【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「団長様、これは必要ありません。もう、次の女にしていいですよ」
奴隷商のマニエルは肥えた腹を揺すって飲み物を手にすると、壁の向こうの女から意識を離した。
向こうからはただの白い壁だが、こっちからは完全に透明になっていて、向こうが透けて見えている。
いい女には違いないが、商品にはならない……。
マニエルはそう判断した。
一応は、入国審査用に書かれた羊毛紙の書類に視線をやる。
人間族……。
やっぱり、年齢は三十とある……。
下着を脱がせる前は、それなりに見れたものだったが、素裸にさせた途端に、下着に隠れていた部分の肌の張り艶が年齢相応のものだったのだ。
駄目だ──。
美人だが、あれくらいのものなら、わざわざ、この国境監視団の団長に多額の代金を支払わなくても、正規の流通手段で手に入る。
しかも、かなり性器を使い込んでいる。
「調教」でそれなりの道具にはできるだろうが、それほどの手間をかける値打ちがあるとまでは思わない。
違法な手段とそれに伴う多額の賄賂を支払ってまで、ハロンドール王国に入国しようとする若い女を「奴隷」として横流してもらっているのは、それに見合う超一級の女奴隷を得るためだ。
つまりは、性奴隷だ。
性奴隷は金になる。
通常であれば、金貨五枚が相場である女奴隷が、愛玩用の美貌の性奴隷ともなれば、その十倍でも二十倍でも取引できる。
だから、危ない橋を渡ってでも、性奴隷用の女を手に入れる価値はあるのだ。
「そう言うな、マニエル──。この女はなかなか有名な踊り子だそうだぞ。一座の花形らしい。調教して性奴隷にすれば、金貨十枚にはなるんじゃないか? あれなら、半分の五枚で売ってやろう」
団長のゼッケルが壁の向こうの女の裸身に目をやりながら相好を崩す。
マニエルは首を横に振った。
「冗談じゃありませんよ、団長様──。この程度の女では手間に見合う価値があるとは思いません。それに、この女は旅芸人の一座の一員なのでしょう? 同行の旅芸人の処分はそちらでやってくださるので?」
マニエルは言った。
国境監視団の入国審査の場で、堂々と女をさらってしまうといっても、同行の者からすれば、無法に連れがさらわれるのだ。性奴隷として女をここで誘拐するとなれば、後腐れのないように連れを「処分」する必要がある。
マニエルが例外なくやっている処置であり、これを守っているから、いままで足が付かずにやってこれたのだ。
その「手間」についても、団長から女を回してもらう奴隷商のマニエルの負担ということになっているのだ。
だが、ひとりふたりの連れではなく、旅芸人の一座となれば、同行者は大勢だ。
マニエルが飼っているアサシンといえども、人数が多くなれば、骨の折れる仕事になる。
「冗談ではない。旅の女をそっちに回した場合の、同行人の処分はお前がするというのは約束事だろう──。いくらなんでも、国境監視軍を派手に動かせば、人の噂の背に乗る。そうすれば、俺とお前がやっていることが、王都にも届くということがあるやもしれん──。そうすれば、お前も俺も縛り首だ──。まあいい。次の女を入れる」
ゼッケルが手にしていた魔道具の伝声具を口に持っていった。
「……もういいわ……。検査は終わりよ。籠をそのまま持って出ていきなさい」
ゼッケルが女言葉を口にした。
その伝声具は特別なものであり、ゼッケルのようなだみ声でも、壁の先にいる向こうには、壁に取り付けてある伝声管を通じて、女の声に変換して聞こえるのだ。
男が検査をしていると思えば、女も警戒して抵抗を強くしたりする。
だが、女の検査官が機械的に指示をすれば、これも正式の検査なのだろうかと思ってしまい、抵抗なく指示に従うことが多いのだ。
いままでも、かなりの数の女をああやって裸にし、検査の名を借りて卑猥な姿勢をさせたりしているが、この方法をとることで、ほとんどの女は逆らわなかった。
「検査」のために、若い女の入国者を誘導する者を女兵だけにしてもらっているのもそのためだ。
調べをするのが、同性ということになれば、卑猥な検査でも、多くの女は抵抗心が小さくなる。
壁の向こうの女もそうだった。
股間を両手で拡げていた女が、当惑した顔で籠を持って部屋から出ていく素振りになった。
「……次を入れろ」
ゼッケルが傍らの部下に指示をした。
この「審査室」にいるのは、マニエルとゼッケルを除けば、ゼッケルのふたりの部下だ。
このふたりは信用できる。
それは、ゼッケルが信用できると言ったからという理由ではなく、団長のゼッケルと同様に、マニエルの息のかかった複数の賭博場で借金を作らせて身動きのできない状態にしているからだ。
実はこの三人には、街の数軒の賭博場で作ったかなりの借金があり、その支払金の一部をマニエルは肩代わりしている。
つまりは、三人をマニエルは金で縛っているのだ。
だから、信用できる──。
だが、ふたりは無論、団長のゼッケルもまた、それらの賭博場とマニエルが後ろで結びついていることは知らない。そして、こうやって、入国審査を受けにきた女のうち、これはと思った女を捕えてもらい、ひそかにマニエルに渡してもらう見返りに渡す金貨も、この後で三人が向かうであろう賭場場で取り返してしまう。
そうやって、マニエルはこの男たちを飼っているのだ。
だが、ゼッケルたちは、マニエルのことを自分たちの作った借金を肩代わりしてくれる便利な小悪党の奴隷商くらいにしか思っていないだろう。
しかし、マニエルがいなくなれば……。
あるいは、マニエルがもたらすこの闇奴隷の商売がなくなれば、すぐにでも借金取りが押し寄せて、なにもかも失ってしまう立場であることは確かだ。
だから、ゼッケルは、職権を生かしたこの「闇奴隷狩り」を続けるしかない。
マニエルは意識を魔道の壁の向こうに移した。
「おおっ……」
マニエルはそこに出現した女に思わず声をあげてしまった。
凛とした顔立ち……。
尖った耳……。
なによりも、人間族にはあり得ない澄んだ美貌……。
そして、真っ白い肌……。
白エルフの娘だ──。
しかも、美貌で知られるエルフ族の中でもこれは美しい……。
マニエルは嘆息した。
「珍しいな、マニエル……。声をあげるとはな……。確かに、これは一級品だ」
ゼッケルがにやりと笑っていた。
そして、伝声具に口を持っていく。
「荷物を床に置いて、右の壁に向かってまっすぐに立ちなさい。手は身体の横よ」
ゼッケルが言った。
その声は女の声として伝わっているはずだ。
壁の向こうのエルフ娘がびくりと身体を動かした。
しかし、すぐにその女は言われたとおりのことをする。
エルフ娘の抱える籠で隠していた乳房が露わになり、エルフ娘の美しい肢体がはっきりと見えた。
乳房は大きくもなく、また、小さくもない。
豊かであるべきところはきちんと肉がついていて、細くあるべき場所はしっかりと細い。
身体はしっかりと鍛えられている。
おそらく、武芸もできる。
マニエルはゼッケルの部下が差し出した羊毛紙の書類に目をやった。
どうやら、冒険者希望のようだ。
連れは人間族の若い男がひとり……。
少なくとも届けられているものには、ほかに係累もない。
これはいい……。
このエルフ娘をさらっても、それを気にするのは連れの男ひとりだ。
それはどうにでもなる……。
そして、エルフ娘に奴隷の首環を装着して売り飛ばす……。
金貨六十……。
いや、七十でも売れる……。
ひと財産だ。
マニエルは早くも、目の前のエルフ娘を性奴隷として売り飛ばすときの皮算用を始めた。
「手を真っ直ぐに上──。ゆっくりと一回転しなさい」
ゼッケルが女言葉で指示した。
娘が言われたとおりのことをする。
エルフ族は大抵は気位が高い性質が多いが、この娘は素直な性質のようだ。
素直な性格の女は「調教」がやりやすい。
「調教」をしていない性奴隷を飼いたがる愛好家もいるが、やはり、商品としては「調教済」が高い。
ゼッケルが次の指示をするために口を開いた。
「片脚をあげて、横に開きなさい。両手は真横」
エルフ娘は少し面喰ったようだったが、それでも逆らわなかった。
壁の向こうの娘が、下着一枚の姿で片脚をあげた。
これは──?
「おっ?」
マニエルはあることに気がついて、思わずほくそ笑むとともに、小さく声をあげた。
片脚立ちをしているエルフ娘の股間に、女の蜜特有の丸い染みを見つけたのだ。
明らかに、たったいまできたものであり、まだ新しい。
このエルフ娘は自覚がないようだが、壁の向こうから与えられる指示に従って、下着一枚でやらされている痴態に、娘の身体はかなりの欲情を覚えているようだ。
その視点で改めてエルフ娘を眺める。
白い身体が火照ったように赤い。
薄っすらとだが、汗もかいている。
もしかして……?
「団長殿、それを貸してもらえませんか?」
マニエルは、伝声具を握っているゼッケルに手を伸ばした。
「おう、珍しいな……。だが、あれは安くはできんぞ。この俺にだって、あのエルフ娘が一級品だというのはわかる。金貨二十枚以下では渡せん物件だ。それだけ払ってもらわねば、解放してしまうぞ」
ゼッケルが笑いながら、伝声具をマニエルに手渡した。
この欲深の警備団長は、壁の向こうのエルフ娘にマニエルが興味を抱いたのがわかったのだろう。
だから、吹っかけてきたのだ。
マニエルは面倒なことになる前に、釘を刺すことにした。
「さて、それに見合うかどうか……。もしも、生娘なら、それくらい支払っても安いですがね……。使い古した中古品であれば、性奴隷としてはそれなりですよ……」
マニエルはわざと渋い顔で言った。
無論、嘘だ──。
性奴隷の価値に処女性を求める者は多いことは確かであり、処女はある程度は高額になるが、処女だからといって、どこまでも値が跳ねあがるわけでもない。処女が高いことはわかっているので、性奴隷を処女のままで売るように気をつけている奴隷商も多いからだ。
案外と処女の性奴隷は珍しくはない。
だが、真の好事家が性奴隷に求めるのは、生娘であるかどうかではなく、その性質だ。
性交渉をさせなければ、処女は簡単に手に入る。どんな女でも、少なくとも人生の一時期までは処女だからだ。そんなものをありがたがる好事家はそんなにはいない。
しかし、性奴隷に相応しい性質ともなれば別だ。
たとえば、気が強いのに、身体はどうしようもなく感じやすいとか……。
根っからのマゾっ子とか……。
普段は心から貞節だが、男女の営みになれば、どこまでもいやらしいとか……。
好事家の求める女はそれぞれだ。
そして、真の好事家は、その性奴隷が自分の求める「性質」を持っていると判断した場合は、本当に信じられないくらいの代金を支払ったりする。珍しくもない処女に大金を投じる愛好家は多くはないが、それぞれの愛好家の求める「性質」に合致する性奴隷を手に入れるのは簡単ではないから、それを得るために金に糸目をつけない者は多い。
だから、金になる。
マニエルは、壁の向こうのエルフ娘の「性質」が、男に本質的に支配されること求める「マゾ」なのではないかと思った。理不尽に扱われれば、扱われるほど欲情してしまうという変態的な性癖ということだ。
つまりは、被支配性が高いのだ。
数多くの性奴隷を扱ってきたマニエルとしては、それぞれの女の性癖を見抜く目は商売道具だ。
美貌のエルフ娘……。
支配されたがるマゾ……。
しかも、感じやすいのか……?
マニエルは、それが確かなら、平気で金貨百枚でも平気で出すだろう顧客を少なくともふたり思いつくことができた。
「そうか……。だが、処女だろう──。処女検査をしよう。処女なら金貨二十枚出せよ。よいな──」
ゼークトがかなり大きな声で言った。
だが、伝声具を通さないこっちの声は壁の向こうには聞こえないから問題はない。
「いいでしょう……。しかし、処女でなければ、金貨十枚が限界ですね……。でも、その前にいくつか確かめさせてください」
マニエルは言った。
そして、片脚立ちのまま、唄をうたえと命じた。
伝声具を通じた声は、マニエルに交代したとしても、同じ女の声として部屋の中に伝わるはずだ。
エルフ娘は、ほんの少し違和感を覚えたような表情をしたが、大して怪しむことはなかった。
すぐにエルフ族の童謡をうたいだす。
「おいおい、なにを遊んでいるのだ、マニエル?」
壁の向こうで片脚立ちで唄をうたっているエルフ族の女を眺めて、ゼッケルが呆れた声をあげた。
しかし、マニエルがこれによって確かめたのは、この娘がどれくらい従順な性質であるかどうかだ。
いきなり唄をうたえを命じられても、大抵は抵抗する。しかも、下着一枚の姿でだ。
だが、やはり、このエルフ娘は本質的に命令には逆らえないようだ。
マゾ娘として売り込めば、金貨百枚──。
マニエルは、それを確信してほくそ笑んだ。
それからも、マニエルはできるだけ普通の女なら馬鹿馬鹿しいと怒り出すような様々な痴態を取らせてみた。
娘はやはり逆らわなかった。
一方でだんだんと股間の染みが大きくなる。
本当に気がついていないのか……?
かすかだが息も荒くなっている。
マニエルは愉しくなってきた。
「おい、マニエル、いい加減にしろ。処女検査をしろ。処女検査を──。そして、忘れるなよ。生娘だったら、金貨三十枚だ──。いいな──」
ゼッケルの苛立った声がした。
マニエルは興が削がれたような気分になってしまった。
まあいい……。
確かに、金貨三十枚で仕入れたとしても安すぎる物件だ。
「……最後の検査だ。両脚を曲げて真横に開き、自分の手でヴァギナを指で拡げなさい」
マニエルは指示した。
さすがに抗議の声が戻ってきたが、マニエルが女検査官の口調で強く怒鳴り、早くしなければ男の兵を室内に入れると脅かすと、エルフ娘は結局は諦めたように、その場でがに股になって自分の指で股間を左右に開く。
やはり、マゾッ気のある性質であるのは間違いない。
通常の感性であれば、どんなに脅されても、そんな恥ずかしい行為を人に言われてやったりはしない。
ゼッケルが操作盤を動かした。
壁の向こうの部屋には、あらかじめ特別な魔道の仕掛けがあり、操作盤ひとつでいろいろなことができるようになっている。
「処女検査」もそのひとつだ。
床から特別な光を当てると、生娘だったら「赤」、そうでなければ「白」に光が照らすようになっているのだ。
透明の壁の向こうの部屋の床が光った。
床の光は白だった──。
エルフ娘がびっくりして、脚を閉じかけた。
「動くんじゃない──。いま、検査をしているのよ──」
マニエルは伝声具で大声をあげた。
エルフ娘はびくりと身体を一度震わせて、崩しかけた身体を硬直させた。
この反応……。
つくづく、男の嗜虐欲を刺激する反応だ……。
これだけでも、金貨百五十はいく……。
一方で、ゼッケルの舌打ちが聞こえた。
「金貨十五枚支払いましょう。エルフ娘は珍しいですからね……。下からの映像に変えてもらえますか、団長様」
マニエルは言った。
十五枚どころか、その三倍でも惜しくない。
思った通りに処女ではなかったが、むしろその方がいい。
生娘ではなかったので、買い叩かれると思っていたのだろう。十五枚というマニエルの呈示に、ゼッケルが嬉しそうな表情になった。
そのゼッケルが操作盤を動かした。
目の前の透明の壁にある景色が、向こう側の部屋を下から見る映像に変化する。
壁がエルフ娘の股間を大写しにした。
「おっ?」
そのとき、マニエルは娘の股間が熟れたように真っ赤になっていることに気がついた。
しかも、しっかりと愛液で濡れている……。
この反応はもしかして……。
実際に触ってみなければわからないが、これはすっかりと被虐に躾けられた女の身体の反応ではないだろうか……?
「……ふっ、生娘じゃないのね。だけど、綺麗な股ね。鍛えられているし、しっかりと筋肉も発達している……。よく締まりそう……。それにしても、もしかして、ちょっと濡れてる? お前、入国審査で感じてるの?」
マニエルは口にした。
すると、エルフ娘がさっと股間を閉じて、壁を睨んだ。
これも意外だった。
思いのほか、気は強いようだ。
マニエルは、その表情を見て、エルフ娘の評価を改めた。
あれは単に従順なだけの女ではない。
気は強く、しっかりと自分を持っている女だ。
だが、羞恥や恥辱でしっかりと反応する身体にされた……。
そんな感じのようだ。
つまりは、「調教済」ということだ……。
ならば、金貨二百はいく──。
マニエルは、拳をぐっと握っていた。
「ごめんね……。ちょっと、あんまり、あんたの反応が愉快だから、からかっただけよ。じゃあ、最後の検査よ。この声のする壁にぴったりとお尻をつけて、今度は指で肛門を開きなさい。そこに異物が混入していなければ解放よ」
続けざまに言う。
エルフ娘は少し戸惑っていたようだったが、結局はこちら側の壁に尻をしっかりと密着させて、肛門を左右に自ら開いた。
こちら側はあまり使い込んでいないようだが、間違いなく手が加わっている。
いずれにしても、マニエルは確信した。
調教済だ──。
掘り出し物だ──。
だとしたら、調教したのは、連れの人間族の男か?
頼りなさげでぱっとしない凡庸そうな男に思えたが、このエルフ娘をここまで調教したということか……?
そういえば、随分と歳の差もある。
男女のふたり旅など、信頼のおける者同士しかあり得ない。
もしかして、あの男が目の前の女の性の相手でもあるのか?
だったら、確実に係累は潰さないとな。
そんなことを思った。
「もういいだろう、マニエル──。回収作業に入るぞ」
ゼッケルが言った。
エルフ娘は気がつかなかったようだが、その娘が向こうの小部屋の隅に置いていた籠が消滅する。
その代わり、マニエルが奴隷女を調教するときに使用する張形付きの貞操帯が送り込まれる。
「……こっちも使ったことはあるのね……。まあ、いいわ。籠にあるものを身に着けなさい。検査は終わりよ」
マニエルは言った。
「あっ──」
すると、娘が叫んだ。
初めて、自分の服が消え、卑猥な淫具にすり替わっていることがわかったのだ。
「どうしたの? 早く、それを身につけなさい」
マニエルは女言葉で言ったが、我慢しきれなくて噴き出してしまった。
エルフ娘が怒りでさっと顔を赤らめた。
やっと、これがただの入国審査でないことを悟ったのだろう。
しかし、もう遅い。
ゼッケルが小部屋に「眠り効果」のある風を瞬間にたちこめさせた。
エルフ娘の身体が脱力して、崩れかける。
次に床が消滅した。
エルフ娘の身体は、床にできた穴に消えていった。
「……今日は、あの女だけで結構です、団長様──。金貨十五枚……いや、二十枚支払います。それとお二方にも、金貨三枚を……」
マニエルは、準備していた鞄からハロンドール金貨をそれぞれに置く。
「これは悪いな……」
ゼッケルが嬉しそうな顔になった。
ふたりの部下も同じだ。
それぞれがマニエルに礼を言った。
ゼッケルは立ちあがっていた。
さっそく、あのエルフ娘の身体を直接確かめたい。
マニエルの見立てが正しければ、まったくの掘り出し物だ。
調教済みのエルフ娘の美女──。
しかも、マゾ……。
金貨二百枚……。
いや、これは競売にかけるべきだろう。
好事家を集めた奴隷市を開くのだ。
あのエルフ娘が「本物」だとすれば、連中は代金に糸目はつけないはずだ。
部屋を出た。
マニエルは、ふと、エルフ娘の連れの人間族の若い男のことを思い出していた。
そういえば、あれを忘れずに処分しておかなければ……。
後々面倒になってはならない。
「もう、終わりですか……?」
部屋の外に待機をしていたコゼが顔をあげた。
マニエルの奴隷であり、用心棒代わりに連れてきていたのだ。奴隷の象徴である金属の細い首輪をしている。
主人に逆らうことを許さない「奴隷の首輪」であり、このコゼには「主人」として、マニエルを刻んでいる。
人間族の娘だ。
可愛らしい顔立ちをしているが、売り物ではなく、マニエル専用の奴隷である。
そして、アサシンだ。
もともと、税が払えないために家族から売られた十歳くらいの童女だったのだが、アサシンとしての素質をマニエルが見抜き、訓練を受けさせて暗殺者に育てあげた。
いまの年齢は二十だったと思ったが、すでに五十人以上は殺している凄腕の暗殺者だ。
「終わりだ。掘り出し物を見つけた。待機している店の者たちに連絡して、いつもの場所に馬車を回させろ」
マニエルは指示した。
エルフ族の娘を落下させた穴は、国境監視団とは道を挟んで隣接した小さな倉庫に地下で繋がっている。店の者たちは、そこで運搬用の馬車とともにいる。
「わかりました」
コゼが頷いた。
すべてを諦めたような顔がそこにある。
まったくの無表情だ。
マニエルは、こいつが笑ったり、怒ったり、泣いたりしたところを見たことがない。
この仕事をするようになって、すべての感情を失った。
そんな感じだ。
「それから、コゼ。仕事だ──。ある人間族の若い男を殺してもらう……。この国境監視団で入国審査を受けたあるエルフ娘が行方不明になる……。それについて、あるひとりの男が外で騒ぎ始めるはずだ。そいつを殺せ。ただし、誰が殺したのかわからぬように密かに始末するのだ。物取りにでもやられたように見せかけろ……」
マニエルは言った。
「わかりました、ご主人様……」
コゼは相変わらずの無表情のまま言った。