【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「この馬鹿──。なんで飛び出したのよ──。ふざけないでよ、イット──」
いきなり頬を引っぱたかれた。
イットは避けようと思えば避けることができたエリカの打擲をあえて受けた。
激怒の形相を浮かべているエリカの目に、薄っすらと涙が浮かんでいたからだ。貞操帯を嵌めたまま魔物の軍団に、ひとりで飛び込んでいった自分のことを心から心配しているのだと悟った。
もしかしたら、獣人の自分を疎んでいるのではないかと思っていたエリカがそんな反応をしたことに、イットは少なからず動揺した。
そして、正直嬉しかった。
十歳のときに、実の父親に奴隷商に売り飛ばされて以来……、いや、それ以前からだって、イットを心から心配してくれた者などいなかった。
奴隷商の女は、まだ性に未熟な童女のイットを、鬼畜な性拷問により、ひたすらに淫乱な体質に作り変えただけだったし、最初に売られたカロリックの老人は、獣差別主義者であり、イットをして性行為のできる家畜同然に扱った。
次に売られた隊商の主人のアンドレには、ましな扱いを受けたが、そこでのイットの役割は、食事代のみで抱き放題の少女娼婦だったし、あるいは、ひとりで傭兵一個隊に匹敵する戦闘能力の持ち主としての使い勝手のいい護衛だった。
だからこそ、使い物にならなくなったときに、アンドレは躊躇なくイットを殺処分しようとした。
イットは、これまでの短い人生において、ずっと理不尽な扱いを受けていたし、それが当たり前であって、常態だ。
目の前のエルフ族の女のように、イットを身を半泣きで心配し、無謀な行動を激怒してくれた者などいない。
イットは、叩かれたことで呆然としてしまった。
だが、そのときだった。
突然に自分の手が動いた。
また、あのときの感覚だ……。
咄嗟に思った。
数日前の朝、イットの意識とはまったく別に、まるで別の人格が支配したかのように、突然にロウの首を絞めようとしたときと同じ感覚が襲った。
気がついたときには、イットの意識は追いやられて、まるで違う「誰か」がイットの身体を支配していた。
イットはそれを同じ視線で後ろから覗いているような感になっていた。
「なにをするか、エルフ女──」
エリカの頬を叩き返していた。
イットはぎょっとしてしまった。
違う──。
叫ぼうとしたが、それはイットの口からは出てこなかった。
なんだこれ──?
イットの全身に恐怖が走る。
だが、背に冷たい汗が流れることもなければ、怖ろしさに震えることはない。
イットの身体は、目の前のエリカに対する怒りで満ち溢れていた。
しかし、イットには全く怒りなどない。
それどころか、イットを心配して叱ってくれたエリカが、本当に嬉しくもあった。
「うわっ、激しいわねえ」
横から聞こえたのはコゼの声だ。
ちょっと面白がっている口調であり、エリカを叩き返したイットを批判する感じではない。
そのときだった。
ふわりと誰かの身体を抱かれた。
それがロウだとわかったのは、抱き締められたロウに口づけされて、舌を入れられたときだ。
イットは、それに気がつき、ロウの舌を噛み千切って阻もうと思った。
いや……。
正確には、イットでない、別の誰かがそれをしようとした。
だが、ロウの唾液が口の中に満たされたとき、イットを操っていた「誰か」の力が脱力した。
熱いものが全身に拡がり、気持ちよさでなにもできなくなったのだ。
ロウがイットの口の中を舐め回してくる。
次々に唾液が流し込まれて、どんどんと抵抗力がなくなっていく。
まるで脳の中にある官能という官能が、ロウの舌で目覚めさせられている感じだ。
狂おしいまでの欲情に見舞われる。
貞操帯から外に出ている尾が、激しく動いているのがはっきりとわかる。
「はあっ」
ほんのちょっとだけ、口が離れた隙に、イットは大きく息をした。
すぐに、唇が接して、舌が再侵入する。
気持ちいい……。
イットは我を忘れて、唇を重ね合わせた。
急速に力が甦る……。
身体は脱力しているが、身体の支配を取り戻したということだ。
束の間、イットの身体を動かしていた「誰か」の存在を感じなくなる。
舌が舌に絡み、口の中を這い回る。
「んはあ、はああ……」
イットは荒い息を洩らして、自らも舌を絡ませた。
鋭い甘美感が全身を駆け巡る。
すっと、ロウが顎を引いた。
「はあ、はあ、はあ……。あ、あたし、なんで……?」
頭がぼんやりとする。
一瞬前の記憶が消えている。
なにが起こったんだっけ……。
そういえば、エリカの頬を張り返した……?
愕然とする。
なんでそんなことを……?
身体に恐怖が走る。
一番奴隷のエリカになんてことを──。
「も、申し訳ありません、エリカ様──」
慌ててその場に土下座をしようとした。
謝って許されることではないと思うが、とにかく謝らなければと思った。
「いいわよ……。わたしもいきなり叩いて悪かったわ……。だけど、叩き返すくらいの気安さがあるなら、いい加減にわたしのことを呼び捨てにしてくれてもいいんじゃない」
エリカがイットに叩かれた頬を押さえながら苦笑している。
ほかの女については、呼び捨てか、あるいは、名に“さん”を付けて呼んでいたが、一番奴隷のエリカだけは、“様”でイットは呼んでいた。
何度か、注意されたが、イットはずっとこだわって、エリカだけは“エリカ様”と呼んでいる。
それなのに、叱られて叩き返すなど……。
「いいから──」
だが、屈もうとした身体をロウに抱えられて阻止された。
「だけど、そんなつもりはなかったんです、エリカ様──。あ、あのう──」
イットは、ロウに抱き留められたまま、狼狽えて叫んだ。
突然に身体が、意思とは関係なく動いたのだ。
イットはとりあえず説明した。
信じてもらえるかどうかはわからないが、イットには叩き返す意思など皆無だった。それどころか、叱られて嬉しくもあった。
懸命にそれを説明した。
「落ち着けよ……。だけど、確かに変な感じだったな」
ロウが手を離す。
エリカも怒ってはないみたいだ。
ただ複雑そうな表情で笑みを浮かべている。
「イットも怒るのねえ。ちょっとびっくり」
「そうだな」
ミウとマーズが後ろから声をかけてきた。
このふたりについては、気安い感じがして、随分と仲良くなった。しかし、別の誰かがイットを乗っ取ったという途方もないことを信じてくれるだろうか。
しかし、事実なのだ。
「い、いえ、まったくそんな気などなくって……。だけど、手が勝手に……」
とにかく、説明しようとしてふたりを振り返る。
「珍しいことじゃないと思うぞ、イット。激しい戦い中で我を忘れたようになり、自分の意思とは別に、身体が反応して敵を攻撃していたということはある。そういう境地も、あたしは数回経験している」
マーズが言った。
彼女はハロンドール王国では有名な闘女のひとりだったという。死と隣り合わせで闘技を続けてきた少女だ。
そういうこともあるのだろう。
だが、さっきのイットはそういうものとは異なる気がした。
「いえ、マーズ、そんなんじゃなくて……」
イットは言った。
「いいのよ、最初のうちは誰もあんなものよ。シャングリアとあたしたちだって、武器で向かい合ったりして。ご主人様がとめてくれなければ、殺し合いしてたかも」
コゼだ。
「そうだったな。お前たちも気性が激しいしな」
「あんたがそれを言うの、シャングリア」
エリカが呆れた声を発する。
「いえ、なんかおかしかったんです。今だけじゃなくて、この前も……。あたし、エリカさんを怒る気持ちなんか、これっぽっちも……」
だが、イットの言葉の途中でロウがそれを遮る。
「もういい、イット……。それよりも、ミウ、魔物の死骸の焼却を頼む。このまま残すと、
ロウが言った。
「はい」
「わかりました。行こう、ミウ」
ミウとマーズがイットに手を振って離れていく。
ふたりとも、イットがエリカを叩いたことについて、深刻には考えていないみたいだ。
いや、ふたりに限らず、ロウも、当人のエリカも、それほど気にした感じはない。
「とにかく、申し訳ありません、エリカ様……」
「エリカよ──」
エリカが呆れたように声をあげた。
「……叩いてすみませんでした、エリカ……さん……」
取りあえず、イットは言った。
エリカが嘆息した。
「まあいいけど……。だけど、そんなものを装着したまま飛び出すなんて……。本当に驚いたわ……。そもそも、戦いの指揮をするのはロウ様よ。まずは、ロウ様を守る。そして、指示を受けて動く。指示をされないときもあるけど、とにかく、身勝手に動いちゃだめよ。わたしたちは六人で動いているのよ」
エリカが言った。
すると、コゼが横から口を開く。
「お説教はいいわよ。そもそも、あんたがいきなり叩くからでしょう。イットは謝ったけど、あんたは謝らないの?」
「いえ、エリカ様……エリカさんが謝ることなど……。あたしが……」
イットは声をあげた。
ほんの一瞬のことだ。
「もういい──。それよりも、俺が仲直りさせてやる。俺なりの方法でね」
ロウがエリカの両肩を軽く掴んだ。
そして、すっと後ろの樹の幹に、エリカの背中を密着させた。
「えっ──? ロウ様、なにを──」
困惑した小さな悲鳴がエリカの口から迸った。
ふと見ると、粘性体がエリカの背中に生まれて、完全に気に密着している。それだけでなく、粘性体がさらに伸びて、エリカの手首と足首を掴んだ状態になる。
それがエリカの手足を樹木側に引っ張り、背中方向に曲げて樹木にくっつける。
エリカは樹木を背にして、手と足を後ろにして抱きつく体勢に固定されてしまった。
ほんの一瞬ことだ。
「あっ」
イットは衝撃を受けてうずくまってしまった。
股間の淫具が突然に激しく動き出したのだ。
しかも、猛烈な痒みが股間から迸った。
「ああ、いやああ」
イットは咄嗟に股間をスカート越しに両手で抑える。
だが、貞操帯は外からの刺激を完全に遮断してしまっている。そういう貞操帯なのだ。
無意識に股間を押さえるが、まったく股間に手の動きは伝わらない。
一方で、痒みがどんどんと大きくなり、そこを振動で刺激される快感で、イットはくねくねと身体を捩らせた。
「股間に染み込ませた油剤による痒みを十倍ほどに活性化させた。振動も気持ちいいだろう?」
ロウが何でもないことのように言った。
だが、痒い──。
そして、激しい振動……。
イットはうずくまったまま腰をくねらせ続けるしかない。
「さて、痒みを鎮めて、貞操帯を外して欲しかったら、エリカを舌だけでいかせるんだ……。三回だな……。三回、エリカが達したら許してやろう。これで仲直りだ」
「そ、そんな、一番奴隷のエリカさんに、そんなことを……ああ、ああっ」
あまりの痒みに気が遠くなりかけたが、ほかのことならともかく、獣人のイットがエリカの股間を舐めて苛めるなど、畏れ多い……。
「ロ、ロウ様、悪趣味です──。そもそも、戦闘がいつ起きるかわからないのに、イットに貞操帯なんか嵌めさせていたロウ様が一番の……」
エリカが怒鳴った。
だが、ロウがすっとエリカのスカートの中に手を伸ばした。
「いいから、協力しろよ、エリカ。お互いに頬を張り合ったままじゃあ、遺恨も残るじゃないか。強烈な記憶で悪感情を上書きしてやるよ」
「悪感情なんか……。ひいい、ああっ、ロウ様──」
文句を言いかけていたエリカが突然に悲鳴をあげた。
なにをしたのかわからない。
ロウはエリカのスカートに手を伸ばしたものの、中にまで手を入れた形跡はない。
しかし、突然にエリカは拘束されながら身体を暴れさせだした。
「か、痒い──。痒いです、ロウ様──。ああああっ」
エリカが泣き声をあげた。
いまの一瞬で、エリカの股間に痒みを発生させたのか?
イットはロウの能力に唖然とする気持ちになった。
だが、イットもそれどころじゃない。
イットについても痒みと淫具の振動で追い詰められている。
「エリカ、痒みを癒して欲しければ、イットに頼むんだ。舌で舐めてくれとね」
「ああ、ひ、ひどいです、ロウ様──。あああっ、イット──。お願い──。言うとおりにして、痒いいい」
エリカが腰を激しく動かしながら、必死の口調で泣き声をあげた。
イットも、だんだんと拡大する股間の痒みに、あっという間に脂汗を浮かべてしまい悶絶した。
とにかく、痒みと股間の淫具の振動で腰がとまらない。
恥ずかしい。
「イット、舐めてええ、お願いよお」
エリカが叫んだ。
イットは仕方なく、エリカに跪いたままにじり寄り、エリカのスカートの中に顔を突っ込んだ。
エリカの下着は横で紐を結ぶかたちの小さなものだ。
イットも下着を身に着けるときには、同じ下着をつけている。ほかの女も同じである。
「ああ、早くうう」
エリカが頭の上から叫んだ。
イットはエリカの腰から下着を外した。
むっとするほどの女の香りがそこから拡がった。
「ふふふ、ご主人様も鬼畜ですね……。終わったら、ふたりとも犯すんですよね? あたしが準備させていただきます」
コゼの笑い声に続いて、彼女が跪く音……。
そして、すぐそばで、ロウのズボンから一物を露出させ、それを口に咥えた気配がした。
「おう、じゃあ、わたしもするぞ。場所をあけてくれ、コゼ」
シャングリアの元気な声もした。
*
続きます……。