【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
307 父に売られた獣人童女[10歳(1)]
【カロリック公国・某地方都市】
「うまいものを食わせてやるな、イット」
街の通りを歩きながら、父親が夕方の空を仰ぎ見て言った。
イットと父親が暮らしている田舎から歩いて半日ほどの距離にある城郭であり、イットが最初にここに連れられてやって来たのは八歳のときだった。いまから二年前になる。
このカロリック国の獣人差別はどこもひどいのだが、しかし、この城郭では獣人族の生活が認められているのだ。
もちろん、獣人が城郭内のすべてを自由に歩けるわけじゃないが、それでも居住を許されているというのはすごいことだ。
ここにやって来たのは、二度目だ。
もっとも、そのときには、母親も一緒であり、目的は父の商売だった。
父親は戦いにかけてはからきしだったが、母は女戦士だったし、イットもまた、八歳という年齢ながらも、並みの人間族の大人よりは余程に戦えた。
だから、護衛としてついてきたのだ。
そして、驚いた。
そこは人間族の城郭なのに、たくさんの種族が混在して暮らしている場所だったのだ。
獣人族でさえも珍しくない。
人間族に混じって、エルフ族、ドワフ族、そして、獣人族が普通に交わって、食事をしたり、買い物をしたり、あるいは、酒を飲んだりさえしている。
それは、まだ幼いイットにとって、驚きとともに感激してしまう光景だった。
イットは、一度でこの街が好きになり、再び、父親がここに連れてきてくれることを願った。
しかし、あれ以来、それは実現しなかった。
もともと、父親は獣人族としては裕福な方だったが、あの三人での街の訪問の直後に、父が商売で借金を作ってしまい、すべての財産を奪われるということがあったからだ。
父親の仕事は、商いをして近隣の里や町を歩く仕事から、近所の人の手伝いをして、その日その日の報酬を受け取るというものに変わった。
住む家も、屋敷というほどでもないが小奇麗な家から、小屋としか呼べないような場所になった。
父親は、イットの眼から見て、一気に歳をとったように思えた。
そして、心労もあったのか、生まれつき身体が頑強だった母親が、流行り病であっという間に死んだ。
父親が酒を飲むようになったのは、それからのことだ。
家に戻ってこないことも多くなった。
たちの悪そうな者がやってくるようにもなった。
イットは、父親の連れてくる客が嫌いだった。
酒を飲みながら、気味の悪い視線でじろじろとイットのことを眺めまわすからだ。
あれくらいの獣人族の娘を欲しがる好事家もいる。
売ればかなりの金になる。
借金なんかすぐだ。
獣人族にしては驚くほどの可愛らしさだ。
父親の客たちは、イットの目の前で平気でそんなことを口にした。
そんなときも、父親は怒るのかと思えば、へらへらと笑うばかりだった。
イットは、父親の客だけでなく、父親のことも嫌いになりそうだった。
父親は気が弱い人だ。
戦闘種族とも称される獣人族にはあり得ないほどに、性質が穏やかで、およそ争いごとをするような男ではない。
母親が生きていた頃には、それでも父親のことを馬鹿にする者はなかったが、母親が死ぬと、その父親の気の弱さにつけ込む者がたくさん出現した。
父親が家に連れて来ていた男たちは、そんな者たちだったのだということは、最近になって知った。商売に失敗して、一度財産を失った父が、いつの間にか、またまた借金を作ってしまっていたということも、同時に知った。
イットは愕然とした。
そして、今日、この街にやって来た。
父親がなんでここにイットを連れてきたかは知っている。
イットは十歳になっていた。
「ここからなら、カロリックの王様のいる都も近いんでしょう? どんなところなのか見てみたいよ」
「王様じゃねえ。大公だ。カロリックは王様じゃなくて、大公が支配する国なんだ。皇帝は別にいるしな」
父親がぶっきらぼうに言った。
イットが父親との会話を探すために、準備して覚えていた知識はそれで終わりだった。そして、見知らぬ街の大通りを歩きながら、居心地の悪い沈黙が流れ出す。
父親が色々なことで憔悴しきっているのはわかっていた。
イットの母親である妻の死──。
背負ってしまった借金──。
慣れない小間使い仕事──。
そして、酒──。
そのすべてが父親を押し潰していたのだ。
「ねえ、お父さん、あたし、新しいお母さんのこと好きだよ。あのお姉さん、綺麗だしね。一緒に暮らしたいな」
イットはずっと考え続けていた言葉を口にした。
もっとも、それは心からの言葉じゃない。
ただの
本当は、父親が二箇月ほど前に連れてきた獣人族の女をイットはちっとも好きになれなかった。
太った狸のような顔をして、イットの顔を見るたびに、不機嫌そうに舌打ちをするのだ。イットの処遇を父親を脅すように決めたのも、あの女だ。
結局のところ、父親は逆らえなかった。
実の娘を捨てることにして、あんな女を選んだ父親には幻滅だが、父親は疲れているのだ。
もう、イットは半分の心で納得している。
しかし、もう半分は、ぎりぎりのところで父親が心変わりをしてくれることを望んで、「交渉」を続けようとしていた。
「だが、あっちは、お前のことが好きでなさそうだしな……」
父親は申し訳なさそうに口にした。
「あたし、なにもしてないよ。それに、もう働けると思う。この爪でそこらの盗賊くらい、いくらでも撃退できる。人間族に雇われて、用心棒の仕事なんていいと思うんだけど……」
イットは言った。
父親に出逢う前の母親は、用心棒を専門にやって来た冒険者だったという。
戦いのことなら、イットも自信がある。物心付く頃から、戦闘については母に鍛え抜かれていた。母親が死んでからも、自己鍛練は怠っていない。
身体が並みよりも小さいので、外見ではそうは見えないが力だってある。
きっと働ける。
父親の借金くらい稼ぐことも難しくないと思っている。
「もう納得したじゃないか。蒸し返すんじゃないよ。まとまった金が要るんだ。そうでないと、俺は捕らえられて処刑されるんだ。お前は、俺を殺したいのか──?」
父親はイットを叱るように言った。
イットは黙るしかなかった。
「……とにかく、なにか食べよう。お前は腹が減っているはずだ」
父親は言った。
イットは首を横に振った。
食べたら、それで終わりだと思ったのだ。
それが最後の儀式になり、なにもかも終わる。しかも、この父親は、イットに対する罪滅ぼしのような気分で、この街でご馳走を食べさせようとしているのは知っていた。
だったら、なんとしても、食べてやるものか──。
父親の心を慰めることに繋がることをなにひとつしてやらない。
イットはそう心に決めた。
どうしても、食事はしないというイットの姿に諦めたように、父親は溜息をついた。
それから、完全な沈黙のまま通りを歩いた。
やがて、街外れにある一画に辿り着いた。
そこに、目的の建物があった。
まだ母親が生きていた頃、イットは読み書きを母親から教わっていたので、イットはその建物にかかっている看板の意味がわかった。
『奴隷商会』──。
その建物にはそうあった。
「わかってくれ、イット。金が要るんだ。こうしなければ、俺は借金が払えなくて死ぬしかない。中に入ったら、首輪を嵌められるから、すぐに奴隷の誓いをしろ。そうすれば、苦しまなくて済む。納得してない新米奴隷は、誓いを受け入れさせるために拷問をするらしい」
建物の前で立ち止まって、父親が久しぶりに口を開いた。
ぞっとした。
拷問だって……?
そんなところに、父親は自分を売ろうとしているのか?
「……ねえ、ふたりで、このまま逃げたら──」
イットは最後の頼みの綱を手繰るように言った。
だが、やはり、父親は首を横に振った。
「そんなことはできないよ。わかっているはずだ。あの人は地区から離れたりしない。夜逃げなんてするわけない……。だから、お前が納得してくれるしかないんだよ」
父親は寂しそうに言った。
あの人なんて関係ない──。
イットはふたりで逃げようと言ったのだ──。
そう叫ぼうと思ったが、イットはもはやすべてが無駄であることを悟って、奴隷商会の中に足を進めた。
扉に手をかけたとき、景色が不自然に歪んだ。
イットは、自分が涙をこぼしているということをそれで悟った。
「奴隷になれば、人間族の屋敷で暮らすことになる。獣人族に認められている
奴隷商会に入る前に、父親が言い訳めいた口調でぼそぼそと語るのが聞こえた。
*
「ほう、なかなかの器量良しじゃないかい。こりゃあ、掘り出し物だったかもしれないね。まだ、子供だけど、一、二年もすれば化けるね。それまで取っておいて、性奴隷にして売ればかなりの金になるかもしれないよ。いや、それとも、いま売るか──。獣人族というのは身体が丈夫だからね。小さなまんこでも、十分に大人の相手ができるに違いないよ」
イットを売った代金を受け取った父親がいなくなってから、しばらくしてやってきたのは、人間族の中年の女だった。
目つきの悪い痩せた狐のような顔つきの女だ。
奴隷商の男たちの態度から、この女が女主人であることは間違いないと思った。
そのとき、イットは大きな獣を入れるような檻に入っていた。
首には、『奴隷の首輪』が嵌まっている。
父親の前で、その首輪を嵌められ、この奴隷商の主人を「支配者」とする奴隷の誓いをしていた。そのとき、見えない拘束具のようなものが、イットの心に刻まれたのをはっきりと感じた。
これで、イットは奴隷として、「主人」の命令には絶対に逆らうことができない身体になったのだと思った。
「わたしはサーシャだ。お前を売り飛ばすまでのあいだ、お前の主人だ。わたしの命令には絶対服従。許可なく暴力を振るってはならない。自殺や逃亡も禁止。これは絶対的な命令だ。いいね」
サーシャの言葉で、やはり、なにかの縛りのようなものが心に刻まれた。
ぼんやりとしていると、サーシャが満足したように頷く。
「左手首を背中側で掴みな。命令だ。許可なく離してはならない」
続いて、サーシャが言った。
すると、イットの手は、イットの意思と無関係にさっと背中に回って、腕を握った。
改めて驚いた。
これが『奴隷の首輪』の力なのかと思った。
これまでは、このサーシャがいなかったので、奴隷の首輪を受け入れたものの、首輪の力で命じる者はいなかったのだ。
ただ、頑丈な檻に監禁されていただけだ。
夕方になり、この奴隷商の女主人が戻ったところで、初めて、首輪を使った「命令」が与えられたということだ。
「ちゃんと命令が効いているようだね。なら、大丈夫だろう。鍵を開けな」
この部屋には五個ほどの檻があったが、奴隷はイットだけだった。
ほかには、女主人のサーシャと、三人ほどの男衆だ。
三人の男のうち、サーシャが不在のあいだ、店を仕切っていた男がサーシャになにかを耳打ちした。
すると、サーシャがにんまりと微笑んだ。
「なるほど、それっぽっちで買い取ったのかい、ウノ。よくやったよ。どうやら、お前の父親は、娘を売るというのに、奴隷の相場も知らなかったようだね。まあ、だからといって、お前には関係ないけどね。いい子にしていれば、できるだけ性質のいい主人に売ってやる。さもなければ、とんでもない変態のところに売り飛ばしてやる。お前の父親は、売主の条件もつけなかったようだしね」
サーシャがイットを見て大笑いした。
なにを言っているのかさっぱりわからない。
大きな音がして、檻が開いた。
サーシャが「出て来い」と口にすると、やはり、イットの足は意思とは関係なく、檻の外に進み歩いた。
腕は背中側だ。
まるで手錠でも嵌められたように、そこから動かすことができない。
「名前は?」
サーシャの前に立つように命じられ、そのようにすると、サーシャに訊ねられた。
イットは黙っていた。
すると、サーシャがにやりと微笑んで、指を鳴らした。
びくりとしたが、その瞬間、なにかの力が身体に入ってきたのがわかった。
しかし、それだけだ。
イットの身体から、ぱちんと小さな音がしたのが聞こえた気がした。
すると、にやついてたサーシャの顔がさっと曇った。
「どういうことだい? わたしの電撃の魔道が通用しない? まさか、そんなこと……」
サーシャが目を丸くした。
そして、再び指を鳴らす。
やはり、イットの身体はそれを跳ね返した。
男衆たちも唖然とした顔になった。
サーシャが真っ蒼になった
「その場に跪け──。命令だ」
サーシャが慌てたように叫んだ。
イットの身体はすぐにその場に膝立ちの姿勢をとる。
サーシャは安心したように溜息をついた。
「びくつかせるんじゃないよ──。奴隷の刻みはちゃんと効いているんだね……。どういうことだい? 正直に口にするんだ、命令だよ。今後、わたしの質問には、一切を正直に、そして、すぐに回答すること。いいね」
「はい……」
イットは頷いた。
やはり、なにかの力が身体に入ってきた。
おそらく、いまの言葉で、イットはサーシャにすべてを正直に話すようにされたのだと思った。
だが、別にイットはなにも隠すつもりはない。
さっきだって、名前をすぐに答えなかったのは、奴隷になったという事実に対して、まだ気持ちが追いついていなかったからだ。
「名前は?」
「イ、イットです」
「歳は?」
「十……」
「十歳かい……。年相応だね。獣人族には、見かけの年齢が実際と離れているのも珍しくないしねえ。セックスの経験は?」
「あ、ありません」
びっくりして顔を横に振る。
そういえば、さっき、性奴隷とか言っていたか……?
イットは慌てて口を開いた。
「あ、あたしは戦士です。これでも一人前の獣人族の女戦士なんです。どうか、試してください──」
次の瞬間、頬で激しい音が鳴り、鋭い痛みが顔に走った。
サーシャに頬を張られたのだ。
「あっ」
頭の芯を揺さぶるような激痛に、イットは悲鳴とともに倒れそうになった。
しかし、命令解除なしで姿勢を崩せないという見えない力が、イットをその姿勢で踏みとどまらせる。
「お前のような幼い娘が女戦士なんて片腹痛いよ。悪いけど、こっちも商売でね。お前の実力がどうあれ、子供のあいだは奴隷戦士としては売れない。奴隷戦士というのは、実際に強いことよりも、強そうに見えるというのが大事でね。その点、お前は駄目だ──」
「で、でも、試すだけでも」
イットは食いさがった。
しかし、さらに頬を打たれただけだった。
「だけど、性奴隷だったら、いくらでも高くできる。性奴隷として、童女を飼いたいという変態はいくらでもいる。しかも、獣人族の性奴隷というのは、エルフ奴隷の次に価値があるんだ。なにせ、丈夫だからね。なにをやっても、なかなか毀れない」
サーシャが馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
イットはまた、涙が出そうになった。
奴隷として売られる以上、卑猥なことも耐えなければならないかもしれないとは覚悟していた。
だが、こんなにもあからさまに言われると、やはり、心の準備が追いつかない。
「めそめそすんじゃないよ──」
サーシャの張り手がまた飛んだ。
イットは今度は悲鳴を我慢した。
しかし、それが面白くなかったのか、サーシャが舌打ちをした。
父親のところにやってきたあの女のことを思い出した。
イットは目の前の女が大嫌いになった。
「それにしても、手が痛いねえ。魔道が効くなら、傷つけることなく折檻できるんだけどね……。ああ、そうだ──。まず、それを確かめなきゃならなかったよ。お前はなんで、わたしの魔道を受けつけないんだ。どこかに、魔道封じの護符でも隠しているのかい」
サーシャが言った。
「あ、あたしは生まれつき、魔道が効かないんです。た、体質で……」
「魔道が効かない?」
サーシャと男衆が驚いている。
しかし、本当だった。
別に特別なことをしているわけじゃない。
なぜか、イットは生まれたときから、一切の魔道を跳ね返してしまうという不思議な身体をしていた。
父親だけでなく、母親も首を傾げて、イットのその不思議な性質の理由を調べようとはしてくれた。
だが、わからなかった。
わかっているのは、イットには、どんな高位な魔道であっても、一切が通用しないということだ。
そういう点では、イットには悪意のある魔道が効かないということであり、魔道遣い相手の戦いとなれば、絶対の自信はある。
しかし、いいことばかりでないのだ。
すべての魔道を跳ね返すということは、善意の魔道も通用しないということでもあるのだ。
病気のときや負傷のときも、魔道で癒すことはできない。
だから、イットの身体には、普通であれば魔道で消せるはずの古傷がたくさんある。
イットはそう説明した。
性奴隷としては不向き──。
それを強調したかったのだ。
「なるほどね……。面白い特異体質だねえ。すると、調教も魔道でするというのはできないんだね。一度犯しておいて、売り飛ばす前に魔道で生娘に戻すというのも無理か……」
サーシャが考え込むように言った。
イットはがっかりした。
サーシャがまだ、イットを性奴隷として売るということをやめないということがわかったからだ。
「……そうはいっても、奴隷の首輪は受けつけるんだね。魔道は効かなくても、もしかしたら、魔道具は効くのかもしれないねえ」
サーシャが言った。
それについては、実はイットも期待をしていた。
もしも、奴隷の首輪がイットに通用しなかったら、隙を見て逃亡することも考えていたからだ。
だが、残念ながら、奴隷の首輪はしっかりと、イットの心と身体を縛っている。
逃亡は不可能だ。
「試してみるか……。よし、ドスにトレス、お前たちは鎖を準備して、この獣人族の娘の手足を拡げて縛りつけな。奴隷の首輪があるといっても、この娘にはなにがあるかわからない。絶対に千切れたりしないような丈夫な革ベルトを準備するんだ……。さあ、イット、お前は裸になりな。とりあえず、点検してやるよ……」
サーシャの言葉で、イットの手はやっと背中から離れた。
しかし、やはり、自由にはならない。
別の意思を持っているかのように、イットの両手が身につけているものを脱がし始める。
「あっ、や、やだ……」
さすがに恥ずかしい。
イットは顔を俯かせて激しく首を横に振った。
「そうだ──。本当に性奴隷としてじゃなく、奴隷戦士として売って欲しいのなら試してやろう。お前が調教に音をあげなかったら、性奴隷じゃなくて、戦士として売り飛ばすことを考えてやるよ」
サーシャがけらけらと笑った。
「ほ、本当ですね──。や、約束ですよ」
イットは自分の手で裸にされながら、きっとサーシャを睨みつけた。
サーシャがたじろいだような表情になったのが、イットにはわかった。
だが、それは一瞬だけだ。
すぐに、サーシャは余裕のようなものを取り戻した。
そのとき、男衆たちが天井から二本の鎖を吊って、ちょうどイットが手をあげた状態になる高さに固定した。鎖の先端にはそれぞれに革枷がついている。
また、足首のところにも、床に備え付けてある金具に、短い鎖付きの枷が繋げられる。
「じゃあ、手足を拡げて真ん中に立ちな。獣人族とはいえ、十歳の娘がわたしの調教に抵抗できるんなら、本当になんでも望みをかなえてやるよ」
サーシャが嘲笑するように言った。
完全な素裸になったイットは、「命令」のまま部屋の中央に立ち、大きく手足を伸ばした。
あっという間に手首と足首に革枷が取りつけられる。
「媚薬は受けつけるのかねえ? これが効かないとなると、さすがに、この年齢の娘の調教には手間取るよ」
背中側に回ったサーシャが、ぶつぶつと言いながら、なにかをちくりとイットの首に刺した。
なにをされたのか理解できなかったが、すぐに腰が抜けたようになって、全身が脱力した。
それだけじゃなく、急激に身体が火照って熱くなる。
全身の身体の内側を無数の蟻が這うような感覚も襲ってきた。
イットは当惑するとともに恐怖した。
「媚薬は効果ありかい。だったら話は早いね」
サーシャが安心したように笑った。
だが、イットはそれどころじゃない。
身体が変だ。
熱い……。
とても、熱い……。
なに、これ……?
なんなんだ──。
ぽたぽたと脂汗のようなものが身体を伝わって床に落ちる。
「ふふふ、尻尾があがったねえ。獣人の雌は発情すると、自然に尻尾が上にあがって尻を晒すのさ。だから、発情が隠せないんだ。わかりやすくていいよ」
サーシャが笑った。
「へへへ、腕と脛にも毛が生えてんのは、やっぱり獣だなあ。それに、結構毛深いな。こんな童女にも、ちゃんと尻毛があるぜ。前はねえけどな」
「肩や背に長い髪が伸びてるのかと思ったら、身体から生えてんだな。しかし、いつ接しても、耳が顔の横になくて、頭の毛に隠れて房耳があるのは変な感じだぜ」
「人間に似ててもやっぱり獣ということだな。ところで、子供のくせに、一応は恥ずかしいんだろうな。もじもじしてやがるぜ」
男衆たちが裸にイットの周りをぐるぐると値踏みするように回りながら言った。
はっとした。
気がつくと、イットの全身に顔を接するばかりに、男衆たちが近づいている。
イットはぐっと唇を噛んだ。
「お前たち、獣人族の雌は初めてかい? 雄はいるけど、そういえば、この商会で雌の仔を扱うのは、初めてだったね」
するとサーシャが男たちに言った。
男たちがイットの周りで頷くのがわかった。
「だったら、覚えときな。実は獣人族というのは、あまり敏感じゃないと言われているけど、例外がある。これはあまり知られていないことらしいけどね。実は大抵の獣人族は、耳と尻尾が弱点なのさ。この子供はどうかねえ」
サーシャがイットの後ろから、イットの背毛から繋がっている房毛の尾の付け根をぐっと握った。
びくりとイットは身体を跳ねさせた。
振動が尻尾に伝わってきたのだ。
いつの間にか、サーシャは十本の指先になにかの振動具を取りつけていたようだ。
ぶるぶるという機械的な振動が尾からお尻に伝わる。
「んひいいっ」
イットは身体を弓なりにして悲鳴をあげてしまった。
得体のしれない疼きが、どんどんとお尻と股間の奥まで響き渡った感じになってくる。
あっという間に、それが耐えられる限界を越えた感じになったのだ。
「なんだい偉そうな口をきいたわりには、普通よりも敏感じゃないかい。ここをこんな風に刺激されたのは初めてかい? それとも、その年齢ですでに自慰を知っているおませさんかな」
サーシャが笑いながら尾の付け根を擦る。
イットは必死になって逃げようと全身を動かした。
だが、手首と足首に嵌まっている革枷は、イットを逃がしてくれない。
それどころか、イットを責める手が一斉に増えた。
サーシャだけでなく、男たちの手がイットの耳や胸、脇腹や腿などに群がる。
肌の下を這い回る見えない蟻がさらに沸き起こる。
なにがなんだかわからなくなり、イットは奇声をあげて暴れ続けた。
「これまでに、達したことは?」
おかしそうに笑うサーシャの片手がイットの尾から股間に伸びる。
もう一方の手は相変わらず尾を擦ったままだが、前に伸びた手はイットの股間に亀裂の上側をぐっと押すようにした。
イットは悲鳴をあげて、ぐんと身体を伸ばしてしまった。
「た、達するって……な、なんですか──」
すべてに正直に答えろと命じられているイットだが、サーシャの質問の意味がわからずに、問い返した。
そのあいだも、ぶるぶるという振動が股間と尾に伝えられる。
そして、やっとサーシャの手元が見えた。
前に回ってるサーシャのすべての指には、指サックのようなものが嵌まってる。
それが振動しているのだ。
これも魔道具だろう。
「じゃあ、これが最初ということだね」
サーシャが笑った。
振動する指サックで股間の亀裂の上側の部分を軽く摘ままれる。
全身にこれまで以上の衝撃が走った。
「んひいいっ」
イットは絶叫した。
とてつもないものが股間から湧き出し、それが脳天に伝わり、そして、あっという間に突き抜けていく。
八本の手に全身をまさぐられながら、イットは全身を弓なりにして、がくがくと身体を震わせた。
「短いね。なにが戦士だい。お前の歳で、こんなに敏感なのは珍しい。やっぱり、お前は性奴隷用に向いてるよ。口惜しければ、発情の印の尻尾をさげてみな」
サーシャが馬鹿にしたように笑った。