【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
媚薬という得体のしれない薬物らしきものを身体に打たれて、イットの幼い身体は明らかに異常な状態に陥った。
そして、サーシャたちに全身を愛撫され、狂ったように「絶頂」を繰り返した。
もちろん、絶頂という感覚も、身体を刺激されて気持ちよくなるという感覚も、イットにとっては生れて初めてのものだ。
しかし、サーシャのいう通り、大きな疼きの波のようなものがあがってきて、それが脳天から足の先まで貫いて全身から弾ける感覚は、「絶頂」という状態に違いなかったし、自分の身体がそんなことになるということも、イットには信じられないことだった。
だが、紛れもなく、イットは絶頂をし続けた。
耳を刺激され、まだ膨らんでもいない胸を弄られ、股間を揉まれて、イットは暴れ狂った。
しかし、大きく手足を拡げた状態でしっかりと拘束された手足はまったく自由にならないし、人間族の大人四人がかりの責めから逃げることなど不可能だった。
イットはただ、前後左右に身体を必死になって暴れさせることしかできず、そして、達し続けた。
繰り返す絶頂は、まだ身体の幼いイットにとっては、快感というよりも耐えがたい苦痛だ。
望まないのに繰り返し与えられる絶頂は、まさに拷問に違いなかった。
しかも、一度や二度の絶頂では、サーシャたちは許してくれなかった。
絶頂しては愛撫され、愛撫を受けてまた絶頂する。
それだけの時間がひたすらに続いた。
あの媚薬も、何度も首に投与された。
ときには、局部や乳首にも打たれた。
そのたびに、怖ろしいほどの数の蟻が肌の下を這い回る感覚に苛まれた。そして、それは激しい疼きになって、イットに襲いかかった。
もう、イットはなにがなんだかわからなかった。
「これだけ絶頂させればいいだろう。この辺りで、そろそろ男を教えとくかい。この獣人娘は本当に性奴隷の素質ありだ。だったら、生娘のまま売るよりも、しっかりと性の快感を身体に叩き込んでから売る方が値になるね。むしろ、この年齢で前でも後ろでも男を受け入れ、それでいて、苦痛よりも快感に狂うということなれば、どこかの変態がいくらでも金を出すだろうさ」
サーシャがイットの尻尾の付け根を愛撫しながら、さらにお尻の穴に指を入れて揺すりながら笑った。
全身に受けている愛撫のうち、もっとも耐えられないのが、尻尾の付け根を握られながらの、お尻の穴への悪戯だ。
それを受けると、なにも考えられないほどによがり狂う。
「も、もう、ゆるじでえ──。もうだめでずう」
イットは泣き狂った。
しかし、サーシャは嬉しそうに笑うばかりだ。
「なにを言ってんだい。わたしは、子供とはいえ、さすがは獣人族だと感心してんだよ。人族の娘なら、初っ端から、こんなに長時間の調教に耐えられるもんじゃない。とっくに気絶してる。だけど、やっぱり獣人族は丈夫で体力があるよ。これなら、初手からかなりの調教ができるから、身体の開発も早いさ。すぐに売り物になる」
背後にいるサーシャが嬉しそうに言った。
そして、イットを愛撫している男たちに視線を向けたのがわかった。
男たちはいまは、指ではなく、柔らかい刷毛のようなものでイットを刺激している。
それが六本──。
イットは狂ったように踊り続けていた。
「リックを連れておいで」
サーシャが言ったのはその言葉だった。
リックというのが誰なのかわからない。
だが、それよりも、イットにはサーシャが今もって続けているお尻と尻尾への愛撫、そして六個の刷毛の刺激を耐えることに必死だ。
全身から汗を滲ませて、望まない快感に激しく声をあげ続けた。
「そんなあ、この童女の相手なら、俺たちがいるじゃないですか」
「そうですよ。なにも、あんな奴隷に……」
「しっかりと可愛がりますぜ。房毛も柔らかくて悪くねえし」
そのとき、サーシャの命令でイットを責めていた三人の人族の男が一斉に手を休めて不満を吐いた。
「馬鹿垂れ──。商売物に手をつけるなって、いつも言ってんだろう──。遊びは遊び──。これは仕事だ。けじめをつけな──。奴隷商会で扱う性奴隷はただの“物”だ。性欲を発散したいのなら、娼館に行くんだね。けじめは大切にしろって、いつも口を酸っぱくしてんじゃないかい──」
すると、サーシャがイットの尻尾からやっと手を離して怒鳴った。
イットはサーシャの喋った内容よりも、束の間でもいいから、お尻と尻尾への愛撫を中断してくれたことの方が重要だった。
最初に調教が開始されてから、どのくらいの時間が経っただろうか……?
とにかく、数瞬だけのこととはいえ、やっと誰からも身体を刺激されない時間がやってきたのだ。
イットは必死になって息を吸った。
「いいから連れて来な。奴隷娘の相手は奴隷小僧で十分だよ。そいつにとっても、一人前の男妾になるための調教だ。ほら、行け──」
サーシャが再び怒鳴り、三人のうちのふたりが部屋を出て行く。
もうひとりも一緒に行こうとしたが、サーシャに呼び止められていた。
彼はサーシャから小さな壺を渡されて、イットの局部に、その中に入っている油剤を塗るように指示された。
イットはもう何も考えられず、ただ荒い息をしてその油剤を受け入れたが、まだいくらも塗られていないうちに、悲鳴をあげた。
異常な感覚が股間に襲い掛かってきたのだ。
イットは絶叫してしまった。
「ひぎいっ、か、痒いです──。かゆいいいっ」
狂ったように全身を暴れさせて絶叫した。
恐ろしいほどの痒みだ。
イットは力の限りに手足をばたつかせたが、ただ鎖がぎしぎしと音を鳴らすだけである。
「そんなに暴れんじゃねえぜ。薬が塗りにくいぜ」
イットの前にしゃがんでいる奴隷商の男が笑った。
逃げまくるイットの股間を愉しそうに追いかけて、どんどんとその油剤を塗り足していく。
イットは信じられない股間の痒みに、牙のある白い歯を剥き出しにして、身体を必死に捩らせた。
「お前の人生最初の相手がもうすぐやって来る。そうしたら、そいつに媚びを売って、犯してくれと
サーシャがぴしゃりとイットの生尻に張り手をした。
そして、前側にいた男から油剤の入った壺を取りあげて、房毛の尻尾の下のお尻の中にも塗り込めてくる。
今度こそ、イットはなんとか逃げようと思ったが、いまだに振動する指サックをつけている手で尾の付け根を握られると、それだけで脱力したようになった。
結局、イットはお尻にもしっかりと塗られてしまった。
「か、かゆいいっ、痒いですう──。ゆるじでえっ、もう、ゆるじでえ」
イットは叫んだ。
前後の穴と亀裂の上側の敏感な場所に塗られた油剤は、すぐに効力を発揮して、ずきんずきんという頭の奥にまで染みわたる痒みをイットに与えてきた。
それでいて、全身に針で打たれたときと同じような妖しい疼きも拡がっていく。
イットはただただ号泣した。
「連れて来ましたよ、サーシャさん」
しばらくしてから声がした。
イットはかすむ目で、声の方向を見た。
そこにいたのは、首輪を装着されている素っ裸の獣人族の少年だった。
顔に毛がなくて人間に近いイットとは異なり、顔一面に青い毛があり狼を思わせる。
ウルフ族だと思った。
まだ顔に子供らしさがあり、年齢はイットよりも少し上だろう。
ただし、股間の体毛を割るように隆々と勃起している男根は、まるで大人のもののようだ。
最初はまるで感情を失っているように無表情だったが、イットを見て、目を見開いた。
ちょっと驚愕している気配だ。
「ほら、リック──。今日の相手は、お前と同じ獣人族の童女だ。いつもの練習台の犬や豚の雌よりも、ずっと上等で、嬉しいだろう。しばらくは、お前の練習相手はこの娘だ。こいつはまだ初めてだからね。これまで教えた技を使って、できるだけ苦しまないように破瓜をしてやりな」
サーシャがリックと呼んだ少年の一物を無造作に掴んで、イットの前に引っ張った。
それで気がついたが、リックの両手は背中であり、腰の後ろで水平に組むようにして革枷が嵌められていた。両足首にも歩くには支障がないほどの長さの鎖で繋がれた足枷があった。
「あっ」
男根を引っ張られたリックが泣きそうな顔でしかめ面になった。
「ほら、引導を渡しておやり」
サーシャがリックのお尻をぽんと叩いた。リックの尾はぴんと持ちあがっていて、叩くことにはなんの支障もなさそうだ。
「うっ、は、はい、サーシャ様」
リックが顔を歪めたのがわかった。
そのリックが四肢を伸ばされた格好で拘束されて立たされているイットの正面に立つ。
リックはイットよりも、かなり身長が高かった。そして、獣人族らしく、逞しい筋肉もしている。
「か、痒いよう……。痒いいいっ」
だが、リックのことを誰だろうと考えられたのは、少しのあいだだけだった。
狂うような痒みに、イットはまたまた泣き叫んで身体を暴れさせた。
「それにしても、リックはなんで最初から勃起してんだい? もしかして、ウノ、ドス、お前たち、また悪戯したかい」
横に移動しているサーシャが男たちにきっと鋭い視線を向けるのがわかった。
ウノ、ドス、トレスというのが、サーシャに雇われている男衆の名前らしい。
「ちょ、ちょっと媚薬を……。だって、どうせ勃たせるんでしょう。それくらい……」
「馬鹿垂れが──」
ひとりの男の言い訳に、またもやサーシャが吠えた。
「……刺激なんかなしでも、必要とあれば、すぐに勃起させる。それくらいできないと男娼としての性奴隷としては売れないんだ。勝手なことをするんじゃないよ」
サーシャが喚いた。
三人の男たちは恐縮したようになった。
「……まあいい……。それよりも、こっちだ。ほら、お前、なにか言うんだろう──?」
サーシャが今度はイットのお尻を叩いた。
イットは涙目をリックに向けた。
とにかく、股間の痒みはもうどうしようもないものになっている。
気が狂うほどの痒みだ。
「あ、あたしを……おがじで、く、ください……。お願いします」
やっとのこと言った。
サーシャが、口上にも何もなっていないけど、まあいいだろうと頷く。
犯されるということがどういうことなのかは正直よくわからなかったが、ぼんやりとした性知識だけはある。
いずれにしても、もう見栄も体裁もない。
ただ、哀願するだけしかできない。
「おがじて、おがじてください──」
イットは必死に叫んだ。
「いくよ……」
すると、リックが言った。
身体を屈めるようにして、怒張の先端をイットの股間に合わせる。
そのとき、イットしか聞こえないような小さな声で「ごめんね」と耳元でささやくのが聞こえた。
「えっ……?」
思わず問い返したが、次の瞬間、激痛が襲った。
一気に下から突き上げるようにして、股間をリックに貫かれたのだ。
リックの方が背が高いので、イットの小さな身体は浮きあがり、足首に繋がっている鎖の長さの分だけ宙に浮いたかたちになる。
だが、それ以上は浮きあがらない。
イットの足首の枷が床と鎖で繋がれているからだ。
リックも、イットに男根を貫かせたものの、窮屈な姿勢で苦しそうである。
「これじゃあ、なにもできないね。リックの腕を解いておやり。イットの足枷も外すんだ」
サーシャが笑いながら言った。
すぐに男たちがリックとイットの拘束の一部を外す。
リックが手でイットのお尻を支えるように持った。
「んんっ、んんんっ」
痛い──。
股間にめり込む一物に、股が引き裂かれた感じになり、あまりの激痛にイットは叫びそうになった。
だが、一方で、恐ろしいほどの痒みが消えていくのは本当に心地よかった。
そして、リックは律動をしなかった。
ただ、イットを下から支えながら、押し回すように動かすだけだ。
それで痛みも小さくなる。
痛みには、ほかのどの種族よりも耐性があるといわれている獣人族である。
やがて、だんだんと痛みよりも快感が上回り、五体が痺れるような感じに襲われた。
込みあがる……。
そして、大きなものがイットに襲いかかった。
身体ががくがくと痙攣をするように震える。
「あ、ああああっ」
ついにイットはうなじを仰け反らせて、激しい声とともに絶頂をした。
「破瓜で、しかも、こんなに年端も行かない子供を性交で絶頂させるなど大したものじゃないかい。これなら、すぐにでも、どこかの年増女に売り飛ばせるねえ。よくやったよ、リック」
サーシャが横で大喜びをしている。
しかし、イットはそんなサーシャの言葉が、どこか遠くで唱えている言葉のように思った。
だんだんと周りの音が聞こえなくなっていく。
どうやら、自分は気を失おうとしているようだ。
薄らぐ意識の中で、イットはぼんやりとそれを思った。
*
イットは眠っていたようだ。
最初に感じたのは、全身の疼きと恐ろしいほどの疲労だ。
そして、股間の痛み……。
さらに、お尻の疼きだ。
「う、ううう……」
イットは身体を起こそうとした。
周りは薄暗かった。
……というよりは、真っ暗だろう。
だが、獣人族特有の夜目の力が、灯かりのないこの場所でも、ある程度の視界を保たせてくれていた。
だんだんと辺りが見えてくる。
どうやら鉄格子に囲まれた檻に入っているようだ。
鉄格子越しの反対側の壁には背の低い檻が三個並べてあったが、そのどれも空っぽだ。
おそらく、こっち側も同じように並んでいるのだろう。
イットが入っているのは、こちら側の真ん中だ。
左右に視線をやったが、両隣も空っぽの檻だ。
一瞬、ここがどこなのかわからなかったが、昼間、父親から奴隷商会に売り飛ばされ、さっそく、サーシャという女奴隷商による調教を受けたのだと思い出した。
そして、媚薬で無理矢理に感じさせられて、何度も絶頂の体験を強要され、最後には、リックという獣人族の少年奴隷に犯されて気を失い……。
あのときは、立った状態で拘束されていたが、いまは床に丸まって寝ていたようだ。
手足の拘束もなくなっている。
「ひっ」
そして、イットは悲鳴をあげた。
すぐそばに、人の気配を感じたのだ。
驚いて、身体を跳ねあがらせようとした。
イットが入れられている檻の壁際の奥に誰かいた。
「危ない。ここは背の低い檻の中だ。座る以上の姿勢にはなれないよ」
立ちあがろうとした身体を、腕を捕まえられて阻まれた。
それが誰なのか一瞬わからなかったが、すぐにあのリックだとわかった。
顔をしっかりと覚えている。
イットを掴んだリックは素っ裸だった。
また、イットも素っ裸だ。
どうやら、イットとリックは、お互いに裸にされて、狭い檻の中に閉じ込められていたらしい。
「ひ、ひいいっ」
イットは恐怖で縮みあがった。
可能な限り、リックから距離をとって離れた。
檻の中は、高さはないが、長さは人が横になれるくらいに十分にある。
イットはリックが座っている側の反対の檻の壁に背中をつけるようにして逃げた。
リックは最初から、できるだけイットから距離をとって、壁に貼りつくようにしてくれている。だから、すぐには気がつかなかったのだ。
「大丈夫……。なにもしない……。連中は、僕が君を犯しまくることを期待して、遊びで一緒の檻に入れたんだけどね。だけど、大丈夫……。なにもしない。落ち着いて」
リックがなだめるように言った。
その言葉でやっとイットは落ち着くことができた。
リックの首には、イットと同じ「奴隷の首輪」がある。
このリックも、イットと同じように奴隷なのだと思った。
そういえば、そんなことをサーシャがあのとき喋っていた気がする。
「はあ、はあ、はあ……」
イットは反対側にしゃがんでいるリックを見た。
優し気な笑みを浮かべている。
人を安心させてくれるような微笑みだ。
しかし、イットは何気なく視線を動かして、無防備に曝け出されている彼の股間を見てしまった。
「ひいっ」
恐怖が走った。
リックの股間は男根が完全に勃起していたのだ。
何も考えずにさがろうとして、鉄格子に阻まれて頭をごつんとやってしまった。
リックがイットの怯えに気がついて、さっと膝を立てて、自分の股間を隠す。
「本当になにもしない。ごめん。これは、ここの男たちが、僕の勃起が収まらないように、嫌がらせで媚薬をここに塗ったんだ。僕たちを裸のまま、一緒の檻に入れたのも、連中の悪戯の一種さ。だけど、首輪に対する命令は、サーシャ様しか与えられないんだ。だから、もうひどいことはしない。もっとも、命令をされたら、さっきのように、犯すしかないけどね。でも、僕は自分の意思で君を傷つけるつもりはない。それだけは信じて」
リックが言った。
媚薬と聞いて、それを塗られたり、打たれたりして、狂ったように欲情してしまった自分のことを思い出した。
それにしては、リックは何ともなさそうだ。
しかし、それは間違いであることにすぐに気がついた。
リックは、ものすごい汗をかいていて、顔だけでなく全身が紅潮して真っ赤だった。
さっきも股間がこれ以上ないというくらいに大きくなっていた。
つたないイットの性知識だが、男の子が性器を大きくするということがどういうことなのかは知っている。
媚薬の効果もすでに知った。
それなのに、リックは必死に我慢してくれているのだと悟った。
「あ、あたしを犯さないの……」
イットは小さな声で言った。
性奴隷……。
男に犯されるための奴隷……。
それが自分の身の上なのだ……。
サーシャの宣告が記憶として蘇る。
イットは手を顔にあてて、泣きだしてしまった。
「犯さない。それはサーシャ様には命令されなかった。男たちは、ほんの悪戯心で、わざと僕と君を同じ檻に裸のまま閉じ込めて立ち去ったけど、僕は、君がそうされたくないのをわかっている。だから、そんなことはしない」
リックがはっきりとした口調で言った。
しかし、イットは泣きじゃくることしかできなかった。
悲しい……。
ただ、悲しい……。
なにもしてない……。
なにも悪いことはしてないのに、父親はイットをこんな場所に売り払った。
それが悲しかった……。
とてつもなく悲しかった。
「……ちょっとでも、食事をしたほうがいい……。多分、明日も休ませてはくれないと思う。僕のときもそうだったし……。だから、口に入れておくべきだ。そして、眠るといい。僕のことは気にしなくていいから……。僕はこうやって、ここでじっとしている。君は身体を伸ばして寝るんだ。少しでも身体を休めないと、調教には耐えられない」
リックがなにかをすっとイットに向かって押しやった。
それは小さな盆に載せた野菜汁のようなものと小さなパンだった。それと果実もある。
イットの食事のようだ。
しかし、とてもなにかを食べる気分じゃない。
イットは首を横に振った。
「食べなきゃだめだ──。お腹がすけば、気力がなくなる。気力がなくなれば、死んでしまう。奴隷には自殺は不可能だけど、だけど、心が死ぬんだ。生きているけど、死んでいるのと同じ状態の奴隷は何人も知っている。いいから、少しでもいいから食べて──。ほらっ」
リックが強い口調で言った。
イットはその剣幕にちょっとだけびっくりした。
そして、顔をあげた。
だが、首を横に振った。
「……食べたくない……。もう、死にたい……」
それだけを言った。
そして、また泣いた。
すると、リックが溜息をついた。
「いいから食べて。そして、生きようよ──。僕は諦めないよ。絶対にいつか、奴隷から抜け出してみせる。それに、気持ちはわかるけど、僕のときには、最初の日に、豚の雌と性交をさせられたんだ。ここはよく売れている性奴隷専門の奴隷商で、君のような奴隷の女がいなかったからね。いまも、ここにいるのは僕と君だけだ。それに比べれば、君の場合の相手は人間じゃないか。僕よりはましさ。もっとも、君にとっては、豚も僕も同じかもしれないけどね」
リックが悲しそうに言った。
イットは豚と性交をさせられたと聞いて、驚いて顔をあげた。
リックは泣きそうな顔をしていた。
イットは、それで、豚と性交をしたというのが嘘でもなんでもないということがわかった。リックの顔が屈辱で歪んでいたのだ。
それでも、少しでもイットを元気づけようとして、リックは自分の受けた恥辱を語ってくれたのだと悟った。
イットはリックをじっと見た。
もう嗚咽はとまっていた。
「……あなたは……いつから奴隷に?」
イットは訊ねた。
「二年前からだ。最初の持ち主のところにいたときは、これでも戦闘奴隷だったんだ。だけど、前のご主人様が僕をここに売り払ったとき、ここのサーシャ様は、僕を男娼の性奴隷として売ることを決めたのさ。サーシャ様は、男でも女でも、僕らのような年端がいかない者を性奴隷として、付加価値をつけて売るのが得意なんだ」
「えっ」
イットは絶句してしまった。
獣人族は戦闘種族だ。
戦いの中にいることができれば、立場が奴隷でも我慢できるかもしれない。
だが、一度戦闘奴隷となった者が、今度は性奴隷として調教されて躾けられる。
しかも、リックは男の子だ。
それがリックにとって、どんなに屈辱的なことなのか、イットにも想像できた。
「イット、希望を捨てちゃだめだ。希望がなくなれば、心が死ぬ。心が死ねば、もう終わりだ。だから、生きるんだ。そのためには、食べれるときには食べないといけない。食べることができれば、心は死ななくて済む。だから、ちょっとでもいいから食べて」
リックが言った。
今度はイットは頷いた。
手を伸ばして、食事の入った盆を手に取る。
意外だがパンはまだまだ柔らかかった。
野菜スープもまた、冷えてはいるが不味いものでもない。野菜もたっぷりとあるし、肉まで入っている上等なものだ。
少なくとも奴隷を飢えで弱らせるつもりはないというのは、これでわかる。
「あ、あたしはイット……。十歳……。得意は爪……。この爪でどんなに硬い敵の身体も突き刺せます」
口の中の物を食べながら、イットは手を前に出して、念を込めた。
指の中に潜っている爪が、じゃきんと音を立てて伸びる。
刃物のように尖った長い爪がイットの指先に出現する。
名前と自分の得意な武器──。
それを告げるのが、獣人族の戦士の自己紹介の当たり前の作法だ。
「……ガロイン族だね。僕はリック……。ウルフ族だ。十二歳。得物は剣」
ガロイン族というのは、獣人族の中でも、肉体派と称される部族であり、山猫に喩えられ、武器ではなく自分の身体を武器のようにして戦うことを習風としている。
母親もそうであり、この刃物のような爪は母譲りだ。
そして、目の前のリックは優しかった。
しかも、心の底からイットを愛おしんでくれるような柔和な微笑み……。
なぜかイットは、なにかに心を突き刺されたような気持ちに襲われてしまった。