【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
ミウに魔道で作らせた祭壇を模した一段高い土の台に、華やかな衣装を身に着けたレンと、緊張しつつも凛々しい正装をしたヤッケルが並ぶ。
その前に黒い服を身に着け、それなりの格好をした一郎が神官の代わりに立っている。
ヤッケルとレンの結婚式だ。
場所は、町の端にあるふたりの家の庭であり、集まっているのは若い人たちを中心としたこの町の住民たちだ。
一郎の知っている結婚式とは異なり、近所住民が集まって行う野外パーティという感じだ。
着飾っている者は半分くらいで、まったくの平服の者も多い。
式典もどきをやっているこちら側に集まっている者の傍ら、庭の後ろ半分では、結婚式の中心の食材であるイノシシ料理が振るまわれていて、その周りで勝手に酒を飲んでいる者たちもかなりいる。
一郎は、この世界に来てから結婚式など初めてだったが、神官を前にして婚姻の誓いをするとか、新郎新婦が挨拶をするとかという儀式めいたことをするのは、地位の高い貴族だけの習わしらしく、庶民の結婚式というのは、大抵は、家でパーティをして、近所の人を招待して宴会をさせ、自分たちが夫婦であると披露するだけなのだそうだ。
貴族であれば、貴族名簿への転記のための届けであるとか、家同士の契約書のようなものを交わすことか、あるいは、権威付けのための式典などもあるが、庶民の場合はそんなことがあるわけもない。
目の前のふたりを含め、一郎の女たちの全員に確認したが、儀式のほかにも、結婚式のときにどんなことをするのかという決まった仕来たりはないみたいだ。
この地方では、夫になる方が宴の料理の材料を準備し、妻になる側は料理を振る舞うとともに、いまもレンが頭に乗っけている花冠をするというのはあるが、このシャデルワース地方全体の習わしですらなく、ヤッケルたちが暮らしている集落のみの風習らしい。
また、一郎の元の世界とも異なり、戸籍のようなものが存在するわけでもなく、そもそも夫婦というのは、ふたりが夫婦だと宣言をすれば、それで夫婦になるのだ。
従って、こういうお披露目のパーティが結婚式ということになるらしい。
それで、紆余曲折あり、この結婚式の儀式そのものを一郎が仕切ることになり、一郎の司会でヤッケルとレンの結婚式の誓いの儀式をやっているということだ。
「では、誓いを……。おふたりは台の前に……」
一郎は言った。
後ろで飲んだくれている年配の男たちはともかく、急ごしらえの祭壇の周りに集まっている若い人たちは、一郎が取り仕切っている珍しくも厳かな儀式めいた演出に興味津々の様子である。
特に、若い女たちは、目の前で行われている儀式に目を輝かせている。
「はい」
「はい」
ヤッケルとレンが一歩前に進む。
ざわついていた宴が静まり返る。
ふと顔をあげると、着飾ったエリカ、コゼ、シャングリア、マーズ、イライジャがこっちを微笑んで見つめている。
やはり、あの連中は目立つ。
一郎の精を受けることによる恩恵には色々あるようだが、改めて見ると、最初に性奴隷にしたときよりも、女たちはずっと美しくなっていることは間違いない。
それは肌の染みや皺が消滅したり、
さらに、毎日のように精を注ぐことで、女たちはどんどんと妖艶になり、たまらない色香を漂わせるようにもなっている。
大して豪華な衣装じゃないが、ああやって着飾って化粧をし、装飾品まで身につけると、全員がまさに美女、美女、美女だ。
それが並んでいる。
ある意味、今日の主役のヤッケルとレンよりも、遥かに目立っている。
一方で、結局、なんで一郎がこんな風に神官の役目をしているのかといえば、この世界の庶民の結婚式というのが、ただの食事会であり、儀式のようなことはやらないのだと教えられたことで、それじゃあ寂しいと不満を口にしたからだ。
なら、どんなことをするのだと訊ねたイライジャに、一郎は誓いの儀式について話したら、ならば、一郎が神官役で司会と式典の仕切りをやれと、イライジャが言い出した。
婚姻の誓いを取り仕切る者は神官でなくてもいいけど、それなりの権威のある者であるべきだと主張したのだが、ヤッケルもレンも、だったら一郎にやってもらいたいと熱望してきた。
ヤッケルなど、クロノスの一郎にこそ、それをしてもらいたいと強く言った。
また、一郎の出した式典のアイデアについても、レンが大乗り気になり、是非お願いしますと、抱きつかんばかりに仕切りを頼まれた。
それで仕方なく、こうやって神官役をしているというわけだ。
集まった者たちも、貴族が神官の前で行う本物の「結婚式典」など見た者がいるわけでもなく、儀式めいた宴の進行を感心した様子で見守っている。
「
「誓います」
ヤッケルが少し上気した顔で言った。
実のところ、一郎の前世界での職業経験には、ホテルで行う結婚式の牧師役の代行というのも含まれている。
まったく宗教に縁のないアルバイトのような一郎に、牧師をさせるのだからいい加減なものだと思ったが、あのときもちゃんと契約の三箇月間、それをやって、そつなくこなした。
その経験が、まさか異世界で役に立つとは思わなかった。
「続いて、レン……」
一郎は厳かにレンに語りかけながら、ひそかに淫魔術を女たちに向けて淫気を飛ばす。
淫気は一同にとっては、魔道遣いが魔力を飛ばすのと同じだ。
送ったのは、女たちの装束の下に装着させている貞操帯だ。ディルドのようなものは挿入していないが、股間に喰い込んでいる革製の貞操帯の内側には、大小の半球の刺激物がたくさんあり、一郎の淫魔術で、それが女たちの敏感な場所を探して、振動しながら動き回るようになっている。
それを動かしたのだ。
イライジャが一郎に、式典の取り仕切りと司会を兼ねた神官役を押しつけたが、この貞操帯を受け入れることが、一郎が引き受ける代償とした。
女たちは不満を口にしたが、最終的には受け入れた。
客たちは気がつかないが、一郎の女たちが一斉に赤くなって、揃って身体をびくりと動かす。
これだ、これ──。
こういう愉しみがあれば、こんなことはいくらでも引き受けてもいい。
「んんっ」
一郎の横のミウも身体を突っ張らせた。
ほかの女たちは観客だが、ミウには見習いとはいえ、正規の神官ということで、今回は一郎の助手という役割を与えている。
亜空間に収納していた見習い巫女の装束を身に付けさせて、神官もどきの一郎の横に立たせている。
もちろん、貞操帯の股間責めは、十一歳のミウと言えども例外はない。
貞操帯の内側の半球が、ミウの敏感な場所を容赦なくいじくりまくっているはずだ。
「んあっ、あっ……」
ミウには次に使う儀式のための盆を持たせているのだが、それがかたかたと揺れている。
このミウも、一郎が抱く前は、顔にいくらかそばかすのようなものがあったが、いまは完全に消滅して真っ白い肌だ。
ちらりと見る。
ミウの顔は真っ赤で、一生懸命に歯を喰い縛っている。
さらに、ミウにも刻んだ刻印の刺青の二匹の蛇を動かして、ミウの小さな乳首まで昇らせ、舐めさせた。
まだ、未発達だが、こうやって刺激させ続ければ、早晩、感じる胸になる。
「んんっ」
ミウがくすぐったさに身体をもじつかせる。
一郎は、素知らぬ顔をして儀式に意識を戻す。
「汝、レンは、そのヤッケルを夫とし、今日よりも良いときも、悪いときも、富めるときも、貧しいときも、健やかなるときも、病めるときも、愛し慈しみ、貞操を守り、死がそれを分かつまで、生涯変わらぬ愛を誓うか」
「誓います」
レンが答える。
周りに集まっている観客たちはうっとりとした感じで聞いている。
一郎にとっては、平凡な結婚の誓いの言葉だが、耳慣れないこっちの世界の庶民には、まるで美しい詩の朗読のように聞こえるようだ。
事前に練習のために女たちに披露したときにも、まるで歌のようだと口々に言っていた。
どよめきのような声がだんだんと大きくなる。
一方で一郎の女たちだけが場違いに顔を赤くしている。
一郎は振動をとめてあげた。
許したわけじゃない。
あまり連続で続けても、慣れてしまって面白くないのだ。
こういうものは、不意を突くのを愉しみつつ、少しずつ嬲っていくのが風情というものだ。
そして、さんざんに焦らし抜き、全員を犯し抜くつもりだ。
いつもの動きやすい服装ではなく、珍しくも着飾っている女たちだから、ひとりひとり貞操帯を外しながら、あの格好でやらせてもらうことにしようか。
いや、いっそのこと、このパーティ会場の裏でひとりひとり犯すか?
そっちの方が面白いかも……。
そんなふしだらなことをちょっと思った。
ところで、ミウの胸を責めている二匹の蛇だけはそのままだ。
「ふうっ、うっ、あっ……」
ミウの甘い嘆息が耳に入ってきた。
また、観客に混じる一郎の女たちは、それぞれに脱力している。
「指輪の交換を……。ミウ、前に……」
一郎はぼうっとしている感じのミウに声を掛ける。
「あっ、はい」
ミウが慌てたように、前に出る。
すかさず、ミウも含めた女たち全員の貞操帯の内側を動かす。
「んんっ」
見習い巫女姿のミウが背をぐいと伸ばすように全身を突っ張らせる。
観客に混じっている女たちも一斉に反応をする。
また、振動をとめる。
がくりとミウが脱力する。
実に面白い。
「さあ、まずはヤッケルから、レンさんの左手に薬指に指輪を……」
一郎は促した。
これも、一郎の前の世界の風習をそのまま持ち込んだ仕来たりだ。
一郎に儀式は任せるということだったので、ただ誓いの言葉を交わすだけではつまらないと一郎は思い、結婚式の誓いの言葉とともに、指輪を交換し合うというのはどうかと相談した。
ふたりは、変わった誓いの方法だと感想を言ったが、是非やってみたいと喜んだ。
贈り物代わりに、指輪も一郎が準備した。
ずっと以前に、エリカのピアスを作るために集めたアマダスの石の欠片が亜空間に残っていたのだ。
それをミウの魔道で、ふたりそれぞれの左手の薬指に合うように、飾りのなかった安物の指輪の大きさを加工させて、石を嵌めたのだ。
我ながら、急ごしらえとは思えない仕上がりだ。
「レン……」
ヤッケルがミウが持っている盆から指輪をとった。
レンの手を取る。
指輪をすっと左の薬指に嵌めた。
事前の話し合いのとき、なぜ左の薬指なのだと質問されたが、一郎は愛情の誓いと説明した。
よくは覚えてはいないが、結婚式の牧師役の派遣社員をしたときには、そういう説明だったと思う。
一応、新郎新婦から質問を受けたときのマニュアルがあり、そう書いてあったのを記憶をしている。
左手は心臓に近く、すなわち、心に近いからであり、薬指には「愛情」の象徴だと説明した。さらに、指輪をどの指に嵌めるかによって意味が変わり、親指は「堅い意思」、中指は「幸運」、人差し指は「行動力」、小指は「変化」を向上する効果があるとも諭した。
また、指輪は丸いので、愛が永遠に続き、そして繰り返すという意味もあると教えた。
ヤッケルとレンは感嘆していた。
「あ、ありがとう、ヤッケル……」
レンが感動したように息を吐いた。
ヤッケルから嵌めてもらった指輪を見つめて顔を真っ赤にしている。
よく見ると、薄っすらと目に涙まで浮かべていた。
「レンさん、さあ……」
一郎は声をかけた。
感動をして、ぼうっとしてたみたいだったレンがミウの盆から指輪をとる。
ヤッケルの左手を取り、薬指に指輪を嵌めた。
静まり返っていた観客たちが少しざわざわとするのがわかった。
声を拾うと、これから結婚式を迎えようとしている女性とかが、自分たちのときもあれをやりたいとか言っているみたいだ。
この一郎の思いつきの仕来たりが、この世界の結婚式の風習になれば、面白いかなあとちょっと思った。
「では、誓いの口づけを……」
一郎は厳かに言った。
「えっ?」
「えっ?」
ヤッケルとレンが驚いている。
ここでみんなの前で口づけをすることについては、事前に言っていなかった。
だが、全部一郎に任せると言ったのだから、まさか、拒否はしないだろう。
一郎はにやりと微笑んだ。
「口づけをもって、ふたりの誓いは成熟する。さあ、ヤッケル、覚悟を見せろ……」
一郎はヤッケルを促す。
ヤッケルは戸惑いながらも、レンに手を伸ばした。
「レン」
「ヤッケル……」
ふたりが口づけをした。
わっと歓声があがり、一斉に拍手が沸き起こる。
「これをもってふたりは夫婦となった。天空神とその女神たち、女神に仕える精霊たち、そして、ここに集まる者たちのすべてが証人である」
一郎は歓声を割るように大声で宣言した。
「ミウ」
さらに声を掛ける。
さすがに、魔道を練るのに邪魔になる淫魔術の悪戯はやめた。
「はい」
手筈に従い、ミウが深呼吸してから、魔道を発動する。
まずミウは、抱き合っているヤッケルとレンの周りに、たくさんの花を魔道で舞わせた。
続いて、魔道の花火を連発して打ちあげる。
わっという大歓声がさらに沸き起こる。
盛大な盛りあがりとともに、一連の儀式が終わった。
一郎たちは、とりあえず台からおりた。
「ありがとう、素敵な結婚式だったわ。夢のよう……」
「お、俺からも感謝を……。本当にありがとう。ありがとう」
レンとヤッケルが一郎に握手を求めてきた。
一郎はふたりと握手を交わしながら、改めて祝福の言葉を贈った。
同時に、静止していた女たちの貞操帯の内側を一斉に稼働させる。
すぐ横のミウが「あんっ」と呻いて、内腿をすり寄せるのが視界に入った。
「じゃあ、みんなにも挨拶を……。俺たちは食事と飲み物をもらうよ。それと色々と宴で愉しませてもらう」
一郎はミウの身体を軽く抱えるようにして、振動をちょっと強めにした。
「くっ」
ミウががくりと姿勢を崩して、両手ですがりつくようにしてくる。
だが、喧噪の中ではそんな不自然な態度も、ほとんど目立たない。
「じゃあ、ゆっくりしてね。絶対に帰らないでね」
「あんたのおかげで、思い出に残る結婚式だった。心から感謝を」
レンとヤッケルが一郎に揃って頭をさげる。
そして、人の輪の中に入っていった。
あっという間にふたりがほかの友人たちに囲まれて姿が見えなくなる。
「ああ、ロウ様……」
一方でミウが一郎の腕を両手でぎゅっと掴みながら、すがるような視線を送ってくる。
顔を赤くして額に汗をかき、すっかりと淫情に襲われている表情だ。
淫具に弄ばれて、できあがってしまったみたいだ。
淫らな童女様だ。
「いい顔になったな。さすがは俺の性奴隷だ。大きくなって、俺だけのための痴女になってくれ。俺の前では痴女。ほかの男の前では貞節な女だ。どんどん、身体を開発していってやろう」
一郎はミウの耳元に屈んでささやいた。
「は、はいっ」
ミウが嬉しそうに破顔した。
「ロウ……」
「ロウ様」
「ご主人様」
「ロウ」
「先生……」
すると赤ら顔で内腿を擦り合わせるようにぎこちない動きをする一郎の女たちが集まってきた。
「来たな。じゃあ、ひとりずつ、馬車の裏で貞操帯を外してやろう。順番が来るまで宴で愉しむんだ。勝手に座るなよ。命令だ」
一郎たちの馬車は、レンたちの家の横にとめていて、このパーティ会場から見える位置にある。一連の宴が終わったら、今夜はそのままヤッケルとレンの家に泊まることになっていて、明日の朝、ここから出立の予定なのだ。
結婚式当日の新婚の夫婦の家に泊まるなど遠慮したのだが、絶対にそうしてくれと、ヤッケルとレンに押し切られた。
それはともかく、一郎はエリカ以外の貞操帯に淫魔術を注ぎ直して、ランダム設定にする。
これで、いつ振動するのか、とまるのかは、強弱、緩急、継続時間は一郎にもわからない。
何人かは脱力したようになり、ひとりはがくりと膝を割ってしゃがみ込みそうになる。
「あっ、ロウ、こ、これは……」
両手を股間に当てて、座り込みそうになったのはイライジャだ。こっちは振動が強くなったのだろう。ほかの者はいったん静止したみたいだ。
一郎はほくそ笑んだ。
「とりあえず、エリカだな」
一郎はエリカの手を取り、貞操帯を強く振動させる。
エリカの股間には、さっき指輪交換で使ったのと同じアマダスの石の嵌まったクリピアスがある。
そこに当たるように、貞操帯の内側の球体を振動させる。
「ああっ、やあっ」
エリカが激しく反応して、一郎に抱きついてきた。
一郎はミウから手を離して、エリカの腰を抱いて馬車側に向かうように歩きだす。
「また、エリカが最初ですか?」
コゼが不満そうに口にしたのが耳に入ってきた。
「順番だ。次はコゼな」
一郎はエリカを連れて会場から離れながら、背中越しに手を振った。
「ロ、ロウ様、ちょ、ちょっと、お願いです。ぴ、ぴあすに当たって、あ、脚に、ち、力が……」
一方で一郎に腰を抱かれているエリカが泣きそうな顔で哀願をささやいてきた。
一郎は返事の代わりに、乳首ピアスも振動させてやった。
ついでに、紋様の蛇も出動だ。
服の下のエリカの肌に刺青の蛇たちを這い回らせる。
待っている女たちの蛇も動かした。
一斉に女たちの声があがるのが聞こえる。
「んあああっ」
エリカが涙目になって、びくびくと身体を震わせたかと思うと、ぴんと身体を一度突っ張らせてから、その場で足をとめて、ついにしゃがみこんでしまった。
さすがは、感じやすい身体のエリカだ。
もう達したみたいだ。
まあ、敏感なピアスを刺激されているから仕方ないか。ピアスを一郎に刺激されると、エリカはいつもよがり狂う。
そうなるようになっているのだ。
一郎は、刺青の蛇の一匹をエリカのアヌスに潜らせて、暴れさせた。
「ひいっ」
エリカがしゃがんだまま、服の上からお尻を押さえて、甲高い悲鳴をあげる。
「立つんだ。さもないと、このまま放置して、最後尾に回すぞ」
一郎は笑った。
「は、はいっ。立つ。立ちますから……。くううっ」
エリカが一郎に抱きつくようにしながら、やっとのこと腰をあげた。
(第9話『狙われた婚約者』終わり)
*
【婚姻の風習】
……。
……。
……以上のように、世界の婚姻式の風習には様々なものがあるが、多くの地で共通しているのは、結婚を誓った男女が婚姻式でアマダスの石の嵌まった指輪を交換するというものだろう。
しかし、果たして、それがいつ頃の風習であり、いずれの地域から拡がったものであるのかは、はっきりとは伝わっていない。
有力な説は、第二帝政直前のハロンドール地方のシャデルワースという町から派生したのが起源だとされるもの、古代ナタル森林のエルフ族の一部族が相互に魔道具を交換し合う慣習から派生したものであるとするもの、エルニア魔道王国時代の王族の婚姻式で王が妃に『所有』の意味のある腕輪を贈っていたのが、庶民の婚姻において指輪の交換という形式に変化したものであるという三つである。
しかしながら、いずれも定かなものはない。
ただ、前述のシャデルワースの町の古い風土を記録した文献には、アマダスの石を用いた指輪の交換をした最初の夫婦として、その地で長くふたりで教師を務めた、仲のよかったというヤッケルとレンという老夫婦の名が残っており、これが、現存している結婚式におけるアマダスの指輪の交換のもっとも古い具体的な事例ではある。
また、同地には、前述の老夫婦の一族に伝わっていた家宝という一組のアマダスの指輪も博物館に残っている。一族では、贈り主は冒険者時代のロウ=サタルスだと伝わっていたということである。しかしながら、証明するものはなく、多くの歴史家も、数多くある何事もすべてをロウ=サタルス起源にしたがる作り話のひとつであろうと評価している。……。
次に、古代ナタル森林のエルフ部族の伝承説を裏づける話としては、……。
……。
……。
……。
マリー=レイジア著『世界の風俗』より