※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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【3章 大山鳴動】
306 脱獄女囚への拷問


【ナタル森林・褐色エルフの里の郊外】

 

 

「んがあっ」

 

 口の中に入れ込まれた穴あきの嵌口具の下で、ユイナは思い切り叫んだ。

 だが、ユイナが縛られて転がされた地面の周りには、パリスと名乗る子供のような姿の何者かと、その家来のような手の者しかいない。

 ユイナの声がほかの誰かに届く可能性はない。

 

 なにが起きたのか全く理解できない。

 ついたったいままで、ユイナは褐色エルフの里の広場にある囚人用の塔にある石牢の中にいた。

 ユイナの犯した罪により、人間族に奴隷として売られるという侮辱刑になることになっていたのだが、昨夜……というよりは、今朝、夜が明ける直前に、その牢に何者かの集団による襲撃があり、ユイナは彼らにさらわれてしまったのだ。

 そして、ここに連れて来られた。

 

 とにかく、ユイナには理解不能だ。

 塔を襲撃した連中は、魔道で幾重にも結界がかかっているはずの塔の警備を打ち破り、ユイナを見張っていた牢番を殺し、強力な魔道でユイナの牢を壊すと、ユイナを拘束して、目隠しと、箝口具を装着させると、袋のようなものにユイナを詰め込み、運び出したのだ。

 あっという間のことだった。

 

 そして、そのままどこかに運ばれて、ここに連れて来られた。

 袋から拘束されたまま、放り出され、目隠しだけを外された。

 すると、ユイナは十数人の男たちに囲まれており、ひとりだけ椅子に座っている少年と顔を向き合わされた。

 その少年は、パリスと名乗った。

 しかし、少なくとも、そのパリスと名乗った少年については、人間族の子供にしては不自然だ。本当は何者であるかは、ユイナにもまったくわからない。

 ただ、見た目のままの人間族の子供というわけじゃないのは、なんとなくわかる。

 

「よし、服を剥いて、吊りあげろ──」

 

 パリスがにやにやしながら、周りの男たちに命じた。

 数名の若者たちが地面に横たわるユイナに群がる。

 囚人服に手を掛けられて引き破られる。

 

「んふうっ」

 

 暴れようとしたが、屈強そうな複数の男たちに押さえられてなにもできない。魔道についても、あの塔に収容されるときに、魔道を封印する紋様を身体に刻まれている。

 

「んんぐううっ」

 

 身を捩る。

 しかし、暴れようとすると、身体を持ちあげられて、荒々しく地面に叩きつけられた。涙が出るほどの激痛が腰と肩に走る。

 後手縛りの拘束が解かれる。

 だが、身体を押さえつけられてなにもできない。

 

「んぐうう」

 

 絶叫した。

 服を引き破られる。

 下着もあっという間に引き裂かれて素っ裸にされてしまった。

 うつ伏せにされる。

 両腕を思い切り背中に捩じあげられた。

 誰かと誰かの膝が背中と腰に乗って来る。

 

「うぐうう」

 

 思い切り叫ぶ。

 だが、両手首に縄が巻き付けられる。両足首も揃えて縛られて、背中側で両手首と束ねられた。

 

「よーし、あげるぞ」

 

 誰かの合図で、さらに太い縄にユイナの四肢を束ねている縄が繋げられた。

 顔を捩じると、いつの間にか太い樹木の枝から太い縄が吊り下げられている。

 

「あげろ。せーの」

 

 掛け声とともに、ユイナの身体がぐいと持ちあがった。

 

「うごおおっ」

 

 ユイナは苦悶の声を洩らした。

 手足を背中で束ねられたまま、ユイナの身体が大きく持ちあがって、宙吊りになる。周りにいる男たちの頭くらいまで引きあげられる。

 痛い──。

 全体重が四肢にのしかかってくる。

 しかも、逆海老の体勢だ。

 反り返っている背骨と腰に、凄まじい重圧がかかってくる。

 

「さて、さっきも自己紹介したが、あんたのお爺さんとやらに、頼まれてあんたを脱獄させてやったパリスという。よろしく頼むぜ。ところで、訊きたいことがあるが、その前にちょっと苦しんでくれや。俺は拷問なしに、得られた情報が信用できなくてな」

 

 パリスが椅子に座ったまま、ユイナを見上げながら言った。

 すると、男たちがユイナの下で土をにいれた袋を準備している。

 ユイナはぞっとした。

 その土入りの袋に縄がかかっていたのだ。

 その袋をひとりの男が両手に抱えて持ち上げて、ユイナが吊られている身体の下に持ってきた。

 さらに、土の入った袋を縛っている縄がユイナの反り返っている腰にひと巻きして結ばれる。

 

「んぐううっ、んんぐう」

 

 なにをされようとしているのかがわかり、ユイナは力の限りに悲鳴をあげた。

 

「細っこい腰だが、黒い肌のエルフは、どれくらいのことをすれば、腰が折れるんだろうな」

 

 パリスが手をあげた。

 袋が離されて、凄まじい重みが腰に襲いかかった。

 

「んぐうううう」

 

 ユイナは泣き叫んだ。

 

「揺らしてやれ」

 

 前後左右に男たちが集まる。

 そして、逆海老状態で吊られているユイナを四周から、激しく押し始める。

 

「んぐううっ、んんぐう」

 

 身体が揺れるたびにユイナは悲鳴をあげた。

 怖ろしいくらいの力が四肢の付け根と腰を襲う。

 しばらくのあいだ、ユイナはただただ、泣きわめいた。

 

「さて、少し話をするか」

 

 やっと、眼下のパリスが口を開いたのは、おそらく、四半ノスは経ってからだ。

 口の中の嵌口具が乱暴に引き出される。

 

「面倒は嫌いだ。すでに調べはついている。どうやら、お前は古代魔道が詳しく記載されている古文書を持っていたみてえだな。お前の爺さんのトーラスが覚えていた。あのじじいもちょっとは痛めつけたが、いまはお前が持っているというのは間違いねえようだ。だが、どんなに家探ししても、それが出て来ねえ。どこにある? それだけ喋れば楽にしてやる」

 

 パリスが言った。

 はっとした。

 パリスが口にしたのは、ユイナが大切にしている古代魔道の研究本のことであることはすぐにわかった。

 いまでは研究すらも禁止されている古い禁忌の魔道が詳しく書かれている古文書であり、ユイナがトーラスに引き取られてすぐに、当時はまだ里長だったトーラスの書庫から見つけて、こっそりとユイナのものにしたものだ。

 実に興味深い魔道の研究資料であり、ユイナはそれを使って、かつては魔妖精を召喚術で呼び出したこともあるし、そもそも、ユイナが裁判で死刑判決を受けた騒動は、ユイナがその古文書に記載されている魔道を遣って、魔獣を眷属として召喚しようとしたことによる。

 しかし、なぜか召喚のために作った時空の切れ目から大量の瘴気が噴き出して、ユイナには制御できない凶悪な魔獣が出現してしまったのだ。

 だが、なんでこいつらは、それを手に入れたいのだ?

 いや、その前に、こいつらは何者なんだ?

 

「い、いったい、な、なんの真似よ──。お、おろしてっ──。おろしてよ──」

 

 ユイナはパリスを睨みつけた。

 

「質問に答えな、小娘」

 

 パリスが足元にあった木の枝を拾って立ちあがった。

 ユイナの髪の毛を手下に掴ませて顔を動かなくさせた。

 パリスは持っていた細い木の枝をユイナの片側の鼻の穴に差し入れた。

 

「ひっ、なっ、らにすんのよおっ、んぎいいいいっ」

 

 パリスが顔色ひとつ変えることなく、ユイナの鼻に突っ込んでいた木の枝を思い切り押し入れる。

 頭の中を打ち抜かれたような激痛が走り、ユイナの鼻から大量の血が噴き出した。

 パリスが血で汚れた木の枝を捨てて、椅子に座り直す。

 

「古文書はどこだ? どこに隠してある? 見つかればそれでいい。お前には用事はないから、すぐに楽にしてやるよ」

 

 パリスが涼しい顔で言った。

 ユイナは鼻から血を流しながら、ぞっとした。

 古文書を渡してしまえば、ユイナは殺される。

 それを悟ったのだ。

 

 どこの誰なのか、検討もつかないが、このパリスという男はユイナの持っている古代魔道のことを記録した古文書が欲しいのであり、それで囚人だったユイナに接近してきたのだ。

 そして、無理矢理に脱走させた。

 さっきの口ぶりからすれば、祖父のトーラスが一枚噛んでいる可能性が高いが、とにかく、確かなのは、おそらく、古文書さえ手に入れてしまえば、多分、このパリスはユイナを殺すだろうということだ。

 さっきから、パリスは、古文書を渡せば、ユイナを楽にするという言葉しか使わない。

 楽にするというのは即ち……。

 

「こ、古文書は、ここには……らい……ないわ……。わ、わたしを殺せば……、それは手に入らない……」

 

 ユイナは荒い息をしながら、呻くように言った。

 まだ鼻血は流れ続けている。

 パリスが片手を振る。

 すると、鼻の痛みが引き、血がとまった。

 治療術だ。

 

「そうだな。お前を殺せば、その古文書は手に入らないんだろうなあ。だが、訊問の方法は色々ある。そして、いまわかったと思うが、俺には治療術もある。つまりは、逆にいえば、お前が白状しない限り、死ぬことはできねえということだ」

 

 パリスが手を伸ばしてユイナの横顔をぶん殴った。

 

「んぎいいっ」

 

 ユイナはその勢いのまま身体を勢いをつけて回転させる。

 そこを反対側のいる男が顔を殴って、反対側に押しやる。

 

「ふぶうっ」

 

 奥歯が割れたのがわかった。

 口から血とともに白いものが吐き出る。

 パリスはすでに座っているが、パリスのいた位置に交代した別の男がユイナを殴った。

 

「やべてええっ」

 

 殴られながら宙吊りの身体を振られて、ユイナは泣き喚いた。

 しかも、逆海老の腰にぶらさげられている土の袋の重しも、前後左右に動いてユイナに凄まじい苦痛を与え続ける。

 何度も顔を殴られて、意識が朦朧とする。

 すると、急に頭がはっきりとしてきて、殴られた痛みも消失していった。

 パリスが再び治療術で負傷を回復させたのだとわかる。

 髪の毛が束ねて縛られて、四肢の縄に結ばれた。

 ユイナは顔を上にあげたまま、おろせなくなった。

 

「殴るのはもういい。すぐに気絶されちまう。しばらく身体を回してやるか。それなら、意識を失いそうになるのに時間がかかる」

 

 パリスが魔道を飛ばしたのがわかった。

 

「な、なに……すんの……」

 

 ユイナは不安に顔をひきつらせた。

 だが、ゆっくりと身体が吊られている四肢を中心に回転を始める。

 そして、すぐにそれが急回転になる。

 

「うわっ、ひいいっ、な、なによ、これえ──」

 

 身体が凄まじい勢いで横回転で回る。

 

「んぎいい」

 

 怖ろしいほどの恐怖と苦痛だ。

 手足が千切れる。

 重しのぶら下がっている腰にぐんぐんと衝撃が加わり、腰の骨が折れそうだ。

 

「いやああっ、いやあ、いやああ」

 

 とにかく、ユイナは絶叫を続けた。

 腕も脚ももげそうだ。

 回転が激しいので、重しが弾み、重圧となって四肢と腰を襲う。

 しばらくすると、やっと回転の速度が落ちてきた。

 それでも惰性によって身体は回り続け、さらに縄が巻きあがっていく。

 やがて、今度は巻きあがった影響で逆海老の身体が逆回転していく。

 

「や、やめええっ、言う──。言うわあ。だ、だけど、命の保証はして──。ま、魔道契約よ──。わ、わたしを自由にして、逃がすのよ──。それで古文書の場所を言ううう──」

 

 絶叫した。

 このままでは、本当に殺される。

 魔道契約というのは、魔道を遣える者同士がそれぞれに、相手と約束事を誓い合い、それを魂に刻み合うというものだ。

 絶対に破れない誓いとも称されていて、魔道遣いである限り、それを破ることはできない。

 しかし、パリスがせせら笑った。

 

「なんで、俺がエルフ娘なんかと、対等に魔道契約を結ばねばならねえんだ。別に言いたくなければ、古文書の場所を口にしなくていい。ただ、話したくなるまで拷問を続けるだけだ。どっちにしろ、まだ始まったばかりだ。時間はいくらでもある。今日はまだ終わらねえし、明日もあるし、明後日もある。十日後だって、一箇月後だって、俺はお前への拷問を続けさせることができる。死ぬことも許さずにな」

 

 パリスは指を鳴らした。

 再び高速回転が始まる。

 ユイナは絶叫した。

 

 そして、またもやしばらくのあいだ、ユイナの身体は回され続ける。

 何度も何度も回された。

 回転により血が頭に昇っているので、意識を失うことはできそうにない。その代わり、朦朧としてぼんやりとしてきた。

 

「教える気になったか、黒んぼう?」

 

 やがての果てに、パリスが言った。

 気がつくと、回転が終わっている。

 

「い、言うわ……。その代わり、命の保証を……。契約を……」

 

 ユイナは荒い息をしながら言った。

 パリスが盛大に溜息をついた。

 

「しつけえ娘だぜ。おい、少しさげろ」

 

 パリスが立ちあがった。

 ユイナの身体が逆海老吊りのままゆっくりと高さがさがっていく。

 

「媚薬を寄越せ」

 

 ユイナの身体はかなり低くさげられた。

 背の低いパリスの身体の腰の高さくらいだ。

 ユイナの脚側に入ってきたパリスが、油剤のようなものをユイナの股間と乳房に塗り始める。

 すぐに塗られた場所がかっと熱くなる。

 

「うう、や、やめて……。教える……。教えるって、言ってるでしょう」

 

「別にまだ言わなくてもいいぜ。もうしばらく、ぶらさがってな。そのうちに、あれも来るだろうしな」

 

 パリスは何度も油剤を指に足して、ユイナの股間と胸に媚薬を擦り込み続ける。

 股間にもアナルにも、入念に塗り込まれていく。

 

「あ、ああっ、い、いや、へ、変態……。や、やめるのよ……。うううっ……。そもそも、来るって誰よ……?」

 

 ユイナは股間を指で蹂躙される恥辱に耐えながら、パリスが誰かが来るという言葉を口にしたことに反応した。

 

「もちろん、お前の爺さんだ。お前を脱走させてやると持ち掛けたら、話に応じたのさ。一応は約束だから、ちゃんと脱獄をさせたことを教えねえとな。それに、もしかしたら、お前が持っている古文書の場所を知っているかもしれねえ」

 

 パリスがけらけらと笑った。

 ユイナは愕然となった。

 こんな風に辱められている姿を見られるなど──。

 そもそも、トーラスが危険だ。

 ユイナには、このパリスがただ者でないことはわかる。

 おそらく、人を襲うことも、殺すこともなんとも思っておらず、そういうことにものすごく手慣れている感じがする。

 それに比べれば、トーラスはエルフ族として、もうかなりの老齢だ。

 魔道力も落ちていて、このパリスになにもできない。

 

「わ、わかった。言う──。条件はなし──、だから、お爺ちゃんを連れてこないで──。手を出さないで」

 

 ユイナは最後の力を振り絞るようにして叫んだ。

 

「遅せえな。もう来たぜ」

 

 パリスがユイナから離れながら嘲笑する声を発した。

 すると、数名の人間がやって来る気配を感じた。

 

「おお、ユイナ──」

 

 トーラスの声だ。

 姿は後ろ側だから見えないが、金切り声をあげている。

 だが、次いで周囲の者たちに取り押さえられて、殴られているような音も聞こえた。

 

「お、お爺ちゃん──」

 

 ユイナは叫んだ。

 

「や、約束が違うう──。な、なんということを──。約束が違う──」

 

 トーラスが泣き叫んでいる。

 しばらくすると、後ろ手に手枷を装着されているトーラスがユイナの顔方向に連れて来られた。

 首になにかを嵌められている。

 首輪のようだが、おそらく、トーラスの魔道を封じるなにかだろう。

 また、顔には殴られたような青痣がいくつかついていた。

 

「すぐにユイナをおろせ──。おろすんじゃ、お前ら──」

 

 トーラスが喚いた。

 だが、パリスがせせら笑った。

 

「そうはいかねえぜ。まあ、そこで自分の孫娘が犯されるのを見てな。孫娘可愛さに、俺たちを利用したつもりだろうが、利用したのは俺たちだ。だが、もしも、俺たちが捜しているものの行方を知っているなら喋るんだな。そうすりゃあ、ユイナへの拷問は中止してやる」

 

 椅子に座り直したパリスがトーラスに言った。

 トーラスは両側から屈強なふたりの人間に押さえられて、跪かされている。

 ユイナの姿に涙を流している。

 

「知らん──。知らんのだ。ユイナ、なにかを知っているなら話せ──。頼む──」

 

 トーラスが泣き声をあげた。

 よくわからないが、やっぱり、トーラスは、なんらかの取引きをこいつらとした気配だ。

 おそらく、ユイナを脱獄させることを頼み、なんらかの見返りを与えたのだと思う。

 しかし、相手が悪かったとしか、いいようがない。

 だが、ユイナが冷静な思考を続けられたのはここまでだ。

 塗り込められた油剤の妖しい効果がついに本領を発揮し始めたのだ。

 

「ああ、痒いい──。ち、ちくしょう、痒いいい──」

 

 ユイナは身体を引き千切るかのような、怖ろしいほどの熱さと痒さに見舞われた。

 

「ああ、おろしてえ──。おろすのよお──」

 

 猛烈な痒みに襲われて、ユイナは声を張りあげた。

 これまでに味わったことのない強烈な股間の痒みだ。

 しかも、長い逆海老の宙吊りで、すでに四肢に感覚はない。背骨も腰も限界だが、それでも身を捩らずにいられない痒みだ。

 

「古文書の場所を口にしたらおろしてやるぜ。しかも、ここにいる全員をけしかけてやる。痒みはなくなるさ」

 

「ふ、ふざけんなああ」

 

 ユイナはありったけの声を振り絞って悪態をついた。

 しかし、パリスはいつまでもなにもしない。

 ただ、放置される。

 ユイナはどんどんと追い詰められていく。

 一方で、トーラスはずっと泣き叫んでいた。

 しかし、ときどき殴られるような音がして、しばらくするとすすり泣くような声にかわった。

 

「ああ、だめええ、許してええ──。許してよおお。教えるって、言ってんでしょう──。この馬鹿ああ」

 

 ユイナは悲鳴をあげた。

 乳房の先が焼けそうに熱い。

 股間の二つの穴では、虫のようなものがうごめているみたいな気がする。

 パリスの大声で笑う声がする。

 

「ははは、お前、面白いなあ。ここまで、したたかでしぶといのは、ちょっと気に入ったぜ。それに免じて、古文書の在り処を口にしたら、殺すのだけは勘弁してやる。連れていって、奴隷にしてやろう……。おい、これをこいつの首に嵌めてやれ」

 

 パリスが地面になにかを投げ捨てた。

 はっとした。

 首輪だ。

 しかも、魔道のこもっている『奴隷の首輪』だ。

 間違いない。

 男がそれを拾いあげて、ユイナの首に嵌める。

 

 だが、これを嵌めて即座に隷属の魔道がかかるわけじゃない。奴隷の首輪をした状態で、ユイナが誰かを主人として認めると心から口にして、それで従属の呪術が刻まれるのだ。

 一度、隷属を刻まれれば、あとは主人として認めた相手の「人形」に成り下がる。どんなことでも、「命令」という言葉で意思と身体が切り離されて、その言葉に身体が従うことになる。

 

「奴隷になる──。従うわ──。だから、命は保証するのよ──」

 

 ユイナは叫んだ。

 パリスは笑った。

 

「早えな。いずれにしても、随分と捻くれている娘のようだな。嘘を言うことにためらいがなさすぎて、隷属の呪術がうまく刻まれねえぜ。まあ、もうちょっと苦しみな。そうすれば、心からの隷属の言葉が口から出る」

 

 パリスの落ち着いた態度に、ユイナは歯噛みした。

 隷属が刻まれるには、ただの言葉じゃだめなのだ。心からの思いが必要だ。それはわかっているのだが、ユイナには目の前の得体の知れない男の支配を受けつけるということに、どうしても納得できない。

 だが、ここで奴隷になるということが、ユイナが生き残れる道だということもわかってきた。

 おそらく、さっきのさっきまで、パリスはユイナから聞きたいことを口にさせれば、さっさと殺すつもりだっただろう。

 しかし、ちょっと旗色が変わった。

 なにが心境を変化させたのかはわからないが、パリスはユイナを奴隷にして生かしておいてもいいと、ちょっと思ったみたいだ。

 そして、奴隷にさえすれば、パリスにとっては殺す必要は少なくなる。

 生かしておいても、裏切ることはないし、邪魔になれば、自殺でもさせればいいし、とにかく、即座に処分しなくてもいいとくらいには考えるだろう。

 

「ああ、だ、だから、服従するわよお──。ほら、奴隷を刻んでよう。そして、古文書の在り処を訊ねればいいでしょう。奴隷になれば、絶対に嘘はつけないんだから──」

 

 ユイナは叫んだ。

 とにかく、大声で喋っていないと、痒みで気が狂いそうだ。

 眼はかすみ、体力が尽きかけている。

 

「まだまだだ。俺は結構、お前が気に入ってきたぜ。ここにきて、必死で生き残ることを考えてやがる。いまだに、教える教えると言いながら、古文書の場所を口にしねえのがその証拠だ。生き残る保障をするまで、なんとしても粘ろうとしている。大したもんだぜ」

 

「わ、わかってんなら、い、命を保証して──。古文書なら渡すうう──」

 

 もうだめだ。

 股間とアナルが内側からただれ燃える。

 ユイナは半狂乱になった。

 

「だが、まだ屈服してねえ。じゃあ、効果的に屈服させてやろうか……。おいっ」

 

 逆海老のままのユイナの後ろにいる男に、パリスが声をかけた。

 すると、すぐにお尻に異物が挿入される感覚を覚えた。

 管のようなものが挿し込まれたかと思うと、ひやりとした液体が注がれてきたのだ。

 

「うわああ、浣腸なんて、いやああ」

 

 ユイナは悲鳴をあげた。

 

「ほう、浣腸ということがわかんだな? もしかして経験があるんじゃないだろうなあ?」

 

 パリスが笑った。

 だが、実のところパリスが正しい。

 誰にも言っていないが、浣腸をされた経験はある。

 あのロウだ。

 ロウに呼び出されて捕らえられ、拘束されて繰り返し浣腸をされた挙句に、アナルを犯された記憶は、ユイナの心を引き裂くような恥辱の記憶であるとともに、いつまでも消えていかない熱い性の疼きでもある。

 あいつに犯されてから、あのときの快感が忘れられない。

 忌まわしくも愛しい恥辱の記憶だ。

 

「もうひと袋してやれ。腹が膨れるまで続けろ」

 

「わかりました」

 

 おそらく、魔道のこもっている浣腸袋というものを使っていると思う。

 管を刺して、袋を握れば、あとは勝手に袋の中の薬剤が体内に注ぎ込まれるという責め具だ。

 さらに、薬剤がお尻の穴に充填されていく。

 一気に便意が拡大する。

 

「身体を愛撫してやれ」

 

 二本目の注入が終わると、パリスが男たちに声をかけた。

 見物をさせられているトーラスの泣き声と哀願が大きくなる。

 

「ああっ、やめてよおお」

 

 ユイナは声をあげた、

 乳房と股間とアナルの掻痒感は限界にきている。

 そこを愛撫されて、凄まじい快感が襲う。

 すると、怖れている事態が切迫をしてくる。

 

「ああ、厠に……。厠に連れて行って……」

 

 我慢できるものじゃないことはわかっている。

 すでに限界だ。

 無理な体勢で長く吊られて全身が痛い。

 股間と胸が焼けるように熱くて痒い。

 さらに、恐ろしいほどの便意……。

 こんな苛酷な状態じゃあ、もう我慢できない。

 

「屈服していると判断すれば、隷属の呪術を刻んでやろう。心からの屈服でないとだめだ。さもねえと、隷属が刻めねえ」

 

「く、屈服する──。本当よ。本当だったらあ……。ひいっ、あああっ、ああああっ」

 

「いや、お前の心からはまだ足りねえ。そのまま糞を垂れ流したくなければ、自分の心に屈服を言いきかせな。どうにも、お前は隷属には向いてねえみたいだ」

 

 パリスが笑う。

 そのあいだも、ユイナの全身への愛撫は続いている。

 息を呑む。

 もう限界……。

 アナルにすべてを集中して力を注ぎ込む。

 

「糞するときには声をかけろよ。汚物がまき散らねえように、魔道の処置くらいはしてやるからよう」

 

 パリスの声……。

 男たちの手が離れる。

 目の前が真っ暗になる。

 

「で、出るうう──」

 

 ユイナは叫んだ。

 しかし、まだ崩壊はしなかった。

 ぎりぎりのところで留まっている。

 口惜しい……。

 あまりの屈辱に涙が出てきた。

 こんな風に大勢の得体の知れない連中に嘲笑されながら、惨めな排便をするとは……。

 そもそも、本当にこいつらは……、パリスというのは何者……?

 

「結構、頑張るじゃねえか。心の卑しいエルフ族だしな。このくらいじゃあ屈辱が足りねえか?」

 

「な、なに言ってんのよ──。も、もう屈服している……。屈服してるからあ……」

 

 ユイナは懸命に、自分の心に屈服しろと言い聞かせた。

 生き残る可能性は、この男の奴隷になることだということはわかっている。

 だから、死なないためには、隷属を刻まれるしかないということも納得している。

 しかし、ユイナの心の奥底にある抵抗心が、それを拒んでいるのか……?

 

 屈服しろ……。

 屈服しろ……。

 屈服しろ……。

 ユイナは懸命に自分に言いきかせる。

 心に細工する。

 屈服を……。

 

「んん? どうやら、屈服したか? 隷属の刻みができる状態になったな。じゃあ、隷属を誓え」

 

 しめた──。

 ユイナはほっとした。

 これで生き残れるかも……。

 

「ち、誓う――。隷属を……」

 

「よし」

 

 パリスの声──。

 すると、魔道が身体に注ぎ込まれるのがわかった。

 ユイナは懸命にそれを処置した。

 

「これで奴隷の刻みができたな。じゃあ、そのままだ。古文書がどこにあるかを口にしな。嘘をつくことを禁止する。これは、命令だ。そして、こっちは命令じゃねえが、お前もエルフ族なら、そのまま糞を垂れるなよ。人前で排便をするのは家畜だぜ。それとも、やっぱり、エルフ族というのは、家畜に劣る人種なのか?」

 

 パリスは愉しそうに言った。

 

「そ、その前に厠に……」

 

「古文書の場所を言え。そっちが先だ。厠はその後だ。魔道で厠を出してやる」

 

 もはや、一瞬の余裕もない。

 ユイナは口を開いた。

 

「わ、わたしは……持っていない……。わ、渡したの……。ここにはない……。そ、それと、わ、わたしじゃないと……解読できない……。書き込んでいる魔道語の読み方は、わたしにしか……」

 

 殺されないためのもうひとつの布石……。

 古文書を手に入れただけでは、魔道を実現することができないと知れば、ユイナはその古文書がパリスが手に入るまでは生き残れるだろう。

 すると、パリスが盛大に舌打ちした。

 

「渡した? どこのどいつにだ。隷属の呪術を刻んだんだから、嘘じゃねえんだろうが忌々しい……。ここにはねえのか──。誰に渡したのか言え、命令だ」

 

 パリスが言った。

 

「……ロウ……。ハ、ハロンドールの冒険者……。王都で……(シーラ)クラス……」

 

 ロウが冒険者として成功して、ハロンドールの王都にいるというのは、イライジャが教えてくれたことだ。

 本当かどうかはわからないが、ユイナは真実だと信じている。

 

「ロウ? ハロンドールの王都だと……? なんで、そいつに?」

 

 パリスが訝しんでいる

 

「あ、あいつが……わたしのことを好きだと……。恋人なのよ……。再会の約束の証に……。わ、わたしの大切なものを……」

 

「恋人だと──?」

 

 パリスが怒鳴った。

 

「ユイナ、それはまことか──」

 

 トーラスが声をあげた。

 だが、横の男たちに殴られて黙らされている。

 

「くそう……。ハロンドールの王都か……。ロウだと? なんか、記憶があるなあ……。なんだったか……。まあいい……。だったら、この前、お前が魔獣を暴走させた例の古代魔道の召喚術を再現できるか? それを命令する──」

 

 ユイナは首を横に振る。

 生き残れる芽がさらに増えた。

 また、目的もわかった。

 こいつらは、ユイナが暴走を起こしてしまった召喚魔道を再現したいのだ。それでユイナを塔の牢から脱獄させた……。

 

「む、無理……。紙に残していたものは、捕まる前に燃やした……。頭の中にはないの……。こ、古文書がないと……。そ、それよりも、厠……」

 

「まだだ。嘘をつくことを禁じる。真実のみを話せ。命令だ──」

 

「し、真実……よ……」

 

 ユイナは呻いた。

 

「この前の召喚魔道を再現しろ。もしくは、古文書の場所を言え。これは絶対の命令だ──」

 

 パリスが叫んだ。

 

「……うう……。こ、こ、古文書がないと再現……で、できない……。古文書は、ハロンドールの王都にいる……ロウという冒険者が持っている……。ああ、か、厠に……」

 

「ちくしょう──。ハロンドールの王都か──。お前ら、すぐに手配しろ。ロウという冒険者のところに手の者を前進させるんだ」

 

 パリスが叫んだ。

 ユイナはほっとした。

 訊ねられれば教えたかもしれないが、イライジャがそのロウのところに行っていて、奴隷として売買されるユイナを競り落としてくれと依頼をしてくれているはずだ。

 もしも、説得に成功していれば、そろそろ、ロウが褐色エルフの里にやって来てもおかしくはない。

 だが、わざわざ教える気もない。

 

「いや、そうだ──。わかった──。あのロウか──。アスカと関わった男だ。イチだ。エルスラと一緒に逃げた男か──。そうだ。あいつだ」

 

 パリスがなにかを思い出したらしく、大きな声をあげた。

 だが、エルスラ?

 誰だ、それ?

 それはともかく、もう便意が……。

 

「か、厠に……」

 

 ユイナはもう一度言った。

 すると、パリスがユイナを見た。

 そして、にやりと微笑んだ。

 

「そうだったな。じゃあ、お前ら、もうひと袋、浣腸袋を足してやれ。そして、このエルフ娘がみっともなく排便をしたら、全員で犯せ。そのトーラスの前でな」

 

 パリスは言った。

 ユイナは泣き叫んだ。

 そして、追加の浣腸液が腸内に収まる。

 

「おおおっ」

 

 ユイナは歯を喰いしばった。

 だが、あまりにも凄まじい便意だ。

 次の瞬間、一気にアナルが崩壊した。

 束ねられて背中側で吊られてる下肢の付け根から汚物が汚水とともに噴き出し続ける。

 男たちが後ずさる。

 その目の前で、ユイナは自らの排便を浴びながら、排泄を続けた。

 

「やっぱり、エルフ族というのは家畜だ。人前で糞を垂れることを恥だと思わねえようだ。お前ら、この家畜の糞が終わったら、近くに小川があるから、そこに連れて行って洗え。そして、こいつを犯せ。夜が明けて陽が中天に昇るまで休ませるな。そして、エランドに戻る」

 

 パリスが口汚く嘲笑した。

 ユイナは泣きながら、なかなか終わらない排泄に慟哭を続けた。

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