【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
263 赤い箱と青い箱
いつもの屋敷の広間の片隅に五個の脚付きの大きな姿見が並んでいる。
姿見の大きさは人の背丈ほどもあり、いずれも人が通り抜けられるほどの幅がある。
そのとおり、通り抜けられるのだ。
スクルズの移動術の能力を駆使した魔道具であり、それぞれ「第三神殿のスクルズの私室」、「宮殿内の王妃殿のアネルザの寝室」、「正宮殿のイザベラの書斎」、「屋敷妖精ブラニーが守っている小屋敷」、そして、新たに加わった「冒険者ギルドのミランダの部屋」を瞬間的に移動する出入り口である。
同じものが向こうにもあり、基本的には自在に通り抜けられる。
ただし、一郎の淫魔術の刻みのある女だけが使えるように、細工をしている。
それ以外の者にとっては、ただの姿見だ。
これが“ほっとらいん”だ。
少し前までは、壁などを使ったりもしていたが、跳躍先を逐次に増やすに伴い姿見で統一した。
壁は動かせないが、姿見なら簡単に移動できる。
まあ、もともと、シルキーがいれば、この屋敷のどこにでも、さらに転送してくれるのだが……。
また、アネルザの部屋には、後宮に繋がる“ほっとらいん”もあり、そこから、サキたちのいるところに向かうこともできるようになっている。
おかげで、女たちのところに通うのが便利になった。
もっとも、ほっとらいんの有効距離は王都と王都郊外の屋敷くらいのもので、これ以上遠くなれば、“ほっとらいん”は使えなくなる。
それをさらに、遠距離にしたのが、スクルズが新たに作った長距離対応の跳躍設備だ。
“ほっとらいん”の応用版であり、途中に魔石付きの中継器を幾重にも重ねることで、本来何日もかかる距離も一気に跳躍できるものだ。
一郎は“げいと”と名づけたが、最近、スクルズはこれの開発に成功して、何回か一郎も恩恵を受けた。
ただ、あっちは魔石を扱うことから資金がかかるため、スクルズはあちこちに資金提供を求めて、技術公開をしているので、こっちは公共性が強い性質のものだ。
しかし、これを開発した動機が、一郎と一緒にクエストに参加したいからだというのだから、一郎としても恐れ入ってしまう。
「この前、やっとミランダを説得して、冒険者ギルドにも繋げたんだ。でも、本当にミランダが嫌がって大変だった。俺が突然に背後からやってきたりすると、緊張するのでやめてくれと言われ続けてね」
一郎は横に立つイライジャに説明をしながら笑った。
「はあ……」
イライジャは、移動術ほどの高等魔道を術者なしに延々と維持する仕掛けに、目を丸くして驚いている。
一郎は、古代エルフ族の魔道技術に同じものがあると耳にしていたのだが、よくよく聞けば、エルフ族でも失われた技術らしく、いまは彼らにしても、こんなものはないらしい。
「ご主人様、支度はできたみたいですけど、寝台の横にある箱と玉はなんですか?」
コゼだ。
シャングリアとエリカもいる。
今日は、イライジャの歓迎会を兼ねた宴ということで、趣向を凝らした遊びを準備している。
何人くらい集まれるかわからないが、一応全員に声をかけた。
昨日、冒険者ギルドで声をかけたときには、アネルザは来ると言っていたし、スクルズも、朝の時点で、ベルズとウルズを伴ってやって来ると返事をした。
イザベラも来るかもしれない。
ミランダも遅くなっても、顔を出すということだった。
一郎は、この場を利用して、三箇月ほど留守にすることをみんなに伝えるつもりだ。
褐色エルフの里に行き、罪を犯して奴隷として売られることになったユイナを競り落とすためだ。
クエストで王都を空けることはよくあることだが、三箇月ともなれば初めてだろう。
伝えそこなったりすれば、それこそ、戻ったときに怒って頭の皮でも剥がされかねない。
なにしろ、一騎当千の女傑揃いなのだ。
「箱か? まあお愉しみだ。番号もな。もう少しして、みんなが集まったら説明するよ」
コゼが訊ねたのは、性宴の余興として準備した二個の箱と数字の書いた玉のことだ。
玉は一応、一から十まで数字を揃えたが、必要であればまだ増やせる。箱は赤い箱と青い箱の二個だ。
箱の上の部分に丸い穴が開いていて、腕が入るようにしている。
また、部屋の真ん中には、広めの寝台がある。
半透明のカーテンで四周を囲んでいるが、内側の様子は外から影として見えるようになっている。
食事や飲み物は、その寝台をぐるりと囲んだ卓に置く。
いまは、まだなにも載せてはいないが、パーティが開始となれば、一瞬にしてシルキーが準備したものを並べるはずだ。
つまりは、宴席のど真ん中に、男女が寝る寝台があるのだ。
ただのパーティでないことは、イライジャにもわかっているだろう。
しかし、イライジャはこの宴の支度を見せられても、特に動揺した様子はなかった。
だから、念のために一郎は訊ねることにした。
「ところで、イライジャ、覚悟はいいね。隠さずに言うけど、俺の主催する宴は、ただ食事をして、お酒を愉しんで、お喋りをするというものじゃないよ。セックスだ。乱交さ──。そういう宴だ」
「もう覚悟は整ったわ……。朝から馬鹿みたいなことをさせられたときからね」
イライジャが溜め息をついた。
一郎はくすりと笑った。
イライジャを含めて、うちの三人娘、たまたまやってきたスクルズとイザベラとシャーラも混ぜて、自慰で絶頂しながら、放尿するという破廉恥行為を全員の前でひとりひとりさせた。
さすがに、当初は心の葛藤もあったみたいだが、やって来た王太女や神殿長がやり、三人娘まで順番に恥を晒していく中で、ユイナを助けてくれるなら性奴隷になってもいいと表明したイライジャがやらないわけにはいかなかっただろう。
イライジャについても、そんな行為をやってのけ、それでイライジャも吹っ切れたみたいだ。
いずれにしても、朝の出来事で、それまでにあったコゼやシャングリアの抱いていたわだかまりのようなものは、ある程度消失できたと思う。
特に、コゼなど、突然やって来て、得たいの知れない性悪娘を助けてくれなどと言ってきたイライジャに対し、内心では思うこともあったようだが、一緒に馬鹿げたことをやることで、多少は仲間意識のようなものも芽生えたみたいだ。
心の中にあったイライジャへの不信感のようなものは、かなり小さくなっている。
まあ、お互いに自慰をしながら、放尿するところを見せ合ったりすれば、反発心も消えるしかないというわけだ。
「エリカにも、あなたの性癖のことはよく教わったわ。どうやら、あなたは、特殊な性癖を持つ好色で、しかも、女を惹きつけて離さない英雄クロノスだったのね。まあ、正直なところ、エルフの里を抜けて、ユイナとここで暮らすとなれば、あなたの援助も必要だし。打算のためにも、あなたには、これからも抱かれておきたいわ」
「はっきりと打算のためと口にするのも、イライジャらしいな。だったら、大いに利用してくれ。あなたが俺の相手をしてくれる限り、俺は全幅の援助を惜しまないよ」
一郎は笑った。
「ああ、もちろん、打算抜きであなたのことは慕っているわ……。さっきもとても気持ちよかった……。腰が抜けるほど……。わたしったら駄目ね。もう少し可愛げのあることでも言えばいいのに」
イライジャが苦笑しながら、溜息をついた。
ところで、朝のひと騒動が終わったあとだが、イライジャについては、一度抱いて、精を注ぎ直して、淫魔術の結びつきを完全に作らせてもらった。
すでに、イライジャも一郎の支配下にある。
“イライジャ
褐色エルフ族、女
冒険者
年齢21歳
ジョブ
戦士(レベル10)
魔道遣い(レベル4)
緊縛師(レベル3)↑
生命力:100
戦闘力:80
魔道力:50
経験人数:男2、女2
淫乱レベル:B
快感値:200
状態
一郎の性奴隷↑
淫魔師の恩恵(交渉術)↑”
一郎の性支配を受けると、なぜか女のなにかの能力があがるのだが、イライジャの場合は、緊縛師というわけのわからないジョブが覚醒し、さらに交渉術という能力向上があった。
一郎がステータスを読めることは、仲間内にもほとんど教えていない事で、イライジャにも伝えていないのだが、この能力覚醒はなんなのだろう?
まあ、気長に観察すればいいか……。
「もちろん、イライジャは可愛いよ。そうでなければ、無条件であなたの頼みを承知したりしない。正直、俺はあなたがいなければ、あの里なんて、二度と行くつもりもなかった。イライジャの頼みだから、行くんだ」
「もう、あなたって、本当にクロノスねえ……。女を喜ばせる男よ」
イライジャが顔を真っ赤にした。
「ロウ様、どうぞ」
あとは参加者を待つだけであり、ほかにすることはない。
話にひと息ついたのを見計らったのか、エリカが声を掛けてきた。
一郎はエリカに促されるまま、長椅子の真ん中でエリカの横に腰を落とす。
すると、向かいの椅子に座っていたコゼがさっとやって来て、一郎の隣に陣取った。
「あんたって、いっつも、ロウ様の横に来るわよねえ。たまには、シャングリアに譲りなさいよ」
「だったら、エリカが遠慮したらいいでしょう。一番奴隷なんだから」
「なんで、一番奴隷だからなのよ」
すぐにふたりの口争いが始まった。
まあ、お約束のようなものだ。
一郎は苦笑した。
「わたしはいい。なんとなく、後で可愛がってくれそうだしな」
シャングリアは、ちらりと部屋の真ん中に準備をしてあるカーテンに囲まれた寝台に視線をやってから、大人しく向かい側に座った。
イライジャも、遠慮のない口喧嘩をするエリカとコゼに、驚いた様子ながらも少し嬉しそうだ。
「とても親しそう……。よかった。エリカも幸せそうで」
そして、なぜか、溜息をついた。
一郎は両手を伸ばして、エリカやコゼのふたりの内腿や胸を触ったりして悪戯をする。
まあ、これもお約束のようなものだ。
何気無いお触りでも、一郎はきっちりと性感帯を中心にしか触らないので、すぐにふたりとも反応してしまい、ぐったりと一郎にもたれかかるようになる。
向かい側に座ったシャングリアはにこにこしているが、イライジャはちょっと居心地が悪そうだ。
まあ、目の前でいちゃいちゃされると、ちょっとどうしていいかわからないという感じだろう。
慣れてもらうしかない。
やがて、陽が落ちた。
シルキーが出現して、さっと食事をテーブルに並べ始める。
あっという間に、パーティの準備が整う。
一郎たちも、飲み物をもらった。
「おう、来たぞ、ロウ……。イライジャもおるな」
「アネルザ、昨日はありがとうございます」
最初に“ほっとらいん”からやってきたのは、アネルザだ。
やはり、イライジャも気さくに応じて、とても親しそうだ。
昨日、一郎たちをギルドで待っているあいだ、アネルザとミランダと酒盛りをして、すっかりと仲良くなったみたいだ。
それにしても、一国の王妃と初対面にも関わらず、呼び捨てにするのを許される程に親しくなるなど、さすがはイライジャというところだろう。
「
人間族の女の姿のサキもいる。
ふたりとも部屋着の軽装だ。
ほっとらいんから、侍女たちの目を盗んで来るのだから、ドレスというわけにもいかないだろう。
それに、一郎のパーティといえば、途中から服など全部脱いでしまう。
着飾って来るようなパーティではない。
「ピカロたちは、忙しいのか?」
一郎は訊ねた。
一方で、シルキーがすぐに、サキに特別製の酒を手渡している。
サキはあれしか飲まないからだ。
一度舐めたことはあるが、およそ人の飲めるような代物じゃなかった。
いや、そのとおり、人が飲めば毒である。
だが、ある種の毒は、妖魔族にとっては、害がないだけではなく、心地よい酔いをもたらすらしく、それがサキの大好物なのだ。
「主殿が気にすることでもないが、ルードルフを見張らせる必要があってな。あの変態の相手をしている。まあ、おかげでわしは抜け出して来れたがな」
サキが毒酒を口にしながら言った。
一方で、エリカがイライジャに、サキは国王の寵姫で、実は妖魔族だとささやいている。
さすがに、イライジャが顔色を変えた。
「何にいたしますか、王妃殿下?」
シルキーがにこにこしながら、各種の飲み物を載せたトレイをアネルザのところに押してくる。
「ロウ殿と同じものでいい」
アネルザは葡萄酒を手に取った。
一郎も女たちがお酒を飲んでくれるのが好きだ。
向こうの世界では、あまり飲む機会もなかったので、酒というのは悪いものではないと思ったのは、こっちに来てからだ。
なによりも、女たちが普段よりも淫らで積極的になる。
まあ、いつぞやのアネルザとミランダの酒乱騒動には閉口したが……。
いや、エリカにスクルズもいた……。
ふたりには、絶対禁酒令を与えている。エリカは酔っぱらって、コゼに電撃を浴びせまくったことがあり、スクルズに至っては、ここにいる者たちの頭を吹っ飛ばしかけた。
迷惑な酔っぱらいなのだ。
もっとも、無理して酔わせたのは一郎なので、文句を言えないが……。
今回はソファ類や椅子を例の寝台を囲むようにたくさん準備した。
アネルザとサキが、適当なソファに腰掛ける。
シルキーが台などを引き寄せ、酒と料理をそこに置いたりしている。
次にやって来たのは、イザベラとシャーラだ。
やはり、ふたりとも軽装だ。
侍女たちが抜けられないのは最初から聞いている。
王太女府をもぬけの殻にしてしまっては、イザベラの不在を誤魔化す者がいなくなる。
向こうの埋め合わせは、ちゃんと準備するつもりであり、問題ない。
「今日はもういいのか、イザベラ? このところ、あの唐変木が仕事に口を出したりするんで、政務も混乱しておる。そのとばっちりが全部、そっちに回ってきているのだろう? まあ、大変だろうが、少し頑張れ。いまのうちに実権を握っておくがいい。そのうち、あの生意気な女官ごと、無理矢理に引退させよう。そうすれば、そなたが国王。ロウがその夫だ」
アネルザがイザベラに声をかけた。
よく聞けば、なかなかに物騒な物言いだ。
「せ、政務は、シャーラやバージニアが侍女たちとうまく手伝ってくれて……。でも、王妃殿下……、け、結婚など……」
イザベラはどう返事をしていいかわからない感じで、顔を赤らめた。
そんな表情は年齢相当で可愛らしい。
実はイザベラは、いまの一郎の女たちの中で最年少だ。
そんな年齢でハロンドールほどの大国を背負うのは大変だろう。
せめて、癒してやろうと思う。
それくらいしか、一郎にはできない。
「ところで、昼間はちゃんと仕事はできたか、シャーラ?」
一郎はいまは護衛長のシャーラに声をかける。
「ちょっと、つらかったです」
シャーラが一郎のからかいに苦笑した。
今朝は、早々にやって来たイザベラとシャーラを相手に奮闘した。
あの自慰放尿に引き続く時間だ。
ふたりとも、王宮に戻したのは、完全にノックダウンさせてからだ。
「ありがとう、シルキー」
シャーラは酒を断って、果実水を手に取った。
こんな時くらい、くつろげばいいのだが、キシダインの差し向ける刺客からイザベラを守り抜くことをずっとやっていて、酒を飲まない習慣ができてしまったそうだ。
まあ、無理強いはしないが……。
「わたしは、こっちがいいな」
イザベラも酒じゃなくて、温かい蜂蜜水を選んだ。
彼女は酒は飲めるが、あまり好きではないみたいだ。
王宮ではどうしても口にしなければならないパーティなどもあるから、まったくの下戸ではないようだが、好きで飲んだりはしないらしい。
一度、とことんイザベラを酔わせたい気がする。
多分、可愛くなる予感はある。
そのとき、小屋敷に繋がっている姿見の表面が波動で揺れるような感じになった。
向こうから人が潜り抜けてやって来るようだ。
「きゃっほう、ぱぱ──」
飛び出してきたのは、幼児返りしたウルズだ。
このところ、やっと足腰がしっかりして普通に歩けるようになった。
本当にゆっくりと幼児から成長をやり直している感じだ。
それはいいのだが、完全な素っ裸だ。
一郎だけでなく、全員が目を丸くした。
「ぱぱ、来たよ。まんま、しよう。まんま」
一郎に裸で抱きついてきた。
そして、一郎の両隣にいるコゼとエリカを邪魔そうに見た。
「コゼおばさんとエリカおばさん、どいてよ。いっつも一緒にいるね。今日はウルズの番だよ」
素っ裸のウルズが一郎の膝の上に強引に乗って来る。
仕草は幼児でも、姿は一人前の女だ。
これは眼の毒だ。
「お、おばさん?」
「それよりも、なんですっぽんぽんなのよ」
コゼとエリカが押しのけられるように離れた。
確かに、なんで裸なのだろう。
「あ、あのう、この方は?」
イライジャが驚いてる。
エリカが元第一神殿の筆頭巫女だと紹介した。理由があって、幼児返りしていると説明したが、それに一郎が関係しているとまでは言わなかった。
「ところで、なんで裸なんだ? スクルズたちは?」
一郎は裸身を押しつけていくるウルズの身体をだっこしながら訊ねた。
「すーままがそうしようって。ぱぱがそうしろって、言ったんでしょう?」
「俺が言った?」
記憶がない。
一郎は首を傾げた。
「ほら、あれじゃないですか、ご主人様。結構前にアン様とノヴァに、首輪をつけて、裸でここで給仕をしろって言ったじゃないですか。そのときには、最初から裸で来いって……」
コゼが横から言った。
「ああ……、いや、あれは……」
そういえば、そんな冗談をずっと以前に口にした気もする。
思い出したが、素っ裸で馬車に乗って来いって、からかった……。
しかし、もう何箇月も前だ。
それに、あれから、練習とか言って、スクルズが小屋敷にアンたちを裸で連れてくるということとかがあって……。
もう終わったんじゃ……。
いや、それから、なにもしてないか……。
「今日は、ええっと……れんしゅう……れんしゅうだって、すーままが言っていたよ。れんしゅう」
ウルズが一郎の膝の上で言った。
「練習?」
怪訝に思った。
すると、また姿見が揺れて、今度はミランダが出現した。いつもの服装だ。
思ったよりも早かったようだ。
「……ほら、恥ずかしいなら、やめればいいでしょう」
鏡を出るなり、ミランダはその鏡に向かって叫んだ。
なんだろうと思ったら、スクルズが裸で出てきた。
続いて、アン、ノヴァも出現する。
ミランダを除いた三人とも素っ裸だ。
顔を真っ赤にして、手で股間と胸を隠すようにして、とても恥ずかしそうに小さくなっている。
「に、二度目の練習です。今回こそ、お言い付けの通りに馬車に乗ったまま裸で向かおうとしたんですけど、準備できませんでした。なにしろ、あらゆる可能性を考慮していくと、城壁で馬車の扉を開かれても問題ないようにする工夫が見つからず……。わたしはともかく、アン様にご迷惑をかけるわけにもいかないし……。申し訳ありません」
スクルズが赤い顔のまま言った。
一郎はなんと言っていいかわからなかった。
突っ込みどころいっぱいだし……。
そもそも、そんなに真面目な話じゃないし……。
しかし、スクルズにしては、全裸で関門のある城壁を通りすぎるのを思いとどまったのは、まともだといえないでもないし……。
だいたい、確かに、アンたちに裸で来いって軽口を言ったかもしれないが、かなり前だし、スクルズは関係ないだろう。
このところ思ってきたが、スクルズは筋金入りの変態なのではないだろうか?
続いて、スクルズは、ベルズは来ないと言った。
ベルズは領地から親族が来ていて、今日は都合がよくないらしい。
もっとも、こんなスクルズの「変態」には、暇でも付き合わないだろう。
イライジャには、スクルズやアンたちが何者なのか、エリカが説明している。
第三神殿長に、そこで預かっている王女と侍女だと教えられて、イライジャは絶句している。
また、ミランダによれば、ランも来れないようだ。
ただの小間使いだったランだが、いまや、ミランダの片腕みたいになっていて、今日は一度に抜けるのは難しかったらしい。
まあ、一郎の気まぐれの呼び掛けだし、仕方ない。
しばらく、留守にすることについての挨拶は、改めて全員に明日するつもりだ。
「ご主人様、首輪もしました……。今度こそ、み、三日間、よろしくお願いします……」
「お願いします……」
スクルズの後ろのアンとノヴァが頭をさげた。
やはり、ふたりとも裸だ。しかも、どこから手に入れたか知らないが、犬につけるような首輪をしている。
まあ、スクルズの変態の犠牲者だろう。
いや、もともとは一郎か……。
ふと見ると、イライジャの顔は完全に強張っている。
おそらく、思考がついていっていないのだろう。
「そのことなんだけど、残念ながら、その約束は戻ってきてからのこととさせて欲しい。出立の準備もあるんで。実は十日後にはナタルの森に行くんだ。ある依頼があってね……」
一郎は全員にイライジャの依頼のことを説明した。
みんなちょっと残念そうにしている。
特に、スクルズが目を丸くしている。
「三箇月も……」
そして、なんだか絶望するような顔になった。
さすがに三箇月では、ついては来られないだろう。同行するとは言わなかった。
なんだか、とても申し訳ない気になった。
「済まないな、スクルズ。夕べ、そういうことになって。朝は言いそびれてた」
「い、いえ……。そ、そうですか……。ナタルの森……。と、遠いですね……」
なんだか、意気消沈している。
本当に申し訳ない気持ちになる。
せめて、言葉を掛けようと思ったものの、うまく言葉を思い付けずに断念した。
「……というわけなので、ミランダ、しばらくクエストは受けれないよ。もっとも、道中のギルドでいくつか受けようと思っているけどね」
とりあえず、ミランダに言った。
しかし、ミランダはある程度事情を承知していたみたいだ。びっくりはしてない。
夕べ、一郎がイライジャと話をしていたときに、部屋にやって来たあとは、この話題は出さなかったので、昨日の酒盛りのときにでも、イライジャから聞いたのだろう。
「道中のそれぞれのギルド支部と、ナタルの森のエランド・シティのギルドには一応連絡はしておくわ。気をつけてね。まあ、あなたたちのことだから心配ないと思うけど」
さらに、ミランダが言った。
「そうか。気をつけてな」
アネルザも驚いてはいない。やはり、イライジャから聞いたのだと確信した。
「三箇月か……。そうか……」
イザベラだ。こっちは、スクルズと同じような顔をしている。
なんか、泣きそうな顔に見えて、少し慌てる気持ちになる。
三箇月留守にするというのは、そんなに深刻な話だろうか……。
「侍女たちのみんなには、今夜でも説明して、挨拶するよ。いや、明日の昼間も行く。夜も行く。なるべく、通うよ」
別に今生の別れでもなんでもないのだが、イザベラの顔を見ていたら、そう言っていた。
だが、考えてみれば、侍女軍団をまとめて性奴隷にしてからは、イザベラのところには、クエストで留守にするとき以外はほぼ毎日通っていた。
一郎はさらにサキに視線を向ける。
そういえば、サキには、ずっとルードルフの見張りなんて、仕事を頼んでいる。
あの変態は、女好きなだけでなく、快楽というものの全てに興味があって男色家でもある。
一郎が色事師と耳にして、一度その性技を閨で自分にも披露しろと言われて、ぞっとしたことがあった。
それで、寵姫として後宮に入り込み、ルードルフの見張りと、万が一にも一郎を呼び出したりしないように処置することを頼んでいた。
サキのおかげで平和だったが、一郎が長期不在となれば、ルードルフに呼び出される心配もないから、見張り任務は解除しておこうと思った。
「サキも、そういうわけで、頼んでいるルードルフの見張りは、しばらく必要ない。いないあいだは、俺を呼び出すなんて気まぐれは起こしようもないしね……。戻ってくれば、またお願いするだろうから、寵姫として完全にいなくなっては困るんだけど、適当な言い訳ができれば、不在の間は好きにしていい。チャルタたちにも伝えてくれ。それと、長くありがとうな」
「うむ。今度は好きにするのだな。承知した」
サキの返事に、一郎は頷いた。
そして、全員を見渡す。
「だけど、せっかくのスクルズの趣向なので、それに倣いましょうか。今日は全裸パーティにしましょう。さあ、みんな裸になってください」
一郎は声をかけた。
ところどころから、「ええっ」という声もした。
「お召し物はこれにお入れください」
しかし、次の瞬間には、シルキーが人数分の籠が部屋に出現させていた。
まだ、服を着たままの女たちは、呆気にとられながらも、すぐに服を脱ぎ始める。ミランダさえも、なにも言わずに脱いだ。
一郎も脱いでいく。
ただひとり、イライジャだけが取り残されている。
「イライジャは、お客さん扱いされたいか? 脱がないのか?」
一郎は声をかけた。
「ぬ、脱ぐわよ……」
ほとんどの女はすでに素裸だ。
さすがに、圧倒されたような感じだ。
イライジャも追いかけるように全裸になっていく。
「さて、じゃあ今夜の趣向を説明する。全員に一から十四までの番号の書いた玉を渡す。それを赤い箱と青い箱の好きな方に入れてくれ。赤い箱は縛られて俺に抱かれたい者。青い箱は縛られないで抱かれる側だ。俺は、それを両側から一個ずつ取る。選ばれたふたりは、そこの寝台で三人で愛し合う。それを繰り返す。そのあいだ、ほかの者は、飲み食いをしながら待つ。そういうことだ……。じゃあ、好きな方の箱に入れてくれ」
一郎はシルキーにそれぞれに球を渡すように指示した。
玉が女たちに適当に渡される。
思ったよりも人数が増えたので、シルキーに命じて急きょ十四まで数を増やしてもらった。
「もしかしたら、わたくしめも人数に入ってるのですか?」
全員に配り終わって、まだ一個残ったことで、シルキーが一郎に微笑みながら訊ねた。
「もちろんだ。シルキーはどっちがいい?」
「じゃあ、わたくしめは、縛られない方で……。給仕もありますから」
シルキーは自分の十四と書かれた自分の玉を青い箱に入れた。
そして、給仕服を脱ぎ始める。シルキーはまだ服を着ていたのだ。
「では、始めよう。題して、第一回ちきちき3
「なんですか、それ?」
コゼが声を掛けてきた。
「俺が、昔に唯一好きだったテレビ番組からとった」
「てれび?」
コゼが首を傾げるとともに、なにか不満そうな表情になる。
そう言えば、コゼは一郎が前の世界の話をすると、ものすごく嫌そうな顔になるのを思い出した。
それで、これ以上、説明するのはやめた。
「さあ、シルキーだけじゃなく、みんな球を箱に入れるんだ」
一郎は明るく言った。
女たちが周りの動きをうかがうような視線を送り始める。
迷っているようだ。
一郎も今夜の趣向にはわくわくしている。
これまでになかったような組み合わせになるかもしれないし、愉しみだ。
「……ということは、数が少ない方に入れた方が順番が早く回るのかなあ……」
近くにいたコゼが小さな声でひとり言を口にするのが聞こえた。
一郎はコゼらしいと苦笑した。
「ま、まさか、この人数をロウがひとりで相手を?」
やっと服を脱ぎ終わったイライジャが玉を持ったまま声をあげた。
イライジャの持っている玉は“四”だ。
「昨日も言ったろう、イライジャ。信用してなかったのか? この男はクロノスだ。だから、これだけ女が集まるのだ。独占するなど不可能だしな。こんなにいても、この男ひとりに全員が打ちのめされるのだ。もしかしたら、二巡目もあるかもしれんぞ」
アネルザがイライジャにそう言って、笑った。
そのアネルザは、自分の玉を赤い箱に入れた。
イライジャは呆気に取られている。
それを合図にするように、全員が選んだ箱に次々に入れていく。
縛られないで抱かれる側の青い箱に入れたのは、シルキー(十四)、イライジャ(四)、コゼ(二)、イザベラ(七)、シャーラ(八)、ウルズ(九)、サキ(六)──。
赤い箱は、アネルザ(五)、エリカ(一)、シャングリア(三)、アン(十二)、ノヴァ(十三)、スクルズ(十一)、そして、ミランダ(十)だ。
特に、ミランダが恥ずかしそうに、さっと縛られる側の赤い箱に自分の玉を入れるのが面白かった。
「わっ、なにそれ、ちょっと見せなさいよ、エリカ。朝は、わたしも動揺してたから、見逃してたわ。そういえば、夕べ、乳を揉んだときに、変な感触があったんだけど、これかあ――」
そのとき、イライジャが愉しそうな声をあげた。
どうやら、エリカの身体に装着している乳首ピアスとクリピアスを見つけたようだ。
「えっ、は、恥ずかしいわよ、イライジャ」
エリカが全身を真っ赤にさせて身体を隠す。
「ほら、隠しちゃだめよ。触ってもいいわよ、イライジャ」
すかさず、コゼがエリカを羽交い絞めにして、腕を掴んでエリカの身体から離させる。
「な、なに言ってんのよ、触っちゃだめえ。か、感じるの」
「だったら、触らなくっちゃ。ほら、動かないのよ、命令よ」
きゃあ、きゃあと騒がしい声が響く。
一郎はそれを横目で見ながら、青い箱と赤い箱から一個ずつの玉を取った。
「青い箱は“七”、赤い箱は“十”だ」
「えっ、あたし?」
「わたしか?」
ミランダとイザベラが返事をした。
(注 意)
本組み合わせは、(当時、)本当にくじを作って決めました。