【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「……あ、あたしに触るな──」
イットは、怒声とともに、ロウの首に手をかけた。
だが、それはとても奇妙な感覚だった。
ロウの首を絞めようとしているのは、イットでありながら、イットではない。
つまりは、まるで、イットの中にいる別の誰かが、イットの身体を使ってロウの首に手を掛けようとしている感じだ。
イットは、それを他の誰かの視線を通じて、それを眺めているのだ。
いずれにしても、イットは自分自身がロウを殺そうとしていることに驚愕するとともに、恐怖した。
とにかく、自分の手を阻止しようとして全力で抵抗した。
また、ロウの目が驚きで大きく見開かれたのがわかった。
これらは、刹那のことにすぎない。
しかし、同時に、なにか温かいものがイットの中に一気に流れ込んだ。
得体の知れないほどの巨大な安堵感と幸福感だ。
「えっ……?」
突如として、他人の背中に隠れていたように感じたイットの意識が表に出た。
我に返る。
指がロウの首に触れた状態で静止する。
安堵とともに、背中にどっと冷たい汗が流れるのを感じた。
「ひいっ、ひっ」
次の瞬間、自分の口から痛烈な悲鳴が湧き起こった。
ロウがイットの尾の付け根に手を触れたのだ。
まだ、ロウに抱かれるようになって数日なのだが、絶倫体質のロウに抱かれたのは、両手両足では足りない。
それ以前でも敏感だったイットの身体は、毎日、何度も抱かれるロウの愛撫によって信じられないほどに鋭敏になった気がする。
なによりも、尾の付け根というのは、獣人族にとって最大の性感帯だ。
そこを、あの魔道のようなロウの指でこりこりと刺激されたことにより、電撃のような甘美感が爆発した。
全身の筋肉が一気に強張り、腰ががくんと跳ねあがる。
「なにすんのよ、イット──」
そして、がんと肩に強い衝撃を感じた。
ロウの上から身体が弾き出される。
横からの体当たりだ。
イットを飛ばしたのは、イットと同じように全裸のままのエリカだ。
幌馬車の床に転がったイットは、馬車の壁に体側を打ちつけられた。
「なに、なに?」
「どうしたの?」
「えっ? なんですか?」
起きあがって、不審な声を出したのは、イットやエリカと同じように、幌馬車の床に毛布にくるまって休んでいたコゼとシャングリアとミウだ。
全員が裸身のままであり、細かいことは覚えてないが、五人がかりでロウの相手を務めたのを漠然と記憶している。
そのまま、抱き潰されるように寝入っていたのだと思う。
「どういうことよ、イット──。ロウ様に手を掛けるなんて……」
裸身を隠すことなく、イットの前に仁王立ちになったエリカがイットを険しい表情で睨む。
そうはいっても、イット自身も自分の行動に説明をすることができない。
だが、確かにイットは、一瞬だがロウの首を絞めようとしていた。
憎い相手として……。
「落ち着けよ、エリカ。寝ぼけただけさ。そうだよな、イット?」
上体を起こしたロウが柔和な微笑みを浮かべてエリカをなだめる。
それとともに、イットにも笑みを向ける。
とにかく、イットは、呆然としてしまった。
どうして、あんなことをしたのか、いまだに理解できない。本当にわからないのだ。
「いいえ、ロウ様──。さっきのは一瞬ですが、本物の殺気を感じました。それに、イットがロウ様の首を締めようとしているのをわたしも見ました」
エリカがイットを睨んだまま大声を発する。
美しいエリカの顔に憤怒の表情が浮かんでいる。
当然だとは思った。
あんなに優しいロウの首を絞めようとしたのだ。おそらく、イットにかかれば、人間族にすぎないロウの首の骨を折るのに、瞬く程の時間もかからなかっただろう。
殺さないで済んだのは、ぎりぎりで不思議な躊躇が発生したからだ。
「えっ、なに?」
「なにが、どうしたって?」
コゼとシャングリアが半分寝惚けたような顔で言った。ミウもそうだが、馬車にいた他の三人ともぼっとしている。
「す、すみません……。で、でも、あたしにもどうしてなのか……。だけど、ご主人様を殺そうとするなど……」
とりあえず、イットはそんな気などなかったということだけは口にしようと思った。
しかし、説明することなどできない。
まるで、イットの心の中に別の誰かがいて、それが不意に出現し、イットの身体を一時的に乗っ取ったみたいな感覚だった。だが、そんなことがあり得るわけもない。
「だから、寝ぼけただけだって……。お前こそ、落ち着けって……」
「落ち着いてなど……」
エリカは、ロウのなだめの言葉を一蹴して、怒りの表情のまま、床の隅にあるエリカ自身の細剣に目をやった。それに手を伸ばそうとするのがわかった。
イットを斬るのか?
そのとき、ロウが自分の前に立つエリカの腰の後ろからすっと手を伸ばしたと思った。
「んきいいっ、やめてええっ」
すると、いきなりエリカがその場に崩れ落ちるように両膝をつく。
眼をやると、エリカの股間と乳首にある「ぴあす」という飾りに、細い糸がついている。
ロウの不思議な術のひとつである「粘性術」だ。
イットの新しい主人であるロウは、幾つもの不思議な術が遣えるのだが、その中のひとつが粘性術であり、自由自在に身体から粘性体を出現させて、それの形状や硬度を自在に操れる技だ。
一番奴隷であるエリカには、ロウに仕える女たちの中で、ただひとり乳首とクリトリスに、丸い金属の小さな輪を装着されている。それはそれで、とても卑猥で淫靡な器具なのだが、ロウがやったのは、一瞬にして、細い糸状にした粘性体を両乳首とクリトリスの淫具に接続して、そのまま引っ張ったということだ。
「や、やめてください、あああっ」
けたたましい悲鳴をあげて、エリカが後ろに引っ張られるように、床に仰向けに倒れる。
呆気にとられるイットの視界の前で、エリカが両膝を立てて開いた格好でどんと寝ころばされた。
しかも、いつの間にか、エリカの足首や両手首に粘性体が密着して、床に張りつけられている。
両手は身体の横だ。
後ろに引っ張っられたと思った股間と両乳首に結ばれた糸は、いまは天井から伸びている。
「どうしたっていうんですか? エリカが寝ぼけたんですか?」
やっと完全に覚醒した感じのコゼが不思議そうにロウとエリカを見た。シャングリアとミウも半分瞼が閉じたみたいだったが、いまはやっと意識が正常になっとようだ。
「ち、違います──。寝ぼけたのはあたしで……」
イットはとりあえず、口を挟んだ。
だが、そのときには、完全にエリカの腰と乳首の「ぴあす」に結ばれた粘性体の糸は天井から吊りあがった状態に固定されてしまっている。
「そ、そうよ──。ね、寝ぼけたのはイットで──。ロウ様の首を……、あひいいっ」
エリカが狂おしそうに首を振って悲鳴をあげた。
だが、四肢を粘性体で床にはりつけられているので、エリカは満足に動くこともできない。
粘性体の糸に引っ張られた腰と胸がぐいと天井方向に持ちあがっている。
そのエリカの身体を軽く押さえて、ロウが意地悪く糸を手で摘まんで動かした。
「だから、なにも喋らなくていいよ、エリカ……。とにかく、イットは寝ぼけただけだから……。それよりも、起き抜けにいい気持ちだろう? 俺のために怒ってくれたのは嬉しいけど、喧嘩は禁止だ。だから、しばらく、このまま吊りあげておいてあげるよ」
「いやあああっ、んぎいいい」
エリカが耐えきれないように、泣き声をあげだした。
「どうかした、ロウ?」
「先生、なにが……。ええっ──?」
御者台側から毛布に全身をくるんだままのイライジャ、幌馬車の後ろ側から武装しているマーズがそれぞれに顔を出した。
魔物避けの結界を施しているとはいえ、魔物が多発しているナタル森林における野宿は危険であり、夜は必ず見張りを交代ですることにしていた。
順番を決めているのは、一番奴隷のエリカだが、今夜の後半夜の見張りはマーズだったみたいだ。また、それとは関わりなく、戦闘にはあまり関わらないイライジャは、このところ、馭者に専任してくれていて、夜も馭者台で眠るのを専らにしていた。
「いや、よくわからないが、エリカが寝ぼけた……のか?」
シャングリアだ。
しきりに首を捻っている。
たったいままで、熟睡状態だったのだろう。
わかっていないみたいだ。
「そうなの?」
ミウも小首を傾げている。
イットよりも幼いが、ミウとは、ロウの寵を競うことでは とても積極的な童女だ。
ミウについては、イットに不審な視線を送っている。
いずれにせよ、エリカ以外はイットはロウの首に手を掛けたことは知らないようだ。
「い、いえ、あたしが……」
でも、とにかく、やめさせないと……。
騒動を起こしたのはイットだし、懲罰のようなことを受けるとすれば、エリかではなく、イットであるべきだ。
イットは身体を起こして、ロウとエリカの方に駆け寄ろうとした。
だが、ロウが「待った」をかけるように、イットを手で制する。それだけでなく、自分の口に指をあてて、「黙っていろ」という仕草をした。
イットは動くのをやめた。
「待て、イット……。お前にも、もちろん訊きたいことはあるけど、とりあえず、エリカだ……。エリカ、この一件は俺が預かろう。余計なことは喋らなくていい……。それよりも、気分を出してくれ。ほれほれ」
ロウの手の中に柔らかそうな毛のついている刷毛が登場した。
あれも、ロウの不思議な術のひとつだ。
ああやって、どんなものでも、ロウは自在に物を取りだすことができる。
「亜空間術」というらしい。
この旅に必要な大量の資材や飲食物も、ロウはあの亜空間に収納している。亜空間の中では、時間を自在に操れるらしく、その空間の中では、生鮮食品もいつまでも新鮮なままで保管できるとのことだ。
だから、この旅では、食材の入手のみならず、必ず苦労することが相場の新鮮な水についても不足するということはない。
ロウの術の中では、もっともすごい能力とイットは思っている。
なにしろ、この亜空間術で、ロウは武器まで瞬時に手の中に出現させることができるのだ。
とにかく、ロウは出現させた刷毛で吊りあげたエリカの女の蕾を擽り始めた、
しかも、じっくりと焦らすように……。
「んひいっ、きいいっ、やめてください──。お、おかしくなっちゃいます──。ああ、きいいっ」
エリカが絶叫する。
「あらあら、エリカ、いいわねえ。ご主人様に可愛がってもらって……」
コゼがにこにこしながらエリカの股間を凝視する姿勢をした。
一方で、なにがなんだか、わからないほどの半狂乱の状態を示し始めたのはエリカだ。
なにしろ、身体の一番敏感な部分を糸で吊られて、刷毛でくすぐられるのだ。
凄まじいほどの衝撃の連続だろう。
「みんなは散ってくれ。なんでもないんだ」
ロウがエリカの股間を刷毛で刺激しながら、ほかの女たちをなだめるように言った。
こういうことが余程に慣れっこなのか、ロウの言葉に従い、幌馬車を外から覗いたマーズとイライジャが顔を引っ込める。
次いで、シャングリアとコゼとミウでさえも、毛布をそれぞれに掴むと、何事もないかのように、あくびをしながら毛布にくるまって寝る体勢になった。
だが、エリカの悲鳴はやかましく続いている。
「わかったね、エリカ。なんでもない。なんでもないんだ。いいね」
ロウは念を押すように言うと、刷毛を動かしながら、エリカの股間のあいだに寄っていく。
そして、素早く仰向けで膝を立てているエリカを犯す格好になる。
腰に掛けていた毛布を外して、股間を出した。
すでに怒張になっている。
片手で刷毛を動かしながら、片手でその怒張を持って、エリカの股間にあてがう。
「いい気落ちにさせてあげるから、つまらないことは忘れろ。この件は俺が預かるから」
ロウが言った。
イットには、やっとロウがイットを庇うために、突然にエリカを責め始めたということを悟った。
「いくぞ」
ロウがエリカに男根を押し入れる。
「は、はいっ」
糸で股間を吊られているエリカが歯を食いしばって返事をする。
敏感な局部を残酷に刺激されて、エリカの股間はすっかりと受け入れ態勢が完了している。
イットは自分の身体がかっと熱くなるのがわかった。
「あいいいいっ、ひいっ、んくううう」
エリカが悲鳴のような嬌声おあげて、ロウの一物に股間を貫かれた。
だが、糸で乳首と股間を吊られているエリカには、反応をして動くこともできない。
それにも関わらず、ロウはぐんぐんと前後左右にエリカの腰を突きあげる。
エリカが狂乱状態になる。
「あああっ、ロウ様──。ロウ様あああ」
絞り出されるような悲鳴は、牝にも等しい生々しい女の叫びだ。
残酷なはずなのに、エリカの表情には恍惚とした快感が浮かんでいて、とても気持ちよさそうだ。
イットはさらに身体が熱くなった。
「エリカ、いい子だ。こんな俺のおかしな性癖に、いつでも付き合ってくれる……」
ロウが腰を動かしながら言った。
「あああ、あおっ、お、おかしくなる──。わ、わたしは、いつでも、あああっ」
エリカがぐいと顎をあげるようにして、身体を弓なりにして全身を震わせた。
達したのだ。
だが、ロウは何事もないかのように腰を動かし続ける。
驚いたことに、周りの女たちは、本当に寝入っているみたいだ。あんなに横で激しいことをしているのに、寝息さえもかいている。
それとも、もしかして、これさえもロウの不思議な術なのだろうか?
いずれにしても、獣人族のイットには、熟睡するということはない。
どんなに寝ていても、頭の半分覚醒していて、周りでなにかがあれば、すぐに意識を起こすことができる。
心も頭も、半分ずつしか眠ることができないのが、獣人族というものなのだ。
ロウによりエリカへの性交が続く。
それから二度三度と、エリカが絶頂をして果てた。
ロウが精を放つ仕草をしたのは、三度目くらいのエリカの絶頂のときだ。
「んはあああっ」
エリカが激しく絶頂して、全身がついに脱力した。
ロウが精を放ち、やっとロウがエリカの股間から男根を抜く。
そのときには、エリカの拘束など存在しなかったように、粘性体がエリカから消失している。「ぴあす」を吊っていた糸もなくなっていた。
ロウから身体を離されて横たわったエリカは、そのまま眠ってしまった。
横にあった毛布をロウがエリカの汗まみれの裸身にかける。
「さて、待たせたな、イット……。イットへの懲罰の番だ。こっちに来て。腕を背中に回して背中を俺に向けるんだ」
ロウがやっとイットに顔を向けて、白い歯を見せた。
ぞくぞくとした。
イットは無言のまま、言われたとおりに、ロウに寄り背中を向ける。
すぐに、身体の背後で水平に重ねた両腕に縄がかかり、胸の前後に縄が食い込んで、二の腕を縛られていく。
その縄に感じてしまって、熱い息が洩れるのがわかった。
「すでに縄酔いしてきたか? 尾が動いてきたぞ。獣人族の女というのは初めて接するけど、ちょっと可哀想な気がするな。どんなに隠そうと思っても、尾が動くので性的興奮を隠すことができない」
「さ、先ほどは申し訳ありません……。自分でもわけがわからなくて……。どうして、あんなことをしたのか……」
やっとイットは謝罪をした。
本当に、あのときはどうしてしまったのか……。
命の恩人でもある「ご主人様」を殺そうとするなんて……。
「そんな感じだったな……。まあいいさ。いずれにしても、みんなには黙っておけ。寝ぼけていたとはいえ、俺の首を絞めようとしたなんて、エリカじゃなくても、変な軋轢を作るかもしれない。だけど、もうエリカも覚えていないし、ほかの女もそうだ。明日の朝には、何事もなく振る舞えばいい」
イットに身体に縄を締めつけながらロウが言った。
やはり、いきなり、なにもしていないエリカを惨く責めだしたのは、イットのやったことを隠すためだと悟った。
よくわからないが、ロウには精の力で女を操るところがある。
そんな能力の存在も、薄々だが勘付いてもきた。
「も、申し訳……。うっ」
さらに謝ろうとして、縄をぐいと締めつけられて声が出た。
だが、恥ずかしいけど、こうやって縄で縛られると気持ちがいい。
これまで、性奴隷になった十歳以降、同じようなことをされ続けてきたけど、ロウに与えられるものは、なぜか、今までに経験してきたこととは全く異なる。
ロウは縄酔いという言葉を使ったが、まさに、そんな感じだ。
ぎゅっと閉じている太腿のあいだに、どんどん蜜が溢れ出るのがわかる。
「謝るのはなしだ。さっきのことを質問しようとも思っていたけど、覚えてないならいいか……。だけど、イットに懲罰を与える理由を作ってくれたんだから、俺にとっては感謝してもいいかな……。そうだろう、イット?」
ロウが上半身を縛られたイットの身体を反転して、自分に向かせる。
そのロウが白い歯を見せた。
「は、はい。あ、あたしに罰をください……」
凄く興奮していた。
これまで、たくさんの嗜虐を受けてきたが、ただ一度も、それを好ましいものと思うことはなかったが、なぜかロウから与えられるものは別なのだ。
ロウから罰を受ける……。
嬉しい……。
これまでおぞけおののく程の苦しみだった嗜虐の責めが、ロウの場合だけ、愛のある行為にさえ覚える……。
“獣人の女は、奴隷の心を刻まれている。残酷な責めや惨めな仕打ちを受ければ、はしたなく尾を振り、股を濡らす被虐の体質……”
そのとき、ふとそんな言葉が頭に浮かびあがった。
どこで耳にした言葉だったか……?
すると、いきなり周囲の景色が一変した。
イットは、真っ白い空間に包まれていた。
*
長く続いた出張地獄が終わりました。久々の連休はずっと寝てました。
あまりにもあいだが開いて、よく覚えてないし、リハビリ代わりに、軽いSMシーンから描かせていただきます。
徐々に調子を戻したいです。