※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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418 鬼畜訊問

「く、くそう──。おろして、おろしなさい──」

 

 全身が噴き出す汗を爪先からぼたぼたと床に落としながら、イライジャは絶叫した。

 信じられないような掻痒感だった。

 発狂せずにいられるのは、同じような責めをロウから受けたことがあるからかもしれない。

 しかし、この痒みは言語を絶する。

 まだ幸いなのは、ロウに施してもらった「淫魔の結界」のおかげで、犯されることも、拷問剤とも呼ぶべき得体の知れない媚薬をヴァギナやアヌスに挿入されることは免れたことだ。

 

 それでも、身体の芯からぐつぐつと煮えたぎるような痒みだ。

 とにかく、イライジャは暴れ続けた。

 四肢には最初から感覚などなかったが、それでも必死になって身体を捩らせる。

 少しでも動かないと、それだけで、痒みで気が狂いそうなのだ。

 だが、四肢を拡げて宙に浮かんだままの身体は、びくともしない。

 それが痒みをどんどんと助長する。

 

「ロウとエリカの居場所を言え。お前の望みをかなえてやる」

 

「そ、そんな連中知らないって言っているでしょう。信じてよ、信じてってばあ──」

 

 イライジャは絶叫した。

 股間の前後は、無数の虫がうごめいているようだったし、乳房の先端は灼けただれそうだ。

 息をするたびに、痒みが増長する。

 なによりも、下腹部を圧迫する激しい便意……。

 イライジャは自分が追い詰められているのを感じた。

 

 だが、せめて、朝まで──。

 

 夜のあいだに屈服して白状してしまえば、その瞬間に、ロウたちが宿泊している宿屋に、こいつらは殺到するだろう。

 そう簡単に襲撃に屈することはないと思うが、夜ともなれば、間違いなくロウは残っている女たちと愛し合っていると思う。

 下手をすれば、一網打尽に捕縛される。

 

「いい加減にしたらどうだ? 俺はお前をイライジャと呼んでいるし、もうひとりの小さいのはコゼだろう? お前らがパーティを組んでいる冒険者だということは知っているんだ。せめて、もう少し、ましな嘘を言ったらどうだ?」

 

「し、ら、な、い、の、よ──。人違いよ──。あんたらは、間違って、わたしたちを襲ったのよ──」

 

 力の限り叫んだ。

 声を出していなければ、いまにも狂いそうだった。

 

「じゃあ、これでどうかな? なにかを喋りたくなるかもね」

 

 椅子に座っているジェロフの前の前に、すっと顔の大きさ程の球体が出現した。

 

 魔道──。

 

 そう思ったときには、その球体がイライジャに向かってゆっくりと飛んできた。

 ぎょっとした。

 その球体が空中で開いたままのイライジャの足のあいだを通過して、背後に回ったのだ。

 嫌な予感がする。

 一方で、そのあいだも乳首と股間の掻痒感がイライジャをどんどんと追い詰める。

 

「この訊問は、誇り高きエルフ族には耐えられないと思うぜ……。悪いことは言わないから、受ける前に屈服しな。ロウはどこ?」

 

 ジェロフは、にやにやと笑っている。

 

「なにするつもりよ──?」

 

「ロウはどこ?」

 

 ジェロフの言葉が終わると同時に、お尻にぴしゃりと水球が当たる感覚が襲った。

 

「ひっ」

 

 イライジャは身体を竦ませるとともに、眼を見開いた。

 かなりの水流がお尻の中を逆流して、体内に注入されたのだ。

 ジェロフの魔道で、またもや浣腸液を体内に転送されたのだと悟った。

 

「ちょっと回転してみようか」

 

 ジェロフがぱちんと指を鳴らす。

 また、身体が回り始める兆候が襲ったのだ。

 慌てて、歯を喰いしばるとともに、肛門をぎゅっと締めつけた。

 

「あぐううっ」

 

 すぐに回り始めた。

 イライジャは歯を喰いしばったまま大きく呻く。

 身体がばらばらになっていく感覚と、激しい吐気が襲う。

 それに加えて、今度は便意だ。

 必死で耐えようとするが、もう限界が近いのをイライジャは悟るしかなかった。

 またもや、かなりの時間拘束で滅茶苦茶に回転させられ、やがて、両脚を上にして静止した。

 そのときには、便意はいよいよ津波のようなうねりになって、アナルを襲ってきていた。

 

「お、降ろして……。か、厠に……」

 

 もう我慢できなかった。

 しかも、この体勢のまま、排便をすれば全身に糞便を被ることになる。

 もう、数瞬も耐えられそうにない気がした。

 

「言うんだ。さもないと、このままだ」

 

「……ほ、本当に……し、知ら、ない……」

 

 もう喋ることも億劫になっている。

 ちょっとでも力を緩めれば終わり……。

 しかも、もう二度と力を緩めてはならない……。

 

「そのまま出すつもりか? おい、ちょっと弄ってやれ」

 

 ジェロフが壁に立っている衛兵に声をかけた。

 彼らのうちふたりほどが、無表情のまま近寄ってくる。

 イライジャはぞっとした。

 上下が反転している視界に、彼らが手に持つ刷毛が入ったのだ。

 

「……や、や、やめて……」

 

 目を閉じ、歯が折れるほどにイライジャは奥歯を噛みしめた。

 上下に衛兵が立つのがわかった。

 前後から刷毛が股間とアナルを襲う。

 

「んぐううっ、んんふうううっ」

 

 イライジャは脂汗をまき散らしながら、逆さ吊りの身体を跳ねさせた。

 ただ考えたのは、お尻の穴から絶対に力を緩めてはならないということだ

 でも、ただでさえ、痒みでただれそうなところに、局部を襲う二本の刷毛は、いまのイライジャには耐えること不可能な凶器だ。

 

「んんんんっ、ぐううううっ」

 

 それでもイライジャは必死に我慢した。

 

「そのまま、尻の穴と肉豆を刷毛でくすぐっていろ。それくらいなら、お前らにもできんだろう」

 

 ジェロフが小馬鹿にするような口調で言った。

 あまりもの仕打ちに狂いそうで、すぐにはわからなかったが、その言葉は、イライジャをなぶっているエルフ兵に対しての言葉のようだ。

 驚いたが、その物言いからすれば、ジェロフと衛兵については、本来の指揮官と部下の関係ではないらしい。

 どういう関係だろう。

 

 しかし、考えられたのは、そこまでだ。

 気が狂うような痒みと便意が、イライジャから思考力を奪ってしまった。

 

 本当に、狂う……。

 気が狂いそう……。

 もう、いやだ──。

 イライジャは、いつの間にか、汗とともに、ぼろぼろと涙がこぼれているのがわかった。

 

「出すときには言ってやれよ。そのふたりにかかっちゃうからな」

 

 ジェロフが嘲笑する。

 

「う、ううっ」

 

 残っている気力のすべてを集中して、便意と戦う。

 だが、刷毛のひと撫でひと撫でが、イライジャを追い詰める。

 

「結構頑張んじゃない──。もう、一個いく?」

 

 もう一個──?

 

 自分の耳を疑う言葉だった。

 衛兵がさっと離れた。

 すると、またもやお尻の表面で水球が破裂して、薬剤が体内に転送されて逆流していった。

 

「あ、ああああああっ、もう、もう許して──」

 

 イライジャは大声をあげた。

 すでに便意が襲っているところに、さらに浣腸液を追加されたのだ。

 すでに限界は越えたと思った。

 

 すぐにでも、崩壊がくる……。

 だが、いやだ……。

 こんな卑劣なやり方に自分が屈するなど……。

 

「また回すよ。口を閉じてね。舌を噛むからね……」

 

 ジェロフが言った。

 絶望がイライジャを襲う。

 今度、回されたら、多分、もう我慢できない。

 こうなったら、適当な偽の情報を伝えてやろう。

 少しでも混乱させることができれば、それでいい……。

 

「……い、言う……。言うから、厠に……」

 

 イライジャは言った。

 すると、なぜか、ジェロフが不満げに舌打ちをした。その理由はわからない。

 

「じゃあ、言いなよ。ロウはどこ? ただし、出鱈目を言うと承知しないよ」

 

「そ、その前に……お、おろして……」

 

「駄目だ。自白が先だ……。それと、すでに、コゼは自白しているからね……。もしも、ふたりの言葉が違っていたら、すぐにコゼを殺す」

 

 ジェロフが言った。

 その言葉で、イライジャは言葉を飲み込んだ。

 コゼがすでになんらかの情報を自白してしまっていたら、おそらくイライジャの言葉と一致することはない。

 この連中がコゼをどう扱っているのかわからないが、連中の容赦のない責めを思うと、コゼもまた追い詰められているだろう。

 コゼが、イライジャと同様に、嘘の情報を提供しようとしているとすれば、絶対に、イライジャが喋ろうとしている偽情報と食い違う。

 イライジャが口を閉じた。

 

「あれっ? やっぱり、出鱈目を口にするつもりだった? じゃあ、もう一本追加するよ」

 

 ジェロフが言った。

 イライジャは目を閉じた。

 ぱんと背後で水音が弾ける。

 猛烈な圧迫感が肛門の裏側から襲う。

 またもや、環境液を追加された……。

 

「ぼやぼやすんな、刷毛だよ──」

 

 ジェロフが荒々しく言った。

 すると、慌てたように、エルフ兵たちの刷毛責めが再開する。

 

「ひ、卑怯よおおおっ──。そ、それでも、エルフ族なの──。あ、あんたら──」

 

 イライジャはジェロフの言いなりになって、刷毛責めをするふたりのエルフ兵に叫んだ。

 四回もの環境液の球体を体内に注がれて、イライジャはこれまでと比べ物にならない激烈な便意が襲っている。

 ただ、ジェロフに比べれば、エルフ兵たちは、積極的に拷問をしていない気配がある。

 万が一もの望みをかけて、イライジャはジェロフではなく、衛兵に叫んだ。 

 

「人前で排便なんてすれば、その瞬間に、誇りあるエルフ族とはいえねえな。お前こそ、エルフ族なら我慢してみせな。それとも、獣のような排便したいか?」

 

 言葉を返したのはジェロフだ。

 イライジャはもはや、眼を開けることもできなかったので、エルフ兵たちの表情は見えない。

 便意は荒々しいうねりになって押し寄せている。

 もう限界だ……。

 すぐに終わりが来る……。

 

「球体を追加して、また回ってもらおう」

 

 ジェロフが焦れたように言った。

 刷毛が離れる。

 またもや、環境液が……。

 

「お、おおおっ」

 

 イライジャは泣き声をあげた。

 その瞬間、全身を揉み抜くような勢いで崩壊がはじまった。

 溜まりに溜まった薬液が噴水のようにあがり、それがイライジャの全身を汚していく。

 近くにいた刷毛を持った衛兵が悲鳴をあげて逃げていくのがわかった。

 

「やっぱり、獣だったね。まあいい……。排便が終わったら、今度は辛子入りの浣腸液にしようかな。それとも、痒み液入りの特別製の浣腸液にするか……? お尻の内側まで痒いって、本当に苦しいぜ。どうせ、自白するんだから、さっさと、ロウの居場所くらい喋っちゃえよ。とにかく、まあ、早く糞を終わらせな。そしたら、一応身体を洗ってやる。そして、浣腸の再開だ」

 

 ジェロフが嘲笑するのが聞こえた。

 イライジャは全身の汚水と汚物を浴びながら、号泣しながら逆さ吊りのまま排便を続けた。

 

 

 *

 

 

「……今度、わけのわからないことを言って、こっちをからかったら……殺すぜ……」

 

 拷問師と名乗った小男が苛ついたように言った。

 小男は、人間族だと思う。

 背はコゼと同じくらいで、人族の男としても低く、顔はお世辞にも整っているとはいえない。

 心の醜さが、表に出てしまっているという感じだ。

 部屋には、ほかにも数名の若い男がいるが、彼らはエルフ族である。当然に美男子である。

 エルフ族は衛兵の恰好をしているが、目の前の人間族の小男は、コゼを拷問する前に、自分は拷問師だと名乗った。

 

「は、話す……。話すから……。もうおろして……」

 

 コゼは激痛に耐えながら言った。

 いま、コゼは頂点が上になっている台に座らされている。

 いわゆる、「三角木馬」だ。

 無論、服は剥がされていて素っ裸だ。

 両肩には、天井から二本の鎖で、肩から落ちないようになっている丸太棒を抱えさせられていた。しかも、首輪についた金具で丸太棒が離れないようになっていて、さらに、両手を拡げた状態にさせられて、丸太棒に手のひらを大きな釘で打ちつけられている。

 首と手のひらを引き千切らない限り、コゼの肩から丸太棒は落ちていかない。

 そのため、怖ろしいほどの重みが股間に伝わり、コゼの股間はあり得ないほどに、三角木馬の頂点に喰い込んでいる。

 どこかが裂けたようであり、股間からは、たらたらと木馬の表面に血を流していた。

 そして、木馬を跨がされている足にも、赤ん坊の頭ほどの鉄の球体をぶらさげられている。

 球体に繋がった鎖を足に接続しているのは、足の甲から裏にかけて貫通している金具だ。そこに鉄の球体がぶらさげられているのだ。

 この状態で、数ノスは過ぎている。

 金具や釘を打たれている手足からの出血も酷かったが、いまはほとんどとまっている。

 ただし、気の遠くなるような激痛は続いている。

 

「先に話せ。何度、言やあ、わかんだよ──」

 

 小男が苛立った口調で声をあげた。

 コゼは、朦朧とする頭を必死に覚醒させつつ、息も絶え絶えに小さく頷いた。

 

「……はあ、はあ、はあ……ご、ご主人様の居場所は……」

 

 コゼは激痛に耐えながら、下層地区にある宿屋の名前を言った。

 無論、偽情報だ。

 

 「塔」の中で、いきなり襲撃を受け、対応しようとしたところで、両脇から腹を刺された。

 コゼの記憶はそれで中断されている。

 意識を失ったのだ。

 そして、気がつくと、この部屋に素っ裸で監禁されていた。

 どうやら、コゼが刺された刃物は特殊な魔道具であり、刺した相手を一時的に失神させるとともに、意識が回復しても、しばらくは手足を麻痺状態にする効果があるらしい。

 だから、この部屋で覚醒したときには、動くことができなかった。

 そのため、抵抗することもできずに、鎖で両手首を拘束されて天井から宙吊りにされた。

 そして、ロウの居場所を吐けと鞭打ちを受けたのだ。

 

 コゼは適当なところで、屈服したふりをして、この連中に偽情報を掴ませた。

 それを本物の情報と信じて、エルフ兵による襲撃をすれば、勘のいいロウだったら、周囲で騒動が起きていることを察するくらいの距離にある、まったく別の宿屋だ。

 そんな場所である。

 

 果たして、小男が喜んで、すぐに動いた気配だ。

 吊られたままのコゼを見張りだけ置いて、小男もいなくなった。

 おそらく、コゼの情報に従って、兵でも動かしたのかもしれない。

 一ノスほどして、戻ってきた小男は激怒していた。

 そして、いまの状態にされた。

 

「ち、畜生──。さっきの場所と違うじゃねえかよ──。やっぱり出鱈目をぬかしやがったな」

 

 さっきの場所……?

 

 ああ、すでに、別の偽情報を口にしてしまっていたのか……。

 どうにも、頭が朦朧として、うまく思考できない。

 食い違う情報を喋ったようだ。

 三回目までは、ちょろく信じてしまって、無暗に動いた気配だったけどね……。

 コゼは内心で笑ってやった。

 

「気を失うなんて許さねえぜ、おい──」

 

 小男が声をかけた。若いエルフ兵が小男に向かって動く。

 部屋の中にいるのは、小男のほかにエルフの若い男兵が三人だ。

 しかし、このような拷問に慣れていないのか、さっきから顔を蒼くしていて、能面のように顔から表情を消している。

 ここがどこかわからないのだが、窓のないところをみると、どこかの地下室なのかもしれない。

 ただ、この部屋の目的は明白だ。

 「拷問室」だ。

 

 こんなところが準備してあるのだから、この連中が本物の衛兵である可能性は高い。

 塔の中の襲撃も、かなりの連携であり、しっかりと訓練をされている動きのように感じた。

 エランド・シティのエルフ兵だ名乗っているが、もしかしたら、それは事実かもしれない。

 もっとも、彼らの狙いが、ロウとエリカだということは、馬鹿のひとつ覚えのような訊問で承知しているので、ロウたちが以前から恐れていたアスカの関係者だと思う。

 しかし、エランド・シティの衛兵が、アスカとかいう魔女の利益のために動いているというのは、解せない推測ではある。

 

「この棒を刺してやれ。鼻の穴にぐさっとな」

 

 やってきたエルフ兵のひとりに、小男が渡したのは、手のひらほどの長さの細い棒だ。

 コゼは、それを確認したが、もはや、なにも喋る気にならない。

 ただ、その「凶器」を呆然と見るだけだ。

 

「は、はい……。し、しかし……」

 

 棒を渡された兵は、随分と狼狽をする反応をした。

 この手の拷問には慣れてない……?

 

 小男については、自分で名乗るとおりに拷問師なのだろう。しかし、ほかの連中は、付け焼刃だ。

 やっぱり、本物の衛兵か……?

 それに、拷問師と称する男が加わっている?

 

「ちっ、使えねえなあ。色呆け女太守も使えねえけど、その部下も役立たずかよ」

 

 小男が悪態をついて、目の前の衛兵から棒を取り返した。

 その瞬間、おどおどしていた若い衛兵がむっとした表情になる。

 自分自身が役立たずと言われたことより、女太守への罵倒に反応した感じだ。

 

 だが、女太守……?

 

 エランド・シティの太守は、男だとイライジャが言っていた気がする……?

 あるいは、太守夫人のこと……?

 

 小男がつかつかとやってきた。

 

「顔をあげろ」

 

「んぐうっ」

 

 首に丸太棒が乗っている状態のコゼは、髪の毛を引っ張られて、強引に上を向かされる。

 うつ伏せに潰れかけていた身体を強引に仰向けに近い体勢にさせられ、丸太棒の繋がった首輪が思い切り丸太に引っ張られて、息がとまった。

 

「ほれ」

 

 片側の鼻の穴に棒が勢いよく突き刺された。

 

「ふげえええ」

 

 コゼは絶叫した。

 まとまった血が棒の刺さった鼻の穴から噴き出す。

 小男が、コゼの姿勢を元の態勢にした。

 木馬に対して、丸太棒に押し潰されるような前のめりの姿勢である。

 

「俺を舐めんじゃねえ。お前にはうんざりだ」

 

 小男が戻っていった。

 血の塊とともに、鼻から棒が抜ける。

 ただ、血はとまらずに、鼻から噴き出し続ける。

 

「もう一度、訊くぜ──。ロウとエリカはどこだ?」

 

「い、いう……。も、もう……ゆる……じで……」

 

 コゼは息も絶え絶えに言った。

 

「うるせい──。今度、でまかせだったら、いい加減に殺すぞ──。もうひとりの褐色エルフをな──。別の部屋じゃあ、そいつの拷問が続いている。情報が食い違っていたら、向こうを殺すぞ──」

 

 小男が絶叫した。

 コゼは心の中で悪態をついた。

 殺すなら殺せばいい……。

 囚われた時点で殺されるのは覚悟しているし、ロウを売るくらいなら死んだ方がましだ。

 それは、イライジャが目の前で殺されても同じだ。

 コゼの中には、守るべき優先順位の一番にロウがいて、二番目以下には誰もいない。それはコゼ自身も含めてだ。

 

「……だったら……殺すのね……。ほ、ほんとのこと……言うと……。あたし、首輪はないけど……奴隷なの……。嘘しか言えない……“命令”を……与えられていてね……。いくら、痛めつけても……本当の情報は……口に出せないわ」

 

 コゼはもう面倒くさくなって、無理矢理に笑顔を作って、小男に吐き捨ててやった。

 

「嘘をつけ──。それも嘘だろ──」

 

 小男が激怒して、なにか硬いものを投げつけられた。

 

「んぎいっ」

 

 なにをぶつけられたかわからなかったが、額に衝撃が走り、水のようなものが顔に流れ始めた。

 それが血だとわかったのは、自分の胸から下が真っ赤に染まったからだ。

 

「しまった。頭を割っちまったか……。そのままにしてると、気絶させちまうな……。仕方ねえ。ちょっと休憩だ。そのあいだに治療をしておけ。ただし、台からは下ろすな」

 

 小男は椅子を蹴り飛ばすと、部屋から不機嫌そうに出ていった。

 残ったエルフ兵たちが駆け寄って、コゼに治療術の魔道をかけ始めた。

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