【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
次々に性奴隷の令夫人どもがおかしなことを喋り出した。
なにを言っているんだ、こいつら?
サキの頭には、たくさんの疑問符が浮かんだ感じになった。
「それにしても、このままでは、いつかわたしたちは、ここから出ないといけないのですね。そんなのは嫌です。どうしたらいいのでしょう、サキ様?」
「そ、そうです。それが心配なのです。わ、わたしたちも、娘たちのいる奴隷宮に行けないでしょうか? 調教も受けますし……」
しかし、貴婦人たちは必死になって、サキにそう訴えてくる。
だが、素っ裸でルードルフの閨から飛び出したらしい二人を除けば、ほかの女については、そのあいだも貞操帯の微振動で裸身を悶えさせているのだから滑稽だ。
だが、ここにいたい?
調教を受けたい?
しかも、よくわからないが、サキに向かって感謝のような言葉を必死に告げてくる。
どうなっているのだ?
とりあえず、いったん微振動をとめるか……。
サキはここにいる十人ほどの貞操帯の微振動をとめてやった。
「ああ、とまりました」
「本当ですね。公爵夫人様やランジール夫人のおっしゃった通り……」
「やっぱり、本当なんですね。救世主様のことを考えると、楽になります」
「本当です」
女たちが口々に感動の言葉を口にしている。
ただ貞操帯をとめてやっただけなのだが……。
しかし、女たちは目を輝かせて感動すらしている気配だ。
わけがわからない……。
そう思って、はっとした。
この貴婦人たちに闇魔道ではない、なにかの操心術のようなものが重ね掛けしてあることに気がついたのだ。
改めて探知してみる。
そして、わかった。
女たちの何人かに、やっぱり魔道がかかっている。
いや、何人かじゃない。
全員だ。
重度軽度の差はあるが、明らかに操り術だ。
しかし、テレーズの使う人の負の感情を増幅する闇魔道ではない。
逆に人の心を浄化して、幸福感を必要以上に増幅するような魔道だ。
サキは人族の魔道の区分を明確に知っているわけではないが、これは人族が光魔道と呼んでいる種類の魔道だろう。
さらに、サキはこの魔道波動から、それが誰によってもたらされたものなのかもわかってしまった。
いずれにせよ、サキはここに集めた貴婦人や令嬢たちのことを、ロウを喜ばすための道具のようにしか考えていなかったが、面と向かって語り合うのは初めてのような気がする。
「なにを言っているかわかっているのか? ここに残りたいのか? このまま調教を受け続けて?」
サキは言った。
すると、女たちの何人かが、顔を見合わせるような仕草をした。
「サキ様になら、教えてもいいんじゃないでしょうか……」
「そうですね……。サキ様はわたしたちを身体を張って助けてくれましたし……。これも、救世主様のおっしゃった通りですわ」
「サキ様は、わたしたちのことを想って、お辛い気持ちで、わたしたちを躾けてくれたのです。お教えするべきと思います」
女たちが見つめ合いながら、そんなことを口走った。
女たちにかけられているのは、心を素直にしてしまう光魔道の類いだが、それはともかく、喋っている内容がよく理解できない。
すると、女たちのうち比較的年配の女がサキに真っ直ぐに向きなおった。
確か、公爵夫人のひとりだ。
さっき、ルードルフが攻撃魔道を向けた女のひとりである。
「サキ様、わたしたちは、サキ様が本当はわたしたちのお味方だったことを承知しております。救世主様がそう言われたのです。サキ様を信じなさいと……。だから、わたしたちは信じておりました」
「信じていた? 救世主様?」
サキはますます首を傾げてしまった。
「そして、その通り、サキ様は身体を張って、悪王からわたしを救ってくださりました。しかも、大逆罪を賭して、悪王について手をかけられました。サキ様の犠牲的精神はわかりました。でも、わたしたちを信じてください。絶対に、サキ様を告発するようなことはしません。サキ様をお守りいたします」
頭をさげた。
すると、ほかの女たちも一斉に頭をさげる。
なんなんだ、これ?
サキは呆気にとられた。
「お前たちの申すことがさっぱりとわからん。そもそも、さっきから口にしている救世主とは誰じゃ?」
サキは言った。
だが、予想はついている。
こいつらに光魔道をかけた女のことだ……。
おそらく、この後宮に数日泊まってきたときのあいだのことだろう。
そのときに間違いないが、うろうろしているうちに、ここに集められたばかりのこいつらに出逢ってしまって、おかしなことを喋っただけでなく、他人の言葉を素直に受け入れるように、光魔道をかけていった……?
そんなことだと思う。
「説明するよりも、見てもらった方が早いと思います。どうか、奇跡の品物にお触れになって……」
公爵夫人が言った。
すると、一斉に女たちが顔を真っ赤にする。
「まあ、サキ様がお触れに……?」
「そんな……あっ、でも、とても幸せな気持ちになりますけど……」
「驚かないでくださいね、サキ様。でも、多分、そのお怪我も楽になると思いますわ……」
ほかの女たちが声をかけてくる。
奇跡の品……?
あいつ、なにか残していったのか?
そういえば、あの日のあいつは、これからロウに会えるということで、もの凄い有頂天になっていた。
サキから見ても、ちょっと普通の精神状態じゃなかったような気がする。
その勢いで、ここにいる女たちに、おかしなものを残していったか?
「とにかく、こちらに……」
女たちに引っ張られるように案内された。
着いた場所は、黄色チョーカーの女たちの溜まり場のようになっている広間だ。
女たちには、どのチョーカーの女にも、それぞれに側女用に準備されている部屋をあてがっているが、ここはもともと召使いや小間使いの女が使う場所であり、仕事の待機をする場所だ。
ここを集まり場所にしていたらしく、サキが入ったときには、さらに二十人ほどの女がここにいた。
女たちの監督を命じているサキの眷属たちはいないようだ。
ここは休憩室にでもなっていて、自由にさせている場所なのだと思う。
そして、この広間には、サキがルードルフから助けるかたちになったもうひとりの公爵夫人がいて、ほかの女たちになにかの説明をしているところのようだった。
「あっ、サキ様」
「サキ様」
「サキ様、お大丈夫ですか?」
ここでも女たちが口々にに、サキに温かい目を向け、負傷を心配するような声をかけてきた。
「先ほどはありがとうございました。彼女たちにも、サキ様がやっぱりわたしたちのお味方だったことを説明していたところでした。救世主様の言ったとおりだったと……」
女たちは全身が床に直接に座っていたのだが、中心になっていた公爵夫人が、両膝を床に着けた改めて深々と頭をさげた。
すると、ほかの女たちも一斉に貞操帯だけの裸身を曲げ、頭をさげる。
サキは面食らう気持ちになった。
「……マリア、あの奇跡のお品をサキ様にも、お見せしようと思うの……。そのうえで、救世主様のお話を……」
「そうですね……。それがいいですわ、フラントワーズ様」
語り合ったのは、サキが助けた公爵ふたりだ。
ほかの女たちの態度から、この公爵夫人ふたりが場の中心になっている気配だ。
どうやら、名はフラントワーズとマリアらしい。
どちらも四十を越えていると思うが、さすがは公爵家の女だ。
まだまだ肌も綺麗だし、顔立ちも整っている。
ちょっとそんなことを想った。
それはともかく、改めて接してみると、生娘であることを条件に赤チョーカーを集めたが、こういう年増もロウは気に入るのではないかと思った。
もう一度吟味して、チョーカーの区分を改めるか……。
生娘の性奴隷候補は赤のままにして、性経験のある性奴隷候補を青にするとか……。召使いを兼ねた厠女は黄色のままとして……。
「こちらです」
すると、フラントワーズと呼ばれた公爵夫人がサキをさらに、部屋の奥に連れていった。
便壺が集めて置いてある空間だ。
つまりは厠である。
大きな布で仕切っていて、さらに便壺一個ずつにつき、仕切りの布がついている。
便壺とは言葉のとおりに、大便と小便をする壺だが、後宮にあるものにはすべて魔道がかかっていて、それに座って排便や排尿をすると、自動的に便が消滅してしまうようになっている。
匂いもない。
その横には、股間を洗う水桶もあり、布置きもある。
これは女たちが交代で交換作業をするはずだ。
まあ、ここにいる女たちには、貞操帯を嵌めさせているので、勝手に排便などはできず、すべて決まった時間しかできない。
従って、この時間に使う者はいないのだ。
「救世主様から頂いた大切な奇跡の品物を、こんなところに置いては申し訳ないのですが、見つかって、テレーズに取りあげられるといけませんので、ここに……」
フラントワーズが顔を赤らめて言った。
テレーズなど、少し前にここを出ていったが、まあ、監禁されているこいつらには、それを知る手段はないだろう。
しばらく来ないなあ、くらいのことだろうというのは想像がつく。
サキとしても、テレーズの不在を隠すために、時折はテレーズに変身をして王宮内をうろうろしたりはするので、こいつら同様に、向こうの本宮の連中についても、テレーズの失踪は気がついていないはずだ。
まあ、それはともかく、便壺の一角の奥に辿り着く。
そこは、掃除用具や家事用の品物、さらに消耗品の類いの倉庫のようになっていた。
ここの最奥側の場所に別の女たちが三人ほどいた。
ぺたんとお尻を床に着けて、だらしなく脱力した状態で壁に身体を預けるようにしていた。
顔は真っ赤であり、全身に汗をかいていて、呼吸はかなり乱れている。
なんとなく、女が達したばかりのような姿に見える。
「あっ、サキ様──」
「申し訳ありません」
「ひいいっ、サキ様」
三人がサキの姿を見て、驚愕して立ちあがろうとする。
しかし、腰に力が入らないのか、なかなか起きあがれないでいる。
それをフラントワーズが笑って制した。
「大丈夫よ、サキ様はやっぱりわたしたちのお味方でした。だから、ここに連れて来ましたのよ」
フラントワーズが語りかけた。
女たちが安心したように、ぺたんと座り直してしまった。
「それじゃあ、やっぱり救世主様がおっしゃった通り……」
そして、三人のうちにひとりが口を開く。
「……ええ、本当でした。サキ様は悪王から私たちを守ってくださったのよ。これがそのお怪我で……」
「まあ、やっぱり、救世主様の言われた通りに……。でも、大丈夫なのですか……。まあ、酷い怪我……」
「このくらい、なんともない──」
サキは声をあげた。
こんなかすり傷程度で、あまり心配されると恥ずかしくなる。
ましてや、あんなルードルフにしてやられたとあっては、妖魔将軍の名折れだ。
「……それにしても、お前たち、奇跡の品に触り過ぎたのですね? あまり長く触り過ぎると動けなくなるので、ちゃんと節度を持ってと決めたではありませんか。すぐに立ち去らないと、テレーズに見つかったら、どうするのです」
フラントワーズが女たちを叱った。
テレーズとルードルフは、ここに女たちにとって、不倶戴天の敵のようになっているようだ。
まあ、いいか……。
それはともかく、もうひとり……というよりは、真の首謀者のサキについては、あくまでも自分たちの味方であり、テレーズたちに強要されて、女たちに接していると思われているようだ。
まあこれも、どうやら、あいつが何かを喋ったことに関係がありそうだが……。
「申し訳ありません、フラントワーズ様。どうしても、我慢できなくて……」
女たちが項垂れた。
「気持ちはわかります。わたしもそうですから……。でも、これはみんなの救いの物でもあるのです。もしも、取りあげられて無くなってしまったら、皆さんに謝りようがないですよ。順番が終わったら、すぐに立ち去るようにしないと……」
「申し訳ありません。気をつけます」
女たちが頭をさげて、そそくさと立ち去っていく。
だが、かなり身体が辛そうだ。
サキは首を傾げた。
「こっちです、サキ様」
フラントワーズと同行の女たちがさらにサキを促す。
荷物と荷物のあいだに挟まれて隠れているような壁があり、その壁がなんとなく、ほかの場所をちょっとだけ色が違うような気がした。
フラントワーズが壁に手を当てる。
なにか仕掛けがあったのだろう。
しばらくすると、がたりと音がして、膝くらいの高さで床に近い側の壁が外れ、その向こうに空間が出現した。
「あっ」
サキは思わず声をあげてしまった。
そこには、木彫りの粗削りではあるが、小さな女神のような彫刻の人形がある。
さらに、木彫りの人形の前に、真っ白い布で覆われているなにかがあった。
これが、さっきから彼女たちが口にしている「奇跡の品物」なのだろう。
それにしても、この木彫りの女神像……。
やっぱり、あいつに似ている気が……。
「救世主様のお姿です。木彫り細工に心得のある者がいて、仕事の合間に彫りました。わたしたちの前にお現われになった救世主様のお姿に似せております」
フラントワーズが言った。
サキは嘆息した。
「似ているね……」
それだけを言った。
そして、やっぱりだと、確信した。
この木彫りの顔の造形は、なんとなくだがスクルズに似ている。
いや、そっくりだ。
やはり、さっきから、こいつらが救世主と口にしているのは、スクルズに違いない。
だが、あいつはなんのために、こいつらに光魔道をかけて
しかも、なんで救世主?
そもそも、救世主ってなんだ?
サキは困惑してしまった。