【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「性奴隷の首輪ですって?」
ボードワール侯爵夫人が唖然とした口調で声をあげた。
「んん? そっちはお前はボードワール家の妻か──。一度、夜会で会ったかのう? いずれにせよ、ちょっと年増だな。何歳だ?」
サキが横にいる男の官吏に呼び掛けた。
官吏はなんだか朦朧とした感じであり、ちょっと様子がおかしい。
まるでなにかに操られているように自我がない感じだ。
それにしても、彼女は国王の寵姫?
アドリーヌは唖然としてしまった。
初めて会ったが、サキの言葉遣いがあまりにも粗野で乱暴だったからだ。
遠方の王族という雰囲気は皆無だ。
しかしながら、生まれながらにして、人に命令をすることに慣れているという印象はある。
「五十一歳です、サキ様……」
官吏が書類のようなものを拡げて、ぼそりと言った。
「ううむ……。ルードルフ用に回すか。青色じゃ」
「わかりました」
官吏が頷く。
すると、後ろの王兵が籠のようなものを抱えていて、青色の細い革紐のようなものをボードワール侯爵夫人に放った。
驚愕するほどの無礼な行為だ。
「し、失礼な──」
怒りに震えてボードワール夫人が大声をあげた。
その瞬間、サキの手元がぱっと光ったように思った。
「ひがあああっ」
ボードワール夫人が全身を抱くようにして、床にひっくり返った。
そのまま絶叫して悲鳴をあげ続けて、のたうち回っている。
怖ろしいほどの苦痛に見舞われているのは確かだ。
魔道──?
アドリーヌは目を丸くした。
ほかの女たちも同じだ。
やがて、やっと夫人の動きがとまった。
「立て、年増──。次に逆らうと首を刎ねるぞ。お前らの生殺与奪については、なにをしてもよいと、ルードルフとテレーズから……いや、王陛下とテレーズ様から許可を受けておる。さっさとチョーカーを首にしろ」
サキが冷酷に言った。
アドリーヌはその言葉の内容よりも、サキの醸し出す迫力にぞっとした。
言葉には表現できないが、ぞっとするほどの恐ろしさをサキに感じたのだ。
「はあ、はあ、はあ、な、なにを……。そ、それに、これは園遊会では……」
ボードワール夫人が恐怖の色を顔に浮かべながら、上半身を起こす。
それでも必死に気力を集めて、サキに食って掛かるような物言いをして、サキを睨む。
「おう、園遊会だ。ただし、園遊会を愉しむのは、ルードルフ王陛下だ。くれぐれも失礼のないようにな。お前らは人質だ。王の気紛れで扱いも違うし、命も失う。まあ、気をつけよ。とにかく、よいな――。文句は国王とテレーズだ」
「人質?」
声をあげたのはサンドベール夫人だ。
夫人はふたりの娘を背中に庇うようにしている。
「王命だ。色々と物騒だからな。園遊会の名目で王都に所在の妻子を人質として王宮に集めることになった。せっかく集めるのだから、色々と愉しみたいと陛下が仰せでな。わたしは、その命令で動いているだけだ……。ところで、お前ら三人は母娘か?」
「サンドベール伯爵夫人のテルミナ、令嬢のエミール、カミールです。年齢は順に三十八、十七、十五……」
さっきの官吏が感情のこもってない声を発した。
だが、人質という言葉で、アドリーヌはなんとなくこの園遊会の目的を理解した。
さっき、この控室において、アネルザ王妃の実家であるマルエダ辺境候が反国王の旗を揚げるのではないかという噂を耳にしたばかりだ。
また、王都からは、最近の国王の異常さと、狂乱する王都の物価などに恐れをなして、どんどんと貴族たちが王都を脱出しようとしているということだ。
極めつけは、スクルズの処刑に端を発する昨夜の暴動騒ぎだ。
だから、その機先を制するために、王都在住の妻子を王宮に人質にとるということだと思う。
つまりは、これは罠だったに違いない。
性奴隷
アドリーヌは歯噛みした。
「親娘か……。そういう趣向も主殿はあるかな? まあ、一応は分けるか。母親は黄色。特別に娘たちのところで働かせてやる。娘たちは赤だ──」
サキの言葉で王兵が籠から三人にそれぞれにチョーカーを渡す。
それにしても、園遊会は名目をした人質とは……?
「おう、こいつはいい。若いし美人だ。赤だ──。名は?」
サキがアドリーヌの前に立って声をあげた。
アドリーヌが応える前に、やはり、あの官吏がアドリーヌの名と家柄と年齢を言った。
最後にサキは、男爵家のふたりの姉妹の前に立った。
ふたりともすっかりと怯えて、抱き合ってしくしくと泣いている。
サキがちょっと顔をしかめた。
「ううん……。磨けば光るかもしれんし、数年すれば、化けるかもしれんが、特に主殿はこのくらいの年齢の少女を抱く趣味はなかったなあ……。まあ、主殿のことだから、それなりに愉しむとは思うが……。だがのう……」
ひとり言みたいな言葉の内容の意味はわからないが、サキはなにかを悩んでいるようだ。
男爵家のふたりの泣き声が大きくなった。
「ええい、うるさい──。もうよい。チョーカーはなし──。よし、全員を廊下に出せ。次の部屋に行くぞ」
命令はアドリーヌたちではなく、サキと一緒にきた官吏や王兵に告げた言葉だ。
サキが出ていくと、王兵たちが剣を抜いて、アドリーヌたちに突きつけた。
「ひっ」
「きゃあああ」
「ひいいっ」
アドリーヌたちは剣を向けられた恐ろしさに、一斉に悲鳴をあげてしまった。
逆らうことも、抵抗することも不可能だ。
なにがなんだかわからず、まずは渡されたチョーカーを首に巻く。
すると、すっと肌に喰い込んだようになる。
これは魔道のかかっているものだ。
それがわかった。
廊下に出る。
すでに、たくさんの女たちが廊下に出されている。
いずれも着飾った貴族の子女たちだ。
また、隣の部屋からも怯えた顔の令嬢や令夫人が首に赤、青、黄のチョーカーを装着させられて、廊下に出て来る。
この色になんの意味があるのかわからない。
「よし、全員、前に進め──。ぐずぐずするんじゃない──。王兵──。逆らう女は容赦なく、電撃鞭を使ってよし。こいつらは、王陛下のご命令で捕えた人質だ。罪人同様に扱えとの許可を得ておる」
前側の方から、サキの大声が聞こえた。
電撃鞭──?
驚いたが、確かに貴族の子女の群れの中に混じっている王兵が手に長めの乗馬鞭のような棒を持っている。
魔道の武器というわけか?
そして、あちこちから女たちの悲鳴が聞こえだした。
本当に兵が貴族の女に魔道鞭を振るっているのだ。
ぞっとした。
やがて、廊下に出された集団が進み始める。
アドリーヌも慌てて、前に進む。
しばらく歩くと控室のあった建物を抜けて、王宮の裏庭に向かう小路に着く。
そのまま進まされる。
やがて、百人ほどの王兵が取り囲む場所についた。
ここが「園遊会」の会場のようだ。
しかし、園遊会とは名ばかりで、そこにあったのは一個の卓のみだ。
そして、そこに座っているのは、ルードルフ王だ。
アドリーヌたちは全員がその卓の前に、少し距離をとり、ずらりと並んで立たされる。
おそらく、百人以上はいるのではないだろうか。
ほとんどは、社交界で見知っている貴族の女たちだ。
なかには、控室における男爵家の姉妹のように面識のない者もいる。
全員が三色のチョーカーを首輪にしているが、なかにはなにも巻いていない者もいた。
巻いていないのは、あの姉妹のように年齢が低いとか、逆に老女に近い者などだ。
「陛下、全員を連行したぞ。この中で年増を後宮用としておいた。大人しくておる褒美だ。青いチョーカーが目印だぞ……。青なら、いくらでも抱いていい。大丈夫、なんの問題もない……」
サキが国王の前で恭しく頭をさげた。
だが、およそ、国王に対する言葉遣いとは思えない口調と物言いだ。
アドリーヌは驚いた。
「ふははは……。ご苦労だ、サキ……。なかなかいいぞ。今朝も……いい味だったな……。ああ、なんだったかな……。公爵夫人だ……。フラン……」
「フラントワーズだ。引きあげさせて、召使い境遇にしようと思って、黄色組に回したが、気に入ったら、青組に回してやるぞ。どうする?」
「黄色……。まあいい。だが、余は赤がいいのう。赤の方が若い……。無垢だ……」
「赤は調教に回す組だ。手をつけてはならん。残念だが、陛下の一物は勃起せんぞ。勃起するのは青だ。よいか、青──。青だ、青──」
「……勃起するのは青……。青……」
ルードルフ王がぶつぶつと口に中で呟くのが聞こえた。
アドリーヌは呆気にとられた。
少なくとも、あの国王からは知性がほとんど感じられない。
まるで、サキの操り人形みたいだ。
しかも、会話の内容は異常だ。アドリーヌには半分の意味もわからないが、非常識な内容が語られているということだけはわかる。
とにかく、国王の様子に不自然さがある。
人間観察の鋭さはアドリーヌの得手とするところだと自負しているが、眼が虚ろなのだ。
まるで、自分の意思の一部を失っているような……。
あれは、絶対に正気ではない──。
「では、園遊会を開始するか……。おいっ」
サキがどこかに声をかけた。
すると、護衛の衛兵の輪の一部が開き、ぞろぞろと十数人ほどの女たちの集団が並んで入ってきた。
「きゃあああ」
「ひいいい」
「いやあああ」
集められている女たち──アドリーヌも含め──が一斉に声をあげた。
入ってきたのは、二公爵の家族の女たちだったのだ。その傍系の伯爵家、子爵家もいる。
筆頭は、グリムーン公爵第一夫人のマリア、その娘のエリザベス、ラングーン公爵家のフラントワーズだ。ほかにも公爵のグリムーン家の第二夫人と寵姫が数名、その他は親族の女性たちだ。
老女はいなかった。
その代わり、年端もいかない童女もいる。
しかし、悲鳴をあげたのは、彼女たちの素性よりも、その恰好だ。
逃亡防止のためなのか、全員の足首と手首に鎖で繋がった革枷が装着されている。
しかも、身に着けているのは、腰の革の貞操帯だけであり、ほかはなにも身に着けていない裸だ。
ただし、両乳首には一個ずつの鈴が吊るされている。
童女たちまで同じ恰好だ。
そんな惨めな姿の公爵家と公爵家にまつわる女たちが召使いのように両手に食べ物や飲み物が乗った盆を運んで来たのだ。
首には全員に黄色のチョーカーがある。
いや、唯一、グリムーン公爵令嬢のエリザベス嬢だけが、アドリーヌと同じ赤いチョーカーをしていた。
だが、ほかの夫人たちは面識がない者が多いが、エリザベスだけは年齢が近いので、彼女についてはよく知っている。
気位が高く高飛車なことで有名だ。
それがあんな恰好で……。
「ひっ」
とにかく、アドリーヌは、あまりもの光景に、自分の顔が蒼ざめるのがわかった。
また、だんだんと近くになるにつれて、それだけではない、女たちへの仕打ちがわかった。
どの女たちの貞操帯も、股間の部分が小さく振動をしている。
おそらく、ああやって働かせながら、ずっと貞操帯の振動で嬲られているのだろう。
どの女も顔が真っ赤で、ねっとりと汗を肌にかいている。
あれは、それなりの時間、ずっと股間を貞操帯の振動で悪戯をされているに違いない。
童女の股間でさえ震動していて、子供たちはしくしく泣きながら盆を持たされている。
すると、サキが公爵家の者たちのところに寄っていく。
「フラントワーズ、しっかり歩かんか。朝までルードルフの相手をしてくれたのはご苦労だったが、今日からはこの集団では第三階級だ。召使いが足りんから忙しいかもしれんが、そのうち不甲斐ないのを回してやる。とにかく、お前が黄色組の長だ。集めた者を仕切れ」
フラントワーズ=ラングーン公爵夫人だ。
公爵家に王兵が入って、二公爵が磔刑になったのは昨日だが、家族についてはどうなっているかは知らなかった。
ここで、こんな仕打ちをされているとは……。
また、フラントワーズ夫人は、全員の中でも、一番脚がおぼつかなくふらふらしている。
いずれにしても、この国では最高階級の令夫人たちだ。
それがあんな姿で給女の仕事など……。
「は、はい……、う、うう……」
フラントワーズ夫人が赤く上気した顔で頷いた。
ほかの女もそうなのだが、貞操帯による淫靡な仕掛けのせいか、腰を引いたみたいにして苦しそうだ。
「さあ、お前たちも、それぞれに分かれて行動しろ……。ただし、首輪のない者は、特別にこのまま戻っていい。しかし、ここで見たものは他言無用だ。口にすれば家族もろとも公爵家の当主たち同じ運命を辿ることになる……。黄色のチョーカーは召使いだ。やって来た女たちと同じ恰好をせい。働き場所は後で決める──。青のチョーカーは王のお相手だ。後宮の一階行きだ。兵の誘導で移動せよ」
サキが叫んだ。
再び、女たちが声をあげた。
青いチョーカーは後宮の一階で国王の相手──。
黄色は召使い──。
首輪なしは解放……。
赤は?
アドリーヌたちは赤いチョーカーだ。
「さあ、行け──。赤以外は散れ。青組は全裸になって陛下のところに進め。青組の貞操帯は後で渡す――。それまで、王と一緒に後宮に入って、一生懸命に媚びを売るのだ――。また、召使い組はその場で素っ裸になって、兵に枷と貞操帯を受け取れ──。くずぐずすると、だんだんとチョーカーが締まるぞ。言われた格好をするまではな……。いやなら、その場で死ね」
サキが冷たく言った。
「んぐ、あがっ」
アドリーヌの横には、黄色いチョーカーをさせられたサンドベール夫人がいたが、急に首を押さえて苦しみだした。
魔道だ。
サキの言葉のとおりに首輪が締まっているのだろう。
「お母さま──」
「ああ、お母さま」
エミールたちが悲鳴をあげて、夫人を抱きかかえた。
一方で、ほかの青組や黄色組の令夫人たちも苦しみだした。
最初は躊躇していた令夫人たちだったが、チョーカーの絞めと王兵の電撃棒に脅されて、慌てたように服を脱いでいく。
中にはひとりでは脱げないような服を着ている者もいるので、周りの者が助けて服を脱がせ始めたりもしている。
そして、兵たちが黄色組の女たちの足元に、貞操帯を置いて言っている。
また、脱いだ服は、地面に置かれるや、すぐに兵が片っ端から回収されていく。
全員が恐怖に包まれている。
アドリーヌも同じだ。
とにかく、アドリーヌもエミールたちとともに、サンドベール夫人が服を脱ぐのを手伝う。
「よし、赤組は輪の外に出よ──」
そのとき、またサキの声がした。
「……そして、赤は特別の性奴隷だ──。お前たちの主人は別にいるけど、いまはいない……。その方が来るまで、連日調教の日々だ。しっかりと訓練して、いい性奴隷になるのだぞ。お前たちの監禁場所は、後宮の地下奴隷宮だ」
サキがさらに言った。
地下奴隷宮──。
確か、いまはもう使用されていないはずだが、少し前まで王妃のアネルザが奴隷を集めていた場所だ。
残酷な拷問具が揃えられているという噂の施設である。
アドリーヌは、自分の心に絶望が走るのがわかった。
「全員に言っておく。此れから先は、すべての望み捨てよ……。よし、まずは、仮想空間で揉んでやろう。十日分を一日でするぞ」
サキが笑った。