【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「ほら、起きねえか──」
腰を思い切り蹴られて、レンは意識を戻した。
だが、まだ朦朧としている視界は完全には戻らない。
どのくらいの時間がすぎたのだろうか。
この小屋に連れ込まれたのは、朝だったと思ったが、そろそろ、小屋に射し込む陽射しは、山の夕方の様子を示し始めている気がした。
そして、はっとした。
天井が見えている。
つまりは、レンはいつの間にか、床に仰向けにされて寝かされているのだと悟った。
意識を失う前までは、確か両手を天井に吊られて、がに股の恰好にされて立位縛りで拘束されていたはずである。
そして、その状態でひたすらに犯され続けた。
前だけでなく、尻まで男たちの男根を貫かれ、さらに、狂うような媚薬を針で打たれて、ちょっとでも逆らうと容赦なく陰核の根元を結んでいる糸を引っ張られた。
レンは犯されながら泣き続けた。
それでも許されず、媚薬で無理矢理に発情させられ、この卑劣な男たちの前で何度もよがりまくるという恥態を晒させられた。
やがて、その責めに耐えきれずに、ついにレンは意識を手放したのだが、気がつくと、いまは床に寝かされているようだ。
視界にアレックスたち四人の顔が見える。
全員が下半身になにも身につけていない。
そして、卑猥な視線でレンを見下ろしていた。
「も、もう、許して……」
レンは息も絶え絶えに言った。
そして、起きあがろうとした。
だが、両手は大きく頭の方向に拡げたまま動かない。
やはり、手首に縄がかかっていて、柱の方向に引っ張られているようだ。
脚も動かない。
足首を棒のようなものを挟んで縛られている。
レンは、どういう状態が確かめようと、首を動かした。
「吊りあげろ」
そのときアレックスが言った。
三人の手下のような男たちのひとりが壁に向かい、なにかを引っ張り出すのがわかった。
「ひぎいいっ」
そして、レンは絶叫した。
股間の陰核が思い切り上方向に引っ張られたのだ。
なにが起きているのか、一瞬理解できてなかったが、立っているときに結ばれていた肉芽の根元の糸が、まだ喰い込みっぱなしなのだと悟った。
それが思い切り引きあげられているのだ。
「ひいっ、ひいっ、ひいっ」
レンは開いている足首を踏ん張って、懸命に肩と脚で腰を上にあげる。
ついに、レンの背中は完全に浮いた。
それでも、アレックスたちは、容赦なく糸を引っ張り続ける。
やがて、レンの身体は大きくアーチ状になるかたちまで腰をあげた格好になった。レンの背中は、アレックスたちの膝の高さくらいまで浮いた状態である。
その位置で、やっと糸の高さが固定された。
レンは泣き叫んだ。
「も、もう許して、お願いだったらあ──」
レンは必死で叫んだ。
しかし、四人は嘲笑するばかりだ。
「いい恰好になったじゃねえか、レン」
アレックスが無残に曝け出されているレンの股間を指でぴんと弾いた。
「んぐうっ、ひいいっ」
それだけで身体が揺れ、股間に激痛が走って、レンは慌てて脚と肩に力を入れて踏ん張る。とにかく、あまりの屈辱的な恰好と肉芽をいたぶられて泣き叫ばされる惨めさに、レンは号泣してしまった。
「お前が気を失っているあいだに、お前の扱いが決まったぜ。とりあえず、股間の肉芽の皮を切ってやろうということになってな。そこを除去されてしまえば、もう敏感になりすぎて、お前も四六時中、男に抱かれることしか考えられなくなるんだそうだ」
アレックスがげらげらと笑った。
皮を除去する?
その意味はよくわからなかったが、怖ろしいことをやろうとしているということだけは理解した。
レンは顔が引きつるのを感じた。
「いやあ、絶対にいやああ──。そ、そんなことしないでよ──」
レンは恐怖と嫌悪で必死で叫んだ。
だが、それでまた体勢が崩れてしまって、股間に激痛が走る。
レンは慌てて、脚を踏ん張った。
「そんなことを言いながら、心の中ではそろそろ、奴隷になることを受け入れているんじゃねえか? だから、俺たちに犯されて、こんなにもまん汁を垂れ流しているだろう」
アレックスが指をレンの股間に挿し入れて、無造作に動かした。
針で刺されるような激痛が股に走り、レンはさらに泣き叫ぶしかなかった。
「じゃあ、始めるか。じゃあ、頼むぜ」
アレックスがレンの股のあいだの位置からすっと移動するのがわかった。
すぐに三人の手下たちが、そこにやってくる。
ぎょっとした。
三人の全員が筆を持っていたからだ。
「まあ、あとは俺たちに任せておきなよ、レンよ。最初は剃毛、つぎに筆責めで豆を大きくする。そして、包皮の切除だ。痛みは一瞬だ」
確かドスとかいう名前だった男が笑いながらそう、言った。
いま気がついたが、そいつは剃刀のようなものを持っている。
「媚薬も追加しておくぜ」
ウノだ。
針を取り出される。
レンは絶望に襲われた。
あの針で送られる媚薬は怖ろしいほどの効果を発揮するのだ。
これを繰り返し打たれることで、レンは色情狂のようによがり狂い、この小屋で輪姦されながら、それで絶頂しまくるという醜態を晒してしまったのだ。
「天国にいきな」
股間にちくりと痛みが走った。
レンは呻いた。
あっという間に、凄まじい淫情が股間に襲いかかった。
思わず力が抜けかけて、それで腰を落としてしまい、レンは泣きじゃくりながら、股間をぐいと上にあげた。
そのレンの股間に、筆が襲いかかってくる。
「ひいい、ひぎいい、んぎいいっ」
レンはただただ、泣いて悲鳴をあげるしかなかった。
二本の筆とともに、ドスの操る剃刀がじょりじょりと股間を滑るのを感じた。
しばらくのあいだ、それが続いた。
股間でちろちろと剃刀が動き、だんだんと股間の恥毛が剃られてるのもわかった。
筆の刺激も続く。
つんつんという鈍痛とともに、悶えることで加わる糸吊りの激痛が繰り返す。
レンはぼろぼろと涙をこぼした。
「さて、終わったぜ──。まるで童女の股みてえだぞ。立派な女奴隷の股だ」
ドスがげらげらと笑った。
「レン、包皮を切断することに同意するな? そうすれば、腰だけはさげさせてやるぜ」
壁にもたれて離れているらしいアレックスが言った。
「い、いやよ──」
レンは叫んだ。
「承知するまで、豆を筆で苛めてやれ」
アレックスが言った。
すると、糸で吊られて信じられないくらいに敏感になっている肉芽に、一斉に筆が襲いかかった。
「おわあああっ、あああっ」
レンは恥も外聞もなく、苦悶の絶叫をした。
しかも、さっきの媚薬で股間はあり得ないほどに敏感になっている。
レンは、あっという間に、絶頂にまで快感を引きあげられた。
「いぐううっ」
レンは叫んで、がくがくと腰を振った。
達してしまった。
力が抜ける……。
レンは豆が引き千切られるのを覚悟した。
「んぎいいいっ」
だが、あまりの激痛に、すっかりと脱力したはずのレンの腰は、跳ねあげるように腰をあげていた。しかし、力が入らなくて、すぐに腰がさがる。だが、痛みで腰があがる。
それを数回繰り返した。
「受け入れるな──?」
アレックスが怒鳴った。
レンはもうなにも考えられずに、必死で頷いた。
「いい子だ」
アレックスが腰をあげて、なにかの取っ手を引いた。
その瞬間、豆を引きあげていた力がなくなり、レンはどんと腰を床に落とした。
「ははは、豆の皮を切れば、一日中、豆が疼いて、まん汁は垂れ流しになり、誰に襲われても、簡単に股を開く奴隷女の誕生というわけだ。とてもじゃないが、もう剣など振れんよ」
ウノが言った。
「包皮切断は俺に任せてくれよ、みんな。だが、せめてもの情けだ。みんなで、またいい気持ちにさせてやってくれよ。少しでも痛みが薄くなるようにな」
その声は、トリスだと思った。
しかし、それ以上考えられなくなった。
両側から乳房が柔らかく揉まれ始めたのだ。
すでに全身に媚薬が回っている。
レンは吠えるような嬌声をあげて、すぐに悶絶してしまった。
すると、今度は乳房の刺激に加えて、股間への愛撫も追加される。
起きあがってきたアレックスだ。
アレックスはレンの肉芽に結びついている糸をまたもや引っ張って腰をあげさせて、自分の腰の位置まで誘導して、股間に一物を挿入してきたのだ。
媚薬にただれるレンの膣は、レンの意思とは別に、ぐいぐいとアレックスの怒張を締めつけて快感を搾り取る。
情けないが、気持ちいい……。
アレックスが律動を始めると、またもやレンはすぐに絶頂した。
やがて、アレックスが精を放った。
すると、犯す相手が交代して、また犯される。
途中で媚薬をまたもや足されたりして、レンはなにがどうなっているのかわからないくらいに狂乱した。
次々に絶頂をして咆哮し、ほとんど失神寸前になった。
そして、気がつくと、股間に鋭い痛みが走った。
皮が切られたのだとわかった。
レンは今度こそ、完全に気を失った。
*
「ふう……」
ヤッケルが大きく息を吐いた。
最後の罠を解き終わったのだ。
目当ての山小屋は、すぐ目の前だ。
そこに、レンが連れ込まれて監禁されていることは、一郎にもわかっている。レンの悲痛な声がさっきから、山小屋の外にまで響き渡っていたからだ。
激昂して突入をしようとしたエリカを冷静にとめたのは、意外にもヤッケルだった。
ヤッケルは、小屋の周りに無数の罠があることを見抜いて、一郎たちにそれを指摘し、それを一個一個除去し始めた。
その冷静な様子に、エリカが逆に腹をたてそうになったが、一郎はそれを制した。
ヤッケルは冷静などではなかったのを知っていたからだ。
その顔は憤怒で真っ赤であり、その表情には、これがあのヤッケルかと思うくらいに、殺気に溢れていた。
それでいて、ヤッケルは迂闊に飛び込めば、罠にかかってしまうことを瞬時に見抜いて、一個一個と時間をかけながら罠を無力化していったのだ。
婚約者の悲鳴を聞きながらである。
一郎は、ヤッケルに対する評価を見直す思いだ。
ヤッケルはちっとも意気地なしなんかじゃない。
この状況で、しっかりと正確な仕事をできるのは、少なくとも、彼が
生半可なことで、できることじゃない。
激昂して飛び込んでも返り討ちに合うだけだし、罠を全部外してから奇襲的に飛び込まないと、レンを人質に取られる恐れがあると指摘したのもヤッケルだ。
この男は冷静なのだ。
そして、慎重だ。
それが意気地なしに見えていたのかもしれないが、やるときにはやらなければならないということもわかっている気がする。
「じゃあ、行きます……。その前に、確認させてくれ……」
ヤッケルが一郎たちに振り返って小声で言った。
すでに辺りは薄暗くなっている。
そろそろ、夜も来る。
さっきまで激しく聞こえていたレンの悲鳴は、なぜか一時的になくなっていた。
「……なんでも言ってくれ、ヤッケル」
一郎は言った。
女たちも無言で頷く。
一郎はすでに火のついた短銃を手に持っている。
エリカ、コゼ、マーズの三人もそれぞれに剣を抜いていた。ヤッケルはクロスボウを構えている。
「中には四人。足跡でそれは明白だ──。そして、さっきも言ったが、エリカさんは魔道が遣えるそうだから、すぐに、レンのことを眠らせてくれ。しばらく、目が覚めないようにして欲しいんだ」
「わかったけど、眠らせるなら、あのアレックスという男でいいんじゃない。強いのは、そのアレックスだけなんでしょう」
エリカは首を傾げている。
だが、ヤッケルは首を横に振った。
「……どうか、レンを優先に……。これだけはどうしてもお願いする」
ヤッケルは言った。
多分、考えていることがあるのだろう。
一郎はそうしてやれと言った。
いずれにしても、エリカの魔道の実力では、小屋にいる全員を同時に眠らせるような魔道はかけられない。対象はひとりだけだ。
だから、エリカはヤッケルの願い通りに、飛び込んだらすぐに、レンを魔道で眠らせるということなった。
「じゃあ、皆さん、お願いする。俺は弱い。もちろん、俺も戦うが、どうか助けてくれ」
ヤッケルが頭をさげた。
一郎は頷いた。
すると、ヤッケルが立ちあがった。
ほとんど足音もなく、山小屋に近づいていく。
一郎たちも追った。
ヤッケルが山小屋の扉を蹴飛ばして開けた。
山小屋からアレックスらしき男の声がしたと思った。
ヤッケルがクロスボウを発射したのがわかった。
小屋で男の悲鳴があがった。
「どいて──」
コゼが一郎の横をすり抜け、ヤッケルを制して、扉から室内に入る。
一郎も銃を持ったまま入った。
ヤッケル、マーズと続く。
部屋には全裸のレンが拘束されて横たわっている。
また、四人の男は扉の反対方向の壁際だ。四人は下半身になにも身につけておらず、すでに抵抗してない。
そして、アレックスは血だらけだ。
ヤッケルが最初に撃ったクロスボウの矢が腹に刺さっている。
最後に飛び込んだエリカが、まずは、レンに魔道をかけて、目が覚めないようにする。
そのレンの姿は惨状だった。
なにをされたかわからないが、完全に失神状態だ。
素っ裸にされて縄で縛られており、全身に男の精をいっぱいつけられたような状態で倒れている。
その股間もひどい状態だ。
股間から少し血が出ており、股間の周りには剃毛をしたような恥毛の残骸もあって、股間はすっかりと剃刀かなにかで剃りあげられている。
「ヤ、ヤッケル……お、お前……」
下半身になにも身につけていないアレックスが、ヤッケルが撃った矢を腹に突き刺されて呻いていた。その腹から、夥しい血が流れている。
ほかの三人は、すでに戦意を喪失して、真っ蒼になって、壁にもたれて震えていた。
おそらく、最初にヤッケルがアレックスを撃ったことで、決着がついたのだろう。こういう場合の戦いは、一番強い者がやられれば終わりだ。
ほかの者は、それ以上、抵抗する気を失ってしまうものだ。
「俺がやって来ないと思ったのか、アレックス……。だから、わざわざ、自分がレンをさらったと、教えるようなことをしたのか?」
ヤッケルが懐からナイフを放り投げた。
花畑にレンの下着とともに置いてあったアレックスのナイフだ。
「お、お前……、お、俺に刃向かうとは……わ、わかってんのかよ……。た、ただじゃおかねえぞ……」
「言いたいことはそれだけかよ。まあ、俺も、お前の話なんて聞きたくもねえけどな」
ヤッケルはすでに二射目をクロスボウに仕掛け終っている。
それをアレックスに向ける。
アレックスがぎょっとした顔になった。
次の瞬間、アレックスの眉間に、ヤッケルが放ったクロスボウの矢が突き刺さった。
アレックスは悲鳴をあげることなく絶命した。
「ひいいっ」
「た、助けてくれ──」
「うわあああ」
残った三人が悲鳴をあげた。
すっかりと恐怖に包まれている。
一郎たちは、その三人が動かないように、ずっと武器で威嚇をし続けていた。
「どうする、こいつら?」
一郎は訊ねた。
「皆殺しに……。ひとりも生き残らないように……」
ヤッケルが静かに言った。
三人が大声で命乞いを始めた。
一郎はとりあえず、真ん中のひとりの頭に向かって引き金を引いた。
即死だ。
残りのふたりは、飛び込んだマーズとコゼによって、瞬時に死体に変えられた。
「ありがとうございます……」
ヤッケルが頭をさげ、そして、クロスボウを投げ捨てて、レンを抱きかかえて、ぼろぼろと泣き始めた。
いずれにしても、レンが怪我をしているのは確かだ。
一郎は、足の速いコゼに、急いでミウを連れてきてくれるように頼んだ。
ミウの魔道なら、レンの傷ついた身体も元に戻すことくらいはできる。
剃った陰毛だって、元通りにできるだろう。
しかし、元に戻せるのは、外見だけの話でしかないが……。
*
はっとした。
レンはがばりと起きあがった。
「いてっ」
「きゃあ」
ごんと頭と頭がぶつかった。
悲鳴はヤッケルの声だ。
どうやら、レンはヤッケルに抱きかかえられていたみたいだ。
「あいてて……。だ、大丈夫かよ、レン? 心配したぞ」
ヤッケルがレンとぶつかったらしい頭を押さえながら言った。
痛いなあ……。
レンはヤッケルに文句を言いかけた。
だが、はっとした……。
そうだ……。
さっきまで……。
全身に絶望が走る。
アレックスたちに犯されて……。
媚薬と拷問に負けて……。
ヤッケルに対して申し訳ないことを……。
そう思ったが、すぐに怪訝に思った。
どうして、ここに、ヤッケルが……?
助けられたの……?
……というよりも、ここはどこ……?
風が吹いている。
ここは山小屋なんかじゃない。
どこかの草の上みたいな感じだ。
辺りは暗かった。
空には三個の月が照っていて、周囲を月明かりで照らしていた。
やっと、どうやら、ここが花畑だとわかった。
アレックスたちに、襲われた場所だ。
「あれっ?」
さらに驚いて、思わず声をあげた。
服をちゃんと着ていたからだ。
「レン、どうかしたか? やっぱり、まだ混乱しているか? お前、ここに倒れていたんだぜ。てっきり結婚式の準備で女友達のところに行っているものと思っていたから、来ていないと知らされてびっくりしたぞ。それで、ロウさんたちにも頼んで、探し回っていたら、ここで倒れているのを見つけたんだ。とりあえず、大丈夫そうだな」
ヤッケルがにこにこと微笑みながら言った。
レンはきょとんとした。
周囲を見回す。
確かに、ロウたちがいた。イライジャもいて、彼の女たちもいる。
エルフ女、人族の小柄女、大柄娘、美人の貴族女、童女魔道師だ。全員がレンを心配そうに見ている気がした。
「レン、あんたも、相変わらず、剣以外じゃあ、そそっかしいわね。ハルナン草の花と、普通の花の見分けもつかないの? まあ、こんなところに、一輪だけ混じってたんじゃあ、うっかりと抜いてしまうのもわかるけど……。ところで、おかしな夢は見なかった? ハルナン草は花を抜けば、幻覚作用のある毒をまき散らして、女を昏倒させる力があるしね」
イライジャが笑いながら、籠に入っている赤い花を示した。
籠の中は、花冠を作るために、ここでレンが摘んで集めていた花だ。その中に一輪だけハルナン草の真っ赤な花が混じっている。
「えっ?」
だが、言われている意味がわからなかった。
ハルナン草の花は、確かに、女にはとても危険であり、うっかりと摘んだら、とんでもないことになるということも知ってる。性的に興奮して、発狂するような淫情に襲われるのだ。
それでいて、目が覚めてもなにをしたのか覚えていなかったりして、本当に性質の悪い花である。
でも、ハルナン草……?
「ここで普通の花と間違えて、ハルナン草を抜いたんだな。間抜けだなあ。だけど、一日中、ここで眠っていて、風邪をひかなかったか?」
ヤッケルがレンを抱いたまま言った。
レンは、やっと自分がヤッケルに抱きかかえられたままだということがわかった。
慌てて、その腕の中から出る。
「あ、あたし……寝ていた? ここで──? あのう……。アレックスとかは……?」
首を傾げた。
ここで一日寝ていた?
だったら、あれは夢──?
つまり、ハルナン草の花毒が見せた淫夢──?
まさか……。
本当……?
でも、そうなら……。
「アレックス……? まさか、あいつの夢を見たのか? ハルナン草の魔毒に当たって?」
ヤッケルが嫌な顔をした。
レンは慌てて否定した。
そして、思い出して、ヤッケルをはじめとして、ロウたちの全員に背を向けて、スカートの中に手を入れてみた。
ここでそれを確かめるのは恥ずかしいが、いまはそれが最優先だ。
あれが幻覚や夢だというなら、こんなに嬉しいことはない──。
あった……。
下着もある。
そっと触ったが、あそこの毛もある。
皮だって切除されたようなおかしな感覚はない……。
夢だったのだ……。
心の底から脱力した……。
「なにやってんだ、お前……?」
ヤッケルが覗き込むような仕草をした。
レンは慌てて、スカートから手を抜くと、照れ隠しに、ばしりとヤッケルの肩を叩いた。
「なに見てんのよ──。いいじゃないのよ──」
怒鳴った。
そして、思い出して、さらに口を開いた。
「そうだ──。あんた、狩りはどうしたのよ──? ちゃんと獲物は捕まえたんでしょうねえ──?」
ヤッケルは、今日はこのロウたちに手伝ってもらって、結婚式の招待客に振る舞う料理に使う獲物を狩りに行っていたのだ。
結婚式まで、あと四日……。
いや、今日は一日棒に振ったから、残り三日だ。
中心となる料理の仕込みだけは、そろそろ手掛けないと間に合わない。
「おう、捕まえたぞ、イノシシだ──。もっとも、俺は最初にクロスボウで矢を刺しただけで、全然、倒れずに、ロウさんたちが実際には捕まえてくれたんだけどな。俺は驚いて、尻もちをついただけだ」
ヤッケルは笑った。
なんだか、ほっとした。
どうやら、本当にあれは、ハルナン草が見せた幻覚だったのだ。
そうでなけれは、ヤッケルがこんなに屈託なく笑うわけがない。
レンも顔に笑みを漏らした。
「あんたらしいね。でも、よくやったわ──」
レンはぽんとヤッケルの背中を軽く叩く
「あたしからも、お礼を言います──。狩りを手伝ってくれてありがとう。それに、心配をかけたのも……」
レンはロウたちに頭をさげた。
「ヤッケルは、大した男だったよ、レンさん。クロスボウで一撃だったよ……。勇気もあるし、冷静だし……。そして、なかなかに頭もいいし……。俺はすっかり見直した」
一郎が微笑みながら言った。
「ありがとう……。でも、お世辞を言わなくてもいいのよ。この人が意気地がないのは、十分に知っているから……。だけど、そういうところも含めて、あたしはこの人が好きなの──」
レンは笑った。
ヤッケルが「よせよ」と照れたように頭を掻く。
イライジャをはじめとした女たちが、堂々のレンの告白に、ちょっと驚いたような顔をした。
だけど、全員がほっとしたように柔和に微笑んだ。
いずれにしても、夢でよかった──。
本当によかった……。
レンは心からの安堵の息を吐いた。
それにしても、ハルナン草の花毒の見せた幻覚とはいえ、なんという夢を見るのだろう。
あろうことか、アレックスの夢を見るなど……。
アレックスになど、未練はないので、あるいは、あんな風に乱暴に扱われるのが、レンの隠れた願望だったりするのだろうか……。
今度……いや、今夜にでも、ちょっとヤッケルにお願いしてみようか……。
そんな変態的なことヤッケルは嫌がるだろうか……。
いや、大丈夫だろう。
この人が、とんでもない絶倫で好色なことは昨夜わかったし……。
とにかく、昨日はすごかったし……。
ちょっとくらい羽目を外したセックスだって、受け入れてくれるに違いない。
レンはそんなことを思った。