※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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433 淫魔師の危機

「うぐっ」

 

 ずしりと腹に喰い込んだ金属棒の先端の衝撃に、一郎はぐっと奥歯を噛み合わせた。

 ずっと続いている拷問の最中だ。

 

 監禁されている拷問室である。

 部屋には窓はない。

 おそらく、水晶軍とやらの軍営の地下室だと思う。

 

 連行される途中で、顔に袋を被せられたので、完全にはわからないものの、エルフ軍の軍施設内だと思うこの場所は、水晶宮というらしい行政府にほとんど隣接しているということだけはわかっている。

 営庭のような場所から離れたとき、建物の陰から突然に美しい城のような建物が現れたのだ。

 上層地区にある水晶宮がどんな建物かは聞いてもいなかったが、あれが水晶宮と称されるエルフの都の行政府だということはすぐにわかった。

 建物全体が水晶を思わせる半透明の白い壁で覆われていた。また、建物の形そのものが水晶の宝石を思わせる形状をしていた。

 まさに水晶宮だった。

 だから、ここは水晶宮に連接するエルフ軍、つまり水晶軍の軍営なのだと確信している。

 

 一郎は、連れてこられたこの部屋の真ん中で、両方の親指の根元だけを束ねて締めつけた金属の指枷で、天井から宙吊りにされていた。

 全身を棒で打たれまくる激痛で、身体は完全に脱力している状態だ。

 吊られる指の痛みが激しすぎて、気絶することもできそうにない。

 足先は床から少し離れており、金属棒の両端にある鍵付きの枷で、やはり足首を固定されていて、大きく股を開いた体勢だ。

 完全な素っ裸である。

 

 ただし、首に首輪が嵌まっている。

 隷属の首輪だ。

 人間を奴隷化するときに使うものであり、これを嵌められて隷属の魔道を刻まれると、主人として刻まれた相手に対して、一切の反抗ができず、また、すべての命令に絶対服従する人形になってしまう。

 ただし、隷属化のときには、まず最初に、相手に心から屈服するという状態に陥る必要がある。

 だから、パリスは一郎を執拗に拷問をしているというわけだ。 

 

 そのため、一郎の全身は鞭や棒で打たれた痣や蚯蚓腫れで覆われている。

 傷ついた身体を自動的に癒してくれる「ユグドラの癒し」は、地面から足を離した状態では効果はないし、外気のない拷問部屋では自然の恩恵を受けることができない。

 だから、一郎は傷と痣だらけになりながら、パリスが与える拷問を受け続けていた。

 

 拷問をするのは、パリスとその三人の部下たちだが、エルフ族ではなく、人間族だ。

 相変わらず、一郎の魔眼でもパリスのステータスは読めないが、三人についてはわかる。

 まあ、どうでもいいような小者だ。

 確かに人間族であり、パリスの部下みたいだ。

 しっかりと、パリスに隷属されている。

 そして、“ローム皇帝家の闇兵”という文字が全員にある。

 ただ、それが意味するものはよくわからない。

 

「結構しぶといじゃねえか。女を支配して守らせるだけしかできねえ淫魔師様かと思ったけどな。自白剤のたぐいは効き目がねえし、闇魔道の幻術にもかからねえ。さっさと屈服してくれねえか」

 

 部屋に唯一ある入口に近い壁沿いの椅子に座っているパリスが一郎を嘲笑しながら言った。

 エルフの軍営で捕らえられて、エリカと引き離されてから、ここに連れて来られた。

 あのとき再会したユイナもいない。

 とりあえず、一郎だけがここに放り込まれたのだ。

 そして、訊問という名の拷問が始まったのだ。

 

 また、“淫魔師”というのは、存在も伝承的なほとんど実態も知られていないジョブのはずたが、パリスは確信しているみたいだ。

 まあ、最初にこの世界に出現したときに、アスカからも見抜かれたし、そっちからの情報だとは思う。

 しかしながら、アスカ城では“エルスラ”と名乗っていたエリカのことは、はっきりと“エリカ”と呼んでいた。

 一郎とノルズの関係も承知していることを仄めかしていたし、一郎のことをそれなりに調べていたのだろう。

 

 いずれにしても、その直後に顔に袋を被せられて視界を奪われたし、エリカともユイナとも離れ離れにされてしまった。

 そして、ここに連行されたというわけだ。

 顔の袋を外されたのは、親指だけで全身を宙吊りにするという嫌がらせをされてからだ。

 

 そして、拷問がはじまった。

 だが、奈落の底の縁にぶら下がったときに質問を受けた古文書の在りかについては、まだ訊ねられてはない。

 最初に、無理矢理に一郎を奴隷化し、その後、情報を取り出そうと思っているみたいだ。

 パリスの言葉の端々からは、そもそもパリスは拷問や薬物を通じた情報か、あるいは、隷属化して嘘がつけない状態にしてから口にさせたことしか信用できないらしいというのが垣間知れる。

 だから、まずは、一郎を闇魔道による洗脳をしようとし、最初に魔道をかけたり、薬物で朦朧とさせようとしたのだ。

 だが、淫魔師レベルが“100”に達する一郎を支配できる魔道も薬物もない。

 それらは全く効果がなかった。

 

 パリスは驚いたものの、次には一郎の首に隷属の首輪を嵌めて一郎を弱らせ、心の底からパリスに対する屈服心を発生させることで、隷属を刻むことにしたみたいだ。

 だから、一郎はいま、パリスの部下たちに、よってたかって暴力を受けている最中だというわけだ。

 

「そ、それよりも、俺の女は……どこに……連れていった……?」

 

 一郎は棒打ちの合間を縫って、パリスに向かって呻く。

 こうやって、抵抗もせずに、パリスのするがままにさせているのは、とにかく、一郎の女たちの情報が欲しいからだ。

 コゼとイライジャ、そして、エリカの安全を確かめたい……。

 ユイナはついでだが……。

 とにかく、まずは、それを確認する……。

 それまでは、抵抗はしないと決めている……。

 幸いにも、このパリスという男は余程の自信家らしく、上から目線でなんでも喋る傾向がある。

 会話を続ける限り、この男はぼろを出す……。

 一郎はそう思っている。

 

「お前の女? 黒くて小さい方か? 白くて美人の方か? どっちにしても、しっかりと調教で堕としてやるぜ。俺に惚れこんで、帰りたくねえようにさせてやる。心配いらねえさ」

 

「惚れこんだのはお前の方じゃないのか? エリカは綺麗だろう? だが、残念ながら、お前なんか相手にしないよ。諦めな。筋金入りの男嫌いで少女趣味だ。だが、俺だけにはぞっこんでな」

 

 一郎はわざと挑発的に言った。

 すると、パリスの顔からせせら笑いが消えた。

 顔の色が激怒に染まっている。

 随分と沸点の低い男だと思った。

 壁に掛けてあった乗馬鞭を手に取って近づいてくる。

 一郎の周りにいた拷問者たちが、すっと後ろにさがった。

 

「大きな口をきくんじゃねえよ。大事な道具が役に立たないようにしてやろうか」

 

 パリスが歯ぎしりしながら、乗馬鞭を振りかぶる。

 だが、足首のあいだに棒を挟まれているので、逃げることは不可能だ。

 鞭は、一郎の剥き出しの性器を上から下にものの見事に引っぱたいた。

 それほどの力を入れてはいなかったが、信じられないような激痛が迸る。

 

「んぐうううう」

 

 さすがの一郎も、これには総毛を硬直させて、唸り声を噴きあげるしかなかった。

 

「いい声で鳴くじゃねえか」

 

 パリスが今度は下から上に股間を叩き上げる。

 

「あぎゃあああ、んぎいいいい」

 

 一郎は噛みしめた歯の口から泡を噴いた。

 パリスは、連続で一郎の性器の周りを上から下に、下から上に、そして、右から左からと打ち続ける。

 一郎は下腹部の筋肉を激痛に歪めながら、たまらずに悲鳴を絞り出した。

 

「もう一発だ、色男──。二度と使い物にならねえようにしてやるぜ」

 

 パリスが再び乗馬鞭を下にさげ、睾丸に向かって力一杯に叩き上げた。さっきまでとは比べものにならない全力に近い力だ。

 それが股間に炸裂する。

 

「うがああああ」

 

 口から人間とも思えないような声が出た。

 身体が反り返り、そのまま一郎は完全に脱力してしまった。

 

「偉そうにしたくせに、無様じゃねえか、色男」

 

 気がつくと、パリスが目の前にいた。

 もしかしたら、一瞬気絶したのかもしれない。

 一郎は我に返って、朦朧とする視線をパリスに向ける。

 

「はあ、はあ……。マゾになるのも悪くないかもね……。いつも、女たちにやっていることだしな……。たまには味わうのもいいさ……。はらわたを抉られているようないい気持ちだ……」

 

 意地になって、強引に作った笑顔を向けてやる。

 パリスの顔が再び怒りで真っ赤になる。

 

「……舐めやがって……。おい、これをこいつの根元に嵌めてやれ。こいつは淫魔師というものらしい。よくはわからねえが、女を犯して支配するという特殊能力があるそうだ。ここには女はいねえが、念のためだ」

 

 鞭打ちをやめたパリスが部下のひとりに向かって、金属の輪っかのようなものを放り投げた。

 それが床に当たって金属音を鳴らし、ころころと転がるのが横目で見えた。

 よくはわからなかったが、それを拾った男が、それを持って一郎の股間に手を近づけたので、男性器の根元を締めつける淫具だと悟った。

 

「うあっ、くっ」

 

 その金属の輪が性器に当たると、すっと溶けるように、輪が男根の根元に嵌まってぐいと喰い込んだ。

 それとともに、いきなり性器が勃起した。

 だが、食い込んだ輪はむしろ絞るように小さくなり、あっという間に性器全体が紫色に変色する。

 

「間違っても射精できないようにな……。ところで、色男、淫魔師というだけあって、女にはめっぽう強いんだろうが、男はどうだ?」

 

 パリスが一郎から離れながら、一郎にぞっとするような笑顔を刻んだ。

 そして、背後の男たちに目配せする。

 

「男?」

 

「そうだ、男だ……。おい、こいつの尻に例の薬を塗ってやれ。尻の穴をさんざんに柔らかくして、食べごろにして犯せ」

 

 パリスが男たちに言った。

 すると、三人の男たちが驚いたように声をあげた。

 

「美人揃いのエルフ族の都にやって来て、男の尻ですか? まあ、やりますけどね」

 

「女の可愛がり方はわかりますが、男か……」

 

「仕方ないですねえ」

 

 男たちが口々に言った。そのうちふたりは笑っている。

 一郎もさすがにぞっとした。

 エリカたちの安全を確かめるまでは、我慢しようと思ったが、その決心を変えるべきか本気で迷った。

 

「とにかく、なんでもいいから、こいつを屈服させろ。泣きべそかくまで苛め抜け。俺は、ちょっと白色のエルフ女のところに行く……。とにかく、明日の朝までに、こいつを屈服させて、隷属の刻みを成功させろ。そのためなら、尻でもなんでも犯せ──。こいつの心を砕け」

 

 パリスが言った。

 そして、部屋を出ていく。

 

 はっとした。

 エリカのところか……。

 だが、尻を犯すだと?

 どうしようか迷った。

 しかし、やはりだめだ。

 思い直す。

 

 ここで一郎が反撃しても、エリカがそのまま人質になってしまうのは明白だ。

 一郎だけが逃亡に成功しても、万が一エリカの救出に失敗すれば、このパリスは、たいして躊躇することなく、エリカの命を奪う気がする。

 もうひとり、ユイナがいるのだから、人質はひとりでいいと判断するだろう。

 一郎にとっては、エリカたちに比べれば、ユイナなどどうでもいいと思っているが、パリスはユイナが一郎にとって大切な存在だと思い込んでいるようだ。

 それにしても、あいつ、よくパリスを騙すことに成功したな……。

 それだけは感心する。

 

 とにかく、なんとか、コゼとイライジャが捕らわれていないというのはわかったが、だとしたら、あとはエリカだ。

 あいつの安全を確保さえすれば、どんな反撃をしても問題ない……。

 

 そして、パリスが部屋から出ていく。

 一郎は、三人の男とともに残された。

 

「ちっ、仕方ねえ……」

「やるか……」

「ああ」

 

 ほんの少しの戸惑いのあと、男たちが一郎の周りに集まって動き出した。

 どうやら、進んで男の尻を犯す趣味はないみたいだ。

 それだけは少しほっとする。

 

「ほら、薬だ。すぐに効いてくるぜ」

 

 ひとりが指にまぶした油剤を一郎の尻たぶを割って塗り込めだした。

 

「ん、んん……。ふふ、尻を掘られるのがこんなにくすぐったいとはね」

 

 一郎は冗談めかしく言った。

 だが、内心は腹が煮えかえっている。

 そして、すぐに、尻のむず痒さが襲い掛かってきた。

 また、どうやら、油剤には痒み剤だけじゃなく、筋肉の弛緩剤も含まれていると思う。

 内襞の溶けるような痒みと疼きに加えて、お尻の肉が柔らかくなり、指から妖しい感触を覚えるようになってきた。

 

「ううっ、くうう……」

 

 指が抜けると、すぐに痒みの苦しみが襲い掛かってきた。

 

「いい声で泣きな。尻をいじって欲しくなったら言ってくれ。三人で順番に犯してやるから」

 

 ひとりが言った。

 一郎はだんだんと拡大していく尻の穴の痒みの苦しさに歯を喰いしばった。

 

 そのときだった。

 さっきパリスが出ていった扉で小さな音がした。そして、小さな隙間が開く。

 一郎は訝しんだが、驚いたのは、その直後に、突然に三人の男がその場に崩れたことだ。

 気がつくと、三人とも床に倒れ込んだまま、寝息をかいている。

 一郎は呆気にとられた。

 すると、扉が開く。

 

「あ、あんたか……」

 

 一郎はにやりと笑った。

 部屋に入ってきたのは、営庭で淫魔術を刻んでやったブルイネンだった。

 ガドニエル女王の親衛隊長だとステータスにあった美貌のエルフ軍の女隊長だ。

 頬を染めて、顔を上気させている。

 息も荒い。

 かなり動揺している様子だ。

 

「わ、わたしは……な、なにをしているかわからない……。だ、だけど、あ、あなたを逃がす……。わ、わたしはブルイネン……。ガドニエル女王親衛隊の隊長だ……。だ、だけど、い、いま、この瞬間に、わたしは……わたしの地位も、上級貴族としての称号も捨てる……。あ、あなたを助けたい……。す、すぐに……」

 

 ブルイネンが一郎に駆け寄ってきた。

 そして、足元で倒れている男たちから、一郎の枷を外す鍵を探そうとする。

 

「ま、待ってくれ……。こ、このままでいい……。それよりも頼みがある……」

 

 だが、一郎はそれを留めた。

 

「な、なに? どうしたのだ? 惑っている時間はないぞ。わたしは、営庭で操られて魔道を味方に放ったことで、自室に監禁されている状況だ。それをこっそりと魔道で抜けてきたのだ。しかし、すぐに発覚するだろう。いまこの瞬間にも……」

 

 ブルイネンが必死の口調で言った。

 しかし、一郎は宙吊りのまま、首を横に振る。

 

「枷の鍵は、おそらくパリスが……も、持っている……。ここにはない……。そ、それよりも、いま三人を無力化したのは……睡眠魔道だな……。だったら、お、起きたら……あ、暗示がかかるようにしてくれ……。ま、幻の記憶を刷り込んで……。お、俺のことはそれだけでいい……」

 

 一郎は痒みに耐えながら言った。

 このくらい耐えてみせる。

 一郎は、エリカたちの“ご主人様”だ……。

 これくらいの苦痛など……。

 

「幻の記憶……? い、いや……。それよりも、このままでいいとはなぜだ──? とにかく、逃げないと──」

 

 ブルイネンが焦ったように言った。

 

「こいつらには、俺の尻を犯したという記憶を植えつけてくれ。とりあえず、それだけでいい……。次の尻の危機のときには、まあ……また、方法を考える」

 

 一郎は空元気の笑みを浮かべて、ブルイネンに対してうそぶいてみせた。

 

「尻を犯した記憶?」

 

 ブルイネンが困惑した声を出すとともに、羞恥のためか顔を真っ赤にした。

 

「頼むよ……」

 

 一郎はにやりと微笑んだ。

 すると、ブルイネンが不意に泣きそうな顔になった。

 

「あ、あなたは、ふ、不思議な人だ……。どうしてここにやって来て、なにを知っている? どんな罪を犯したのだ? どうして、カサンドラ様はあなたにこだわる?」

 

「知らないよ。言っていくが、俺たちはなにもしてない。無実の罪だ」

 

「わ、わかった……。信じる。もしも、知っていれば教えてくれないか? わ、わたしはおかしい……。なにか変だ。この数日のことをよく覚えてないのだ。そして、さっき気がついたが、直属の部下が消えている。誰もいない……。一緒に来たはずなのに……。それなのに、わたしはさっきのさっきまで、そのことに気にしていなかった……。わたしだけじゃない。この水晶宮のエルフ族は全員が変だ」

 

「変?」

 

「ああ、おかしいのだ──。誰も信用できない――。だから、わたしは、最初にガドニエル様のところに行こうと思ったのだ。それなのに、イムドリスへの帰還を弾かれてしまった。親衛隊長のわたしが……。なあ、ここで、なにが起きている? 教えてくれ。あなたはなにを知っている――」

 

 ブルイネンが一郎に向かってまくしたてた。

 イムドリス?

 確か、エルフ族の女王のいる隠し宮殿のことだったか?

 

「……こ、このままでいいから、詳しく話せ」

 

 一郎はそれだけを言った。

 

 

 

 

(第71話『捕らわれた淫魔師』終わり、第72話『下層地区のエルフ女囚』に続く)

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