※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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383 庭園の兇行

「お、お嬢様、早く──」

 

 ケイトが前を走りながら叫ぶ。

 だが、夜会のときほどではないが、茶会で身に着ける衣装も、それなりに嵩張るし、重い。しかも、後手で手首に手枷を嵌められていて、うまく身体を動かせない。足元もおぼつかないし、あっという間に、ルードルフ王が迫ってきた。

 

「そ、そんなこと言っても……」

 

 エリザベスは懸命に走りながら、泣き言を口にした。

 切られてはだけている衣装が左右に分かれて、腕は胴体にまとわりつくのだ。うまく走れないし、まるで上体まで拘束された感じになり、いよいよ動きにくい。

 さらに足元が路面に引っ掛かって、転びかける。

 

「裸足になってください──。そして、走って。あたしが時間を稼ぎます。そのあいだに、とにかく遠くに逃げてください──」

 

 ケイトが振り返って、エリザベスの後ろに行く。

 振り返ると、ルードルフ王がすぐそばまで近づいていた。

 ケイトが両足を踏ん張るように立ち、卑猥な笑いをしながら、明らかに常軌を逸しているルードルフ王に向かい合う。

 

「時間を稼ぐって──。い、一緒に逃げるのよ」

 

「できません。お嬢様が捕らわれれば、まずはお嬢様から犯されます。とにかく、誰かを連れてきてください──。もう、後ろを見ずに走って──」

 

 ケイトが顔を振り向いて、必死の形相で叫ぶ。

 公爵令嬢である自分に、侍女の身で命令するとは何事かと思うことはなかった。

 それよりも、考えているのは、ここでケイトが足止めをするということは、あのルードルフ王がケイトを凌辱するだろうということだ。

 それは、怖ろしいことだった。

 

「ほれ、ほれ、待たんか。余の一物がたぎっておる。エリザベス、余の相手をするのだ」

 

 ルードルフ王が間近に迫る。

 ケイトが駆け進んで、体当たりしたのが見えた。

 

「んっ? おっと……」

 

「あぐううう」

 

 だが、そのケイトがルードルフ王に当たった瞬間に、ケイトが絶叫して崩れ落ちた。

 一瞬だが指輪が白く光ったように見えたので、あの指輪の魔具で電撃を放ったのだろう。

 でも、ケイトは倒れながらも、ルードルフ王の服に噛みつくようにして、一緒に地面に引き倒した。

 しかも、ルードルフ王の身体の上にのしかかり、馬乗りになって、脚を挟んで胴体を締めつけるようにしている。

 

「犯すなら、あたしを犯しなさい──。この変態王──」

 

 ケイトが叫ぶのが聞こえた。

 仮にも国王である相手に、そんな口をきくのは驚いたが、あんなにも気性が激しい性質だというのは初めて知った。

 とにかく、ケイトは必死の姿だ。

 エリザベスは、心の中でケイトに謝りつつ、靴を脱いでその場を駆け去った。

 

 すぐに、喧噪の気配が遠くなる。

 花園の辻を曲がる。

 しばらく走る。

 やはり、誰も出てこない。

 息が切れる。

 どれくらい駆けたか。

 エリザベスも、王宮にそんなに詳しくないので、迷ってしまい、あちこちを動き回ることになっていまった。

 こうしているあいだも、ケイトが……。

 気が焦る。

 すると、やがて、建物が近くなってきた。

 正殿だ。

 やっと、ちらほらと警備に立つ近衛兵の姿が遠目に映るようにもなった。

 

「誰か──、誰か来なさい。グリムーン家のエリザベスです──。誰か、来なさい──」

 

 心の底から絶叫した。

 こんな格好を見られれば、公爵令嬢としての自分の醜聞だとかを考える余裕はなかった。

 いま、ケイトがどんな目に遭っているのは想像もしたくない。

 ケイトを助けないと……。

 考えていたのはそれだ。

 

 やがて、ふたりほどの近衛兵が走り寄ってくるのが見えた。

 エリザベスはほっとして、その場にしゃがみ込んでしまった。

 

「こ、これは──。グリムーン公爵家のお嬢様……。どうして、こんなところに──? しかも、その格好は……」

 

 走り寄って、まず声をかけたのは、背の高い女性騎士だった。もうひとりは男の騎士である。

 女性騎士は、はだけているエリザベスの服を掴んで寄せ、エリザベスの下着を隠すようにした。

 そして、エリザベスの後手に手枷が嵌められているのを見て、目を丸くしている。

 

「こ、後宮のそばの庭園で……暴漢に襲われて──。わたくしの侍女が襲われてます。早く助けなさい」

 

 咄嗟に言った。

 “暴漢”だと口にしたのは、その暴漢がルードルフ王だと知れば、そのまま放っておかれる可能性を考えたからだ。

 もしかしたら、この近衛兵そのものが、ルードルフ王に協力しているかもしれない。

 そのそも、夜逃げをしていた伯爵家で、エリザベスに馬車を乗り返させて、この王宮に連れ込むというなことをしたのは、近衛兵の一隊の手筈なのだ。

 

「マイク、お前はこの令嬢を頼む。わたしは行ってくる」

 

 マイクというのは、男の騎士だろう。

 それで気がついたが、ふたりの騎士のうち、男は下士官の階級をしている。一方で女騎士は将校だ。

 

 また、エリザベスは、目の前の女騎士が男装の麗人として少し有名なベアトリーチェだとわかった。

 王軍の女騎士の中では、あのシャングリアと並んで有名な存在であり、爵位は騎士爵の家の出身と低いが、剣の腕なら男にも引けは取らず、男勝りの性質で、男よりもエリザベスのような令嬢たちの世界で人気がある女性だ。

 美貌であり、これまでに婚姻話もたくさんあったらしいが、自分は剣に生きるのだと、一切相手をせずに、三十近くなるまで浮いた話も耳にしない。

 いずれにしても、高潔で義侠心に溢れるな女性騎士と有名だ。

 エリザベスはほっとした。

 

「待ってください、ベアトリーチェ様──。おひとりでは」

 

 もうひとりの男の騎士が立ちあがったベアトリーチェに代わり、エリザベスのそばにしゃがみ込みながら、彼女に向かって顔をあげている。

 

「問題ない。わたしの方がお前よりも強い。暴漢くらい」

 

 ベアトリーチェが白い歯を見せた。

 

「でも、今の時間、後宮方面に近づくのは禁止されてます。命令に逆らえば、処罰が……」

 

「だから、お前はここにいろ。王宮内に暴漢だと聞いて、ほったらかしにできるか──」

 

 ベアトリーチェは駆けだしていった。

 

 

 *

 

 

「余に逆らうか? 一族郎党皆殺しだぞ。元気がいいのはよいがな」

 

 身体の下のルードルフが卑猥に笑った。

 ぞっとしたが、ここで時間を稼がないと、エリザベスがこの狂った王に凌辱される。

 このことだけを考えた。

 後で殺されようが、毀されようが、いまは時間を稼ぐことだけだと思った。

 

「ふぐうっ」

 

 だが、腹に指輪を下から押しつけられて、衝撃が身体が跳ねあがった。

 電撃だ。

 ケイトの身体が力を失う。

 それでも、馬乗りになっていた脚だけは絡ませ続ける。

 

「ほう、なかなかの主人想いの侍女だな。しかも、よく見れば美人か? まあ、いまはお前にするか。取引はしたから、エリザベスは逃げられんしな。また、グリムーン公に連れてこさせればよい」

 

 ルードルフの腕がケイトにかかる。

 呆気なく地面に引き倒された。

 逆にルードルフに馬乗りに乗られる。

 

「くうっ」

 

 まだ痺れているが、まったく動けないわけじゃない。

 ケイトは渾身の力で後手のまま背中を反らせて、ルードルフ王を振り落そうとした。

 だが、重い。

 ルードルフが身体を倒して、ケイトの上に寝そべるようにしてくる。

 突き出ている腹がケイトの腹にのしかかる。

 ルードルフの手がケイトのスカートの中に入って、たくしあげられた。

 

「くっ、うう……」

 

 太腿を触られ、胸元を服の上からまさぐられる。

 さすがに、こうなったらほとんど抵抗はできない。両手さえ拘束されている。

 

「ほら、よいのか? もっと抵抗せんか。言っておくが、余の手つきになったところで、後宮には入れんぞ。いちいち、そんなことをすれば、後宮がいっぱいになるし、正直、お前は余の好みではない。まあ、気が強そうなのはいいがな」

 

 ルードルフがケイトの身体を触りながら笑った。

 かっとなった。

 誰が後宮など……。

 そのあいだも、あちこちを触られ続ける。

 この暴行の中で、その手管だけが緩慢だ。

 女の身体を感触を確かめるような感じである。

 しかし、それを払いのけられないのが口惜しい。

 

 こんな男……。

 せめてもと思い、ケイトはルードルフを下から睨んだ。

 不敬罪など知ったことか──。

 

「その怒った顔がいいのう……。そそる……。おお、固く勃起した。三日ぶりか……。このところ、獲物が捕まらんで、余の一物が昂ぶることもなくなっていた……。おお、勃った。余の一物が完全に勃った──」

 

 ルードルフが訳のわからないことを言って感激したような声をあげる。

 

 そして、一度身体を起こして、ケイトの胸元に指輪を当てた。

 一瞬身体が竦んだが、すっと指輪が身体の上を通り抜けて、スカートの裾まで進み去った。

 そのあいだ、指輪は青い光を放っていたと思ったが、終わると服が完全に左右に切断されていた。

 

 また、ルードルフはケイトの身体に馬乗りになったままであり、そこから逃げることはできなかった。

 暴れても、押しつけられている指輪が今度は電撃の道具に戻るだけだ。

 ケイトは耐えた。

 とにかく、この破廉恥王がケイトに関わっているあいだに、エリザベスは遠くに逃げられるはずだ。

 

「観念せい」

 

 もう一度露わになった下着の上を同じように、指輪で撫でられる。

 下着も切れて、ケイトの裸体が外の風に触れた。

 

「乳はきれいだな。どれ」

 

 ルードルフが両手で左右の乳房を握りしめた。

 

「ううっ」

 

 ケイトは絶望感に襲われて声をあげてしまった。

 

「動くな。動くと、乳房に電撃が当たるぞ。ほれ、ほれ」

 

 ルードルフが腰をずらせて、左の乳首に舌を這わせてきた。一方で右の乳首には王の指にある指輪が当てられる。

 さすがに、そんなところに直接に電撃を浴びせられるのは怖い。

 ケイトの身体が緊張して動かなくなる。

 股間に残っていた下着をルードルフの左手が掴む。

 ゆっくりとさげられていく……。

 

「い、いやああっ」

 

 ケイトは身を捩って抵抗しようとした。

 

「はぎゃああああ」

 

 凄まじい電撃がケイトの右の乳首に叩き込まれて、ケイトは一瞬だけ意識を失いかけた。

 下着がおろされて、足首から取り払われる。

 

「ははは、抵抗されすぎるのも面倒だが、抵抗せんのもつまらん。その点、お前はほどほどでいい。その調子で余を悦ばせよ」

 

 ルードルフが一度立って、さっと下半身の装束を脱いで股間を露わにした。

 勃起した男性の性器がケイトの目に入る。

 そんなものを見るのは、生まれて初めてのケイトは、心の底から恐怖してしまった。

 

「とりあえず、精を放つ。味見はその後だ。溜まっておるのだ。だが、出せんで苦しかった。まずは一発だ」

 

 ルードルフに両脚を抱え込まれる。

 全く濡れていない股間に、勃起したルードルフの男根の先をあてがわれる。

 

「いやああ、やめてえええ」

 

 ケイトは泣き叫んだ。

 力一杯に暴れた。

 冗談じゃない。

 このまま犯されるなど──。

 

「んぐううううう」

 

 次の瞬間、腹に衝撃が走り、ケイトは痙攣していた。

 電撃を当てられたのだ。

 全身が脱力する。

 

「もっと暴れてもよいぞ。その代わり、電撃で痛めつけるがな。ちゃんと気絶せんように加減をしているので安堵せい。もう、暴れんでいいのか?」

 

 ルードルフが股間に男根を押し入れてくる。

 ものすごい激痛が湧き起こる。

 

「あがあああ」

 

 ケイトは絶叫した。

 

「痛ければ蜜を出せ。出さんから痛いのだ」

 

 ルードルフが愉しそうにぐいぐいと男根を深く押し込む。

 あまりの痛さに、ケイトは電撃どころか、これで意識を飛ばしそうになった。

 

「入ったぞ、ケイト。いま処女膜を破った。やっぱり生娘か」

 

 ルードルフが高笑いした。

 ケイトは自分の眼から涙がこぼれるのがわかった。

 

 そのときだった。

 がさごそと背の高い花園の草が動き、誰かが急いでこっちに来る気配がした。

 

「た、助けて──」

 

 ケイトは叫んだ。

 誰が来たのかわからない。

 しかし、とにかく声をあげた。

 

「なんじゃ、お前? この時間は、誰も近づかんように命令を徹底させているはずだが?」

 

 ルードルフがケイトに男根を入れたままの状態で、草の壁の中から出てきた相手を見た。

 ケイトも視線を向ける。

 背の低い庭師の男だ。

 随分と小柄なので、庭師が世話をしている見習いの少年かとも思った。

 

「わああああ、お姉様の仇──」

 

 だが、その庭師が突然に懐からなにかを取り出した。

 陽の光に当たって、それが光る。

 刃物だ──。

 ナイフだ。

 わかったときには、そのナイフがルードルフの横腹に刺さっていた。

 

「うわあああ──。痛いいいい。な、なんじゃあああ、うわああああ」

 

 ルードルフがケイトの上から転がり落ちた。

 下半身だけが裸のまま、悲鳴をあげながらに逃げていく。

 手で横腹を押さえているが、傷は深くはないみたいだ。

 それでも、よろよろと腰が抜けたみたいに逃げようとする。

 

「ああああ──」

 

 庭師──いや、少女だ──。

 ルードルフに突き飛ばされたときに、庭師の被っていた帽子は外れ、さらにかつらが飛ばされていた。

 どうやら、庭師に変装をしていた少女みたいだ。

 手にルードルフの血の付いた刃物を握りしめている。

 血を流して逃げるルードルフを彼女が追う。

 ケイトは呆気にとられた。

 

「だ、誰じゃ──。よ、余を誰だか知っておるのか──。誰かああ、誰かあああ」

 

「お、お姉様を返せええ──」

 

 少女が絶叫して、ルードルフに体当たりしていく。刃物はしっかりと前を向いている。

 ケイトは目を見開いた。

 ルードルフが腰が抜けたように、その場に倒れる。

 しかし、その少女がいきなり横に突き飛ばされた。

 

「うわあっ」

 

 少女が地面に転がる。

 風のようなものがすぎ、少女がおとしたナイフを蹴り飛ばした。

 

「へ、陛下、ご無事で──。陛下?」

 

 駆けつけて少女を取り押さえたのは、ひとりの女騎士だ。

 ケイトはその女性を知っていた。

 面識はないが、男装の麗人として有名なベアトリーチェだろう。近衛隊に所属する女騎士だから、王宮にいたのだろう。

 

「こ、これはどういう状況なのですか、陛下?」

 

 少女を押さえているベアトリーチェも、呆然としている。

 

 腹から血を流して、下半身を剥きだしている国王──。

 ナイフで王を襲った少女──。

 そして、明らかに犯されていたということがわかる自分だ。

 

 突然にこの光景を見れば、なにがなんだかわからないに違いない。

 まあ、なにがなんだか、ケイトにもわからないが……。

 

「そ、そいつは余を襲った暴漢だ──。いや、それよりも、余を救え──。余はまだ死にたくない。余を助けんか、命令だ──」

 

 ルードルフが喚いている。

 あんな傷で死ぬか……。

 ケイトは心の中で悪態をついた。

 そして、身体を起こして上体をあげ、脚で切られた服を寄せて股間だけを隠す。

 

 痛い……。

 泣くほどに股間が痛い……。

 

「す、すぐに……」

 

 ベアトリーチェが懐からなにかを出して、空に向けた。

 しゅうという音とともに煙の塊が飛び出して、空でぼんと弾けた。

 信号弾のようだ。

 

「すぐに人が来ます。陛下、お待ちを……。ところで、あっ」

 

 ベアトリーチェが押さえている少女を見て小さく叫んだ。

 ケイトも声を出しそうになった。

 その少女を知っていたのだ。

 

 確か、トミア子爵家の下の令嬢だ。

 ケイトも最近まで、貴族相手の商売を手伝っていたので、大抵の貴族の顔と名は、その家族まで頭に叩き込んでいる。

 

 彼女の名はミリア……。 

 トミア子爵家の下の娘であり、年齢は確か十四歳……。

 そういえば、彼女の姉のユファは、つい最近自殺をしたという噂があったのを思い出した。

 情報は商売人の命なので噂は大切にしているのだが、トミア家の上の娘がほんの最近に亡くなったというのは本当だ。

 だが、その死因が自殺だというのが噂なのだ。

 そういえば、ミリアはさっき、姉の仇だと叫んだか?

 

「お願い、こいつを殺させて──。こいつのせいで、わたしの大好きなお姉様は、首を括って死んだんだから──」

 

 ベアトリーチェに押さえられているミリアが激しく号泣し始めた。






 *

 ユファ:『314 暴王の誕生(その2)』を参照
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