【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
41 ランク昇任試験
一郎の眼の前を人間の赤ん坊ほどの大きさもある“大ラット”が五匹駆け抜けてきた。
ここは、壁にかけた松明に照らされているだけの薄暗い地下水路であり、ハロンドール王国の王都ハロルドである。
無事に冒険者としてギルド登録をした一郎たちは、「クエスト」、すなわち、依頼をこなしている最中だ。
クエストの内容は、『王都の地下水路の大ラット狩り』だ。
正式の冒険者としての二度目のクエストであり、あの後味の悪かった歌姫ニーナからの依頼を含めれば、三度目のクエストということになる。
この大ラット狩りは、冒険者としては初心者の冒険者の多くが、少なくとも一度は挑むクエストということであり、ギルド商会のデルタ・クラス用の受付のテリオ婆さんが紹介してくれたものだ。
また、このクエストは、
二度目のクエストで、この依頼を勧められたということは、一郎たちが見込まれたということだ。
もっとも、認められたのはエリカとコゼであり、一郎ではないことは自覚しているが……。
報酬にしても、冒険者としては最下級ランクである
なにしろ、先日のエンゲル草集めは、三人がかりで一日働いて、やっと銅貨二枚の報酬を得ただけだが、今日は、一匹につき銅貨二枚で買い取ってくれることになっている大ラットをすでに百匹以上は捕えたと思う。
銅貨二百枚──。
つまりは、銀貨二枚だ。
眺めているだけでいい仕事としては、随分ともうかる仕事だ。
ただ、本来はずっと危険な仕事であるのは間違いない。
眺めているだけでいい状況になっているのは、一郎のちょっとした思いつきのおかげであり、本来は凶暴な大ラットを悪臭の漂う地下水路で追いかけ回しては狩るという本当に骨の折れる仕事なのだ。
大ラットは都市部にも棲む巨大ネズミであり、一匹でも凶暴な猛獣だが、もっとも怖ろしいのはその集団性であり、十数匹の群れを作って獲物に一斉に襲いかかり、あっという間に、はらわたを噛み割いて食ってしまうそうだ。
それを本来は、一匹一匹群れから切り離しては、生きたまま檻に入れるか、殺してから袋に入れて、ギルドに持ち帰らねばならない。
すばしっこくて獰猛な巨大ネズミである大ラットを捕らえるのは、本当に難しく、生半可な初心者冒険者だと、すぐにやられてしまい、時には死ぬこともあるようだ。
大抵は住み処としている地下水路から出てくることはないが、まれに地上に出てきて、王都内で人を襲ったりするので、ギルドに所属する冒険者の初心者クラス──つまり、
ギルドに所属する冒険者のランクは、上から、“
冒険者は、自分のランクと同じか、下級のクエストを受けることはできるが、上級のクエストは受けられない。
冒険者ギルドとしても、所属する冒険者のために集めてきた「日雇い仕事」を無暗に失敗されても困る。
だから、そうやって、冒険者たちの実力と仕事の難易度が釣り合うようにしているのだ。
当然、クエスト・ランクがあがるほど難易度もあがるが、報酬もあがる。
しかし、報酬を望めるクエストは、冒険者ランクがあがらないので、成功するためにはクエストをこなして、冒険者ランクをあげなければならない。
冒険者ランクがシーラともなれば、ギルド登録しているだけで、月に定まった額の年金も支給されるくらいだ。まあそれは、実力のある「冒険者」をギルドから逃がさないための施策でもあるようだ。
いずれにしても、どの冒険者も、報酬の割がいい上級クエストを受けられるようになるために、ランク昇任にしのぎを削ることになる。
ランクがあがれば、請け負える仕事が増えるというだけでなく、複数の冒険者パーティが、ひとつのクエスト請け負いに重複する場合は、上級ランクのパーティが優先になる。
だから、ランクをあげなければ、割りのいいクエストは、上級ランクのパーティが取ってしまい、下級ランクのパーティには、この大ラット退治のような、危険が大きく、それに見合う報酬が望めないというものばかりになる。
だから、パーティのランクアップは本当に大切なのだ。
そして、初心者クラスとも呼ばれるデルタ・ランクの冒険者が、チャーリー・ランクにあがるための登竜門とされているのが、この『王都の地下水路の大ラット狩り』のクエストというわけだ。
昇任認定試験といっても、本当に試験があるわけでもない。
ただ、この仕事をうまくこなせば、チャーリー認定をギルドから申し渡されることが多いという噂があるだけだ。
とにかく、どの程度の大ラットを捕えれば、昇任レベルとしてギルドが一郎たちの力を認めるのか知らないが、一郎は集めるだけ集めるつもりだ。
そして、早く上級ランクに昇任して、市民権を得るほどの冒険者になりたい。
市民権を得れば、王都に家を構えることも可能であり、そうなれば、風呂付きの家を買うという一郎の夢も近づくというものだ。
「うほおっ、やったね──。今度は五匹一緒にだよ──。それにしても、すごいよ。ご主人様も面白いことを考えつくよね。匂いで大ラットを自分から檻に入れさせるなんて、ぼくには思いもつかなかったよ」
大ラット捕獲用の檻籠の横を舞っている魔妖精のクグルスが陽気な声をあげた。
一郎がクグルスを呼び出してやらせているのは、あらかじめ準備した大ラット捕獲用の大きな籠のふたつのそれぞれに発情した雌と雄の強烈なフェロモンを中に蔓延させるということだ。
クグルスは淫気の力を操ったり遣うことが得手中の得手である魔妖精だ。
人間であろうと、動物であろうと、性欲を自由自在に操ることはできる。
発情フェロモンというのも、もともとはそれぞれの生き物特有の淫気がその正体だ。
知恵のない動物なら、ただのフェロモンに騙されて、檻の中に発情した異性の個体がいると思って、自分から檻に入ってくるのではないかと考えた。
そして、実際にやってみたら、案の定、雌雄の大ラットの個体が、実際には空である檻の中に次々に入ってくる。雄の個体は発情した雌のフェロモンが蔓延した籠に飛び込み、雌はその逆だ。
一郎の眼の前で、どんどんと大ラットでふたつの籠に埋まっていく。
「性欲は、食欲に勝る生き物の本能ともいうしな。異性と交合して子孫を残したいというのは、生命の存在意義の本質だ」
一郎はうそぶいた。
とにかく、この方法がこんなにうまくいくとは思わなかった。
一郎の眼の前で、大量の大ラットが捕獲がどんどんと面白いように簡単に進んでいる。
もっとも、働いているのは大ラットを集めるためのフェロモンを操っているクグルスと、集まった大ラットの入った大籠を地上で集めて、空の籠を地下におろすという作業をしているコゼだけだ。
一郎たちのいる場所は、王都の地下を流れる水路と地上とを結ぶ竪穴の通路のすぐ脇だ。水路で大ラットを狩っている一郎たちに対して、地上にいるコゼが大ラットの詰まった檻を借りてきた荷車に載せ、代わりに交換用の新しい檻を縄でおろすという作業をやっているのだ。
一方で、一郎とエリカなど、地下水路でただ集まってくる大ラットを見ているだけでなにもしていない。
だから、退屈凌ぎの悪戯をする気分になるというものだ。
「そ、そんざいいぎ……? ご主人様も時々、難しい言葉を遣うよね……。まあいいや──。今度は雄用の檻もいっぱいになっちゃった──。上で待っているコゼに合図するね」
「ああ、頼むよ」
一郎は水路の横を走る通路に持ち込んだ簡易椅子に腰かけながら頷いた。開いた脚のあいだには、背を向けて立たせているエリカがいて、一郎はさっきから、そのエリカの乳房を揉みしだいている。
「ううっ……いっ、はっ……。ロ、ロウ様……、い、悪戯は……け、警護に……し、支障が……」
エリカが色っぽい声を漏らしながら、身体をくねらせる。エリカがやっているのは、大ラット狩りをするにあたって、万が一にも襲いかかってこないとも限らない猛獣から、一郎を守ることだ。
それで、細剣を出して、一郎の前でしっかりと構えているのだ。
しかし、しばらく「狩り」を続けていて、大した危険はないなと判断したところで、一郎の悪戯心が頭をもたげてしまった。
それで、エリカには一郎の警護を命じたまま、一郎はその背後からエリカに「痴漢」をすることにしたのだ。
エリカはびっくりしたようだが、性奴隷のエリカは性行為に類することでは一郎には逆らえない。
従って、エリカは、一郎の傍若無人な手管の餌食になるしかないというわけだ。
「警護なんて必要ないよ、エリカ──。ご主人様の作戦は完璧だよ。獲物の動物たちは、ぼくらなんて見向きもしていない。檻の中に立ちこめさせている発情した異性の大ラットの匂いめがけて一目散だ。だから、安心して、ご主人様に遊ばれなよ……」
クグルスが雄の大ラットでいっぱいになった大きな籠に縄を結び目を直しながら言った。
そして、結び終わった紐を軽く二度引く。
合図を確認したコゼが、籠を地上に引きあげたことで、籠が上昇していくのが脇目に映った。
「あっ……、そ、そうは……い、いかないわよ……。ロ、ロウ様を……ま、守るのが……わ、わたしの……や、役目……」
エリカが身をよじらせながら言う。
一郎はいつもエリカにはかせている短いスカートの中に手を入れると、下着をおろして足首から取り去った。
そして、その下着を懐にしまい、すでにぐっしょりと濡れている股間に指を移動させる。
「はああっ──ロ、ロウ様……」
エリカの身体ががくがくと震え始める。
すでに快感値は“14”──。
全身は性感帯の目印である赤いもやでいっぱいだ。
もう、どこをどういじっても、エリカはすぐに達してしまうだろ。
それでも、いまだに懸命に警護の役割を果たそうというつもりのようであり、エリカの剣は、鞘から出されて、しっかりと刃先を前に向けている。だが、それもぶるぶると小刻みに揺れていた。
相変わらずの健気さと真面目さが本当に愛おしい。
「俺の性奴隷を兼ねた警護人であれば、たとえ、セックスをしていても、俺を守れるはずだ。犯されてよがりながらも、しっかりと理性を保って、俺を守り続けろ。俺が精を出す前に呆気なく達して、一瞬でも正体不明になったりしたら、罰としてギルドに成果報告を行くときは下着なしだ」
一郎はエリカの腰の括れを両手で掴んで、自分の腰に引き寄せた。
ズボンの前を開いて勃起した性器を外に出す。
そして、エリカの両脚を大きく開かせて一郎の股の上に座らせるようにすると、その膣の中に天井を向いている一物を突き挿すようにエリカの腰を落とさせた。
「そ、そんな……。はああっ──」
エリカが甲高い悲鳴をあげて、身体をのけ反らせる。
挿入と同時に剣を落としそうになったのだが、それだけはなんとか持ち直したようだ。
一郎はエリカの腰を持ったまま、エリカの身体を上下させる。
肉襞の内側の粘膜は驚くほどにびっしょりと濡れていた。
一郎は亀頭で、淫魔師の一郎だけにわかるエリカの膣の真っ赤な部分を強く擦るようにしていく。
たちまちに、エリカはあられもない声をあげて、呼吸を荒くした。
「ロ、ロウ様……はああ──あああ──はううう──」
エリカの乱れた息に甘い声が混じりだす。
ただ、声が結構大きい。
竪穴の上は、王都の南通りの脇だったと思う。
それなりに人通りも多いはずだ。
「服をたくしあげて噛め。声を抑えろ」
一郎は苦笑しながら言った。
「で、でも……そ、そんなことをしたら……け、警護が……」
エリカは息も絶え絶えに言った。
感じやすいエリカが達するのは時間の問題だ。
「いいから服を噛め。そうやって色っぽい声を奏でられると、大ラットどころか、地上から野次馬が集まってしまう」
一郎は椅子に座ったままの態勢で、腰の上のエリカの股間を犯しながら笑った。
今度はエリカは逆らわなかった。
上衣を大きくたくし上げて、自分の口に噛んだ。
当然、上衣の下のふたつの乳房が露わになる。
ブラジャーのないこの世界だが、エリカのような女戦士は戦いの邪魔になるので、胸を固定するように、布を乳房に巻きつけている。
ただ、さっきからさんざんに揉みしだくあいだに、すっかりとその胸当てもはだけてしまっていた。
一郎は身体を支えている手を再びエリカの胸に移動させる。
胸を強く揉みながら、エリカの身体全体を上下させた。
「んんんっ」
エリカが鋭い反応を示して、身体をのけ反らせた。
快感値が“0”になった。
達したのだ。
一郎はエリカの狂態を愉しみながら、エリカの絶頂に合せて精を放った。
そのあいだもエリカのエクスタシーは続いている。
そして、一郎が精を放ち終わるのに合わせたように、がっくりと身体を脱力させた。
「呆気なく達して、ちょっとだけだが、正体不明になったな、エリカ? 言い渡していたとおりに、冒険者ギルドのデルタ支部へは下着なしだ」
「い、一瞬、正体不明になったのは認めます……。だ、だけど、下着は……」
いまだに一郎はエリカと繋がったままだ。エリカは絶頂の余韻に耽った様子のまま、控え目な口調で言った。
「だめだ。罰だ──」
一郎はわざと強い調子で返す。
「ああ……」
エリカが項垂れた。
そのとき、上に繋がる竪穴から誰かが降りてきた。
コゼだ。
「ねえ、ご主人様、もう空の籠がないですよ──。それにもう荷車もいっぱいだし……。うわっ──。なにやってもらっているの、エリカ──? 狡いよ──。あたしばっかり働かせて──。なにもしていないエリカがご褒美もらえるなんて──」
コゼがエリカと一郎の姿を見て、大きな不平の声をあげた。
そのあまりにも真剣な口調に、一郎は思わず苦笑してしまった。
*
大騒ぎだった。
一郎は冒険者ギルドのデルタ支部から冒険者ギルド本部に向かう道すがら、昨日の喧噪を思い出していた。
たった一日足らずで、大ラットを百匹以上も生け捕りにしてきたのは、冒険者ギルドの歴史でも前代未聞だというのだ。
ギルドのデルタ支部の受付をしているテリオ婆さんなど、驚いて腰を抜かしたような状態になったほどだ。
とにかく、支部にいたほかの冒険者たちの賞賛と羨望の眼差しを向けられるなか、一郎たちは報酬の銀貨二枚と銅貨二十四枚を渡されるとともに、今朝になって改めて、
それでいま、こうやってエリカとコゼを連れて、王都の通りを歩いているところなのだ。
冒険者としての最下級ランクのデルタ・ランク専用の冒険者ギルド支部は、“デルタ支部”とも称され、王都ハロルドの城郭でも外縁に属する下町にあるが、チャーリー以上のランクの冒険者とクエストを扱う冒険者ギルド本部、通称“ギルド本部”は、王都の中心部に近い繁華街にある。
デルタ・ランクの冒険者は、ギルド本部への立ち入りは許されないので、一郎たちも本部に行くのは初めてだ。
同じ冒険者でも、支部に集まるデルタ・ランクの冒険者など、日雇い仕事を受ける人足と変わらない。
曲がりなりにも「冒険者」と堂々と名乗れるのは、チャーリー・ランク以上の冒険者のことをいうのだ。
「とにかく、早くも冒険者として一歩前進ですね、ロウ様。たった七日でチャーリー・ランクに昇任できるなんて、幸先がいいと思います」
エリカもにこにことしている。
「そうだな。俺も満足しているよ」
一郎は応じた。
そして、この王都にやってきて、もう七日なのかと改めて思った。
七日前……。
一郎たち三人は、この王都に入る前に王都に近い西側の城郭マイムに立ち寄り、この王都の歌姫ことニーナという女と、その幼馴染であり、恋人のトーイという安宿の息子に関わった。
一郎たちがその宿に泊まっているときに、偶然にもトーイが突然に何者かに襲われたのだ。
そのとき、一郎たちがとっさに救護しなければ、サイの毒という致死性の猛毒で、トーイは間違いなく死んでいただろう。
とにかく、そのときトーイの命を救った縁で、一郎たちはニーナから冒険者としての依頼を受けることになったのだ。
すなわち、トーイの警護をするとともに、トーイを殺そうとした者を明らかにし、可能であればそれを排除するという依頼だ。
ちょっとした調査で、すぐにその背景は明らかにできた。
犯人は、ニーナのパトロンであり、一介の町娘のニーナを王都の歌姫にまで育てあげたドルニカという女伯爵だった。ニーナはしばらく前から、そのドルニカにもう歌姫をやめてトーイのもとに帰りたいと、再三にわたって訴えており、それに業を煮やしたドルニカが部下の毒遣いに命じて、トーイを殺させようとしたのだ。
その毒遣いの正体もわかっている。
最後にニーナが、一郎たちとトーイの前にやってきたとき、ニーナを見張るように一緒にいたブルドという人間族の女だ。一郎は、魔眼の能力によって、そのブルドという女が毒遣いというジョブを持っていることと、密かに毒針で武装していることをしっかりと見抜いたのだ。
だが、そのドルニカという女伯爵やブルドという女毒遣いを排除して、ニーナとトーイたちをドルニカたちの悪意と脅威から解放するという仕事をしようとする前に、突然にその仕事は終わった。
当のニーナが、トーイに別れの言葉を告げるとともに、成功報酬と同額の違約金を支払って依頼を取り消したのだ。
その理由も明白だ。
ドルニカ夫人だ。
その女伯爵は、わざわざ王都からマイムの城郭にやってきて、ニーナを拉致すると、ニーナを調教という名の拷問で屈服させ、一郎たちへの依頼の取消しと、トーイとの別れを強要したのだろう。
そうに決まっている。
一郎の魔眼で垣間見ることのできた、ニーナのステータスにあった“ドラクス中毒”という言葉が証拠だ。その“ドラクス中毒”というのが、どういうものか、いまだにわからないが、たちのよくない薬物でニーナをヤク中にするか、それとも洗脳でもしたに決まっている。
しかし、そのときはどうすることもできなかった。
ドルニカ夫人たちの乗る馬車には、王軍騎馬隊の護衛がついていて、ニーナはドルニカ夫人たちの待つその馬車に、自らあっという間に乗り込んでいったのだ。
一郎たちは、ただ呆然と見送るしかなかった。
ニーナを見送ったあと、一郎はニーナが残酷な目に遭っている可能性をすぐにトーイにぶつけた。
だが、トーイは頑なだった。
トーイはニーナを歌姫としてくれたドルニカ夫人をある程度信じていて、女の「愛人」となるくらいの要求くらい仕方がないだろうというのだ。
それよりも、ニーナのようなただの町娘が、歌姫として王都で生きるためには、ドルニカのような後ろ楯がどうしても必要だと繰り返した。
一郎はニーナの立場は、「愛人」というような生半可なものではなく、娼婦以下の「性奴隷」だと言った。
しかし、トーイは、あのときのニーナの不自然な様子や、自分の命が狙われたという事実を前にしても、すでに王都の歌姫ほどの立場になったニーナをドルニカ夫人があまりにも酷い目には遇わせるわけがないというのだ。
それよりも、ニーナの歌は、ニーナとトーイの「夢」なのだという同じ言葉を繰り返すだけだった。
トーイの煮え切らない態度に、さすがの一郎も腹が立ち、同じように立腹しているエリカとコゼを促して、あの宿屋をあとにした。
それで終わりだ。
依頼はもう正式に取り消されている。
依頼人のニーナも、関係者であるトーイも、この事件に対する一郎たちの関わりを拒絶したのだ。
一郎がさらに首を突っ込むいかなる理由も、いまは存在しない。
もっとも、この王都にやってきてから、一応はニーナがどうなったかは調べてみた。
それで明白となったのは、ニーナはドルニカ夫人とともに王都に戻ってから、ただの一度も歌会のようなものはやっていないという事実だ。
屋敷にも戻っていない……。
まあ、どこにいるかは容易に想像はつく。
ドルニカ女伯爵の屋敷だ──。
そこでいまだに、ドルニカ夫人の残酷な「調教」を受け続けていて、苦痛と恥辱に喘いでいるのではないかというのが一郎の勘だ。
まず間違いない……。
だが、あの依頼は終わったのだ。
一郎は軽く首を振って、ニーナたちのことを頭から排除した。
「どうかしましたか、ロウ様?」
エリカが怪訝な顔を向けた。
「なんでもない。ところで、エリカはこのハロンドールではないが、旧ローム帝国の公国でも、冒険者をしていたんだろう? そのときはどんなランクだったんだ? エリカほどの者でも、デルタ・ランクから脱却するのに、それなりに時間がかかったか?」
一郎は後味の悪かったあの事件を忘れるために別の話題を口にした。
一郎がこの世界に召喚されたときには、エリカはあの性悪召喚師の愛人で弟子のような立場だったが、その前には三公国を渡り歩く冒険者だったと聞いている。
国は違っても、それぞれの国々にある「冒険者ギルド」は、このバロンドール王国を基点に拡がった共通するひとつの組織だ。
ランク制度やクエスト制度などの基本的なルールは共通のはずだ。
「わたしは、ブラボー・ランクのパーティに勧誘されて加わってたんです。だから、今回のように最下層から昇格したということはしませんでした。それから、雇われ兵のようなことをしたり……。そして、あのアスカ様に拾われて……」
エリカが答えた。
なるほど、エリカほどの実力があれば、そんな風に上級パーティに誘われるということもあるだろう。
そう考えると、この三人の中で、本当にデルタ・ランクに相応しかったのは一郎だけであり、エリカにしても、コゼにしても、本来はもっと上級ランクの実力があるのだという当たり前の事実を一郎は悟った。
「ところで、今夜も宿屋に戻ったら、あたしにも、もっとご褒美くださいよ、ご主人様」
横にいるコゼが口を挟んできた。
なんとなく口調に棘がある。
昨日、大ラット狩りをしていたとき、コゼがたったひとりで重い檻籠を揚げ下げする作業をしているあいだ、一郎とエリカが地下水路でのんきに交合に励んでいたのをいまだに根に持っているようだ。
だが、一郎はそのとき、ふと思いついたことがあって、ほくそ笑んだ。
コゼに対する悪戯の口実が頭に浮かんだのだ。
「それもそうか……。だったら、いまやろう」
一郎は大通りを歩きながら何気ない口調で口にした。
まだ、夕方には時間がある刻限だ。
そして、ギルド本部に通じる通りには、かなりの人通りがある。
「えっ?」
コゼが怪訝な顔をした。
「ひうっ」
次の瞬間、コゼは引きつったような声とともに息を吐いて、その場に立ち止まった。
しかも、背をぴんと伸ばして、両手をお尻にやって、顔を真っ赤にしている。
一郎は淫魔師の力でコゼのお尻の中に、一郎の性器とまったく同じ大きさと感触の疑似ペニスを発生させたのだ。
しかも、それをうねうねと動かしてやる。
立ち竦んでいるコゼは、がくりと膝をくの字に曲げた。
一郎は、コゼについては、特に念入りにアナル調教を施している。性交のときには、必ず肛姦を加えることにしているし、淫魔師が性奴隷に与えられる力を駆使して、アナルを犯されるコゼに最大の快楽が全身に迸るように身体を操ってもいた。
お尻で感じる激しい快楽をコゼの頭に刻み込んでしまうためだ。
いまや、コゼはすっかりとアナルを犯される肉欲の虜になり、淫魔力で身体の感度を操らなくても、ちょっとお尻をいじるだけで狂うような快感を覚えるようになっている。
そんなコゼにとって、お尻を疑似ペニスで刺激されるというのは、いまや耐えられない快楽責めのはずだ。
それを賑やかな大通りでされてしまったコゼは、必死に片手で口を押えて声を殺しながら、身体を震わせてその場に立ち止まっている。
「コゼ?」
突然に歩くのをやめてしまったコゼに、一郎の反対側にいるエリカが当惑した声をかけた。
「どうしたんだ、コゼ? 欲しがっていたものだ。俺の一物と同じ感触だろう。たっぷりと味わってくれよ……。そうだ──。確かにランクアップのきっかけの大ラット狩りは頑張ったからな。前にもご褒美だ」
一郎はコゼの膣の中にも疑似ペニスを発生させる。
そして、後ろの疑似ペニスと同じように蠕動運動と回転運動を与えた。
しかも、それを激しくする。
「うくうっ、くくくうっ」
コゼの喰い縛る口から苦悶の声が洩れた。
前後同時の疑似ペニスによる攻撃は、それほどまでにとてつもない感覚と甘美な刺激を与えたのだろう。
「ご、ご主人様……こ、ここでは……。や、宿屋に戻ってから……」
コゼが身体をくねらせながら必死に小声で言った。
三人の横を通る通行人たちが、不思議そうな表情を向けながら過ぎていく。
しかし、そんな視線を感じながらも、コゼは耳たぶまで真っ赤に上気して、下腹部を抑えるような姿勢をしている。
短いスカートをはかせているエリカに対して、コゼは黒くて細いズボンをはかせている。
そのズボンに、コゼの股間から漏れ出た愛液がコゼの股に大きな染みを作りだしたのがわかった。薄い下着だが、それを通り越してズボンに染みを作るのだから、かなりの愛液を迸らせているのだろう。
コゼもそれがわかっているから、手で前を隠すような仕草をしているのだ。
「コ、コゼ……? ロ、ロウ様……?」
エリカが顔を真っ赤にして、一郎とコゼを交互に見た。
やっと一郎のやっている淫靡な悪戯のことをエリカも悟ったようだ。
そのとき、城郭の大神殿の鐘が鳴りだした。
この大陸の時間単位である“一ノス”ごとに鳴る鐘だ。一ノスは、一郎の元の世界の時刻に換算すれば、約五十分くらいだ。この異世界も、一郎の元の地球も一日の時間は約二十四時間と一致しているようだが、ここでは大陸共通の時刻単位として、その二十四時間を三十区分して、そのひとつを“ノス”としている。
鳴り始めた鐘は正午と夜の中間であることを示す鐘だ。
確か、一郎の感覚でいう“一分”くらい鐘が鳴り続けるはずだ。
「コゼ、この場でそのまま気をやれ。鐘が鳴り終わるまでにな。できなければ、夜はコゼだけお預けだ。裸にして四肢を寝台の端に革紐で縛り、その上で俺とエリカがセックスするのをただ眺めるだけにさせるぞ」
一郎は笑った。
我ながら鬼畜だと思う。
このところ、以前は我慢していたもののタガが外れたようになって、嗜虐の欲情が迸る。
そして、それを実際にやらずにおられない。
また、その一郎の変化は、エリカとコゼの存在が後押ししているというところもある。
一郎の過激な要求に対し、どんなことをしても拒まず、それだけではなく、むしろ辱しめれば辱しめるほど、被虐の酔いのような淫情を示すふたりの美女に、一郎の鬼畜度はどんどんと膨れあがってくるのだ。
「コ、コゼ──。わ、わたしが前を隠すから……」
エリカが心配そうにコゼの前に回って、コゼの身体を覆い隠すようにしながら、何気ない仕草で肩を支えた。
コゼが全身の力を抜いたのがわかった。
一郎にしか見えないコゼの“快感値”がどんどんと下がっていく。
一郎の命令に従って、城郭の真ん中で気をやることを決心したようだ。
「んんん──」
やがて、コゼが前に立つエリカに掴まるようにして、ぶるぶると身体を震わせた。
気をやったのだ。
鐘の音はまだ響いている。
コゼがちゃんと言いつけを守れたことに一郎は満足した。
ふと、コゼの股間に視線をやった。
コゼのズボンはしっかりと大きな愛液の染みが浮き出ている。ただ、黒いズボンはそれほど染みを目立たせてはいない。
「よくやったぞ、コゼ──。ご褒美は夜、改めて与えてやる。それこそ、気を失うまで繰り返し絶頂させてやろうな。愉しみにしていろ」
一郎は笑って歩き出した。
ほっとしたように、エリカとコゼが後を追ってきた。