【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「そういえば、お前、俺の能力を見抜いたようことを言ってたなあ。あれって、なんだ?」
一郎は憎々し気に一郎を睨んでいるユイナを見下ろしながら、思い出して訊ねた。
地下牢で最初に話したとき、ユイナは一郎が魔眼保持者であり、淫魔師であることをしっかりと見抜いてみせたのだ。
あれはなんだったのだろう。
「えっ、あれのこと? まあ、鑑定術ね……。わかるわよ……。あんたって、タナカ・イチロウっていうんでしょう? いまは、ロウ=ボルグって名も持ってんの? 淫魔師、魔眼保持者、奴隷保持者、冒険者、貴族……。ええっ、子爵に、王妃相談役? なんかいっぱい見えるわね。とにかく奴隷女を傍に侍らして、ご主人様気取り? 淫魔師って、精液で女を支配して奴隷にするんでしょう? 趣味悪いわねえ。そして、最低……」
ユイナがけらけらと笑った。
驚いたが、確かに本物だ。
この世界にやってきて、一郎はただの一度も、前の世界の名前など口走ったことはない。ましてや、苗字など口にしたこともないと思う。
それがわかったということは、ユイナが魔眼的な能力を持っているという証拠だ。
だが、ユイナは魔道を封印されているはずである。
つまりは、ユイナは、魔道を封印されながらも、なんらかの鑑定魔道……、しかも、かなりの上級の魔道を遣えるということだ。
一郎は魔道は疎いが、鑑定術は相当の上級魔道に分類されていた記憶がある。
しかし、そのとき、隣で金属音が鳴ったと思った。
「また、ロウ様の悪口を言ったわね、ユイナ……」
エリカだ。
驚いたことに、剣を抜いてユイナの喉に突きつけている。
「うわっ、ひいっ、エ、エリカさん、い、いまのは……、そのう……」
ユイナも真っ蒼になっていた。
「死になさい……。イライジャには悪いけど、もう我慢できないわ……」
エリカの身体に殺気がこもったのがわかった。
これは本気か……。
一郎は慌てて、身体を割り込ませて、剣を収めさせる。
「エリカ、こいつは、口が悪いだけだ。いちいち過激な反応するな。きりがない。それに、ユイナを堕とすのは俺の愉しみだ。俺の愉しみを奪うなよ」
一郎は、笑ってエリカをたしなめた。
しかし、エリカは、一郎がユイナを庇ったかたちになったことに不満そうだ。
本当に短気な気性だ。
「あ、あたしも、この人、嫌いです──」
すると、今度はミウも声をあげた。
視線を向けると、顔を真っ赤にして、ユイナのことを睨みつけている。
温厚なミウだが、ミウもまた、ユイナの一郎に対する態度に腹をたててしまったようだ。
一郎は嘆息した。
「なによ、奴隷娘」
ユイナがミウに言い返した。
「奴隷娘?」
「こいつの奴隷なんでしょう? まあ、呆れた。あんたって、小さいと思ったけど、本当にまだ十一歳なの? それでこいつとセックス? 呆れた淫乱ねえ。この男も大概だけどね……。ええっと……、魔道遣いでもあるけど、見習い巫女でもあるのね……。えっ、ちょっと待って、見習いとはいえ、巫女を奴隷に? あんた、なにしてんのよ?」
また、鑑定術かなにかで、ミウのことを調べたようだ。
ミウは奴隷ではないが、一郎が淫魔術で支配を刻んだ女たちは、普通の魔道における鑑定術を遣うと、なぜか「奴隷」と鑑定されてしまうらしいのだ。
そういえば、以前、イットの持ち主だったアンドレも、鑑定術を使ったことで、エリカたちを奴隷身分だと誤認していたのを思い出した。
「あたしは、ロウ様の性奴隷です。そのことを誇りに思っています。やっとそうしてもらえたんです──。ねえ、ロウ様、あたしは、この人がロウ様の性奴隷になるのは反対です」
ミウが強い口調で言った。
「わたしは性奴隷になんてならないわよ、小娘――」
ユイナがミウを怒鳴った。
ミウがたじろいだ反応をする。
それはともかく、もう性奴隷なんだけどなと思った……。
一郎は苦笑した。
そして、試しにスクルドを指し示した。
「あのスクルドは、どう鑑定する、ユイナ?」
「あの変な女…? スクルド……本名はスクルズ? 魔道遣い……。えっ、あいつも奴隷……? ああ、だけど、それだけね……。なんなのあいつ?」
ユイナは怪訝な表情になった。
やはり、奴隷として認識するのか……。
しかし、一郎の魔眼のように、元神殿長などの情報までは読み取ってない……。
じゃあ、魔眼ではなく、鑑定術とやらか?
「……もしかして、
そのとき、黙って見守っていたスクルドが声をあげた。
ユイナの両方の瞳をじっと覗き込むようにしている。
「眼球紋?」
一郎は首を傾げた。
聞いたことのない言葉だったが、エリカとブルイネンには、それでわかったようだ。ふたりとも、はっとした表情でユイナの目を覗き込んでいる。
「眼球紋とはなんですか、スクルド様?」
ミウもきょとんとしている。
「眼球紋というのは、伝承の魔道技術よ……? でも、ずっと失われていた過去の技術じゃあ……。あら、もしかして、あなたは自分の身体を実験台にしたのですか?」
スクルドがさらに言った。
よくわからないが、スクルドはとても驚いているようだ。
「そんなこといいじゃないのよ、奴隷女」
ユイナは困惑気味にスクルドから目を逸らしている。
「身体を人体実験に? それって、魔道禁忌じゃないのよ、ユイナ」
エリカが血相変えた口調で横から怒鳴った。
「自分で自分の身体を実験台に使ったんですよ、エリカさん──。禁忌には当たりません」
ユイナがぴしゃりと言った。
「おい、眼球紋ってなんだ?」
一郎は口を挟んだ。
すると、ユイナが、そんなことも知らないのかと、いかにも、馬鹿にしたように鼻を鳴らして一郎を見たと思った。
すると、またがしゃりと剣を鳴らして、エリカがユイナを睨む。
ユイナは慌てたように、一郎から目を離した。
一郎はくすりと笑ってしまった。
「眼球紋というのは、古代時代の魔道技術と言われています……」
一郎の質問に、スクルドが語りだした。
それによれば、つまりは、魔道の発動させる紋様を眼球に刻むという技術のようだ。
ただし、この時代では、古い時代の紋様による魔道発生の技術はあまり受け継がれておらず、もっぱら、「隷属魔道」や「魔道封印」などに紋様技術が残っているだけなのだそうだ。
特徴であるのは、一般的な紋様魔道のように、肌に刻むやり方だと、高位魔道遣いであれば、紋様を刻んでいることを一発で見破るが、眼球紋だと目を閉じてしまえば、発覚することはないということだそうだ。
ただ、危険であり、失敗すれば、回復術でも治療のできない失明をする危険もあるとのことだ。
ユイナのやったことは、その紛失されたはずの魔道紋様を幾つか復活させたというだけでなく、その中でももっとも難しいと言われている眼球に刻む技を発見したということなのだという。
しかも、研究段階ではなく、すでに実用段階として……。
「眼球紋をお前が復活させたのか? 本当に? お前って、何歳なのだ? その若さで?」
ブルイネンは目を丸くしている。
よくわからないが、どうやら、ユイナは大変なことをやったらしい。
「十八ですけど……。ええっ、ブルイネン様も奴隷?」
ユイナがびっくりした声をあげた。
ユイナは、またもや、眼に刻んでいる眼球紋とやらを遣って、鑑定術を遣ったのだろう。
そして、さっき、ブルイネンに淫魔師で性奴隷の刻みをした。だから、やはり「奴隷」の鑑定が出たのだと思う。
「そもそも、どうやって眼球に刻めるほどに、紋様を小さくしたのだ……。いや、それも興味深いが、伝承では、眼球紋は、小さいので、ごく少量の自然にある魔力を遣えば発動でき、ほとんど魔力を使用しないというのは本当なのか? その技術を遣えば、高性能の魔道具を魔道遣い以外でも容易に扱えるようになるとか……。いや、お前には、魔道封じの紋章が刻まれていたな。それでも術を駆使できるのだから、すでに、実証しているということか……」
ブルイネンはしきりに感嘆している。
一郎には、さっぱりと理解できないが、眼球紋という技術であれば、ユイナが魔道を封じられているにも関わらず、鑑定術という上級魔道を駆使した理由が説明つくのだろう。
そうとわかれば、一郎はユイナの目に備わる能力を探るために精神を集中させた。
魔眼は、漠然と人物のステータスに焦点を当てる能力なので、ユイナが目に刻んでいた紋様までは探知できなかったが、ユイナはすでに一郎の性奴隷だ。
自分の性奴隷の能力を探知することは、淫魔術でできる。
「……鑑定術……。反射術……。それと……
一郎はユイナの眼に淫魔術を駆使することによって、頭に浮かんだ言葉を口にした。
「あ、あんたって……」
今度はユイナが目を丸くした。
眼球紋に刻んでいる紋様の内容を一郎に見破られるとは思わなかったのだろう。
「反射術? 反射術も──。それに、欺騙術まで? 全部、そこに刻んでいるのか。なんという技術だ。もう一度、訊ねるが、本当にお前の技術なのか?」
ブルイネンがまた感嘆したような声をあげる。
一郎には、その魔道が正確にはどんな能力なのか知らないし、その技術の凄さにもわからないが、言葉の響きだけで想像するに、魔道を跳ね返したり、なにかを誤魔化したりする魔道なのだろう。
「本当ですね。素晴らしい技術……」
スクルドも珍しく興奮したような顔をしている。
それだけの魔道技術ということなのだろう。
一郎も少しは感心した。
一方で、称賛されるのは慣れてないのか、ユイナは困ったような、喜ぶような、ちょっと複雑な顔をしている。
可愛いものだ。
「……もしかして、その紋を駆使して、パリスの魔道の隷属魔道を跳ね返し、逆に奴隷紋を刻まれているふりをして、本当は嘘がつけることを隠して、俺について、あることないこと、パリスに吹き込んだのか?」
一郎は言った。
ユイナは、なにも答えなかったが、ユイナの表情から、一郎の指摘が的中していることがわかった。
だが、パリスの魔道は、ハロンドールの王家の秘宝が破壊されてしまったくらいの強力なものだ。それをユイナの反射術が跳ね返したとしたら、ユイナの魔道技術は、それと同等の力があるということになる。
「いずれにしても、お前の眼球紋とやらは、パリスの闇魔道まで反射したんだな?」
「そうよ――。パリスだけじゃなくて、ダルカンのもね──。寄ってたかって、わたしを隷属しようとしたわ。だけど、ずっとこれで誤魔化してきたのよ」
ユイナは怒鳴るように答えた。
ダルカン……?
「ダルカン? ダルカンって、もしかして、あの?」
エリカは、なにかを思い出したようだったが、一郎には記憶はない。ただ、名前だけは耳にしたことがあるような気がした……。
「わたしの里の元里長だったダルカンよ、そいつは、パリスの部下だったのよ。なんか突然にパリスと仲良さそうにやってきて、わたしを犯してもいったわ……。あいつ、里長だったこともあるくせに、わたしのことを淫情丸出しで犯したのよ。あんな下衆男だったなんて……」
ユイナが鼻を鳴らした。
ああ、あのダルカンか……と思ったが、パリスと親しいとはちょっと意外だった。
つまりは、あの魔道石騒動も、もしかしたら、パリスが糸を引いていた事件だったのだろうか。
「ダルカンって、生きていたの? 額に刺青をされて、里を追放されたんじゃあ……」
エリカが言った。
そういえば、そんな判決だったと思う。
エルフ族にとっては、顔に消えない刺青をされるということは、死よりも重い罪であり、それよりも、普通は自裁を選ぶものだと、あのとき教えられたものだ。
実際、ダルカンと同じ判決を受けたダルカンの部下たちは全員が自殺を選び、エルフ族としての最後の矜持は守ったのだ。
しかし、ダルカンひとりは、刺青を受け入れ、どこかに消え去った。
そのダルカンが生きていたのか……。
「生きていましたよ、エリカさん。それどころか、刺青なんて、どこにもなかったし……」
ユイナが言った。
「そうか……。まあいい。じゃあ、話を戻すと、いずれにしても、ユイナは、眼球に刻んでいた魔道紋とやらで隷属にはかからず、呪術を反射して、それにも関わらず、パリスには奴隷化していると思わせてたということなんだな」
「そうよ。敬いなさい。もっとも、パリスには完全にではなかったけどね。多少の影響はあったわね。でも、そういえば、あんたこそ、不思議なことして、パリスの呪術を跳ね返したじゃない。あれこそ、なんなの? あのとき、パリスの死の呪術は間違いなく、女ふたりだけじゃなくて、あんたに最も強く発動してたわ」
ユイナが言った。
まあ、あれは、王家の秘宝をたまたま手につかんだ結果であり、もう同じことはできないと思うけど、それを説明する必要はないだろう。
「ならば、俺もまた、すごいということだ。ところで、そろそろ、俺の靴を舐めたくなったか? 靴の裏を舐めさせてやるぞ」
一郎は革靴の底をユイナに向けた。
ユイナの顔が怒りで真っ赤になる。
「こ、この鬼畜──。あ、あんたが何者だろうと、あたしには、支配術は効かないのよ。淫魔師だかなんだか知らないけど、わたしを支配するのは無理よ──。わ、わかったら、この首輪を外しなさいって──」
ユイナが怒鳴った。
一郎はにやりと笑った。
「……そうか……。眼球に反射術を刻んでいるんだもんな。パリスやダルカンの隷属術だって跳ね返したんだしな」
一郎は、淫魔術を発動させて、ユイナの身体を硬直させる。
そして、おもむろにユイナに乳房に手を伸ばした。
「なっ、なによ……。あ、あれ? 身体が──」
一郎の無遠慮な手を避けようとして、ユイナは自分の身体が動かなくなっていることに気がついたようだ。
眼を白黒している。
「自分で自分を鑑定してみろ。どういう結果が出るかな?」
一郎はユイナが裸身に覆っているマントに手を入れて、乳房を片手で揉んだ。
「あっ、はうっ」
ユイナの反応は劇的なほどだった。
一郎がユイナの胸に触った途端に、まるで電流にでも打たれたかのように、ぶるぶると震えて、激しく悶えだしたのだ。
気丈に振る舞っていたが、実際には『絶頂封じの首輪』に追い詰められて、狂おしいばかりの欲情のうねりの中にいたはずだ。
一郎に胸を愛撫されることによって、火をつけ直され、まるで高熱にうなされたように、真っ赤に染まった顔を左右に振り、すすり泣きのような嘉悦の声をあげだす。
「はあ、ああ、ああ……。な、なによ……。か、身体が……う、動かない……」
一郎はあっという間に真っ赤になった性感帯の赤いもやを転々と刺激し、ユイナの顔がまるで溺れ死にでもしそうな苦悶の表情になったところで、さっと手を引き揚げた。
同時に淫魔術による金縛りも解放する。
「あっ」
一郎の手が去ると、ユイナは一瞬呆けたようになり、そして、強い視線で一郎を睨んできた。
「い、いま、わたしになにをしたの……? な、なにも言わなかった。命令さえもしなかったのに……」
隷属魔道は、相手を奴隷にして、刃向かうことや、命令に逆らうことをできなくする魔道だ。
だが、命令には、相手が理解できる「言葉」を必要とする。
一郎の淫魔術は、そんな言葉なしに、女のすべてを支配してしまう。
しかし、淫魔術のことをよく知らないユイナには、なにがなんだか、よくわからなかったと思う。
「自分を鑑定をしてみろよ」
一郎はもう一度言った。
まだ欲情のうねりに襲われて、肩で息をしているユイナだったが、それでも自分の手をかざして、凝視する仕草をする。
「あれえ? ど、奴隷? わたしって……。わたしも奴隷なの──?」
ユイナが悲鳴をあげた。
一郎の性支配が完了しているので、ユイナが鑑定術を使えば、これまでの例により、「奴隷」と鑑定されてしまうはずだ。
ユイナは目を丸くしている。
「そういうことだ……。自分の立場がわかったら、俺の靴を舐めさせてくれと土下座するんだな」
ユイナは呆然となっている。
一郎はその姿に、声をあげて笑ってしまった。
「せ、性奴隷? も、もう? せ、性奴隷って……性奴隷……性奴隷って……」
ふと見ると、なぜかユイナの顔が真っ赤だ。
しかし、なんだか変な雰囲気だ。
そのときだった。
コゼが戻ってくる気配を感じたのだ。
水晶宮からの逃亡のときの地下洞窟では、すぐそばまでコゼやエリカがやって来ても、まったく一郎の淫魔術には反応しなかったが、やはり、あのときは一郎は淫気切れであり、淫魔術が停止状態だったのだろう。
本来であれば、一郎には、自分の女たちがどこにいるかをある程度知ることができる。
いまも、姿が見えない状況で、コゼの接近がわかった。
どうやら、コゼひとりであり、イットはいないようだ。
「コゼには、ここで五人で愛し合ったことは黙っていような。それがわかるとうるさいかもしれない」
一郎が言うと、四人が真剣な顔で大きく頷いた。
果たして、すぐに遠くの樹木の影から、駆け戻ってくるコゼの姿が現われた。
そして、あっという間に、ここまでやって来る。
「ご主人様、戻りました。オーク族の小さな群れがいましたよ……。それはともかく、もう身体はいいんですか?」
コゼが一郎の前に立って言った。
かなり速く走っていたと思うが、息切れもしていない。
一郎は、そのことに感心した。
また、コゼたちがオーク族を追いかけるために去ったとき、一郎は自分で立つこともできないほどに弱っていた。
いまは、自分の足で立っているので、安心している様子だ。
「休んでいたら、元気になった。心配かけたな」
一郎はコゼの頭を軽く撫ぜた。
コゼが嬉しそうな表情になる。
「ところで、そのオーク族は?」
一郎は訊ねた。
「少し離れた場所にある洞窟の前に、さっきの二匹を含めた五匹ほどがいました。ひとつの群れみたいです。全部雌ですけど。いまは、イットが見張っています」
「五匹の雌のオークの群れなんだな?」
一郎は頷いた。
冒険者としてのクエストで、何度かオーク族は目にしたことがある。
人間の眼からは、雄も雌もわからない醜悪な顔をしているのだが、雌オークには乳房があるし、また、人間などから奪った鎧などを身に着けている個体もいるが、本来の彼らには服を着るという習慣はないので、股間の性器が丸出しで雄雌の判定は容易なのだ。
また、雄オークは危険であり、特に人族の女体に対しては、相手が人間族であろうと、エルフ族であろうと狂ったような欲情を示すとされている。
オーク族の雄の集団に凌辱され、犯された挙句に腹を裂かれて死んだという女の話は、枚挙にいとまがない。
もっとも、腹を裂くのは、人族の女を襲った雄オークじゃない。
オーク族が人族の女を犯すのは、自分の子を産ませるためであり、人族に比して、ずっと強い繁殖力のあるオーク族の精は、たった一度の性交で簡単に妊娠をさせ、さらに、わずか一箇月ほどで臨月ほどに腹が膨らみ、子オークが母体の腹を裂いて出て来るということなのだ。
まあ、この世界の伝承であり、本当か、嘘かはわからない。
オーク族に犯された人族の女は、ほぼ間違いなく、自害してしまうからだ。
以前、一郎たちが受けたことのあるオーク狩りのクエストも、村を襲って人族を虐殺し、さらに数名の若い女を連れ去ったオーク族の集団から、その少女たちを奪い返すというクエストだった。
いろいろあったが、オーク族は全滅し、少女たちも身体が無傷とはいえなかったが、自殺もさせずに、無事に救出できた。
あれも、一郎たちの冒険者としての名をあげたクエストのひとつだった。
それはともかく、そんな雄オークに比べれば、雌オークは凌辱はしないので、雄よりは危険性は低いと言われたりもする。
もっとも、獲物を犯すのか、虐殺して食べるのかの違いなので、凶暴なことには変わりはない。
ただ、雌オークは、少なくとも腹が満ちているときには人は襲わず、腹がいっぱいでも人族の女がいれば襲いかかる雄オークは、やはり、雌オークよりもやはり危険かもしれない。
「それで、どうするんですか、ロウ様? オーク狩りをするんですか?」
エリカが口を挟んできた。
一郎は首を横に振った。
「狩りはしない。話し合いに行くだけだ」
一郎は真剣な表情で言った。
「オーク族と話し合い?」
言葉を返したのはエリカだが、そのエリカだけでなく、コゼを含め、周りの女たちがきょとんとしている。
「みんな行くぞ──。クグルスは、ゆっくりでいいから、ユイナを連れて来てくれ。いまの状態では一緒には歩けないかもしれないしね。その代わり、ユイナの身体を操る力をクグルスに渡しておく。多少、遊んでもいい」
「あ、あい」
クグルスがなぜかひきつったような声で返事した。
それで気がついたが、クグルスはいまだに、足を地面につけたままだ。
なにか不自然だな……。
まあいいか……。
それよりも、あのオークたちだ。
「ふ、ふざけないでよ」
一方で、ユイナが猛然と抗議する声が周囲に響く。
一郎は笑った。
さて、じゃあ、雌オークたちに会いに行くとするか――。
(第33話『淫魔師大復活』終わり、第34話『