわたしを強姦した男だぞ。逆さ吊りにして」

 

「えっ、逆さ吊り?」

 

 イライジャは驚いている。

 

「お前も酷い目にあったのだろう、ミランダ? 最初はほとんどレイプだったのだろう? あの男が純真か?」

 

 アネルザがミランダに話を振る。

 ミランダも肩を竦めた。

 まあいい。

 おそらく、このイライジャは仲間なのだろう。アネルザには人を見る目はある。

 アネルザはイライジャに、すでに信頼をのせている気配だ。

 

「最初だけじゃないわね。いまでも、時々、襲われるわ。何度、当然に顔に袋を被せられて、無理矢理に犯されたか……」

 

 ミランダは思い出して言った。

 どうでもいいけど、なぜ、あの男はミランダを相手にするとき、あんな心臓に悪い抱き方ばかりするのか……。

 聞けば、ランについては比較的、優しく抱いている気配なのだが……。

 

「ところで、ボルグという姓は? 話を聞いていると、だんだんわたしが訪ねてきた同じロウなのか不安になってきて……。とにかく、王都には着いたばかりで、彼らのことは向こうのギルドで検索できる記録しかわからなくて……」

 

 イライジャはだんだん不安そうになっている。

 

「ボルグというのは、あの男が王国に対する功績でもらった子爵としての姓だ。まあ、ゆっくりと教えてもやろう」

 

 アネルザだ。

 

「ところで、あんた、エリカとは幼馴染みというのは本当なの?」

 

 ミランダは口を挟んだ。

 

「ええ、ナタル森林のある里の孤児院で、シズも合わせて三人一緒で……」

 

「なら、間違いないわ。同じエリカよ。ロウには紹介するわ。でも、王妃殿下の言うとおり、彼はクエストで王都を出てるわ。だけど、数日以内に戻ると思う」

 

「それは、本当かい、ミランダ?」

 

 アネルザが口を挟んだ。

 

「ええ、夕べ遅くに、向こうのギルド支部から、ロウたちが特異点を処理して、地方王軍に引き渡したという情報が入ったのよ」

 

「よかった……」

 

 イライジャは、ほっとしている。

 

「ところで、あんたがギルドから無事に出れないとき、あちこちにばら蒔かれることになっている映録球はどうなってるの?」

 

 ミランダは言った。

 怪しい相手でなかったのは判明したが、こうやってのんびりと話しているうちに、あれが拡散されては堪らない。

 だが、イライジャはにっこりと微笑んだ。

 

「あれは、嘘よ。映録球も安くはないし、そんなに数は揃えないわよ。そこにあるのが唯一のひとつよ」

 

 つまりは、はったりということか。

 ミランダは苦笑した。

 

「そういえば、シズといえば、彼女たちにはちゃんとクエストの報酬を支払ってよね、ミランダ。あれでも、あたしの妹分なんだから、追い詰めといて、クエストを失敗させたなんて、目覚めが悪いわ」

 

 すると、イライジャが言った。

 ミランダは当惑した。

 それにしても、初対面なのに、かなり親しげだ。まあ、これがイライジャの武器でもあるのだろう。

 

「成功か失敗かは、ギルドで決めるけど、クエストは失敗でしょう。当然に、支払いはなしよ」

 

 ミランダは言った。

 すると、イライジャは軽く首を横に振った。

 

「シズには、詳しいところまで白状させたわ。クエストの内容は、わたしをあなたの前にさらってくることだったんでしょう? わたしは、ちゃんとあなたの前に来たわ。目的は達成されているもの」

 

「えっ?」

 

 面食らったが、横でアネルザが大笑いした。

 

「なかなか、面白い女だな――。ミランダ、払ってやれ。確かに、こいつはギルドに来た。ある意味、生け捕りだ」

 

「冗談じゃないわよ。クエスト情報を漏らすなんて、大失敗もいいところよ。そういうクエスト条件だったのよ」

 

 ミランダは、驚き呆れた。

 

「誰にも知られてないわ。情報漏洩はなし。知ったのはわたしだけよ……。そもそも、さらう相手に知られずに、ここに連れてくるなんて不可能なんだから、その前提は、わたし以外の者に知られるなという意味じゃないの」

 

「はあっ?」

 

 ミランダは声をあげた。

 だが、なぜか、アネルザはイライジャの言い分が気に入ったようだ。

 さらに笑って、成功扱いにしてやれと言った。

 

「……まあ、依頼人は、一応はアネルザなんだから、あんたが成功というなら、そう扱うしかないんだろうけど……」

 

 なんだか、釈然としない。

 そのとき、今度はロビー側、つまり、冒険者たちの集まる受付などがある側が騒がしくなった。

 まだ、冒険者がやってくるような時間には早すぎるが、争うような声もする。

 マリーとランの声もするような……。

 

「ちょっと、どきなさいよ。わかってんのよ。あいつはここにいるんでしょう――」

 

 壊れるような勢いで扉が開く。

 怒りの形相で入ってきたのはゼノビアだ。シズもいる。マリーとランはふたりして、それをとめようとしていたみたいだ。

 

「ね、ねえ、ゼノビアお姉さま、あ、あたしが悪いの……。イライジャとも喧嘩しないで。本当にごめんなさい」

 

 シズが泣きそうな顔をして、ゼノビアの後ろから、引き留める格好だ。

 とにかく、ゼノビアはすごい形相だ。

 

「あなたがゼノビアね? 悪く思わないでよね。あんただって、わたしに危害を加えようとしたんでしょう。お互い様よ――」

 

 イライジャが立ちあがって、ゼノビアの前に立ちはだかるように近づく。

 その動作があまり堂々としていたので、ミランダが心配したくらいだ。なにしろ、ゼノビアはイライジャをいまでも殺さんばかりの勢いなのだ。

 

「やかましい。あ、あんたねえ、あたしのシズに……」

 

 そして、ゼノビアがイライジャの胸ぐらを掴んだ。

 

「やめてっ」

 

「ゼノビア――」

 

 ミランダは、シズとともに慌ててあいだに入る。

 

「だったら、わたしと勝負する?」

 

 すると、イライジャが動じることなく言った。

 ゼノビアは、まだイライジャの襟を掴んだままだ。

 ミランダは強引に、ゼノビアを引き剥がした。

 

「勝負? あんたとあたしがかい? 望むところだよ。表に出な」

 

 ゼノビアが怒鳴る。

 しかし、イライジャは笑った。

 

「腕っぷしの勝負じゃないわよ。そんなのわたしが負けに決まってる。百合愛の勝負よ。寝台の上でどちらが上かの勝負なら、してもいいわ」

 

「百合愛って、なに言ってんだい、お前――」

 

 ゼノビアが目を白黒している。

 そのとき、アネルザの笑い声がした。

 

「本当に面白い女だね、イライジャ……。ところで、そんなに怒るんじゃないよ、ゼノビアとやら。このイライジャは、お前らのクエストを成功扱いにするように、ミランダと直談判したんだ。依頼料を出したのは、わたしだけど、ちゃんと報酬は払ってやるよ」

 

 アネルザが笑いながら言う。

 ゼノビアは、やっとアネルザの存在に気がついたようだ。

 首を傾げている。

 

「誰だい、あんたは?」

 

「この国の王妃のアネルザだよ。お前たちのことは、少しだけ聞いた。ロウとエリカを襲って返り討ちにされて、犯されたんだろう? だったら、棹仲間だね。そのロウの女のひとりだよ。ちなみに、そこのイライジャもそうらしい。だったら、一応は仲間だ。それに免じて怒りを引っ込めな」

 

「王妃――殿下? ロ、ロウの女? あ、あいつ、やっぱり何者?」

 

 ゼノビアが大きな声をあげた。

 

「そう思うわよね」

 

「常識外れの懐の広さですから、ロウ様は……。本当に大勢の女の人を愛されます」

 

 すると、ずっと口を開かずにいたかたちのマリーとランが口を開いた。

 ふたりは、まだ開きっ放しの扉のところにいる。

 そこを通して覗くギルドのロビーには、まだ人はいない。

 

「ねえ、さっきから、ちょっと気になってるんですが、あのロウには、ここにいる者のほかに、もっともっと愛人がいるのですか? なんとなく、そんな物言いみたいなんで……」

 

 イライジャがアネルザを見た。

 アネルザはにやりと微笑む。

 

「あいつは、自分の女については、隠さん主義に切り替えたみたいだから、教えてもいい……。ここにいる全員……ランも含めてな……。さらに、王太女、わたしの娘の王女、その両方の侍女全員、王太女の護衛長に王太女付き女官長……。みんな、ロウの女だ。そして、女騎士……。大きな声じゃ言えんが、女神殿長に、筆頭巫女、ほかにもいる。とにかく、みんな、ロウを慕っておる」

 

 アネルザがそう言って笑った。

 

「ええ――? どうして、あのロウがそんなことになっているの?」

 

 イライジャが大きな声をあげて驚いた。

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