【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
【ハロンドール王都・ラポルタ家の王都屋敷】
マーリンが移動術で去っていった。
荷物だらけの屋敷の部屋にひとり残されたかたちになる。
部屋には光源にした魔道の小さな光球が浮かんでいて、テレーズの影が床と積みあがった箱にかかっている。
だが、しばらく待つと、その影からすっと人影が浮かびあがった。
サキだ。
目の前にサキの姿が実体化していく。
テレーズは微笑んだ。
「あれでも、マーリン様は、タリオ公国では随一の魔道遣いなのよ。純粋な魔道の能力だけでなく、魔道研究の第一人者なの。それなのに、よくも悟られずに忍んでいられたりするわね。あれで、かなり用心深くて、魔道のかすかな兆候にも敏感なんだけどね」
テレーズは言った。
そのときには、サキは影から脱して、完全にいつもの姿に戻っている。
ルードルフの寵姫としてすごす丈の長い豪華な服だ。布の生地は真っ黒でサキの雰囲気によく合っている。
「そう思っているだけの世間知らずであろう。わしから見れば小者だ」
「彼が小者? タリオ公国のマーリンといえば、誰もが怖れる魔道の鬼才よ。タリオ公国では、彼に対する尊敬を込めた呼び掛けとして“賢者”という言葉を使うみたいよ」
「小者だ。まあ、純粋な魔道の能力だけなら、あの女神殿長が上だな。あの女は、わしの亜空間に閉じ込めていた状態で、王宮に
サキがたったいままで、マーリンが座っていた箱に腰をおろして、腕組みをする。
テレーズは、なぜか意味なく自分の顔がほころぶの感じだ。
そして、すぐにその理由を悟った。
この魔族の女といるとほっとするのだ。
テレーズは、これまでの人生において、無論、魔族という存在と付き合うのは初めてなのだが、存外に過ごしやすいと思うようになっていた。
このサキだけのことなのか、魔族全体のことなのかはわからないが、この女には裏がないのだ。
愉しんでいるときには思い切りの笑顔になり、気に入らないことがあると怒りの感情を顔でも態度でも表す。口惜しいときにはそんな顔になり、驚いたときには、こっちが笑うくらいに呆然とする。
心と表情が完全に一致する。
それは見ていて、とても小気味いい。
だが、テレーズがこれまで接触した人間たちは違う。
マーリンもそうだし、深く付き合ったわけではないが、アーサーという大公もそうだ。少なくとも、こういう裏稼業の者たちは共通的に他人に自分を晒け出すことがない。
彼らは、大抵のことは無表情でやり過ごすし、逆に、怒っているときには笑い、愉しんでいると気に入らないような顔をしたりする。
面倒だし、疲れる。
そんな連中に比べれば、サキはいい。
テレーズに剥き出しの敵意を向けて来るし、それを隠そうとしもしない。
口惜しいと思うと、心の底からの口惜しさを態度で示してくれる。これでいて、怒りはそんなに持続せず、気分屋でころころと感情も変化する。
とても面白いのだ。
なによりも、これだけの気性の荒い魔族の女が、ロウという男の話を口にするときには、こっちが赤面したくなるほどの愛情を表情に出す。
もしも、こういう立場でなければ、テレーズは心からの望みとして、この女を友達にしたいと考えただろう。
とにかく、純粋なのだ。
怒っていても、笑っていても……。
「いずれにしても、安心したわ。あなたはマーリン様に悟られることなく近づけるのね。もしかしたら、他人ではなく、マーリン様の影に潜むこともできる? それでも、発覚しない自信は?」
「わしの術があんなおいぼれに見破られるわけがないわ。わしを誰だと思っておる。空間を操り、隠れることのできないところに隠れ、進むことのできない場所に進むことは、わしの得意中の得意の技だ。亜空間の中では時間さえも操るのだぞ」
サキが得意満面の笑みを浮かべる。
やっぱり愉しい……。
その顔には、照れなど微塵もない。
自分に実力があると、それをこれ見よがしに表現する。
それに裏はない。
本当に純粋……。
テレーズは、その純粋さに接すると、それが羨ましくなるとともに、これにもっと接したくなる。
この魔族女がさらに感情を剥き出しにするところを見たいな……。
そんなことをちょっと考えた。
少し動揺させられないだろうか……。
特にそうする理由はない。
しいて言えば、サキの反応が面白いだけだ。
「話を聞いていたんでしょう? あたしとマーリン様の話も……。マーリン様と公爵たちの会話も……」
サキが忍んでいたいのは、テレーズの影だ。
だから、テレーズが接していた“声”や会話はひと言漏らさずに、サキに伝わっていたはずである。
「無論、聞いていた。下衆はどこまでも下衆だな。下衆の思いつきで、孫娘をあの無能王に犯させるのか? そもそも、それが新しい王として、とって代わることとなんの関係があるのだ? 王になりたければ、王を倒す。それだけのことであろう」
「そう単純にはいかないのが、人間族の世界でね」
テレーズは肩を竦めた。
すると、サキが鼻を鳴らした。
「とにかく、わしはそういう人間族のややこしいところが大嫌いだ。策略を使って騙し、あざむいてなにかをするなど、わけがわからん。なんで、そんなややこしいことするのかも理解できん」
「そんなことを言っているから、あなた方は人間族に騙されて、この世界から追放されたりしたんでしょう?」
テレーズはわざと小馬鹿にしたような笑いをした。
すると、サキが立ちあがって、顔を真っ赤にした。
「なんじゃとう――」
テレーズもよく知っているわけではないが、かつて、魔族と人族は共存していた時代もあったのだという。
だが、「冥王戦争」と言われる種族争いに敗北した魔族は、絶対的な「悪」として異界に追放され、しかも、そのときに人族側に加担した魔族たちもいたらしいが、彼らもまた、最終的には異界に追い出されてしまった。
つまりは、戦うときには魔族間で仲違いさせられ、戦いが終われば、人族に協力した魔族種もまた、結局異界に追放された。
すなわち、人族の権謀術数の罠に嵌まったということだ。
おとぎ話のたぐいではなく、れっきとした歴史の中の事とのことである。
「わしたちを愚弄するか、貴様──」
サキが激昂して怒鳴り声をあげる。
本当に面白い……。
前にも同じことを言ってからかったが、そのときも素直に怒ってくれて、面白かった。
テレーズは噴き出してしまった。
「やっぱり、あなたって愉快ねえ……。とにかく、どうするの? 王様に襲われることになっている公爵令嬢は?」
「知るか──。わしに関係ない」
サキが不機嫌そうに言った。
だが、テレーズはどうしても、サキをからかうのをやめられそうにない。
この魔族女は、感情の起伏が激しくて、しかも、それをしっかりと表現してくれる。
本当に、これまでのテレーズの周りにはいなかったタイプだ。
「だって、園遊会で令嬢を集めるから、王の令嬢喰いを自粛させろとか言っていたじゃない」
「ひとりくらいはよい」
サキは吐き捨てるように言って、座り直した。激昂から落ち着いたのだろう。
「じゃあ、第三神殿の神殿長のことは? 進めていいの? あの王の慰み物にするなんて……。聞いていたんだからわかると思うけど、」
「はああ──? お前が口にしたことだろうが──。スクルズを排除したいのであろうが──」
サキが思い切り、テレーズを睨んできた。
「だって、あの王は、もう正気を失っているのよ。本当に、ちょっと勃起できなくなっただけで、あんなに分別がつかなくなるなんて面白いわねえ。スクルズに絶対手を出すわよ」
「貴様、さっきから、わしを弄んでおるな──。スクルズの話はもう終わったであろうが──。スクルズは消える──。その代わり、わしは
サキが声をあげた。
やっとからかわれていることに気がついたみたいだ。
「交換条件ねえ……」
テレーズは苦笑した。
スクルズの件については、思ったよりも反応が低い……。
魔族と人族とでは、仲間意識には差があるのか? まあ、仲間とはいっても、ロウという男を通じて繋がっている集団のようだし……。
いずれにしても、ちょっと物足りないかな……?
もっとサキを怒らせたい。
こんなに愉快な玩具はない。
「ねえ、ちょっといらっしゃい。あたしの前に立って、スカートまくってくれる」
テレーズは事も無げに言った。
サキが一瞬だけ、きょとんとし、すぐに顔を真っ赤にさせた。
「ふ、ふ、ふざけるな……」
あまりの怒りに声が震えている。
これだ──、これ。
この正直で露骨な感情表現が愉しい……。
「あら、逆らうの? だから、こういうことを時々やらなければだめなのよね。最近、慣れ合っているから、どっちの立場が上で、どっちが下かわからなくなっているでしょう……? それとも、真名を口に出していい……?」
テレーズはサキの真名を小さく口にした。さらに、「命令」だと付け加えて……。
「き、貴様……。お、覚えて……おれ。い、いつもいつも、同じようなことばかり……」
サキはまさに怒りの頂点という表情だ。
だが、一方で身体はテレーズの両手は、テレーズの言葉に従い、立ちあがってテレーズの前に立って、スカートを捲りあげる。
テレーズは思わず笑った。
だが、確かに、このサキにはこうやって、真名の束縛で恥辱的なことを強要しては、いたぶってからかうということをしている。
だって、面白いのだ。
「……そろそろ、覚えたわ、あなたの弱いところ……。いずれにしても、随分感度がいいわよね。日頃のあなたの言動と敏感な身体がアンバランスなのがいいわあ」
わざとサキが嫌がる言葉を選んで、さらに怒らせる。
だが、耳元で真名を言い、脚を開いて静止するようにささやく。
これだけで、サキほどの上級魔族が無力になる。
本当に、魔族というのは、哀れな種族である。
サキの脚が開く。
ぎりぎりとサキの噛みしめる奥歯の音が聞こえた。
テレーズは、サキをからかうために、最近持ち歩いている淫具を出した。ほんの短い差し棒であり、軽く魔道を込めると先端が振動するようになっている。
テレーズでも扱える簡単な魔具だ。
それをサキがまくっているスカートに差し込み、下着の上からあてがい、すぐに振動をさせた。
「うっ、くっ」
サキが顔をひきつらせた。
そして、懸命に声を殺している。
しかし、差し棒の先端は、下着越しだが、サキの敏感なクリトリスにしっかりと当たっている。
白いサキの下着が丸く染みを作るのがわかる。
あっという間のことであり、本当に敏感なのがわかる。
「気持ちいい? あなたのご主人様の愛撫とどっちが気持ちいいかしら? 正直に言うのよ、命令……」
テレーズはくりくりと肉芽を棒で上下左右に動かす。
「ひっ」
サキがびくりと身体を反応させる。
だが、その顔はテレーズを睨み殺さんばかりに激怒している。
テレーズはますます、愉しくなった。
「ねえ、答えてよ。気持ちいいでしょう? その反応じゃあ、訊かなくてもわかるか」
「や、やまかしい──。主殿の愛撫は、神様のように素晴らしいのだ。こ、こんながらくたと比べものになるか──」
サキが叫んだ。
しかし、ロウのことを話すときだけ、一瞬だが愛おしそうな表情になる。
純粋に慕っているのだなあと思った。
まあ、すぐに、テレーズに対する怒りの顔に戻るが……。
だけど、真名で心を縛ってまで、正直に言えと強要したのだから、本当にロウの手管は凄いのだろうか。
真名で嘘を言えないようにしたのだから、サキが比べものにならないと口にするなら、少なくともサキはそう思っているということだ。
「じゃあ、しばらくやるけど、達しちゃだめよ。命令だからね、リュンネガルト・ゴーテンバウム・サキュテスト……」
テレーズは言った。
ちょっとした思いつきだが、真名で達するなと命令したら、本当に絶頂しなくなるのだろうか……。
それとも、とことん我慢した挙句に、やっぱり身体は反応するのか?
真名で縛るのは心と行動だから、身体の自然反応までは縛れないはずだが……。
「き、貴様……」
サキがすごい形相になる。
テレーズはぎゅっとクリトリスに振動している棒を押し当て、さらに魔道を込めて、振動を強くする。
「ひっ、ひい、うくつ」
サキの身体がぴんと伸びた。
それだけでなく、身体が震えだす。
かなり効いている……。
「口惜しいでしょう? だから、魔族は真名を簡単に支配されないようにしなきゃだめなのよ。油断しているから、こんなことになるのよ。マーリン様も狙っているからね。支配されないように気を付けてね」
テレーズは言った。
サキが眼を見開いた。
「マ、マー……リン……? う、くくっ、な、なんで……、あくっ」
サキが甘い声が漏れそうになるのを我慢しながら、テレーズを睨む。
テレーズは愛撫を続けながら、サキに視線を送った。
「当然でしょう……。なにしろ、あなたを一時的に無力化する魔族殺しを準備したのは彼なのよ……。本当は、彼自らあなたのような強い魔族を支配したいの……。だけど、慎重だからね。臆病と言っていいかしら」
「お、臆病……?」
「直接に支配するのが怖いのよ……。まともにやれば、あなたが強いのはわかっているしね。だから、あたしを通じて支配したのよ……。でも、あたしが真名で支配して、問題なく、あなたを奴隷のように扱っているのがわかるし、そろそろ、接触してくるんじゃないかしら。自分も真名で、あなたを縛ろうとして……」
「ま、まさか……わ、わしの、真名を……あ、あいつに……、うう、う、動かすな……、あああっ」
「もちろん、教えたわ。だって、あたしもあいつに支配されているのよ。訊ねられれば、正直に言うしかないわ。それしかできないのも。だから、指示される前に、こっちから教えたの。あなたの真名だと告げて……。リュンネガルト……ゴ……サキ……と……」
テレーズは笑った。
そして、懐から小瓶を出す。
中には油剤が入っていて、中身は即効性の媚薬だ。
しかも、かなりの強力なものである。
下着に振動をあてながら、もう一方の手で、下着を引っ張り、中身を全部こぼして注ぎ込む。
どろりとした媚薬がサキの股間にべっとりとまとわりつく。
「うわっ、な、なにを……ひいいっ、んぐううううっ」
あっという間にサキが絶頂の仕草をした。
「達しちゃだめよ。命令よ」
テレーズは笑った。