【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「あ、ああ……、い、いい……」
正面座位の体勢で腰に載せているアンが声を上ずらせて、早くも絶頂の痙攣を起こし始めた。
まだまだ続けることもできるのだが、一郎はこのまま精を放つことにした。
今夜は考えていることがあるのだ。
「出すよ」
「は、はい──。お、お願いします……。あ、ああっ」
一郎は股間をアンの膣の中の赤いもやにぶつけるように上下に激しく動かし、ありったけの精を迸らせた。
アンもがくがくと狂おしそうに悶え、声を搾りだすように気をやる。
「あ、ああっ、ロ、ロウ様……。あ、ああっ、アン様、んんんっ」
その横でさっき精を放ち終わっているノヴァが女の悦びの声を出して震えている。
このふたりは、快楽の共鳴で結んでいる。
どちらかが快楽を受けると、まったく同じ快楽がもうひとりにも襲う仕掛けだ。
アンもノヴァも、まずは一郎がノヴァを抱いたときに揃って絶頂し、いまはアンが一郎にいかされてふたりで気をやったということだ。
身も心も結び合ったふたりについては、一郎はずっとこの快楽の共鳴を繋げっ放しにさせている。
これによって、ふたりの絆がこれ以上ないというほどに強くなったのは、一郎は魔眼を通じて知っていた。
その心の結びつきは、ふたりのそれぞれの一郎に対しての敬愛の念よりも遥かに強い。
それは誰にも分かつことはできない。
一郎さえもだ。
そして、分かつつもりもない。
「じゃあ、抜くね……」
ふたりの絶頂の余韻がそろそろ鎮まって来たのを待ち、とりあえず一郎は、腰の上からアンの裸身をおろした。
寝台におろされたアンは、腰が砕けたようになり、くたくたと崩れそうになる。
そのアンを自分自身も力が入らないようになっているノヴァが、慌てたように後ろから支えた。
「はあ、はあ、はあ……。お、お情けをありがとうございます……。さ、さあ、ノヴァもお、お礼を……」
ノヴァに支えられているアンが荒い息をしながら頭をさげた。
「あ、ありがとうございました……」
ノヴァも深々とお辞儀をする。
アンもノヴァもかなりの水準の美女だ。
そのふたりを犯して、お礼を言われるなど、男冥利に尽きるというものだ。
一郎も思わず苦笑してしまう。
「お疲れさまでした、ロウ様。お掃除してよろしいですか」
一郎がアンとノヴァを抱くのを静かに見守っていたスクルズがうっとりとした表情をして言った。
すでに、全員がスクルズの寝室に移動をしている。
アンとノヴァを抱いたのもスクルズの寝台だ。
スクルズとベルズは、その邪魔にならないように、ずっと部屋の隅にある椅子に腰かけて、こちらを見守っていたのだ。
「お掃除」というのは、性行為の終わった一郎の男根を舌で綺麗に舐めあげることだ。
王都一の魔道遣いであり、史上最年少で王都三神殿の神殿長となったスクルズに、そんなことをさせるというのは、考えてみれば気が咎める気もするが、すでにスクルズは一郎の返事を待たずに、寝台にのぼって来ている。
そして、ぱくりと一郎の一物を咥えた。
「本当に、そなたはロウ殿のことになると、際限なく淫らで、はしたなくなるな」
そんなスクルズの姿に、ベルズは揶揄するように言った。
もっとも、そのベルズの顔は真っ赤だ。
スクルズほどではないが、一郎がアンたちを抱くのを眺めているうちに、またまた欲情してしまった感じになっているのだ。
スクルズのように遠慮なく積極的に求めてくれればいいと思うのだが、そうもできないのがベルズの性分なのだろう。
「あっ、待って。まだ、服は着ないで。まだまだ、終わらないよ」
巫女服を着直そうとしたアンとノヴァに一郎は声をかけた。
ふたりがきょとんとした表情をこちらに向ける。
そのあいだもスクルズは一心不乱に一郎の一物を舐めている。いまは最後の仕上げとして、ちゅうちゅうと残りの精を吸ってくれているところだ。
気持ちがいい。
本当に、この王都一の巫女殿は、一郎と付き合うようなって、本当に淫らでいやらしくなった。
こんな奉仕だって、一生懸命に覚えようとしてくれるので、いまや、三人娘と匹敵するほどに上手だ。
「終わりました……。ふふふ、おいしゅうございました、ロウ様」
スクルズが顔をあげて、にこにこと微笑んだ。
その満面の笑みには、なにもかも忘れさせてくれるような癒しがあると思った。
「……でも、まだ終わらないというのはなんでしょう。アン様とノヴァには、まだなにかの“ぷれい”をさせるということですか?」
スクルズが微笑んだまま言った。
一郎は「そうです」と頷くと、寝台を一度降りたアンたちをもう一度寝台にあがらせる。
「……ところで、ふたりにお話がある。さっきの子種のことだ……」
一郎は切り出した。
「は、はい」
「はい」
一郎と向かい合うように正座に座ったアンとノヴァが大きく頷く。
このふたりは、今夜一郎に抱かれる前に、お願いだから子種を欲しいと言ったのだ。ふたりが言うには、その子供をふたりの子供として育てたいということだった。
ふたりとしては真剣に話し合った結果だということであったが、一郎はその願望の裏にあるふたりの心に、すでに気がついている。
もちろん、それくらいに一郎のことを愛してくれているということはわかっているが、それ以上にふたりは、アンとノヴァのお互いが離れることのできないなにかの「
つまりは、一郎の子をふたりで育てたいというのは、ふたりが互いに一生を共にしたいという気持ちから出たものであり、その愛情のかたちとして、子供を求めたのだ。
その気になれば、ふたりの感情を読み取ることができる一郎には、すぐにそれがわかった。
もっとも、アンとノヴァ自身が、自分たちの本当の感情に気がついているかどうかまではわからないが……。
「子種のことはいずれ請け負う。でも、いまは、ふたりの心をもっと深く結びつける贈り物をしよう……。ねえ、スクルズ、腕輪でも、指輪でもなんでもいいんだが、ちょっとした装飾品で処分してもいいようなものはないか?」
訊ねた。
スクルズはちょっと小首を傾げたが、むかし屋台で買った安物の指輪ならと口にして、寝台から降りた。
「……なにをするつもりなのだ、ロウ殿?」
ベルズが訝しむ口調で言った。
「ちょっとした淫具を作るんですよ……。どっちにしようかな……。まあ、ノヴァかな……」
一郎は意味ありげに微笑んでみせた。
淫具と聞いて、目の前のアンとノヴァが当惑した表情になる。
「……これでよろしいですか?」
スクルズが指輪を差し出した。
特に飾り石などない銅細工の指輪だ。
「じゃあ、もらうよ」
一郎はそれを手の中にぐっと握る。
そして、亜空間の力を使って、肘から先だけを亜空間に入れる。ただ、限りなく現実側に近い状態にしているので肘から先が消滅しているわけじゃない。
一郎の亜空間側に入った指輪に、一郎が思う淫具を作るための念を込めていく。
こんなことをやるのは初めてだが、成功するという確信はあった。
いつの間にか、レベル99になった淫魔師としての一郎の能力は、一郎自身の想像をずっと超えたものがある。
こと性行為に関することであれば、一郎はほとんど無限ではないかと思うほどの力を駆使することができるのだ。
できる――。
想像力――。
つまりは、この指輪に淫魔力を封印して、条件付けるという行為だ。
できるはずだ。
いや、できる。
淫魔術を指輪に込める。
「物」に淫魔師の能力を使って術を込め、淫魔術を刻むというのは前にもやった。
だから、今度もできる……。
その確信で全身を包ませる。
亜空間を使ったのは、その方が淫気を紋様として、固めやすいからだ。
とにかく、念を亜空間側の指輪に注ぐ。
「……す、すごい……。ロウ殿、そなた……いま、凄まじいまでの魔力を注いでおるぞ……。こ、これは……」
ベルズが目を丸くして腰をあげた。
「確かに……。これは、さっきの指輪に魔道紋を刻まれているのですか……? 魔道具作成を……?」
スクルズも驚いている。
魔道遣いとしての能力に秀でているふたりは、魔力の流れのようなものをある程度感じることができるらしい。
そのふたりからすれば、一郎のやっていることは、魔道を行使しているように思えるようだ。
「これは魔力じゃない……。淫気だ……。魔道具作りではあるけどね……」
一郎は言った。
もっとも、一郎自身は魔力と淫気の違いはわからない。
いろいろと文献などを当たってもらったこともあったが、魔道教典に精通しているベルズによれば、そもそも、魔力と淫気は同質だという説もあるということを口にもしていた。
そして、やがて、求めているものができあがった。
一郎は亜空間の力を解除し、できあがった指輪の淫具をノヴァに差し出した。
「害はない。装着してみてくれ」
「え、えっと……」
ノヴァが困惑した声を出す。
当然だろう。
得体の知れない指輪をいきなり説明もなく嵌めろと言われれば、困惑もするし、拒否感もわくはずだ。
だが、一郎は無視した。
尻込みしたように、腰を引いたノヴァの右手首を強引に掴むと、さっと指輪を人差し指に嵌めてしまった。
「あ、あれ? な、なにか……。な、なにか変です……。な、なんですか──?」
ノヴァが声をあげた。
だが、そのときには、すでにノヴァの身体には異変が起きている。
「ま、まあ、ノヴァ──」
最初に悲鳴のような声をあげたのは、ノヴァのすぐ横にいたアンだ。
そして、スクルズとベルズも驚きの声をあげる。
「ひ、ひいいっ、ロ、ロウ様──。こ、こんなの──こんなのあんまりです──」
ノヴァも絶叫した。
彼女の股間には隆々とした男根がしっかりとそそり勃っていたのだ。
一郎が作ったのは、一郎特製の『ふたなりの指輪』だ。
つまりは、この指輪をはめると、女の股間に男根が生えて、女同士で男女の性愛が可能になるということだ。
性別を超えて、お互いに愛し合っているアンとノヴァには、ぴったりの淫具だと思う。
「い、いやです。ロ、ロウ様、これだけはいや──」
ノヴァが慌てて指輪を外そうとした。
だが、抜けない。
そのように細工をしているからだ。
「無理だよ。それはもう外せない。ただ、三回精を放てば、簡単に抜けて身体も元に戻るようにした。じゃあ、しっかりと愛し合ってきてくれ。ここから先は、ふたりの部屋でどうぞ。ふたりだけの愉しい時間をすごしてくれ」
一郎はにやりと笑った。
ノヴァはすっかりと顔を引きつらせている。
アンも口をあんぐりと開けたままだ。
「……相変わらず、意地が悪いというか……。悪趣味というか……」
椅子から立ちあがってこっちにやってきたベルズが、ノヴァの股間に生えた一物をしげしげと眺めながら言った。
「……でも、これ……。ロウ殿のお道具に似てますね……。というよりはそっくりかも……」
スクルズも言った。
「あ、あんまり見ないで──」
ノヴァが泣きべそをかいたようになって、手で男根を隠す。
「さあ、ふたりとも服を着ていいよ。自室に戻ってくれ。ちゃんと男の機能はあるから、精だって出るし、もしかしたら、妊娠もできるかもしれない。それこそ、ふたりの子供だ……。ノヴァもそれを失くしたかったら、アンにお願いするんだ。精はちゃんとアンの中に注がないと無効になるからね。自慰では消滅しないよ」
一郎に促されたアンとノヴァは、呆然とした感じで脱いだ巫女服を身につけ始める。
目の前で愛し合わせてもいいが、「男」になったことのないノヴァは、簡単にはアンとうまくはいかないと思う。
もしかしたら、三回の精を出すまで、朝までかかるかもしれない。
ふたりだけにさせて、苦労をさせるのも「調教」の一環だ。
「ところで、これは繰り返し使えるのですか?」
するとスクルズが訊ねてきた。
「もちろんだ。ふたり限定だけどね。装着するたびに男根が生えて、外すためには、相手の膣に三回の精を放つことが必要になる……。ついでに言っておくが、どっちが装着してもそうなる。飽きたら、今度はアンが男役をやってもいいし、まあ、工夫して愉しんでくれ」
一郎は言った。
ふたりが部屋を出ていく。
特に、勃起した男根のままのノヴァは、どうしていいかわからない感じで、真っ赤な顔になって、股間を巫女服の上から押さえていた。
「それにしても、またもや、おかしなものを……」
ベルズが苦笑している。
「おかしなものなのではありません。素晴らしい思いつきですし、大変な魔道具です。さすがはロウ様です」
一方でスクルズは目を輝かせた。
*
「ミウの魔力か……」
一郎は大きく息をした。
アンとノヴァが出て言った後、ふたりがやって来る前に途中だったミウの話の続きをした。
そして、改めて色々と話してもらった。
一郎にあのミウを抱いてやって欲しいというスクルズとベルズの申し出であり、それはミウの魔力を安定させるために必要なことのようだ。
一郎も、魔力と淫気が極めて同質に近く、深い関係にありそうだというのは、以前から薄々感じていた。
淫魔師である一郎には、「性奴隷」として刻んだ女の能力を向上させるという力もあるようなのだが、特に魔道遣いに対しては、それが飛躍的だ。
淫魔師は、淫気を女に満たすことで女を操るのだが、その満たした淫気が魔道遣いの能力を大きく向上させるということは間違いない。
一郎がミウを抱いて性奴隷の刻みをすれば、ミウの力はさらにあがるだろう。
それだけでなく、いま懸念になっている魔力をコントロールする能力も備わるかもしれない。
「問題は、ミウの気持ちかなあ」
一郎は口にした。
いまさら、善人ぶるつもりはないし、好色のおもむくまま女たちを抱き潰してきた一郎だ。
ミウを抱くことができないなどとは言わない。
しかし、ミウは目の前で母親をレイプされて殺され、自分自身も未成熟な身体を残酷に犯された経験をしている。ミウの魔力が時折暴走したように発散するのだとすれば、それはその悪夢のようなあの体験が引き起こしているのだろう。
スクルズたちによれば、魔力を発散するときには、ささやかな陶酔感があり、それは性行為のあとの快感に似てなくもないようだ。
だから、魔力の発散や充填が、あの記憶を無意識に引き出すきっかけになるのかもしれない。
つまり、ミウは性行為そのものを大きく嫌悪している可能性がある。
おそらく、そうなのだろう。
だから、魔力がうまく安定しないのではないかと思う。
また、ふたりが短いあいだに教えてくれたことによれば、魔道遣いとしての能力向上の方法は、自慰や媚薬や同性同士の性愛というような極めて煽情的な行為であり、高位魔道遣いの中だけで伝わっている「秘法」とのことだった。
ミウが性行為そのものを嫌悪する感情がなくなれば、魔力に対する拒否感はなくなり心も安定する。
問題になっている魔道制御もやりやすくなり、取得できる。
スクルズたちはそう分析しているようだ。
そして、一郎には、ミウを犯すことで、能力向上は確実にできると思う。
だが……。
ミウはまだ、幼い。
「どうか、お願いします、ロウ様……。ミウには言い聞かせています。これはミウがアルペンガウム症候群を克服するために必要なのです」
「まあ、この場合はそうだ。馬鹿げた話と思うかもしれんが、ロウ殿が思っているよりも、事態は切実で緊迫もしている。魔力の安定しない高位魔道遣いなど、社会の罪悪だ。ミウがそうであると漏れ出れば、わたしたちは、ミウを処分しなければならないのだ」
スクルズに続いてベルズが言った。
冗談を口にしている雰囲気ではなかった。
その内容は穏やかではない。
「処分とは大袈裟だな。安定しない魔道が問題なら、ただ遣えなくすればいいだけだろ。魔道を封じる魔道具は、この世界にはたくさん種類があるし……」
「ロウ様、それは違います。いま存在する魔道封じの道具は、すべて意識的な魔道を封じるものです。ミウが時々引き起こすような無意識の魔道の暴発を防ぐ魔道封じの道具は存在しないのです」
「いまはまだ、スクルズの作った魔力を制する腕輪でいくらか封じている。だが、わたしの見たところでも、ミウはまだ成長過程だ。このままであれば、魔力が安定できないまま、魔道の力そのものがもっとあがるかもしれん。そうなれば、もう殺すしかない。そうなる前に手をつけねばならんのだ」
スクルズとベルズは深刻な表情で言った。
一郎はとにかくミウを連れて来てくれと言った。
スクルズが伝言用の「言玉」を発してどこかに送る。
隣室に控えているミウに飛ばしたのだろう。
「……ロウ殿、ミウにはこの二日、禁淫の業をさせておりました。性的にとても餓えた状態にあります。男性を受け入れやすいかとも思います……」
「禁淫の業?」
一郎は首を傾げた。
「つまりは焦らし責めということだ。ロウ殿は得意だろう? 溜まるだけ溜まっている……。それに、ロウ殿が相手なら、ミウも嫌じゃないと思う……」
ベルズは大真面目な表情で言った。
「し、失礼します」
部屋の外でミウの声がした。
可愛らしい巫女服に身を包んだミウが入ってくる。
とても緊張している。
おそらく、どういうことをさせられるか、ある程度承知してやって来ていると思う。
スクルズのことだから、魔道遣いとして一人前になるには、一郎に抱かれるのが絶対に必要だくらいは、言ったかもしれない。
さらに、魔力が安定できなければ、殺されるということも口にしているだろう。
ミウの身体は小刻みに震えていた。
それはともかく、巫女服の下の股間におかしなものをしている。顔も赤い。これが禁淫の業か……。
スクルズだな。
一郎は立ちあがって、ミウをすっと抱き寄せた。
「ひ、ひいっ」
その瞬間だった。
なにかが起きた。
気がつくと、一郎は宙に浮かびあがっていた。
そのまま、強い力で飛ばされる。
「ロ、ロウ様──」
「うわっ──」
スクルズとベルズが絶叫した。
壁に背中を叩きつけられた。
しかし、それほどの衝撃でもない。
ふと見ると、スクルズとベルズのふたりは、魔道を発したと思われる構えをしていた。
一方はミウに、もう一方は一郎に向かっている。
激痛が走った身体があっという間に楽になる。
咄嗟に、一郎の身体に衝撃を吸収させる術をかけてもくれたのだろう。
もうひとりは、ミウの魔道を発散させるための動きか……。
「う、うわっ──。ご、ごめんなさい──。ごめんなさい。申し訳ありません──あああっ」
ミウが悲痛な叫び声をあげたのが聞こえた。
「だ、大丈夫だ」
一郎は頭を擦りながら言った。
それにしても、びっくりした。
これが魔力の暴走というやつなのだろう。
「こ、こんなことするつもりはなかったのです……。ど、どうかお許しを──」
ミウが駆け寄ってきて、一郎の目の前で土下座をした。
「……これほどとは思わなかった……。これではロウ殿が危険だ。どうやら、もっとやり方を考えなければならないな」
「そうね……。でも、魔力を十分の一に減じる腕輪をしていてよかった……。さもなければ、ロウ様も無事ではなかったかもしれないわ……。それと、さっきのお願いは取り消させてください、ロウ様。これではロウ様が危険です。ほかの手段を考えます」
ベルズとスクルズが深く嘆息した。
あれが十分の一?
大した魔力だったが……。
しかし、一郎はもう決めていた。
一郎にしかできないこともある。
ミウが一郎を攻撃してしまったのは、男に対する嫌悪感が引き起こしたのは間違いない。
だったら、その嫌悪感を取り除くことのできる男が、一郎においてほかにないのは明らかだ。
また、一郎なら無理矢理にミウを犯すこともできるかもしれないが、それではなんにもならない。
「……いえ、やっぱり、俺に任せてもらいましょう……。ねえ、ミウ」
一郎はミウの顔をあげさせた。
「は、はい」
ミウが一郎を見る。
「俺はミウを苦しめた男を殺し、ミウを救った。それを覚えているな?」
「わ、忘れていません……。ロウ様は命の恩人です……。それなのに、あたしは……」
ミウが泣きそうな顔になった。
一郎は思わず手を伸ばしそうになって、慌てて躊躇した。
また、弾き飛ばされたらかなわない。
「……だったら、その恩を返してもらおう。知っていると思うけど、俺たちは数日後には王都を出立して、エルフの里に向かう。その道中ではいくつかのクエストも受けるつもりだ。冒険者としてね」
「は、はい」
ミウが頷いた。
なにをしろと言われるのかわからないのだろう。きょとんとした表情だ。
「旅のあいだ、ミウにも俺のパーティに加わってもらう。冒険者としてだ。能力の高い魔道遣いを探していた。ちょうどいい。ミウに加わってもらう。いいね──。それがあのときの恩の代価だ」
一郎は言った。
ミウは驚いている。
一郎はスクルズに視線を向ける。
「……ミウを借りる。とにかく、俺たちには打ち解ける時間が必要だ。俺だけじゃなく、三人娘もいる。イライジャも一緒だ。ミウの面倒は見れると思う。それに、魔道遣いが必要だというのは本当だ。エリカもいるけど、彼女は魔道よりも武術が得意だ。専門の魔道遣いは欲しい」
一郎の申し出に、スクルズもちょっと躊躇った表情になる。
だが、すぐにしっかりと頷いた。
「……では時間がありませんね……。ミウ、必要と思われる魔道は教えます。これから数日間、寝る暇もないと思いなさい。ロウ様の役に立つのです。冒険者としての活動は実戦で魔道を鍛えるよい舞台です。いまはこうしているわたしやベルズも、かつては冒険者としての経験もあります」
スクルズがきっぱりと言った。
「へえ、知らなかった……。ふたりは冒険者をやったことがあるのか?」
「修行代わりにな。半年ばかりのことだが……。じゃあ、ミウ、ロウ殿と一緒に行くがいい。気をつけてな」
ベルズが笑った。
ミウは目を白黒している。
しかし、やがて、決心したように大きく息を吐く。
「あ、あの……。よ、よろしくお願いします」
そして、ミウが一郎に深々と頭をさげた。
「でも、ちょっと、ミウが羨ましいですね……」
しかし、スクルズが真面目だった表情を崩して、なんだか悲しそうに溜め息をついた。
「あ、あのう……」
ミウが困ったように、スクルズ、そして、一郎、ベルズをきょろきょろと見る。
「やめんか、スクルズ、そなたは……」
ベルズがくすりと笑った。
(第4話『淫らな巫女たち』終わり)