【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
無理だ──。
ほんの少し進んだところで、ノルズはそれを悟った。
ノルズがやらされようとしているのは、ほとんど限界を越えている便意に耐えながら、鼻輪にぶら下げた重い鉄球の鎖の部分を口で咥えて、この小屋を十周するという苛酷な命令だ。
しかも、鼻輪に繋がっている鉄球の鎖は、ほんの短いものなので、ノルズは当然に顔を床に近づけて、這うように身体を進ませなければならない。
こんな格好で、十周なんて進めるわけがない──。
「む、無理だよ。さ、先に厠に行かせて」
ノルズは一周目の半分もいかないうちに、不可能であることを悟って、口を鎖から離してエマに訴えた。
「なに、とまってんだい、豚──。それと、鎖を咥えるのは、やっぱり禁止だ。舌で鉄球を押しなさい──。その方が家畜のお前にはお似合いよ」
はっきりと悪意のこもった足が後頭部を踏みつけてきた。
「うぐっ」
額と顎が床に激突する。
「エマ、顔を傷つけるのは許してやりな。その代わり、首から下はどこを鞭打っていもいい」
「はい、アスカお姉様」
アスカの言葉に、エマが踏んでいた足をさっとどけた。
その代わりに、ひゅんと音がして、エマに持っている乗馬鞭がノルズの尻たぶを引っぱたく。
「う、うう……」
やるしかない。
ノルズは覚悟した。
それに、迷っている時間は、もうノルズには残されていない。
だが、おそらく、エマにもアスカにも、ノルズの苛酷な窮状はわかっていないに違いない。
すでにぎりぎりの状態であり、いまもって、汚物が噴流となって飛び出していないのが、自分でも不思議なくらいなのだ。
とにかく、鼻輪に繋がっていて、顔の真ん前にある鉄球を顔と舌で押しながら進んだ。
「ああ、はあ、はあ……あっ」
しかし、一歩進むたびに、すでに危機的状況であることは思い知らされるし、緩みなく締めつけなければならないお尻の筋肉だって限界だ。
それに、お尻よりも顔を床に近い部分に位置させるいまの姿勢は、ただでさえ下腹部を圧迫する苦しい体勢だ。
それが便意を促進する。
なによりも、鼻輪──。
鉄球を押し動かすと、鎖がぴんと張ったり、鉄球の重みが振動で加わったりして、そのたびに、すごい激痛が鼻に走るのだ。だが、その痛みにちょっとでも我を忘れたりしたら、その瞬間に決壊という最悪の事態に直結するに違いない。
ずるずる、ずるずるという鈍い音をたてさせて、鉄の塊を顔で押しながら、必死になって部屋を回る。いつのまにか、ノルズは喉の奥から苦悶の声を洩らし続けていた。
「ほら、ほら、もっと速く──」
容赦のない鞭の打擲がお尻や腰や背中に打ちつけられる。
もう何十発も喰らっただろうか。
この馬鹿女は、本当に考えなしに、身体のあちこちを打ってくる。
それはノルズの肌を引き裂き、予想以上の体力を削ぎ落して、ノルズの消耗をさせていく。
「ほら、一周だ。とりあえず、残り九周」
アスカの声がした。
そして、衝撃が走った。
「ひいっ、ひっ」
部屋の一角の隅に壁にもたれて見物を決め込んでいたアスカの前にやってきたとき、不意に鳥の羽根ようなものが尻たぶの亀裂をくすぐりはじめたのだ。
ノルズは悲鳴をあげた。
「や、やめて──。ああっ、ひいいいっ」
一蹴だけ視線を向けると、いつの間にか先端に鳥の羽根が装着してある棒を持ったアスカが、愉しそうにノルズのお尻をそれで刺激している。
だが、この状況で苦痛の頂点であるお尻を刺激されることは、鞭で打たれる痛みの何百倍もの苦悶をノルズに与えた。
「だ、だめええっ」
ノルズはひたすらに、前に進みながら絶叫した。
「一周ごとにくすぐってやるよ。それで、何周したかわかるだろう」
アスカが愉快そうに笑った。
なんとか、棒の届かない場所まで進むと、再びエマの鞭の打擲が再開した。
二周目になった。
「ほらっ、豚──。鳴きながら進んで、本当に豚のようね」
下品な揶揄を浴びせながら、エマがノルズの背中や腰を打ち続ける。
もう体力が残っておらす、全身ががくがくと震えだしている。
でも、ここで休んだりすれば、おそらく、便意がノルズに打ち勝ってしまうに違いない。
鼻に想像を絶する痛みが走ろうとも、絶対に速度を落とせない。
必死に自分を心の中で叱咤しながら、ノルズは進んだ。
やがて、しばらくすると、急に鞭打ちがやむ。
「ひいっ、ひいいいっ」
すぐに羽根くすぐりだ。
アスカの棒の届く範囲にやって来たのだ。
「ああっ、んんぐううっ」
ノルズはほとんど泣いているような声を出しながら、羽根責めの攻撃を受け進む。
そして、やっと羽根の届かない位置に辿り着き、エマの罵声と打擲の時間がやってくる。
二周目……。
もう、なんの思考もできなかった。
ただただ、這い進むだけだ。
それにしても、考えてみれば、これは異様な光景だろう。
裸の女が腰を振り、顔に鉄球を繋げ、床に這いつくばって、鉄球を押し進み続けているのだ。
三周……。
…………。
四周……。
…………。
絶望感がノルズを覆いはじめた。
五回目の羽根くすぐりが終わったときだ。
もう体力はない。
それはノルズ自身がわかっている。
それに、これまで耐えれたのは、たまたま便意が引き潮だったからのようだ。
満ち潮がやってきた……。
ノルズには這い進みながら、それがわかったのだ。
脚はもう力が入らず、鉄球を顔で押しながらなど、どうやっても、のろのろとしか進むことはできない。
それどころか、無理な姿勢で進んでいることが苛酷な威力を発揮しだし、胴や背中、首にまで引きつるような痛みを与えてきた。
当然に速度も遅くなる。
「む、無理だよ──」
ノルズはついに進むのをやめて絶叫した。
そして、自分の声が泣いているような声だったことに驚愕した。
顔の下にぼたぼたと水滴が落ちる。
しかし、それは汗ではなかった。
「家畜が泣き出したね。残り半分よ。ほら、進め──」
尻を引っぱたかれる。
だが、もう、ここで終わる必要がある。
おそらく、十周した後、エマとアスカは、外に厠まで同じようにノルズには這い進めさせるだろう。その時間を考えると、ここで中止するしかない。
「お、終わったら、残りをやるよ──。だから、いま、行かせて」
「それじゃあ、調教にならないじゃない。馬鹿なの、あんた。やっぱり、家畜ね」
エマがせせら笑った。
そして、肩に鞭を打ってくる。
でも、もうノルズは進めなかった。
どうにも力が入らない。
「気合を入れてあげるわ──」
ひゅんと鞭の音が鳴った。
だが、衝撃は上からでなく、下側からやってきた。
「んぎゃあああ」
叫んだ。
エマの鞭は一度床を叩き、その勢いを利用して、股間を叩きあげたのだ。
気を失うかと思うような衝撃に、本当に一瞬頭が白くなる。
我に返ったのは、倒れそうになっている身体を懸命に起こしたときだ。
はっとしたが、まだ洩らしてなかった。
でも、それは奇跡のようなものだった。
「な、なにすんだいっ──」
非常で残酷なエマのやり口に、心の底からの怒りがノルズの中で爆発した。
「もう一発いく? 今度はちゃんと、あんたの股のお豆ちゃんに当ててあげるわ」
ひゅんと音が鳴る。
ノルズは慌てて、身体を前に進ませた。
床をばちんと叩いた鞭は、ちょっとずれて内腿の肌を斬り裂いた。
しかし、最悪の場所は打たれなかった。
「今度、とまれば、股間打ちよ。ひっくり返して、上から打つわ」
エマが大笑いした。
ノルズは今度こそ渾身の力をお尻に注ぎ込んで、懸命に這い進んだ。
「あんたは家畜よ──。鞭で打たれないと、なんにもできない豚よ。だから、ぶってあげるわね。ぶたれないと進む気にならないのよね」
鋭い連打がお尻に集中する。
「くっ、ううっ、ぐうっ」
打たれるたびに、呻き声が出た。
それでも、ノルズは進むことだけを考えた。
「頑張っているじゃないか、ノルズ。その調子だよ。きっと厠に行けるさ」
「ああっ、はあっ」
アスカの羽根責めだ。
ここにきての羽根の愛撫は苛酷だ。
ノルズは気力を振り絞った。
六周目──。
…………。
七周目──。
…………。
そして、八周目──。
ノルズは這い進む。
満ち潮で崩壊しそうな便意──。
とにかく、締める──。
お尻の筋肉を締めつける──。
それしか考えない……。
そして、いまのノルズを支えているのは、沸騰するような激しい怒りだ。
途切れることなく、次々に鞭を浴びせてくるエマに対する激情だ──。
それがノルズに気力を与えていた。
こんな馬鹿女に負けるか──。
鞭の痛みに襲われるたびに、絶対に屈服なんてするかと心に刻み込んだ。
そして、アスカの羽根責め……。
身体を悶えさせながら、必死で逃げ進む……。
九周目になった。
「くそうっ、結構しぶといわねえ」
エマの鞭が上からでなく、横側から膝から上の太腿の部分を狙い出す。
どうやら、前に進む力をなくさせて、動けなくしようという魂胆のようだ。
「ほう、最後の十周だねえ。すごいよ、お前」
アスカの声が近くでして、羽根責めの場所にやって来たのだと悟った。
とにかく、もう目も朦朧として、よくわからなくなっていたのだ。
あと一周だ──。
ノルズはは食い縛った。
羽根の刺激がなくなると、エマの鞭打ち──。
最後の一周はこれまでの何倍もの数の鞭打ちだった。
それは、エマの鞭が多くなったというよりは、ノルズの歩みが極端に遅くなったからだった。
「くそうっ、まだ、洩らさないのか──」
エマが悪態をついたのが聞こえた。
次の角を曲がる。
エマの鞭は狂ったように身体を打ってくる。
無視する。
また、次の角──。
エマがまた口惜しそうに悪態をついた。
「十周だ」
アスカの声がした。
ノルズは肩を床に付けて、必死に呼吸を整える。
「じゅ、十周よ、エマ……。か、厠に……」
ノルズは荒い息をしながら言った。
「生意気よ。家畜のくせに、なにかを頼むときには、頭を床につけるのよ」
エマの冷たい声がして、頭をぎゅっと踏みつけられる。
「ぐっ、お、お願い、します、厠に……」
ノルズはぐいぐいと床に顔を押しつけられながら、呻くように言った。
「じゃあ、いっぱいうんちができるように、下剤液を追加してあげるわね」
エマがノルズのお尻に触れ、またもや浣腸液が腸内に魔道で移動された。
再注入……。
その苛酷さをノルズは、身体で味わうことになった。
ノルズは必死にお尻に力を入れる。
ここから、外まで行って……、そして、小屋の裏……。
その距離を考えると、絶望的な気分になる。
しかし、ここまで頑張って途中で洩らしたら、これまでの頑張りが無駄になる……。
ノルズは懸命に自分を鼓舞した。
「わかっているわね、家畜……。じゃあ、残りの十周をしなさい。今度は反対周りよ。その代わり、それが終わったら、鼻輪についている鉄球を外して、厠に行かせてあげるわ」
唖然とした。
もう十周?
不可能だ──。
絶対に……。
エマの冷酷な宣言に、「そりゃあいい」とアスカが大笑いした。
ノルズは、頭が真っ白になるのを感じた。
「む、無理──。絶対に無理──。無理だよお」
ノルズは叫んでいた。