※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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421 夜の大捜査線

 夜のエランド・シティの下層地区──。

 

 エルフの結界で隠蔽されている上層地区は、たとえ夜でもどこまでも照らすような光で溢れているという噂だが、一郎たちが宿泊していた下層地区は、夜更けを過ぎれば、盛り場の照明も消え、完全な暗闇に包まれる……。

 

 ……はずだった。

 

 しかし、いま、夜だというのに、突然に出現した無数の照明の球体によって、下層地区全体が煌々と光が拡がっている。

 また、その下層地区に、大勢のエルフ兵の集団があちこちから現われて、十名ひと組ほどの組を作り、一郎たちが隠れている場所の近くを次々に通り過ぎていく。

 その動きを観察する限り、何者かを探そうとしている捜索隊だ。

 

 しかも、その人数は尋常ではない。

 城郭全体から感じる喧噪から類推すれば、捜索隊の総人数は、百や二百じゃきかない気がする。

 それだけじゃなく、夜の上空を低い高度で動き回る黒い怪鳥のようなものも、ところどころを飛んでいる。

 エリカ曰く、あれは、エルフ軍が特別なときに使用する巡邏(じゅんら)用の無人監視艇ということだ。

 

 地上を走り回る大勢のエルフ兵──。

 そして、低空飛行で飛び回る巡邏の監視艇──。

 眠っていた住民たちも、何事かと顔を出す者も出てきており、下層地区は、いまや、大騒動となっていた。

 

 なにが起きているのか、想像できることはあるが、確かなのは、彼らが捕らえたい何者かが、エランド・シティの下層地区にいることがわかり、急遽、大捜索隊が派遣されたということだろう。

 もうすぐ、夜も明けるけるような時間だ。

 だが、彼らは、捜索の開始を朝まで待つこともできなかったのだ。

 それほどの、大捕り物ということだ……。

 

 とにかく、一郎たちの宿泊していた宿屋の集まる地域に、大捜索隊が上層地区から一斉に出現したとき、一郎とエリカは宿屋を逃げ出した。

 もしも、一郎とエリカを彼らが捜しているとすれば、間一髪だった。

 一郎たちが宿屋を飛び出してから、いくらも経たないうちに、捜索隊は一郎たちが宿泊していた宿屋までやってきたのだから……。

 

 いずれにしても、いきなりだった。

 

 最初は、一郎が女たちと愛し合った部屋からでも見える近所の宿屋を、上層地区から雪崩れ込んできたエルフ兵の一隊が突然に包囲したのが始まりだった。

 何事だろうと、窓からその宿屋を観察した。

 ユイナに関する情報を集めにいったイライジャとコゼが行方不明になっていることもあり、あの喧噪がもしや、彼女たちに関係しているのではないだろうかとも思ったのだ。

 

 しかし、少し離れた宿屋を包囲してから、捜索隊らしき要員を入れたエルフ兵は、なかなか、そこを離れていかない。

 つまりは、彼らの目的とするものが、そこから発見されていないということを示していると思った。

 探し物がなんであれ、目的のものが見つかったならば、宿屋の包囲などすぐに解かれるはずだ。

 それにもかかわらず、包囲はいつまでも続いている。

 だから、なかなか見つからないのだということだ。 

 

 そんなことを考えていると、別のエルフ兵の集団が出現して、今度は、すでに包囲されている宿屋とは、別の宿屋を同じように包囲して、同じように捜索隊を宿屋の中に入れ込んだ。

 それを見て、一郎は、背中に冷たいものがさっと流れた。

 

 彼らが捜しているのが、「人」であるのか、「物」であるのかは判断することはできないが、なんとなく、雰囲気から彼らの捜索の対象は「人」であり、しかも、宿屋地区に泊まっている人物のような気がした。

 しかも、まだ発見されていなくて、どんどんと捜索の範囲を拡大していた……。

 

 それとは別に、夜更け前には戻るはずのイライジャとコゼは、いまだに戻ってきていない。

 ふたりに刻んだ淫魔印により、一郎には彼女たちの居場所を薄っすらと感じるはずなのに、どういうわけか、それを感じることができない……。

 情報収集のために、夜更けまでという予定が変更になること自体は珍しいことでもないし、不自然でもなかったが、一郎の淫魔術で彼女たちの居場所を感じることができないというのは、ちょっと気になった。

 もっとも、このエランド・シティは、あちこちに、結界によって魔道が通じない場所があるということは教えてもらっている。

 たとえば、上層地区だ。

 上層地区そのものは、巨大な結界の中なので、一郎の能力でも淫魔の刻印により女から波動を感じることは難しい。

 だから、大して気にしていなかったが、あのような大捜査が開始されたことで、猛然とふたりが戻ってこないことは、問題ではないかと思い直した。

 それに、自分で女たちに淫魔術を施しているときに気がついたが、エロいことに関係あるときには、一郎はどんな能力でも発揮できるみたいなのだが、そうでないときにはからきしだ。

 見えない貞操帯を刻んで女たちの性欲を管理するというのは、それそのものがエロなので、一郎の淫魔術は遺憾なく全力で発揮できた。

 それに対して、女の安全を確保するために、居場所を特定するというのは、直接にエロに関係しない。女を守れないと犯せないのだからエロだと自分を言い聞かせながら、淫魔術を施したが、自分でも効き目が弱いのを感じた。

 だから、なんらかの理由により解除されたのかも……。

 

 いずれにしても、行方不明のふたり……。

 突如として出現したエルフ兵の大捜索隊……。

 そのとき、はっとした。

 

 もしかして、イライジャとコゼはエルフ兵に捕らえられたのだろうか……?

 そして、一郎たちの居場所を自白させられ、それで、一郎たちが宿泊している宿屋地域に捜索隊がやってきた……?

 

 ──そう思った。

 

 辻褄は合う。

 

 一番最初に、一郎たちの泊まっている宿屋ではなく、そこから見える別の宿屋に、捜索隊が入ったのは、抜け目のないコゼ辺りが、警告を一郎に伝えるために、偽情報を彼らにつかませたのではないか……。

 

 それからの行動はすぐだ。

 エルフ兵が、いきなり一郎たちを探し始めたということであれば、アスカが関わっているとしか思わなかった。

 アスカの手の者と、エルフ族の女王のガドニエルが、なぜか手を組んでいるというのは、ユイナが連れていかれたときの状況や、トーラスやメイに憑依していた傀儡族のピエールからの情報から判断できる。

 

 一応は、一郎たちがユイナ捜索のために、エランド・シティに向かったことは偽装したものの、その気になれば、ナタルの森を出ることなく、さらに奥地のエランド・シティに近づいていることは、簡単にわかっただろう。

 そうであれば、一郎たちがやって来るのをエランド・シティで網を張って、待ち構えていたということは十分に考えられる……。

 

 だから、いち早く動いた、イライジャとコゼがあっという間に捕らえられてしまった……?

 

 可能性は高い。

 だとすれば、この状況を作ったのは、一郎の油断だ……

 

 しかし、彼らが本当に捜しているのは、一郎とエリカなのだ。

 イライジャとコゼが捕らわれているとすれば、それは、一郎とエリカの犠牲になったということだ……。

 

 そう考えた。 

 だから、ほかの女たちの反対を押し切り、「一郎とエリカのふたりだけ」で、宿屋から脱出することにした。

 いまは、ほかの宿屋から捜索をしているが、もしも、彼らが捜しているのが、一郎とエリカだとし、捜索をした宿屋から発見できなければ、十中八九、彼らは捜査線を拡大して、すべての宿屋をしらみつぶしに捜索する……。

 この宿屋が包囲されてしまってからでは逃亡も難しい。

 

 だったら、万が一、捕らわれる可能性が高くても、連中の狙いになっている一郎とエリカだけで捕らわれた方がいい。

 もしも、このまま宿屋にいて、連中の捜索がここにやってくれば、ほかの女たちも捕縛される。

 それに比べれば、先に一郎とエリカだけが捕らわれれば、それ以上の捜索はしないのだ。

 そう判断して、ほかの女たちの反対を押し切って、「ふたり」で逃亡した。

 それに、そもそも、たくさんの人数で一緒にいては隠れることもできない。

 だから、一郎とエリカだけで宿屋を逃げたのだ。

 

 果たして、一郎たちが宿泊をしていた宿屋に、捜索が伸びたのは一郎たちが夜の下層地域に逃亡して、それほどの時間がすぎてからではなかった。

 それだけではなく、路地裏に隠れた一郎とエリカは、エルフ兵の大捜索隊が次々に出現しては、宿屋だけでなく、通りや辻、ちょっとした酒場などにまで、どんどんと捜索を始めるのを目の当たりにした。

 やはり、彼らが捜しているのは、一郎とエリカのことだとしか、思えなくなった……。

 

 そして、いま、宿屋からそれほども離れることもできず、路地裏に隠れている。

 もっと、遠くに向かおうとしたものの、あっという間に、通りにエルフ兵が溢れてしまい、動けなくなったのだ。

 一郎は、エリカとともに路地の物陰に隠れたまま、すっかりと喉がひりついてしまっている。

 

「……やっぱり、連中が捜しているのは、わたしたちなんですね……?」

 

 一郎とエリカがいるのは、小さな路地に積み重なっていたなにかの木箱の陰であり、地面に並んで座り、肩を寄せ合っている。

 

「俺の勘ではね……。すると、イライジャもコゼも、捕らえられている可能性が高いな……。そして、拷問を受けている……」

 

 一郎は、ささやくように言ったが、その腹は煮えている。

 自分の油断にも……。

 彼女たちが受けているかもしれない苛酷な拷問にも……。

 

 ユイナを受け取るために、褐色エルフの里で、アスカの手のものと接触したとき、一郎たちがユイナに関わろうとしているということが、アスカに伝わる可能性は、横にいるエリカからも指摘されていた。

 しかし、一郎は、それを大して重要視していなかったし、たかが、ユイナというひとりの褐色エルフの少女のことで、アスカとガドニエルが繋がっているとしても、女王ガドニエルがそれほどの反応をするとも思わなかったからだ。

 

 また、アスカのことも、もはや、遠い別の世界の話くらいにしか、思えなくなっていた……。

 もっとも、女王のガドニエルが、いかなる理由かはわからないが、このナタル森林一帯を冥王復活に必要な瘴気で溢れさせようとしているというのは、なんとなく感づいていた。

 大きな陰謀があるようだとも思っていた。

 

 しかし、一郎の目的は、連れていかれたユイナを探すことであるし、大きな陰謀があるとしても、それにかかわるほどの力が、自分にあると思っていなかったので、ユイナについては、自分の能力の範囲内でしか動くつもりはなかった。

 どうしても、手に余るようであれば、ユイナについては、イライジャにも悪いが手を引く……。

 

 そう思って、このエランド・シティでは、とりあえず、情報を集めることを考えていて、その程度であれば、一郎たちの動きなど、絶対に注目などされないと、たかを括ってもいた。

 

 だが、いきなり関わった。

 情報集めのために外に出たイライジャとコゼは捕らわれた可能性が高く、しかも、一郎とエリカは、宿から脱走したものの、どこに行っていいかわからない状態に陥った。

 

「……くそうっ」

 

 一郎は自分の迂闊さに腹がたち、力の限り、拳を足元の地面に叩きつけた。

 

「ロウ様──」

 

 横のエリカが慌てたように、地面に打ちつけた一郎の手を両手で引き寄せる。

   

「……なにやってんですか──。駄目ですよ」

 

 驚いたように、エリカが一郎の手を握りしめた。

 ふと見ると、皮膚が擦り剝けて、薄っすらと拳に血が滲んでいた。

 痛みは感じていないので、まだ、一郎自身がかなりの興奮状態にあるようだ。

 それを自覚することで、ちょっと落ち着いた感じにもなった。

 一郎は、大きく息を吐いた。

 

「大丈夫ですか……?」

 

 横に座っているエリカが一郎を凝視するように見つめてきた。

 

「自分の迂闊さに腹がたってね……」

 

 一郎は正直な気持ちを言った。

 すると、エリカが小さく嘆息した。

 

「落ち着いてください、ロウ様……。大丈夫ですよ……。イライジャとコゼも多分、大丈夫です。あのふたりのことですから……。ちょっとやそっとじゃ……」

 

 エリカがささやくように言った。

 一郎も、そう思いたい。

 小さく頷いた。

 そして、自分を落ち着かせようと数回大きく深呼吸をした。

 

「……だけど、だめだな、俺も……。あいつらを危険に巻き込んでしまった。やっぱり、もっと用心すべきだったんだ。アスカが待ち構えている可能性もあるのに、ここまで来てしまうなんて……」

 

 後悔していた。

 ユイナのことは、イライジャに頼まれていたというのはあるが、正直、命をかけてまで、あいつを助ける義理はないし、ましてや、一郎の女たちを危険に晒してまで助ける義理はない。

 あいつが、アスカだか、その従者らしいパリスという得体の知れない人物の奴隷になろうが、下手をすれば、殺されたとしても、大きなものを賭けてまで、関わるつもりはなかったのに……。

 

 あの連中が、ナタルの森を瘴気で充満させる陰謀を起こしているとしても、それに対して興味もなかったし、彼女たちの陰謀のために、ユイナがこっそりと研究をしていた禁忌の魔道に目をつけられたとしても、それはユイナの自業自得であって、一郎の女たちが危険な目に遭ってまで救出する義理はない……。

 

 それなのに、失敗した……。

 判断ミスだ……。

 一郎は、心の底から悔悟した。

 

 だが、そのとき、ふと、ある事が頭をよぎった。

 パリス……?

 そういえば、褐色エルフの村でメイに憑依していたピエールという傀儡(くぐつ)族の魔族を追い詰めたとき、すべての糸を引いているのは、パリスだと言ったか……?

 

 そして、あのノルズ……。

 一郎が性奴隷として、しっかりと淫魔を刻んだ女たちの中で、唯一、彼女自身の意思で一郎の前から消えた女だ……。

 スクルズたちの幼馴染であり、あのスクルズにも負けず劣らぬ魔道力を保持していた彼女……。

 

 考えてみれば、彼女を淫魔力で強制的に告白させようと最初に追い詰めたとき、アスカなんて小者であり、パリスこそ中心となる人物だということを口にしていたような……。

 

 パリスか……。

 

「どうかしましたか、ロウ様?」

 

 気がつくと、エリカが一郎の顔を覗き込むようにしていた。

 まだ、一郎の手はエリカに包まれたままだ。

 

「……いや、ちょっと考えることがあって……。いずれにしても、予定通りにいくか……。悪いな、エリカ。貧乏くじだ。俺と一緒に耐えてくれ」

 

 一郎は言った。

 そして、亜空間の能力を使って、隠していた長い鎖で結ばれている一対の拘束具を取り出した。鎖はふたりの動きを妨げないほどの十分な長さがあるが、それぞれの両端に金属の枷がついている。

 ひとつは腕輪であり、もおうひとつは首輪だ。

 一郎は腕輪側を自分の左腕に、首輪については、エリカの細い首に装着した。

 

「こんなもので悪いな。淫具でないと十分に強固なものを準備できなくてね」

 

 一郎は苦笑した。

 淫魔師レベルが最高値までいっているくせに、できることはエロ限定だ。我ながら情けない。

 すると、エリカはにっこりと微笑んだ。

 

「望むところです。わたしは、ロウ様の一番奴隷ですから」

 

 エリカが白い歯を見せた。

 いずれにしても、この鎖付きの首輪は、ただの拘束具ではない。

 一郎が特別に淫魔術を刻んだ拘束具であり、さらにミウの魔道で防護の魔道を覆わせていた特別製の首輪だ。

 鎖の両端でエリカの首と一郎の手首を結んでいるが、これを切断できる手段は、剣であろうと、魔道であろうと、事実上、この世には存在しないはずだ。

 それだけでなく、それぞれの枷の周囲に、ミウに結ばせた魔道の結界が包み、手首や首を切断して、ふたりを離すこともできないようにしている。

 なにがあっても、引き離されないようにするための処置である。

 これを解くには、一郎の淫魔師レベルである“100”の能力があり、さらに、ミウの魔道の刻みが複雑に編み込まれている。おそらく、いかなる手段でも外せないと思う。

 つまりは、一郎が解かない限り、他人にはエリカと一郎を離せない……。

 

「……これには鍵はない。俺が外そうと思わない限り、外れることはない。首輪で繋がれるなんて、性奴隷っぽいだろう、エリカ? とにかく、これで俺たちは離れ離れにならない」

 

 一郎はくすくすと笑った。

 亜空間と淫魔術の能力は、一郎の想像により、いかなる道具を作ることも可能とする。

 しかし、それは、性具限定なのだ。

 単純に、両端が腕輪でないのは、それが理由である。

 

「……本当に、エリカを奴隷と思ったことは一度もないよ……。俺の大切な相棒だ……」

 

 一郎は言った。

 すると、エリカが嬉しそうに小さく頷くとともに、ぱっと顔を赤らめた。

 

「じゃあ、そろそろ始めるか……。とりあえず、性奴隷らしく、ここで俺の珍棒でもしゃぶってもらおうかな。人避けの結界を組んでね……」

 

「わかりました……」

 

 エリカは立ちあがると、鎖でじゃらじゃらと音をさせながら、ぶつぶつと呪文のようなものを呟きつつ、ふたりの周りの地面に円を描くように魔道を刻み始めた。

 魔道の腕は、スクルズに劣り、魔道師になりたてのミウにも遥かに及ばないエリカだが、防護と人避けの結界の術だけは、得意中の得意だという。

 そのエリカにより、ふたりの周りに、小さな結界ができていく。

 一郎の目にも、薄っすらとした透明の膜のようなものを感じることができるようになった。

 

「できました。簡単なものですが、これで大抵の侵入者は、目の前にやってきても、わたしたちには気がつきませんし、そもそも、近づいて来れないと思います。知らずに、離れてしまうんです。でも、わたしよりも、能力が高い相手の場合はそうはいきません。逆に、得体の知れない魔道の波があることで、結界の存在を浮きだたせます」

 

 エリカが戻って来た。

 一郎は、すっとエリカがスカートの中に入れた手を握った。

 そのまま、エリカを引き寄せて、自分の股間に顔を誘導する。一郎の前に四つん這いのような恰好になったエリカのスカートは、一郎によって大きくめくられたままである。

 

「こ、このまま……ですか……?」

 

 エリカは、座り込んでいる一郎の股間に頭を埋めるように引き寄せられているので、後ろに向かって、お尻を高く掲げている状態だ。

 そんな恰好で、一郎によってスカートをまくられているのだ。

 誰もいない路地とはいえ、外でそんな恰好をするのは恥ずかしいだろう。

 

「いかにも、破廉恥でばかな恋人同士みたいだろう? 警備兵に追われているのに、結界で隠れて、そんなことをしているんだぜ」

 

 一郎は嘯いた。

 エリカは大して抵抗はしなかった。

 一郎はズボンの前を開いて、すでに股間は勃起している。

 それを目の前に突きつけられたエリカは、一瞬、躊躇ったような素振りを示したが、今日は大人しく口に咥えた。

 

 真面目なエリカだ。

 いつもだったら、一郎の命令とはいえ、野外で平気な顔をして、一郎に奉仕したりしない。

 必ず、抵抗する。

 それを無理矢理にやらせるのが愉しいのだが、今日については、きっちりと因果を含めている。

 こんなことをするのは、わざと連中に捕まるためだ。

 

 一郎の考えたことは、おそらく、エルフ兵に捕らわれたと思われるコゼとイライジャと、なんとか合流することだ。

 ふたりがどこに捕らわれているのか不明だが、とりあえず、見つけるには、一郎とエリカが捕らわれた方が早い。

 

 そもそも、コゼとイライジャを捕らえたのが、一郎とエリカを捕獲するのが目的なのであれば、一郎たちを無事に捕まえれば、かなりの確率ですでにコゼたちがいる場所に連れていくと思う。

 合流さえできれば、あとは逃亡するだけだ。

 そのために、わざわざ、ふたりだけの状況を作ったのである。

 残りの女たちは、合流した後に、一郎たちを脱走させるための「手段」だ。

 かなり危険な賭けではあるが、どこにいるかわからないコゼとイライジャを見つけるには、これくらいしか思いつかなかった。

 一郎の説明に、エリカを含めて、全員が最終的には納得した。

 

 それで、一郎とエリカだけの状況で宿屋を逃げ出したのだ。

 そのまま捕らわれることも考えたが、あっさりと投降してしまえば、脱走の策があることを見抜かれるだろうし、そもそも、本来は捕らわれる必要のないほかの女たちも、一緒に連れていかれる。

 ここで、馬鹿げた行為をするのも、策のひとつだ。

 エリカは、これほどに警戒をしている状況で、結界魔道を遣えば、すぐに逆探知されて、衛兵が殺到するだろうと一郎に説明した。

 従って、結界を張らせた。

 

 すでに、結界は完成しているので、それほどの時間もかけずに、一郎たちのところに、エルフ兵は来るはずだ。

 そのときに、淫靡な性行為もどきをしていれば、完全に油断しているだけで、まさか、わざと捕らえられようとしているとは思わないと思う。

 これも、相手を油断させるための策なのだ。

 

 もっとも、半分は口実だ。

 一郎は、こんな機会であろうとも、「真面目な」エリカを辱めるのが、いつも愉しくて仕方がないのだ。

 

「んんっ」

 

 エリカは、口を開いて喉元まで一気に一郎の一物を咥え込むなり、急に感極まったような声をあげた。

 一郎の怒張の先端が喉の奥に当たったことで、エリカの被虐の火がついたようだ。

 こうなってしまえば、エリカもただのいやらしい雌になる。

 すぐに一心不乱に、一郎の肉棒に舌を這わせだしたエリカは、その美しい顔に欲情の色を示し始めた。

 

 そのときだった。

 

 金属が触れ合う音を鳴らしている集団がこっちに少しずつ近づいてくる気配がした。

 早速、やって来たようだ。

 

「あっ……」

 

 エリカも気がついた。

 すぐに、口を一郎の股間から離そうとする。

 しかし、一郎はすかさず、エリカの頭を押さえつけた。

 

「あんっ」

 

 口の中に一郎の男根を向け直すことになったエリカは、それだけで艶めかしく身体をぶるりと震わせた。

 ただ、咥え直させたわけじゃない。

 しっかりと、口の中の性感帯を強く擦っている。

 すっかりと感じやすい身体に変えられているエリカは、それだけで身体を疼かせてしまったのだ。

 

「ほら」

 

 一郎は、淫魔術を遣って、エリカの股間に刻んでいる貞操帯の刻印をぐっと絞り、クリトリスをいきなり激しく振動してやる。

 それだけでなく、一気に全身を性感帯にして、感度を二十倍にまであげた。

 全身のどこを触れられても、肉芽と性器に激しい刺激が加わるようにもした。

 

「んんっ、んんんっ」

 

 身体を異常な状態にされたことに気がついたエリカが暴れ出した。

 なにしろ、どこを触られても、股間に刺激が伝わるということは、咥えている一郎の性器を舌が舐めても、怖ろしいほどの疼きが股間に走るということなのだ。

 逃げようとするエリカの腕を掴んで、軽く揉むようにする。

 

「んふううううっ」

 

 それだけでエリカは、全身を弓なりにして、達してしまった。

 しかし、そのときには、エルフ兵の一隊が一郎たちの後ろに到着した。

 

「ロウとエリカだな──」

 

 果たしてやって来たのは、エルフ兵の一隊だ。

 全部で十人ほどだろう。

 エリカの結界が張られたことで、たまたま一番近い場所にいた隊がやって来たというところだと思う。

 そのときになって、やっと一郎はエリカを離した。

 

「人違いだよ」

 

 一郎は服を整えながら、声をかけた。

 包囲されているというほどではないが、十人のエルフ兵はすでに剣を抜いていて、後方には魔道をかける準備している者もいる。

 これは逃げられないだろうね……。

 

 一郎は、まだ脱力して腰に力が入らない気配のエリカの腕を掴んで、ゆっくりと立ちあがった。

 

「伏せろ、お前ら──」

 

 しかし、エルフ兵の集団がいる反対の一郎の背中側に、突然に大声が響いた。

 驚いて、振り返った。

 そこには、見知らぬ人間族の老人がいた。

 その老人がいきなり閃光を放った。

 

「うわあっ」

「なんだ──?」

「ひいいっ」

 

 なにが起きたのかわからなかった。

 だが、白い光に包まれたかと思うと、気がついたときには、エルフ兵が全員その場にうずまって呻き声をあげていた。

 

「話は後だ、お前ら──。このエランド・シティで結界術などを遣えば、たちまちに魔道の波の乱れで、隠れ場所が発覚するぞ──。知らなかったのか──?」

 

 老人が怒鳴った。

 もちろん、知っていたが、一郎はとりあえず驚いたふりをする。

 それにしても、いきなり出現したこいつは誰──?

 

「とにかく、来い──。逃げるぞ──。……それにしても、なんだ、その首輪と鎖は……?」

 

 老人が近づいて、一郎たちに手を伸ばす。

 それで、やっと、一郎とエリカが鎖と枷で繋がれていることに気がついたようだ。

 

「あ、あんた、誰よ──?」

 

 やっと、我に返った気配のエリカが言った。

 もう、身体の状態は元に戻している。しかし、いったばかりの身体では、まだ力が入らない気配だ。

 エリカも、赤い顔のまま、慌てたようにスカートを直しているが、まだ服は身だえていて、息も荒い。

 しかし、しっかりと警戒をしている。

 一郎も、この老人には訝しんだ。

 

「話は後だと言っただろう。コゼとイライジャも匿っている──。俺はサタージュ──。ノルズ様の手の者のひとりだ」

 

「ノルズ──?」

 

 意外な言葉に一郎は、思わず声をあげた。

 そして、とりあえず、サタージュと名乗った老人とともに、エリカと一緒に駆けだした。

 いまだに、呻き声とともに倒れているエルフ兵の一隊とは反対方向に……。

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