※この作品はR-18です。

【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】   作:ドン・ドナシアン

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469 女王の姉君

「それって、アスカ様のことですか──?」

 

 エリカが悲鳴のような声をあげた。

 一郎とアスカの関係については、ほとんどの一郎の女は承知しており、たったいまのガドニエルの言葉には、全員が驚愕している。

 きょとんとしているのは、まだ事情をよく知らないイットくらいのものだ。

 ミウがイットに、一郎とエリカ、そして、アスカの対立について耳打ちしている。

 

「アスカ? ああ、いまは、そう名乗っているらしいですね。それで、アスカ城と呼ばれているのでしたっけ……? ともかく、姉はラザニエルといいます」

 

「ラザニエル……。ああ、神学校の歴史教育で耳にしたことがありますね……。しかし、もう百年以上前に、お亡くなりになられたのでは?」

 

 スクルドが横から口を挟んだ。

 

「死んでなどおりません。長く行方がわからなかっただけです。ですが、アスカ城の魔女こと、アスカという方が、ほかでもないラザニエルお姉様のことだということが最近になって判明したので」

 

「本当?」

 

 一郎は唖然とした。

 また、女たちも目を丸くしている。

 

「はい、ロウ様、ラザニエルお姉様こそ、わたしのような半端な者ではなく、エルフ族の女王になるべき素晴らしい女性でした」

 

 ガドニエルがきっぱりと言った。

 あのアスカが、エルフ族の女王家の血筋であり、ガドニエルの姉であって、本来はエルフ族の女王になるべき者であるなど、信じられないものがあるが、ガドニエルはある程度の確証を得ている感じだ。

 不確かな情報ではなく、確認している事実として、一郎にそれを告げている。

 

「あのアスカがこのナタルの森からいなくなったのは、どのくらい前のことなんだ、ガド?」

 

「約百年前です」

 

 ガドニエルは言った。

 かなり昔だ……。

 それにしても、だったら、ガドニエルもアスカも、実際の年齢は幾つなのだろうと思った。

 淫魔術でもよくわからなかったのだ。

 あるいは、そういうものを隠すのも、女王の血筋の能力なのかもしれない。

 

 ともかく、困ったことになったとちょっと思った。

 一郎は、女王の座は、ガドニエルの姉だという人に押しつけて、ガドニエルについては、ハロンドールに連れ帰るつもりだったのだ。

 しかし、その姉がアスカだとすれば、話は異なる。

 あのアスカが、ほんのちょっとでも、一郎に有利なことをするとは思えない。

 なによりも、アスカはあのパリスの囚われだった女であり、パリスの魂の欠片を宿されているはずだ。

 また、そのアスカは最近になって、そのパリスのところから逃亡して行方不明だ。

 これは複雑なことになったと思った。

 

「ね、ねえ、本当に彼女って、ガドニエル様なのですか……? あ、あのう……、ロウ、随分と親しそうだけど、どういうことなの?」

 

 イライジャが戸惑ったように、ガドニエルと一郎に交互に視線をやりながら言った。

 だが、ブルイネンも困惑の顔で話に口を挟んできた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。あ、あまりのことに、話についていけなくて……。ガドニエル様、ロウ殿と(つがい)の誓いをされたとおっしゃいましたか? まさか、本当のことではないですよね? いずれ、そのようなことをするかもしれないという約束をしたとかいう意味ですか……?」

 

「まあ、なにを言っているのです、ブルイネン。あなたには、わたしはロウ様に添いたいと、最初に告げてあったじゃないですか。ロウ様の許可をいただくと、すぐに誓いをさせていただきました。ロウ様もお認めくださり、すでに契約は成就しています。エルフ族女王にして、ナタルの女王としての誓いです。何者にも、もう覆せません」

 

「ガ、ガドニエル様──。ぞ、族長会議の認可もなく、そんな無体な……。水晶宮だって大混乱するに決まってます。そ、そんなあ──」

 

 ブルイネンが悲鳴をあげた。

 族長会議がなんだかよくわからないが、少なくとも非常に権威のある意思決定機関だというのだけは理解できる。

 エルフ族の女王であるガドニエルの婚姻など、もっとも重要な審議事項だったに違いない。

 やっぱり、その了解を得ることなく、“(つがい)の誓い”というのは、とんでもないことだったようだ。

 

(つがい)とは、そのような会議に関係ありません。魂の共鳴です。わたしは、ロウ様をひと目見て、このお方こそ生涯を尽くすお方と確信しました。魂が鳴ったのです。他人にとやかく、言われる筋合いはありません」

 

「そ、そんな、ガドニエル様──」

 

 ブルイネンがまたもや悲鳴をあげた。

 そのとき、ユイナが絶叫して泣き声をあげた。

 

「あついいい──。か、痒いいいいっ──。た、助けてええ──。も、もう罰はしっかりと受けたじゃないのよおお──。お願いだから、もう、おろしてよおお──」

 

 ふと見ると、ユイナの局部が蝋燭の蝋のやけどですごいことになっている。

 暴れるので、蝋が落ちまくっているのだ。

 一郎は淫魔術ですかさず、局部の治療を行った。

 しかし、これは親切じゃない。

 むしろ、苦痛は増大するはずだ。

 やけどをしてしまった肌に熱い蝋が垂れるよりも、真新しい無傷の肌に落ちる方が苦痛が強いに決まっている。

 

「クグルス、落ちた蝋を消してやれ。すでに落ちている垂蝋が覆いになって、熱さを半減してしまうからな」

 

「あいあいさあっ」

 

 クグルスが元気に返事をして、瞬時にユイナの局部がきれいになる。

 その局部に、ぷたぽたと蝋が落ちて、ユイナが絶叫した。

 

「こ、この鬼畜うう──。ばかあああ──」

 

 ユイナが涙を流した。

 

「ははは、でも、そのうちに、苛められるのが病みつきになるぞ。俺の女たちは、みんな、俺に責められるのが悪くないと言っている。ずっと飼ってやるからな。まあ、人間族の俺の方が寿命が短いから、俺が死んだときには奴隷を解放してやる。それまで、毎日、俺にいたぶられる生活だ。早く慣れろよ」

 

 一郎は笑って、下側からユイナの乳首を軽く擦ってやった。

 

「いひいいっ」

 

 ユイナが大きく身体を反応させ、またもや蝋が股間に垂れて、ユイナが絶叫した。

 軽くとはいっても、しっかりと淫魔術を駆使してのユイナの性感帯のもやを確認をしながらの愛撫だ。

 ユイナにとっては、飛び跳ねるくらいの突然の刺激だったはずだ。

 しかも、目が見えなくて、感度があがっている。

 だからついつい甲高い声をあげて、ぶるりと身体を動かしてしまったのだろう。

 そのため、蝋が大量に局部に向かって落下し、ユイナはまたもや泣き叫ぶ結果となったということだ。

 

「も、もう病みつきになっているかも……。おかしくなりそうなくらいに、変な感じよおお──。わあっ、なに言ってんのよ、わたし──。ち、違ううう──。や、病みつきになんてなってないい──。で、でも、あんたに苛められて、気持ちいいかもおお──。うわああ──。そんなことないい──。いや、あるう──」

 

 本音しか口のできない暗示にかかっているユイナは、一郎の鬼畜責めを感じていると告白してしまい、その羞恥に狼狽してのたうっている。

 一郎は笑ってしまった。

 

「そうか、苛められると愉しいのか? だったら、あとで追加の罰として、クリトリスの皮を切除してやろうか? そこに、俺以外には接触禁止の淫魔術の紋様を刻んでやる。毎日、毎日、死ぬように疼いても、自分じゃ自慰ができないから、俺に愛撫を強請るしかないというわけだ。自然に心からの俺の性奴隷になっていく」

 

「た、愉しみかも……わああああ──。そんなわけないいい──。だ、だけど、ものすごく怖いけど……。で、で、でも、あんたの性奴隷になるのは……悪くないかもおお──。ち、違ううう──。そんなこと思ってないい──。熱いいいいい、ひいいいっ」

 

 ユイナがぼろぼろと涙をこぼしだした。

 もっとも、本音の方を聞いていると、満更でもないのだろう。

 それにしても、騒がしい娘だ。

 

「クグルス、ちょっとばかり、込み入った話があるから、それまでユイナを遊んでいてくれ。身体のあちこちをくすぐってやるといい。そして、たまには治療してやけどを治してやれ。その方が却って苦しい」

 

「わかったよ、ご主人様──。じゃあ、たっぷりと遊ぼうな、尻娘。まずは、尻穴の周りを刷毛で掃くぞ。蝋燭の縁からご主人様の掻痒剤が漏れ出ているからな。痒いだろう」

 

 クグルスはすぐに自分の身体の半分くらいの刷毛を出現させて、蝋燭が挿入されているユイナのお尻の周りをそれで刺激し始めた。

 ユイナはクグルスに悪態をつきながら、絶叫して号泣している。

 しかし、ふと見ると、またもや、女たちが真っ赤な顔をして、身体をもじつかけている。

 特に、ガドニエルとスクルドなどは、自分では気がついていないかもしれないが、正座をして密着している股間をしきりに擦り合わせている。

 おそらく、自分が責められている気分になって、ぼうっとなっているのだろう。

 一郎は苦笑した。

 

「さて、ちょっとこっちに行こう。とにかく、ガド、話を聞かせてくれ」

 

 一郎は、気がそぞろな感じのガドニエルに声をかけた。

 

「えっ、話? 蝋燭ですか?」

 

「違う――」

 

 一郎は笑って、ガドニエルの手をとって引っ張り、ユイナとクグルスを残して奥側に全員で移動をした。

 ぞろぞろと女たちがついてくる。

 寝台みたいになっているマットの中心に一郎が座ると、女たちが争って密着するようにさっと取り囲んだ。

 それにしても、みんな我先に一郎に接しようとするので、すごく距離が近い。

 

 しかも、イライジャとブルイネンを除いて全裸であり、これだけで女酔いして、くらくら……いや、むらむらしてくる。

 

 淫魔術により女反応に敏感になっている一郎には、やって来たばかりのイライジャまでもが、この雰囲気に当てられて、淫情しかけているのがわかるのだ。

 ましてや、最初からいたエリカたちやガドニエルは、すでにかなりの愛液を股間からじっとりと漏らしてしまっている。

 この匂いだけで、一郎は酔ってしまいそうだ。

 そのまま乱交でもできそうなくらいである。

 

「……ところで、さっきのお話ですが、ロウ様の寿命は、エルフ族に比べて早くは尽きませんよ。わたしとの(つがい)になっていただけたのですから、わたしの寿命にロウ様が引っ張られることになります。失礼ながら、人間族のロウ様よりも、エルフ族の……しかも、わたしの血は強いですから、当然に(つがい)のロウ様は、わたしとともに、エルフ族並みの寿命を送っていただくことになります」

 

 最初に、ガドニエルが、あっけらかんとした口調で喋った。

 だが、その内容に一郎はびっくりした。

 

「なに?」

 

 思わず問い返す。

 

「いえ、ご主人様、そのとおりです。違う種族間で(つがい)の誓いをした場合は、強い種側の運命に引っ張られます。この場合は、ご主人様の寿命はエルフ族に引っ張られるのです。そういうものだと思ってください」

 

 スクルドが横から口を挟んだ。

 

「その通りです、ロウ様」

 

 さらに、エリカも言った。

 よくわからないが、(つがい)の誓いというのは、そういうものらしい。

 一郎は唖然としてしまった。

 

「ロウ様だけじゃないですよ。クロノスのロウ様が、ほかに(つがい)を持たれた場合は、多分、その女の方々も、大なり小なり、エルフ族女王の長命の影響を受けることになります。みなさま、末永く仲良くいたしましょう」

 

 ガドニエルが満面の笑みを浮かべて言った。

 

「ま、待ってください。、ガドニエル様──。で、ですが、女王様の(つがい)というのは、少なくとも族長会議で認めてもらい、さらに、元老会議で議決を得ないと……。ああ、でも、すでに誓いをなされたのか……。もうどうしたらしいのか……」

 

 ブルイネンが途方に暮れた様子で文字通り頭を抱えている。

 

「大した問題はないでしょう。ラザニエルお姉様が代わりに女王になればいいのですから……。それよりも、あなたも、(つがい)にしていただければどうなのです、ブルイネン? ロウ様に、あなたもお願いしてみれば?」

 

 ガドニエルは気楽なものだ。

 ブルイネンは、きっと顔をあげてガドニエルを睨みつけた。

 

「そんな、呑気な──。それよりも、これが、どういうことかおわかりにならないのですか──? 畏れながら、ロウ様には失礼なことかもしれませんが、なにがあろうとも、代表的なエルフ族の家長たちや各里の長たちが集まる族長会議で、エルフ族女王の(つがい)に、人間族のお方を認めるわけがありません。でも、すでに(つがい)の誓いをなされたということは、女王自ら、エルフ族を裏切ったとみなされても……」

 

「なんとでも、批判すればいいのです。元より覚悟の上なのですから……。わたしは、なにがあってもロウ様に添い遂げます。ロウ様に調教していただいて、立派な雌犬になるのです……」

 

 ガドニエルがきっぱりと言った。

 それにしても、口調は女王然としているのに、内容は呆れるほどに軽い。

 一郎は、噴き出した。

 

「それよりも、ロウ様……。先ほど、あの褐色エルフの娘に仰っていた、あれ……。股間にロウ様の紋様を刻んで、毎日、いたぶられるという……あれです……。まさに、わたしのような雌犬に相応しいと思いますが……。いかがでしょうか……。ロウ様がお望みなら、いつでも……」

 

 ガドニエルがうっとりとした表情で一郎にしだれかかってきた。

 なんだか、すでに妄想状態になっている様子だ。

 眼が虚ろで、口元がにやけてしまっている。

 それでも恐ろしいほどの美貌なのだから、なかなかのものである。

 

「そうだな。いつでも魔道でも淫魔術でも包皮は回復できるしな。だけど、皮を切断すれば、敏感になりすぎて、下着もつけれないらしいぞ。まあ、ガドに相応しいか」

 

 一郎はガドニエルの頭を撫ぜながら笑った。

 ガドニエルがぱっと顔を破顔させて、ぶんぶんと激しく顔を上下に動かす。

 

「あら、だったら、わたしもお願いします。そのために、ここまで来たのですわ」

 

 すると、スクルドまで抱きついてきた。反対側からは、ミウまで期待するように視線をぶつけてくる。

 

「淫乱者たちだな」

 

 一郎はほくそ笑んだ。

 

「待ちなさいよ、ロウ──。そういう話じゃないでしょう」

 

 そのとき、イライジャが呆れたように口を挟んだ。

 そして、ガドニエルの顔を覗き込む仕草をする。

 すると、エリカが口を開いた。

 

「ガドニエル様、もしも、本当にガドニエル様のお姉様という方が、アスカ様なのであれば、絶対に、わたしたちの申し出には従ってもらえません。それどころか、おそらく、わたしやロウ様を見つけしだいに激怒して、殺そうとすると思います」

 

 ガドニエルが小首を傾げたので、エリカがさらに説明をして、一郎が外界人であり、アスカによって召喚により異世界から連れ来られたこと。そして、エリカを連れて、一郎が逃亡したことで、アスカが激怒し、一度は殺されそうになり、一郎が返り討ちにはしたものの、いまだに一郎のことを許していないはずだと説明した。

 しかし、ガドニエルはにっこりと微笑んだ。

 

「アスカ城におられるラザニエルお姉様の悪評のことは承知していますが、なにか事情がおありなのだと思うし、ロウ様のことが事実だとしても、ちゃんとご説明すれば、わかっていただけるのは間違いありません。心配はいりませんよ。なにしろ、ラザニエルお姉様は、とてもお優しくて、慈悲深く、それでいて、気高く、とにかく、立派な方なのです。問題ありません。わたしたちの気持ちもわかってくださいます」

 

 優しくて、慈悲深くて、気高く、立派なアスカなど、誰のことかと思ったが、ガドニエルは、そう思い込んでいるようだ。

 それはいいとして、これで一郎は、ガドニエルを以前調教した人物が誰であるかについて、やっと見当がついた。

 アスカに決まっている。

 それを口にすると、ガドニエルは顔を照れたように顔を真っ赤にした。

 

「まあ、ロウ様に、昔のことを知られるのは、とても恥ずかしいですね。そうですね。わたしもラザニエルお姉様も、魔道の修行を一緒にさせてもらった仲ですから……。ええ、確かに、お姉様は、わたしのご主人様でした……。あっ、でも、魔道の修行のことだけのことですよ。お姉様は、わたしのように、ちょっと淫乱すぎるところもなかったし、修行のとき以外には、きちんとしておられる方でしたし」

 

 ガドニエルが赤面したまま、懐かしそうに話した。

 一郎はますます混乱した。 

 百年前のこととはいえ、淫乱でないなどと言われては、やっぱりアスカのこととは思えない。

 あの女は淫乱を絵にかいたような女だった。

 三日ほどしかいなかったが、エリカ以外にも、性の相手をさせる男奴隷はたくさんいた気配だった。

 

 それはともかく、魔道の修行というのが、実際には淫靡な性行為に近いものだというのは、スクルズからこっそりと教えてもらったことがある。

 なぜか、この世界の魔道力というのは、淫乱であればあるほど、能力があがるため、修行の秘法と称して、神官にしろ、魔道修行に励む民間の者にしろ、高位魔道者になればなるほど、淫靡な同性愛に励むものらしい。

 

 同性愛であるのは、異性間だと恋愛に発展して、面倒事になりやすいからだそうだ。特に神殿界では、そうらしい。

 スクルズも、ウルズ、ベルズ、ノルズという女たちと、修行時代の同性愛の関係だった。

 ミウについても、魔道力を安定させるため、スクルズは性欲が活発になるように、ミウの幼い身体を愛撫や媚薬や淫具で始終刺激をしていたと言っていた。

 高位魔道をも有するエルフ族女王家の姉妹だったというガドニエルとアスカも、そんな関係だったというのは納得できる。 

 

「まあ、信じられないけど、あのアスカがガドのお姉さんのラザニエルという人物と同一人物だというのは納得しよう。だけど、おそらく、ガドの知っているお姉さんとは、もうすっかりと人が変わっていると思うよ。さっき聞いたけど、もう百年前のことだしね。人が変わるには十分な歳月さ」

 

 一郎は言った。

 しかし、ガドニエルは首を横に振った。

 

「ロウ様のお言葉ですが、ラザニエルお姉様に限って、そんなことがあるわけがありません。悪い評判など、おそらく、意図的に工作をされた醜聞です。お姉様は利用されているだけなんです」

 

 ガドニエルは言い切った。

 一郎は、アスカがパリスの傀儡だったとしても、ガドニエルが口にするように、気高く立派な人物だとは夢にも思わないが、アスカの悪い評判がわざと作られたかもしれないというのは、そうかもしれないと考えた。

 

「……でも、アスカ様って、いま行方不明なのでは……」

 

 エリカが思い出すように言った。パリスに最初に捕らえられたときに、エリカは一郎とともに、その情報に接している。無論、パリスが偽情報を伝えた可能性があるが、あれはそんなかんじではなかった。

 

「えっ、行方不明? お姉さまがですか?」

 

「どうも、そうらしい」

 

 一郎は頷いた。

 そして、パリスのことと、パリスが口にしていたアスカに関することを伝えた。

 また、褐色エルフの里で死んだピエールという傀儡(くぐつ)族の魔族とやらは、パリスこそ中心人物であり、アスカなど、ただの操り人形に過ぎないということを口にしていた。

 一郎はそれらを思い出しながら、ガドニエルに告げていくと、ガドニエルはぱっと顔を輝かせた。

 

「ああ、やっぱりそうだったのですね。やっぱり、お姉様は悪人ではなかったのですね。よかった。では、あとはお姉様を見つけるだけのことです……。では、ブルイネン、お前の仕事はお姉様を探しだして連れてくることです。よいですね」

 

「は、はい……」

 

 ブルイネンは完全に当惑している感じだ。

 

「でも、これですべて解決ですね。以前、ノルズという人間族の女がイムドリス宮に現れたことがあるのです。すべての悪の根源は、三公国の旧宗主家である皇帝一族だと、彼女は言っていました。きっと、お姉様は、その陰謀に巻き込まれていただけだったのでしょう──。可哀想なお姉様」

 

 ガドニエルは感極まったように声をあげた。

 首謀者は皇帝家?

 なんか、途方もなく大きな話になっているが……。

 もしかして、パリスは、その皇帝家にまつわる男なのか……?

 さらに、そういえば、ユイナが耳にしたことや、パリスが口走ったことが確かなら、アスカはすでに逃亡中だ。

 しかし、それよりも、一郎はちょっとびっくりしたことがある。

 ノルズの名が出たことだ。

 そういえば、あのパリスもノルズの名をなぜか口にしていた。

 

「い、いま、ノルズといいましたか? どこで? ノルズはなにをしていたのです。生きているのですか? 教えてください、ガドさん――」

 

 すると、スクルドが興奮したように、気色ばんで言った。

 ノルズは、スクルズたちを巻き込んだ事件で首謀者だった女であり、一郎が捕らえて、死の呪いが発生して死にかけていたところを一郎の淫魔術で助けた女だ。

 ただ、淫魔術で支配したにも関わらず、翌日には逃亡してしまった。

 一郎も気にかけていて、冒険者ギルドなどに頼んで、行方を探してもらっていたのだが……。

 だが、いまガドニエルが口にしたのが、そのノルズのことだとすれば、もしかして、もしかしてだが、一郎の敵であるアスカことを調べるために、ずっと、いろいろと動いてくれていたとか……?

 それとも偶然?

 

「あれ?」

 

 しかし、一郎は思わず声をあげていた。

 自分のステータスを覗いたのだ。

 

 

 

 “ロウ=ボルグ(田中一郎)

  人間族(外来人)、男

  …………

  …………

  支配女(32)

   エリカ

   コゼ

   シャングリア=モーリア

   ミランダ

   スクルド(スクルズ)

   ベルズ=ブロア

   ウルズ

   シャーラ=ポルト

   イザベラ=ハロンドール

  …………

  …………”

 

 

 

 ノルズの名がない……。いつの間に……?

 

 これが意味するのは……?

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