【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
夕食会とは言いながら、呼び出されたのは、サキひとりだったようだ。
案内を受けて座った席には、大きなテーブルにふたり分の食器の準備が整えられていた。
テレーズはまだのようだったが、世話をする家人が数名いて、サキの前に食前酒の葡萄酒を準備してくれた。
なかなかの美味であり、酒のあてとして出された前菜も味がいい。
サキは、魔族であるが、仮想空間を利用して、魔族が封印されている向こう側の異界と、こちら側の世界を自由に出入りできる特異な存在だ。
姿かたちも自由自在に変えられる。
サキ自身も、どれが本当の姿かなど、もう覚えてない。魔族の眷属たちに面するときには、体毛の多い魔族っぽい姿になるが、こうやって人間族になっている姿もある意味、本来の姿だ。
特に、ロウの命令で人間族の後宮に入り込むために作ったこの身体は、ロウが素晴らしいと、何度も口にしてくれた。
何度も愛でてもらった。
何度も可愛がってくれた。
だから、サキはこの人間族の姿が大好きになっている。
とにかく、サキは、長い人生の中で、こちらの世界の様々な種族との付き合いがあるが、およそ料理というものについて、美食をとことん追求する種族は、なんといっても人間族だ。
主要種族の中で最も短命で死にやすい種族ではあるが、逆に短命の人生を愉しむ努力と生活の利便への工夫を追及するのも人間族だ。
だからこそ、こっちの世界で、もっとも繁栄して、最大勢力を誇っているのが人間族なのだろう。
神代の世界から繁栄していたもともとの種族といわれる魔族とエルフ族の二大種族のうち、魔族は異界に追い出され、その魔族を追い出したエルフ族も、発祥の地だったナタル森林に留まったまま、旧態依然の生活をしているにすぎない。
エルフ族は権威こそあれ、種族としての力は、人間族が上だろう。
サキはその長きにわたる半生の中で、数百年前のこの世界のことも知っている。例えば、五百年前のナタル森林のエルフ族の生活と、いまのエルフ族の生活はなにも変わらない。
一方で、五百年前の人間族の世界と、いまの人間族の世界とではまるで異なる。
だいたい、このハロンドール王国という大陸でもっとも大きな国がある地域は、五百年前には、ローム帝国が開拓をする辺境の地にすぎなかった。
それが、いまやローム帝国は事実上、三公国に分裂して力を失い、当時辺境だったハロンドール、そして、エルニア魔道王国が栄華を誇っている。
しばらく、酒を飲みながら待っていると、ふたり分の食事が目の前に並べられ出した。
肉料理、魚料理、野菜料理、食後のデザートまで並べられる。飲み物も数種類あり、空のグラスの横に瓶ごと置かれる。
まるで、本来は夕食のあいだに順番に出されるものを一気に並べている感じだ。
そして、すべてを並べ終ると、部屋にいた家人たちが全員いなくなった。
入れ替わるように、正装をしたテレーズが入ってくる。
「ようこそ、サキ殿」
テレーズは会釈だけすると、自分でサキの向かい側に準備されている席につく。
「申し訳ないけど、給仕はつかないわ。わたしも自分で世話をするけど、あなたもひとりでやっていただけるかしら。それとも、元は異国の姫君であられる寵姫様は、給仕がないと食事はできないかしら?」
テレーズが優雅に微笑んだ。
ほう……。
サキはちょっと意外だった。
しばらく前まで、サキの顔を見ると、怯えるように逃げ隠れる様子だったテレーズが、今夜は一転して、まるで人が変わったように、自信たっぷりの強気の態度だ。
ルードルフを引き込むことに、ついに成功をしたということが、この女を優越感に浸らせているのだろうか。
「ならば、素でいかせてもらう。お主も、なにか話があるのだろうな。だから、この人払いか?」
サキは横にあった葡萄酒の瓶を掴むと、空になっていたグラスに並々と注いだ。
この席がテレーズがテレーズとふたりきりになるために設けたものなのは明白だ。
なにか話があるのだろう。
しかし、サキにはそれは思いつかない。
「まずは乾杯といきましょう。王家の新しい血に……。まだ、王妃殿下にも伝えられてないけど、あなたは知ってるんでしょう? わたしの周りをちょろちょろしてる小娘ふたりが、あなたが寝泊まりする離れにご注進に行ったはずだから」
「見張っておったのか?」
小娘ふたりというのは、ピカロとチャルタのことだろう。あのサキュバスたちを小娘呼ばわりとは、この人間族もなかなかに自惚れが激しいようだ。
「見張っているわ。あなたと王妃……。王太女と第三神殿の女神殿長、冒険者ギルドのドワフ女……。もちろん、アン様……。ふたつの屋敷……。全てを監視させているわ。だって敵だもの。王家を脅かす不埒な連中ね」
「ほう、言うではないか」
サキはテレーズを睨んだ。
しかし、やはり怯まない。
先日とは大きく違っている
それはともかく、いまテレーズが口にした人物たちは、全員がロウの女だ。ほかにもいるが、おそらく、テレーズが繋がっていると把握したのが、その女たちなのだろう。まあ、このくらいまでは、その気になればすぐに繋がる。
ロウは女たちの関係を積極的に明らかにもしないが、大して隠しもしてない。その気になって調べれば、全員がロウと特別な関係であることは容易に悟ることはできるだろう。
「あなたとは本音で語り合いたいと思っているわ。日の出ずるところの寵姫として、日の没するところの寵姫であるあなたとね」
「なんだそれは? おかしな物言いを……。わしと対等だと言いたいのか? まあいい。お前の王に興味はない。好きにしていい。わしの興味は
「そうでしょうね。あなたのことは、この一箇月半のあいだ、よく調べさせてもらったわ。あなたが“主殿”と呼んでいる相手がどういう人物なのかということもわかったわ。もしかして、あなたも彼の女のひとり? 国王の寵姫であるあなたを寝取ったということであれば、それだけで不敬罪よ。いえ、不敬罪できかないかしら? 間男の罪? この国にそんな罪状があればだけど」
「もう一度繰り返させるつもりか、テレーズ? ロウ=ボルグには手を出すなとも申したはずだ。八つ裂きにされたいか?」
「おう、怖い。だけど、わたしは、一度もロウ=ボルグ卿の名は出してないわ。もしかしたら、あなたの浮気の相手も、そうなのかしら? 怖い、怖い。だって、ロウ=ボルグ卿といえば、王妃殿下に手を出し、王太女殿下の愛人を気取り、さらにアン様と陛下の寵姫のあなたにまで? かなりの大罪ね」
「なにい?」
サキは飲んでいた葡萄酒の入ったグラスを荒々しく、テーブルに叩きつけた。
「ロウ=ボルグ卿は大罪人と言ったのよ。少なくとも陛下はお怒りよ。今回のことで怒り心頭に発して、早晩、ロウ卿から、これまでに与えたすべての恩賞と権限を剥奪して、重罪人として手配させるでしょうね」
「
サキは立ちあがった。
この場でこいつは殺す。
そう決めた。
「落ち着いてよ。気が短いのねえ。話し合いにならないじゃない」
テレーズは落ち着いたものだ。
動じる気配もなく、まだ悠然と腰かけている。
その度胸は買ってやってもいい。
「話は終わりだ。わしの忠告に従うつもりがなさそうなのがわかったからな。残りの話は、お前の首を胴体と離してからだ。そのときに、まだ口がきけたら、話をしてやろう。闇魔道師なら、首が離れても喋ってみせろ」
「怖いわねえ。だけど、あなたと、わたしは、もしかしたら利害は同じかもしれなくてよ。最後まで話をしてもいいんじゃない?」
「なにを話す? お前がタリオの犬だということか?」
サキは言った。
初めて、テレーズの顔色が変わった。
サキは立ちあがったまま微笑んだ。
「わしがなにも知らないと思ったか? それとも、マリルスという薬師でも紹介してくれるのか? 犬の飼い主もなかなかに下衆そうではないか。罪もない人間族の老人を殺して、森で獣どもの餌にしたのだから」
今度こそ、テレーズの顔がひきつる。
まさか、サキがテレーズとタリオ公国の関係を知らないと思っていたか?
だが、サキにも独自の耳目がある。
人間族の姿になって紛れることができる魔族の眷属を仮想空間経由で呼び出すことが可能であり、そいつらに調べさせれば、それなりのことはわかる。
ただ、人間族の国同士の謀略ごっこなどどうでもいいから放っているだけだ。
だが、ロウに手を出すというなら話は別だ。
「そ、そう……。予想外ね……。そこまで、知られてたとは……。だ、だけど、それ以上、口にしないで」
テレーズが突然に胸元を寛げ始めた。
訝しんでいると、胸を閉じている紐を解いて大きく左右に拡げた。胸巻きに包まれている豊満な乳房が露わになる。
いきなりそれを引きやぶって、乳房を露出させた。
そのテレーズの肌に、ふたつの紋様が出現した。
テレーズが魔道で活性化させたみたいだ。
普段は隠れているが、魔力を注げば姿を表す隠し紋様だ。
サキは目を見張った。
左右の乳房にひとつずつの紋様……。
ひとつは完全隷属の紋様……。
テレーズは、紋様奴隷だということだ。人間族の奴隷には大きく二種類ある。一般的なのは首輪奴隷であり、首輪によって支配術をかけられるというものだ。もうひとつが目の前のテレーズのような紋様を身体に刻まれている奴隷だ。
首輪奴隷は首輪さえ外せば、奴隷状態から解放されるが、紋様奴隷には解放はない。
未来永劫に奴隷だ。
それがテレーズの身体に刻まれている。
首輪とは異なり、隷属の紋様はかなりの高等魔道だ。相当の魔道遣いでなければ、施すことはできない。
だが、もうひとつの紋様……。
これは死の紋様……。
なにかの条件付けがあり、それを満たせば、身体に死が訪れるという呪術だ。
さしずめ、テレーズはタリオの魔道遣いに、隷属の紋様を刻まれ、さらに任務を与えられて、失敗すれば死ねとでも呪術をかけられたということか……。
サキは大笑いした。
「その犬の印がどうした? 同情して、助けろとでもいうのか? つまりは、わしがお前の邪魔をすれば、すぐにそれが発動するということか。そりゃあ、手間が省ける。首を切れば血が吹き出すから、片付けに往生するが、呪術による自然死なら、汚れはすまい」
サキは笑い続けた。
すると、テレーズが胸をしまいながら、サキを見た。
「笑わないことね。これはあなたを縛る呪いでもあるのよ。もしも、わたしが呪術で死んだら、あなたも死になさい、リュンネガルト・ゴーテンバウム・サキュテスト……」
背中にどっと冷たい汗が流れた。
こいつ、いま、サキの真名を……。
テレーズがにやりと微笑む。
「な、なんで……」
サキは手足が震えるのを感じた。
真名による支配……。
それは、ある意味、すべての高等魔族にかけられている生まれながらの呪術に等しい。
魔族は、真名を知られることで、相手の支配下に陥る。
ほかの種族とは異なり、なぜか、魔族は能力が一定を超えると真名の存在というのが発動して、その名で他人に呼ばれることで、瞬時に隷属関係が発動してしまうのだ。
どうしてそうなっているのかということはわからず、まさに、神の悪戯としかいえない。
あるいは、神話のクロノスが愛人にした魔族の守護神のインドラにかけた呪いとでも言おうか……。
とにかく、魔族は真名で相手の支配に陥る。
これは絶対だ。
そして、これは、人間族にはあまり知られていない歴史のようだが、人間族やエルフ族というのは、かつて、魔族との勢力闘争において、『鑑定術』という魔道を作り出し、次々に高等魔族の真名を明らかにして、その支配下においていった。
そんなエルフ族や人間族に、魔族が結集して叛意を起こしたのが冥王戦争であり、さらに、冥王戦争後の魔族追放であり……。
いずれにしても、たったいま、テレーズがサキの真名を呼んだということは、支配されてしまったということだ。
だが、どうやって……。
テレーズのみならず、高等魔族というものは、鑑定術で真名を見破られないように、幾重もの鑑定封じをかけている。
知られるはずがないのだ。
サキの真名を知っているのは、唯一、ロウだけであり……。
テレーズは懐から小指の先ほどの透明の玉を取りだした。
魔道具のようだ。
「鑑定の魔道具……。簡単なものよ。高価だけど、王都の魔道具屋に売っているわ。簡易なもの……。それに、あなたの真名ははっきりと映ったわ」
テレーズは微笑んだ。
「ば、馬鹿な……。そんなもので、わしの真名など……」
「立ったままじゃあ、落ち着かないわ。座りなさい、サキ」
テレーズが言った。
サキは椅子に座り直した。
もはや、それが自分の意思なのか、真名を知られたことによる呪縛によるものなのかはわからない。
すでに操られている……。
ぞっとした。
すると、テレーズがことんと小さな黒い瓶をテーブルの上に置く。
「な、なんじゃ、それは?」
サキは言った。
だが、自分の声が震えている。
サキは大きな困惑と動揺に包まれている。
「わたしに犬の首輪をつけている男が持ってきた『魔族殺し』という秘薬よ。あらゆる魔族にとっては、これは無色無臭で感知できない。異変も見破れず、魔道的な感知をしても魔族にはわからない。だけど、魔族の能力を奪われてしまう魔族にとっては、絶対的な毒薬……」
はっとした。
そんなものがこの世に存在するというのは、何度か耳にしたことはある。だが、すでにこっちの世界からは魔族は追放されているので、魔族にしか効果がないという能力封じなど用途もなく、その存在は忘れ去られているくらいのはずだが……。
まさか、タリオ公国がそれを保持していたのか……。
つまり、もしや……。
「この食事や酒に……?」
サキは呆然と目の前の料理を見た。
「食事や飲み物だけでなく、香に混ぜて、この部屋全体に焚きこめているわ。あなたには、なにも匂わないかもしれないけど、わたしはずっと、うっすらとした
愕然としてしまった。
しかし、それで納得いった。
サキは、知らず知らずに、魔族殺しという能力封じの毒薬を口にして、さらに鼻から吸い込み、いつの間にか、鑑定魔道に完全無防備の状態になったということだ。
それで、もっとも簡易な鑑定具に、真名を映してしまったのだ。
「ま、まさか、わしを……」
「そうね。まあ、限定的なものだから……。時間が経てば、魔族殺しの毒素は抜ける。問題ないわよ」
とにかく、信じられない。
そして、いま気がついたが、サキは魔道を発動できない状態になっていた。魔族殺しのせいか……。
また、このテレーズは、サキの正体が魔族だと知っていたのか……。
それにしても、すでに真名を知られた……。
サキともあろうものが、ロウ以外の存在に支配されるなど……。
「お気の毒様……。あなたはわたしが知る限り、最強にして、最大の能力を持つ者よ。だけど、こんな薬ひとつで、陥れられるのね」
テレーズが静かに言った。
「き、貴様?」
「わたしのことを小者だと思っていたでしょう? だから、足元をすくわれるのよ、サキ」
テレーズがにこりと微笑んだ。
「どうするつもりだ……?」
サキは、とりあえず、それだけを言った。
「どうするつもりって? そうねえ。あなたも気がついていると思うけど、すでにルードルフはわたしの支配下よ。わたしの飼い主に命じられていることもあるから、ロウ=ボルグ卿については、ルードルフの悪感情を利用して失脚してもらうわ。今回の妊娠騒動で、ルードルフがちょっとむっとしたから、いまは、それを最大限に増幅して、怒り心頭の状態にしている。さっきも言った通りに、早晩、捕縛命令でも出るんじゃないかしら」
「ゆ、許さんぞ──。主殿に手を出すなど……」
サキは怒鳴り声をあげたものの、こうなってしまえば、サキにはなにもできない。
背中に冷たい汗が流れ続ける。
「落ち着きなさいよ、サキ。わたしは、あなたとの妥協点を話し合いで見つけようとしているのよ。わたしも、この王家乗っ取りの謀略に、女好きという欠点はあるけど、比較的善良そうなロウという男への私恨をなぜ混ぜるのかわからないわ。まあ、これも逆らえない命令なのよ」
「ふざけるな──」
「いいから、聞きなさい。捕縛命令が出ても、ロウ=ボルグ卿はもうすぐ国境を越えるでしょう? それとも、もう越えている? とにかく、出てしまえば、すぐには捕らえられない。捕らえられるのは、戻って来てからよ」
「なに?」
サキは眉をひそめた。
なにか謀略めいたことを口にしようとしているようだが、そういう話はサキは苦手だ。
いや、魔族全体が苦手だろう。
権謀術数は、あらゆる種族の中でも、人間族の専売といっていい。
だからこそ、いまや、この世界の大半を人間族が支配しているのだ。
「だから、妥協点を見つけましょうよ。あなたとふたりっきりで話したいというのは嘘じゃないの。わたしには与えられている任務がある。それには逆らえない。いずれにしても、ロウ卿への捕縛命令ということになると、当面邪魔なのは、王太女と王妃ね。このふたりは、絶対に邪魔をする」
「なにが言いたいのだ?」
「ただ、王太女については、まもなく王都から出されるわ。母体保護という観点での王家の慣習だそうよ。政務から離れさせて、静かな環境ですごさせるの。もっとも、もう長く忘れ去られたような古い慣習にすぎないんだけど……。でも、それを思い出させたのは、わたし……。ルードルフはその気よ……」
「王太女を王都から出すのか?」
サキは言った。
だが、イザベラは、王太女としても、王都を治めるハロルド公としても、最近ではかなりの業務を担っているはずだ。そもそも、ルードルフが政務を放棄しているために、そうなっているのだが、イザベラが王都から離されれば、ほぼ、宮廷はルードルフを押さえているテレーズの独壇場となるだろう。
いまや、アネルザは政務から離されているし……。
「王太女は離宮に行く。ほとんど誰も知られないくらいに、こっそりとね……。なにしろ、静かな環境で静養させるのが目的なんだから……。王太女の女官や侍女軍団は面倒だから、出し抜くことになるでしょうね。まあ、とにかく、そうなれば、残りは王妃……。これは面倒ね。最近は元気ないみたいだけど、ロウ卿に手を出せば、あなた同様に噛みついて来るのは目に見えている……」
「もういい……。権力闘争なら好きにせよ。しかし、主殿に手を出すな……。いや、出さないでくれ。頼む──」
サキはテーブルに手をついて頭をさげた。
生まれてから、一度だってロウ以外に頭をさげたことなどない。
いや、ロウにだって自ら頭などさげない。
だが、そのロウのためだったら、いくらでもさげる。
地に頭だってつけられる。
ロウのためなら……。
サキは口惜さに歯ぎしりしながら、テーブルに頭をつけ続けた。
「だから、話し合いをしない、サキ……? わたしの目的と、あなたの立場って、本当に対立するの? わたしの目的は与えられている任務を遂行することよ。それ以下でも、それ以上でもないのよ……」
するとテレーズが悠然と言った。
顔をあげると、テレーズが意味ありげに微笑んでいた。