【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
274 【独白】 あたしの
“こ、この人は死んだんですか……。”
“ああ、死んだ。あんたはミウというんだな……。”
……
……
……
それが、あたしが、あの人と初めて交わした言葉でした。
あの悪魔をあっさりと倒したあと、あの人は気さくな口調であたしに声をかけてくれました。
神様だと思いました。
誰にも倒せなかったあの悪魔……。
お父さんを笑いながら殺し……。
お母さんを犯して殺し……。
あたしを殴りながら犯した悪魔……。
あいつが憎くてたまりませんでした。
でも、怖くて怖くて逆らえませんでした。
ちょっとでも命令に背けば、容赦なく指の骨を折って折檻されました。
いいえ、逆らわなくても、あたしが泣いた罰だと言って指を折り、あたしを犯しながら、下品な言葉とともに笑いながら、また指を折ったりもされました……。
逃げようと思っても、逃げられず、あたしはあいつに犯されるために、荷物を担がされて付いていきました。
その男を憎く思ったのは、あたしだけじゃありません。
あいつは、行く先々で残酷なことをして、ただの愉しみのために、人殺しを繰り返しました。
ハロンドールの王都に辿り着くまでのあいだ、あたしはそいつが数限りなく、人殺しをして、愉しそうに笑うのに接しました。
だけど、誰もあいつに刃向かうことはできませんでした。
誰がやっても、どんなに大勢でかかっても、あいつは傷ひとつつきません。
そして、あいつに逆らった者は……いえ、逆らわなくても、あいつが殺そうと思った者は、ひとり残らず残酷に殺されました。
あたしは、それを全部、目の前で見聞きしました。
最近では少なくなりましたが、あいつが死んでからも、夜眠ると、あいつが人殺しをしながら笑う声が聞こえてくるときがあります。
そんなときには、飛び起きるのですが、いつも汗びっしょりになっていて、がたがたと震えてしまっていました。
わけもわからずに、泣きたくなることも度々ありました。
お父さんとお母さんが生きていた頃は、あたしはとてもおしゃべりでよく笑う子だと言われていたものでした。
でも、あたしが笑うようになったのは、ほんの最近のことのような気がします。
随分と笑ったことがなかったので、そのやり方さえも忘れていたほどです。
とにかく、あいつがあたしを殺さなかったのは、あたしを犯すためでした。
あいつは、あたしのような子供が好きで、人を殺したあとは、決まって血がたぎるのだと言って、必ずあたしを犯したのです。
だから、あたしはあいつに殺されずに、連れまわされることになったのです。
何度も何度も、あたしは、あいつの性器を股に入れられて精を放たれました。
とても痛かったです。
股が裂けて血も出ました。
それでも、あいつはあたしを何度も犯しました。
あたしが痛いと泣き叫んでも、お構いなしです。
口にも射精されました。
何度かは、お尻まで犯されました。
そして、なによりも許せなかったのは、あんな悪魔に犯されることに、だんだんと快感を覚えるようになっていたことです。
情を覚えるようになっていたことです。
そのときの感情を思い出すと、あの悪魔以上に、あたし自身のことを許せないという気持ちになります。
実際、あの悪魔にも、少しだけ優しいところもあったのです。
犯されるときに逆らわなければ、ほんの少しだけど、いたわるような声をかけてくれることもあります。
滅多にないことですが、あの悪魔は時折優しい言葉をかけてくれたときには、胸が痛いくらいにきゅんとなったこともあった気がします。
あんな悪魔を……。
……とは思うのだが、あんな悪魔だって、あれだけ犯され続ければ、だんだんとその行為の中に気持ちよさを見つけるようになっていきます。
拷問のような苦しみを通じて与えられる優しさも、優しさは優しさなのです。
どうせ逆らえないのだし、だったら、できるだけ素直にした方が……。
そう考えるようにもなっていたと思います。
いまでは、そんな考えは、ぞっとするのですが、あの男を好きにならなければならない……。
そう自分に言い聞かせるようになっていました。
お父さんを殺し……。
お母さんを犯して殺した悪魔の優しさを嬉しがるなど、身の毛もよだつほどの苦痛でしたし、なによりも、そんな風に考えるあたし自身を憎悪しました。
憎い……。
憎い……。
あの悪魔が憎い……。
あたし自身が憎い……。
だが、犯されるのは悪くない……?
あたしはそう考える自分を心の底から憎みました。
憎みながらも、そいつを好きになろうとしているあたしもいました。
あたしは苦しみ続けました。
とにかく、王都にやって来ても、あいつは傍若無人に暴れ続けました。
神殿で暴れ、冒険者ギルドの前で暴れ……。
第三神殿で多くのは神殿兵が殺され、冒険者ギルド前では、冒険者の方々と、果てには王軍の兵までやって来たのに、あいつは笑いながら、相手を殺すのです。
どんな武器でも、縄でも、網でも、魔道でも無駄でした。
全部、あいつの身体をすり抜けていきます。
どんなに大勢でかかっても、剣を使っても、魔道でも、その悪魔は倒せません……。
あたしは、ただなにもできずに、隅でうずくまって、あいつとほかの人たちが戦うのを見ていただけです。
しかし、それは突如として終わりました。
本当に呆気ないくらいに突然のことです……。
神様がその悪魔を一瞬で倒してくれたのです。
その神様の名前はロウ……。
あたしは、ロウ様の名を心に刻みつけました。
その瞬間、ロウ様は、あたしの神様になりました。
あのとき、神様はあたしを見てこうも言いました。
語りかけた相手はスクルズ様でしたが、あたしはあの神様の言葉を鮮明に覚えています。
“……そのミウという子には、大きな魔道力があるみたいだよ。まだ活性化されていないようだけど……。もしかしたら、大変な魔道遣いに化けるかもしれない……”
あたしに魔道の力?
そんなはずはないとは思いました。
なにしろ、あたしに魔道の力があるなど、それ以前には誰にも言われたことはありませんでした。
お父さんも、お母さんも魔道は遣えませんでしたし、行商の旅ばかりしているので、あまり魔道を遣える人には会ったこともありませんでした。
普通であれば、三歳くらいのときに、近くの神殿で誰でもただで受けることができる「魔道検査」も受けていません。
そもそも、そんなことを神殿でしていることも知りませんでした。
とにかく、あたしには、魔道は無縁のものだったのです。
でも、そのときには、神様が言うならそうかもしれないとも考えました。
いえ、神様がそう言うなら、神様を失望させないためにも、本当に魔道を遣えるようになりたいとも思いました。
とにかく、その神様の言葉は、あたしの新しい生きる意味になりました。
あたしは、ひそかに心に誓いました。
神様に誉められるような魔道遣いになろうと……。
……とはいっても、正直なところ、あのときのことは、あまりよく覚えていません。
あのときに限らず、あの悪魔につれ回された日々のことも、だんだんとよく思い出せないようになってきています。
また、それからスクルズ様に連れられて、第三神殿で生活するようになった最初の日々もぼんやりとした記憶にしかすぎません。
まるで、ずっとなにもない闇の中にでも閉じ込められていたかのように、いまでも当時のことは頭の中で黒い影のようになったままなのです。
最初からそうだったのか、だんだんと、そうなったのかもわかりません。
いまだって、思い出そうとすれば、あのときのことをこうやって、振り返ることができるのに、いつもは忘れたように、記憶に蓋が掛かっているみたいな感じなのです。
だけど、神様があたしに声をかけてくれた言葉だけは明白な記憶として蘇らせることができます。
それだけは、あの嬉しかった感情とともに、あたしのそばにいつもあります。
言葉だけじゃありません。
初めて会ったときの口調も、そのときの神様の顔も、服装も、ちょっとした仕草だって、身体の香りさえも思い出せます。
それでいて、あのとき周りに誰がいて、どんなことを話していて、どういう経緯でスクルズ様があたしの面倒を看てくれるようになったかがひどくぼんやりとしているのです。
なんだか、変ですよね。
とにかく、神様が“ミウ”とあたしの名を呼んでくれ、あたしに魔道の才能があると口にしてくれました。
そして、あたしの新しい人生が始まりました。
あたしの新しい住まいとなったのは、王都ハロルドの第三神殿という場所です。
そこまで連れていってくれたのはスクルズ様です。
そこで世話を受けるようになって知りましたが、スクルズ様は大変に偉い巫女様だったのです。
あたしがやってくる直前まで、筆頭巫女という神殿で第三位の地位にある方だったそうですが、あの悪魔が神殿の神殿長と副神殿長だった男の人を殺していたので、あたしがやって来るとともに、神殿の責任者のような立場になりました。
また、新しい神殿長がすぐにやってくるはずだったらしいのですが、それはなかなか決まらず、スクルズ様が神殿長代理をなさるようにもなっていました。
その理由は、あたしだけでなく、周りの人たちも不思議がっておられたようですが、やがて、その理由も明らかになりました。
スクルズ様が、史上最年少の若さで、しかも、王都では久しぶりの女性神殿長になられたのです。
スクルズ様はとても優しい人です。
みんなからとても慕われていて、神殿の人だけでなく、民衆の人たちからも大変に好かれています。
怒ったり、声を荒げたりするのを聞いたこともなく、いつもにこにこしています。
そばにいると誰もが助けたくなる……。
誰もが話しかけたくなる……。
スクルズ様とはそういう人なのだそうです。
少なくとも、あたしが接する人は全員がスクルズ様のことを褒め称えます。
そういう普通の人々から得られる人気も、スクルズ様が神殿長に就任するのを後押ししたのだと思います。
だけど、ほとんどの人が知らないことなのですが、実はスクルズ様には、恋人がおられます。
あたしはスクルズ様に直接仕える付き人のような立場になったので、すぐにそれを知ってしまいました。
なんと、スクルズ様の恋人は、あたしの神様でした。
それがわかってしまったとき、なぜかあたしは胸が痛くなってしまって、ちょっと泣いてしまいました。
ともかく、スクルズ様がロウ様とお会いになるのを本当に楽しみになさっているのは、あたしさえも微笑ましいと思ってしまうほどです。
当時の筆頭巫女を兼務する神殿長代理という立場は、並大抵の忙しさではなく、しかも、女神殿長への就任についての根回しや調整などもあったので、スクルズ様は信じられないくらいに忙しくされていたと思います。
それなのに、ロウ様に呼ばれれば、なにを犠牲にしても嬉しそうに出ていったし、そのために寝る時間を削らなくてはならないとしても、スクルズ様はロウ様に会いたそうでした。
スクルズ様はロウ様が本当に好きなのだな……。
あたしは胸の痛みとともに、それを感じました。
あるとき、あたしはロウ様との出会いのきっかけはなんなのかと訊ねたことがありました。
スクルズ様は、ロウ様は命の恩人だと教えてくれました。
だけど、ロウ様は、あたしにとっても命の恩人です。
スクルズ様は狡いな……。
あたしは、ほんの少しですが寂しい気持ちになりました。
ロウ様もスクルズ様も優しかったし、おふたりが仲がいいことはよいことのはずなのに、ロウ様がスクルズ様の恋人なのだと悟ったとき、あたしはますます心に石が入り込んだような気持ちになったのを覚えています。
だけど、それほど時間をかけずして、おふたりの関係が、あたしが思っていたのとは違うとわかりました。
あたしは、また明るい気持ちになることができました。
あたしの神様は、神様は神様でも、クロノス様だったのです。
ロウ様には、大勢の恋人がおられます。
そして、その全員をとても大切にされているみたいですし、愛しておられます。
スクルズ様も愛しておられるし、ほかにも、第二神殿の筆頭巫女のベルズ様も……。
ロウ様と一緒に暮らしているらしい、エリカ様、コゼ様、シャングリア様も……。
冒険者ギルドのミランダ様もそうだし、ランというギルドに新しくやって来られた女性の方も、あっという間に恋人のひとりになったみたいです。
スクルズ様のお友達で、あの不思議なウルズもそうです。
秘密になさっているが、神殿でお預かりということになっているアン王女様とノヴァ様も……。
時折、神殿にやってこられる王太女のイザベラ殿下もロウ様と男女の仲のような気もします。
もしかしたら、王妃殿下のアネルザ様さえも……?
つまり、あたしが神様と思い定めた人は、たくさんの女の人を同時に愛すことができるクロノス様だったのです。
それがわかると、今度はあたしは、とても嬉しい気持ちになれました。
なにしろ、それはつまり、もちろん、おこがましいとは思うのですが、ロウ様があたしのことを振り返ってくれる可能性が零ではないということだからです。
正直に言えば、ロウ様と恋人になりたいとは願ってはいないと思います。
それはあまりに大それたことだからです。
あたしは、そこまで物知らずではないのです。
ただ、その可能性があるというだけでよかったのです。
あたしは生まれて初めての恋をしたのだと思います。
それを自覚したのは、いつの頃からだったでしょうか。
あたしがロウ様を男の方として愛していることを悟ったのは……。
よくわかりません……。
最初からだった気もしますし、ずっと時間が過ぎてからだったかもしれません。
でも、確かなのは、いつの間にかあたしは、神様を愛してしまっていたということです。
ひとりの女として……。
ほかの方と同じように……。
スクルズ様にだって、負けず劣らぬくらいに……。
スクルズ様に魔道の試験をしてもらったのは、神殿で世話を受けるようになって十日ばかりしたときだと思います。
スクルズ様はもっとあたしが落ち着いてからと考えていたようですが、あたしからお願いしました。
魔道試験のことは、神殿で暮らすようになるとすぐに知ることができました。
神殿という場所は、魔道遣いにとっての修行の場所のような面があり、小さな子が魔道遣いの可能性があるとわかった場合、手数料なしで、神殿で調べるということをしているのです。
そして、もしも、ある程度の力があるとわかった場合は、見習い巫女や神官となって魔道の訓練が無料で受けることもできます。
魔道遣いとして大成するには、能力の高い魔道遣いの弟子になるか、神殿界に入るしかないので、無料で学べる神殿には魔道遣いの卵たちが頻繁にやってくるということでした。
この大陸では、かなり常識的なことなので、スクルズ様は、あたしが神殿でやっている魔道試験のことを知らなかったことに、ちょっと驚かれたくらいです。
“この水晶玉に手を置くのよ、ミウ。ちょっと疲れた感じがすると思うけど、害はないから慌てないでね”
そのときの魔道試験は、スクルズ様が直接行ってくれました。
言われた通りにすると、透明の水晶玉の色がすぐに赤くなり、やがて真っ白になりました。
スクルズ様が言った疲れた感じというのはなかなかやってきませんでしたが、突然にぱんとなにかが弾ける音がして、水晶玉が元の透明に戻りました。
“ま、まあ……。振りきれちゃたわ。まさか、試験玉の限界を超えるなんて……”
スクルズ様が嬉しそうに声をあげたのを覚えています。
すぐに、スクルズ様はさっきよりも大きな水晶玉を持ってこられました。
スクルズ様の説明によると、その水晶玉は対象者の身体に備わる魔力を強制的に吸い込み、その大きさを計測する器具とのことです。
魔力とは、魔道の根源となる力のことだそうです。
そして、魔道遣いは、風や大地や地面やあらゆるものの中に溶け込んでいる魔力を吸い込んで魔道を行使するのです。
また、魔力は生まれながらにしてほぼ大きさが決まっていて、訓練により少ない魔力で魔道を発揮することはできるようになっても、魔力そのものを拡大することはできないらしいです。
魔力が大きいほど大きな魔道が遣えることは確かなので、この魔道玉の検査で、魔道遣いとしての素質や、将来どの程度の魔道遣いになることができるかというのがわかってしまうのだと教えられました。
疲れた感じがすると事前に言ったのは、検査のために、かなり限界まで魔力を強引に吸い取ってしまうからのようです。
赤くなればなるほど魔力が大きいという意味であり、白はそれを通り越したということも、教えてもらいました。
つまりは、あたしは超一流の魔道遣いに匹敵するくらいの魔力を持っていることのようでした。
とにかく、スクルズ様は嬉しそうでした。
でも、大きい水晶玉に変えて再び試験をすると、スクルズ様の顔が難しい表情に変化しました。
やはり疲れた感覚はありませんでしたが、今度はずっと薄い桃色のままだったのです。
同じことを何度もやりました。
水晶玉は色が薄い桃色に変わるときもあったし、真っ白になることもありました。
やる度に色は変化しました。
スクルズ様は本当にしつこいくらいに、同じことを繰り返しました。
そして、スクルズ様は最後に諦めたように溜め息をつかれました。
“あなたは“
スクルズ様はそう言われました。
どうやら、あたしは本来は一定であるはずの魔力の容積が、大きくなったり小さくなったりする人間のようでした。
どんな魔道遣いでも、魔道を駆使すれば魔力は減り、睡眠等により時間をかけて自然に魔力は戻るのです。
しかし、あたしの場合は、魔力の容積そのものがくるくると変化しているとのことでした。
“まあいいでしょう。とにかく、練習しましょう。あなたに合った魔道の使い方があると思うわ”
スクルズ様は明るく言われました。
そして、その後から、スクルズ様との魔道の訓練が開始されました。
あたしは、あっという間に魔道が遣えるようになったと思います。
最初は簡単な魔道からでした。
スクルズ様の教え方は、あとでわかったことですが、とても独特でした。
「ぎゅっと」とか「ばああっと」とか、とにかく擬声語をよく使われます。
あたしはよくわからなかったのですが、そうすると、スクルズ様は、まずは、スクルズ様自身の魔力をあたしの身体の魔力に繋げ、あたしの身体の中で魔力を動かして魔道を行うということをしました。
それで魔道を発揮する感覚を掴めというのです。
後日、あたしのところに、魔道教育をしにきたベルズ様がそれを聞いて、呆れたように、スクルズ様に小言を言ったのを覚えています。
そして、ベルズ様は改めて、あたしの魔道の使い方を理論立てて教えてくれました。
正直、ベルズ様の話はとてもわかりやすかったです。
おそらく、説明の言葉も、あたしのために平易な言葉を使ってくれていたと思います。
あたしは、すぐに、
実際のところ、あたしは、ほとんど最初から、続けざまに、電撃玉を五発繰り出して発出することができました。
スクルズ様もベルズ様もとても喜ばれて、おそらく、自分たち以上の魔道遣いになるのだと、嬉しそうに言われました。
そんなことは、とても信じられませんが、あたしはいままでできなかったことが、突然にできるようになったことに、とても有頂天になりました。
“いい出来です。最初からこんなに簡単にできてしまうとは、やはり、大魔道遣いとしての素質があるのですね。ロウ様の言った通りです……”
こうして、魔道の練習の日々が始まりました。
魔道そのものは大して難しいとは感じませんでした。
攻撃系魔道……。
防衛系魔道……。
治癒系魔道……。
精神系魔道……。
聖霊系魔道……。
あたしは怖ろしく短い期間で初級から中級系の魔道を覚えてしまったらしいのです。
スクルズ様も、ベルズ様も、あたしの魔道遣いの上達ぶりに、十分に満足をされていました。
でも、それはしばらくのあいだだけでした。
しばらくすると、スクルズ様もベルズ様も、あたしが魔道訓練をするたびに、難しい表情をされるようになりました。
最初にやった魔道検査のようなことを、別の装置でやったりもしました。
それこそ、何十回もです。
そして、あたしが夜に、あの悪魔のことを思い出して、無意識で魔道を発動させて、周りの物を壊してしまうということがあり、スクルズ様は、顔色を真っ蒼にして、あたしに箝口令を命じられました。
魔道の暴発のことは誰にも喋っていけないと……。
そして、これは魔道遣いとしては致命的な欠陥らしく、スクルズ様によれば、魔道遣いとして不適格者というだけでなく、魔力が暴発して周囲の人を傷つけたり、物を破壊したりする可能性もあるということでした。
例えば、魔力が溜まった状態で突然に容積が減れば、当然に意思に関わらず魔力が一気に外に出るということです。
それが魔力の暴発です。
意思を伴わない魔力の暴発は、状況によって周りの人を傷つけたり、周囲の物を破壊したりします。
大変に危難な存在とされているようです。
しかも、さらに自分の力で、魔道をまったく制御できないということにもなれば、「アルペンガウム症候群」といい、社会に対する危険人物と認定されて、安楽死で処分されることが法律で決まっているのです。
もっとも、そのアルペンガウム症候群という概念を教えられたのは、かなりの時間が過ぎてからのことです。
とにかく、すぐに魔道の制御を覚えねばならず、でも、その時点であたしは、魔道制御の感覚そのものがわかりませんでした。
後日、アルペンガウム症候群に関する書籍を読みましたが、客観的に判断して、あたしは、間違いなく、アルペンガウム症候群の症例に合致しており、すぐに当局に報告をして、安楽死措置をとるべき対象だと思いました。
“……大丈夫……。きっと自分で管理できるようになるわ……。でも、このことは誰にも言わないでね。表向きには、あなたは魔道遣いとして適正がなかったということにするわ……。あなたはあたしの侍女としてそばにいなさい。わたしがあなたに魔道の訓練をする……”
とにかく、その日からあたしのスクルズ様とのふたりきりの魔道訓練が開始されました。
暴発を防止するために、発動する魔力を十分の一にする腕輪も装着してもらいました。
スクルズ様があたしのために調整したものであり、この世にひとつしかないものだそうです。
スクルズ様、そして、その頃には、ベルズ様も頻繁に来られるようになり、おふたりから、魔力制御を教わる日々が続きました。
ただ、時折、体内に蓄積されていた魔力が突然に流出して、スクルズ様の危惧する魔道の暴走のような現象も引き起こりました。
そして、ベルズ様が申されるには、あたしが性行為に対して拒否感を抱いていることが魔力を安定できないことと関係があるのではないかということでした。
ベルズ様は、スクルズ様には魔道力は及ばないものの、魔道知識や魔道技術理論に造詣の深いお方だったのです。
あたしは、魔道訓練の秘法を始めることになりました。
高位魔道師のみに伝授されるという修行の秘法は、スクルズ様とベルズ様の両方から講義を受けました。
それは驚くような内容であり、十歳のあたしには理解の外にあるような赤裸々な話でもありました。
つまりは、性的に淫乱になる訓練なのです。
あたしには理解の外だったのですが、性的に淫乱であることは、なぜか魔道を上達させることに繋がることが密かに知られていて、神官の中では上級魔道遣いになる者に対する訓練として、同性愛が奨励されているというのです。
神学校といわれる教団の若い巫女や魔道遣いの育成施設では、一日一回の自慰が強要されていて、同室となる者たちがお互いの裸身を愛し合うことはほとんど義務であるとのことでした。
スクルズ様とベルズ様も実はそういう「同窓」の間柄だと説明を受けました。
いまは幼児返りしているウルズもそうだったそうです。
唖然としているあたしのために、スクルズ様とベルズ様は、最初は抵抗があるだろうからと、あたしの前で本当に愛し合うところを見せてくれました。
そして、愛し合っているときのおふたりの魔力を感じるようにと言われたのです。
本当に、あたしの前でスクルズ様とベルズ様は愛し合われました。
おふたりの言っていることもわかりました。
おふたりが性的に興奮なさるにつれて、どんどんとおふたりの魔力が濃いものになり、周囲一帯に魔力が満ち溢れるという現象が発生したのです。
それだけでなく、おふたりが絶頂をなさるときには、おふたりの身体の中の魔力が最大限度まで蓄積された状態にもなりました。
からかわれているのかと思いましたが、本当でした……。
それから、これまでの魔道制御の訓練と共に、「秘法」の修業も加わりました。
一日に達しなければならない絶頂回数を与えられ、余裕のあるときには自慰に励むように言われました。
ときには振動をするような淫具を使って、身体を慰められるようなこともされました。
結局のところ、魔道修行の秘法は、あたしの魔道の効果を上昇することに役に立ちましたが、制御そのものには効果が生まれなかったようです。
だんだんと、スクルズ様も、ベルズ様も、悩まれるような表情ばかりをあたしの前でするようになりました。
ところが、信じられないことが現実のこととしてやってきました。
あるとき、スクルズ様が、突然に、あたしに「秘術」の延長として、ロウ様に頼んであたしを抱いてもらおうと思うのだが、嫌かと訊ねられたのです。
ロウ様はあたしの神様です。
あたしはそれを想像はしたものの、現実として考えてはならないことだと思っていました。
驚いているあたしに、スクルズ様は、実はロウ様には魔道遣いの能力を飛躍的に向上させる不思議な力があり、もしかしたら、あたしの魔力制御の問題も解決してくれるのではないかと諭すように言われました。
あたしの戸惑いと驚愕を拒否しているものと思ったのかもしれません。
だけど、あたしがロウ様を拒否するなどあり得ないことです。
あたしの神様のロウ様があたしを愛してくださる──?
本当に──?
正直にいえば、あたしは狂喜していました。
だけど、その気持ちをどうスクルズ様にお伝えすればいいか、わからなかっただけです。
そして、その日がやって来ました。
ロウ様たちは、ある用事があり、三箇月ほど王都を留守にするということになり、その前に、あたしがロウ様に抱かれる行為を済ませようということになったのです。
それに先立ち、禁淫の業というのをあたしは受けていましたが、それは性的な飢餓状態になり、ロウ様を受け入れやすくするためとのことでした。
当日、別室で待機をしていたあたしは、スクルズ様の伝言によって、第三神殿にやって来られたロウ様の前に来ました。
ロウ様はあたしを認めると、優しく抱き寄せてくださいました。
心臓が爆発するのではないかと思うくらいに、激しく鼓動したのを記憶しています。
でも、次の瞬間、なぜか魔力が暴発して、あたしはロウ様の身体を弾きとばしてしまったのです。
あたしは愕然として、一生懸命に謝りましたが、ロウ様はとても優しかったです。
スクルズ様は時間をかけて進めようと言われ、あたしを旅に同行させるとおっしゃったのです。
呆然としました。
もちろん、嬉しいです。
三箇月も会えないと思っていたロウ様とずっと一緒に旅ができるのです。
あたしはとても興奮しました。
半面、横のスクルズ様がとても寂しそうにしていたのを覚えています。
いずれにせよ、こうして、あたしはロウ様の旅に同行することになりました。
まだ、抱いてもらってはいませんが、必ず、ロウ様に抱いていただきます。
出発前に、スクルズ様からは、いくつかの上級魔道についても教えてもらいました。
私室に結界を作り、いつも嵌めている魔力を制限する輪っかを外して、思う存分魔力を発揮するやり方を叩き込まれました。
また、旅のあいだに、心が決まったら、ロウ様に身体を委ねるようにとも言われ、閨の技のようなものも、スクルズ様から少しだけ指導を受けました。
スクルズ様は、決してロウ様には逆らわず、ロウ様の好色な命令には絶対服従を貫き、そして、できれば、何度でも抱いてもらうようにと笑っておっしゃっいました。
あたしはかっと身体が熱くなったのを覚えています。
だが、一方で怖くもあります。
ロウ様に抱いてもらうのはいい。
でも、この前のときのように、勝手に魔力が暴発して、ロウ様を傷つけることになったらどうしよう……。
それだけが怖ろしくて、ロウ様に「お願い」をすることができないでいます。
しかし、必ず、ロウ様の女にしてもらいたいと思っています。
できるだけ、すぐに……。
だけど、怖いことは怖いです。
緊張します。
ロウ様に女にしてもらうなど、想像しただけで、恥ずかしくてどうにかなりそうです。
でも、とにかく、ロウ様が誘ってくだされば、なにもかもお任せして、ロウ様に犯してもらうのです。
だって、ロウ様は、あたしの