【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
イットは困惑していた。
新しい「主人」らしきロウの命令で、エリカというエルフ族の女性と「下着脱がし」というものをやることになったのだ。
そんな勝負をさせられるなど意味不明だが、もっと手酷い扱いを受けた経験はたくさんある。
それが性奴隷というものだ。
最初の主人の時代には、大勢の見物人の前で小便をしながら、片脚を交互にあげながら四つん這いであるくことを「命令」されたこともあるし、獣人など人間ではないという主張のために、城郭の大通りを“私は動物です”と書かれた看板を持たされて、全裸で歩かされたこともある。首輪をつけられて屋敷の外を裸で四つん這いで歩くなど日常のことだった。
それに比べれば、下着脱がしの遊びなど、優しい仕打ちだ。
第一、下着を脱がされるのはイットではなく、イットと対決をするエリカという大変に美しいエルフ族の女性だ。
これからやろうとしているのは、イットとエリカが対決して、イットがエリカの下着を強引にはぎとり、エリカはそれを阻止するという「対決」なのだ。
そんなことやっていいのかわからないが、奴隷であるイットには、命令をされれば、それに従うしかない。
もっとも、ロウの言葉によれば、すでにイットは奴隷解放されているみたいだ。
半信半疑であるものの、確かに奴隷の首輪は外れてしまったし、誰かに隷属をされているという感覚はない。
また、ロウという新しい「主人」と、周りの女たちの関係も、薄々だが理解してきた。
彼女たちは、自分たちのことをロウの「性奴隷」だと口にするものの、それはイットが考えている「性奴隷」ではないのだ。
ロウの女たちは、愛人とか、恋人という意味で「性奴隷」という言葉を使っていて、イットもまた、そういう関係になることを求められているということみたいだ。
いずれにしても、ロウがやれというのであれば、イットには逆らうつもりはない。
とにかく、それで、馬車から降りてきた。
馬車を降りることで改めてわかったが、馬車が停まっているのは、往路でも立ち寄った森の中の河原だ。
遠くにはアンドレの隊商の馬車が並んで宿営しているのが見える。
ただ、対決のために、イットとエリカが向き合うことになったのは、こちらの馬車によって、向こうからは陰になる場所である。
いずれにしても、これだけ離れていれば、向こうからはこちらの様子は見えないだろう。
もっとも、獣人族のイットには、距離があっても、ある程度の景色はわかる。
ちらりとだが、向こう側を見る限りにおいて、いつものように五台の馬車を中心にして、露営のためのテントを張ったりしている。
アリアたちは食事の支度だ。
大鍋に料理を作り、それをアンドレを始めとして、一緒に同行している商人の人や護衛の人たちに配るのだ。
イットたち奴隷女の食事は全ての人たちの食事が終わった残りを食べるということになっている。
それが終われば、五人のうちから、ひとりが呼ばれて、アンドレの夜の相手だ。
ほかは片づけをしてから、身体の手入れをして寝る。
本来は、イットもそれに加わっているはずだった。
しかし、今夜からは、イットたちの横で笑みを浮かべているロウという人間族の男の人に仕えることになったらしい。
あの
もっとも、イットには詳しいやり取りのことはわからない。
ただ、
それは覚えている。
しかし、この新しい主人のロウは、殺されかけていたイットを引き取ってくれただけではなく、その呪いも解呪してくれたのだという。
どうして、そんなことをしてくれたのかわからないが、いまのところ、純粋な義侠心という感じだ。
それどころか、このロウは、イットを奴隷解放すると言い、実際に、すでに奴隷から解放されてしまったらしい。
とても本当のこととは思えないが、首の首輪はなくなっているし、少なくとも、あの前の主人のアンドレに対する恐怖心や服従心のようなものが消滅していることだけは確かだ。
それは、わかる。
でも、新しいご主人様……?
アンドレやその前の主人のトルドイに対してもそうだったし、奴隷商に支配を刻まれていたときも同じだったが、イットの心には、いつも「主人」に対する激しい恐怖心と強い服従心が存在していた。
実際のところ、いまは、それはない……。
それだけじゃなく、このロウの「命令」が、命令という心地にならない。
その気になれば、拒否することもできる……?
まさかとは思うが、すでに奴隷を解放された状態になっているというのは、本当のことと思うしかない……。
そもそも、ロウは怖くはない……。
むしろ……。
とにかく、イットはとても混乱していた。
まあ、とにかく、このロウという「ご主人様」が、とても変わり者だということだけは確かだろう。
そして、不思議な術を遣う人だ。
まだ記憶が曖昧で、すべてが夢の中のように、ぼんやりとしているのだけれど、このロウに抱かれて、死ぬほどに気持ちよかったことは、はっきりと身体に刻まれてしまった。
これまで、性奴隷としてありとあらゆることをさせられ、何人もの性の相手をしたが、あれだけ一方的に快感だけを与えられたのは、生まれて初めてだと思う。
しかも、抱かれたときの記憶によれば、このロウは、自分が気持ちよくなるよりも、イットが激しすぎる快感に悲鳴をあげ続けるのを眺めるのが好きそうな感じだった。
変な人だ……。
粘性体という不可思議な能力を駆使するのだが、実は、なによりも指がすごい……。
アンドレの「命令」が効いていて、ロウがイットを抱こうとしたとき、イットは本気の抵抗をしたが、ロウに身体のどこかを触られるだけで腰が砕けた。
身体に痺れが走り、全身が快感で脱力した。
挿入されたときも、なにかをされたという感じにもならなかった。
もちろん、充実感も圧迫感も覚えたが、それよりも、あの一体感が凄まじかった。
まるで、快感そのものに抱かれているかのようにどうしようもなく反応してしまい、その結果、繰り返して絶頂して果てた……。
なんなのだろう……。
この新しい「ご主人様」は……?
「ロ、ロウ様、なんで、そんなことしなくっちゃならないんですか──。わたしはやりませんからね──」
一緒に馬車から降りてきたわりには、エリカはまだ真っ赤な顔でロウに怒鳴っている。
最初は、イット同様に奴隷身分なのかと思っていたエリカだが、どうやら恋人だとわかった。
エリカだけでなく、馬車の外で見張りや食事の支度をしているらしい貴族のシャングリアや、気さくな感じのコゼ、イットよりも歳下だが高位魔道士のミウも、実際には奴隷ではないようだ。
ここにはいないマーズや、イライジャという女性についてはわからないが、奴隷ではないのだろう。
なんとなく、それはわかる。
つまり、ロウの周りにいる女性は、みんな恋人であり、あるいは、愛人なのだ。
新しいご主人様、すなわち、ロウはクロノスということだ。
また、おそらく、そんな風には見えないが、貴族なのだろう。
いずれにしても、イットが対等に口をきいてもいい相手ではないような気がする。
その恋人や愛人の方々も同じだ。
態度には気をつけなければ……。
もっとも、まだ、ほんの少しだが、一緒に過ごしていると、堅苦しくしているのが難しいくらいに、みんなが仲がいい。
ロウは、とても好色そうだが、エリカもミウもとても慕っているのは、横にいてもわかる。
そして、獣人であるイットに対する態度も誰ひとりとして、上から見るようなものではないし自然体だ。
唯一、一番奴隷だと自己紹介したエリカだけが、ときどき険しい視線でイットを睨むようにしてくることもあるが、そのエリカだって、イットがアンドレに殺処分されそうになったことはとても怒ってくれていた。
みんな優しいのだ。
イットは、後にも先にも、こんなにも、獣人族のイットに対して、穏やかな感情をぶつけてくる集団の中に入ったことがない。
だから、気を抜くと、どうしても心が緩んでしまいそうになるのだ。
イットごとき獣人が、彼女たちと同じ態度をしたら、あっという間に周りが不機嫌になるのはわかっているので気をつけているが……。
「ねえ、聞いているのですか、ロウ様? わたしはやらないといっているんですからね」
エリカが怒鳴っている。
一応は腰に剣をさげているが、エリカには、イットと戦う気配はない。
もっとも、ロウが口にした「下着脱がし」というものが、「戦い」と呼べるものであればの話だが……。
「何事だ?」
馬車の下で三人で向き合っていると、ちょっと離れた場所からシャングリアがやってきた。
この人間族の女性もロウの恋人だ。
最初に自ら「性奴隷」だと名乗ったから大混乱したが、つまりは、このロウが大好きだという意味だったようだ。
れっきとした貴族であり、イットからすれば、雲の上の人物のように感じる。
「ああ、シャングリアか……。イットが俺の性奴隷になったことで強くなった。それで、実際に、模擬の戦いをして試してみたいと思ってな。だから、エリカに相手を頼んだんだが、断られているところだ」
ロウがにやにやしながら言った。
すると、シャングリアが首を傾げた。
それはともかく、やっぱり、自分は「奴隷」なのだろうか……。
いま、ロウは、イットのことを「奴隷」と呼び直した……。
「そんなことくらいやってやればいいじゃないか、エリカ。怪我をしても、ロウもいるし、ミウもいる。それに、これからは、一緒に並んで戦うことになるかもしれない仲間だ。イットの腕を知っておくのは必要だ」
シャングリアがエリカを諭すように言った。
イットが仲間──?
何気無い言葉だが、あっさりとシャングリアがそう口にした。
イットは驚いた。
「だったら、あんたがやりなさいよ。下着脱がしだそうよ。お互いに、下着を取り合うの」
エリカがむっとした顔で言った。
「下着脱がし──?」
シャングリアが目を丸くしている。
それにしても、エリカにしても、ロウにしていも、シャングリアがイットのことを「仲間」だと口にしたことを変に思っていない気配だ。
イットは、さらに混乱した。
「殺し合うよりはいいだろう? 構わないから、エリカとシャングリアのふたりがかりでやってみろよ。もしも、イットに勝てたら、なんでもいうことをきいてやるよ……。そうだな……。ちょうど、イットから外した『奴隷の首輪』がある。それに淫魔の能力で、支配の呪術を込め直すとともに、一日だけ外れないようにして、俺の首につけてやる。お前たち、ふたりを主人と認識させてな」
ロウが笑った。
奴隷の首輪というものは、そんなに自由自在に呪術を解除したり、付け直したりできるものではないはずだが、このロウなら、できそうな気もする。
ただ、もっと驚いたのは、エリカとシャングリアの反応だ。
ロウの言葉に、明らかに目の色が変わったのだ。
まるで、血に飢えた獣……。
喩えは悪いが、そんな雰囲気だ。
イットは、なんだか気後れする心地を覚えて、口の中に溜まった唾を飲み込んだ。
「ほ、本当ですね、ロウ様……。いつぞやのように、やっぱり、やめたなんてことないですよね」
「そうだ、ロウ──。信用できないぞ。本当に本当だな──?」
エリカとシャングリアだ。
気のせいか、鼻息が荒い。
いや、気のせいじゃないようだが……。
「お前ら、随分と前のことをねちっこく……。だから、奴隷の首輪をしてやると言っているだろう。そのあいだは、命令をされれば、淫魔の術でも反撃はできない。俺のことを自由にできるぞ。しかも、ふたりがかりだ。お前らも戦士の端くれなら、模擬戦くらいで怖気づくなよ」
ロウがにやにやしている。
一方で、エリカとシャングリアは、お互いに顔を見合わせている。
そして、どちらともなく頷き合った。
「わかりました……。やります。その代わり、ロウ様も、約束は守ってくださいね」
「イット、やるからには手加減はなしだ。遠慮なく来い。怪我をしても治療ができる魔道遣いがいる。問題ない」
エリカとシャングリアが、イットに殺気を向けたのがわかった。
あれは、紛れもなく戦士の眼だ。
お互いに下着を取り合う勝負ということだったが、このふたりの剣技が相当のものだというのは身のこなしだけでわかるので、そんな相手と戦えるのは、純粋に嬉しい。
もっとも、シャングリアは、模擬戦で負傷をしても、魔道で治療ができるということを口にしたが、本当にそうなのだろうか……?
生まれつき魔道を跳ね返す性質を持っているイットには、あらゆる治療術や治療薬の類いが効かないのだ。
しかし、ロウやミウに、治療術をかけられて、全身を噛まれて死にかけていたほどの負傷が消滅している。
奴隷解放だけでなく、
まあいい……。
とにかく、模擬戦だ。
イットは気合を入れることにした。
「よろしくお願いします」
イットは、エリカとシャングリアに静かに頭をさげた。
顔をあげたときには、両手の指から十本の長い爪が突き出ている。
イットの武器は、戦闘のときに、指から突き出すように生えるこの刃物のような爪だ。
エリカとシャングリアがイットとの距離を取ってから、さっと剣を抜く。
「ほう、確か、それはガロイン族だな?」
シャングリアが剣を構えたまま呟いた。
よく知っていると思った。
「なにをなさっているのですか、皆さま? 食事の支度ができましたけど……」
ミウの声だ。
ちらりと視線を送る。
可愛らしい桃色の前掛けをしている。
華奢な身体つきに、とてもお似合いの姿だと思った。
「決闘?」
また、ミウの隣に立っているコゼが微笑みながら言ったのがわかった。
「お前らも準備をしておけよ。ふたりが負けたら、今度はコゼとミウが相手をするんだ。“どっちが下着を剥ぎ取れるでしょう勝負”だ」
ロウが笑いながら言った。
ちらりと視線をやると、ふたりとも当惑して、目を白黒させている。
「もらった──」
声がした。
気がつくと、シャングリアが目の前にいた。
剣の腹が胴に迫っている。
よそ見をしたのは一瞬だが、その隙だけで、こんなにも間合いを詰めてきたのだ。
しかも、速い──。
「おっと」
だが、間に合わないと思った剣は、いつまでもやってこない。
いや、向かってきているのだが、それはイット自身の爪で完全に受けとめている。
ほとんど、無意識の反応であり、イット自身がびっくりだ。
「えっ?」
剣を爪で挟んだまま、軽く身体を捻ると、シャングリアが呆気ないくらいに簡単に、体勢を崩して倒れていった。
そのまま、剣を挟んでいる手を円を描くように動かす。
シャングリアの身体は、地面の上で物の見事にくるりと回転するかたちになった。
そして、腰が空を向いたとき、スカートが捲くれあがったシャングリアの下着の横に反対の手の爪を引っ掛けた。
シャングリアは、イットの爪に千切れた下着を残したまま、そのまま転がっていった。
なに、これ──?
イットは驚愕した。
身体が軽い……。
それだけじゃなく、ほとんど意識をしないままに動く身体は、信じられないくらいの鋭さで、相手の攻撃に対応できている。
たったいまのシャングリアの斬撃が、尋常なものでないことはわかった。
それにもかかわらず、イットは、そのシャングリアの攻撃を簡単にさばき、それどころか、一瞬にして下着を奪うという芸当さえやってのけた。
こんなに素早く動ける自分の身体が、本当に信じられない。
「シャングリアは脱落だ」
ロウが高らかに笑った。
「やるわねえ……」
エリカの細剣──。
イットは身体を向け直して受けようとした。
だが、エリカも剣を振っているが、まだ遠い──。
そう思ったのは一瞬だけだ。
エリカの剣が振り下ろされて、目の前に火の玉があった。
少なくとも十個──。
魔道か──。
魔道と剣技を組み合わせる魔道戦士──。
考えるよりも速く、身体が動く──。
イットには、魔道の火炎など目眩まし以上の効果はないが、それでも、向かってくる火の玉のすべてを爪で斬り飛ばした。
魔道の火の玉を追いかけるように、エリカ自身がイットに斬りかかる。
イットは、エリカの股のあいだを滑るように突き抜けた。
「うわっ」
エリカの後ろで体勢を取り直したときには、イットの爪にはエリカの下着がぶらさがっていた。
「きゃあああ」
エリカが剣を取り落して、両手でスカートの裾を押さえて、しゃがみ込んでしまった。
どうやら、勝ったようだが、イット自身も信じられない気持ちだ。
こんなに風のように速く動けるなど、とても信じられない。
「勝負あった──。よくやったぞ、イット」
ロウだ。
いつの間にかそばにいて、イットの爪に引っかかっていた二枚の下着をひょいと取りあげた。
「こっちのびしょびしょの下着がエリカのものだな。こっちはシャングリアか……? どれ、点検してやろう」
ロウが二枚の下着の匂いを嗅ぐように自分の鼻に近づけた。
そうしたくてそうしているという気配ではなく、わざとからかっている感じだ。
「いやあ、やめてください、そんなことをするのは──」
エリカが悲鳴をとともに、ロウ駆け寄っていく。
その顔は真っ赤だ。
「駄目だ。これは負けた罰だ。明日の朝まで馬車の前に飾ってやる。エリカの染み付きの下着をな。もちろん、シャングリアのものだ」
ロウが笑って、掴んでいる下着をロウから離すように手を伸ばす。
エリカは必死に奪い返そうとしているが、そのために、エリカはロウに抱きつくような体勢になった。
とても、仲がよさそうだし、失礼だが、微笑ましくさえ感じた。
同時に、なぜだかきゅんと胸が痛くなる心地も襲う。
「すごいなあ。まるで、子供扱いだった。完敗だ」
そのとき、すっと手が伸ばされた。
シャングリアだ。
短めのスカートの上に左手を置いて恥ずかしそうにしているが、右手でイットに握手を求めてきたのだ。
イットは恐縮してしまった。
「い、いえ……。そ、そんな……」
とりあえず、手を出す。
すると、シャングリアが手を握り返してきた。
イットは、少し驚いた。
見た目の艶やかとは反対に、握ってきたシャングリアの手は、たくさんの手豆があり、紛れもなく、長く修練を重ね続けた武骨な手だった。
「強いなあ……。だが、その強さの一部はロウからもらったものだ。それで、どうするのだ? このまま、一緒にロウに仕えるのか? それとも、故郷にでも帰るのか? ロウは、どっちにしても、お前の好きなようにさせる気のようだが……」
シャングリアがイットの手を握ったまま言った。
「何度か言われましたが、本当に本当に、本当のことなんですか? あたしを奴隷解放するなんて……」
「すでに、解放されているはずだぞ。ロウの精を受けた時点で、そうなるらしいのだ。いままでも、そうやって、解放奴隷にされた女が大勢いる」
シャングリアが手を離して、屈託のない笑い声をあげた。
精の力で奴隷解放……?
そういえば、そんなことを口にしていた気がするが……。
「もっとも、ロウから離れれば、その授かった力もなくなると思うけどな。まあ、好きにすればいい。仲間になるなら歓迎する」
「えっ?」
またまた、びっくりだ。
しかし、理解はできた。
さっき風のように動けたのが、イットの本来の力でないことは、さすがに認識した。
このロウは、抱いた女の能力を飛躍的に向上させるのか……。
信じられないが、そういえば、馬車の中でそんな風に教えられたような……。
「きゃあああ」
そのとき、またもやエリカの悲鳴がした。
しばらく、下着を挟んでロウとじゃれ合っていたと思ったが、ふと見ると、エリカは跪いた体勢のまま両手を後ろに持っていかれ、両手首を左右の足首に密着させられて、身体を反り返るような格好にさせられている。
エリカを拘束しているのは、不思議な粘性体だ。
そういえば、あれも確かロウの能力だった……。
不思議な空間でロウに犯されたとき、この粘性体の技でイットはロウにあっという間に無力化されてしまったのだ。
「そんなに下着を返して欲しければ……。そうだな。俺の舌責めに耐えられたら、飾るのは勘弁してやるよ。責めるのは胸だけだ。それで達しなかったら、これは返してやる。その代わり、もしも、呆気なく達したら、明日の朝までスカートもなしだ。そして、明日まで俺の玩具だな」
ロウがくすくすと笑いながら、抵抗できないエリカの服をたくしあげて、胸当てをしている乳房を剥き出しにする。
その胸当てもあっという間に取り去った。
エリカの大きめの胸が飛び出す。
それにしても、驚くような早業だった。
しかも、ロウは、エリカの前にしゃがみ込んで、その胸に本当に舌を這わせ始めた。
「んひいっ、はああっ、そ、そんなの……、ああああっ」
すると、あっという間にエリカは、身体を震わせて女の声を出し始めた。
やっぱり、このロウの愛撫はすさまじい……。
イットは、ただただ、圧倒されてしまっていた。
また、エリカの二つの乳首には、きらきらと光る指輪のようなものがある。それをロウは舌で刺激しているようだが、エリカは見ている側が恥ずかしくなるようなよがりぶりだ。
「あっ、どうか、玩具ならあたしを使ってください。どんなことでもしますから。大丈夫ですよ」
そのとき、今度はミウがそう言って、ロウに駆け寄っていった。
もう、なんだかわからない。
「だったら、あたしも勝負します。勝ったらご褒美ください」
コゼが言った。
「ミウとコゼは、まずはイットと勝負しろ。負ければ、俺の玩具だ。シャングリアは、こっちに来い。負けた罰を与えてやる。エリカと同じで胸責めの刑だ」
ロウがこっちを向いてった。
一方で、シャングリアは嘆息すると、諦めたように笑って、エリカとロウのところに向かっていく。
罰というが、なんだか満更でもなさそうな雰囲気だ。
エリカからして、ちっとも悲壮感のようなものはない。
「イットさんに負けたら、ロウ様の玩具なのですか? そんなことなくても、もちろん、あたしは、いつでも、どこでもロウ様に鬼畜に扱って欲しいです」
ミウがぷっと頬を膨らませた。
その横で、シャングリアが、自らエリカと同じ恰好になっている。
イットは、顔が真っ赤になるのがわかった。
エリカを責めながら、ロウはシャングリアの胸も剥き出しにして、四つの乳房を代わる代わるに、舐め始めたのだ。
ロウの舌が当たるたびに、ふたりともぶるぶると身体を震わせなる。
その様子があまりにも、淫靡で煽情的なので、イットはかっと身体が熱くなってしまった。
気がつくと、いつの間にか内股になって、自分の腿を擦りつけるようにしてしまっていた。
股間がぬるぬるする。
「ふふふ、勝っても負けても、ご主人様に抱いてもらえるなら、どうしていいのかわからないわね」
コゼがイットに近づいて来て笑った。
「イットに負けたら、気絶することも許さずに、鬼畜に抱き潰す。勝ったら、ご褒美に優しく抱く。そういうことだ」
ロウがちょっとだけ、エリカとシャングリアを責める口を休めて言った。
しかし、すぐにふたりの胸を責める態勢に戻る。
「ふう……。そういうことなら、お願いします、イットさん」
ミウが言った。
イットは慌てて、身体の前で腕を横に振った。
「あたしのことは、どうか呼び捨てにしてください、ミウ様」
とにかく、それだけを言った。
すると、ミウがくすくすと笑った。
「変なお方ですね。あなただって、おかしな呼び方であたしを呼ぶくせに……。なら、“ミウ様”なんて、呼ぶのなんてやめてください。誰のことを呼んだのかと、戸惑ってしまいます」
ミウがけらけらと笑った。
屈託のない幸せそうな笑顔に、イットはなんだか惹き込まれそうになる。
「だけど、さっきの戦いを見る限り、あたしに勝ち目はないかな。エリカとシャングリアがふたりがかりで手玉に取られるんなら、どっちにしたって負けね。とにかく、ルールを決めようか。あんたはスカートだけど、あたしは半ズボンだしね。どうする? あたしもズボンは脱ぐ?」
コゼがイットに言った。
そのときだった。
「んあああああ──」
背後で大きな悲鳴があがった。
イットは振り返った。
エリカが“胸いき”をしたのだ。
そのいやらしくも、美しい姿に、またまた股間が熱くなって、イットは、まとまった体液が自分の下着を濡らしたのを感じた。
しかも、続いてシャングリアも……。
「どうするの、イット? 勝負の方法は? だから、あたしもズボンは脱ぐ?」
コゼがちょっと大きな声で言った。
イットははっとした。
ちょっと見惚れてしまっていたみたいだ。
「い、いえ、わざわざ、そんなことをしなくても……。えっ?」
あっという間だった。
気がつくと、コゼの手がイットの貫頭衣の裾の中に入っていて、両脇を切断されてしまっていたのだ。
瞬間的な早技だ。
イットは完全に油断していた。
「うわっ」
すると、身体になにがが当たった気がした。
風魔道だ。
しかし、魔道的な作用は、イットには無効だ。
爆風的なもののようだが、すべてがイットを素通りする。ただ、服だけはぱたぱたと勢いよく弾く音がした。
「あっ、しまった」
イットは叫んだ。
いつの間にか、コゼに切断されてしまった下着が風でコゼとイットのあいだに飛んでいたのだ。
素早く、コゼがそれを拾いあげる。
「あたしの勝ちいいい──。ご主人様、あたしが勝ちましたよ──。さあ、エリカもシャングリアもどいて──。勝者の特権よ。今夜のご主人様はあたしのものよ──」
コゼが高らかに宣言をして、イットの下着を大きく掲げた。
イットは唖然とした。
「おっ、本当か──。よし──。じゃあ、コゼは来い。気絶するまで馬車の中で可愛がってやろう」
ロウが笑って、エリカとシャングリアから顔を離して言った。
「あ、あたしもです──。あたしも一緒ですよ。コゼ姉さん、自分だけみたいに言わないください」
ミウが大きな声で不平を叫んで、コゼとともにロウに駆け寄っていった。
*
「ただいま帰りました……けど、馬車の前に飾ってあるのはなによ、ロウ?」
イライジャだ。
乗ってきた馬から降りて、マーズとともに、こっちにやって来たが、開口一番に口にしたのがそれだった。
馬車の前には、五本の木の枝が刺してあって、その先端のそれぞれに、エリカとシャングリアとイット、そして、後から追加したコゼとミウの下着が先っぽに密着して飾ってあるのだ。
特に意味はないが、あまりにもエリカが恥ずかしがるので、下着剥がし勝負に負けた罰として、そうやっただけだ。
また、追加したコゼとミウの下着は、一郎との下着剥がし勝負の結果だ。
もっとも、一郎との勝負は性愛の中でのことであり、それぞれ下着を守らせて愛撫し、脱力して動けなくなったところをあっさりと剥がしたものだ。
まあ、ただの前戯だ。
とにかく、いまはもう夜中だろう。
馬車の前にいるのは一郎だけである。
小さな焚き火を前にして、石を椅子代わりに使っていた。
イットを含み、エリカたち全員は馬車の中にいる。
全員を完全に抱き潰した。
イットについては、さすがに手加減をしたが、朝まで起きない程度には、改めて抱かせてもらった。
それにしても、まさか、コゼがイットから下着を奪うことに成功するとは思わなかったが、とにかく、勝者の特権ということで、コゼとミウについては、徹底的に抱き潰した。
そのあいだ、エリカとシャングリアは、全裸待機で正座して見物だ。
あられもない姿を晒して、絶頂しまくるコゼとミウを前にして、おあずけをさせられているふたりはなかなかにして、艶っぽかった。
その結果、三ノスで、コゼとミウが完璧に気を失うと、一郎はやっとふたりを呼んで抱いてやった。
ふたりが意識を戻さなくなるまでに、一ノス程度しかかからなかった。
そのあいだ、イットについては、先に横になっていいと言ったのだが、さすがに女たちがあれだけ、騒がしく嬌声をあげ続けるのだから、とても寝れなかったみたいだ。
結局、イットについても抱いた。
そのとき、イットはこのまま、イットを一郎たちのパーティに加えて欲しいと言ってきた。
奴隷解放されても、自分は親に捨てられた存在であり、故郷に行き場はない。
それよりも、このまま、この集団ですごさせて欲しいと、イットは一郎に頭をさげたのだ。
一郎は、この集団は、単に一郎を中心とした冒険者パーティというだけでなく、ときには、さっきのように、仲間同士で破廉恥な乱痴気騒ぎもするし、変態的な性行為も日常である。それを受け入れる覚悟はあるのかと質問した。
それに対し、イットは、明確に大丈夫だと宣言した。
まあ、イットも、自分の目の前でほかの女たちが一郎に責められたリ、奉仕したりするのを目の当たりにしたのだ
この集団は、こんなものかと割り切ったのだろう。
そもそも、イットは、一郎の淫魔の支配を受け入れたことで、自分自身が絶句するほどの強さを手に入れた。
シャングリアなどから、その強さは、一郎を受け入れない限り、すぐに失うものだと説明されたらしいので、それも「覚悟」の理由になったようである。
いずれにしても、一郎は、もはや、イットが完全に、こっち側の女になったことを確信した。それは、ひそかに、イットの心の中の感情を読んだことでも裏付けられた。
もちろん、一郎は承知した。
そして、そのイットも連続絶頂で気を失い、ほかの女たちと同様に抱き潰した。
いずれにしても、全員が幌馬車の中にいて、全裸に毛布を掛けている状態だ。
一郎については、こうやって外でイライジャとマーズを待っていたというわけだ。
「これは、みんながはいていた下着だ。全員で下着脱がし勝負をしてね」
一郎は微笑んだ。
イライジャもマーズも怪訝な表情になる。
「相変わらず、おかしなことばかりして……。それにしても、全員を抱き潰したらだめでしょう。あなたひとりのときに、なにかあったらどうするのよ」
イライジャは呆れたように溜息をついた。
「一応、エリカとミウに防護結界を刻んでもらっている……。問題ないさ」
「イライジャさん、包みをここに……」
マーズが声をかけてきた。
また、小さな紙包みを持っている。
「その包みは?」
一郎は訊ねた。
「あの娘の服よ。ちょうど、可愛いのが里の店先にあったの。尻尾の穴と胸の調整は、明日の朝、簡単にできるわ。少しでも可愛くしてから、アンドレに会わせましょうよ」
イライジャが笑った。
「じゃあ、あたしは馬の世話をしてきます」
マーズが言った。
イライジャが返事をすると、イライジャが乗っていた馬を含めて二頭の世話をするために、マーズが離れていく。
「それで、どうだったんだ、イライジャ? あの男のことは少しはわかったかい?」
一郎は訊ねた。
ふたりに頼んだことのひとつは、アンドレという旅の商人の評判を訊ねるためだ。
イライジャの顔が効く商業ギルドの支部があり、そこなら情報が得られるかもしれないということで、行ってもらっていたのだ。
マーズはイライジャの護衛だ。
馬に乗れるということで、イライジャとの同行を頼んだのだ。
ほかにも、頼んだことはあったが、まずは、どんな男であるかということを知りたい。
「まあ、やり手の商人だということはわかったわね。やり手といっても、悪名の方ね……。表では一介の旅の商人だけど、裏では金のためなら、かなりの汚いこともやるようね。とにかく、遠慮のいらない相手だということもわかったわ」
イライジャが焚き火を挟んで一郎の前に座りながら言った。
そして、アンドレという男の悪党ぶりを説明し始める。
イットの話だけでは、奴隷扱いは冷たいようだが、まあ、商人としては常識的な人間という感じだったので、イライジャの口から出てくる裏の顔というものが意外だった。
「へえ……」
一郎は生返事をした。
ちょっと驚いていたのだ。
確かに、情報は頼んだが、実際のところ、アンドレの関する情報については、そんなに期待はしていなかった。
ふたりが向かったのは商業ギルドとはいっても、ナタルの森の中にあるエルフ族の里の中にある小さな支部だ。
この界隈ではなく、手広くローム三公国で交易をしているような男の評判が簡単に入手できるとは思わなかった。
「ふふふ……。びっくりした? 実は、この話は、直接にあの男の部下から白状させたのよ。マーズに締めあげてもらってから、たまたま持っていた暗示剤を嗅がせてね……。もちろん、わたしたちのことは覚えていないわ。完全に忘れさせたので大丈夫よ」
イライジャがくすくすと笑った。
たまたま、暗示剤を持っていた?
一郎はイライジャの言い分に苦笑した。
それはともかく、アンドレもまた、その里に部下を向かわせていたのか……。
「あいつの部下をエルフの里で捕まえたのか?」
「あんたのことを調べようとしていたらしいわね。それで逆に捕まえさせたのよ……。それだけじゃなく、あんたのことも吹き込んだわ……。薬で操って記憶させたんだけど、あの部下は、自分で集めた情報だと思い込んでいるはずよ。それをアンドレに報告するんでしょうね……」
「……それで、俺についてはどんな評判を吹き込んだんだ、イライジャ?」
一郎は訊ねた。
すると、イライジャがにやりと笑った。
「……ちょろい男だと。世間知らずの道楽男で、護衛女を性奴隷のようにはべらかして、いっぱしの冒険者ぶっている弱い男だと伝えたわ。手を出しても、係累なんかない成りあがり者だとね」
イライジャが言った。
一郎は笑ってしまった。
「なんだ、嘘を教えたのかと思ったら、その通りの事実じゃないか。世間知らずだし、俺は、みんなに守られているだけの弱い男だ。成りあがり者だというのも当たっているな」
一郎は爆笑した。
しかし、イライジャは溜息をついただけだ。
「自覚ないのね。あなたは大物よ。すでにね」
そして、イライジャが苦笑したような表情を顔に浮かべた。