【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「
サキが怒鳴って、また少女を蹴り飛ばした。
「ふぎゃあ」
蹴られた少女がごろごろと後ろに転がっていく。そして、ふと気がついたら、少女たちの股間には女性器だけだ。男根がなくなっている。
それにしても、サキってこんなに怖い女だった?
もちろん、シャーラはサキが、本当はロウの女であることを承知しているし、信じられないが、正体は魔族であることも教えられていた。
だが、たまに王宮で出会うサキも、ロウの前で一緒に抱かれるときのサキも、こんなに暴力を振るうような女性ではなかったのだ。
王宮のサキは、清楚な雰囲気で優しげだし、ロウに抱かれに王太女府にくるサキも、言葉使いはぶっきらぼうだが、ロウにはしおらしいし、結構、甘えたりする。
だが、いまは、凄まじい殺気であり、信じられないくらいに怖い。
本当に、サキ?
いや、そもそも、いまの話だと、こいつらの目的は、シャーラをロウに差し出すこと?
そうだとすれば、なんという馬鹿馬鹿しい……。
なんか、張り詰めていた気が一気に抜ける。
「……しかも、なんで、アネルザ殿下までここに?」
わけがわからなくて訊ねた。
とてもじゃないが、思考が追いつかない。
「まあ、話せばややこしいんだけどね。つまりは、このサキがイザベラたちに付けていたはずの、このピカロとチャルタに連絡を取ろうとして、うまく取れず、それでサキが調べてたら、イザベラをまるで囚人のように閉じ込めているというだけじゃなく、あんたを監禁しているということがわかってね。それで大慌てで探しにきたというわけさ」
「えっ? わたしを探して?」
「ああ……。だけど、思いのほかてこずって、サキも何日もかかったらしくてね。それもあって、サキも苛ついてるのさ」
アネルザが苦笑しながら言った。
やっぱり、彼女たちは、サキとともに、国王の寵姫として知られているピカロとチャルタか……。
また、彼女たちは、自分たちの言葉通りサキュバスなのだろう。
そうなれば、やはり、十中八九、このふたりもロウの関係者だ。やっと、冷静になって思考できるようになったことで、頭が整理できてきた。
「すまない、シャーラ──。お前たちを見守れと、こつらに命じたのはわしだ。だが、なにをとち狂ったのか、こいつらは、お前を淫魔の技で憑りついて、隷属させようとしたのだ。身の程知らずにもな」
サキがシャーラではなく、ピカロとチャルタを睨みながら言った。
これが寵姫のサキ──?
まったく、宮廷にいるときとも違う……。ロウの前で抱かれるときとも違う……。
それはともかく、淫魔の技か……。
まあ、サキュバスだし……。
しかし、いつもながら、ロウの女の幅の広さには脅かされる。
それにしても、サキュバスか……
「まあ、察したと思うけど、このふたりも、ロウの眷属の魔族なんだよ。つまりは、ルードルフを見張らせるために、ロウが後宮に送り込んでたんだ。わたしが仲介したんだけどね……」
アネルザが苦笑しながら言った。
「はあ……。なんとなく理解しました……」
シャーラは溜め息をついた。
「お前ら、こいつの服や持ち物はどうした──。さっさと出さんか──」
サキが大喝した。
「ひっ」
「す、すぐに出すよ──」
次の瞬間、畳まれているシャーラの服が下着を含めて一式出現した。
旅の荷物もある。
武器もだ。
シャーラはとりあえず、武器を取り寄せ、さらに下着を掴む。
そして、服を身に着けていく。
「ねえ、このシャーラとサキ様って、知り合いなの?」
「そうと知ってたら、手を出さなかったよ。脱出しようとしたから捕まえて、ちょっとそのついでに、調教してロウ様に差し出そうとしただけなんだって」
「そうなんだよ。絶対に、ロウ様好みだと思うんだ。おれたちだって、ロウ様に、たまには誉められたいんだ」
「それがあほ垂れだと、言っておるのだ──」
またもや、サキがふたりのうちのひとりを蹴り飛ばした。
もの凄い勢いで背中を叩きつけられた彼女が床に跳ね返ってうつ伏せに倒れる。
すると、すっと鉄格子が消滅し、さらに壁まで溶けるように消えた。
シャーラは目を丸くした。
回りは、なにも存在しない真っ白い空間だったのだ。しかも、四方に太陽が存在している。
こんなことはあり得ない景色だ。
「な、なんで、そんなに怒るの? しっかりと見張ってたよ……。そりゃあ、なにかの手違いがあったみたいだけど……」
もうひとり残っていた女がおそるおそるという感じで言った。
「なんだとう――」
すると、またもやサキがその女を蹴り飛ばす。
その女も遠くに転がっていく。
「ふげえっ」
「ほがっ」
さっき蹴られて倒れている女にぶつかって、ふたりして奇声をあげた。
「わしが、お前たちに命令したのは、“見守れ”ということだ。見張れとは言っとらん。お前らがするべきだったのは、イザベラやこのシャーラにかしずくことだ。調教してどうする」
サキが怒鳴った。
ふたりは顔を蒼くした。
すると、アネルザがシャーラの耳に口を寄せる。
「……シャーラ、ここは、こいつらの準備している異空間を活用した檻のような空間の中だそうだよ……。お前を監禁するために、ピカロたちが自分たちの術で、お前を異空間に監禁してたんだ。そして、異空間越しにはなるけど、ここはイザベラたちのいる離宮のすぐそばの場所さ」
アネルザがささやく。
「異空間の檻? ああ、ロウ殿の亜空間のような……?」
もうなにが出てきても驚かない。
そういうものだと受けとめようと思った。
とにかく、話を整理すれば、よくわからないが、シャーラを襲って監禁したピカロとチャルタも、結局のところ、サキやアネルザと同じようロウの性奴隷なのだ。
だけど、まさか、ほかにも魔族、いや、サキュバスの性奴隷までいたとは……。
それにしても、そのサキュバスふたりがかりで、三日間を過ごし、さらにまともに性の相手をして、よくも正気でいられたものだと思う。
我ながら、唖然としてしまった。
「ね、ねえ、いい加減に教えてよ。どういうことなの? ぼくたちの性支配が通用しなかったのは、なにか理由があるの?」
「うん、でも、なんで、おれたちに、サキ様がそんなに怒っているのか、全然わかんないよ。それに、こいつって、全然、おれたちの技が通用しないんだ」
「それなりによがるし、絶頂もしてくれるんだけど、なにか冷静っていうか……。こんなの大したことないよって感じでさあ……」
「おれたちの性の技が通用しないなんて、なんなんだよ――」
ふたりが交互に言った。
すると、サキが殴り掛かりそうな仕草をしたので、ふたりがすっ飛んで後ろに避けた。
「わかった、教えてやる……。このシャーラがお前らごときの支配を受けつけなかったのは当たり前だ。シャーラは、すでに主殿の性奴隷だ。お前らの先輩だ──。そのシャーラを性支配しようということは、主殿の性奴隷を奪おうとするに等しい行為じゃ。わかったか──」
サキが大声を出した。
ピカロとチャルタが目を丸くしたのがわかった。
サキがシャーラを一瞥する。
「そういうわけだ……。まあ、今回のことは、ちょっとした行き違いじゃな。まあ、お互いの情報不足が招いた不幸な事故だ。……。こいつらは、間抜けにも、お前の顔を知らず、ちょっかいを出したということだ。代わりに謝ろう。すまん」
「い、いえ……。わたしも、おふたりのことは知らなかったですし……」
シャーラはそれだけを言った。
ロウに教えてもらってなかったとはいえ、同じ王宮内にいるロウの女をシャーラが知らなかったとは……。
これは、シャーラの落ち度でもあるだろう。
ロウも、もしも、シャーラが訊ねていれば、教えてくれた気もする。
「それはとにかく、こいつらのことについては、腹が煮え返っていると思うが、これらには、まださせないとならんことがある。悪いが殺すわけにはいかん。腕の一本か、脚の一本で勘弁してやってくれ……」
そして、サキが視線をふたりに戻した。
「お前ら、ちょっと来い──。四本のうち、斬り飛ばしていいのはどれだ。自分で選べ。一本くらいなくても、性技に変わりあるまい。ほら、出せ──」
サキが言うと、その手に突然に大鎌が出現した。
ピカロたちが蒼い顔で震えだす。
しかし、泣きそうな顔でサキに近づき、それぞれに、腕と脚を出した。
「ぼ、ぼくは左腕……」
「おれは右脚でいい……。で、でも。サキ様、ロウ様への取り成しは、サキ様からもお願いします……」
「おう、任せておけ。じゃあ、歯を喰いしばれ」
サキが大鎌を振りあげた。
シャーラは慌てて、前に出た。
「うわあっ、待って、待ってよ──。も、もういい──。許す。許します──。そんなことしなくていいですから──」
叫んだ。
サキの大鎌がピカロたちの直前で静止する。
「ほう、いいのか? 遠慮はいらんぞ。どうせ切断しても、しばらくすれば生える。それが魔族だ」
「なおさら、結構です。もういいですから、サキ様」
シャーラは嘆息しながら言った。
「ごめんなさい、シャーラ様」
「そして、ありがとうございます」
ピカロとチャルタがその場で土下座をした。
シャーラはなんだか苦笑してしまった。
「ああ、そうか、わかった――」
すると、突然にふたりのうちのひとりが顔をあげだ。
「どうしたのさ、ピカロ?」
もうひとりが声をあげた少女に視線を向ける。
「ほら、あれだよ。このシャーラ先輩が興奮すると浮かぶ下腹部の紋様だよ――。どっかで見たと思ったら、ほら、サキ様が縄で自慰をしてたとき、同じものがサキ様にも浮かんでたじゃないか――」
次の瞬間、ピカロという少女の姿が視界から消滅した。
なにが起きたかわからなかったが、しばらくして、どさりという音とともに、そのピカロが上から降ってきた。
「うわっ」
「えっ?」
「なんだい?」
横にいたもうひとりのサキュバス……チャルタか? そのチャルタだけじゃなく、シャーラもアネルザも驚いて声をあげた。
見ると、サキが真っ赤な顔で息を荒げている。
シャーラは思った……。これは相当に怒っている……。
あまりもの怒りで、サキの眼に薄っらと涙が浮かんでいるくらいだ。
そして、もしかして、いまサキがピカロを真上に蹴飛ばした?
しかし、シャーラにはなにも見えなかった。
当人のピカロは完全に白眼を剥いている。しかも、首がちょっとあり得ない方向に曲がってる。
死んでるのかと疑ったが息はしていた。
人間族の少女の外観だが、やはり魔族なのだと思った。人間なら絶対に即死している……。
「い、いまのこいつの言葉について、なにかを喋ったら、誰であろうと容赦せん……。誰であろうともだ……」
サキがぼそりと言った。
シャーラは危険なものを感じて口を閉ざした。アネルザでさえも黙っている。
しばらくの沈黙があり、サキが息が整うほどには興奮が収まったみたいになる。
サキがピカロに魔道をかけた。
すると、ピカロの眼が開く。首の角度も治った。
ピカロは、わけがわからない感じだが、すごい形相でサキが睨んでいるのに気がつき、顔を蒼くして慌てた様子で口をつぐむ仕草をした。
もういい……。
いまの一件は忘れよう。命の危険を感じる。
一方で、シャーラはふと思い出した。
「そうだ。映録球──。あれを出して──」
シャーラの恥ずかしい姿が大量に映っている記録だ。
あれを取りあげないと……。
「は、はい、先輩……」
「どうぞ。シャーラ様の恥ずかしい映録球です」
ピカロたシャーラのふたりが魔道で、シャーラの目の前にずらりと映録球が出現させた。
ピカロも何事もなかった態度だ。
それはともかく、映録球は二十個以上はあるだろう。
シャーラはそれを荷に入れようとした。
しかし、その前に、まるで宙に溶けるように、全部消えてしまった。
「ほう、恥ずかしい姿だと? 面白いことを言ったな。だったら、わしが預かろう。主殿に渡せば喜んでくれるかもだな。いい土産だ。わしを誉めてくれるかもしれん」
サキが言った。
シャーラはびっくりした。
「な、なに言ってんのよ──。冗談じゃないわ──」
絶叫した。
あんな恥ずかしいものをロウに渡されて堪るものか──。
「ああん? わしに言ったのか?」
サキが険しい顔をして振り返った。
身体が戦慄が走る。
これは逆らってはならない。
シャーラは本能で悟った。
この瞬間、シャーラは映録球の回収を諦めた。
「ははは、まあ、ロウ以外には渡らん。心配するな。あの男のことだ。悪用はせんよ。せいぜい、全員の前で上映会をするくらいの悪戯をする程度だろうさ」
アネルザが横から笑い声をあげた。
「そ、それが嫌なんです、殿下──」
シャーラは叫んでしまった。
「ねえ、あたしたちが、性奴隷として、お仕えするロウ様という主様はどなたですか、サキ様?」
そのとき、ずっと静かにしていた童女のような子が言った。
だが、この童女もまた、見た目通りの存在ではないだろう。
おそらく、彼女も魔族だ。
だが、いま、性奴隷とか言ったか?
「おう、ここにはおらんのだ、スカンダ。約束はまた今度な。だが、この人たちは、“ロウ様”の大切な者たちだ……。ところで、お前ら――」
サキが童女の妖魔に優しげに語りかけると、今度は一転して、ピカロとチャルタに険しい顔を向ける。
「はい――」
「はいっ」
ピカロとチャルタがその場で直立不動の態勢になる。ふたりとも、まだ全裸のままだ。
「新しい任務だ。ピカロについては王都に行け。王都にいる二公爵の屋敷に行くのだ。公爵の私軍の傭兵を抑えろ。必要なら家人も支配に置け。とにかく、公爵の動かせる私軍の主立つ者を全員を喰って、支配しろ。男だけでなく、女もじゃ──。三日以内だぞ」
「了解──」
少女たちのうちひとりが元気よく立ちあがった。こっちはピカロだ。
次の瞬間、背中に大きな黒い羽根が生えた。乳房と腰にも黒い革の下着のようなものが出現する。
シャーラは目を丸くした。
ところで、喰えって、二公爵の私軍を?
王族であるグリムーン公とランカスター公のことか?
なにをするつもり?
「そのあとは王軍だ。いまは、テレーズという小者が闇魔道で支配してるが、快楽堕ちさせて支配を取り戻せ」
テレーズが闇魔道?
もうなにがなんだか……。
とにかく、あとでしっかりと訊こう……。
「じゃあ、早速──」
すると、さっと周りの景色が一変した。
周囲が草木に囲まれ、陽射しとともに、風が肌に当たる。
異空間の檻から出たようだ。
どこだと思っていたが、離宮のある場所からそれほど離れていない山の中だ。
ピカロたちに捕らわれた場所からも随分と離宮側に戻されていたようだ。
「抜かるなよ、ピカロ。それと、公爵の私兵の掌握は急げ。三日だ。それと、理由があって、わしは積極的に指示を与えられん。王都に戻ったら、なるべくわしには接触するな。ラポルタという女魔族がいる。そっちと連携せよ。後は裁量で動け」
自分に接触するなというのは不思議な指示だとも感じたが、魔族のやり方というのはわからないし、とりあえず、シャーラは黙っていた。
「がってんだよ――。それと、王軍の将軍喰いも含めて、二日でいい。この異空間の檻を使うよ。時間の流れも調製できるからね」
ピカロが空に舞いあがった。
そのまま、風に溶けるように姿が見えなくなる。
「ねえ、お姉ちゃん、よろしくお願いします。お姉ちゃんも、主様の大切な方なのですよね?」
すると、童女がにこにこしながら、シャーラに言った。とりあえず。シャーラは「よろしくね」と声をかけた。
「
アネルザが教えてくれた
「そうなのですね……。じゃあ、改めてよろしく、スカンダ」
「あい、お姉ちゃん」
スカンダが元気に返事をする。
「ところで、いま、ロウ殿の性奴隷になるだとか、旦那様だとか言った?」
もしかして聞き間違いではないかと思ったのだ。
妖魔とはいえ、いくらなんでも、こんなに幼い童女を……。
「それが、このスカンダが出したわしの眷属になる条件だからな。だが、こう見えても、こいつは百歳は超えておるぞ。知能は見た目通りだが……。なあ、スカンダ、わしらの主殿に犯してもらうのだろう?」
サキが童女妖魔に視線を向ける。
すると、童女妖魔がにいっと微笑んだ。
「うん。とても気持ちがいいって言うからね……。スカンダは楽しみ」
スカンダという妖魔が嬉しそうに笑った。
シャーラは唖然とした。
「ねえねえ、サキ様──。おれは、おれは? おれの任務は?」
すると、シャーラを襲った少女のひとりがサキに詰め寄った。
名はチャルタだったか?
「お前はまずは、イザベラを閉じ込めている将軍の軍をなんとかしてこい。そもそも、お前らは、イザベラたちを監禁するために、一緒に行かせたのではないぞ。まさかとは思うが、お前らのことだから、将軍を始め一緒に行った軍の連中を喰い続けて、王太女にも会っておらんのじゃないか?」
「ええっ? だって、王様はそう言ってたらしいよ。どこにも行かすなって──。そして、閉じ込めて、誰にも会わせるなって。ライスがそう話したんだ」
ライスというのは、イザベラたちを監禁している将軍だ。
「お前らの主人はわしだ。そして、主殿じゃ──」
チャルタが蹴飛ばされた。
悲鳴をあげて転がっていく。
それにしても、サキは、見た目は美貌の淑女なのに、さっきから、もの凄い迫力だ。
ところで、いままでの物言いによれば、彼女たちはサキュバスの能力で人間族たちを性支配できるような気配だ。
そして、どうやら、イザベラやシャーラを連行するように連れてきた、あのライスの隊も支配下に置いていたようである。
だが、考えてみれば、シャーラが上級官吏の者だと思い込んでいた馬車が一台あった。
そこにひっきりなしに将軍をはじめ、軍の将校たちが出入りしていた記憶があるが、もしかして、その中でやっていたのは……。
「とにかく、王太女の監禁状態は解かせろ。離宮から離れん限り、自由にさせるがいい。ただし、王都には指示の通りに閉じ込めていると報告させておけ。それから、わしらは明日には王太女のところに行く。だから、警備の将軍は王太女の完全支配にせよ。アネルザがやって来たことは、秘密中の秘密だ。こいつは、王都の監獄塔で収監されていることになっておるのだ」
サキが言った。
シャーラはびっくりした。
「監獄塔? 王妃殿下が?」
さっきから、わけのわからないことばかりだ。
そもそも、王妃と国王の寵姫が揃って、どうしてこんなところに?
「事情は後で詳しく説明するよ。まあ、手短にいえば、わたしたちは叛乱を起こすのさ」
アネルザがシャーラに言った。
叛乱?
叛乱って、言った?
もうなにがなんだかわからない。
さっきから驚き過ぎて言葉がない。
「そして、これは、ルードルフが使者を使って、イザベラとアンに手渡そうとした書簡だ。ついでに、それを横取りして、わたしらが持ってきたということだ……」
アネルザが封印を外してしまっている王からの手紙をシャーラに渡した。
公的な文書ではなく私信だ。
シャーラは、中身を出して読み進めた。
「ええっ?」
しかし、途中まで読んで、シャーラは大きな声をあげてしまった。
「いずれにせよ、アネルザ、ノール城行きは一日待て……。そのあいだに、チャルタが向こうの状況を整える。ライスとかいう人間族の将軍を支配させぬうちに、お前をノール城には連れてはいけん。王都に王妃の存在を通報されては面倒だ。昨日の宿場町に戻るぞ。とにかく、一日待機だ」
「仕方ないねえ。イザベラとアンの顔を早く見たいんだけどねえ」
アネルザが笑った。
「一日だけだ。あいつらは逃げん……。ところで、チャルタ──。一日のうちに、ノール城を完全に王太女の支配に変えておけ。できんかったら、今度は誰がとめても、お前の両腕を肩から、わしがもいでしまうからな──」
「わかりました、サキ様──」
チャルタという少女魔族が姿を消した。こっちは裸体のままいなくなった。
シャーラは唖然としていた。
「ところで、シャーラ、お前はアネルザの護衛だ。わけがあって、わしは、アネルザにはずっとついてはおれん。そのあいだ、こいつの身を守れ。スカンダ、わしの代わりに、アネルザをさっきの宿場町に連れていけ」
嫌も応もなかった。
その言葉を終えるとともに、サキはさっと姿を消してしまったのだ。
後には、シャーラとアネルザとスカンダという童女妖魔だけが残された。
「やれやれ、
アネルザも目を丸くしている。
「では、サキ様に言われた宿場町に行きますね。スカンダに掴まってください」
すると、スカンダが短い腕を伸ばして、左右の手でアネルザとシャーラの手をぎゅっと掴んだ。