※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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45  毒をもって毒を

「あいつらです」

 

 ステファンがささやいたのは平凡な顔立ちの若い男だった。若いエルフ美女をひとり連れている。

 ブルドはどこかで見たふたりだと思った。

 そして、すぐに、確かニーナをマイム市から連れ出すときに、トーイと一緒にいた冒険者だと思い出した。あのときの契約はニーナがドルニカ伯爵の命令で解除したはずだが、トーイは彼らをギルドを通じて雇い直したのだろう。

 男は平凡だが、エルフ女はちょっと忘れることのできないくらいの美女だ。それでわかった。

 

 ここは王都でもメティス通りと呼ばれている場所であり、クロノス大通りと呼ばれる王都中心を縦断する通りに次いで大きな通りだ。

 あの冒険者ふたりが歩いている界隈は、王立学問所や私塾が立ち並ぶ地域であり、かなりの若者で賑わっている。

 陽はまだ西に傾きかけたばかりの日中だ。

 

 ニーナの執事だったステファンがドルニカ家の屋敷に接触してきたのは今朝のことだ。

 ステファンは、ドルニカがニーナの屋敷と財産を処分するように命じてから、その処置の中途で不意に姿を消していて、数日行方がわからなくなっていた。

 

 そのステファンが突然やってきてブルドに面会を求めたのだ。

 応対をしたブルドは、この数日どこに行っていたのだと訊ねたが、ステファンは、飲み歩きながら娼館に泊まり続けていたと悪びれることなく言った。

 

 「そんなことよりも……」とステファンがブルドに語りだしたのは、ドルニカからニーナを取り返そうとしている冒険者がいるという情報だった。

 

 すぐにブルドは、あの宿屋の息子のトーイが冒険者ギルドで雇った冒険者のことだと思った。ドルニカ夫人からは、その冒険者の処分を命じられていたが、まだ昨日の今日のことであり、ブルドはその冒険者の居場所も人物の特定もできていなかった。無論、冒険者と一緒にいるはずのトーイのこともわからない。

 手の者を動かして、あちこちを探させてはいたが、まだ有力な情報はない状況だった。

 

 ブルドは喜んだ。

 そして、こうやって、そのステファンの案内で冒険者がいるという場所にやってきたのだ。

 

「あのふたりには見覚えがあるわ。トーイのことで、ニーナが最初に雇った冒険者ね」

 

 ブルドは、距離を保ちながら人に紛れて、ステファンとともに、ふたりを尾行(つけ)ている。ほかにも、すでに数名の手の者を周りに自然なかたちで配置していた。

 ブルドの合図があれば、彼らはすぐに動くことができる。

 

 ふたりは警戒した様子はなかったが、妙に密着したり、あるいは少し立ち止まったりしながら、群衆の中を歩いていた。なにをしているかわからないが、なんとなくエルフ女の歩き方はぎこちない気がする。それに比べて、男は悪戯っぽくからかうような表情をエルフ女に向けたりしていた。さすがに、この距離ではふたりの会話まではわからない。

 

「そうです。トーイはニーナがもともと雇った冒険者を指名で雇ったのですよ。男はロウ、女はエリカという名です。もうひとり仲間の女がいて、そいつの名はコゼといいます」

 

 ステファンがささやいた。

 それはブルドの持っている情報と合致する。

 ブルドはステファンの情報が確かなものだと認めた。

 そのあいだも、ブルドはステファンとともにゆっくりと歩き続けている。

 

 少し前を歩いているロウとエリカというふたりの冒険者の男女は、妙にゆっくりなので、自然なかたちで尾行するのは、多少気を遣う。

 ただ、ふたりはまったく警戒をしている様子もない。

 どちらかといえば油断している感じだ。

 

「それにしても、トーイは自分の婚約者がいなくなったので、一緒に探して欲しいと依頼したらしいですよ。まだ、ニーナの婚約者のつもりでいるとは、ずうずうしい奴です」

 

 ステファンの口調は憤慨した感じだ。

 

「そのトーイはどこにいるの?」

 

 ブルドは訊ねた。

 ドルニカ夫人には、冒険者は皆殺しにするように指示されているが、トーイは、ニーナとともに性奴隷として飼うので生け捕りにせよと命じられている。だから、トーイの居場所がはっきりと確認できるまでは、まだ手を出すつもりはない。

 

「コゼという女と一緒のはずです。俺が泊まっていた娼館にいると思います。まあ、着いていけばわかるとは思いますが」

 

 ステファンは言った。

 ブルドは頷いた。

 

 屋敷にやってきたステファンの最初の説明によれば、ステファンがトーイや冒険者たちのことを知ったのは、まったくの偶然のことのようだ。ステファンが娼館で女を抱き、そのまま寝入っていると、その娼館の隣室に、トーイのほか冒険者が潜んでいるのを発見したのだそうだ。

 

 ステファンはトーイの声も顔を知っていたので、こっそりと彼らの会話を壁越しに盗み聞きしたようだ。そして、彼らがニーナを奪い返そうと目論んでいるのがわかったらしい。

 それでステファンは、今朝になり、すぐにドルニカ夫人の屋敷を訪れて、その情報をブルドにもたらしたというわけだ。

 

「それにしても、娼館に隠れていたとはね……。どうりで、王都中の宿屋を調べさせても発見できなかったわけね」

 

 ブルドは呟くように言った。

 トーイと冒険者を見つけるために、ブルドは手の者を使って、あちこちに宿屋を探らせていたが、ステファンがやってきた時点では、まだ、彼らを見つけるに至っていなかった。

 娼館に隠れていたとは意外だ。

 どうりでわからなかったのだと思う。

 

「……それよりも、俺の情報が役に立ったのなら、俺の願いを聞いてくれるように、ドルニカ様に口を利いてくださいね。頼みますよ──」

 

 ステファンは思いつめた感じで言った。

 

「何度も言わなくてもわかっているわよ。大丈夫よ。ドルニカ様に、それとなく仄めかしたけど、ドルニカ様もニーナの嗜虐にそろそろ、ひと工夫欲しいところだったみたいだから乗り気のようよ。毎度、男奴隷に種付けさせてきたけど、もうニーナも慣れちゃって、あまり嫌がらないから刺激が欲しいと思っていたみたいね──。ドルニカ様は、好きだった男を目の前で拷問するのも面白いと言ったけど、元部下に凌辱されるなんてのも、惨めでいいじゃないの──。奥様好みの鬼畜な設定よ」

 

 ステファンがこの情報と交換に要求したのは、ニーナをステファンも犯したいということだった。ステファンがいうには、以前からニーナのことは密かに気に入っていて、いつか凌辱したいと思っていたのだそうだ。

 

「鬼畜か……。それなら、俺に、もっといいアイデアがありますよ」

 

 するとステファンが言った。

 

「アイデア?」

 

 ブルドはずっと前を歩いているロウとエリカに目を向けたまま言った。

 

「犬ですよ」

 

「犬?」

 

 さすがにちょっと驚いて、ブルドはステファンに視線を向けてしまった。

 慌てて顔を元に戻す。

 

「犬をどうするのよ?」

 

 ブルドは訊ねた。

 

「性交用の犬を手配できる見世物業の男に伝手があるんです。ニーナに、その犬をけしかけるんですよ。ドルニカ夫人に使われる前には、そんなプレイに興味のある貴婦人に仕えたことがありましてね……。そういう犬を手配するのも俺の役目だったんです」

 

 ステファンが横でくすくすと笑った。

 

「そ、それはまた……」

 

 獣姦とは、さすがにブルドも嫌な気分になったが、ドルニカ夫人は喜ぶだろうとは思った。

 

「まあ、奥様には話しておくわ」

 

「頼みます、ブルド殿──。その代わり、そのときのニーナの調教係にも俺も加えてもらいますよ。なにしろ、獣姦のできる犬は俺にしか手配できないんですから」

 

「わかったわよ」

 

 ブルドはそれだけを言った。

 

 しばらく歩いていると、再びロウとエリカが立ち止まるような速度になった。

 道はそろそろメティス通りを過ぎて、娼館の多く並ぶ町並みに変化する地域だ。

 

「それにしても、なにをしているの、あのふたり?」

 

 ブルドは不思議に思って言った。

 

 止まったり、進んだり、速度をあげたかと思えば、またゆっくりと歩いたりしている。

 まさかとは思うが、尾行しているのに、とっくに気がついていて、周りに配置して歩かせている手の者を炙りだすためにやっているのではないかと勘繰りたくなる。

 だが、ステファンがくすくすと笑った。

 

「なにをしているか、よく見てみていればわかると思いますよ、ブルド殿──。あいつらはいちゃついているだけです。昨夜、盗み聞きしたところによれば、ああいう羞恥責めがあの男のお気に入りなのだそうです。だから、日に一度、あのロウはああやって、エルフ女のエリカを外に連れ出しては悪戯をしてるらしいです」

 

「羞恥責め?」

 

 びっくりした。

 だが、それを証明するかのように、遠くにいるあのふたりが、横の建物の壁に張りつくように移動した。

 ブルドは驚いた。

 

 ロウという男は、周囲からは見え難いように身体で視界を遮っているが、遠目であるものの、ブルドの位置からは男がエルフ女のスカートに手を入れて、股間をまさぐっているのがはっきりと見える。

 それに対して、エルフ女は顔を俯かせて顔を真っ赤にしているが、抵抗そのものはせずに、男が無遠慮にスカートの中をいじるのに任せていた。

 ブルドは白昼堂々と行われている破廉恥な行為に呆れてしまった。

 

「本格的に、始めそうですね──」

 

 ステファンが笑っている。

 呆気にとられて見ていると、男がさっとエリカのスカートから手を抜いて、女を路地に導いた。

 

「行きましょう」

 

 物陰に消えたふたりを追うように、ステファンは足を速めた。

 ブルドも一緒に急ぐ。

 すでに、ふたりの姿は路地の奥に消えていた。

 見失うわけにはいかない。

 ブルドはふたりが入り込んだ路地の入り口までやってきた。

 

「あっ」

 

 路地を曲がったところで、ブルドは叫んでしまった。

 そこで、ロウとエリカのふたりが待ち構えていたのだ。

 たったいままで、白昼の通りで性行為まがいのことをやっていた気配はない。

 エリカはやや赤ら顔でありながらも鋭い視線で杖をブルドに向けているし、男は腰にさげた剣の柄を握っている。

 

 しまった──。

 

 ブルドは心の中で舌打ちした。

 尾行していたのがばれていたのだ。

 ブルドは慌てて合図の口笛を放った。

 

「無駄よ。あんたが周りに配置していた手の者は、ひとりひとり炙りだして、あたしが始末したわ」

 

 後ろから声がした。

 振り返る。

 そこには黒髪の小柄な女がいた。

 この女も見覚えがある。

 眼の前の冒険者の仲間だ。

 

 コゼ……。

 これも手練れだ──。

 ブルドは背に汗が流れるのがわかった。

 

 そして、口笛で殺到するはずの手の者がまったくやってこない。

 すでに手の者を片付けたというコゼのいうことは本当だろう。

 ロウとエリカが、不自然な速度で歩いていたのは、やっぱり周囲に配置していたブルドの手の者を炙り出すためだったのだ。

 本来なら警戒していたと思うが、このふたりが本気で破廉恥な行為をやりだしたのと、横でステファンが羞恥責めなどと戯言を耳打ちしたために、ブルドの判断力が鈍ってしまった。

 

「ブルド殿……」

 

 ステファンが怯えたようにブルドに近寄ってきた。

 

「邪魔よ──」

 

 ブルドは手首に隠してある毒針に右手を伸ばしながら怒鳴った。

 だが、次の瞬間、背中に衝撃が走った。

 

「がっ……あ……が……」

 

 なにが起きたかわからなかった。

 いつの間にか、身体が痺れてブルドは地面にうずくまっている。

 そして、なにが起きたか、やっとわかった。

 

 ステファンだ──。

 

 この男が背中から、なにかの魔道具で強力な電撃をブルドの身体に流したのだ。

 いまは、いつの間にか取り出していたその魔道具を手に握ったまま、コゼという女の後ろに隠れるようにしている。

 

「凍りつけ──」

 

 エリカの杖から光線のようなものが流れた。

 魔道の縛りが全身を拘束したのがわかった。

 ブルドは完全に動けなくなってしまった。

 コゼがブルドを蹴り飛ばして、さらに完全な路地の中に送り込んだ。

 ブルドの身体は抵抗することもできずに、奥に転がされた。

 

「気をつけろ──。あちこちに毒針を隠しているぞ。まずは、右手首だ。左手首にもある。それから、右の足首……。いや、靴の中だな。服の下にも身に着けている。それから内腿だ。構わん──。ここで全部脱がしてしまえ──。おや? 驚いたな。尻の穴にもあるぞ。膣の奥にも毒を仕込んでいる。全身毒の武器だらけじゃないか」

 

 ロウという男が苦笑しながら言っている。

 次々に毒針や暗器の隠し場所を言い当てられて、ブルドは驚いてしまった。

 

「声が出ないように、喉を凍結させます、ロウ様──。コゼ、服を脱がして。毒に気をつけてね」

 

 エリカが新たに魔道を放ったのがわかった。

 ブルドの口からは空気が漏れるような音しか出せなくなった。

 

「誰に向かって言っているのよ、エリカ──。万が一にも毒になんか触れたりしないわよ──。それにしても、ご主人様、膣の中にも毒があるなら、犯すのは危険じゃないですか? こいつを淫魔の力で支配して、あの貴族女を捕えるために、性奴隷にするんですよね?」

 

 コゼという女が金縛りになっているブルドから服を剥がしながら言った。

 随分と手際がいい。

 あっという間にブルドの身体からは衣類と隠し武器が外されていく。

 

 下着だけになった。

 隠し針も器用に外していく。

 下着も剥がされた。

 完全な全裸になった。

 ブルドの肌に冷たい風が当たる。

 やっと恐怖心が芽生えてきた。

 

「性奴隷なんかにはしないよ。道具にはなってもらうがな──。まあ、命令に逆らえないようにするくらいなら、口から精を飲ませるくらいで十分だ──。コゼ、口を開けさせてくれ──。口の中には毒針は仕込んではいないようだ」

 

 ロウは言った。

 なにをしようというのか……?

 ブルドは眼を見張った。

 ロウが目の前で性器を露出したのだ。

 

「さあ、口を開けるのよ」

 

 コゼに身体を起こされた。

 得体の知れない恐怖にブルドは口をつぐもうとしたが力が入らない。

 顎を掴まれて簡単に口を開かされる。

 その口の中にロウの勃起した性器が入り込んできた。

 

「愉しませてやるつもりにはなれないな。とっとと出すか」

 

 ロウがそう言って、数回ブルドの口の中で性器をしごくようにしたかと思うと、いきなり生温かい精が口の中に放出された。

 

 その瞬間、なにかが心を縛るのがわかった。

 今度こそ本物の恐怖がブルドに走る。

 なんだこれは──?

 ブルドの中に、別のブルドが沸き起ころうとしている。

 なにかとてつもないものに支配される……。

 

 なんだ──?

 

「一滴残らず、飲むんだ──」

 

 ロウが言った。

 

「声と口の凍結を解きます……」

 

 エリカだ。

 魔道が再び放出されて、首から上が自由になった。

 だが、自由になったのは首から上の肉体だけだ。

 抵抗しようという意思は戻らない。

 なぜか、この男に逆らって逃亡しようという気持ちにならない……。

 

 ぞっとした。

 支配されている……?

 自分の意思がなくなっている?

 

 その証拠に、口の中にはたったいま放出されたばかりの精があったが、ロウの言葉に慌てたように舌が動いて、その精を喉の奥に送り込んでいる。

 すると、余計に男の支配が強くなるのを感じた。

 

「抵抗心を強くするな──。心が沈んで本当に自分でなくなるぞ。俺の淫魔力による支配は強すぎるんだ。おかしな抵抗をすると心が潰れる。抵抗するな。受け入れろ。抵抗しようともがいても廃人になるだけだ」

 

 ロウ……いや、ご主人様がそう言った。

 抵抗してはならない……。

 その優しい言葉にブルドの心に愉悦が走る。

 

「て、抵抗しません……」

 

 そう口にしたとき、全身に強い快感が迸った。

 支配を受け入れる……。

 それは、なんという甘美さだろう……。

 素晴らしい幸福感だ……。

 たった一瞬前、ブルドはその支配を恐怖したと思う。

 いまはなぜ、ご主人様に支配されるという快感を拒もうと考えたのか理解できない。

 

「ブルド、もう一度、俺の精を飲め──」

 

 ご主人様が言った。

 

 その股間には性器がそそり勃っている。

 さっき精を出したばかりだというのにもう逞しくなっている。

 再び、口の中にご主人様の一物が捻じ込まれた。

 ブルドは夢中になって、その愛おしい性器を舐め吸った。

 全身に強い快感が走る。

 ぞくぞくとずるような戦慄だ。

 これまでに感じたことのないような愉悦が迸る。

 だが、今度も呆気なく精が放たれてしまった。

 ブルドに失望感が走る。

 せめてものと思い、今度も一滴残らず精を飲んだ。

 

「エリカ、もういい。金縛りを解除しろ──。もう、完全に支配した。大丈夫だ」

 

 ご主人様が言い、エリカが魔道でブルドの身体の拘束を解いたのがわかった。

 

「ブルド、ドラクスの毒を知っているな。お前が調合したもののはずだ?」

 

 ご主人様が訊ねた。

 

「はい──。ここにもあります」

 

 ブルドはコゼによって脱がされた服に手を伸ばした。

 上衣の隠しポケットに小さな瓶があり、そこにニーナを中毒にさせたドラクスの毒が隠してある。ドルニカ夫人からトーイを捕まえるときに、ニーナと同じようにその魔道薬で中毒にしろと命じられていたので、持ってきていたのだ。

 

「油剤だな? ちょうどいい。自分の股間に塗れ──。それによって、支配したお前の身体を通じて、俺にもそれがどういうものか感じることができるはずだ」

 

 ご主人様が言った。

 ブルドは驚愕した。

 

「そ、それはできません。ドラクスの毒は一度塗れば、死ぬまで中毒から解放されることはない劇薬です。定期的に塗らなければドラクスの薬が切れて、発狂するような苦しみを味わうことになるのです」

 

 ブルドは訴えた。

 

「知ったことか──。そんな薬をお前たちは、残酷にもニーナに与えたのだろうが──。いいから塗りたくれ──。そうすれば、淫魔の力で俺はそれでドラクスの毒の成分がわかるんだ。おそらく、そのドラクスの薬物効果も俺は支配できるようになると思う」

 

 ご主人様が言った。

 

「で、でも、これは強力な媚薬なのです。塗れば、もうまともな感情ではいられません。誰かとセックスをしたくてたまらなくなるのです」

 

「お前は薬を調合できるんだろう? いくらでも作れ。朝から晩まで、セックスがしたくなったら、お前の女主人から男奴隷でも借りればいいだろう。その残酷な薬をお前は何人に使った――」

 

 ご主人様が怒鳴った。

 ぞっとするような冷たい声だった。

 それ以上逆らうことは不可能だ。

 いずれにしても、ブルドはご主人様の命令に従いたがっている。

 ブルドの指は瓶の栓を開けて、たっぷりとドラクスの毒を股間に塗りたくり始めた。

 

「ああ……」

 

 ブルドは怖ろしくなった。

 これを塗ればどうなるか、ブルドには知りすぎている。

 しかし、ブルドの手は、それにお構いなく薬を塗り足し続けていた。

 すぐに、人に与えていい許容量を遥かに超えた。

 途中でそれを訴えたが、まったく聞いてくれない。全部塗れと言われただけだ。

 

「……成程……。わかってきた……。もう少し、苦しみ出すくらいに効いてくれば、もっとわかると思う……。大丈夫だ。これで俺にもドラクスの力が使えるはずだ。なんとかなりそうだ……」

 

 ご主人様が言っている。

 やがて、すべての薬がブルドの股間に詰め込むように塗り込められた。

 

「さて、どのくらいで苦しくなるんだ? とりあえず、俺たちの隠れ家に行くぞ、ブルド。その大きな袋に入れ。裸で歩きたければそれでもいいがな」

 

 ご主人様が嘲笑うような口調で言った。

 いつの間に準備していたのか、人が入れるような麻袋がブルドの前に放り投げられた。

 もちろん、すぐにその通りにしようとした。

 

 だが、すでに薬の影響が始まっている。

 淫情への途方もない餓えだ。

 苦しい……。

 そして、身体の強烈な火照りも襲ってきた。

 熱いのだ……。

 身体が……。

 しかも、手が震えて袋が掴めない。

 いや、全身が震える……。

 

 ブルドは恐怖した。

 やはり、許容量を超えすぎたのだ。

 これでは、新たに薬を塗っても苦痛は去らない……。

 そして、欲しい……。

 股間が焼ける。

 少しもじっとできない……。

 

「苦しくなってきたな、ブルド? おかげで薬の成分がもっとわかってきた……。エリカ、やはり、もう一度、声を消しておけ。袋の中で自慰でもやりそうだ……。ブルド、構わんぞ。袋に入ったら股間を弄っていい。それこそ、サルのようにやるといい。屋敷に乗り込むのは夜だ。それまでは狂ったように、自慰でもなんでもやれ。お前なんかを犯してくれる者は、俺たちの中にはいないからな」

 

 ご主人様が言った。

 すぐに、エリカの魔道で再び声が封鎖されたのがわかった。

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