【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
412 太守夫人への要求
「気を失うんじゃねえぞ、ばばあ。そうだ。お前、魔道で防音してるよなあ。それを解除するように命令してやろうか? 扉の向こうの部下に、お前の情けねえ声を聞かせてやりなよ。見物しに集まってくるようになあ」
パリスがカサンドラの尻を犯しながら言った。
ぞっとした。
本当に向こうとは、壁一枚でしかにない。
しかも、少年の風貌とはいえ、人間族の男がひとりで、水晶宮の太守のカサンドラと一対一で会っているのだ。
女王ガドニエルには遥かに及ばぬとはいえ、カサンドラもエルフ族を代表する高位魔道師なので、滅多なことは起こらないと確信していはいても、万が一を考えて聞き耳を立てている可能性はある。
意地の悪いことを命じて、カサンドラをもっと追い詰める気に違いない。
いや、本当にそうするかも……。
そして、もしも、「命令」をされてしまえば、カサンドラには抗う方法がない……。
カサンドラは総毛だった。
しかし、そんな思念など、すぐに巨根でアナルを犯される苦しさに吹き飛んでしまう。
「ううう……くぐうう……んぐうう……」
必死に呻き声を耐えるが、パリスが律動をすることによって、たちまちにカサンドラは声をあげてしまう。
なにしろ、パリスはカサンドラを苦しめるためだけに、自在に大きさを変えられる自分の男根を腕ほどの太さまで大きくしているのだ。
しかも、まったく潤滑油を塗っていない。
苦しいなどというものじゃない。
カサンドラは、白目を剥きかけた。
「も、もう……や、やめて……さ、裂ける……。裂けちゃうう……」
「裂けりゃあ、治せばいいだろうが。超一流の魔道師なんだろう? カサンドラお婆ちゃんは」
パリスは一回一回を遊ぶように、強く弱く、浅く、そして、深く、円を描くように責めたてる。
カサンドラは耐えるしかない。
いかに魔道力で勝っていようとも、受け入れてしまった隷属の刻みが、パリスに抵抗することを拒否する。手足だって拘束をされているわけじゃないが、「命令」をされてしまったために、パリスに尻を犯されながら、机に突っ伏している上半身も、拡げている両脚も股く動かすことはできない。
いや、たとえ、抵抗の手段があっても、結局はカサンドラは、パリスを受け入れるのだろう。
実際には、心の底では、カサンドラはパリスに自分が服従したがっているのを知っていた。
だからこそ、性行為の最中に追い詰められた末の結果とはいえ、隷属の刻みを受けれてしまったのであるし、いまだって、本音ではパリスの求めるガドニエルとの面談を応じたいとは思っている。
しかし、できない。
それは、エルフ族の掟に反するし、カサンドラの性的嗜好の結果として、ガドニエルに危険を及ぼす可能性を作るなど……。
「ふうう……し、死ぬ……うう、うううう……」
しかし、もうなにも考えられない。
揺さぶられながら喉を搾り、苦悶のうちに悲鳴をあげては、また呻く。
これ以上、悲鳴を我慢することはできない。
「ははは、死ぬほど、気持ちいいか、ばばあ。だったら、部下にも聞かせてやれよ。そろそろ、魔道を解除させてやるぜ」
「そ、それだけは……ううっ、うああ、な、なんでもします……。な、なんでもしますから、ああああっ」
抉られるアナルから背筋、そして、頭が灼けただれる。
パリスの巨根が張り裂けんばかりに拡張されている肛門の粘膜をこするたびに、カサンドラは狂乱にのたうった。
だが、カサンドラは、これほどまでの苦痛の中から、得体の知れない疼きが膨れあがってきていることに気がついてもいた。
苦悶の中の快楽──。
これこそが、カサンドラがパリスに植えつけられてしまった被虐の性癖だ。
苦悶と疼きが交錯し、それが大きな快感に変化する。
カサンドラは、だんだんと狂乱してきた。
「おっ、感じてきやがったな。やっぱり、お前は雌豚だぜ。よし、じゃあ、予定通り、防音を解除させてやる。命令だ。解除しろ」
パリスがカサンドラを犯しながら言った。
「ああ、許して、ああっ」
カサンドラは一気に血の気が引くのを感じた。
だが、カサンドラに刻まれている隷属の刻みは、次の瞬間には、パリスの言葉に従い、この部屋に刻んでいる防音を解除してしまっていた。
もうこれで、部屋の外にこの部屋の音が筒抜けだ。
入って来てはならないと命じているので、余程のことでなければ、扉は開けないとは思うが、今度はカサンドラが悲鳴のような声をあげれば、すぐに突入してくるに違いない。
カサンドラは、懸命に口を閉じる。
「ああ、ゆるして……お、お許しを……。し、従います。ご、ご命令に応じます……」
カサンドラはついに言った。
すると、パリスが大笑いした。
その大笑いに反応したのか、ついに部屋の外から、従者が扉を叩いてきた。
カサンドラは恐怖に包まれる。
一方で、カサンドラのアナルに男根を挿入したまま、パリスの律動がとまった。
パリスが身体を捻って、扉側に身体を捻るのが感覚でわかった。
『問題ないわ。それよりも、そのまま待ちなさい』
びっくりした。
パリスの口から迸ったのは、カサンドラの声そのものだったのだ。
そして、パリスの上半身が倒れて、カサンドラの耳元に口を寄せる。
「……ちょうどいい……。ガドニエル女王様のいるイムドリス宮への転移室の支度をするように指示しな。それとも、お前の声で扉を開くように命じようか?」
パリスがくすくすと笑う。
頭が朦朧となりかえていたが、律動を中断してくれていたことで、多少は冷静になり、はっともする。
だが、まだ頭がぼうっとして、うまく言葉を紡げない。
「ほらほら、いまのはただのお情けだぜ。あとは自分で指示しろ」
パリスが机とカサンドラの身体のあいだに手を挟み込み、服の上からカサンドラの乳房を揉んできた。
そして、アナルに男根を挿入したまま、濡れ切っているカサンドラの股間にすっともう一方の指を挿入する。
「ふううっ」
カサンドラは沸き起こった激しい快感に激しい欲情の声をあげてしまった。
「どうしましたか、太守夫人様」
不審げに扉の向こうの従者が声をあげる。
カサンドラはパリスの愛撫に必死に耐えながら口を開く。
「な、なんでもない──。それよりも、すぐにイムドリスへの跳躍室の準備を……。パリス殿とともに、向こうに渡る」
乱れる呼吸を懸命に耐えて、指示を伝えた。
ガドニエルのいるイムドリスの離宮には、亜空間に跳躍する特殊な扉でなければ入ることはできない。
それは、この水晶宮の奥の一角にあり、こちらから向かうには、カサンドラか太守である夫の許可なしに入ることはできないことになっている。
パリスが満足気に鼻で笑うと、布越しに乳首をもてあそびつつ、亀裂の上の最も敏感なつぼみを転がす。
「はああっ」
カサンドラは机の上の全身を弓なりにして悶えた。
それでも、パリスに命じられている手はしっかりと反対側の机の端を握っている。
「カサンドラ様──?」
さすがに大きな声がした。
カサンドラは必死に頭を働かせる。
「い、行きなさい──。この指示は最優先よ」
カサンドラは怒鳴った。
すると、やっと扉の向こうの部下が去るのがわかった。
「よくやったぜ、ばばあ──。じゃあ続きだ」
扉の向こうから人の気配がなくなると、パリスが再びアナルに挿入されている男根を律動させだした。
激痛が走るが、それも快感にしか繋がらない。
カサンドラは、悦びの声をあげてしまった。
「あ、ああっ、あああっ」
懸命に口を閉じる。
しかし、声が出てしまう、
「ほら、雌犬にご褒美だ」
どっとおびただしい白濁の迸りが尻の奥に注ぎ込まれたのがわかった。
凄まじい衝撃が全身を包み、カサンドラは気をやっていた。
一瞬にして、快感の槍が全身を貫く。
「んぐうううう」
必死に口をつぐむがそれでも嬌声を我慢できなかった。
またもや、今度は侍女が扉越しに声をかけてきた。
「な、なんでもない──。入らないで──」
それだけ怒鳴るのが限界だった。
カサンドラはがくがくと身体を震わせながら、絶頂の頂点に身を委ねる。
「部下には適当な言い訳でも考えときな。それ、女王のところに案内する前に、これを入れといてやろう。帰りに回収してやるぜ」
パリスがカサンドラの尻穴から巨根を引っこ抜いた。
身体が崩れ落ちそうになるが、「命令」によって姿勢を強要されていることで、それが免れた。
しかし、これ見よがしに顔の前に差し出された“もの”を見て、カサンドラは絶句した。
パリスの手に載せられていたのは、うねうねとうごめく手のひら大の触手生物だった。
粘性物を表面から噴き出しながら、親指ほどの太さで勃起した男根の長さ程のの触手が十本ほど気色悪く動いている。
「ひいっ、いやあ、そんなことしなくても命令には従います」
カサンドラは必死に訴えた。
もちろん、ささやくような声だ。
部屋の外には部下たちがいるのだ。
「うるせえんだよ、ばああ──。淫乱なエルフ族の痴女には、これがお似合いだ。いいから、俺が許可するまで、この生き物と遊んでな。周りに気づかれるなよ。まあ、俺としちゃあ、どうでもいいけどな」
パリスがその触手生物をカサンドラの尻側に持っていく。
姿勢を崩せないカサンドラには、なにもできない。
悲鳴をあげることもできず、次の瞬間には、さっきまでパリスの怒張が挿入されていた尻の穴に、触手生物が入り込んできた。
「ああ、ゆ、許してください──、ああっ」
カサンドラは背中を弓なりにして、腰を震わせた。
「姿勢を崩していい。命令を解く」
パリスが笑って言った。
今度こそ、カサンドラは床に崩れ落ちた。
だが、お尻の中の触手がうねうねと激しく動き、激しい疼きをカサンドラに呼び起こしてくる。
「うううっ」
本能的にお尻に手をやり、触手を引き出そうとした。
しかし、すでに奥に入り込んでいて、外からでは届かない。
もしかしたら、指を挿入すれば届くかもしれないが、吸盤のようなもので尻の粘膜に密着しているのを感じる。
しかも、中で動きまくるので、妖しい刺激にカサンドラは力が入っていかない。
「ここで、尻穴自慰をおっぱじめるのか? それもいいが、すぐに扉を開けるぜ。その姿を見られたくなければ、スカートをはきな」
パリスが床に落ちていたカサンドラのスカートを蹴り寄越した。
すでに、パリスの身支度は整えられていた。
カサンドラは、慌ててスカートに手を伸ばして身に着ける。
下着はどこにもない。
それどころでもないし、カサンドラはただただスカートをはいて立ちあがることだけを考えた。
パリスが部屋の外に出る扉を開いたのは、カサンドラがやっとのこと立ちあがるのと同時だった。
「ありがとうございます、太守夫人──。特別な便宜に感謝します。栄光あるエルフ族に、これからもご繁栄が続きますように」
パリスが芝居がかった口調とともに身体を折って、カサンドラに向かってお辞儀をする。
また、この部屋にやってくるときから持っていた大きな箱状の鞄を片手で抱えている。
それなりに重そうなのだが、魔道で浮かべているのだろう。
パリスは軽々と持っている。
一方で、扉の向こうにある従者たちの待機場所からは、不安そうにこちらを見ている従者や侍女の姿がカサンドラに映った。
何気ない仕草で髪を手櫛で整える。
おそらく、顔は紅潮しているし、汗だって拭いていない。
息だって、いまも整えるのに必死だ。
すぐに扉を開いたパリスをカサンドラは恨めしく見た。
「パ、パリス殿とイムドリス宮に向かう。せ、説明はわたしが直接する。も、問題ない」
カサンドラはきっぱりと言った。
だが、明らかに声が上ずってしまった。
なにしろ、お尻に挿入された触手生物は、いまでもカサンドラのお尻の中で淫靡な蠕動運動を繰り返し、激しい官能の疼きをカサンドラの全身に送り込んでくるのだ。
立っているのだけで必死だ。
「では、よろしくお願いします、太守夫人」
パリスが道を開くように、扉の前から避ける。
カサンドラは歩き出した。
横を過ぎるときに、部下たちが何かを言いたそうにするが、カサンドラはそれを手で制する。
そのまま廊下に出る。
再びふたりきりになる。
水晶宮のかなりの奥の場所になるので、ここに入れる者はエルフ族でも限られるのだ。だから、人は少ない。
警備もここにまでは及んでいない。
エルフ兵の衛兵が守備しているのは、もっと水晶宮の外縁側になる。
「あ、ああ、こ、これは……」
しかし、カサンドラはしばらくもすすまないうちに立ち竦んでしまった。
動くと触手が激しく尻穴で動くのだ。
それで、動けなくなってしまった。
「さっさと歩けよ、ばああ」
だが、パリスに腕を掴まれて強引に歩かされる。
足を踏み出すごとに大きくなる刺激に、カサンドラは小さな悲鳴を噴きこぼした。
とにかく歩く。
太腿を擦り合わせることも、しゃがむこともできない。
おぞましい感覚がずきんずきんとお尻の中から背筋に走り抜ける。
「気持ちいいからって、そんなに顔に出すんじゃねえよ。女王の前でそんな欲情した顔を晒すつもりか?」
パリスがからかうように言った。
何度もとまりそうになるカサンドラをパリスは腕をとって歩かせ続ける。
そして、ふと思った。
なぜ、パリスは、イムドリスの亜空間宮に向かう「扉の部屋」に向かう方向を知っているのだろう。
初めて向かうはずなのに、パリスはまるで知っている経路であるかのように、どんどんと進んでいく。
しばらく進むと、やっと扉の部屋の前に到達した。
部屋の前には、さっき指示をした従者がひとりだけで立っていた。
「こ、ここはもういい。帰りはわたしが責任を持つ」
カサンドラは男を追い払った。
扉にある一部だけ色の異なる一画に手を置く。
すると、扉が消滅して部屋が向こう側に現われる。
そこには何もない。
ただ、跳躍するには魔道を念じるだけだ。
カサンドラとパリスが部屋の中央まで進むと、廊下に通じる扉が消滅する。こちらからは扉は見えない。
これもカサンドラが魔道をかけない限り、外に通じる扉が出現することはない。
「じょ、女王の前では……どうか慎みを……。へ、兵の出動許可のことは、わたしがは、話しますから……」
カサンドラは小声で言った。
おそらく、人間族をイムドリス宮側に連れていくなど前代未聞だろう。
しかし、パリスに逆らえないカサンドラは、ついに、ここまでパリスを連れてきてしまった。
激しく悔悟する気持ちはいまもあるのだが、尻穴に詰め込まれた触手のもたらす快感に、カサンドラはまともに頭を働かすこともできないでいる。
こんなことをする危険なパリスをガドニエルの前まで連れていくなど、ガドニエルへの裏切りに等しいが、いまのカサンドラには、もうパリスに逆らうことができない。
すると、パリスが手にしていた鞄を床に置いて、くすくすと笑った。
「ど、どうかしましたか?」
カサンドラは不振の視線をパリスに向ける。
「いや、ちょっとおふざけが過ぎたかと思ってな。実をいうと、本当はお前の案内など必要ねえのさ。久しぶりなんで、ばばあと遊んでやっただけだ。役得だったろ?」
パリスが突然に大笑いした。
カサンドラは呆気にとられた。
パリスがなにが可笑しくて笑っているかが理解できないのだ。
「ど、どういう……?」
「つまりは、エルフ女王様には、すでに話がついていたのよ。そのままイムドリスにひとりで向かってもよかったが、まあ、筋を通した方がいいと思ってな。エルフ女王が突然に命じたくらいじゃあ、軍の指揮権はもらえねえだろう? だが、一応は太守夫人も話が通じているということになれば、わけがわからなくても、エルフどもも仕方なく、俺の指示に従うだろうしな」
パリスは言った。
カサンドラはますます首を傾げた。
まったくパリスの言っていることが理解できない。
だが、パリスがどこからか取りだした指輪を手にはめたときに、カサンドラは驚愕した。
それは、ガドニエルからしか与えることができない特別な指輪であり、イムドリス宮への出入りを可能とする「
この扉の部屋からイムドリス宮に出入りできるのは、向こう側にいる女王親衛隊と女王直属の侍女団、そして、水晶宮側の太守夫婦のみなのだが、パリスが持っている指輪があれば、ほかの者でも出入りできるのだ。
この指輪に強力な魔道を注げば、その人物もここからイムドリスに向かうことができる。
だが、なぜ、パリスがそれを持っている……?
これが意味するのは、なんらかの手段で、パリスにガドニエルが直接に、指輪を渡したということになる。
この鍵指輪には、誰かに譲渡もできないように、女王の魔道がかかっているはずだからだ。
疑念を抱いたが、部屋が真っ白い光に包まれた。
パリスが指輪に魔力を注いだのだとわかった。
次の瞬間、カサンドラとパリスは、イムドリス側の「扉の部屋」に跳躍していた。
また、驚いたことに、そこにはガドニエル女王が六人の侍女とともに立っていて、カサンドラたちを出迎える態勢をとっていたのだ。
エルフ族女王が自ら、訪問者を出迎えるなど、そんな儀礼は聞いたこともない。
「パリス殿、よく来た。歓迎しよう。カサンドラも案内ご苦労であった。だが、もう戻ってよい。話は直接にパリス殿に訊く。お前は向こうで、わたしの指示を待て」
ガドニエルが毅然と言った。
カサンドラは唖然とした。
「ど、どういう……こと、でしょうか?」
カサンドラはやっとのこと言った。
ガドニエルとパリスは知り合いなのか?
しかも、いまの口ぶりではパリスと面識があった気配だ。
さらに、わからないのは、カサンドラが案内するまでもなく、パリスの訪問をガドニエルが知っていて、出迎えさえしていることだ。
これはどう考えればいいのだろう?
「カサンドラ、戻っていいぜ。あとは任せな。もう、わかったと思うが、実のところ、ここに来るのは、俺は初めてじゃねえ。だが、今回はお前が正規に案内したという実績が欲しかっただけだ。帰りに寄る。それまで尻のもので遊んでな」
パリスがいつもの下品な口調で言った。
ぎょっとした。
カサンドラとパリスの秘密の関係は、絶対に誰にも知られてはならないことなのだ。
ところが、たったいま、パリスはカサンドラのことを呼び捨てにし、明確に言わなかったとはいえ、カサンドラに対する淫靡な悪戯の真っ最中であることを仄めかした。
自分の顔色が変わるのがわかった。
いまばかりは、尻に挿入されている触手生物のことも一瞬だけだが忘れた。
「カサンドラ、言う通りにせよ。お前ひとりで戻れ──」
ガドニエルが煩わしそうに手を振る。
カサンドラはわけがわからなかったが、女王の有無を言わせぬ態度に圧倒され、パリスを置いて戻ることにした。
魔道を込める。
自分の身体だけが、水晶宮側に帰るのを感じた。
*
カサンドラが消えると、目の前のガドニエルをはじめ、六人の侍女たちの態度が一変する。
女の所作から、だらしのない男の仕草になる。
パリスはにっこりと微笑んだ。
「ダルカン、女王の姿がどうに入っているじゃねえか。絶世の美女だぜ。まさか、エルフ族の中年男が化けているなんて、誰にもわかりゃしねえ」
パリスは声をあげた。
大きく手を拡げる。
誰も信用なんてしないし、すべての者はパリスの道具だ。
使い勝手が良ければ生かしておくし、そうでなければ処分する。
だが、こいつだけは別だ。
パリスが唯一、信用をしている男──。
ダルカン──。
「そうか。嬉しいぜ、パリス。なんでも言って欲しい。ガドニエルの名でどんなことでも命令をしてやる。お前が俺に与えてくれた恩はこんなものじゃ返せないのだ」
パリスが以前に与えた変身具でエルフ女王ガドニエルに化けているダルカンが、その姿のままがっしりとパリスに抱きついてきた。
パリスもしっかりと抱き返す。
その向こうで、やはり、エルフ女王の侍女に変身をしているパリスの部下たちが恭しそうに頭をさげるのがちらりと見えた。
「ところで、ダルカン、いや、ガドニエル女王、頼まれていた土産だ」
パリスは足元にある大きな鞄を乱暴にダルカンに蹴りやった。