【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
ダルカンは、パリスが蹴り寄越した四角い鞄を開いた。
かなりの大きさだ。
パリスは、約束を守ってダルカンの欲しいものをアスカ城から運んできてくれたのだろう。
果たして、中身はダルカンが恋焦がれていたものに間違いなかった。
随分と変わり果ててはいるが……。
「嬉しいよ、パリス」
むっとするほどの体臭とともに、鞄の中身が現われる。
中にいたのは、ガドニエルの部下のひとりであり、このイムドリス宮から外に出ることのない女王ガドニエルに代わり、耳目となって情報を集める役割のアルオウィンに間違いなかった。
エルフ族らしく、かなりの美貌であるし、武術で鍛えた美しい身体つきだ。
だが、手足はない。
四肢は付け根から切断されていて、胴体と首だけになっている。
無論、一片の布も身につけてはいない。
素裸だ。
また、体毛がなくなっている股間には、緑色の触手生物が下着のように貼りつき、それがうようよと
どうやら、アルオウィンの膣をむさぼっているようだった。
すると、外気を感じたせいか、汗と涙と鼻水でぐしょぐしょになったアルオウィンの顔が虚ろなものから、はっきりとした意識が蘇ったものに変化した。
「……は……はか……へかっ……」
ガドニエルの姿であるダルカンを認めたのだろう。
必死の表情になったアルオウィンがなにかを訴えるように声を出す。
しかし、それはか細く、そして、ただ息が洩れたような音が鳴ったにすぎない。
なにかの「処置」をされているのは明白だ。
そして、気がついた。
アルオウィンの口には舌がなかった。
いや、あるにはあるのだが、ずっと付け根のところで切断されている。
「声は出せねえぜ、ダルカン。潜入したこいつをアスカ城で捕らえたとき、舌を噛み切りやがったからな。そのまま舌のない女に変えてやったんだ。ついでだから、声帯も取り去って、悲鳴さえも出せないようにしてやったというわけだ。お前が望むなら、舌くらいは術で戻すか?」
「いや、いいぜ、パリス。このまま受け取るよ。俺も煩いのは好きじゃない。それに、舌がなくても口で奉仕はできるだろう。なんの問題もない」
「だったら、歯も抜くか? 性奉仕をするか、手足を切断するかを選ばせたら、手足を切ってくれと言いやがったんだ。それでその姿だ。口の中に珍棒なんて突っ込んだら喜んで噛み切りやがるぞ。魔獣の苗床にしてたんで、性奴隷の躾はしてねえ。まあ、隷属の首輪を嵌めているから、それで命じれば、するはずだけどな。しかし、やり方を知っているとも思えねえがな」
パリスがげらげらと笑った。
魔獣の苗床というのは、エルフ族の敵を捕らえたとき、パリスがよくやる処置であり、人族を犯せるように改造した知性のない魔獣に犯させ、妊娠させて卵や胎児を産ませるという仕置きだ。
捕らえたのが男であっても、魔改造して無理矢理に犯させる。
大抵は、醜い獣の精液を何度も何度もぶちこまれ、繰り返し孕んでは出産をしているうちに、完全に狂ってしまう。
そうなれば、魔道でも回復しないが、どうやら、アルオウィンはいまだに知性を保っているようだ。
これには、ほっとした。
一方でアルオゥインの目が大きく開かれた。
その顔には戸惑いと恐怖が浮かびあがりかけている。
どうやら、やっと目の前のガドニエルが本物ではないことを悟ったみたいだ。
そして、アルオウィンの顔が恐怖に染まった。
「最初に言っておくぞ、アルオウィン。俺はお前が嫌っていたダルカンだ。このパリスに借りている力で、お前の女主人のガドニエル女王の化けている。そして、いまは、このイムドリスの隠し宮を俺が支配している」
ダルカンはアルオウィンの髪を掴んで、鞄の中から引き出して床に転がした。
手足がなく、体液まみれのアルオウィンが胴体を動かして、ダルカンの足に噛みつかんとするように迫った。
ダルカンはそれを避けて、触手が貼りついているアルオウィンの股間を靴のまま軽く踏む。
「は、かはあ──っ」
大きく息が洩れるような悲鳴とともに、アルオウィンの胴体と頭が激しくもがいて仰け反る。
ダルカンは踏みつける足に力を入れることで、アルオウィンが動くのを阻止した。
アルオウィンが苦痛で悶絶している理由はわかっている。
パリスが施した触手生物は、アルオウィンというエルフ女の股間に貼りついて、性感を刺激することで、女から湧き出る愛液を餌として食べているのだが、こうやって外から刺激を与えると、電撃を発して外敵から逃れようとする性質を持つ。
ダルカンの履いている靴は、その電撃を通さないのでどうということもないが、直接に股間に電撃を浴びることになるアルオウィンにとっては、想像を絶する激痛の苦悶に違いない。
アルオウィンは白目を剥きかけている。
ダルカンは足を離した。
四肢を付け根から切断されているアルオウィンががっくりと脱力する。
「パリスの拷問を受け続けて、まだ発狂もせず、意識を保っていたのは嬉しいな。じっくりと調教するよ。ありがとう、パリス」
「お前の想い女だとわかっていれば、魔獣の卵を産ませる前に連れて来たんだけどな。一応の治療はしといたぜ。まあ、突っ込むには問題ねえ。孕む能力があることも、魔獣に犯させて苗床にしたことで証明済みだ。だが本当にこんなのが欲しいのか?」
パリスが床のアルオウィンに向かって、座ったまま手をかざす。
すると、眼に見えて、アルオウィンの身体が紅潮して、鼻穴を膨らませて悶え出した。
ふと見ると、蠢いていた股間の触手が激しく動き出している。
そして、まるで小便でも洩らしたかのように、アルオウィンの股間からどろりとした粘性のある体液がこぼれだしてきた。
「肌の感度は常人の十倍、性器に至っては三十倍、尻の穴もクリトリス並みの性感の場所に改造している。さっきも言ったが、元には戻せるぜ。魔獣に犯されて、よがり狂う身体にするためにやった処置だ。あんまり強情言いやがるからな。まあ、けだもの相手に腰を振るような淫乱にしてやったというわけだ」
パリスが言った。
一方でアルオゥインは、もうパリスの声も聞こえなくなったのか、腰をがくがくと動かしながら胴体を痙攣させている。
早くも達したようだ。
「いや、そのまま貰い受けるよ。一応は調教のネタは準備してある……。パリスには先日話したが、こいつは俺の想い人なんだ。こっぴどく振られたがな」
ダルカンは笑った。
アルオウィンを最初に見たのは、ダルカンがこの隠し里にやって来てしばらくしてからだ。
当時は、パリスに託されていたエルフ族の里への潜入施策に失敗し、額に入れ墨をされて、ナタル森林からの追放刑を受けたばかりの頃だった。
褐色エルフの里という集落の里長として入り、パリスに求めに応じて、ナタル森林でしか作ることのできない「魔法石」を大量に横流していたのだが、旅の人間族に不正を暴かれ、捕らわれた挙げ句に、罪に問われてしまったのだ。
その結果は、エルフ族の中では死罪よりも重いとされている不名誉刑であり、ダルカンは罪人として里を追い出されてしまった。
もともと、エルフ族の掟など遥か昔に捨て去った、はぐれエルフなので、不名誉刑など死罪でなければどうということもないが、パリスに期待されたことをまっとうできなかったのは辛かった。
パリスとは、もう百年以上の昵懇の仲だ。
人間族社会にあるローム皇帝家の闇組織の重鎮としての地位を持ち、独自の闇軍団の長でもあるパリスは、なぜか織の下っ端に近い立場のダルカンに、昔からよくしてくれた。
地位や立場を度外視した親友なのだ。
同じ女を犯したこともある。
姿を自由自在に変えることのできるパリスとは、酒の勢いで「男女の仲」にさえなったこともある。
それくらい仲がいいのだ。
気が合ったと言っていい。
エルフ族でありながら、人間族の作った裏組織に身を寄せているダルカンだったが、大した能力があるわけでなく、ただ古株というだけで、ずっとうだつの上がらない中堅以下の立場でしかないのだが、パリスだけはダルカンを一人前に扱ってくれ続ける。
とにかく、パリスはダルカンにとって、色々な意味で恩人だ。
初めてパリスに会ったのは、もう百年以上前だ。
当時からパリスの能力は群を抜いており、こいつはあっという間にダルカンなど口もきけないような立場にまで昇り詰めるのだろうなと思った。
なんとなく、こちらから声をかけて、酒など酌み交わしたりしたが、人を人とに思わない破天荒さが気に入り、ダルカンはすぐにパリスが好きになった。
そして、なぜかパリスもまた、ダルカンを気に入ってくれたみたいだった。
ダルカンとパリスが気の置けない間柄になるまでに、いくらの時間もかからなかった。
パリスが望むことは、なんでもかなえたいと思いようになるのはすぐのことであり、その通り、ダルカンはエルフ族という種族特性を生かして、パリスの魔道の実験台のようなこともしたりもした。
当時、パリスは、エルフ族の能力を支配する闇魔道の研究のようなことをしていて、それに協力してくれるエルフ族の存在が必要だったりしたのだ。
ダルカンはそれを耳にしたとき、一杯の酒の代償として、いくらでも身体を使っていいと申し出た。
今も昔も傍若無人のパリスが、そのときばかりはびっくりしていたのを懐かしく思い出す。
それをきっかけに、ダルカンとパリスはすっかりと打ち解けた仲になった。
もしかしたら、それには、パリスのなにかの打算のようなものがあったのかもしれないが、どうでもよかった。
ダルカンは、この不思議な魅力を持つパリスが好きになっていたのだ。
エルフ族の社会にいられず、もともと、どこかで朽ち果てるしかなかったようなダルカンだ。
風来の末に、人間族の裏組織に属したのも、ほかにできることなどなかったからだ。
エルフ族のくせに魔道力も低く、ダルカンはいつも馬鹿にされている立場だった。
だから、この竜のような途轍もない能力を持つパリスという得体の知れない男の役に立つというのは、ダルカンにとっては、かなり魅力的なことに感じた。
そして、パリスはやはりすぐに頭角を現した。
あっという間に、その人間族の裏組織の幹部級になり、その頂点になった。
ダルカンたちが属する皇帝家という人間族たちがなにかを企んでいるのは完全には知らないものの、そんなことはどうでもいいのだ。
とにかく、実際には、この組織はパリスのものだ。
いつの間にかそうなっていて、皇帝家という連中はパリスを使って、なにかをしている気になっているが、実は連中を操っているのはパリスなのだ。
パリスこそ、アスカという魔女を支配し、冥王を復活して権力を復活させるというたわ言を人間族の皇帝家に信じさせ、その陰謀の矛先をエルフ族の里であるナタル森林に向けさせた立役者だ。
パリスは自分自身の目的のために、人間族の組織を利用し、事を起こそうとしている。
それがパリスという男だ。
もっとも、ダルカンは、パリスが真実なにを企んでいるのかについても知らない。
だが、パリスが命じるのであれば、どんなことでもする。
失敗して組織から処分されても仕方のなかったダルカンを、ガドニエルのいるイムドリスという隠し宮に潜入させ、そのガドニエルに入れ替わるという重要な任務を与えてくれたのはパリスだ。
本来であれば、ダルカン程度の小者がこんな大きな仕事を与えられることなどあり得ない。
ただただ、ダルカンがパリスのお気に入りだったから、これほどの大役を受け持つことになったというだけのことだ。
そして、今回、ダルカンのところに、アルオウィンを連れてきてくれたのも、パリスからのダルカンへの気配りだ。
パリスはダルカンになんでもしてくれる。
ダルカンは、このイムドリスに潜入してすぐに、ガドニエルの部下のアルオウィンを見初めてしまい、すっかりと気に入っていたのだ。
雑用人であり、しかも、額に追放令の入れ墨のあるダルカンをガドニエルが受け入れたことに、アルオウィンが不満を持ち、事あるごとに追い出せと言っていたが、ダルカンはアルオウィンに対して、すっかりと欲情の対象として心を動かすようになっていた。
だから、本物のガドニエルからアスカ城の調査を命じられたアルオウィンが、パリスに捕らえられて、拷問を受け、見せしめして四肢を切断されて、魔獣の苗床になる罰を受けたと耳にし、そのアルオウィンをもらい受けたいとパリスに申し出た。
パリスは、すぐに連れて来てくれた。
だから、アルオウィンが目の前にいる。
本当にパリスは素晴らしい。
「ねえ、パリス様、ちょっといいですか?」
そのときだった。
不意に話に割り込むように、ひとりの侍女が声をあげた。
女の姿をしているが、ダルカン同様にパリスの手の者であり、いまはガドニエルの侍女のひとりに入れ替わり、ダルカンとともに、このイムドリスを不当に支配する役目をしている。
同じ立場の者が六人いるが、声を出したのは、その中でももっとも魔道力の強い男だ。
もともとは人間族であり、まだ若かったと思う。
「ああ?」
声を掛けられたパリスは、ダルカンに面していたときとは明白に不機嫌になり、顔をその男に向けた。
ダルカンも視線を向けたが、そいつはパリスの不機嫌さに気がつかないのか、媚びを売るように表情を崩している。
「ねえ、ダルカン殿は、その雌を気に入っているでしょう。だから、それに専念させてやればいいんじゃないですか? なにしろ、実はダルカン殿は魔道能力が低すぎて、闇魔道の魔道具を使っても、支配できない者が多いんですよね。だから、イムドリスの支配は完全じゃないんです」
男が言った。
パリスの顔がますます不機嫌になったのがわかった。
「ああ? なにが言いてえんだ?」
「ガドニエル女王に化けて、隠し宮を支配する役目──。ダルカン殿よりも、俺が向いていると言ってるんです。俺にやらせてください。仮の役目だけのこととはいえ、俺たちがダルカンの下につくなど……」
男が日ごろの不満を隠すことなく言った。
すると、パリスの手が突然に白い光に包まれるのがわかった。