【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
434 洗脳訊問
光が眩しかった。
一瞬だけ、自分が置かれた状況がわからなかったが、すぐにロウとともに、エルフ兵たちに捕らえられたのだということを思い出した。
得体の知れない術で、素裸に服を剥かれた挙句、庭園のような場所に連れ込まれて、兵に囲まれたのだ。
それでも、抵抗はしたものの、最終的には、あのユイナが連行されて、大人しくしなければ、ユイナを殺すと脅されたのだ。
正直、ユイナなどどうでもよかったが、ロウはそれで抵抗を諦めて、連中に投降した。
ロウが決めたのなら、エリカは従うしかない。
武器を捨てて、抵抗を諦めた。
その瞬間に、エルフ兵が殺到して、エリカを拘束して抵抗の手段を奪った。
首に毒の仕込みんだ針を刺されて、身体を弛緩させられ、両手首には魔道封じの腕輪を嵌められた。
その直後、行動の自由を失って、膝から力が抜けて倒れ込んだことは覚えている。
そのとき、同じように捕らえられたロウもまた、エリカの隣で捕らわれた。
そのときのことで覚えているのは、最後にロウが捕まえていたブルイネンの耳元に口を寄せて、なにかをささやいたことだ。
しかし、なにを話しかけたのか、エリカにはわからなかった。
あるいは、大切なことを言ったかもしれないが、エリカにはロウがなにも喋らなかったようにしか感じなかった。
首から注入された毒が急速に回って、意識が消えかけていったからだ。
エリカもロウに問い返そうとしたが、果たせなかった。
ただ、そのときには、ロウはエリカから視線を離して、エリカたちを見下ろす、少年のような人間族の男に顔を向けていた。
そいつは、パリスだった。
パリスは、エリカがアスカ城にいたときには、アスカの従者だと思い込んでいた少年だったが、どうやら、実はもっとほかの役割を持っていたようだ。
いずれにしても、、不思議に思ったのは、ロウがそのパリスに微笑みを向けたことだ。
しかも、ただの笑みではない。
会心の微笑み──。
そんな感じの笑みだった。
しかし、それが最後だ。
次の瞬間、エリカの意識は急速に遠のいていった。
そして、いま、やっと覚醒をした。
見えたのは天井だ。
どうやら、大きな台の上のような場所に仰向けに寝かされているようだ。
とにかく、起きあがろうとした。
だが、できなかった。
ほんの少し身じろぎのようなことをするだけで、吐気がするほどの苦痛が全身を走ったのだ。
手足を拘束されている雰囲気はないのだが、台の四隅に真っ直ぐに伸びているらしい四肢のどの部分を動かしても、胸を潰されるような苦痛を感じる。
「身体を動かそうとしない方がいいぜ。どうせできないし、強引に動かすと、頭の線がずたずたに千切れて、二度と元に戻らなくなる。それくらい、強い薬を使った」
不意に声がした。
びっくりした。
その相手が誰なのかすぐにわかった。
パリスだ──。
エリカは、大きな穴の上にぶら下げられて、全身をくすぐる苦汁を味わわせた、このいやらしい声をよく覚えている。
首が動かないので、懸命に五感を研ぎ澄ます。
どうやら、パリスはエリカが寝かされている台のすぐ横にいるようだ。
ほかにも人の気配はある。この部屋の隅に数名……?
ロウの気配はない……と思う……。
「……ロ、ロウ様……はどこ……?」
エリカは口を開いた。
言葉を放った途端に、凄まじい苦痛が襲いかかってきた。
これほどの苦痛をエリカは感じたことはなかった。
頭や身体の内側から、なにかをぐちゃぐちゃに喰い絞られているような恐怖が襲いかかってくる。
これだけで狂いそうになる苦痛を、エリカはなんとか呼吸を落ち着かせることで和らげた。
「おっと、薬が効きすぎているようだな。これじゃあ、会話にもなりゃしねえ。言語感覚だけはまともに戻してやるぜ」
その言葉の直後に、首にちくりとした痛みを感じた。
すると、呼吸がかなり楽になった。
込みあげる吐気もすっと消えていく。
「はあ、はあ、はあ……。ロ、ロウ様は……?」
どうやら、首に打たれたのは解毒剤のようだ。
身体の弛緩は戻らないが、かなり楽になっている。
首を動かした。
首から上はなんとか動く……。
やはり、エリカが寝かされているのは、装飾のない一個の寝台だ。
視界の端に、寝台の横の椅子に腰掛けている
「あの色男か? 別の場所だ。あの男の目の前で、お前を犯して泣かせてやろうと思ったがやめた。得体の知れない奥の手をしているような予感がしたしな……。それとも、ロウがいなければ、その企みを使えねえか?」
パリスが笑った。
だが、その言葉の響きには、パリスの苛立ちや悪意がこもっている気がした。
いずれにしても、エリカには「奥の手」などない。
純粋にロウのことが心配だっただけだ。
それにしても、あの小娘には、とことん迷惑をかけられる。
捕縛する直前の会話によれば、このパリスはユイナが持っていた古い魔道書を手に入れようとしているようだ。
そして、どうやら、ユイナはどういうつもりは知らないが、ロウにその古文書を渡したとパリスに説明したらしい。
パリスがこんな大騒ぎをしてロウを捕らえようとしたのも、どうやらそれが理由のようだ。
しかし、間違いなくロウはそれを持っていない。
本当にはた迷惑な娘だ。
しかも、そのユイナが人質のようになったとき、ロウは抵抗を諦めて、このパリスに投降を決めた。
ユイナなど無視して、こんなパリスなど、脳天をぶち割ってやればよかったのだ。
思い出して、腹が煮えてきた。
「とにかく、最初に言っておく。質問をするのは俺だ。お前からの質問はこれ以上は受けつけねえ。さて、じゃあ、もっとおしゃべりになってくれる薬剤を打ってやろう。とにかく、なんでも答えてもらうぜ」
はっとした。
寝台の横に座るパリスが液体の入った管のある長い針のようなものを持っていたのだ。
顔から血の気が引くのが自分でもわかった。
エリカからなにを引き出そうとしているのか知らないが、絶対的な効果のある自白剤のようなものが、エルフ族の秘薬として存在しているのは知っている。
ここは、エルフ族の中心都市であるエランド・シティだ。
どういう手段で、このパリスがエランド・シティの実権を手に入れたのかはわからないが、パリスはここを支配しているのであれば、伝承の秘薬をパリスが手に入れるのは簡単だっただろう。
なにを訊きたい……?
魔道書の場所……?
そんなものは知らないから、いくら自白させられても問題はないが、薬によって、ロウのことだけじゃなく、まだ捕らえられてはいないはずのシャングリアたち仲間のことを話してしまうかも……。
そんな風に考える一方で、こうなったら、時間を稼ぐしかないだろうかとも思った。
エリカのところにパリスがいるということは、少なくともロウのところには、パリスはいないということだ。
あのロウのことだ。
この得体の知れないパリスさえいなければ、なんとか逃亡に成功するのではないだろうか……?
「さて、どうやら、その顔は気がついたようだが、この告白剤はエルフどもの秘薬だ。だが、せっかくの薬剤だ。別の薬と併用させてもらうぜ。少しでも、お前が気持ちよく喋ってくれるようにな。お前は、あの男のお気に入りのようだしな。その男の女を寝取る……。俺はそういうことをして、他人をおちょくるのが好きでな」
パリスはくすくすと笑った。
別の薬……?
耳を疑ったが、そのときには、首にちくりと痛みが走っていた。
続いて、腕……。
さらに、太腿にもなにかが打たれ、最後にもう一度首になにかを注入された。
「な、なにを……」
すぐに違和感が襲ってきた。
全身に痒みとも痛みともつかない感覚がやってきたのだ。
まるで、身体の中を無数の蟻がうごめいているような、ぞっとする感覚だ。
「ひっ、ひいいっ……。な、なにこれ……。なにをしたの──?」
エリカは叫んだ。
これは不味い……。
本能的な恐怖を覚えたエリカは、とにかく逃げようとした。
だが、やはり、全身は金縛りになったように動いてはくれない。
「お前の身体には、魔道の封印のようなものを感じるな……。あの男に刻まれているか……? さしずめ、ほかの男に犯されないようにか……? だが、魔道というのは絶対じゃない。実のところ、俺は淫魔術というのをまるっきり不案内というわけじゃない……。だから、それをどうやって解けばいいのかは知っている。淫魔術は心の魔道だ。だから、お前がなにかを刻まれて、貞操を護っているのだとしても、お前の心が溶ければ、その封印は自然と失われる……」
びっくりした。
パリスが口にしたのは、ロウがエリカたちに施した淫魔術による貞操帯代わりの刻印のことだろう。
ロウは、得意の淫魔術により、エリカたちがほかの男たちの玩具にはならないように、ほかの男たちに犯されようとすると、局部が緊張して異物を受けつけられないようにする仕掛けをしてくれたのだ。
だが、パリスはそれを消そうとしている……?
愕然とした。
ロウの施した仕掛けが破られるとは思えないが、冗談じゃない。
「これだ。この感覚……。まずは、それを覚えな……」
パリスがエリカの乳房に手を伸ばすのがわかった。
いま気がついたが、エリカは捕らえられる直前の状況のまま、完全な素っ裸だ。
その無防備な胸にパリスの手が触れる……。
「はあああああっ」
その瞬間、なにかが弾けた。
まるですさまじい電撃でも受けたように、身体が硬直した。
パリスの指が当たった乳首の頂点に、エリカの感覚のすべてが集中して、爆発するような快感がエリカの全身を駆け巡った。
パリスの手はすぐに離れていったが、それを追いかけるように、エリカの身体は動かない身体を懸命にパリスに向かって伸ばそうともがいた。
しかし、慌てて歯を喰いしばった。
失いそうになった自制と自我をエリカは、なんとか戻す。
これは危険だ。
信じられないような強力な媚薬を打たれたのだ。
エリカはそれを悟った。
「色っぽくももがくじゃねえか。犯されたくなったら言いな。お前がそれを望めば、封印も解けるだろう。まあ、もっとも、俺のちんぽは、俺に役に立つ情報と引き換えだけどな」
パリスがくすくすと笑った。
かっとしたエリカは、パリスに悪態をつこうとした。
「んなああっ、あああああっ」
だが、できなかった。
パリスの指がすっとエリカの横腹を擦ったのだ。
それだけのことだ。
しかし、たったそれだけの刺激で、エリカは声を振り絞るような嬌声をあげてしまった。
「これはどうだ?」
パリスが笑い声を続けながら、エリカの股間に手を伸ばした。
ぴんぴんとパリスがエリカの肉芽を弾く。
「んぐうううっ」
エリカはぴんと全身を硬直させ、呆気なく達してしまった。
パリスが爆笑するのがわかった。
しかし、口惜しくても、エリカにはなにもできない。
わずかに残っているエリカの自制心が、エリカの目から涙を流させたことに気がついた。
「さて、じゃあ、そろそろ話を聞こうか。まずは、どうして、エランド・シティにやって来た。そこから訊ねようか」
パリスは言った。
「そ、それは……」
絶頂の余韻にひたりながら、エリカはなんの抵抗もなく、自分がパリスの質問に答えるために口を開いたことに驚愕してしまった。
「くっ」
エリカは必死になって、開きかけた口を閉じ直した。
そして、愕然とした。
たったいま、エリカはパリスの質問に対して、なんの躊躇いもなく応じようとしていた?
辛うじて意思の力でそれを制したが、そのためにエリカは、大変な労力を必要とした。
そのことに呆然とするしかなかった。
訊ねられたのは、エランド・シティにやって来た目的であり、それはユイナを探しにきたということであって、そのこと自体はパリスに知られても、どうということはない。
しかし、恐怖したのは、服用されられたらしい自白剤の効果だ。
だから、薬物に完全に支配されたとき、おそらく、エリカはパリスに対して秘密を守ることなどできなくなるだろうと思った。
そのときには、ロウの不利になることを口にしてしまうかもしれない。
エリカは、拘束されている背中に汗がどっと噴き出るのがわかった。
そのときだった……。
「ふううっ」
エリカは動かないはずの身体を全力で弓なりにして、吠えるような声をあげてしまった。
パリスの手が、エリカの豊かな乳房を根元から締めあげ、さらにせり上がるように乳首に伸びて、くいと尖頭を軽くひねったのだ。
それだけの動きだ。
だが、エリカは突き抜けた快感に、ぶるぶると身体を震わせて吠えるような声を出さずにはいられなかった。
強烈な媚薬を打たれたエリカの身体は、信じられないような敏感な状態になっている。
たったいま、達したばかりだというのに、ほんのちょっと胸を触られただけで、エリカはすでに二度目の絶頂寸前の状態まで快感を引きあげられてしまっていた。
「くくく……。なかなか色っぽいじゃねえか。こんなにもいい女だとわかっていれば、アスカの“ねこ”だった頃に手を出して、性奴隷にしておくんだたったな……」
パリスが勝ち誇ったように笑った。
その態度に腹が煮えくり返る。
しかし、エリカの身体はほとんど身動きできないほどに弛緩されているし、魔道についても封印されてしまっている。
さらに、こんなにも媚薬漬けにさせられて、いまのエリカには一切の抵抗の手段が残っていない……。
どうしていいかわからない……。
いずれにしても、エリカをこうやって好き放題にいたぶるだけでなく、あまつさえ、性奴隷にしようという言い草に腹がたった。
エリカに触れていい男はただひとり。
ロウだけだ──。
それを言い返そうとした。
「あううっ」
だが、エリカはなにも喋ることができないまま、派手に身体を弾ませてしまっていた。
パリスの指が太腿に伸びて、すっと指をなぞったのだ。
そんな軽い愛撫にも関わらず、そこから響きわたった衝撃は、頭が溶けそうなくらいに甘美なものだった。
異常なまでの快感……。
これほどに嫌悪をしている男からの愛撫にも関わらず、性感という性感が目覚めさせるような衝撃……。
いくら歯を喰いしばっても、迸ってしまう嬌声……。
エリカはなにもできない口惜しさに、つっと目から涙がこぼれるのがわかった。
「くくく……。どうだ? お前の心に絶望の色が見えてきたぜ……。そろそろ、俺の奴隷になりたくなってきたんじゃねえか? あの淫魔師のお気に入りらしいお前を、あれの目の前で寝取る……。ああ、それもいいか……。ちょっとした思いつきだが、あの生意気な男を殺す前の余興としては愉しそうだ。もうちょっと落ちてもらうか……」
はっとした。
パリスから魔道の流れがエリカに注ぎ込んでいることに気がついたのだ。
そうだ……。
こいつは、闇魔道師……。
ロウがこのパリスの能力について、そんなことを匂わせるような物言いをしていて、それでエリカ自身が指摘したのだ。
闇魔道師とは、心の闇の部分に取り込み、それに巣食って他人を操り、ときには、恐怖によって心を押しつぶし、生命の源さえ消失させてしまう魔道遣いだ……。
ロウの淫魔師も存在が伝承に包まれている存在だが、闇魔道師もまた、あまり存在が知られていない珍しい存在である。
人の心を操るという存在が、世間から受け入れられるわけもなく、もしも、存在が発覚すれば、問答無用で存在を消滅させるような対象とされている。
だからこそ、謎も多いのだが、エリカはアスカのところにいたときに、そんな怪しげな存在についての書物や記録に接したことがあるので、知識があったのだ。
パリスは闇魔道師……。
いずれにしても、そのパリスの魔力が、媚薬に犯されているエリカの身体に、どんどんと入り込んでくる。
それにもかかわらず、魔力を制御されているエリカには、それを妨げることはできない。
ただ、受け入れるだけ……。
エリカを本物の恐怖が包む……。
「もう一度、触るぞ」
パリスの手がすっと、再びエリカの胸に触れる。
「うはあっ」
たちまちにエリカは身体をまたもや震わせて、身体を跳ねあげていた。
すでに、体内の欲情は激しく燃えあがり、わずかに身を捩るだけで性感が沸騰するようだ。
「もう、たまらないだろう? このままじゃあ、気が狂うかもな。さあ、俺が欲しくなったんじゃねえか? ここから先の刺激が欲しくねえか?」
パリスがそう言って、すぐにエリカの胸から手を離した。
エリカは思わず小さな声をあげてしまった。
パリスの手が離れていくことが、途方もなく寂しく感じたのだ。
いや……。
そのことにぞっとしているエリカもいたが、いまは、胸が裂けるほどの切なさを感じているもうひとりのエリカが、それにとって代わろうとしている。
それがわかったが、エリカにはどうすることもできなかった。
いま、エリカはパリスの愛撫を求めているようだ。
憎悪と恐怖の対象でしかないはずのパリスだが、それをエリカは受け入れようとしているようだ。
なにかが壊れていく……。
心が砕かれようとしているようだ。
パリスのやっていることは、エリカの性感と感情を支配して、理性を消し去り、そこにパリスを慕うもうひとりのエリカを作るということだろう。
これが闇魔道……。
エリカは愕然とした。
でも、もう抵抗できない……。
情けないが、心と身体はすでに離反している。
「すでに、まんこはできあがってるな。そろそろ堕ちるか?」
パリスの指が無防備なエリカの股間にすっと動くのがわかった。
エリカは歯を喰いしばった。
「んぐううっ」
エリカは迸った呻き声とともに、動かないはずの身体を限界まで弓なりにしていた。
股間に指が当たったのだ。
全身が爛れるような快感に、頭が一瞬にして白くなりかける。
ぐいぐいと股間に押しつけられる指に、エリカは狂いそうになった。
「……指すらも受けつけねえのか……」
そのとき、パリスが険しい表情をしていることに気がついた。
追い詰められている頭では、パリスの考えていることにはすぐに思い至らなかったが、どうやらエリカの股間に指を挿し込もうとして、それが阻まれたことが気に入らないのだとわかった。
エリカはそれを残念に思った。
いや……。
どうして……。
一方で、さっきまでは、嫌悪しか覚えなかったパリスの声がとても心地よく心に響く。
指が離れる。
またもや、大きな失望感がエリカを襲う。
もっと、触って欲しい……。
近づいて、抱き締めて欲しい……。
狂おしいほどの感情がエリカを支配しようとしていた。
駄目──。
愕然とするしかなかった。
いまのは、本当の自分の感情じゃない……。
いや、その感情そのものを狂わされているのだ……。
闇魔道……。
パリスに対する強い慕情を抱きながら、一方でエリカは、全力でそれを否定しようとしていた。
まるで、別のエリカが、本物のエリカにとって代わろうとしているかのようだった。
自分がパリスに愛情を感じるはずはないのだから、これは強い媚薬とパリスの闇魔道によって、そして、さらにエルフの秘薬でエリカを支配しようとしているのにほかならないのだが……。
それでも、冷静さを失いたくないともがくエリカは、どんどんと心の深い部分に押し込められていく。
代わって前に出てきたのは、パリスの声を心待ちにしている新しいエリカだった。
いや……。
それこそが、本物のエリカ……?
それ以前のエリカこそ、まやかしに過ぎない……?
それにしても、身体が熱い……。
……そうだ……。
火のついたように燃えあがっているエリカの性感は、心の底から刺激を必要としていた。
いまや、風の流れでさえ、いきそうだ。
わけのわからない力で、エリカは自分を完全に見失っていた。
「まあいい……。繰り返せば落ちるか……。だったら、それだけ熟れた身体だ。だが、俺の許可なく絶頂できなくさせてやろう……。そらよ……。もう一度やるぜ。俺が欲しいなら、そう言うんだ」
声がした。
またもや、パリスの魔道がエリカに注がれる。
そして、エリカの脇腹に、パリスの手が触れる。
「ああああっ、いいいいいっ」
その瞬間、電撃を帯びたかのようにエリカの身体は硬直した。
全身の感覚がパリスの手が触れた場所に集まる。
まるで、そこが性器そのものになったかのようだった。
「いくら、挿入を拒んだところで、外に飛び出している突起は隠せねえしな」
パリスがエリカのクリトリスを襲う。
「んひいいっ」
全身に電撃が貫いたような快感が貫く。
絶頂の大波がエリカの中に巻き起こった。
エリカは全身を硬直させた。
だが、なにかがおかしかった。
あがりきったものが落ちることもなければ、あがることもない……。
ぎりぎりの一点でぐるぐると回っている。
エリカは、さっきパリスがエリカから絶頂を取りあげるというようなことを口にしたことを思い出した。
「ははは、今度こそ、俺に支配されたくなっただろう。気持ちよくなるためには、もう、俺に落ちるしかないんだからな」
さんざんにエリカを
もう、エリカには、ほんの少しの冷静さも残っていない。
完全に淫欲に支配されてしまった自分を感じてしまった。
とにかく、全身が熱い……。
肌に流れる汗でさえいきそうになる。
「……もう一度だ……」
パリスがエリカの股間を愛撫する。
エリカは吠えた。
狂ったような快感……。
絶頂をするのに遥かに十分な甘美感が身体を襲う。
しかし、いけない……。
やはり、ぎりぎりのところでとまる……。
もう……。
狂いそうだ。
いや……。
すでにおかしくなっている……。
「俺の声を聞け……。どんな風に聞こえる? そろそろ、素直にならねえと、心が毀れちまうぞ……」
パリスが手を離して高笑いする。
「……それとも、もう少し時間をかけるか? しばらく、放置して様子見るか……」
ぎくりとした。
パリスが立ち去る気配を示したのだ。
心の底から驚いた。
パリスがどこかに行く?
そんなことに耐えられそうにない……。
絶望的な気分になる。
「ま、待って――」
エリカは目を見開いて、パリスを見上げた。
薄っすらと笑っているパリスの顔がある……。
そこにある眼を覗くだけで、エリカは切なさに支配された。
もう、触ってくれないのだろうか……?
すぐ、そこにいるのに……。
パリスとの距離が途方もなく、遠く感じた。
寂しさを受け入れられる気はしなかった。
抗うことのできない力によって、エリカは自分を見失った。
「や、やめないで……」
口にしていた。
「おっ? もう堕ちるか? だったら、やめねえよ……。気持ちよくしてやるから、お前たちの仲間のことを全部教えな……。特に、あの淫魔師のことをな……」
パリスが言った。
その言葉が嬉しかった。
沈みかけたエリカの心は、パリスの声で一気に晴れやかなものになる。
まるで耳を愛撫されているような気持ちのいい声……。
彼の望むことを喋らなければ……。
エリカは懸命に頭を働かせた。
そして、なにかが爆発した。
いつの間にか、エリカは堰を切ったように、パリスに向かって話しかけていた。
エリカは喋り続けた。
パリスは、それをにこにこしながら聞いている。
もう、なにがなんだかわからない。
とにかく、語り続ける。
幾つか質問をすることもあったが、大半はパリスは沈黙したままだ。
エリカは喋り続けた。
パリスの関心を引くために……。
どんなことを話せば、パリスが気に入るか……?
どうすれば、パリスが優しくしてくれるか……?
そのことを考え続けて、懸命に話すべき言葉を探し続けた。
息をすることも忘れるようにエリカは喋り続けた。
いつしか、凄まじい疲労に襲われ、言葉を発し続けることが困難になってきた。
自分でもなにを喋っているかわからなくなり、やがて、意味のない言葉を呟いているだけになって気がした。
それでも、エリカは一生懸命に、パリスに向かって、彼が気に入ることを教えようと、舌が完全に動かなくなるまで、話しかけ続けた。
これまで、ほかの男がいた心の場所に、パリスが取って代わるのをはっきりと感じた。
もちろん、そのことに、エリカは心の底からの幸せを感じていた。