【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
【バロンドール王国・ノール離宮】
宿している胎児を胎児と感じるには、まだ月日が足りないはずだ。
だが、アンはこうやってお腹に手を触れていると、確かに命の存在を感じるのだ。
男の子……?
女の子……?
女の子かな……。
なぜか、そう思った。
まだ、アンのお腹は妊婦であることがわかるほどに膨らんでもいない。ロウの子を孕んだということなど、魔道による妊娠検査によって、やっとわかったくらいだ。
ましてや、性別など、どんな手段であろうとわかるはずがない。
それにも関わらず、アンの直感は、お腹にいる子供が女の子であることを告げている。
よくわからないが、ロウはアンには、不思議な直観力が備わっていると言ったことがある。
それがアンの優れた力なのだと……。
だから、このアンの勘は当たっているのではないかと思う。
アンは出来損ないだ。
なんの取り柄もなく、王家に生まれたということ以外に存在価値などないアン……。
いや、王家と辺境伯という高貴な血筋を持ちながらも魔道力が存在せず、長女にもかかわらず王位継承のなかったアンは、まさに役立たずだ。期待された存在にもなれなかった。
だが、そんなアンについて、他人よりも秀でたものがあると言ってくれたのは、ロウが初めてだった。
父親であるルードルフ王は、アンには興味はなく、夫になったキシダインはひたすらにアンを蔑んで暴力と侮蔑を与え続けた。
実母のアネルザはアンを愛してくれたし、エルザもイザベラもアンを大切にはしてくれるが、アンにもなにかの取り柄があるなどとは思っていないだろう。
庇護し、保護すべき存在……。
そう考えているはずだ。
無論、それについて、アンに不服はない。
なんの力もない役立たず……。
それがアンであり、王族の血を引いているという以外に、アンに価値はない。
女としての価値さえも、前夫であるキシダインの暴力によって、幾人もの男に凌辱された身体だと知れ渡っているいまでは、限りなく底辺だ。
同じ魔力無しでも、エルザは類いまれな知識や治政の能力がある。そして、イザベラは、最小限ながらも魔道力を持ち、さらに、アンよりもずっと若いのに、すでに王太女として指導者として気質を示しだしている。
しかし、アンにはなにもない……。
だが、そんなアンをあのロウは大切にしてくれる。
愛でてくれる。
ほかにも、多くの愛人があるが、アンたちもまた、ふたつ無きものだとささやいてくれる。
アンの身体を悪戯して、アンがロウの前で痴態を晒す姿を愉しいといって、悦んでくれる。
嬉しかった……。
そして、それだけでなく、ロウはアンに誰にも存在しない能力があり、それは“直観力”だと言ってくれたのだ。
それどころか、なにかの判断に迷えば、アンの意見に従えと、イザベラに助言さえした……。
あれはいつのことだったか……。
いずれにしても、アンが誰かの役に立つ……。
そんなことを口にしてくれたのはロウだけだったし、アン自身もそれを信じてなかった。
だから、とても嬉しかったのだ
「冷えませんか? 腰掛けをお持ちしますね」
ノヴァが目の前にある紅茶を交換しながら声をかけた。
アンが座っているのは、温かい陽射しの射し込む部屋の窓際であり、十分に温かい。しかし、アンが子を授かって以来、ノヴァはすごく過保護なのだ。
アンはくすりと笑った。
また、この部屋には、アンとノヴァしかいない。
アンはノヴァに甘えたくなってしまった。
「腰掛は必要ないと思うわ。だけど、それを言ったら、あなたはわたしを叱るのでしょう?」
「アン様を叱りなどしません。でも、冷えることはよくないと思うのです。大切なお身体なのですから……」
「だったら、お隣にお座りなさいな。あなたが一緒に腰掛けをしてくれるなら、言われたとおりにするわ……」
アンは笑った。
ノヴァは、ちょっと困った顔になったが、すぐに顔を赤らめて微笑む。
そして、アンの座っている長椅子に座り、アンと身体がぴったりと密着させた。
さるに、長椅子の隅にある掛け布をとって、アンの腰からお腹にかけてかける。
アンはそれをさらに伸ばして、ノヴァの腰も包み込んだ。
「さあ、ノヴァ……」
アンは掛け布の下で、ノヴァのスカートの下にすっと手を入れる。
ロウが短いスカートが好きなので、ノヴァに限らず、ロウの女たちの全員が膝よりも丈の短いスカートをはいている。
だから、簡単にノヴァのスカートの内側に手を差し込むことができるのだ。
「だ、だめです……。お、お身体に……お身体に触っては……」
ノヴァがアンの手をとめるように、布の上からアンのふしだらな手をとめる仕草をした。だが、その力は弱い。
また、アンには、すでにノヴァが自制を失いつつあるのがわかっている。
ノヴァとアンは一心同体だ。
彼女がなにを考えているのか、どう感じているのかはわかっている。ノヴァもまたアンのことなどお見通しだろうが……。
アンとノヴァは、別々の人間でありながら、ふたりでひとりだ。
ロウがそうしてくれたし、アンとノヴァもそれを望んだ。
いずれにして、アンとノヴァは、ロウの施した不思議な力により、お互いの快感が共鳴するようにされている。
アンが触られて感じた性の快楽がノヴァにもそのまま伝わるし、ノヴァの受ける愉悦はアンのものとして、こっちの身体に込みあがる。
だから、アンは、ノヴァがかなり性の疼きを抱えているのがわかっていた。
ロウに抱かれない日々は、アンだけでなく、ノヴァにもまた、どうしようもない性の疼きとして、性の飢餓を与えている。
おそらく、イザベラもそうだろうし、アネルザたちも同じだと思う。イザベラの侍女たちも……。
彼女たちがそれをどうやって耐えているのかはわからないが、アンとノヴァについては、お互いの身体を慰め合うことで、ロウのいない日々の苦しみを癒して過ごしている。
最初の日々は、ロウの置き土産の「ふたなりの指輪」を使い、どちらかの股間に男根生やして、犯し合うということを続けていた。
しかし、しばらくすると、アンの妊娠がわかったので、さすがに男根で交合をすることはやめたが、それでも手で慰め合うということはやめられないでいた。
身体が疼くのだ。
とても、我慢できるものじゃない。
アンについては
それに、アンには、ノヴァの身体の疼きは伝わるので、ノヴァがそういう行為を望んでいるのは、アンの身体が疼くことで、それを知ってしまう。
アンがしたいときには、ノヴァもまたしたいということだ。
ふたりにとっては、隠し事は不可能だ。
「だ、だけど……」
しかし、それでもノヴァは、アンとノヴァが愛し合う行為が宿った胎児に影響があるのではないかと心配する。
でも、それは問題ない。
むしろ、こういう性の疼きを抱えたまま、日々を耐える方が胎児には悪影響がある。
アンにはそれがわかっていた。
「問題ないのよ、ノヴァ……。お母さんが気持ちよくなると、お腹の赤ちゃんも気持ちよくなるの……。お母さんが誰かと愛し合う悦びを受けたとき、赤ちゃんは幸せを感じる。さあ、お願いよ。わたしと赤ちゃんを今日も幸せにして……」
アンはさらに指を伸ばして、ノヴァのスカートの中の下着に触れる。
ロウの女たちは、全員が腰の横で紐を結んで留める小さな下着をしている。ロウがそれを気に入っているからだ。
アンは、すっかりとびしょびしょになっているノヴァの下着の隙間に指を差し込み、ノヴァの無毛の亀裂に指をあてがう。
「ああっ、ひあ」
「ふわっ、ああ……」
ノヴァの股間にアンの手が触れた瞬間に、アンの身体にも甘い快感が駆け抜けていった。
快感の共鳴だ。
ノヴァの受けた興奮と快感が、アンにも同じものとして伝達してきたのである。
アンとノヴァは、この「共鳴状態」のために、お互いの愛撫は自分自身の快感として跳ね返る。
大掛かりな「自慰」をしているようなものだ。
「き、気持ちいいわ、ノヴァ……。幸せ……」
「わ、わたしも幸せです……」
ノヴァが手で阻止しようとする仕草をやめて、アンを抱き締めてきた。
そして、アンの服の下に手を入れて、胸巻きの下の乳首に触れてくる。
「んふっ」
「はあっ」
すると、甘い痺れが走って、ふたりで身体を弓なりにして悲鳴をあげてしまった。
すっかりと息も乱れてしまった。
「ふふ、触っただけでこれなんて、アン様はとてもいやらしいですね」
ノヴァが悪戯っぽく笑った。
満面の笑みだ。
ノヴァの笑顔に接して、アンも心の底から嬉しい。
キシダイン邸の日々で、アンもノヴァも死を覚悟していた。
しかし、死なないでよかった。
ふたりであれば、死ぬことなど怖くなかった。むしろ、あの館の日々は、死こそ、アンたちを開放してくれる望みだった。
だが、死なないでよかった。
本当の幸せは、死の外にあった。
ロウのくれた人生は、素晴らしい桃源郷だ。
「わ、わたしの身体はあなたの身体よ、ノヴァ……。わたしがいやらしければ、あなたもいやらしいのよ」
アンはノヴァのびっしょりの股間をゆっくりと撫で、クリトリスを見つけて弾くように動かした。
一方でノヴァは親指と人差し指でアンの乳首を挟んで、こりこりとしごきだす。
「ああっ、ああああ」
「き、気持ちいい──」
お互いの愛撫が激しい性の痺れになる。
喘ぎ声が部屋に響きわたる。
全身が脱力する。
「ア、アン様……」
「ノヴァ……」
愛撫をし合いながら、口づけをする。
舌を絡め合い、音が鳴るほどに唾液を交換していく。
全身が熱く昂ぶる。
「んはあ、はあ、はあ、あああっ」
「はああ、あああ」
迸る快感に息が続けられなくなり、口を離す。
そのあいだも、それぞれの愛撫は続いている。
痛みにも感じるむず痒さが快感の電撃になり、身体を次々に駆け抜ける。
ノヴァが艶めかしく喘ぐ。
本当に可愛らしい……。
アンもまた、幸福感に嬌声をあげていた。
「アン様、一緒に……」
「ええ、ノヴァも……、ああっ」
股間と胸でそれぞれの指が動くたびに、下半身がどうしようもなく熱くなる。
じんじんという痺れが腰を震わせる。
「ああ、あああ」
「あああ、あああっ」
身体はどうしようもなく痺れ切っている。
ノヴァもそうだろう。
すでに制御できない。
いつの間にか、知らず、もう一度口づけを貪っていた。
「んんんんんっ」
「んん、んふうううっ」
ふたりで激しく腰を痙攣させて、絶頂に昇り詰めた。
アンは掛け布の下から手を出して、ノヴァの背中を抱き締める。
ノヴァもまた、同じようにアンを抱き締めてきた。
「アン様、幸せです……。ところで大丈夫ですか……?」
「問題ないわよ……。だって、気持ちいいんですもの」
アンは荒い息をしながら、ぎゅっと抱き締めてきたノヴァに微笑みかけた。
もっとも、抱き合っているので、お互いに顔は見えない。だけど、ノヴァは微笑んでいるはずだ。
アンがこんなに幸せなのだから……。
「汗をお拭きしますね……」
しばらくは抱き合ったまま、快感の余韻に浸っていたが、やがてノヴァが立ちあがった。
部屋の中には、簡単な湯の準備ができる魔道具があり、それでノヴァが桶に汲んだ湯を布とともに持ってきた。
お互いに半裸になり、身体を拭き合う。
アンとノヴァに主従はない。
ノヴァに身体を拭いてもらったあとで、今度はアンがノヴァの身体を拭く。
ノヴァも嫌とは言わない。
そんな関係もすっかりと慣れてしまった。
相手の身体を拭くと、その刺激が自分にも伝わる。
身体のもどかしさを感じながら、なんとか終わらせて服を整えた。
「そういえば、エルザの様子を見に行こうかしら……」
理由はない。
だが、不意にエルザを顔を見なければならないという切迫感が込みあがっていた。
王都に戻ったサキの企てにより、王都に戻れないイザベラやアネルザの代わりに、エルザは王都に赴くことになっていたが、その決心の直後にエルザが熱を出してしまい、数日寝込んでいた。
熱が下がり次第に、王都に向かうことになっているが、いまのところ回復の兆しはない。
そのエルザが寝ている部屋に行かなければ……。
不可思議な感情がアンを襲ってきた。
すると、扉にノックの音がした。
ノヴァが立ちあがって、扉を開いた。
そこにいたのはイザベラの侍女のひとりであるユニクだ。
可愛らしい顔をしていて、いつも朗らかに微笑んでいるが、今日は深刻そうな表情をしている、
どうしたのだろう?
「アン様、姫様がお呼びです。王妃殿下もお待ちです……」
部屋に入ってきたユニクが言った。
アンは立ちあがった。
「すぐに行くわ……。ノヴァもいらっしゃい」
「はい」
なんの用事だろうか?
廊下に出た。
すると、急に違和感を覚えた。
館の中が慌ただしい。
また、少し離れているエルザの部屋に、数名のイザベラの侍女が張り付いている。
まるで、部屋から誰も外に出ることがないように見張っている感じだ。
「どうかしたの?」
アンはユニクに声をかけた。
「それについても、姫様がお話になると思います」
アンは頷いた。
しかし、不意に足をとめた。
やはり、心がざわめく。
なによりも先に、エルザの部屋に行かなければという気持ちに襲われる。
嫌な予感というやつかもしれない。
どうして、そんなことを考えるのかわからないが、イザベラのところに行くのではなく、エルザのところに行かなければ……。
「イザベラを呼んでくれる。逆に、こっちに来て欲しいと……。そこをどいて。中に入るわ」
アンはエルザの部屋の前に向かう。
三人の侍女、つまり、モロッコ、トリア、ノルエルが扉を遮っている。
「お待ちください。いま、エルザ様とエルザ様が連れてきた五人の侍女がここに集まっているんですが、そのまま部屋に閉じ込めているように命じられているんです」
モロッコが代表するようにアンに告げた。
アンは首を傾げた。
「中に全員が? なにかをしているの?」
「エルザ様の看護だと思いますが、もしかしたら、防音の護符でも張っているのかもしれません。一切の物音がしませんので……。ただ、姫様からはちょうどいいので、捜査が終わるまで、部屋から誰も出さないようにしろと命じられているんです」
モロッコだ。
防音の護符?
どうして、防音を?
嫌な予感の切迫感が続いている。
むしろ大きくなっている。
そろそも、捜査って、なに?
「アン様、開けてください──。モロッコさん、内鍵がしてあるなら壊して──」
ノヴァが声をあげた。
彼女もまた、なにかの不思議な予感を覚えたのかもしれない。
ロウがアンに、不思議な直感力があると口にしたが、ノヴァについては、幸運的な選択力があると言った。
なにかに迷ったときには、自分の本能に従えとも……。
「開けなさい、モロッコ。命令です。すぐに──」
アンは叫んだ。
滅多にないアンの強い言葉に、モロッコたちは困惑したようになったが、すぐに扉を開いた。
鍵はかかってなかった。
しかし、部屋に入ると、エルザの周りに群がって、押さえつけている五人の侍女たちの姿が映った。
こっちを見て、ぎょっとした表情をしている。
また、侍女のひとりがエルザの口になにかを無理矢理に注ぎ込もうとしていた。
「その手を離しなさい、あんたら──。なにをしているのよ」
モロッコが部屋に飛び込んだ。