※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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273 女寄れば……。そして、出発

「ふう……」

 

 汗にまみれたマーズが庭から戻ってきた。

 

「あっ、エリカ様」

 

 マーズは、エリカを認めた途端に、がばりと身体を畳んで深くお辞儀をした。

 

「言ってるでしょう。そんなに畏まらないで。わたしたちを見てよ。そんなに行儀のいい関係じゃないのよ」

 

「そうはいきません。特に、エリカ様は一番奴隷様ですし」

 

 マーズが言った。

 習慣だという身体の鍛錬をしていたようだ。

 この筋肉娘は、本当によくやる。

 朝に鍛錬し、昼のほとんどの時間を武術の訓練に使い、こうやって夕方から夜になるまで、また鍛錬だ。

 まだ、ここに来て、たった二日目だが、ほとんど欠かしたことのない日課だそうだ。

 強くなることにかけては、本当に貪欲だ。

 昼食後の訓練のときには、エリカとシャングリアも、マーズと少し稽古をしたが本当に強い。

 それでいて、とても謙虚だ。

 特に、ロウに対して大変に傾心しており、あの茶番のようだったというぬるぬる試合で、自分の未熟さを実感したのだそうだ。

 

 本当に?

 ……とも思うが、とにかく、闘技に対して、とても真面目だ。

 感心してしまう。

 

 エリカたちは、先に夕食を終え、食卓から長椅子に移動して、寛いでいたところだった。

 いつもなら、ロウがいるが、今日はアネルザのところに行ってくると言って、朝から出掛けていった。

 マーズのことでグリムーン公爵とやらと悶着を起こしたことで、それの始末をしているのだ。

 また、その帰り……、多分夜になるのだろうが、王都中の女たちのところを全部周るとも言っていたので、帰りはいつになるかわからない。

 エリカの周りには、コゼ、シャングリア、イライジャがいる。

 

「あんたも、よくやるわねえ。そんなに身体を酷使したら、後で大変になるわよ。むしろ、余裕があるときは、身体を休めて体力を温存していたほうがいいわ。特に、夜の前はね」

 

 コゼがくすくすと笑って軽口を言った。

 いつも一緒にいるので、コゼの言葉に含んでいるものはわかる。

 コゼは、夜になれば、ロウに抱かれるのだから、あまり体力を酷使してしまうと大変だと口にしたのだ。

 

「大丈夫です、コゼ様。毎日、続けて身体を酷使しない方がいいことは知っています。三日に一回は軽めで済ませて、筋肉を休めるようにはしてます。まだ、あたしも成長期なのでそうした方がいいそうなのです。だけど、少しは身体を動かさないと、落ち着かないのです……。それに夕べは、あたしの不甲斐なさを実感しました。あたしには持久力が不足です」

 

 マーズが言った。

 どうやら、コゼの言葉を鍛錬の要領についてのことと受け取ったようだ。

 コゼも苦笑している。

 

「成長期ねえ……。でも、そんなに大きいじゃないの。まだ、大きくなりたいの?」

 

 コゼが笑ったまま首を竦めた。

 小柄なコゼに比べれば、大柄のマーズは背丈も倍とは言わないが、それに近いくらいある。肩幅も胸幅もコゼとは比較にはならない。

 しかし、まだ十六歳だそうだ。

 確かに、まだまだ成長するのかもしれない。

 

「あたしは、大きくなりたいのではなく、強くなりたいのです」

 

 マーズははっきりと言った。

 どうにも噛み合っていない会話に、エリカもなんとなく笑ってしまった。

 

「わかったわよ。とにかく、汗を流しておいでよ。昨日も行ったから、地階に浴室があるのを知っているでしょう。いつでも湯が沸いているから、一日中、使えるわ」

 

 コゼの言葉に、マーズは驚いたように目を丸くした。

 

「そ、そんな……。昨日も勧められましたが、あれはあたしなどの使うものではないと思います。そばに川があるので行ってきたいと思っています。それで布を借りたいと……」

 

 マーズは湯を使っていいと言われて、驚いたようだ。

 そういえば、ロウがこの屋敷を手に入れてから、毎日のように浴槽を使うのが習慣になっているが、自分の屋敷に浴室を作るなど、貴族階級のすることだ。

 この屋敷では、屋敷妖精のシルキーがいるので手間いらずだが、本当はたくさんの労夫がいなければ維持できないし、湯を沸かすために魔力を常続的に提供できる魔道師も必要になる。簡単なことじゃないのだ。

 大貴族だって、そんなには入らない。

 それなのに、ロウは毎日どころか、日に数回も入ることがある。

 エリカも、ロウの浴槽好きには、最初はびっくりしたものだった。

 いまでは、当たり前になってしまったが……。

 

 まあ、もっとも、そのロウもいまや貴族だ。

 爵位は子爵だが、すでに上級貴族扱いの待遇も受けている。

 屋敷に浴槽くらい持っていても、おかしくはない身分になった。

 たった二年足らずでここまでなったかと思うと、ロウには改めて感嘆してしまう。

 

「マーズ様、布です……。でも、浴室には別の布も着替えも準備しておきました。ご自由にお使いください。なにか不足のものがあれば、宙に向かって声に出していただければ、すぐに対応します。それと、汗を流されたら、夕食が食べられるように準備しておきますから」

 

 屋敷妖精のシルキーが出現して、マーズに布を差し出した。

 

「うわっ──。あ、ありがとうございます、シルキー様」

 

 いきなり現れた屋敷妖精に面食らったようであり、マーズが声をあげた。

 マーズが昨日、この屋敷にやって来て、なによりも驚いたようなのは、屋敷妖精の存在だ。マーズはそんなものがこの世に存在することも知らなかったらしく、とにかく、魔道が遣い放題の召使など、想像を越える存在だったようだ。

 

 それにしても、王都でも有名な闘奴なので、マーズには、もっと尊大な部分もあるのかと思ったが、礼儀正しく、むしろ、誰に対してもへりくだっている。

 訊ねると、そんな高慢な鼻は、ロウとの試合でへし折られたのだそうだ。

 本当にわからない女だ。

 

「どうか、シルキーと呼び捨てにしてください、マーズ様」

 

 すると、シルキーがにっこりと笑った。

 

「とんでもない。あなたのような、魔道遣いを呼び捨てなど……」

 

 マーズは当惑したように首を横に振り、とりあえず布を受け取った。

 その場で身体の汗を拭き始める。

 

「そうよ、マーズ。それに、そろそろ、わたしたちのことも、呼び捨てにしてよ。さもないと、いつまで経っても、仲間になれないわ」

 

 エリカも声をかけた。

 

「で、でも……」

 

 マーズは恐縮している。

 

「そうだな。そうしてくれ。ロウが新しい仲間として連れてきたのだから、わたしたちは対等な仲間だ。だから、昨夜も一緒に湯船に浸かったのだぞ。わたしのこともシャングリアと呼び捨てにするがいい。みんなでロウを守っていこう」

 

「ま、まさか──。そんなことはできません、貴族様」

 

 マーズがさらに顔色を変えた。

 その様子に、エリカもなんだか笑ってしまう。

 

「はあ……。そういえば、あんたも貴族だったわね……。そんな素振りもないから、すっかりと忘れていたわ」

 

 コゼだ。

 

「忘れて結構だ。わたしはロウの性奴隷だ。その立場に満足しているし、そう扱って欲しい。ロウの女ということで、みんな対等だ。お前もそうだぞ、マーズ」

 

 シャングリアがきっぱりと言った。

 すると、ずっと黙っていたイライジャが横で吹き出した。

 

「本当に……。あんたたちはみんな気さくねえ……。実のところ、あたしだって、まだ慣れないわ。あんたたちはともかく、王妃様や王女様、神殿長様……。国王陛下の寵姫たち、あの有名な冒険者副ギルド長……。本当に仲良し。それに、屋敷妖精に、王都一の女闘奴まで……。もう驚かないわ」

 

 そして、イライジャは言った。

 

「……もっと驚くわよ、イライジャ。まだまだいるんだから……。ご主人様を慕う女豪商……。タリオ公国の間者、それもご主人様の女よ」

 

 コゼが言った。

 マアやビビアンのことだろう。

 彼女たちは、タリオ公国側に属する者たちで、一時的というかたちで離れているが、れっきとしたロウの女だ。

 

「ほかにもいるぞ。姫様の侍女たち全員、冒険者ギルドの職員のラン……。彼女たちも、ロウが手をつけて、ロウの女になった。そして、一度女にした者をロウは本当に大切にしてくれる」

 

 シャングリアが口を挟んだ。

 イライジャは、ただただ目を丸くしている。

 

「とにかく、汗を流してきなさいよ、マーズ。身体をきれいにしておくのも、わたしたちの務めよ。そのうち、ロウ様も戻ると思うわ。そのときに、ご指名になったら、お相手をすることになるから」

 

 エリカは言った。

 

「えっ? でも、ロウって、王都出立前の挨拶ということで、またまた、夜のあいだに、ほかの女のところを回るんでしょう?」

 

 イライジャが首を傾げた。

 

「ご主人様のことをわかってないわね、イライジャ。昼間は王妃様のところで公爵のことで話し合いをして、多分そのあいだに王妃様を抱き、その後で夜になって、女たちのところを回って相手をし、そして、戻って来たら戻ったで、あたしたちのことを愛してくれるのよ。それがご主人様よ……。まあ、でも、今夜は大丈夫よ、マーズ。あたしが対応しておくから。あんたは、昨日も相手をしたんだから、今日はゆっくりとするといいわ」

 

 コゼが言った。

 

「そんなこと言って、またロウのことを独占しようとしているな。そうはいかんぞ」

 

 シャングリアが横から声をかけた。

 

「と、とにかく、湯に行ってきます……」

 

 マーズが慌てたように部屋から出ていった。

 お呼びがあるかもという言葉で、急にいそいそとした態度になった。その様子は、まだまだ健気にも見える。

 そして、マーズは部屋から出ていきかけて、思い出したように振り返った。

 

「そうだ、コゼ様。夕べは助けてもらってありがとうございました。お礼をいう機会がなくて、いまの時間になってしまいましたが助かりました。でも、本当にコゼ様は凄いのですね」

 

「コゼよ。呼び捨て」

 

 コゼが笑った。

 

「うーん、でも、コゼ様……。そう呼ばせてください」

 

 マーズはぺこりと頭を下げて出ていく。

 エリカは呆気にとられた。

 だが、すぐにはっとした。

 夕べは、マーズがやって来た最初の夜ということで、エリカたちは、ロウとマーズをふたりきりにさせたのだ。

 せめてもの歓迎の気持ちだったが、どうやら、この女はまたもや、抜け駆けして割り込んだようだ。

 

「あ、あんたは、せっかくのマーズの最初の夜に──」

 

 エリカはコゼを睨んだ。

 

「な、なによ。あの娘も感謝してるじゃないのよ。大変な状況だったのよ。そもそも、まだまだ、あのご主人様をひとりで相手させるなんて無理よ。そっちの方が可哀想よ」

 

 コゼが言い返した。

 そう言われると、黙るしかない。

 確かに、いまの感じだと大変だったようだし……。

 

「なに? だったら、ロウの相手はいつも二人かがり?」

 

 イライジャが横から茶化すように言った。

 

「いや、大抵は三人かがりだな。ロウはなかなか満足しなくて大変なんだ。確かに、ひとりというのは、わたしも怖いかな」

 

 シャングリアが笑った。

 イライジャは今度こそびっくりしている。

 

「ええっ、いつも、そんなことになってんの? ちっとも知らなかった。でも、あたしが夜の相手をしたときが、二日ほどあったけど、そのときは一対一だったわよ」

 

「なに言ってんのよ、イライジャ。それは、ご主人様があんたにまだ、気を使ってるのよ。あんたと終わった後で、必ずあたしたちのところに来てるわ。知らなかったの? だから、まだ、事実上、あんたの当番の日はまだ来てないわよ。ご主人様が朝まで過ごす日が本当の当番よ」

 

 コゼが呆れたように言った。

 イライジャは驚いている。

 そして、すぐに、ちょっと大袈裟な仕草で肩を竦めた。

 

「はっ、どおりで女がたくさんいても喧嘩にならないわけね。あたしは、ロウは好きだけど、三日に一度、いえ、十日に一度でいいわ。あんな抱き方を毎晩されたら、本当に死んでしまうわよ。だけど、本当に伝説のクロノスと同じね。決して、ひとり寝はしないのね」

 

「確かに、ひとり寝をしないクロノスだな……。まあ、それでも、今日は十分に発散して戻るのだろうから、比較的すぐに解放してくれるのかもな」

 

 シャングリアが笑った。

 今日はいよいよ出発前の最後の夜ということになった。

 だから、ロウは今日も王都に赴き、王都に住んでいる女たちのところをひと通り回っている。

 グリムーン公のことで話し合うことがあると言っていたので、午前中に、まずは“ほっとらいん”でアネルザのところに行ったが、そのまま宮廷で、アネルザ、イザベラ、シャーラ、バージニア、侍女軍団、サキ、さらに、ふたりの淫魔……、そして、冒険者ギルドでミランダとラン……。神殿か小屋敷を周り、ベルズ、ウルズ、最後に、第二神殿のスクルズのところに行って、スクルズに加えて、アンとノヴァにも挨拶するとも言っていた。ミウは多分、帰りに連れてくるのだろう。

 夕食は済ませておけと指示されたが、あまり遅くなるつもりはないと思う。

 女たちとの時間は、その気になれば、ロウは亜空間という武器があるので、そこで何日分もの長さを一瞬で過ごすことができる。

 

 考えてみれば、驚くのは当たり前なのかもしれない。

 エリカもロウ以外の男の人を知っているわけじゃないが、普通はそんなに相手にできないというのは、なんとなくわかる。

 

「だったら、あたしがひとりでお相手するわよ。なによ、そんな嫌なことみたいに」

 

 すると、コゼが憤慨した口調で言った。

 

「嫌なこととは言ってないわよ。ロウはすごいって、話よ」

 

 イライジャが笑って応じる。

 

「そうよ。ご主人様はすごいのよ。当たり前でしょう──」

 

 今度は、コゼが一転して自慢気に言った。

 別にコゼがすごいわけじゃないと、横槍を入れたくなったが、とりあえず自重した。

 

 それから、なんとなく、みんなで艶話となった。

 ロウとの「ぷれい」でなにが一番すごかったかという話題になったのだ。

 

 イライジャは、シャングリアが「鞭打ち」のときの思い出を赤裸々に語って驚愕していた。

 ロウがそんな乱暴なことをするとは思っていなかったようだ。

 だが、シャングリアがうっとりとして、まるで美しい思い出のような言い方で、全身を傷だらけにされて、その傷を抱き締めて癒されたときのことを語ると、ずっとそのあいだ、絶句したようになっていた。

 

「あたしはお尻の調教かな……。ご主人様って、ああいうときはすごいものね……。開発の調教のときは、毎晩どころか何日もずっと付きっ切りで淫具や媚薬や、それからご主人様のお道具で責めるのよね。あれが一番の思い出」

 

 コゼも言った。

 イライジャは真っ赤な顔になった。

 

 エリカは木馬責めのことと、糸吊りで放置されたことを言った。

 もっとも、あのときのエリカは、ほかの者の操り術に支配されていて、頭がおかしくなっていた。

 いまにして思うと、痛いのはいまでも嫌なのだが、正気のときにもう一度、あれくらいのぎりぎりの責めをしてもらいたいという感情はある。

 あれは、ロウの激しさと優しさを思い知った記憶である。

 

 そして、さらに、三人で競い合うようにしばらく、ロウの責めのことを語った。

 

 野外プレイや浣腸、放尿……。

 そういうものだって、ロウの「ぷれい」になる。

 浣腸されて、お尻をロウの指で洗われるのだというと、さすがにイライジャも「信じられない」と口にした。

 そして、嫌じゃないのかと問われたので、「嫌だが、嫌じゃないと」と応じた。ますます、イライジャは目を丸くした。

 

 ほかにも、シャングリアが掻痒剤を塗って王都を歩かされたときのこと……。

 エリカがピアスの穴を開けられたときのこと……。

 コゼは何度も失神しても繰り返された筆責めのことなどを話した。

 

 さすがにそのあいだは、イライジャは口を挟めないようになっていた。

 だが、時折、色っぽく溜息をついたり、急に内腿を擦り合わせるような動作をしていたから、聞いているうちにイライジャも、ちょっと淫情したようになったのかもしれない……。

 

「……ところで、そろそろ、教えてよ、エリカ。ロウって、何者なの?」

 

 話がひと息ついた感じになったところで、急に改まった感じになって、イライジャがエリカに視線を向けた。

 

「な、なにって……」

 

「あたしは馬鹿じゃないのよ、エリカ。もう、ロウがただの絶倫というだけじゃあ、説明がつかないということはわかるのよ。そもそも、エルフの里で出逢ったときには、なんの魔道も遣えなかったロウが、さまざまな魔道を駆使するようになっている。女の数についても異常。まるで化物……」

 

「異常で化物って……」

 

「化物でしょう──。あり得ない……。そして、女を一日中相手にして、それでもずっと女を悦ばすことができる……。そして、この王都でも、才能や実力、あるいは、地位のある女という女が、揃いも揃ってロウに集まり、それでいて、誰も喧嘩をしない……。こういうことって、あり得ることじゃないわ……。エリカ、もう白状しなさい。ロウは何者なの──?」

 

 イライジャはなにかを確信しているようだ。

 エリカはどうしたものかと困って、コゼとシャングリアにすっと視線を向けた。

 ロウが淫魔師というのは、簡単に教えていい内容ではないからだ。

 いまのロウの女の中でも、それを知っている者と知らない者がいる。

 ロウは全員には教えていない気配だし……。

 

 淫魔師は女を虜にして、その身体と精神を操る。

 伝承ではそうなっている。

 だが、それはほとんど禁忌の存在だ。

 誰も、本当は自分が操られているかもしれないと言われれば、気持ちのいいものじゃない。

 ロウがエリカたちの心を操っているとは思わないが、それすらもロウの術なのかもしれないのだ。

 まあ、いまさら、エリカとしてはどうでもいいことだが……。

 しかし、頭のいいイライジャがそれについて、どう反応するかわからない。

 もっとも、夕べは、マーズにもあっさりと教えたらしいので、ロウは積極的に語るつもりがないだけで、女には隠すつもりはないのかもしれないが……。

 

 だが、その眼の動きにイライジャは気がついたようだ。

 突然に、エリカのすぐ隣に移動して来て、ぐっと抱き寄せてきた。

 しかも、いきなり内腿と胸に手を這わせるようにしてきた。

 ぞわぞわという感覚が襲う。

 

「……ほかの人はいいのよ……。あたしを見なさい、エリカ……。あたしとあんたの仲でしょ……。さあ、教えなさいよ……」

 

 そして、耳元でささやいてきた。

 しかも、舌を耳に入れてきた。

 そこは、エリカの弱点だ。

 たちまちに全身の力が抜ける。

 

「ひっ、や、やめて──」

 

 エリカはイライジャを振りほどいて逃げようと思ったが、なぜか動けない。

 幼い頃から、エリカはイライジャには逆らえないのだ。そういう心が染みついてしまっているのだ。

 

「やめなさいよ──。ご主人様はご主人様よ──。どうだっていいでしょう──」

 

 そのとき、コゼがあいだに割り込んで、イライジャとエリカを引き離した。

 エリカはほっとした。

 

「どうだっていいとは、あたしも思うわ。だったら、教えてくれたっていいでしょう。ロウがただ者でないことはわかるのよ。でも、内緒にされると、気持ちのいいものじゃないわ」

 

 イライジャがコゼを見た。

 だが、その表情には怒ったような感じはない。むしろ、なにかを愉しんでいる気配だ。

 こういうイライジャも昔からのものだ。イライジャは、時々、なにを考えているかわからないところがある。相手に自分の考えを読ませずに翻弄するような物言いをし、いつの間にか自分の思うようにしてしまう。

 それがイライジャという女だ。

 

「あんたが気持ちよかろうと、そうでなかろうと、知ったことではないわね」

 

 コゼがはっきりと言った。

 イライジャが大袈裟に首を竦める。

 

「……じゃあ、別の言い方をしようかしら……。実を言うとね、ロウに抱かれるようになって数日なんだけど、このところ、信じられないくらいに頭が冴える気がするのよ。口も回る。まるで、魔道にでもかけられたようにね。昼間、マーズも言っていたけど、ロウに抱かれた後の今日は、闘技が一段も二段も向上したと口にしていたわね……」

 

 「淫魔師の恩恵」のことだと思った。

 ロウが自分の女として認めた者は、なにかしらの恩恵として、なにかの新しい能力が生まれるか、あるいは、それまでに持っていた能力が飛躍的に向上したりする。

 エリカ自身も、魔道力が格段にあがっているし、剣技の実力も抜群にあがった。

 あのスクルズも、王国随一の魔道遣いの評判は、ロウの女になってからだ。

 ただの料理屋の給女だったランは、いまや、難しい書類を扱う業務処理能力に長けるミランダの片腕だ。

 ほかにも、そんなのは、枚挙にいとまが無い。

 イライジャが気がつかないわけがない。

 

「王都で話したロウの女たちも、大なり小なり、同じようなことを言っていた……。それも、ロウの秘密なんでしょう? 女の能力を向上させる力を持つの?」

 

 やはり、本当にたった数日なのに、よく情報を集めている。

 エリカも感嘆した。 

 

「……ともかく、イライジャ、ロウ様のことについては、ロウ様に訊ねてくれない? わたしたちとしては、それしか言えないわ」

 

 エリカはきっぱりと言った。

 

「そうよ──。ご主人様に訊ねるのね。あんたが真に信用に足る女だと判断すれば、教えてくれるわよ」

 

「あたしが信用ならないっていうの?」

 

 イライジャがコゼを睨みつけた。

 

「ご主人様の女になって、たった数日じゃないのよ」

 

「まあいいわ。ロウに直接訊ねろと言うんなら、そうするかな……。それはともかく、コゼ、あんた、これから、あたしと寝なさい」

 

 突然にイライジャが言った。

 エリカはびっくりした。

 コゼも、その横のシャングリアも驚いている。

 

「あ、あたし──? な、なんでよ?」

 

「いいじゃないのよ……。あんたが可愛いからよ。ロウのことをそんなに慕って、むきになって……。とても、真剣に想っていて……。改めて、あなたってすごいなあと思ってね。ロウとの付き合い方について、色々と教えて欲しいわ……。まあ、先輩としてご教授して欲しいということよ」

 

「ご教授?」

 

 コゼは、目を白黒させている。

 

「ええ……。そもそも、あたしたちって、少なくともしばらくは旅の仲間になるんだし、もっと打ち解け合うべきと思うのよ……。それなのに、あたしたちって、どうも馬が合わないというか……。ロウにももっと仲良くしろと言われたじゃない……。だからよ……。それこそ、ロウのためよ……。もっと知り合いましょうよ」

 

 イライジャが急にコゼに媚びを売るような物言いをした。

 エリカは嘆息した。

 これは、イライジャが標的としてコゼを選んだようだ。

 イライジャの百合の技は、ロウに匹敵するくらいのただ者じゃないことはエリカが一番よく知っている。

 淫乱体質ではないのだが、ひとたび、そういう状況になったら、人が変わったように、縄を使った百合の技で責めたてるのだ。

 少女時代は、エリカとシズは揃って、そのイライジャの百合の技で、心の底から躾けられてしまったのを覚えている。

 おそらく、イライジャはコゼをこの際、性の技で圧倒して、なにかしらの情報を取り出すつもりだろう。

 あの目付きは間違いない……。

 

「仲良くって……」

 

 コゼが訝しむ表情になった。

 イライジャが百合の癖のあることは、コゼも知っている。

 嫌な予感がしているのだろう。

 まあ、女同士についても、ロウの命令でやったりするし、いまや仲間内では当たり前のようになっているので、コゼも大きな嫌悪感はないと思うが……。

 

「なにもしないわよ。ただ、話を聞きたいだけ。ロウについて話しましょうよ。そうすれば、あたしも、初めてエルフの里で会ったときのロウのことを教えるわ。そりゃあもう、素敵だったんだから……。あなたの知らないロウのことを教えるわ……」

 

 イライジャはすっかりと口説きの口調だ。

 ロウのことを教えるといっても、そんなに長い付き合いじゃないし、数日のことでしかない。おそらく、あれは、コゼを寝室に誘うためのはったりだ。

 

「ご主人様の昔の話?」

 

 すると、一転して、コゼが満更でもない顔になった。

 

「そうよう……。とても格好よかったロウのお話……。知りたくない……? ねえ、行きましょうよ。さあ……。それに、あたしたちが仲良くするのは、ロウの命令なのよ……。ほら、おいでよ……」

 

 イライジャがコゼの手を掴んだ。

 コゼは戸惑いながらも、振りほどくことなく、そのまま部屋を一緒に出ていく。

 だが、イライジャは部屋から出る寸前に、エリカに向かって、こっそりと意味ありげに片眼をつぶった。

 エリカは戸惑った。

 

「いいのか、エリカ。ふたりとも、行ってしまったぞ。あれは、コゼを色責めで、訊問するつもりではないか?」

 

 コゼとイライジャが部屋から出ていくと、シャングリアが言った。

 エリカと同じ予感をシャングリアもしたらしい。

 でも、問題ないだろう。

 イライジャの言うとおりに、イライジャもまた、仲間になったのだ。

 この前は、サキが妖魔であることも受け入れたし、ロウについてのどんな事実を知っても、受け入れはすると思う。

 

「いいんじゃない。コゼが無理矢理、イライジャに寝室でいろいろと白状させられたとしても……。コゼにはいい薬よ」

 

 エリカは言った。

 本音を言うと、コゼがイライジャにどんな目に遭わされるのか、ちょっと楽しみでもあるのだ。

 すると、シャングリアもくすりと笑った。

 

 あとで、こっそりと覗きに行こうかな……。

 ロウにも教えれば、興味を抱きそうな気もするし……。

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一郎たちの前に、見送りの女たちがずらりと勢揃いしている。

 

「ロウ、気をつけてな」

「ロウ、帰還を待っておるぞ」

「ロウ様……」

「ロウ様」

 

 正王妃アネルザ──。

 王都冒険者ギルド長にして、王太女イザベラ──。

 その護衛長シャーラ──。

 女官長ヴァージニア──。

 侍女全員ではさすがに、来れなかったみたいだ。イザベラとしても、数人に許可すると収拾がつかなくなるので、女官長だけ連れてきたのだろう。

 だが、ヴァージニアも改めて見ると、とても綺麗になった。外観も少女のように若々しくなっているし、なによりも、とても色香がある。

 ヴァージニアに限らず、イザベラの侍女たちは、いまや王宮で、仕事のできる美女軍団という評価を受けており、以前はイザベラ付き侍女など、キシダイン時代には成り手のなかった日陰者集団が、急に王宮の中心として注目を帯びるようになり、なかなかに大変らしい。

 

「じゃあ、よろしくね」

「ロウ様」

 

 冒険者副ギルド長で、事実上のギルド長であるドワフ女のミランダ──。

 そして、その片腕と称していいほどに、業務処理に開眼したラン……。

 

「うう……、ロウ様、ご無事で」

「待っておるな」

「ぱぱ、はやく、かえってきてねえ」

 

 王都三神殿のひとつにして、史上最年少で第三神殿の神殿長となったスクルズ──。

 第二神殿の筆頭巫女ベルズ──。

 いまは、第二神殿の預かりとなっていて、幼児返りして、もう一度大人への階段をゆっくりと歩んでいる最中のウルズ──。

 

「ご主人様……」

「ロウ様……」

 

 第三神殿の預かりとなっている王女アンとその侍女ノヴァ──。

 

「屋敷のことはお任せください」

 

 そして、屋敷妖精のシルキーだ。

 

 それに対して、一緒に出立するのは、一郎のほかに、エリカ、コゼ、女騎士シャングリアの三人娘に加えて、今回の依頼人のような立場のイライジャ、そして、急きょパーティに加わることになった奴隷解放されたばかりの元女闘奴のマーズと小さな魔道遣いのミウである。

 

「な、なんであたしらまで……」

「イライジャがしつこいのよ。お願いよ、ゼノビア……」

 

 ゼノビアとシズもいる。

 このふたりの立場は微妙だが、しっかりと淫魔術を刻んでやっているので、一郎から離れられない立場ということには変わりない。

 

 それにしても、いつも思うのだが、こうやって女たちが揃うと圧巻である。

 この中でミウだけは、一郎との身体の関係はないが、なんとなく予約中ということになっている。

 

 ここに集まった者たちだけで二十人──。

 ここに並んでないサキやクグルスたち魔族関係、侍女たち、タリオに戻ったマアとビビアンを含めると、三十五人だ。

 よくも、こんなにもなってしまったものだ。

 改めて考えると、これでいいのかと怖くなる。

 

 また、共通するのは、誰も彼もスカートの丈が短いことだ。

 一郎がこの王都にやって来た頃は、女のスカートといえば、大抵は脛まで隠れていて膝よりも上に裾のあるスカートなどあり得なかった。

 だが、一郎の女になった者たちが、一郎が好むので、こぞって短いスカートをはくようになり、王都の有名な美女たちが短いスカートを揃って身につけるようになったことで、いつのまにか、王都中の流行のようになってしまっている。

 ある意味、一郎の存在がこの王都の歴史を変えたということになるのだろうか。

 

 一郎は順番に口づけを交わしていくことにした。

 

「なんか大袈裟ですねえ……。行って帰って三箇月ほどの旅ですよ」

 

 一郎は笑いながら、まずは、イザベラに寄っていく。

 一応は、この女たちの中でもっとも身分が高いことになるので、気を遣ったということもあるが、たまたま、一郎に近い側に立っていたという理由だけでもある。

 

「みんなお前の女だ。三箇月どころか、一箇月だって狂おしいほどに離れ難いのだ。女はいくら増えてもよいが、必ず無事に戻って来い……。それと、王都のことは任せておけ。三箇月あればそれなりに整理しておく」

 

 横から茶化すように口を挟んだのはアネルザだ。

 王都のことというのは、一郎が始めさせてしまったグリムーン公爵との政争のことだ。

 思い切り挑戦状を叩きつけた感じになったが、早くももうひとりの公爵のランカスター公爵を巻き込んで、動き出している気配がある。

 こんなときに、王都を離れるのは申し訳ないと思うのだが、アネルザはむしろ都合がいいと言う。

 一郎は笑顔を苦笑に変化させ、イザベラの腰を抱いて、ぐっと強く引き寄せる。

 

「うっ……。ロ、ロウ……」

 

 抱き締める力が予想外に強かったのか、あるいはみんなの前で抱き締められたのが恥ずかしかったのか、イザベラが当惑したように小さな声を出した。

 だが、すぐに吹っ切れたように、一郎の背中に両手を回して抱きついてきた。

 

「き、気をつけよ……」

 

「姫様も……。困ったことがあれば、皆に遠慮なく相談してください。全員、一心同体の仲間ですよ」

 

 一郎はイザベラと唇を重ねて舌を差し込みながら、すかさず口の中の感覚をクリトリスに直結させた。

 一時的にだが、口の中をクリトリス並みの敏感な場所にしてやったのだ。

 それだけでなく、一気に身体の感度を十倍以上に引きあげてやる。

 

「んふうっ」

 

 口の中を舌で舐めてやると、あっという間にイザベラが悶絶して腰を砕かせた。

 

「そ、そなたは──」

 

 その場で尻もちをついてしまったイザベラが真っ赤な顔で一郎を下から見あげた。

 あまりにも瞬間的に達してしまったイザベラは、腰が抜けてしまって、すぐには立てないようだ。

 

「イザベラ?」

 

 横でアネルザが驚いている。

 

「そんなに感極まってくれたんですか。嬉しいですねえ、姫様」

 

 一郎はうそぶき、次にアネルザを抱き寄せる。

 

「んあああっ」

 

 同じようにアネルザも口を蹂躙して絶頂させた。

 やっぱり、アネルザも崩れ落ちた。

 

「あっ、ロ、ロウ様、わ、わたしは護衛ですので……」

 

 すでに尻込みしているシャーラの手首を掴み、強引に口づけする。

 同じやり方でやっぱり昇天させる。

 

「あ、あのう……」

 

 真っ赤になって狼狽えるヴァージニアを捕まえて、同じ目に逢わせる。

 

 それからは、もうお約束だ。

 完全に逃げ腰のミランダの足の裏を粘着油で拘束し、捕まえて口づけをする。さすがなのは、女たちの中で唯一腰を抜かさなかったことだ。

 逆に、ランは完全に腰を抜かしてしまった。

 

 巫女組については、スクルズは大人しく受け入れ、「ほおっ」と気の抜けたような顔になってうずくまった。

 ベルズは諦めモードで、彼女もまた、素直に一郎の舌を受け入れた。

 大きな幼児のウルズは、口づけの疑似セックスでだらしなく股を開いて座り込んでしまった。

 

 アンとノヴァはそれぞれに絶頂した快感で、もうひとりも達してしまうので、二度いきし、ふたりとも、やっぱり、その場で腰を抜かしたようになった。

 

「……ところで、先日の指輪……使ってますか……?」

 

 ふたりから離れるとき、ふたりに耳打ちした。

 指輪というのは『ふたなりの指輪』だ。

 指輪を嵌めると、どちらでも男根が生えてきて、相手に三度精を放たないと元に戻らないという、一郎特製の淫具だ。

 

「あ、あれは……」

 

 ノヴァが真っ赤になる。

 嫌そうな感じじゃない。

 なにかを思い出して恥ずかしくなったように見える。

 

「……あ、ありがとうございました。大切に使ってます……」

 

 アンもなぜかお礼を言った。

 その顔はこれ以上ないというくらいに真っ赤である。

 どうやら、密かに愉しんでくれているようだ。

 

「あ、あたしらはいい──」

「そ、そうですよ。いいです──」

 

 このときには、ゼノビアもシズもなにをされるのかわかっていて、完全に逃亡モードになっていたが、逃げることは一郎の淫魔術が許さない。

 ふたりの口もクリトリスに繋いで、悶絶するまで、たっぷりと舐めあげてやった。

 

「ひっ、ひいいっ」

「んふううっ」

 

 それぞれに崩れ落ちた。

 

 最後は屋敷妖精のシルキーだ。

 

「わたくしめもですか?」

 

 シルキーがにこにこにしながら一郎に顔を差し出す仕草をする。

 

「家を頼むよ」

 

 一郎はそれだけを言い、口づけをする。

 なかなかしぶとかったから、意地になって責め立てたら、やっとその場で腰を抜かさせることに成功した。

 

「……相変わらず、呆れるわね」

 

 馬車に戻ると、イライジャが苦笑して言った。

 一郎が乗り込むと、イライジャに続き、シャングリア、エリカ、マーズが乗り込んで来た。

 

「ロウ様、よろしくお願いします。皆様もよろしくお願いします」

 

 最後にミウが乗り込んで、丁寧に頭をさげた。

 全員が気さくに、ミウに声をかける。

 

「全員だな」

 

 一郎は腰を完全におろした。

 馬車は座席があるようなものではなく、本来は荷を積むような荷駄馬車に幌を被せた「幌馬車」だ。

 ただ、大量のクッションを運び込んで詰め込んである。

 人数が多いので、必要な荷物を積みやすいというのと、野宿のときに横になって寝れるようにだ。

 もちろん、移動しながらセックスもできる。

 

「じゃあ、出発します」

 

 馭者台からコゼの元気な声がした。

 最初の馭者役はコゼが務めるらしい。

 

 ……というよりは、昨日からコゼはイライジャからできるだけ距離を置くように逃げ回っている気配だ。

 今日も率先して馭者をすると言って離れていった。

 一郎は帰りが遅かったので見逃したが、イライジャの百合責めの洗礼を受けて、それからずっと逃げ回る状態が続いているらしい。

 余程に参ってしまったのだろう。

 

「では、行ってくるな──」

 

 一郎は馬車の後ろ側から顔を出して手を振る。

 王都に残る女たちが一斉に手を振り返した。

 

 

 

 やっと出発だ。

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