【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「はあ、はあ、はあ……。で、ですから……、わ、わたしと、よ、養家族とは……」
スクルズは荒い息をしながら、何度目かの説明を繰り返している。
しかし、すでに頭が回らないのか、最初の三回くらいの訴えは、自分と養家族が無関係であるということについて、筋道を通った丁寧な内容の説明であり、さらに、三回ともそれなりに説明の視点を変えた丁寧なものであったが、その次くらいからは、ただ関係はないというだけの繰り言になってしまった。
しかも、聡明なスクルズには気の毒なくらいの支離滅裂の内容だ。
テレーズの準備した媚香が相当に頭に回っているのだろう。
両膝を床に着けた身体は、当初はちゃんと腰があがっていて立膝状態だったが、いまは完全に腰をぺたんと床につけてしまっている。
おそらく、もう力が入らないに違いない。
しかも、当人は無意識だとは思うが、腰を必死に捩り、内腿を痙攣させるかのように擦り動かす姿は、艶めかしいのひと言では足りないほどに淫靡だ。
ルードルフは、敬虔な巫女のあられもない姿を、玉座から口元を綻ばせながら眺めていた。
「なにを同じことばかり繰り返しておる、スクルズ。何度も言うが、連座には当たらないというのであれば、余を説得してみよ」
ルードルフは、すっかりと溜飲がさがって、身体を崩して悶える仕草をするスクルズを見る。
それにしても、本当にいい女だ。
ルードルフは、全身を真っ赤にして異常なほどの汗をかき続けるスクルズを観察しながら思った。
最初に顔を見た瞬間にも思ったが、久しぶりに面と向かって会うスクルズは、驚くほどに美しく、そして、色っぽかった。
なにしろ、筆頭巫女時代から美貌巫女で有名だったが、その頃は子供っぽさも残っていて、なんとなく頼りなさのようなものが印象であった。
しかし、いまのスクルズは違う。
もちろん可愛らしくはあるが、その一方で完全な大人の女の色香を醸し出している。
そもそも、ルードルフの知っているスクルズは、こうやって堂々と王の行為に批判をするような強い女ではなかった。
心が優しいが大人しく、はかなさそうな頼りなさがあった。
だが、神殿長になったスクルズは、堂々としていて、人を圧倒するほどの心の強さを感じる。なによりも、態度に自信が漲っていて、それがスクルズをさらに美しく際立たせている。
なにがスクルズを変えたのか……?
神殿長になったということか……?
それとも……。
いずれにしても、さっきまであんなに余裕たっぷりに、ルードルフとテレーズを見下したような態度を取っていたスクルズが、媚香の影響で、官能的に唇を開き、はあはあと息をして、人前で苦しそうに悶える光景は、心の底からルードルフの嗜虐心を満足させる。
だが、それで閃くものがあった。
そうか……。
もしかして、男か……?
いや、スクルズを変えたのは、男だろう──。
彼女をここまで美しくし、自信を持たせ、大人の女の色香を身に付けさせたのは、おそらく、男がいるのに違いない……。
まあいい……。
男を知っていたとしても、十分に無垢だろう。
犯すのに問題ないか……。
「……スクルズ、お前には男がいるのではないか?」
なんとなく言った。
すると、もはや意味不明に近い言葉を呟いていただけのスクルズが怪訝そうに顔をあげた。
「……お、男……?」
すっかりと目が潤んで、まるで夢遊病にでもなっているようなスクルズがかすかに小首を傾げた。
やはり、頭が上手く回らないのだろう。
その表情は完全に
「その身体を癒してくれる男がいるのではないかと聞いておる」
ルードルフは笑いながら言った。
「こ、心に誓ったお方は、お、おります……。ふた無き……お方……。心から……愛する……」
すると、スクルズがはっきりと答えた。
だが、その理知的な美貌は朱色に溶けきっていて、なにを喋っているのか自覚しているかどうかは怪しい。
「まあ、驚いた。敬虔なはずの女神殿長様には、男がおられるの?」
テレーズがからかうような物言いをした。
一方で、謁見の間にいる者たちの中に一瞬だが、かすかなどよめきのようなものが起きている。
当然だ。
敬虔な美貌の女神殿長に男がいるなどというのは、あっていい話ではない。
「そうか……。惚れた男がいるか……」
しかし、ルードルフは納得して頷いた。
やはりか……。
この艶めかしさは、男をほとんど知らない女が醸し出せる色香ではない。
これまでたくさんの女を抱き続けてきたルードルフだからこそ、確信できることだ。
だが、男の神官には認められる妻帯や恋愛も、女である巫女には認められていない。神殿長でもあるスクルズに、特定の男が存在するとすれば、それだけで大変な醜聞となる。
しかし、スクルズはそれではっとしたように表情を変えた。
「そ、その方に……お仕えし……、信仰を誓い……、誠心誠意に……その神に……尽くすのが……わ、わたしの……し、使命でご、ございます……。クロノス様の……」
「天空神こそ、お前の愛する男ということか……?」
ルードルフは言った。
謁見の間の雰囲気も、驚きから理解のようなものに変化した。
だが、ルードルフについては、すでに確信している。
違う……。
さっきの呟き……。
あれは、媚香の影響の中で思わず、口走ってしまった真実だ。
それをとってつけて、取り繕ったに過ぎない。
誰なのかな……?
このスクルズの男というのは……。
処女だと思い込んでいたスクルズが男との性愛の経験があったのは、残念であるとともに、興味が沸いた。
「陛下、話はまだまだ、終わりますまい。ここは、ほかのところで、じっくりと審問を続けられてはいかがでしょう。場所を後宮に変えましょう」
そのとき、テレーズが横から口を挟んできた。
後宮に場所を変える。
その意味は明確だ。
いまの状態のスクルズだったら、簡単に手込めにできる。
しかも、王宮内であれば、スクルズであろうとも、魔道は遣えない。
王国一の魔道遣いであろうとも、魔道が遣えなければ、ただのひ弱な女に過ぎない。
謁見の間のざわめきが大きくなる。
しかし、ルードルフは気にしなかった。
目の前の神々しいほどに美しく色っぽい、しかも、むんむんと被虐美の漂う女をこれから思う存分蹂躙できるのだ。
さらに、どうやらほかに好きな男がいるらしい……。
「お、おおっ?」
思わず声をあげた。
ルードルフの装束の下の股間がついに荒々しく勃起をしたのだ。
スクルズに、別に惚れている男がいると確信して、ルードルフの一物が固くなった。
とにかく、狂喜して叫びたくなってしまった。
「なるほど、場所を変えるか……。スクルズ、訊問を続けるぞ。後宮に行く。言っておくが、逆らえば、お前の養家族の首は根こそぎ斬り落とす。忘れるな──」
「お、お待ち……く、くだしゃ、さ……い……」
スクルズが激しく首を振った。
しかし、舌がもつれて、うまく喋れてもいない。
これは、もう抵抗できないな……。
ルードルフは、スクルズが堕ちたことを確信した。
とにかく、早く……。
この勃起が続くうちに……。
「それだけじゃない。確か、お前の親友のベルズはブロワ家の者だな。その者たちの首も落とすか。罪などどうでも、でっち上げられる。いずれにしても、お前は、余を見くびっておったのだろう。余に手が届かぬものなどない」
スクルズを脅迫する言葉が次々に口から飛び出す。
しかし、一方で心の中のかすかに冷静な部分が、いま、絶対に口走ってはならないことをはっきりと喋ったぞという警告を鳴らした。
ここは、近くに誰もない密室などではない。
近衛兵が大勢並び、文官もたくさんいる謁見の間だ。
そこで、目の前の女を脅すために、罪のない民やブロア家のようなれっきとした伯爵家を気まぐれで潰すというようなことを口にするなど……。
「大丈夫です……。問題ありませんよ、陛下……」
そのとき、テレーズが言葉を洩らした。
途端にルードルフの心が軽くなる。
そうだ……。
大丈夫だ……。
問題ない……。
礼を言おうと、テレーズに視線を向けた。
テレーズはにこにこと微笑んでいた。
やはり、テレーズは頼りになる。
妙な安心感に包まれる。
「へ、陛下……、そ、そんなことは許されません……。つ、罪もない……者をた、盾に……わ、わたしを脅すなど……。こ、このスクルズを連れていき、こ、後宮で……な、なにを……なさる……おつもりです」
スクルズが毅然として睨んだ。
だが、あそこまで追い詰められていては、迫力もなにもない。
そもそも、あんなに艶めかしく身体を悶えさせながらでは、抗議の言葉の意味はない。
かえって、男の征服欲を刺激するくらいだ。
「なにをするかな。まあ、訊問だろうな……。じっくりと話を聞いてやるぞ。ひと晩中でもな……。肌と肌を合わせながらでもよいぞ」
ルードルフは大笑いした。
またもや、喋ってはならない言葉を口にした気がしたが、心の中で「大丈夫。問題ない」という言葉が浮かびあがり、気にならなくなった。
もはや、謁見の間はどよめきのようなざわめきが続いていて、中には自重を促すような文官の言葉も混じっていた。
だが、気にならない。
大丈夫……。
問題ないのだ……。
「とにかく、スクルズ、その首輪をしなさい。それで許しましょう。あとは、命令に従うのです」
テレーズが言った。
すると、スクルズは汗で髪が額に貼りついた顔をテレーズに向ける。
「ご、ご冗談を……。これは自我を失わせる……首輪……。これを嵌めれば……わたしは、なにをされても……なにを言われても、抵抗のできない……人形になり果てます……。わ、わたしは、この首輪をして……へ、陛下に……身体を犯されたくはありません……」
スクルズが挑戦的な表情をしたように思った。
ほう……。
ルードルフは逆に感心した。
ここまで、追い詰められておいて、まだこんな顔ができるのか……?
それはともかく、スクルズが「犯す」という言葉を使ったことで、さらにざわめきが拡大した。
「……さすが、よく気がついたわね。それは王家の宝物のひとつよ……。それを自分で嵌めなさい。そうすれば、なにもかも気にならなくなるわ。そして、陛下と一緒に後宮に向かいなさい。それとも毒杯よ。そのときには、連座を忘れないようにね」
テレーズが言った。
スクルズがきっとテレーズを睨んだ。
口惜しそうに歯噛みをしている。
いずれにしても、もうスクルズには選択肢はない。
最初の挑戦的な態度は、どんなに王に逆らっても自分だけのことで、誰かの命を盾にされるとは思ってもいなかったのだろうと思う。
それがスクルズを増長させた。
だが、いま、スクルズは養家族を人質にとられ、逆らえば、親友のベルズの実家が破滅させられると知った。
もはや、従うしかない。
「へ、陛下……わ、わたしは、“王の王たる資格は王たること”と申しました……」
スクルズが今度は視線をルードルフに向けた。
だが、その言葉で、収まっていたかっと激しい憤怒が込みあがる。
なぜか、この言葉にはルードルフの殺意にも等しい激怒を呼び起こす力がある。
「き、貴様は──」
叫んだ。
だが、スクルズがそれを遮るように、さらに口を開く。
「そ、それは王の器に足らない者には、王の資格なしということでございます──。よ、よくお考えを──。お、女を脅迫し……か、身体を理不尽にも奪おうとする……王に……、王の資格があるか否かを──」
「余に王の資格なしと言いたいのか──」
激昂して立ちあがった。
スクルズをぶちのめす──。
心の底から、その欲求が沸き起こる。
しかし、辛うじて自重する。
殴ったり、蹴ったりするよりも、もっと愉快なことがある。
「ならば、毒杯を飲め──。嫌なら、首輪をせよ。拒否すれば、お前のせいで罪なき者が死ぬ。それでも余を馬鹿にするのか──」
「な、ならば、お約束を……。こ、これを受け入れれば……、ほかの者には……手を出さないと……」
スクルズが首輪を手に取った。
ついに観念したか。
ルードルフは満足した。
「おう、確かに約束しよう。お前がそれを受け入れれば、余は手を出さん」
ルードルフははっきりと言った。
「そ、それを聞いて満足しました……。さ、最後に申しあげます……。このスクルズは、わたしの心を捧げた……お方のものです……。どうしても、あなたなどには肌だけでも触られたくありません──」
スクルズが首輪を離して、毒杯を手に取る。
それを一気に呷った。
「あっ──」
ルードルフは声をあげた。
だが、そのときには、スクルズは毒杯を飲み終わっていた。
スクルズは、一瞬だけ苦しそうに喉を掻きむしるような仕草をし、そのまま口から少し血を吐いて、ばったりと床に倒れた。
「うわああっ」
「どうして──」
「きゃああああ」
謁見の間に絶叫が起きる。
「あらあら、死んじゃったのね……」
テレーズが一段高くなったこの場所からおりていき、スクルズに寄っていく。
そして、スクルズの首に手を当てた。
だが、すぐに、ルードルフに顔を向けて首を横に振った。
「もう、死んでおりますね。蘇生も無理です、陛下……」
途轍もない激怒が込みあがった。
死んだだと──。
だったら、この股間の猛りはどうなるのだ──。
「この小娘が──。それほどまでに余を嫌ったかあ──」
憤怒が身体を覆った。
なんという女だ。
王を蔑ろにした罪を身体を抱かせることで許してやろうとしたのに、その温情を無視して、自裁をして果ててしまうとは──。
「馬鹿にするのも大概にせい──」
感情のまま玉座を駆けおりた。
スクルズの屍体を蹴りあげる。
横倒しになっていたスクルズの身体が、床にごろごろと転がった。
短い巫女用の装束のスカートが捲くれあがり、下着が露わになる。
べったりと分泌液が染み込んでいて、秘部まで透けて見えるくらいに濡れていた。
それだけでなく、下着では押さえきれなかった愛液が内腿から膝くらいまで垂れ流れている。
この身体をもう少しで好きなように弄べたのに──。
さらに駆け寄って、神官の装束を掴む。
首の下の部分を掴み、腰に向かって引き破った。
スクルズの肢体が露わになる。
「晒せ──。余に逆らう者はこうなるという見せしめにせよ。王都の広場で、このまま惨めな姿で屍体を晒しものにせよ」
さらにスカートを引き破る。
その時、丸い小さなものがころころと転がった気がした。
なんだ、これ……?
視線を向けようとした。
「は、はい、晒します──。すぐにこの屍体を晒し刑にします、陛下──。おい、板を持って来い。毛布もだ。遺体を謁見の間から運び出す。晒し刑だ──」
そのとき、小柄なひとりの近衛兵が慌てたように飛び出してきた。
んん?
さっきの球体をさっと拾ったか……?
一方で、彼の言葉にはっとしたように、慌てて何人かの兵が飛び出してくる。
もうそのときには、ルードルフはスクルズに対する興味はなくしていた。
もういい……。
「後宮に戻る──」
ルードルフは言い捨てて振り返り、スクルズの死骸を背にして歩き出す。
玉座の横を通り抜けて、奥に戻る扉に向かう。
「お待ちください、陛下……」
慌てたようにテレーズがついてくる。
「なんだ──?」
思わず怒鳴った。
テレーズに声をあげるなど、これまでになかったことだが、ルードルフを包んだ怒りは、どうしても、大声を発せずにはいられなかったのだ。
「陛下、スクルズは残念でしたが、そのまま後宮でお待ちください……。そろそろ、サキも戻ってまいりましょう。公爵夫人でも先に連れてくるように指示します。いまごろは、サキの仕事も終わっているでしょうから、男は殺すか、牢につなぐとしても、女については後宮に運ばせます。まずは、公爵家の女の味見ではいかがですか?」
テレーズが媚びを売るように、歩きながら言った。
「公爵家の女か?」
そういえば、今朝早くから、テレーズの手配で、サキが近衛兵を連れて、公爵家に向かったのだった。
それを思い出した。
「それはいいな」
ルードルフは笑った。
本当に、テレーズは役に立つ……。
ルードルフは、テレーズに笑いかけた。
*
【スクルズ】
人間族。ハロンドール人。ティタン神殿会の女性神官で諸王国時代の末期に活躍。
ハロンドール王国における「狂王の変(詳細は別項)」における犠牲者のひとりであり、狂王ルードルフの失政を諫言して、ルードルフによって処刑されたとされている。
享年二十六歳。
彼女の死骸については、…………。
…………。
…………。
彼女についての記録は、ほとんど現存しておらず、彼女がどのような人物であったということについては、若くしてハロンドール王都の三大神殿の神殿長に就任したということと、当時王都の民衆に非常に人気があった美貌の女性神官だったということ、さらに非常に魔道力に優れていたという文書が残っている程度である。
…………。
…………。
彼女については、サタルス帝が自らの妻や寵姫について記した晩年の文書の中に、「愛する第三神殿長スクルズ」の言葉を懐かしさを込めた言葉とともに残していることで知られており、サタルス帝が冒険者時代に寵愛した恋人のひとりだったとされる。
…………。
…………。
…………。
また、スクルズには、歴史的人物としての評価に加え、クロノス正教徒にまつわる「奇蹟」の人物としての評価もある。正教徒を中心として発展した『クロノス正教会(詳細は同項を参照。)』の編纂した『聖伝』によれば……。
『年代記(第六巻の三)・人物列伝』コリネリア・ポリス著(*)』
* ここに記録した引用文は、国際統一図書館に貯蔵されている初版本から、許可を受けて採録したものである。