※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

318 / 1059
318 三人組とあとひとり

「スクルズ──?」

 

「スクルズ──。サキ、お前、スクルズを巻き込んだのかい──? というか、王都に戻ってたのかい」

 

 ミランダに次いで、アネルザも声をあげた。

 スクルズは、ロウがいなくなってから、とり憑かれたように、例の遠距離移動術施設をロウが向かったナタル森林方向に延伸する作業を続けていて、ほとんど王都にいなかった。

 スクルズを見たのは久しぶりだ。

 

「殿下、水臭いですわ。ロウ様のために動くのであれば、どうして、もっと早く、声をかけていただけなかったのです? 確かに、王都から離れておりましたが、神殿には連絡手段を残していました。もちろん、協力します」

 

「……というわけだ。今回の企てに際して、わしは、こいつは協力するだろうと踏んでいた。その通りだったぞ」

 

 サキがにやりと微笑んだ。

 スクルズが頷く。

 

「こんなときこそ、ロウ様のお役に立ちたいのです。さもなければ、わたしはなんのために神殿長になったのか……。でも、神殿長になりたてのわたしには、動かせるものなど、たかが知れております。そんなときに、サキさんから提案を頂きました。素晴らしいお考えです……。ロウ様が戻る前に、ロウ様に悪意のある王陛下など潰してしまいましょう」

 

「潰すって……、あんた……」

 

 にこにこしながら、過激なことを言うスクルズに、ミランダは絶句した。

 

「及ばずながら、わたしもご協力いたします……。それと、サキさんが言ったことですが、発端はテレーズの闇魔道であっても、動いた感情はそれを解いても元に戻るとは限りません。ロウ様を助けるには、王を排除した方が確実です。どうか、わたしも参加させてください」

 

 スクルズが頭を静かにさげた。

 ミランダはびっくりした。

 

「ス、スクルズ、あんた、なにを言っているのかわかっているの──? 王陛下を潰すなんて、あなたらしくない物言い……。そもそも、神殿長の立場で……」

 

 ミランダはやっと言った。

 スクルズが顔に笑みをたたえたまま、ミランダに振り向く。

 

「みなさんの会話は、サキさんの仮想空間の中で聞かせていただきました。ですから、わたしの“立場”も申しましょう……。ロウ様に害するものがあるなら、わたしが持っているもののすべてを使って、それと戦います。その相手が国王陛下その人でも、例え、神そのものでも、わたしは戦います。とにかく、ロウ様のために、ルードルフ王は潰しましょう」

 

 スクルズがきっぱりと言った。

 ミランダは、なにも言えず、ただただ唖然として大きく口を開けてしまった。

 そして、驚きもした。

 

 考えてみれば、スクルズとロウが懇意となるきっかけとなった「三巫女事件」の頃は、スクルズは確かに能力は高かったが、どちらかというと優しすぎて、か弱さの方が大きかった。ましてや、いまのように、堂々と国王に対する叛意を口にするような女ではなかったのだ。

 それが、いつの間にか、ロウに害意を抱く国王など潰そうとまで言うほど強い女になっている。

 なんという変わりようだろう。

 このスクルズにしろ、冒険者ギルドでサキの前に立ちはだかって抗議したランにしろ、ロウの女になって、本当に強い女に変わったと思った。

 

「よく言った、スクルズ──。わしらの同盟に悦んで迎えよう。なあ、アネルザ……。よし、スクルズも座れ」

 

 サキがアネルザに言った。

 そして、魔道で部屋にあった肘掛椅子を引き寄せて、寝台の近くまで移動させる。

 スクルズがそれに腰掛けると、サキが盃を出現させ、スクルズに渡して、酒を注ごうとした。

 

「これは誓いのお酒ですね……。でも、ロウ様から、もうお酒を飲むなと禁じられているのです。水を頂きます」

 

 スクルズはサキの酌を断り、盃だけ受けとると、その盃に自らの魔道で水を浸した。

 そういえば、ずっと前だが、調子に乗ったロウが酒をスクルズに無理矢理飲ませて、酔っ払ったスクルズが大暴れしたという事件があったか……。

 それはともかく、そういえば、この塔の中では、いかなる魔道も囚人が遣えないように、牢内に特殊な結界が張ってあるはずだった。

 しかし、サキもスクルズも、平然と魔道を遣っている。

 最初にアネルザが口にしたとおり、ここはそういう処置をすべて排除してしまっているのだろう。

 

「誓いの酒とか、そんな大層なものじゃない。ただ、飲んで喰っているだけだ。作戦会議をしながらな……。まあ、酒が駄目なら勧めん。しかし、この料理は食べてくれ。妖魔式でいこう。手掴みでやれ」

 

「まあ、手掴みですか? お行儀が悪いですねえ……。ええ、もちろん、頂きます。仮想空間の中で実はやきもきしてました。桂鳥(ケーバード)ですか……」

 

 スクルズがころころと笑って、サキが持ち込んだ肉に手を伸ばす。

 

「まあ、これは美味しい──。すばらしい味です」

 

 スクルズが肉を口にして驚いた表情になった。

 

「ちょ、ちょっと待ちな、スクルズ。あんた、自分がなにに加わろうとしているのか、わかっているのかい? 神官の立場で、現実の政争に関与するのはご法度だろう。いまの職は続けられなくなるよ。アネルザ、本当にあんたの企てに、スクルズまで巻き込むつもりなのかい──?」

 

 ミランダは、アネルザに怒鳴った。

 サキとアネルザが同時に口を開きかけたが、それをスクルズが制する。

 そして、ミランダに向かって口を開く。

 

「……ミランダ、身に着けている下着を全部脱いで、こっちに渡してください。すべて焼き払いますから……。生まれたままの姿になってくださいね」

 

 スクルズが、にこにこと微笑みながら、事も無げに言った。

 ミランダは耳を疑った。 

 

「な、なに言ってんだい、スクルズ──」

 

 ミランダは怒鳴った。

 いきなり、全裸になれなど、スクルズはどうかしたのか──。

 しかし、スクルズは口元に笑みをたたえたまま、じっと視線をミランダから外さない。

 スクルズが、さらに微笑んだ。

 

「……だって、いくらなんでも、素っ裸では逃亡はできませんでしょう? 逃走防止ですわ。わたしとミランダの仲ですもの。危害は加えません。でも、事が終わるまで、ここに閉じ込められてもらいます」

 

「ちょ、ちょっと、スクルズ」

 

 どうやら、本気で言っているようだ。

 その手元に、魔力が集中するのを感じる。

 魔道だ──。

 ミランダはたじろいだ。

 

「わたしたちが、もしも、王国への叛逆者として捕らわれて、王都の広場で磔になって処刑されたとしても、どうか知らぬ存ぜぬで通してください。あっ、念のために、鎖で首輪もしましょう。ミランダが加担していない証拠になりますわ」

 

 スクルズがあっけらかんと言った。

 驚くのは、スクルズがちっとも冗談を喋っている様子がないことだ。

 これは本気だ。

 ミランダは悟った。

 アネルザもサキも、にやにやと事態を静観しているだけだ。

 かっとなった。

 

「そもそも、あんたたち、どうかしているんじゃないのかい──。国王陛下を排除する政変を起こすなど、とても正気とは思えないね。なるほど、理由はわかった──。ロウを助けたい──。そうなんだろう。そりゃあ、あたしだって同じ思いさ。陛下がロウを捕縛しろと息巻いたと耳にしたときには驚いた──。なんとかしないといけないとも思った──。だけど、それは王陛下が得体の知れない存在に、感情を操られて起こったことだったんだろう? だったら、なんとかやりようがあるんじゃないのかい。もっと、ちゃんとした解決法がね」

 

「それはあるかもしれません。でも、叛乱を起こすというのは、わたしは良いお考えとは思いますが? ロウ様が権力をお握りになるのです。それをわたしたちのような女たちで支えるのです。ロウ様はただ存在して、わたしたちを愛していただければいいのです。働くのも、問題を解決するのもわたしたち……。働いた分のご褒美でロウ様に愛してもらえるのです。きっと愉しいと思いますわ……。まあ、想像したら、わたしもぞくぞくしてきました」

 

 スクルズはにこにこしている。

 だが、ちょっとわかったが、少し様子が不自然じゃないだろうか……?

 スクルズにしては、どうにも落ち着きがないような……。

 興奮しているというか、高揚しているというか……。

 

 そして、はっとした。

 実は、このところの不可思議な気分の乱れや、体調の変化のようなものには、ミランダも心当たりがあるのだ。

 どうにも身体が熱いというか、むかむかと胸に込みあがるものがあるというか……。

 夜眠っていて、身体が突然に火照りきり、まったく眠れないということもある。身体も怠い感じがして、以前よりも力が入らない。

 奇妙な寝汗をかき、苦しい。

 不定期に襲ってくる発作のようなものだ。

 それがなにであるか、もうミランダも心当たりがある。

 

 つまりは、ロウだ──。

 なんだかんだで、あの男が王都にやって来て依頼、十日も隔てて抱かれなかったことはない。

 精力が絶倫のロウは、一緒に暮らしている三人娘だけでは、とうてい性の相手が不足し、なんだかんだと理由をつけて、ミランダを始め女たちを抱きにくる。

 そんな生活が当たり前になっていたところに、ロウの一箇月半の不在だ。しかも、おそらく、短くとも、あと一箇月は戻らない。

 すなわち、ロウに抱かれていないせいで、禁断症状ともいっていい欲求不満の状態になっているということだ。

 そして、この苦しみや身体の火照りは、日が経つにつれてひどくなる。

 恥ずかしいが、ずっとやっていなかった自慰の習慣も復活している。

 だが、いくら自慰をしたところで、決して満足できない性欲の飢餓状態……。

 ずっと、そんな感じが続いている……。

 

 だったら、それはスクルズも同じだろう。

 むしろ、スクルズは三人娘以外では、一番ロウに抱かれる頻度が多かったと思う。

 もしかして、あまりの禁断症状で、スクルズもおかしくなった……?

 まあ、そればかりじゃないだろうが、これがスクルズの冷静な判断力を失わせているのは間違いない。

 無論、スクルズだけじゃなく、アネルザも、もしかしたらサキも……。

 

「とにかく、冷静になりなよ、あんたら──。よく考えるんだ。王陛下の感情の激昂が操られたものであるなら、過激な手段以外にも、解決策は山ほどあるよ。そもそも、今回の陛下のロウへの仕打ちは、イザベラだけでなく、アンがあんなことになってしまったことだろう? その感情であれば、簡単にひっくり返せるじゃないか。時間をかければ、怒りも収まるかも……」

 

 ミランダの言葉に、サキがびくりと背筋を伸ばすように動いた。

 しかも、ぶるぶると身体を震わせるような仕草をし、ちょっとその動作を継続して、次いで、すごい表情でミランダを睨みつけてきた。

 

「な、なにを呑気なことを言っておる、ドワフ──。お前たちの国王は、いま、王女ふたりに新しい男をあてがおうと動いておるぞ。まあ、それは例のテレーズのささやきによるものだがな。しかし、王女の婚姻など、王が書類に署名をすれば、それで成立するのだ。主殿が戻ったとき、あのふたりが他人のものになっていたという事態になっていたら、それこそ烈火のごとく怒るのではないか」

 

 サキが声をあげる。

 ミランダもびっくりしたが、平然と話を聞いていたアネルザが、顔を真っ赤にして激怒した。

 

「なんだと──。わたしに断りもなく、そんなことを許されるものかい──。母親のわたしはなにひとつ聞いていないよ──」

 

 そして、怒鳴りあげた。

 だが、サキは呆れたように首を竦めた。

 

「お前はなにを言っておる。そういうことに文句を言わさんように、王とテレーズはお前を捕縛して監禁しておるのだ。ここでのんびりと過ごしていれば、ノールの離宮にいる本人ふたりも知らんうちに、両方とも人妻になってしまうぞ。書類だけ通しておいて、儀礼めいたものは、後でする。そんなことを相談しておるのだ」

 

 サキが鼻を鳴らした。

 

「相手は誰だい──?」

 

「アーサーとかいうタリオの大公じゃな。よくわからんが、今回の騒動をすでに知っておったらしく、魔石を使った魔道通信で、条件付きでイザベラを娶ってもいいと申し込んできたらしいぞ。形式婚だそうだ。一緒には生活をせずに、名目上だけの夫婦ということだな。ルードルフは既にその気になっておる。アンにも条件のいい相手を準備するそうだ」

 

「なんだって──。あいつ、まだ諦めてなかったのかい。サキも、それを早く言わないかい――」

 

 アネルザが怒鳴った。

 

「王を滅ぼしましょう。そして、ロウ様に相応しい地位の贈り物を……。なんの問題もありません。それで話は終わります」

 

 スクルズも毅然とした表情で言った。

 駄目だ……。

 一見冷静だが、もしかしたら一番それを欠いているのがスクルズかもしれない。

 

「ロウに地位の贈り物といってもねえ……。さっきも言ったけど、そもそも、あいつはそんなものを欲しがるのかい? あたしの見たところ、権力欲があるどころか、それから逃げ回っているように思えるけどねえ」

 

 ミランダは言った。

 少し前まで、ロウは名が評判になると困ることがあるということで、冒険者ギルドでは、ずっとロウの功績を隠して、外に出ないようにするという工作を頼まれてやっていた。

 このところは、イザベラとの関係を公にするような行動もするようになったが、元来、謙虚で目立つことを好まない性質のように思う。

 だいたい、ロウに権力欲があるとは思えない。

 好色で女好きだが、ロウはそれに始まり、それに終わる。

 

「だったら、もしかしたら、お怒りになるかもしれませんね。きっと勝手なことをしたわたしたちに、罰をお与えになりますわ。激しく折檻もなさるでしょう」

 

 スクルズがうっとりした表情で言った。

 すると、アネルザとサキも噴き出した。

 

「確かに……。あいつは、わたしらに怒って、酷い目に遭わせるんだろうねえ。想像しただけで、身体が震えてきたよ」

 

 アネルザが豪快に笑いながら言った。

 サキも酒を口にしながら、大きく頷いて笑っている。

 スクルズがミランダの顔をじっと覗くような仕草をしてきた。

 

「なにか問題がありますか……?」

 

 スクルズが言った。

 問題……?

 問題だって……?

 あいつが、ミランダたちに怒って罰を与えることが……?

 想像した。

 そしたら、なぜか急に笑いが込みあげてきた。

 いつのまにか、くすくすと小さく笑ってしまっていた。

 

「なるほど、なんの問題もないかもしれないね」

 

 ミランダも言った。

 まあいいか……。

 こうなったら、毒喰えば皿までだ。

 

 すでに、ロウが全土に手配されてしまい、捕縛指示が出されているのは事実だし……。

 この三人が駆け始めた以上、ミランダも、この企てにどっぷりと浸かってしまったと言っていい。

 三人が走って、ミランダが傍観するという選択肢はもともと存在しないのだ。

 

 怒ったロウに折檻か……。

 確かに、なんの問題もないかもしれない……。

 

「これで決まりですね。ほかの者たちについては、状況を見守りながら誘いましょう。いずれにしても、王太女殿下やアン様とも話を合わせる必要がありますね」

 

「まあそうだね。離宮でこちらのことはわからないだろうから、早く接触する必要がある。放っておくと、あいつらが情報遮断されているのをいいことに、ルードルフとテレーズにいいようにされる」

 

 スクルズの言葉に、アネルザも頷いた。

 

「では、血判の誓いをいたしましょう。魔道の誓いです。これを行えば、決して裏切ることはできません。仲間を売ることもできません。捕らえられても口に出せないので、苦しい拷問が続くことにもなるでしょう。なによりも、ロウ様の名は出せません。どんなに拷問を受けてもです。絶対にロウ様にはご迷惑はかけられないのです」

 

 すると、スクルズが宙から一個の盃と剃刀を出現させた。

 それに半分ほど水を浸し、さっと剃刀で手のひらに小さな傷を作り、水の中に血を少し垂らす。

 盃はスクルズの魔道で宙に浮いている。

 

「血の誓いかい……。いいねえ。スクルズ、刃物を貸しておくれ」

 

 アネルザがスクルズに手を伸ばす。

 スクルズが剃刀をアネルザに手渡し、盃がアネルザの前に移動していった。

 指の先で傷をつけたアネルザの血がそこに混ざる。

 

 ミランダもその剃刀を受け取る。

 宙を走ってきた盃に血を垂らした。

 すでにもう腹は括った。

 ミランダの血もそこに混ざる。

 

「さあ、サキさんも……」

 

 スクルズがサキに声を掛ける。盃がサキの前に移動していった。

 だが、なぜかサキはたじろいだような表情になった。

 ミランダは首を傾げた。

 

「どうしたんだい、サキ?」

 

 アネルザがサキを見た。

 だが、サキはなにか不自然そうな仕草で腰を捻るような仕草をしている。

 もしかして、動揺している……?

 

「だ、大丈夫だ……。問題ない……。問題など……。い、いや、なんでもない……。だが、念のために確認するが、これを誓えば、お互いに裏切られなくなるということだな?」

 

 サキの言葉にスクルズが首を横に振る。

 

「裏切ることができないのは、ロウ様に対してです。もともと、あたしたちはロウ様を裏切ることなどできません。ですから、これがあってもなくても、同じなのですが、まあ、儀式のようなものですね」

 

「なるほど、儀式か……。ロウを裏切らないためのな……」

 

 サキがほんのかすかに脱力したようになり、そして、盃の上に拳をかざす。

 その拳から血が垂れて、盃に混ざった。

 盃がスクルズの前に戻り、スクルズが手をかざす。

 すると、盃から赤白い湯気が勢いよくあがり、四人を煙のようなもので包んだ。そして、あっという間に四散してなにもなくなる。

 

「これで、わたしたち四人の血の血判が結ばれました。たとえ、捕らわれても、仲間を売ることはできませんし、ロウ様の名を出すこともできません」

 

 スクルズが言った。

 

「よかろう。わしらは、ロウに危害を加える勢力と相対するという点で同盟というわけじゃな。面白い──。今日は朝から愉快だ。どうせなら、血の誓いだけじゃない。この四人で義姉妹の誓いもするか? この妖魔将軍サキが、人間族のお前たちと義姉妹になってやろう。これもなにかの縁だ」

 

 サキが愉しそうに笑った。

 すると、スクルズがいきなり小さく笑いだした。

 

「ふふふ、愉しいですね……。ところで、念のために確認させていたたきたいことが、殿下、そして、サキさん……」

 

「確認したいこと?」

 

 アネルザがスクルズを見た。

 サキも視線を向ける。

 

「本当に些細なことで、まあ、どうでもいいことなのですが……。もしかしたら、すべての発端がなんとなく、そこにあるような気がしたものですから。仮想空間でお話を伺っているときに、ルードルフ王は闇魔道の操りを受けているという話がありましたね?」

 

 スクルズがアネルザとサキの顔を交互に見ながら言った。

 

「あったな。なにか心当たりがあるのか、スクルズ?」

 

 アネルザが応じる。

 

「いえ、それはなんとも……。それよりも、わたしも神殿界の規約に従いまして、魔道を注がさせてもらっている王陛下が常に身につけておられるはずの、王家の宝珠ですが……。陛下が闇魔道にかけられたということは、それを所持していないということになるのではないですか? あのときの、アネルザ殿下の態度で、なにかを知っているような感じがしたのです」

 

「んんっ?」

 

 アネルザが複雑そうな表情になった。

 ミランダにはわかった。

 これは、なにかを隠している。

 

「今日は、仮想空間越しですが、ルードルフ陛下も垣間見ました。確かに不自然でしたね。でも、今回の事態が、それが招いた災厄というのは、サキさんも王妃殿下も、お気づきですよね?」

 

 スクルズが言った。

 ミランダは驚いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。