【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
オーガの集団に囲まれたが、そのときにはイットはもうそこから跳び出している。
「うしゃあああ──」
イットは凶器である長い爪を振り立てながら駆けた。
跳躍しながら、縦横無尽に腕を振る。
生半可な剣では傷をつけることができないとも言われている硬いオーガの皮膚だが、ガロイン族のイットの爪なら斬り裂ける。
手近なオーガの巨体の喉を三匹まとめて切断する。
奇声をあげてオーガたちが倒れる。
オーガの集団に飛び込んでいるので、一斉に四方からオーガが上から攻撃してくる。
知性に乏しい魔物族だが、武器を持つ程度の頭はある。
旅人でも襲って奪ったのか、集団の三分の一ほどは剣を持っていた。ほかは棍棒のようなものだ。
だが、技術など皆無であり、ただ力任せに振りつけてくるだけだ。
あるいは、樹の幹のような腕をぶつけてくるかだ。
小柄なイットでは、腕でも武器でも掠りさえすれば、骨さえも砕けてしまうだろう。
それとも、捕らえられるかだ。
そのときは、胴体を潰されて、一瞬で死ぬだろう。
倒れてもだめだ。
踏みつぶされて、はらわたが飛び出て死ぬに違いない。
しかし、攻撃に当たらなければいい。
捕まらなければいい。
倒れなければいい。
オーガの集団を突っ切るように駆け抜けていく。
駆けながら斬る。
通りすぎていった後ろでばたばたと大木が倒れていくかのように、オーガの巨体が首から血を流しながら倒れていく。
さらに駆け抜ける。
おそらく、全部で五十匹くらいか。
奥には、ひと際巨体で色が赤いオーガの姿があったのを見つけた。
おそらく、この集団の長だろう。
オーガキングだ──。
おそらく、あれを倒せば、ここに集まっているオーガ集団は瓦解してばらばらになるに違いない。
そういうものなのだ。
だが、そのときだ……。
「くっ」
一気に後衛まで駆け進んでいこうと思ったが、股間の違和感がイットに刺激を与えた。
集中力が途切れそうになる。
「はあ?」
そのとき目の前に風圧のようなものが襲ったと思った。
イットは思考することなく、右に跳躍する。
低い姿勢になりながら、樹木の陰に身体を重ねる。
「あっ」
だが、腰を沈めたことで張形が子宮に向かって突き刺さったような感じになった。
脚がももつれそうになるが耐える。
轟音を立てて、オーガの腕でたったいままでイットがいた樹木の幹が真っ二つに吹っ飛ぶ。
しかし、そのときには、イットは別の樹木に移動していた。
その幹に駆け飛び、幹を両脚につけ、反動で逆方向に跳躍する。
さっきイットを襲ったオーガの首に、後ろ側から爪を立てる。
悲鳴をあげて、そのオーガが倒れる。
そのときには別の場所に跳んでいる。
二匹倒す。
すぐに横に駆ける。
今度は三匹同時――。
「あんっ」
思わず声を出した。
激しい動きで、またしても股間の異物が気になって衝撃のようなものを感じたのだ。
股間に力を入れて、脚を動かす。
「うあっ」
オークの腕――。
避けて、爪で首を裂く。
別のオークが捕まえようとしたのを跳躍して避ける。
とにかく、ほんの少しでもとまれば終わりだし、速度を落としてもいけない。
動き続ける。
それしかないのだ。
頭上──。
オーガの棍棒が降ってくる。
それを板一枚ほどの距離で避けて地面に流し、跳躍して腕ごと首を斬る。
今度は右──。
そして、左──。
完全にオーガの集団の中心にいる。
魔物族の攻撃に絶え間がなくなる。
かわしながら斬る──。
斬る──。
斬る──。
斬る──。
「んふうっ」
歯を食いしばる。
張形を動かされているわけではないが、あまりにもイットが激しく動いているので、膣に入っている異物が右に左に振動する感じになり、まるで淫らな振動をされている感じになっているのだ。
歯を食いしばりながら、身体を倒しつつ、爪でオーガの喉を抉る。
「おああああああっ」
吠えた──。
本来であれば、もっと長い時間動き続けられるが、やっぱり貞操帯を装着したままオーガに飛び込むべきではなかった。
しかし、なにも考えてなかった。
アンドレの性奴隷になっているあいだは、敵の襲撃を受ければ、とにかく、それに向かって跳び込むのはイットの役目だった。
だから、身体が反応してしまった。
再び樹木の陰に隠れる。
息を吸う。
気にすると、あの妖しい油剤による痒みと疼きが身体を脱力させる気がする。
オーガの攻撃──。
横に跳ぶ。
そこにいたオーガを三匹倒す。
向かってくる。
跳躍する。
「ふっ、ううっ」
股間の異物の刺激に身体を固くしてしまう。
耐える。
官能への意識を消して、風のようにオーガとオーガのあいだを走り抜けていく。
そのあいだも、接するオーガの喉を片端から切断していく。
「ううっ」
衝撃のようなものが股間に走る。
風のように右に左に交互に跳躍しているのだが、そのたびに衝撃が駆け抜ける。
しかも、だんだんと異物が股間で動くような衝撃には抵抗力もできてきたが、燃えあがるような快感のうねりがまとわりついてきたのだ。
そのとき、棍棒が背中側から襲ってきた。
身体をかわしたが、完全には避けられなかった。
受けとめた右手の爪が全部飛んでいった。
指も数本折れた感覚が襲った。
「あぐっ」
イットは身体を吹っ飛ばされていた。
どすどすと、オーガたちの棍棒や脚が降ってくる。
転がって避ける。
左手の爪で脛を払っていく。
オーガの動きが鈍くなり、束の間距離をとることができた。
「ふうっ」
樹木の陰に隠れる。
息を吸う。
折れた爪の代わりに新しい爪を出す。
だが、指が折れたままだし、右手は痺れて力が入らない。
しかし、痛みのおかげで、股間の異物への耐性ができた。
「ああああっ──」
雄叫びをあげた。
オーガに飛び込む──。
転がる。
起きあがって斬る──。
立つ──。
斬る──。
走る──。
斬る。
走る。
斬る。
転がる。
立つ。
斬る。
「ああっ」
また股間が揺れる。
しゃがみそうになるのを堪える。
跳躍する──。
斬る。
そのとき、暴風のようなものを感じた。
なにも考えずに、後方に跳んだ。
さっきの赤い皮膚をしたオーガキング──。
目の前にいる。
さっきまでイットがいた場所に岩が落下する。
大きさはイットの身体よりも大きい。
オーガキングが岩を投げたのだ。
「うわっ」
体勢を崩してしまっていて、イットはごろごろと転がってしまった。
そこに、さらに岩が投げられる。
横に跳ぶ──。
「あっ、ああ」
転がると股間の異物が疼きを発生させる。
イットは刺激を受けて、無意識に身体をぐんと伸ばしてしまった。
岩が襲いかかる。
なんとか、もう一度跳んで避ける。
樹木の陰に隠れる。
オーガキングの吼え声──。
オーガたちに周りを囲まれる。
立ちあがる。
そばのオーガの股を抜けて、後ろに出る。
そのオーガがオーガキングの投げた岩を受けて吹っ飛ぶ。
とっさにその巨体を右に避ける。
避けながら別のオーガを斬り裂く。
火の玉──。
「えっ?」
十個ほどの炎の塊が横を突き抜けていった。
頭を焼かれたオーガが絶叫して一斉に転がる。
もう一度、炎の塊の束──。
さらに十匹が炎に包まれる。
「この馬鹿イット──。なんで、ひとりで勝手に飛び出すのよ──。指示くらい受けなさいよ──」
炎が飛んできた方向から駆け抜けてきたのはエリカだ。
いまのは、エリカの魔道──?
さらに、イットを庇うようにエリカが前に立つ──。
左右のオーガがばたばたと倒れた。
「貞操帯を外さないまま飛び出すから、ロウが焦っていたぞ──」
「このくらいの魔物族くらい、あんたがいなくても簡単に制圧できるのよ……。まったくひとりで飛び出すなんて」
左からシャングリア──。
右からコゼが来た。
それぞれ、剣と短剣を持っているが血まみれだ。
怪我をしている感じではないので、全部返り血だろう。
三人がイットを囲んだ。
イットは立ちあがった。
だが、半分呆然としていた。
これまで、いつもイットはひとりで戦っていた。誰かと共闘するということはなく、常に先頭でひとりで戦った。それが、あのアンドレから求められていたことだ。
「仲間」に助けられるなど、初めての経験だ。
「あんたは強いけど、集団戦を覚えさせないといけないって、ご主人様が言ってたわよ。まったく予想外のことするわねえ」
コゼが苦笑するような口調で言葉をかけながら、イットの右の二の腕を掴んだ。
飛び出そうとしていたイットは、それで動きを防がれてしまった。
「シャングリア、斬り開いて──。わたしは右に行くわ。前の牽制も任せて――」
「なら、わたしは左から回ってくる」
エリカとシャングリアが飛び出した。
ふたりが周りのオーガに飛び込んでいく。
エリカについては、右方向に飛び出しながら、前方向のオーガキングに巨大な火の玉を放った。
オーガキングが慌てふためいて退がる。
ほかのオーガも次々に倒れていく。
気がつくと、あんなにいたオーガがまばらになっている。
前側と右側に同時に対処しているエリカは、それほど離れていかないが、シャングリアの姿は見えなくなっている。
いずれにしても、ほとんど決着がついたという感じだ。
「やっと、追いついたか」
イットは振り返った。
ロウだ。
ミウを横にして、大きな盾を持っているマーズに守られるようにして歩いてきていた。
「ご主人様──」
イットは叫んだ。
「魔獣や魔物が襲撃したら、馬車に戻れと言ったじゃないか、イット──。そのまま飛び出すなんて──。肝が冷えたし、焦った。勘弁してくれよ……」
ロウがイットのところまでやって来た。
マーズがそのまま前に盾を持って立つ。
「ミウ、炎を消せ。森に火が拡がりそうだ」
「はい、ロウ様」
さっきエリカが放った火の魔道によって頭を焼かれたオーガが暴れて、あちこちに下草や木の枝に炎がうつり拡がっていた。
ロウの指示を受けたミウが手を両手にかざす。
どういう魔道がわからないが、風も水もないのに、あっという間に火が消滅していく。
すると、さっきのオーガキングが苦悶の吼え声をあげた。
透明の不定形性に覆われて、四肢の動きを封じられてもがいている。
ロウの粘性の術──?
「ところで怪我をしたか、イット?」
ロウがコゼがまだ握っていたイットの右手に手を伸ばした。
「あ、あのう……。ええ──?」
あっという間に、さっき折れた指の痛みが消えていく。
もしかして、負傷が治った?
だが、イットにはあらゆる魔道が効果がない。
治療術などまったく受けつけず、自然治癒しか身体を癒す手段はないはずなのだ。
でも、ロウはそんなイットの身体を治す不思議な術を遣う。
お陰で、イットの身体にあった昔の生傷なども、いまは消え去りきれいな肌になっている。
本当に不思議な人だ。
「あ、ありがとうございます……」
イットは頭をさげた。
「こっちはいいわよ。マーズ、加勢してきて」
コゼが前に出て、マーズの位置に立つ。
マーズはちらりとロウに視線をやり、ロウが小さく頷くのを確認すると、粘性体に包まれてもがいているオーガキングを見る。
「行きます」
マーズが前に進む。
そのときには、シャングリアもエリカもオーガキングに集まっていた。
三人がオーガキングが斬りかかる。
オーガキングの巨体が倒れて動かなくなるまでに、それほどの時間はかからなかった。
「終わったな」
ロウが言った。
三人が戻って来る。
「ご苦労さん、みんな」
ロウが笑った。
全員が集まってくる。
イライジャはいないが、おそらく幌馬車に残っているのだろう。
そのとき、エリカがイットの前に立った。
凄い形相をしている。
どうやら、怒っているみたいだ。
ちょっとイットはたじろいだ。
「この馬鹿──。なんで飛び出したのよ──。ふざけないで──」
いきなりエリカがイットの頬を平手で引っ叩いた。