【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
一月中は多忙なのですが、数話程度は投稿できると思います。
逐次にあげますので、引き続きよろしくお願いします。
*
360 夢の中で
夢を見ていた。
イットは、素っ裸で膝を真っ直ぐにしたまま、両手を床につける姿勢をとらされており、その姿勢が崩せないように、『奴隷の首輪』で命令をされているだけでなく、手錠や手枷で物理的にも拘束をされていた。
どうやら、カロリック公国の分限者で性虐待用の奴隷として飼われていた時代に記憶だ。
いまのイットは、もう十五歳であるが、夢の中のイットは、あの頃と同じ十一歳の身体に戻っていた。
とにかく、極端な前屈の姿勢を保持しているイットの後ろには、椅子に座るイットの飼い主の老人がいて、さらに周りには、着飾った男女が酒を飲んでいるという状況だ。
これは、幾度も経験をさせられた小宴会における余興の一幕だとわかった。
イットの飼い主は、極端な獣人差別主義者であり、獣人とは生まれながらの奴隷種族だという主張を兼ねて、こういう性宴を催すことを習慣にしていた。
やらされるイットからすれば、血も凍るような屈辱だったが、こうやって侮辱し、辱めることで、彼らは自分たち人間族が獣人に対する支配種族であるという認識を満足させるのだ。
イットが飼われる前は、もっと大人の獣人女も幾人かいたらしいが、丈夫さと自然治癒力、そして、体力や精神力というものが、ほかの成人の獣人女奴隷を上回っているらしく、イットが飼われてからは、飼い主の老人は、イットを大いに気に入り、ほとんどイットばかりを集中的に構うようにもなっていたのを覚えている。
この手の催しも、いつもイットが引っ張り出された。
「尻尾がたちましたね。淫乱な獣ですわ」
「まだ身体は幼いようなのに、やはりけだものですわね。感じているようですわ」
「浅ましい畜生の本能なのでしょうね」
イットを囲んでいる貴婦人たちが顔を扇で隠しながら揶揄をする。
こういう「見世物」のときには、男よりも、むしろ女の方が露骨に感情を表すものだ。
女たちの侮辱の言葉は、奴隷とはいえ、まだ少女の年齢のイットの心臓を貫くかとおもうような疼きを与え続ける。
いずれにしても、イットは周りに集まる人間族の大人たちの前で、無理矢理にいやらしい声を出させられていた。
尾の生えたお尻を椅子に腰掛ける老人側に向けているイットのお尻の穴に、老人が指を挿入して、さっきからずっと愛撫をしているのだ。
尾の付け根が獣人族の女にとっての性感帯と呼べる場所だと知ったのは、あの父親によって奴隷商会に売られたときだ。
「あっ、ああん、んんんっ、あああ……」
奴隷の身分で逆らうことも逃げることもできないイットは、抗うこともできずに、ひたすらに指を肛門に挿入される苦痛に耐えていた。
しかも、この老人が飼われるようになって、イットの全身はあらゆる愛撫を敏感に感じてしまうように調教されており、こんな苦痛を伴うような指の挿入から、快感を搾り取ってしまうのだ。
老人とその客たちは、小柄で、まだ年端もいかないように思えるイットが、嬌声を口にしてよがるのが愉しいらしく、さっきからイットが声を洩らすために、イットに侮蔑的な言葉を浴びせる。
戦闘種族であることを強く誇りに思っているイットにとっては、衆人の中でよがり声を出さされるというのは、死ぬよりもつらい苦しみだ。
それは、十一歳であっても変わらない。
だが、死ぬことは、首に嵌められている首輪の呪術によって禁止されていた。
イットにできるのは、ただ耐えることだけだった。
「もっと膝を真っ直ぐにせんか」
やがて、やっとのこと老人が指をお尻の穴から抜く。
すると、老人の合図を受けた屋敷の執事が、イットの尻に乗馬鞭を振り下ろした。
「んひいっ」
イットは緩みかけていた身体に力を入れた。
そのまま、何人かの客が執事から鞭を順番に受け取って、イットに尻に鞭を打ち落とした。
イットは歯を食いしばって、激痛に耐えた。
「よし、鞭はしばらくよい。イットのここに格納しておけ」
「はい」
はっとした。いつもさせられるのでわかっているが、いまからやらされるのは、イットのお尻の穴に鞭を挿入するという行為だ。
格納という言葉により、すぐに執事は屈辱的な前屈をさせられているイットのお尻の中に、乗馬鞭の柄をねじ込みはじめた。
「あっ、ううう、そ、それは……ゆ、許して……」
乗馬鞭の柄はかなりの太さがあった。
それが肛門をこじ開けながら、お尻の奥に挿入してくる。
さすがに、イットは悲鳴をあげた、
短く作ってあるとはいえ、乗馬鞭の長さは、イットの足先から膝の下くらいまでの長さがある。
まだ小柄なイットに、これを強引に尻の穴から腸まで貫かれるのだ。
その苦しみは、並大抵のものではない。
「ああ、も、もう、お許しください──」
さすがにイットも哀願を絶叫した。
周囲から嘲笑がどっと沸く。
彼らは、まだ童女とはいえ、イットのような獣人女が泣き叫んで、憐れみを乞うのが愉しくて仕方がないのである。
しかし、容赦なく、アナルに乗馬鞭の柄がねじ込まれていく。
「どうじゃ、イット、きついか? それともいつもの潤滑油を塗ってやろうか? それとも、このまま苦痛を味わいたいか? 特別に選ばせてやろう」
「えっ?」
はっとしたが、すぐに老人の意地の悪い意図がわかる。
いつもの潤滑油というのは、猛烈な痒みを伴う媚薬のことだ。
その痒み剤を塗られたら最後、イットも痒みをほぐしてもらうために、どんな破廉恥なことでも、絶叫して強請ってしまう。
獣人族の誇りを完膚なきまでに破壊する悪魔のような油剤なのだ。
「そ、それだけは……」
イットは拒否した。
あれを塗られて、この人間族たちに憐れみを乞うくらいなら、このまま苦しみ死んだ方がましだ。
「ならば塗ってやれ。一度抜いて、今度は油剤とともに送り込んでやれ」
老人の無慈悲な命令が飛ぶ。
執事が無造作に、途中まで挿入されていた柄を引っこ抜く。
「ああっ」
イットはのけ反って、込みあがった刺激に全身を震わせた。
またもや、蔑みの笑い声が起きる。
一瞬熱くなりかけた身体が、屈辱に凍りつく。
「ひっ」
だが、すぐにイットはまたもや、身体を震わせた。
アヌスの中に指が入って来たのだ。
しかも、あの油剤がたっぷりと指に塗りたてられている。
感覚でそれがわかる。
「ああ、いやああ」
思わず声をあげた。
すると、嘲笑の声……。
「行儀よくせんか──。命令じゃ」
老人が一喝した。
暴れかけていた身体が、それで静止する。
「また、尾が動き始めました。感じておるようです」
執事が指を抜きながら笑った。
その通りに、執事の操るお尻の穴の中に挿入された淫らな指の動きで、口惜しくもイットの尻尾が激しく動き出したのがわかる。
自分でもどうにもできない。
性的快感を覚えると、どうしても尾が動くのだ。
獣人族の女だけに刻まれているこの反応が恨めしい。
「うひいいっ、ひいいいっ」
指が抜かれて、再び鞭の柄がお尻の穴に挿入されていく。
今度は、潤滑油のおかげか最初のときよりは痛みはない。
だが、苦しくないわけではない。
なによりも、乗馬鞭でアナルを凌辱される被虐感は並大抵のものじゃない。
やがて、イットは残酷な仕打ちに耐え、短い乗馬鞭のすべてを尻から直腸に納めた。
「生まれながらにして奴隷種族の獣人を躾ける鞭を格納するに相応しい方法だな。これからは、宴の前からここに鞭を仕込むのを約束事にしよう。しばらく、四つん這いで床に落ちたものを掃除するがいい。尻の痒みに我慢できなくなれば、尻から鞭をひりだしながら哀願するがよいわ。もちろん、許可を受けてからだぞ、
老人が笑いながら言った。
イットは全ての拘束から解放された。
だが、奴隷の首輪に刻まれた呪術が、イットに四つん這い以外の体勢を許さない。
イットは、暫くのあいだ、宴の客たちが、わざと床にこぼす食べ物のかすを舌で口に入れ続けた。
しかし、恐怖のものはすぐに襲ってきた。
「か、痒い──。ああ、痒い──」
猛烈な掻痒感がお尻に拡がったのだ。
あっという間に猛烈な痒みが襲いかかる。
「ど、どなたか、鞭をお願いいたします。どうか、お尻を鞭をお打ちください」
蔑みの視線を向ける人間族たちの足元を動き回りながら、イットはついに泣き叫んだ。
すると、急に周囲の景色が歪んで、溶けるようになくなった。
*
「……よ、見損なったぞ。嫉妬に狂って……を害するとは。わしは失望した。その身体を八つ裂きにしてやりたいが、魂に刻んだ誓約により、それも叶わん──。俺たちの前から永遠に消えろ。二度と顔を見たくない──」
はっとした。
目の前にいるのは、屈強で美しい肉体美をした壮年の男だった。男は上半身が裸であり、下半身を大きな布のような衣服で覆っていた。
イットは、ここが明らかに初めて見る建物だと確信したが、同時に見覚えのある場所でもあるということも悟った。
しかし、ここがどこであるのかは、まったく知覚することができなかった。
いずれにしても、やはり、夢の中の光景だ。
だが、さっきまでの夢とは異なり、イットはイットでありながら、イットではなかった。
つまり、イットは全く別の誰かとして、目の前の光景に接していたのだ。
だから、この夢の状況をイットは知らないのだが、イットの中にいるもうひとりの何者かは、これがどういう状況であるのかを十分に承知しているようなのである。
とても不思議な感覚だった。
「……聞こえなかったの、……。あなたは追放よ。残念ながら、わたしたちは、魂に刻んだ夫婦。……も……わたしも、あなたを殺すことはできない。でも、……を死に追いやったあなたをわたしたちは許せない。二度とナタルに足を踏み入れないで──」
蔑みのような声をあげたのは、豪華な椅子に座る男に上半身を寄り掛からせている美しい女性だった。
目立つ尖った耳をしていて、背の高い絶世の美女だ。
そして、イットは彼女のことを十分に熟知していることがわかった。
知っているどころでない。
目の前の男は、イット……いや、イットではないもうひとりの人格の夫だ。さらに、その男に寄り掛かっている美女にとってもまた、夫であり、さらに、たったいま気がついたのだが、右横にはふたりの別の女たちがいて、彼女たちもまた、この男の妻だ。
つまりは、この男の妻である四人の妻……いや、ここにはいないが、もうひとり、いや、ふたりいて、その全員が男を愛していた。
クロノス……。
男の名が急にイットの中に浮かぶ。
イットの中のもうひとりの人格を通じて……。
「クロノス、これはおかしいわ。もっと、きちんと調べさせて。彼女に限って……」
「その通りだ。モズがそんなことをするわけが……」
横にいるふたりの女が叫んだ。
ひとりは人間族、もうひとりはドワフ族……。
もちろん、知っている。
そして、モズ……。
それが自分の名前……?
「いや、所詮、獣よ……。わしのハレムに加えたのが間違いだった。あのメティスがしつこく望んだから、わしの女に加えたが、そもそも、尾のある亜人ではないか。その恩のあるメティスに手を掛けるとは──」
クロノスが怒鳴った。
猛烈な怒りが込みあがった。
言うに事欠いて、クロノスともあろうものが、獣人族を否定する言葉を吐くのか──。
たったいままで、目の前の男に恋慕の心も抱いていたが、それはいまや圧倒的な怒りに変わっている。
「クロノス、なんてことを──」
「怒りに我を忘れないで──」
さっきのふたりが抗議の言葉を叫んだ。
一方で、クロノスに寄り掛かっている女……、エルフ族の守護女神を称しているアルティスだけは、勝ち誇った表情で微笑んでいる。
その瞬間、モズは全てを悟った。
おそらく、裏で暗躍をしていたのは、このアルティスだ。
目的は、クロノスの寵愛を独占するためだろう。
この女は、自分の一族に対する選民思想が高く、ほかの種族を蔑む傾向がある。それは、エルフ族以外の守護女神であるモズたちに対しても同じだ。
へラティスとミネルバは気がついていなかったが、モズはずっとこのアルティスの隠れている感情には気がついていた。
もしかしたら、あのメティスの命を奪ったあの「事故」は、このアルティスの罠であり、それをモズの失敗にさせて、この楽園からの追放を目論んでいる?
しかし、どうでもいい。
いまや、この瞬間は、モズの怒りは、アルティスではなく、クロノスに向いていた。
アルティスに仕向けられたとはいえ、この男は口にしてはならない言葉を吐いたのだ。
「もういいわ。へラティス、ミネルバ──。こんな男、こっちから願い下げよ」
イット……いまは、モズという獣人族の守護女神であるが……怒りのまま立ちあがった。
そして、はっきりとした憎悪をクロノスに向けた。
「あたしは、この楽園を出ていく。お前のような男の妻であったのは、あたしの恥だ。あたしは獣人族の守護女神の名をもって、その事実を取り消す──。お前があたしを捨てるのではない。あたしがお前を捨てるのだ──」
すると、クロノスも真っ赤な顔で立ちあがった。
モズをこれ以上ない程の憎しみの視線を向けている。
失望した。
これだけの男だったのか……。
果たして、一度でも愛した男は、ただ力があるだけの能無しだ。いまこそわかった。
「言うたな──。ならば、わしも、わしの持てる力をもって、お前とお前の守護する獣人を呪ってやろう。これから生まれてくるお前たち獣人の女には、奴隷の心を刻んでやる。残酷な責めや惨めな仕打ちを受ければ、はしたなく尾を振り、股を濡らす被虐の体質だ。それを受け継いでいくがよい──」
「クロノス、その言葉に力を込めてはならない──」
へラティスが悲痛な声をあげた。
次の瞬間、意識が再び闇の中に吸い込まれていった……。
*
「……イット、大丈夫か……?」
身体を軽く揺り動かされた。
イットは目を開いた。
最初に知覚したのは、息がかかるほどに接近している男の顔だ。
辺りは闇の中だったが、獣人族ならではの夜闇に強い視力は、この暗闇の中ではっきりと、男の姿を捉えていた。
声をかけたのは、ロウだ。
数日前に、以前の主人のアンドレからイットを引き取った人間族であり、イットの命の恩人でもある。
まだ童女の頃に、父親に奴隷として売り飛ばされたイットは、ふたりほどの人間族の主人を得て、このロウに引き取られることになった。
もっとも、ロウは、イットを買い取った奴隷主人でなく、
また、このロウは精力絶倫のクロノス体質の男であり、たくさんの美女、美少女を自分の愛人として同行させていた。
成り行きから、イットはその中の一員として、一緒に旅をすることになったが、そのことに不満はない。
いや、むしろ、嬉しかった。
強い相手に従うことは、獣人族の本能のようなものであり、このロウは紛れもなく強者だ。不思議な力を持っていて、得体の知れない能力を持っている。
ロウは、イットが望むなら、無条件で奴隷解放をするだけでなく、路銀を与えて故郷に戻ってもよいとまで言ってくれたが、イットは拒否をして、ロウに仕えることを望むと伝えた。
すると、ロウと彼の女たちは、すぐにイットを認めてくれて、その日のうちに、イットはロウの愛人のひとりになることができた。
そして、ロウの不思議な力は、そのことによっても発揮し、イットはなぜか一夜にして、圧倒的な能力向上を覚醒してしまった。
聞くところによれば、このロウは愛した女の能力を飛躍的に向上させるという不可思議な能力があるらしい。
イットは唖然としたものだ。
そして、いま、イットは裸の身体をロウの裸体に押しつけるようにして、うつ伏せになっていた。ふたりの身体には毛布が被さっている。
ここは幌馬車の中であり、周りには同じように裸体のまま、毛布をまとって寝息をかいているロウの恋人たちがいる。
思い出した……。
ここはもう数日で、エルフ族の都と称されているエランド・シティに到着するというナタルの森の中だ。
イットが仲間になってから数日が経っていて、昨夜も馬車の中で野宿するにあたって、女たちが寄ってたかって、ロウに抱かれるということをした。
いわゆる乱交だが、精力の強いロウの前に、彼の愛人たちは次々に失神をして動かなくなり、最後にはもっとの体力のあるイットがひとりでロウの相手をするかたちになった。
だが、そのイットもついには抱き潰されて、意識を失った。
こうやって、裸体で抱き合って眠っていたことを考えると、あのまま眠ってしまったに違いない。
まだ、夜のようだ。
しかし、馬車の中からだが、夜明けまでもうすぐというのはわかる。
あと一ノスもすれば、外も明るくなっていくに違いない。
そういう感覚の鋭さも、獣人族ならではのものだ。
「……ご主人様……」
ロウが心配そうにイットの顔を覗き込んでいることに気がつき、イットは呼びかけの言葉をささやいた。
言葉遣いは自由でいいと言われたが、イットはロウのことを“ご主人様”と呼ばせてもらうことにした。
長く奴隷生活をしていたイットにとっては、それが楽な物言いであり、ロウも許してくれた。
それに、イットはこのロウに支配してもらうことを望んでいた。
これまでの主人には抱かなかったが、イットは出逢ってまだ数日の目の前のご主人様にすっかりと心酔してしまい、いまでは、奴隷から解放されてしまったことを悔いる気持ちにさえなっている。
もしかしたら、いままでの奴隷としての時間が、イットの心をすっかりと奴隷的に作り変えてしまったのかもしれない。
また、はしたないが、ロウが性愛のときに示す嗜虐的な行為は、イットにどうしようもないほどに、擾乱させてしまう。
自制心や理性も消えて、言いようもないような悦びを、イットの身体を呼び起こすのだ。
まだ成人とも言えないイットが、あんな風に情欲の快感に支配されるのは、余程に淫乱な血が流れているのだろうかとも考えるが、こんな風に感じるのは、ロウだけのことだ。
もしかしたら、さっきの夢の中で受けたような仕打ちを再び受けても、このロウからだったら、心からの悦びをもって、イットはそれを受け入れるのではないだろうか……。
そんなことさえ思った。
そういえば、夢……。
不思議な夢だった。
覚えている範疇で、最初に見たのは、かつてイットがカロリック公国で受けた屈辱の記憶だ。
なんであんな夢を……。
イットにとっては思い出したくもない記憶だ。
これまで、あの日々のことなど、ほどんと呼び醒ますことなどなかったが、今朝は非常に現実的な感覚で、追体験させられた。
まるで、あのときの屈辱や憎悪を復元させるために、一番悔しかったことを探して、頭に甦させらた感覚だ。
大勢の人間族の客たちの足元で、四つん這いで這い回り、床に落としたものを口で食べさせられながら、尻を打ってくれと懇願した恥辱は、イットにはつらすぎる記憶である。
だから、できるだけ封印をして、頭から消したつもりだったが、いまは、それを夢として復活させられた。
また、続いてみた不思議な夢……。
なんだったのだ、あれ……?
見たこともない世界、見たこともない男女……。
あれも妙に現実的だったが、あれはイットではない。
自分のことを獣人族の守り神のモズだと認識し、ほかの女神たちや天空神のクロノスを対等の存在として意識していた。
そして、クロノスに向けたあの憎悪……。
なにあれ……?
イットは困惑した。
「どうした、イット……?」
イットが密着している身体の下のロウが再び耳元でささやいた。
その瞬間、イットを得体の知れない憎悪が包んだ。
「……あ、あたしに触るな──」
次の瞬間、イットはロウの首に両手を伸ばして、その手にぎゅっと力を加えていた……。