【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
夢を見ていた。
イザベラがいるのは、王宮に三箇所ある国王の面談室の中ではもっとも狭い部屋になる小謁見室という場所だ。
部屋は大きめの客室くらいの広さしかない。
目の前に片膝で腰をおろしている十人ほどの謁見者を前にすると、人の集まりの圧迫感を覚えるくらいである。
イザベラの背後には護衛が五名──。
そして、イザベラが腰をおろす玉座にほかには、右側にある副玉座があり、そこには愉しそうに微笑むロウがいる。
なぜか、夢の中のイザベラは、自分が玉座に座っていることも、ロウが女王であるイザベラの隣にいることも当たり前だと思っていて、まったくの違和感を覚えていない。
だが、イザベラは異常なほどの緊張感に包まれていた。
『キース卿、しばらくぶりか? ニシル州では最近では商いが順調のようだな。今年の税収もいいようだ』
イザベラは激しい心臓の鼓動と心の動揺を隠しながら、端の者に語りかけていた。
この十人に、順番に声をかけていくのだ。
それが、いまやっていることである。
儀式のようなものだが、国王として重要な業務のひとつでもある。
『はい、陛下のご威光の賜物でございます。昨年末は冷害のために、麦の取れ高がいま少しでありましたが、漆の開発に成功いたしまして、他州への売れ行きも軌道に乗りましてござます。冷害の際に王家の融通を頂きました債務についても、一年以内にはお返しできるかと思います』
『う、うむ、流石はキース卿だな。よくやってくれている……。だが、無理はしなくていい。無理は民衆の不満に繋がる。債務については約束のとおりに、四年で完済すればよいのだ。余剰があれば、民衆を潤ってやるがいい。そちの州が急いで返さずとも、王家の金庫にはまだ余裕がある』
イザベラは軽口を混ぜた口調で言った。
しかし、語りかけている相手が舐めるような視線をちらりとイザベラに向けたのがわかった。
イザベラはどきりとした。
『お優しいことです。ありがとうございます』
しかし、キース卿はなに食わぬ口調で言葉を返して、頭をさげる。
イザベラは、すぐに逃れるように、隣の謁見対象相手に視線を向けた。
『つ、次はフルイユか……。ち、陳情にあった大雨で崩れた橋の件は事前に報告を受けた。すでに王宮からの調査団の派遣を指示した。いずれにしても、そちの管区のこととはいえ、街道を繋ぐ道路の事は国のことだ。と、当然に経費は中央で負担する。だが管区内のことであるからには、補修の要領については希望もあろう。よく相談するとよい』
『ありがとうございます』
当該の行政官であるフルイユが頭をさげる。
また、イザベラにじっと視線を向けてくる。
イザベラはわざと両脚を肩幅に開いていたのだが、耐えられずに膝をぎゅっと揃えた。
途端に、隣のロウが咳払いした。
はっとしたイザベラは仕方なく、脚を開く。
ロウがイザベラの耳元に口を寄せてきた。
『さすがのまぞの女王様だ……。股間が濡れてきた。筋がくっきりしてきた……』
意地の悪いロウの言葉がささやかれる。
思わず、またもや脚を閉じたくなったが、「調教」だということを思い出す。
調教には逆らえない……。
イザベラは恥ずかしさを我慢する。
『つ、次……』
イザベラは、さらに隣の行政官に意識を向けた。
つまりは、やっているのは、今回の定期報告に順番が当たっている十人の地方行政官との謁見である。
全員が分割して統治させている国王直轄領を治めるそれぞれの行政官たちであり、イザベラの治政においては五十人ほどの地方行政官が存在していた。
広大になった直轄領の行政業務を分割して行わせているのだが、イザベラはその行政官たちと、最小限一年に一度以上の直接の面談をすることを自分に義務づけていた。
もっとも、この面談で何事かが決定されるとか、別に書面で報告されている事実と異なる新しいことが聞けるということはない。
ここで行政官たちがイザベルに告げることについては、すでに事前にイザベラの女官団たちが報告を受け、必要な行政処置は終わっている。
先程の陳情に対する処置さえそうだ。
イザベラは、すでに事前に知っている彼らの業務報告を受け、対応の終わっている陳情を受け、もっともらしく応じているだけだ。
だが、これが無駄なこととは思わない。
何事にも形式ということは必要であり、この定期報告は、直轄地に配置している行政官が、女王であるイザベラに密接に結びつているという事実を世間に示す政治的な演技であり、また、彼ら地方行政官たちに、王家の目がしっかりと向いているぞという釘を刺す行為ということでもある。
イザベラの治政になり、急激に増えた国王直轄領に対する新しい治政のかたちのひとつとして、やっていることだ。
それにしてもだ……。
つまりは、この面談はただ聞いているだけでいいのであり、ここで女王として何かの判断を求められるということはない。
イザベラは、あらかじめ定まっている台詞をなぞって喋るだけのことをすればいい。
そういうことになれば、すぐに持ち前の好色性を発揮するのが、イザベラの右隣に座っている男だ。
イザベラは、いま、十人の地方行政官たちとの謁見に際し、なんと、ロウから全くの下着だけで臨むことを命じられていたのだ。
だから、イザベラは、いまは下着姿で謁見に臨んでいるのである。
恥ずかしくてたまらない。
しかも、ただの下着ではない。
怖ろしく布が小さい。
乳房を包むものは、首と背中に結ぶ紐に乳首だけを隠す布切れがあるだけのものであり、イザベラが身に着けると、乳房に眼帯が貼りついているようにしか思えない。
裏地もなく、イザベラの乳首が羞恥の緊張でしっかりと勃っているのが、はっきりとわかる。
そして、腰の部分が紐になった股間を包む下着も、胸同様に布が少ない。
いまは座っているからいいが、お尻は紐が喰い込むだけの剥き出しであり、前側も三角形の布が亀裂の半分を隠すだけで、もしも陰毛が生えていたら、その半分も布で隠しはしないだろう。
まあ、イザベラの股間は、すっかりと隣の好色男に剃られていて、童女のようにつるつるだったから、恥毛を晒しながら謁見をするという破廉恥な仕打ちだけはしなくて済んでいるが……
なぜ、こんな格好で謁見をしなければならないのかという疑念は、イザベラの頭には浮かばない。
だから、夢だということがわかっている。
会話の合間に、ちらりと股間を見た。
はっとする。
ロウが揶揄した通り、小さな股間の下着に丸い染みができて、布の中央に縦筋が浮かんでいる。
やっぱり、これ以上はだめだ。
イザベラは再び脚を閉じようとした。
『んふうっ』
そのときだった。
イザベラの乳房や剥き出しの太腿、さらに腕や足の裏に至るまで、一斉に淫靡な愛撫が始まった。
イザベラはぐんと身体をのけぞらせた。
『あっ、だ、だめだ、ロ、ロウ』
なにをされたがわかる。
地方行政官たちの面談に飽きたロウが粘性体を飛ばす能力を使って、イザベラの身体にたくさんの粘性体の破片を飛ばし、それを同時に振動を開始したのだ。
『や、やめいっ』
とっさに身体から粘性体を払おうとしたが、手首と足首にも粘性体が発生して、椅子の手摺りと椅子の脚に固定をされてしまった。しかも、足首については粘性体で左右に引っ張られて、足をがばりと大きく開かされる。
『ああっ、ひいっ』
淫靡な痺れに我慢できずに、イザベラは椅子の上で大きく身体を悶えさせてしまった。
『陛下、懸案の……地区の新規産業開発のことでありますが……』
そして、イザベラの痴態など存在しないかのように、行政官たちの報告は続いている。
だが、彼らはすでに定期報告のことなど上の空だ。
明らかに好色な視線をイザベラに向けており、興奮して上気した顔をこっちに向けている。
『見るのはいいが近づくのはならんぞ。この女王は俺の女だ』
ロウが行政官たちに得意気に笑いかけるのがわかった。
そして、ロウが椅子から身を乗り出すように、イザベラの無防備な股間に手を伸ばす。
小さな布越しに指を下から上に撫であげた。
「ひあああっ」
あっという間だった。
ロウの魔道のような指使いで、イザベラは一瞬にして快感を飛翔させた。
そして、とてつもない快感が全身を駆け抜け、気がつくと、イザベラは粘性体に拘束されている身体を跳ねあげて悶絶していた。
『そんなに、暴れない方がいいぞ、姫様。おっぱいがぽろりだ』
ロウが股間の布をずらすようにして指を二本膣の中に挿入してくる。
達したばかりでびっしょりと濡れているイザベラの股間は、簡単にロウの指を根元まで受け入れた。
また、ロウの言葉の通り、小さな胸の布片はイザベラの身体を暴れさせたことによって、両方とも乳首から外れてしまっている。
『おう』
『ほおお……』
『こ、これはなかなか……』
行政官たちが息を呑むのが聞こえる。
イザベラは羞恥に気が遠くなりそうになった。
『や、やめてくれ、ロウ──。みんなの前でなど、あああっ』
イザベラは抗議しようとしたが、ロウが股間に挿入している指をくいと曲げて、腹に近い粘膜の部分を強く擦った。
『ああっ、はあああっ、いやあああ』
その瞬間、またもや、稲妻のような刺激が駆け抜けて、イザベラはまたもや絶頂してしまう。
『仕方のない女王様だな。これはもう一度調教し直さないとね』
ロウがイザベラの前に立ち、両方の太腿を抱えるようにして下半身を抱える。
足首の粘性体は嘘のように消滅して、両脚が左右の手摺りに掛けられて、またもやそこで固定してしまう。
『ほ、本当に、ここでは……あっ、ああああ』
イザベラは必死に抵抗しようとしたが、気がつくとロウの股間が剥き出しになっていて、勃起した怒張がイザベラの股間にあてがわれていた。
『んふうううっ』
一気に男根を挿入される。
そして、ずんずんと律動しながら、子宮を揺らすように動かされる。
『ああ、ロ、ロウ、だめだああ、あああああ、ああああっ』
拘束された身体がまたもや大きく反り返った。
全身が痙攣する。
内腿が波を打って牽連し、それが瞬時に全身に拡がる。
『こらえ性の無い女王様だ。謁見の最中に三度も絶頂するとはねえ』
ロウが腰を前後左右に動かしながら微笑む。
達した身体を休めることも、快感の余韻に浸ることも許されず、さらに高見のところまで絶頂を引きあげさせられた。
『あはあああっ』
そして、精が放たれる。
子宮にロウの精が満たされていく……。
イザベラは快感に気が遠くなっていった。
『あれっ?』
すると、ロウが男根を抜きながら苦笑した。
なにが起きたのがわかった。
イザベラは絶頂しながら失禁していた。
玉座にイザベラの放尿による水たまりが拡がっていく。
『おしっこ漏らすほどに気持ちよかったか、姫様? いずれにしても、姫様は再調教だ。女王になっても、俺の性奴隷であることは変わらないぞ』
ロウが言った。
イザベラは圧倒的な羞恥と情けなさに浸りながら、それでもロウのことが愛おしくて、放尿を続けながら首を何度も縦に振っていた。
『あ、ああっ、ああ……。わ、わたしは……お前の奴隷だ……。じょ、女王になっても……調教を……』
イザベラはやっとのこと言った。
すると、ロウが優しく微笑んだ。
そして、目が覚めた。
ノールの離宮にあるイザベラの私室だ。
昼間の陽光が射していて、部屋は明るい。
イザベラは寝台ではなく、寝椅子に身体を横たえていた。
部屋には誰もいない。
ひとりだ。
陽射しの強さから判断して、
それで思い出したが、今朝から体調が悪くて、朝食後、身体を横にしていたのだった。
体調が悪いといっても、病気はない。
つまりは、つわりだ。
このノールの離宮に来た頃はなんでもなかったのだが、この数日、急に吐き気を伴う気持ちの悪さに襲われるようになっていた。
今日も朝食についても口にはしたものの、すぐに吐いてしまい、そのまま休ませてもらったのだった。
どうやら、そのままうたた寝をしていたようだ。
それはいいのだが、まさか、あんな夢を見るとは……。
しかも、股間が情けないことになっている。
夢の中でやった失禁は、そのまま現実でも同じになっていた。
イザベラのスカートと座椅子が、寝ているあいだにやったイザベラの放尿によってすっかりとびしょびしょになってしまってたのだ。
すると廊下に繋がる扉にノックの音がした。
一瞬迷ったが、イザベラは入室を許可する。
この歳で“おねしょ”など羞恥の極みだが、処置をしてもらわないとならない。
どうせ、この離宮にいるのは全員がロウの女たちであり、そうではないエルザと護衛についても、十日ほど前に離宮を出ていた。
「悲鳴のような声が聞こえたのですが……、あっ」
「姫様、あらあら……」
入ってきたのはオタビアとダリアだ。
侍女団のふたりであり、オタビアはカロー子爵家の令嬢であり、ダリアはオタビアに仕える専属侍女という主従である。
もちろん、ロウの愛人のふたりだが、オタビアは全身性感帯という奇妙な身体をしていて、いまも肘の上まで隠れる薄い手袋をしている。肌が鋭敏すぎて、なにかが触れてしまうと、途端に性的快感を覚えるらしい。
ロウはことのほか、そのオタビアの性質を気に入っていて、王都にいる頃は夜這いの度に、オタビアの身体をくすぐって、彼女の嬌態を愉しんでいた。
また、ロウの精を注がれることによって覚醒した能力は、オタビアが『洞察力』で、ダリアが『記憶力』らしい。ロウが以前にイザベラに教えてくれていた。
そのとおり、ふたりとも侍女としてだけでなく、イザベラの王太女執務を支える女官としてなくてはならない戦力だ。
それはともかく、イザベラがおねしょをしたということは、オタビアの洞察力を要するまでもなく、丸わかりだろう。
イザベラは隠さないことにした。
「すまない。夢の中にロウ殿が現われてな……。それで犯してもらったのだが、気持ちよすぎておしっこを漏らしたようだ。綺麗にしてくれるか」
イザベラは自嘲気味に笑いながら立ちあがる。
それで気がついたが、居眠りの前には、あんなに気持ちが悪かった身体が、すっかりとよくなっていることに気がついた。
ロウは、愛人にした女の負傷を癒したり、体調を良くしたりできるという不思議な能力があることは知っているが、どうやら、夢の中であってもそれは健在のようだ。
イザベラは苦笑してしまった。
「それは羨ましいです。夢でいいから、ロウ様にお会いしたいです」
オタビアが汚れたイザベラの服を脱がしながら言った。
一方で、ダリアは椅子と床を掃除用に布で拭くと、イザベラの身体を洗うための湯を取りにいった。
「だが鬼畜だぞ。夢の中では、わたしは王位を継いで謁見をしていたのだが、会見に飽きたロウ殿が人のいる前でわたしを犯しだしたのだ」
イザベラは服を脱がせてもらいながら笑った。
やがて、ダリアが戻って来て、全裸になったイザベラの身体を湯に浸した布で拭いてくれだす。
イザベラはされるがままになっている。
いずれにしても、イザベラも侍女たちも、立場や階級は天と地ほどに違うものの、ロウが毎晩のように夜這いをして、当たり前のように全員を連続で目の前で抱いていくので、いまや、すっかりと気心が知れた仲良しだ。
さすがに、ロウの前であらゆる痴態を見せ合っているのに、取り繕っても仕方がない。
鬼畜で好色なロウの悪戯で、お互いの放尿どころか、排便も見せ合っている。
だから、王太女のイザベラが昼間から尿を漏らしてしまったとあっても、取り繕うことを必要とせずに、世話をお願いできる。
「ところで体調はいかがですか? お食事は? 軽いものをお持ちしますか?」
身体を拭いてくれているダリアが言った。
実のところ、イザベラのつわりが始まってから、今日のような淫夢を見るということが幾度かあった。
そして、淫夢の後は、なぜか身体の具合がよくなり、吐き気も消えて、衰えていた食欲が増すのである。
だから、今回もそうではないかとダリアが訊ねたということだ。
「頼む。やはり具合がいい。ロウ殿はやはり不思議な男だな。夢に出てきても、女の身体を癒してくれる」
イザベラは笑った。
やがて、身体を拭き終わり、清潔な下着と衣服に着替え終わった。
乱れていた髪を整えてもらい、そのあいだに、またもやダリアが一度部屋を出ていく。
イザベラはテーブルに腰をおろす。
しばらくして、台車に載せた食事が運ばれてきた。
「体調が戻ったんだって?」
食事と一緒に部屋に入ってきたのはアネルザだ
アンとノヴァもいる。シャーラもだ。
「また、ロウ殿の夢を見たのだ。すると吐き気も消えて、いい感じになった」
イザベラはオタビアとダリアの給仕による食事を続けながら言った。
アネルザたちは、食事をしているイザベラのテーブルを囲むように座った。
ひとりで食事をするなど、これも儀礼には反するのだが、先日やって来た通いの女医も、またアネルザも、つわりのときには食べられるときに食べることが大切だと言ってくれていたので、そうすることにしている。
妊娠初期にはつわりというのは珍しくないことなのだが、食欲がなくて食べれないということは問題なのだという。
従って、食べれるときには、なんでもいいから口にしろと言われていた。
「だけど、不思議なものだねえ。夢に出てきたロウ殿にいやらしいことをされると、つわりが消えるなんてねえ」
アネルザが笑った。
イザベラのつわりが時折の淫夢と引き換えに、消えることをアネルザも知っている。
「わたしにもわからない」
イザベラは食事を続けながら言った。
一方でそのアネルザをはじめとして、アンやシャーラの前に紅茶が並べられていく。
給仕をしているオタビアとダリアの代わりに、ノヴァが全員の分のお茶を入れて並べてくれたのだ。
お茶については、食事を運んできた台車に、準備の終わったお茶の一式が乗せられていたものである。
また、お茶については、アネルザたちだけでなく、ノヴァを含め、給仕をしているふたりの分もテーブルの端に並べられている。
ロウの女については、階級など無関係に、全員が対等──。
そんな不文律が浸透していて、いつの間にかひとつの家族のように過ごすようになっていた。
侍女たちと同じテーブルを囲むなど、ロウが全員を自分の愛人にしてからの習慣だが、イザベラはそれを非常に好ましいものに感じていた。
「ところで、アン姉様はつわりはないのだな? 羨ましいことだ。もしかして、わたしのようにロウ殿が夢の中に出て来て、体調を戻してくれたりしてくれているのだろうか?」
イザベラはアンに視線を向けた。
アンもイザベラも、ほとんど同時にロウの子を宿した妊婦仲間だ。
イザベラは、ずっと体調がいいのだというアンを羨ましく思っている。
また、アンにぶつけた質問は、まったく思いつきだ。
まともな返事を期待しているものではないし、ただ鳴っているだけの言葉のようなものだ。
しかし、なぜかアンだけでなく、ノヴァまで急に顔を真っ赤にした。
あまりの劇的な表情の変化に、イザベラは首を傾げた。
「ゆ、夢には出ないわ……。だ、だけど、ロウ様の存在に触れることで、夢の中の影であっても、わたしたちをロウ様が守ってくれるというのは同意するわね」
アンが言った。
だが、イザベラには、アンの言葉の意味が全く理解できなかった。
さらに首を傾げてしまった。
「それよりも、お前の体調が戻ったら、相談しようと思っていた」
すると急にアネルザが深刻な口調でイザベラに話しかけてきた。
「相談?」
イザベラは食事の手をとめて、アネルザに視線を向けた。
「すまない、イザベラ」
アネルザが座ったままがばりと頭をさげた。
呆気に取られていると、シャーラが宙から取り出す仕草で二通の手紙を取り出して、イザベラの前にすっと置く。
二通とも、封が切ってある。
「すまないとはなんだ、王妃殿下?」
イザベラは訊ねた。
「読み違いだ。どうやら、戦争になる」
頭をあげたアネルザは言った。
イザベラは驚いた。