【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
ノルズの名がない……。
一郎は、一瞬呆然としてしまった。
「どうか……、しましたか?」
エリカが一郎の背中側から、一郎の顔を覗き込むようにしてきた。
ほかの女たちも、急に一郎の表情が変わったことに気がついたのか、訝し気な顔をしている。
「いや……」
しかし、どう説明をしていいか……。
一郎は迷った。
そもそも、ここにいる女たちのほとんどは、ノルズのことをあまり知らない。
まあ、スクルドは別だが……。
エリカとコゼについては、三巫女事件について記憶しているだろうが、ノルズについては、事件の首謀者であり、一郎が捕らえた翌日に逃亡してしまった得体の知れない女という印象しかないだろう。
一方で、スクルドにとっては、スクルドたちを罠に嵌めて殺そうとしたという相手であるとともに、神学校時代とやらで百合遊びをした同窓生だ。
エリカたち以上に複雑な感情を持っているのは間違いない。
そして、あんなことをされたのに、スクルドはノルズのことを憎からず思っているというのは、時折垣間見ることができる。
いずれにしても、一郎もまた、ずっとノルズのことを気にかけていた。
なにしろ、あのとき、ノルズに施された死の呪いという呪術を解くために、一郎はかなり深い淫魔術を一気にノルズに施していた。
一郎の淫魔術は、実際にはかなり強力だ。
女を洗脳のように操って抱いても愉しくないし、それよりも、じっくりと調教のような遊びをする方が一郎には性に合っているので、淫魔術そのもので女を支配するということはしないのだが、あのときには、ノルズにかけられた呪術を解呪するために仕方なくそうしたのだ。
だが、そのまま、かけた淫魔術を緩める機会のないまま逃亡されてしまった。
それが意外だった。
逃げられるわけがなかったはずだったからだ。
それでもいなくなった。
逃亡の手段がなかったというわけじゃない。
実際のところ、檻のような場所に監禁していたわけじゃないし、ノルズを一時的に預かっていたスクルズは、見張りの神殿兵をたてて、あてがった寝室で休ませていただけだという。
彼女は、ギルドの預かりものだった「変身リング」という誰にでも姿を変えられる魔道具を奪って、神殿から適当な神官に化けて、まんまと姿をくらませてしまったのだ。
しかし、一郎の強い淫魔術に支配されてしまっていた女が、自らの意思で一郎から離れるということはないはずなのだった。
それにもかかわらず、ノルズはいなくなった。
だから、とても印象に残っている。
つまりは、一郎の淫魔術に縛られながらも、ノルズは一郎から離れる強い動機があったということだ。
自分の本気の性支配が非常に強力だということは、一郎が一番よく知っているし、あのときノルズにかけっぱなしにしてしまった支配ともなると、常続的に精を受けなければ、激しい禁断症状さえ生じるようなものであるはずだ。
なんらかのかたちで淫魔術を解かない限り、それはいまでもノルズを悩ませているほどのものであると思う。
しかし、あれから一度もノルズは一郎の前に現れることなく、どこかで活動をしているという気配さえ表すこともない。
かといって、彼女が死んだということもない。
なにしろ、一郎自身のステータスには、性支配をしている女として、ずっとノルズの名があったのだ。
だから、ノルズは生きている。
それも確信していた。
考えられるのは、どこかに捕らわれているかもしれないということであり、そうであるならば、仮にも一郎の支配にある女であるし、助けられるものなら、助けたいと考えていた。
しかし、行方がわからないのだ。
どうしようもないでいた。
だが、もしも、ノルズがいまだに自分の意思で、一郎のところに戻らないというのであれば、彼女が淫魔術という強烈な支配に屈しないだけの強い精神力を持っているということか、あるいは、なにかの目的さえあれば、性的な身体の疼きなど忘れることのできる類いまれな行動力があるということになる。
そして、一郎はなんとなく、おそらく、その両方だろうと感じていた。
一度抱いたのだ。
接した時間は少ないものの、一郎には性支配した女のことが、なんとなくわかる。
彼女から伝わってきたのは、途方もなく強い心だった。
また、一郎は彼女が一郎の前に現れないことでも、彼女の強さを知ったような気にもなっていた。
そのノルズの名が支配のリストから消滅した……。
リストから名が消えるということは、女が死んだということか、それとも、性支配が消滅したということだ。
だが、一郎の淫魔術は、一郎自身がそうしない限り、そう簡単に外れるとも思えない。
つまりは……。
なによりも、スクルドにどう伝えるべきか……。
いや、こんな不確かなことなんて伝えられないか……。
「ねえ、本当にどうかしたのですか、ご主人様? ノルズのことがなにか?」
今度はコゼだ。
どうやら一郎は、しばらく黙りこくってしまっていたようだ。
「いや、ちょっと気になってね……。なあ、ガド、そのノルズはどんな女だった? できれば、もう少し詳しく知りたいんだが……。外見とか、話し方とか……」
一郎はガドニエルに視線を向けた。
だが、ガドニエルはちょっと考える仕草をする。
「……はあ……。でも、そんなに長く接したわけじゃないのですよ、ロウ様。そのノルズという人間族の女は、どういう手段かわからないのですが、不思議な手段で、イムドリス宮に突然に侵入してきて、先ほど申したように、すべての陰謀の根源が皇帝家であり、ナタルの森が危機だと告げて……。そうですねえ……。どんな外見かというと……」
ガドニエルがうる覚えだと言いながら、説明してくれた。
その風貌からすると、やはり、あのノルズと同一人物のような気がする。
一郎は、スクルドにも意見を訊ねた。
「断定はできませんが、ほぼ間違いなくノルズだと思います……。生きていたのですね……」
スクルドはそう応じるとともに、ほっとした表情になった。
一郎は、ぽんとスクルドの頭に軽く手をのせた。
すると、スクルドが一郎にしだれかかるような仕草をしてくる。
可愛い女だ。
一郎はにんまりしてしまった。
とにかく、つまりは、やはりノルズは生きていて、しかも、捕らわれたりしているわけじゃなく、自分の意思で行動していたということだ。
少なくとも、このときまでは……
ところで、そうであると仮定した場合の話ではあるが、ガドニエルは、不可思議な方法でノルズがイムドリス宮に出現したと言ったが、おそらく、それは簡単に説明がつく。
ガドニエルの説明では、結界に守られているイムドリス宮に入るには、ガドニエル自身の魔道で転送するか、水晶宮側から転送門で入るしかないらしい。
だったら、ノルズは普通に水晶宮側から出入りしたに違いない。
それしか方法がないのであれば、そうだ。
全くの想像だが、ノルズは変身リングで、イムドリス宮に出入りする適当な家人か、あるいは、人足にでも変身して、水晶宮から転送門で入ったのではないだろうか。
もしかしたら、しばらくのあいだ、何食わぬ顔をして、家人のひとりとしてでも、ガドニエルの近くに仕えていたのかもしれない。
目的は調査だろう……。
とにかく、それにより、ノルズはナタルの森の危機を確信し、そこを去るにあたり、初めて本当の姿を現して、ガドニエルたちに警告を発した……。
そんなところじゃないだろうか……。
「だけど、折角のノルズの警告を無視して、結界に護られているはずのイムドリス宮をまんまとパリスの一派に奪われたということよね」
コゼが嫌味っぽく口を挟んだ。
すると、ブルイネンが口を開く。
「……それを指摘されると、面目ないとしか言えません。イムドリス宮の警備はわたしの責任なのに……。しかも、ガドニエル様が魔物に変えられて、見姿を奪われたというのに、それに気がつかなかったとは……」
すっかりとブルイネンがしょげ返っている様子だ。
ブルイネンはどちらかというと一郎を囲んでいる女の輪の外にいる感じだったが、一郎は彼女の腕を掴むと、ぐっとブルイネンの身体を引き寄せた。
「わっ、な、なにを……」
ブルイネンが狼狽えた声を出したが、そのときにはすでに一郎の淫魔術による粘性体がブルイネンの両手を背中側で密着させている。
さらに、ブルイネンが身に着けていたズボンをマットに接着して、ブルイネンを動けなくすると、ズボンのベルトと腰回りの留め金を外してしまう。
ここまでにかかったのは、数瞬──。
一郎ならではの瞬時の早業だ。
さらに身体を引く。
それだけで、ブルイネンからズボンが引き抜かれて、下半身が下着だけの姿になる。
「うあっ、なっ? ひうっ、んあああ」
一郎はブルイネンをうつ伏せにして、膝の上に乗せたまま、後ろ手で抵抗できないブルイネンのお尻を、下着の上からすっすっと指でなぞった。
「あああっ、ひいいっ」
瞬時にブルイネンは、身体をくねらせてよがった。
しっかりと性感帯のもやに添って、指を動かしているので当然だ。
そして、ブルイネンの身体が痙攣したようになって震えがとまらなくなったところで、一郎はブルイネンを解放した。
ただし、後ろ手の粘性体はそのままだ。
膝から下ろしたブルイネンは、すっかりと脱力したようになって、腰が抜けたみたいに崩れている。
それだけでなく、あっという間に股間を濡らしたみたいであり、白い下着の前側に大きな丸い分泌液の染みができていた。
年齢は重ねているものも、ついさっきまで処女だった性に未熟な身体だ。
そんな女が、感じやすいことではこの中でも一、二を争うのだ。
なかなかに面白い身体である。
「ブルイネン、反省なんて無駄だ。気にするなとは言わんけど、それよりも考えることがあるはずだ──。つまりは、十日後のことだ──。パリスそのものは、姿を消したとはいえ、まだまだ影響力は残っているはずだ。どんなものが待っているかわからない。それをこの人数で取り戻すんだ。そのために、この十日間は、俺の精を受けることだけ考えろ──。俺の精を受ければ、受けるほど強くなる。本当だぞ」
一郎は言った。
レベルが限界突破したことによる一郎のさらなる能力向上だ。
なぜか、それがわかる。
一郎は、「淫魔師の恩恵」という能力で、支配した女たちの能力を底上げしているが、おそらく、すでに支配している女たちについても、さらに向上させられると思う。
まだ、試してもいないのに、どうしてわかるのかと問われると謎なのだが、そんな気がするとしか言えない。
まあ、これからやってみればわかることだが……。
「どういうことですか、ロウ様?」
ガドニエルは首を傾げている。
そういえば、ガドニエルは、一郎の淫魔師の恩恵の能力はまだ説明していなかった。
簡単に説明すると、ガドニエルは目を丸くしている。
それは、まだ荒い息をしているブルイネンも同様だ。顔をあげて、驚いたように一郎を凝視している。
「……そういえば、さっきから身体が軽い気がしていて不思議な感じはあったのだ……。初めての直後は、とてもすぐに動けるものじゃないと耳にしていたのに……。それどころから、むしろ動けるし……」
さらに口の中でぶつぶつ言っている。
一郎はくすりと笑ってしまった。
「そ、それ本当ですか? さらに強くなるって──」
「そうなんですか、ロウ様?」
コゼとエリカだ。
ほかの女を押しのけるようにして、一郎に密着してくる。
一郎は頷いた。
「本当だ。試していないが間違いないと思う。ガドを支配したことで、また俺の能力があがったらしい。まずはお前たちやスクルドで試すか? 一番昔からのお前たちの力があがれば、俺の仮説が正しいという証明だ」
「えっ、まだ、魔道遣いとして成長できるのですか?」
スクルドもびっくりしている。
「多分な。だが、もっともっと、俺に犯されることが必要だぞ。それこそ、限界を突破するまでな」
一郎は笑った。
まあ、そこまでの性交が必要ではないかもしれないが、一応、そういうことにしておこう。
一郎の責めで絶頂しまくって、それでも必死に挑んでくる女傑たちのあられもない姿を見てみたい。
いい機会だ。
一郎はほくそ笑んだ。
一方で、一郎もまた、ブルイネンに告げた自分自身の言葉じゃないが、いま気にかけても仕方のないことをあれこれ考えるのは、いったんやめにすることにした。
ノルズのことはノルズのことだ。
気にはなるが、もうどうしようもない。
アスカの行方もだ。
当面はイムドリス宮の奪回に的を絞るべきと思う。
アスカのことも、その後にしよう。
本当にガドニエルの姉ということになるのであれば、かなり状況も変わってくるが、あいつがパリスの手から逃れて姿をくらませているなら、それはそれでいい。
本当に監禁されていたのであり、パリスに脅迫されて理不尽な扱いを受けていたのが真実ということであれば、パリスのことが完全に片付けば、いずれは逃避行をやめて、アスカがイムドリス宮に接触を試みてくる可能性もある。
そのときに判断すればいいか……。
それよりも十日後だ──。
パリスの部下というのがどんな連中か不明だが、連中も馬鹿じゃないだろう。
まさか、本物のガドニエルと合流したとまでは考えないと思うが、すでにイムドリス宮を奪われて、かなりの時間が過ぎている。
太守夫人のカサンドラさえも、連中は自分たち側に引き入れているのだ。
そのあいだに、連中の好きなように、潜入者避けの待ち受けはしていると思う。
そこに乗り込むのだ。
それなりの覚悟は必要だ。
「た、試します、ご主人様──。まずは、あたしで試してください」
「ま、待ってよ、コゼ……。これは、一番奴隷のわたしの……」
「ご主人様、淫魔師の力は、魔道遣いと相性がよいのはご存知ですよね。だから、まずはわたしでお試しを……。どうか、思う存分、精をお注ぎください」
コゼが一郎にしがみついてこようとするのを、エリカが気に入らないように、腕で押しのけようとしている。
それにスクルドが参戦して、揉み合いになった。
「えっ、えっ」
「うわあ……」
ほかの女たちも、一郎に寄って来ようとしているが、あまりにもあからさまなこの三人の競い合いに、ちょっと躊躇している感じだ。
特に、ミウとイットは呆然となっている。
「なにが一番奴隷よ……。あたしは妻にしてくれるって約束してもらったんだから……」
「そ、それはわたしも……。ひゃあああ──」
突然にエリカが悲鳴をあげてのけ反った。
コゼが素早く、エリカの乳首にあるピアスを指で続けざまに弾いたのだ。
普段はそんなに感じすぎないように細工をしているものの、一度刺激すれば、その分も含めてもの凄い刺激が走るように術をかけている。
一度完全に身体を突っ伏してしまったエリカが、両手で胸を隠すようにしながら、真っ赤な顔をあげてコゼを睨みつけた。
「ひ、卑怯よ──」
「なんとでも言って。ご主人様の取り合いについては、仁義なんてないのよ」
コゼがけらけらと笑った。すでにコゼは一郎の膝の上に跨るようにして、完全に一郎に密着した。
だが、そのままふわりと浮いて、横にころりと転がってしまう。
空いた一郎の膝の上にはスクルドがちゃっかりと乗ってきた。
いまのは、スクルドの魔道だろう。
コゼが起きあがってスクルドの腕を掴む。
「魔道なんて卑怯よ、この淫乱巫女――」
「神殿界からは離れました。いまはただのご主人様の性奴隷ですわ。とにかく、まずはわたしでいいじゃないですか。問題はありませんでしょう? それに、ご主人様の取り合いについては、仁義などないのでは?」
「ふざけんじゃ……」
「待てったら」
一郎は呆れて間に入った。
「で、でも――」
一郎の上に乗っているスクルドを強引に剥がさんとしていたコゼが頬を膨らませて、不満を示した。
なんで、こんなことにここまで熱くなるのだろうかと思うが、とりあえず、腕を伸ばしてコゼを抱き寄せてなだめる。
「わかったよ。次の一番はコゼだ。その次はスクルド、そして、エリカだ……。だが、まだ話が終わってなくてね。ちょっと大人しくしてくれ。スクルドは一番をコゼに譲れ。その代わり、話のあいだこうやって抱っこしてやろう。どうせ、十日もある。取り合いなんてしなくても、俺の精は無尽蔵だ」
「はい、ご主人様──」
スクルドが満面の笑みを浮かべて、一郎の胸の前で大きく頷いた。
コゼとエリカが一郎の両側で唸るような声を出しつつも、諦めたように頷く。
一郎はほっとした。
「スクルド様って……」
一方でミウについては、スクルドが一郎に抱かれて、猫のように甘えているのに接し、困惑している。
再三にわたって、こういう状況に接しているが、いまだに慣れないみたいだ。
「そ、そのう……。ずっと気になっていたのですが、エリカ様の胸とお股にある飾り物はなんなのでしょう……? まるで、直接針で刺しているように思えるのですが……」
そのとき、ガドニエルが興味深そうに訊ねてきた。
一番奴隷の特権として、一郎が手ずから穴を開けているのだと説明すると、ガドニエルは心の底から羨ましそうな表情をした。
一郎は笑ってしまった。
すると、イライジャがちょっと距離を縮めるようにしながら口を開いてきた。
「これじゃあ、必要な話はさっさとしておいた方がいいわね……。ところで、ロウ……。ブルイネン殿から伝えられたんだけど、わたしの役目はシティ側にいて、水晶宮の観察をするということでいいのね? なにか変化があればすぐに伝達するわ」
「頼む、イライジャ。とにかく、水晶宮にいるカサンドラの動向が気がかりだ。敵か味方かも判定できない。ユイナの判断であれば、すっかりとパリスに洗脳されてしまっていて、敵ということだけどね」
一郎はちらりとユイナに視線を送る。
逆海老拘束で吊られているユイナの尻の穴に挿し込んでいる蝋燭はかなり短くなっている。しかも、潤滑油として強烈な掻痒剤を使っているので、ひとときも静止しておられず、さらに少しでもユイナが身じろぎすれば、垂蝋が尻や股間に垂れ落ちるように、ユイナの吊りの角度を保たせている。
そこに復讐に燃えるクグルスの悪戯が加わり、ユイナは泣き叫んでいる。
「わかった……。そして、ハロンドールの王都のこともなにかわかれば伝えるわ。そっちの情報は、さすがに遠方過ぎて難かしいけどね。だけど、スクルドさんの言う通り、確かにハロンドール全土に、あなたの手配書が回っているみたいね。ギルド通信を通じた連絡網で、向こうの冒険者ギルドを通じて裏がとれたわ」
イライジャが言った。
「手配? ロウ様のことですか? どういうことなのですか?」
すると、ガドニエルが訊ねてきた。
スクルドが口を挟み、簡単に一郎の手配書がハロンドール王国内に出回っていて、向こうにいる一郎の女たちがそれを阻止しようと動いているものの、手配書自体はそのままなので、一郎が戻れば捕縛の可能性があると説明した。
だが、中身をすっ飛ばした本当に簡単な説明だ。
一郎はくすりと笑った。
「つまり、ハロンドール王家がロウ様を捕縛しようと手配をしたということなのですね──? お任せください──。ならば、エルフ女王の名に懸けて、ロウ様のことはお守りします。それだけでなく、ハロンドール王に親書を送っても……」
ガドニエルが言った。
しかし、なぜかにこにこしている。
おそらく、一郎の役に立てそうなことが見つかって嬉しいのだろう。
一郎は抱いているコゼから手を伸ばして、ガドニエルの頭をすっと撫ぜた。
「まあ、それには、まずはイムドリス宮を取り戻さないとね……。だけど、イライジャ、そういうことで悪いけど……」
「わかっているわ。せっかく、合流できたけど、わたしは、早速、ギルド本部に戻ろうと思うわ。そっちで情報を集める。緊急のときには、こっちと連絡ができるように処置もできている。だから、そっちも、こっちのことを連絡して……」
一郎はイライジャの言葉に頷いた。
そして、ブルイネンに視線を向けた。また、彼女の腕を拘束していた粘性体を解除する。
「ブルイネン、なら悪いけど、もう一度、イライジャを送ってくれよ。戻って来たら、今度こそ、腰が抜けるほどに可愛がってやろう。それと連絡手段を確保は頼む。魔道の通信具とか……。あるいは、万が一にも、イライジャのところに水晶宮の手が回ったときに、脱出できる転送用の魔道具もね……」
「そ、それは、手配が終わっています……」
ブルイネンが真っ赤な顔になって頷いた。
ちょっと刺激してやっただけなのに、まだその余韻が残っている気配だ。
まだ性を覚えたばかりだが、これはとんでもないセックス好きになるかもな……。
そのくらい敏感な身体だ。
一郎はほくそ笑んだ。
「……ところで、ユイナのことは適当なところで許してあげてくれない、ロウ……。あれはあれで、健気なところはあるのよ……。あなたのことをずっと心配していたんだから……。あなたが死んだという情報が流れたときには、そりゃあ、すごい落ち込みようで……」
イライジャはくすりと笑った。
「ユイナがひねくれているのも、本当は素直なのも知っているよ……。素直だから態度があんなんなのさ。苛められて悦ぶ俺の女たちの方が本当はおかしいのさ」
一郎は微笑んだ。
イライジャは小さく頷いた。
「ありがとう」
イライジャが笑って、一郎の頬に軽く口づけをした。
「とにかく、頼む、イライジャ──。水晶宮の動向、それと、アスカの行方についても情報が入れば教えてくれ……。俺は俺で、こっちでセックス三昧する……。もちろん、抱かれたくなったら来てくれよ。イライジャは、最優先でいい気持ちにしてあげるからな」
一郎は言った。
イライジャは「ばかね」と言って、照れたように顔を赤くした。
そして、一郎は改めて、アスカことラザニエルが百年ほど前に疾走したガドニエルの姉であり、パリスの囚われ人だった可能性があること、パリスの命の欠片を体内に宿しており、パリス復活を阻止するためには、そのラザニエルの身柄を確保することが必要なのだということを説明した。
イライジャは、わかったと頷いた。
一郎はガドニエルに視線を向ける。
「……ところで、アスカ……、いや、ラザニエル殿は、そもそも、なんでいなくなったんだ? 立派なお姉さんだと口にしてたが……」
なんとなく訊ねた。
もしかして、その頃からパリスとの因縁があったのかと思ったのだ。
「オデッセイ様と出逢ってしまったのです」
「オデッセイ?」
一郎はそれは誰だと訊ねた。
「ラザニエルお姉さんの
「オデッセイ? それは、まるで人間族の子供のような外見の男か?」
かつて、ラザニエルだったアスカが出奔した理由──。
それこそ、パリスではないかと思ったのだ。
一郎の問いに、ガドニエルは首を横に振った。
「とんでもありません。オデッセイ様は、それはそれは、とても男の方とは思えないような美しいエルフ族の殿方でした……。だけど、もうご一緒ではないのでしょうね。だとすれば、お姉様をオデッセイ様はお守りするはずですから」
ガドニエルが悲しそうに言った。
「だけど、なら、そいつが捨てたから、アスカがそいつと一緒にいないんじゃ? なあ、エリカ、そんなやつが、アスカの周りにいたのか?」
「いいえ、断じていませんでした」
エリカははっきりと言った。
一郎も頷く。
アスカのことを知っているわけじゃないが、あの荒みようは、アスカが
いずれにしても、駆け落ちとは……。
百年の歳月の差はあれ、姉妹揃って、似たようなことをしようとしているのを考えると、やっぱり血は繋がっているんだなと突っ込みそうになったが、さすがに口にしなかった。
「そうですか……。オデッセイ様とは、もう……。だけど、オデッセイ様はエルフ族でした……。オデッセイ様が生きておられれば、お姉様を見捨てるわけがありません。そうですか……」
ガドニエルがしゅんとする。
一郎はエリカを見る。
エリカも頷いている。
よくはわからないが、エルフ族にとって、
魔道の契約のようなものだと言っていた気もするし……。
「あ、あのう……。でも、ありがとうございます、女王様。百年前のこととはいえ、少しは情報があるかもしれません。いずれにしても、情報に無駄ということはありません。ありがとうございます」
イライジャは頭をさげた。
一郎はそれを制した。
「こいつはガドだ──。少なくとも俺の身内の中ではそういうことだ。妙に畏まるな。そんなのいらん──。こいつは俺に苛められるのが大好きなただの雌犬だ。こんな風にね」
一郎はガドニエルの胸に手を伸ばして、ぎゅっと乳首を抓ってやった。
しかも、ぎゅうぎゅう捻って離してやらない。
「ひぎゃああっ、ああああっ、い、いたいいいっ、で、でもありがとうございますうう、いぎいい」
ガドニエルが悲鳴をあげながらも、誰でもわかるような感じている仕草を示した。
イライジャは目を丸くしている。
「ご主人様、あたしです──。あたしを一番とおっしゃいましたよ──。さっきから、ガドばっかり──」
すると、目の前のコゼが怒ったように、一郎の顔を両手で掴んで自分の方に向けた。
一郎は笑って、コゼの背中に両手を回して、ぎゅっとコゼの裸体を自分の身体に引き寄せた。
コゼがぎゅっと、嬉しそうに一郎に抱きついてくる。
「ぎゃあああ、あついいいいっ、こ、このばか妖精──。あほおおおおお」
そのとき、ものすごい絶叫が洞窟に鳴り響いた。
なんだと思って視線を向けると、逆海老に吊られているユイナの尻穴に突き挿されている蝋燭がひどく短くなっている。
だが、ちょっと前に見たときには、かなりの長さが残っていた。さっきのいまで、いきなりそんなに短くなるわけがない。なにしろ、すでに炎が尻に届きそうなくらいなのだ。
ユイナが泣き声をあげている。
おそらく、クグルスの魔道による悪戯だろう。
「ほらほら、尻娘、もっと尻を振らないと火傷するぞ」
クグルスが愉しそうにからかっている。
一郎は苦笑した。
「ユイナ、小便だ。おしっこをして消せ。さもないと、尻と股間が丸焼けになるぞ。それが嫌なら、頑張って、おしっこを噴きあげて消すんだな」
一郎も笑って声をかける。
しかし、逆海老状態でいくらおしっこをしたところで、蝋燭の炎に届くわけがない。
ユイナが大声で一郎に悪態をついた。
「ばかあああ、あほおおおお、死んじゃええええ──。だけど、死んじゃいやあ──。せっかく会えたのに──。生きていたのに──。とても、会いたかったのおお──。大好きよおおお──。わああああ──。もういやああ──。なにこれえええ──」
しかし、一郎に対する悪態のはずが、本音しか口にできない仕掛けのせいで、途中から一郎に対するのろけのようになり、一郎だけでなく、周りの女たちも一斉に噴き出してしまった。
(第35話『エルフ族の女王さま』終わり)