【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
エリカは激怒した。
……
「なんてこと、してくれてんのよ、クグルス──。全部、あんたの仕業だったなんて……。おかげで、わたしは、あいつの幻術にかかって、世迷いごとを……」
あまりもの口惜しさに、視界がぼやけてきた。
どうやら、涙が滲み出てきたようだ。
しかし、それも仕方がない。
クグルスのせいだとはいえ、パリスに追い詰められたとき、心の底からパリスのことが愛おしいと思った……。
理由なく、あいつのことを愛しいと思った……。
そして、愛の言葉を叫んだ……。
それが口惜しくてならない。
『ば、ばか、口に出すな──。ぼくは、お前の身体の中なんだから、念じれば会話をかわせるよ』
クグルスが焦ったように言った。
……いや、念話だ。
クグルスの言葉は、ただ、エリカの頭の中で響いただけだ。
だが、エリカが声をあげたことで、鉄格子の向こうの見張りたちが、一斉にこっちを見るのがわかった。
エリカは慌てて口をつぐむ。
どこだかわからない檻の中だった。
あのパリスの訊問のあと、満足そうに密室を出ていったパリスと入れ替わるように、無表情で壁に張りついていた数名のエルフ兵が、台に仰向けに固定されていたエリカを取り囲んだ。
そのときには、まるで憑き物でも落ちたかのように、正気に戻っていた。
だが、寸前までパリスに媚びを売るかのように、あられもない嬌声や哀願の言葉を喚いていたことを覚えていた。
エリカは愕然とした。
でも、どうして、そんな醜態を晒したのが、まるで理解ができないでいた。
パリスのわけのわからない闇魔道に侵されたせいだというのはわかっているし、しかも、身体に強い媚薬や自白剤などを大量に投与されてもいた。
その影響だったというのは想像できるが、あの訊問が終わった直後のエリカは、寸前までの痴態が嘘のように、完全にまともだったのだ。
パリスに対しては、憎悪と憤怒こそあれ、慕情のようなものは皆無だ。
自分はたったいままで、洗脳されていた……?
そんなことまで、冷静に考えられる。
この一瞬の変化に戸惑うとともに、自分が晒してしまった行為に激怒した。
なんということをしたのだ──。
まさか、ロウを裏切って、パリスに媚びるとは……。
腹が煮えくり返りそうになったが、違和感もあった。
どう考えても、自分がそんなことを言うわけもないし、たったいままで考えもしなかったが、身体になにかが巣食っているような、妙な気味の悪さもある。
そして、すぐにその正体もわかった。
“もしかして、クグルスね。あんた、わたしの身体にいるんじゃないの──”
だから、そのとき、エリカは思わず怒鳴った。
『ば、ばか、声を出すな、あほう──』
頭にクグルスの声が響いた。
次の瞬間、エリカの口は閉じ、声が出せなくなった。
なぜか、思考できなくなり、エリカは意識を失った。
そして、いまに至る──。
気がついたのが、この牢の中だ。
牢とはいっても、壁に作った横穴のような感じであり、足を延ばして寝ることはできるが、立つことはできない。
そんな牢だ。
そして、鉄格子の向こうにあるのは、兵の詰め所のような場所であり、大きなテーブルがひとつあり、それを木製の椅子がたくさん取り囲んでいる。いま、部屋にいるのは、意地の悪そうな人間族の男女十数名であり、エルフ兵でもなければ、軍服は着ているが、行儀が悪く、とても兵にすら見えない。
どちらかといえば、ならず者たちという感じであり、エルフ兵に捕らえられていたはずの自分が、なぜ、こんなところにいるのか、さっぱりとわからない。
ともかく、エリカは、この見知らぬ男女たちが見張る大きな部屋の壁にくり抜かれた穴の中に放り込まれており、それを鉄格子の向こうから、見張られているという状況だ。
部屋には、エリカがいる牢のような場所はほかにはなく、囚人もエリカのほかにない。
とにかく、エリカは、大きな詰め所に壁をくり抜かれて作られている、ただひとつの小さな牢──。
エリカはそこにいるのだ。
相変わらず、衣類を身につけていない素っ裸であり、両手は背中側で腰の後ろで水平に重ねさせられている。おまけに、足首には鎖のついた足枷まで嵌められているので、ほとんど身動きもできない。
パリスに訊問に遭ったときに比べて、身体の弛緩はなくなっていたが、こうやって拘束されているのだから、逃亡など難しい。
いずれにしても、あのパリスの洗脳もどきの訊問の場所から、どうやって、ここに移されたのかをいうことはよくわからない。
どう考えても、ここは、パリスといた施設の一部とは違って、雰囲気さえ異なる気がする。
そうやって困惑しているところに聞こえてきたのが、ロウのしもべの魔妖精であるクグルスの声だ。
それで、少しは記憶が繋がった。
とにかく、クグルスはエリカの身体に巣食っているようだった。
やはり、いつの間にか、エリカの身体の中にいたのだ。
クグルスは、「淫気」という不可思議な力で、エリカたち魔道遣いのように「魔道」を駆使することができるが、なによりも得意とするのが、他人の身体の中に入り込んで、身体を操ることだ。
エリカも、何度か悪戯をされたので、肉体に憑依されたときのクグルスの
いつから、エリカの中に入っているのかと訊ねると、すぐに最初に捕まった瞬間に、ブルイネン側からエリカの体内に即座に移り入ったと教えられた。
しかも、ロウの指示だという。
あのとき、ロウとクグルスがそこまで込み入った会話ができたとは思えなかったが、問いただしたところ、クグルスはロウと離れた状態で念話ができるようになっているのだという。
ロウの能力があがったことによる効果だと答えがあったが、それよりも度肝を抜かれたのが、パリスの闇魔道をあえて受け入れ、しかも、おかしな薬剤がエリカを狂わせるのを許したのが、すべて、クグルスの仕業だったということだ。
さもなければ、本来はロウの淫魔師の力で性奴隷の「呪い」をかけられているエリカに、あの程度の洗脳効果が生まれることはなかったらしい。
その証拠に、パリスが消え、エリカがここに移送させられて、クグルスがそれらの効果を打ち消すようにした途端に、エリカは正気に戻ることができた。
“大した乱れ方だったじゃないか、この淫乱エルフ女めえ──。ご主人様に言いつけちゃおう”
頭の中でけらけらとクグルスの悪びれない笑い声が響いた瞬間、エリカは、ぶちりと頭の中のなにかが切れる音を聞いた気がした。
なんてこと、してくれてんのよ、クグルス──。全部、あんたの仕業だったなんて……。おかげで、わたしは、あいつの幻術にかかって、世迷いごとを──。
それで、思わず怒鳴った。
慌てたように、クグルスが頭の中で声をあげ、エリカも口をつぐんだが、大声をあげたことで、鉄格子の向こうの見張りたちが、エリカに視線を向けたのがわかった。
「……随分と元気じゃないか、エルフ女──。やっと、起きたようだけど、気分はどうだい? 上級エルフ族たちからは、手を出さずに監禁しろと命じられているから、痛めつけはしないけど、騒がしくしないでくれるかい。痛めつけなくても、折檻の方法はいくらでもあるんだからね」
檻の外の女のひとりがエリカに向かって声をかけてきた。
ふと見ると、顔が赤い。
酒を飲んでいるようだ。あれでも女兵か?
エリカは顔をしかめた。
「……どこよ、ここは?」
エリカは上体を起こして、片膝を曲げて身体を隠すようにしながら、顔だけを鉄格子の外に向ける。
やはり、どう見ても、エルフ兵の軍営という感じでも、あるいは、エランド・シティの行政府である「水晶宮」の牢という感じでもない。
ならず者の集まる場末のあじと──。
そんな印象だ。
話しかけてきた女にしたって、どう見ても、程度が悪すぎる。
すると、いきなり杯が鉄格子に向かって飛んできた。
エリカは驚いた。
「質問すんじゃないよ、生意気な──。大人しくしていろ、っているのがわかんないのかい──」
飛んで来たのは酒の入った金属の杯だった。鉄格子に当たった杯は、酒をまき散らしながら、鉄格子に阻まれて床に転がった。
投げたのは、最初に話しかけてきた女じゃなくて、もうひとりの女だ。
やはり、酒を飲んでいて、随分と顔が赤い。
いずれにしても、不快なことには変わりない。
思わず、言い返そうとしたところで、頭の中にクグルスの声が響いた。
『落ち着きなよ……。ここは、下層地区側の軍牢だよ。お前とご主人様が捕まえられた水晶宮じゃない……。あれから、ここに運ばれたんだ。ぼくと一緒にね』
はあ──?
また、口に出しそうになり、慌てて口をつぐむ。
同時に卑猥な笑い声が起きる。
「大人しくしてな。こちら側にエルフ族が入るのは珍しいが、囚人であれば、エルフ族であっても同じだ。ちゃんと囚人として扱ってやる。お前ら、特権階級種族には、日ごろから苛ついてんだ」
「それとも、暇つぶしに、俺たちが相手をしてやろうか? 絶対に手を出すなと言われているが、まあ、そっちからお願いするんなら仕方がねえしな」
「いや、あれでも、魔道も剣もかなりの腕利きらしい。絶対に檻から出すなと言われてる。檻から出さないで、どうやってやるんだ?」
「なに、色々とやりようはあるさ。檻ごしでも、ちんぽは入れられるしな。エルフ女に尻をくっつけさせてな」
女たちに続き、一斉に男たちが卑猥な言葉をかけはじめてきた。
エリカも驚いたが、なんという品のない連中なのだろうと思った。
同時に、またもやかっと頭に血が昇った……。
「やめなよ、ブルイネン様に言いつけるよ。それに、パリス様のご指示もあるだろう。つまんないことをするんじゃないよ。こいつは、パリス様が手をつけなさることが決まってんだ。なにかしたら、殺されるよ」
女の大きな声が響く。
最初に声をかけてきた女だ。
どうやら、この女が、ここの連中のリーダー格らしい。
その女の強い口調に、とりあえず、詰め所の連中が静かになった。
『……話を合わせなよ、エリカ……。せっかく、ご主人様の思惑通りに、ご主人様と離されて、水晶宮の外に連れていかれたんだ。すっかりと、あいつの洗脳で大人しくなったと思われてんだからさあ』
なんですって──?
エリカは眉間に皺を寄せた。
『……とにかく、どういう状況なのか、あんたは知っているのね?』
エリカは頭の中でクグルスに訊ねた。
もちろん──。
ここまで、仕組んだのはぼくだしね。
クグルスの笑い声が頭に響く。
そして、語り始めた。
つまりは、どうやら、そもそも、ロウとエリカが最初に捕らえられたのは、水晶宮に隣接するエルフ軍の軍営のような場所らしい。
そこで意識を失わせられて、別々に監禁された。
そのとき、クグルスはロウの指示で、エリカの中に入り込んできたようだ。
しかも、クグルスは、エリカのことをパリスが訊問するだろうから、そのとき、エリカがパリスの術に屈服したようにしろと指示したらしい。
なんで、そんなことをと疑念に思ったが、ロウにはなにか思惑があったようだ
とにかく、クグルスは、ロウの指示に従い、エリカの身体に入ったまま媚薬や闇魔道を一時的に受け入れさせた。
もっとも、ロウには危険なものであれば、なんとしても受け入れさせるなという指示も受けていたようだ。
だが、クグルスは、パリスの支配魔道は強力であるものの、ロウの淫魔術に比べればどうということはないものとわかったらしい。
それで、パリスを油断させるために、エリカが屈服したと思わせたのだという。
そして、ロウの狙い通りに、パリスはエリカを完全に落としたと思い込み、エリカを監禁しておくように指示をして離れた。
そういうことのようだ。
『ば、ばかじゃないの……。あ、あれがなにかの手段だったとしても、わ、わたしの気持ちはどうなのよ──? あ、あんなに惨めな思いを……』
あれがパリスを油断させるための手だと言われても納得はいかない。
そもそも、どういう目的なのか、さっぱりとわからないし、エリカはまだ監禁されているし、ロウがどうなっているかわからない。
だいだい、ロウと離れ離れになっていることが不本意なのだ。
第一、あの闇魔道は受け入れなくて済むものだったのなら、なにかの意図があったとしても、心を操られた状態になったことには腹が煮えかえるように怒りしかない。
無論、パリスは許せないし、それを許したクグルスは気に入らない。
『大丈夫だよ。洗脳されていっぱい喋ったように見せかけたけど、大事なことは一切喋ってないから。あいつも、威張ってたわりには、ぼくに気がつかないんだから』
『そういう問題じゃないのよ――。だいたい、ロウ様はどこよ?』
『ここに、お前に連れていかれる寸前までは、水晶宮っていうのか? あの結界の強い建物の地下に感じたぞ』
『いまは?』
『さあ……。おかしいよねえ。下層地区に送られてから、ご主人様を全く感じないんだ。同じ城郭内くらいの距離なら、上であってと、下であっても、ご主人様のことを感じないはずはないんだけどね……。なんでなかあ? 結界のせいかなあ』
いまは、ロウを感じることができないのか、クグルスの残念そうな感情が伝わってくる。
いずれにしても、エリカの腹は煮え返っている。
ロウに対しても……。
『とにかく、ロウ様もロウ様よ――。なんで、そんな指示を――』
『そんなに、怒んじゃないよ。ご主人様はお前のことは信頼しているけど、演技ができるとは思ってないのさ。屈服したふりをしろと命じられても、お前はそんなことできないだろう、エリカ?』
またもや、クグルスがけらけらと笑う。
エリカはかっとなった。
『冗談じゃないわよ──。なんで、演技が必要なのよ』
『お前を訊問したパリスは、お前が洗脳されたと思ったから、興味を無くしたんだぞ。だから、隙ができて、警備厳重な水晶宮の牢から、こっち側の下層地区に移送する嘘の命令を渡せたんだ。エリカが屈服してなかったら、ご主人様と一緒に、まだ水晶宮だぞ』
『望むところよ──。わたしはロウ様の護衛なのよ──。一番奴隷なんだから──』
『だけど、ご主人様は、まずはお前を安全な状態にしたかったのさ。それには、まずは油断させたかったらしいよ。お前を下層地区に送る手配を処置したのは、ブルイネンだよ』
ブルイネン?
あのときのエルフ族の隊長か……。
エリカは思い出した。
営庭でロウと暴れたとき、ロウが口づけをして、淫魔術を刻んでいたような感じだった。
そのブルイネンをロウが動かしているのか?
「とにかく、さっさとこいつらをどうにかしなさいよ。いつものように、ちょこちょこと、連中の中に入って、この牢を開けさせるのよ──」
喚いた。
ぎょっとした感情が身体に拡がる。
自分の感情ではなく、クグルスの感情だ。
それで、エリカは、たったいまの言葉を心の中ではなく、思わず、口に出してしまっていたことに気がついた。
『ば、馬鹿……』
エリカもはっとしたが、そのときには、鉄格子の向こうに、詰め所の連中が集まって来ていた。
不審そうな表情で、エリカを見ている。
エリカは、とにかく、彼らから距離を取るように、牢の奥側に身体を引っ込めた。
それで気がついたが、動くと怖ろしく身体が怠かった。
しかも、確かに魔道も遣えないようだ。
やはり、なにかの魔道封じの道具が腕にでも嵌められているのだと悟った。
「随分と
脅すような響きの声をかけてきたのは、リーダー格だと予想した人間族の女だ。
「お、おしっこよ。厠に行きたいのよ」
エリカはとっさに言った。
すると、鉄格子の向こうの連中が一斉に嘲笑の声をあげた。
「そこに壺があるだろう。それに跨ってしな。大きい方も、小さい方も、遠慮なくするんだね」
女が笑いながら言った。
ふと見ると、確かに金属の壺が横にある。
馬鹿にして……。
激怒したが、つまらない嘘を言ったのは自分だ。
エリカは全身が憤怒と羞恥で身体がかっと熱くなるのを感じた。
「畏れ多くも、エルフ美女様のおしっこか。じゃあ、見物してやるよ。遠慮なく、垂れ流しな」
男のひとりが言った。
外の連中がどっと沸く。
「も、もう、引っ込んだわよ」
エリカは片膝で必死に裸身を隠しながら叫んだ。
『とにかく、油断させておきなよ、エリカ──。おしっこでも、なんでもやってあげな。もうすぐ助けが来るから』
クグルスが頭の中でそう言った。
「ふ、ふざけんじゃ……」
エリカは声をあげた。
しかし、ふと気がついて口をつぐむ。
『助けって、どうやってよ?』
『エリカをここに連れてきた女、つまり、ブルイネンだよ。あいつが来るんだ。さっきも言ったけど、あいつは、ご主人様の指示で、わざとこんな程度の低い場所にお前を移すように手配させたんだ。本当なら、もっと警戒の厳重な軍営の地下牢だったんだよ。わざわざ、こんな質の悪い者たちが見張りになるように手を回して……』
クグルスが愉快がっている。
この魔妖精の態度がふざけているのは、いつものことだが、こんなときは、本当に苛つく。
『それよりも、わたしの拘束を解いて──。魔道を遣えるようにして──』
エリカはクグルスに念話を送った。
そのとき、鉄格子の向こうから舌打ちが聞こえた。
視線を向けると、苛ついた表情の女がエリカを睨んでいた。
『……やろうと思ったけどね。拘束具はともかく、魔道封じはかなり特別みたいだ。魔妖精のぼくだと外せないよ。外せる相手を連れてくるから、待ってて』
『外せる相手? いいから、じゃあ、拘束を外してよ。あんたの魔道でこいつらをぶっ放して』
『うーん、それでもいいのかなあ……。だけど、いくらぼくでも、こんなにたくさんの連中を一度には操れないしねえ……。やっぱり、こっちから合流して、急いで連れてくるよ……。待ってて──。ご主人様の淫気に染まっている性奴隷どもなら、淫気を辿るのは簡単なんだ。ちょっと行ってくるから』
クグルスの声がした。
次の瞬間、クグルスの気配がさっと消滅する気がした。
「ちょ、ちょっと待ちなさい──。わたしの命令に従うのよ──」
エリカは怒鳴った。
そして、はっとした。
またしても、声に出してしまったことに気がついたのだ。
「……だから、静かにしろって言ってんだろう──。もう一度言ってごらん、エルフ女──。命令がなんだって――? お前ら、エルフ族は囚人になっても、あたしら他人種の上にいるつもりなのかい──」
酔っている女に怒鳴りつけられた。
視線を向けると、明らかに激怒している。
さっきの言葉を自分たちに向けられたと思っているのだろう。
「そうだね……。実のところ、あたしもそうだし、ここにいる連中も、いつも偉そうなエルフ族の連中には、嫌気がさしているんだ。このあたしが、抑えているからいいものを、あんまりうるさいと、折檻するとよ。パリス様や、ブリイネン様のご指示でも、聞き分けのない囚人に罰を与えることは咎めはしないだろうしね」
そして、もうひとりの女が言った。
こっちも、酒に酔っている赤ら顔がますます赤くなっている。
かなりの気分屋なのかもしれない。
エリカに対する態度も、ころころと変わる。
「ねえ、だったら、折檻しましょうや。鉄格子を開けなくても、縄くらいは入れられますよ。俺に任せてくれませんか?」
すると、卑猥な口調で横から男が口を挟んできた。
ふと見ると、黒っぽい縄を持っている。
エリカは得体の知れないその縄に目を細めた。
男の言葉に、ほかの男もわっと歓声のようなものをあげる。
それを受けて、女リーダーも苦笑のような表情を浮かべた。
「そうだね……。なんだか、生意気なエルフ女だねえ。大人しくしてるんなら、なにも手は出さないようにしてやろうかと思ったけど、囚人らしくない気の強そうな態度も気に入らないしね。じゃあ、しばらく、のたうち回ってもらうかい。上の連中がこいつを引き取りに来るまで、数日はあるだろうしね。手さえ出さなけりゃあ、叱られることもないか」
女が言った。
それを合図にするように、さっき声をかけた男がにやりと微笑んで、手に持っていた黒い縄を鉄格子にこちら側に放る。
ぎょっとした。
縄が意思を持った生物であるかのように、エリカに這い寄ってきたのだ。
魔道だ。
慌てて逃げようとするが、狭い牢の中であり、しかも、両手を括られているエリカにはどうしようもない。
足には足枷まで嵌められているのだ。
あっという間に、縄がエリカに寄ってくる。
しかも、近づくのは股間だ。
『ク、クグルス──』
心の中で悲鳴をあげた。
だが、返事はない。
気配もない。
さっき、どこかに行くと言っていたが、こんなときに……。
クグルスがいなければ、拘束されているエリカには抵抗の手段はない。
縄はあっという間に、エリカの股間に巻きついてくる。
「いやよっ」
腰を振って逃げようとしたが、縄はエリカの細い腰に、ひと巻き、二巻きして、股間を割るようにして動いてくる。
「んひいっ、いやああ」
エリカは悲鳴をあげた。
股縄の状態に縄が喰い込んだのだ。
しかも、念のこもったことに、いつのまにか縄瘤のようなものが作られていて、それがエリカの敏感な場所にぐいと密着して前後の穴に入り込む。
「あああっ」
エリカは思わず上体を曲げた。
縄で股間を深くえぐられて、肉芽に当たるとともに、大きな縄瘤が膣とお尻の穴に完全に食い込んでいる。
しかも、じわじわと鈍痛のような痒みが縄から拡がる気がする。
「お上品なエルフ様にはわからないかもしれないけど、女囚を折檻するとき用の“痒み縄”という懲罰用の道具だ。すぐに、効果が表れるからな。痒みをじっくりと味わいながら、どういう態度を俺たちにとればいいか、じっくりと考えな」
エリカに、魔道によって縄をけしかけた男がげらげらと笑う。
だが、エリカはそれどころじゃなかった。
男の言うとおりに、すぐに股間から強い痒みがさっと拡がってくる。
そして、まるで刃物に刺されたような鋭さで、腰から背骨にかけて、痒みが拡がった。
エリカは真っ赤に顔を染めて、激しく腰を振ってしまった。
「いやあっ」
すると、その刺激で縄瘤が股間に快感を拡げ、なんともいえない疼きがエリカに襲いかかる。
「ああ、痒い──。かゆいいい」
エリカは激しく泣き声をあげた。