【2025.9.5コミック発売】異世界で淫魔師ハレム【完結】 作:ドン・ドナシアン
「これは……?」
案内をしてきたフラントワーズとほかの黄色組の令夫人どもが神妙な雰囲気でサキに見せたのは、スクルズの姿を模した木彫りの人形だった。
こいつらに、スクルズの光魔道が纏わりついているということから、スクルズがなにかをしたのだろうというのは予想がつくのだが、このサキに対する神妙な態度が全く理解できない。
「驚かないでください、スクルズ様が悪王に殺され、その身体が王都の広場に晒されてしまった後、スクルズ様に対する行為がティタン神の神々の怒りに触れるとともに、スクルズ様の身体が天に飛翔して、天空に召されたという出来事はご存知ですか……?」
フラントワーズが極めて真面目な口調で言った。
サキは嘆息した。
そういうことになっているのは知っている。
もっとも、晒されたのはサキが準備して、すり替えさせた眷属を使った替え玉の遺体だ。
変身のできる妖魔の抜け体であり、スクルズの本物ではなく、人間族の身体ですらない。
晒し刑そのものは、ルードルフが勝手にやったことだが、それにより王都の民衆の怒りの暴動が起き、駆けつけたベルズが神の奇跡に見立てて、替え玉の抜け体を処分をしたらしい。
サキはそれについては後で耳にしたのだが、これにより、スクルズが神の奇跡により、天に召されたという噂になっていることも、なんとなくだが聞いていた。
「ああ、知っている」
とりあえず、それだけを言った。
「そうですか……。わたしたち公爵家の多くは、その日はすでに囚われていたので、その奇跡には目の当たりにはしていないのですが、ほかの女たちのかなりの多くが、その昇天の奇跡を知っていますし、実際に見た者も多くいます……」
フラントワーズがさらに語った。
それにしてもだ……。
よく考えれば、軍を連れて二公爵家に乗り込み、この公爵夫人たちを始めとする女たちを連行したのはサキだ。
公爵たちを処刑したのは、捕縛した公爵たちをルードルフの息のかかった軍に引き渡した後であり、処刑したのもサキではないが、サキが手をかけたのも同じだ。
そもそも、こいつらを素っ裸にして縛り、ことこごとく馬車に乗せて連行する指揮を執ったのがサキなのだ。
しかし、こいつらの中では、それはルードルフに命令をされ、泣く泣くサキがやったということにでもなっているのだろうか……?
なんで、こんなにサキに親しそうに話しかけるのだろう?
すると、フラントワーズたちがさらに神妙な表情になる。
「……そして、もうひとつの奇跡がこの後宮で起こったのです……。これはわたしも目の当たりにしました。目撃した者は五十人はいます。だから、幻でも勘違いでもありません……。奇跡です……。ここに、死んだはずのスクルズ様が復活して、お現われになったのです……。すでに天界の一員の証として、美しい真っ白な髪に変わっておられましたが、あれは紛れもなく死んだスクルズ様でした……。嘘ではありません……」
フラントワーズが必死の口調で訴えた。同行のほかの女たちも、フラントワーズの言葉を裏付けるように、懸命に首を縦に振っている。
おそらく、サキが信じないと思っているのだろう。
でも、サキはフラントワーズたちの言うことが真実であることを知っているし、実際には奇跡でもなんでもないことを承知している。
あのスクルズの偽の死を演出した後、スクルズがここにサキに会うためにやって来た。
国境沿いにあるモーリア男爵領とやらに向かうにあたって、ジャスランというサキの眷属と一緒に出発するためだ。
最初はひとりで向かいたさそうなスクルズだったが、ベルズやミランダのこともあり、サキは四人組を結成した仲とはいえ、無条件に信頼する気にはなれなくなっていた。
だから、サキの眷属とととに同行しないのであれば、スクルズの出立を徹底的に邪魔をすると言ったのだ。
すると、スクルズはあっさりと主張を翻し、ジャスランを同行させることに同意した。
そして、準備が整うのを待ち、ジャスランと王都を去った。
そのとき、スクルズは、なにもサキには言ってなかったが、サキを探すあいだに、ここに連れ込まれたばかりの女たちに出逢ったのかもしれない。
とにかく、あの期間、かなり、スクルズが上機嫌だったのを記憶している。
これから、ロウに会えるということで、とにかくスクルズは嬉しそうだった。
あんな心からの幸せそうなスクルズも、サキは初めて接する気がした。
また、その時期は、最初に女たちの心を折るため、拷問めいた寸止め調教をしたのだが、この女たちが死んだはずのスクルズを見たというなら、それは、寸止め拷問を続けていた頃だと思う。
「だけど、スクルズ……様が? 本人がそう名乗ったのかい?」
サキは言った。
フラントワーズが首を横に振った
「いいえ、それはご否定なさっていました。自分は何者でもないと……。でも、スクルズ様でした。死んだはずのスクルズ様が復活なされたのです。しかも、スクルズ様は、これから尊い方をお迎えに行くとも言われました。ここで待っていれば、そのお方とともに、わたしたちをお救いなさると……」
フラントワーズの言葉に、サキは再び嘆息した。
あいつ、なにを喋ってんだ。
「……ほかに、そのう……救世主様はどんなことを?」
とりあえず、有頂天になっていたあいつがなにを語ったのか知りたい。
「ここでのつらい調教にも意味があるとか……。尊い方はお喜びになると……。それだけでなく、スクルズ様自身も同じことをされたとか……。これから自分もそれを受けられるはずだとか……。とても楽しみだとか……。とにかく、とてお幸せそうでした。まさに天使の微笑みでした」
フラントワーズが思い出すような表情で言った。
あいつ馬鹿じゃないのか……。
まあ、かなり、頭が跳んでいる状態だったのは記憶しているので、ここでフラントワーズたちに掴まってしまい、頭の中に沸く妄想をそのまま口にしたに違いない。
しかし、それがこいつらのなにかの救いの言葉になったのか?
「救世主様、スクルズ様はわたしたちが幸せになるには、やがてもう一度やってくる救世主様と
「天道様?」
サキは面食らった。
「クロノス様のことです。とにかく、ここでの調教は試練ではなく、修行でもあるとか……。ここではないが、スクルズ様も別の場所で一緒に修行をするのだとか……。だから励むようにと……」
「調教に励めだと?」
「はい。言葉の通りではありませんが、そういう趣旨のお言葉だったと思います。そして、その言葉が終わるとともに、とても楽な気持ちになりました。救世主様のお言葉は、そこにいた全員の心にすとんとおりました……。あっ、サキ様のことも救世主様が……。サキ様は本当は優しい方だとか……。つらく当たっても、それはわたしたちを尊い方に愛してもらえるようにすることなので、サキ様から与えられることに励めとも……」
ああ、それが光魔道による操心術なのかと思った。
信じられないような馬鹿話だが、スクルズはあまりにも嬉しい気持ちにあったので、自分がロウに調教を受けることを想像しながら、与太話をここでしたに違いない。
さらに、意図したのか、それとも勝手に魔道が発散したのかはわからないが、それを信じてしまう浄化系の光魔道を放ったのだと思う。
それで、まるでこいつらが信者のようになってしまったということだと思う。
しかし、どうでもいいが、あいつは、サキがやる調教を尊い方に愛されるための修行とか語ったのか……。
スクルズらしい物言いだが、そんなことを信じているのはお前だけだと、頭を叩きたくなる。
自分の妄想を人に語るなと……。
面倒な信仰を操心の魔道でかけるなとも……。
「……だから、それを信じて、ここで待ちたいのかい?」
サキは言った。
フラントワーズたちは裸身の前でぐっと手を握った。
「それがスクルズ様……救世主様のお言葉ですから……。そして、それはだんだんと、ここにいる女たちの間に拡がってもいます。スクルズ様の奇跡に触れた者がその教えを説明し、また、それを聞いた者が、別の者に語ったりと……」
「教えだと?」
頭に蝶が沸いてたスクルズの言葉が、ここに集められて責め苦を与えられている女たちの救いの言葉になり、それが信仰のように広がりつつある恐ろしさを目の当たりにしている気持ちになったが、「教え」とはなんだろう?
サキの調教を進んで受けると言ったことか?
ロウがやって来て、こいつらを救うと説明したことか?
「教えとは欲望に素直になることです……。救世主様も、それで心が救われたと言われておりました。それで、これを……」
フラソワがスクルズの小さな女神像の前にある布に手をかけた。
拡げる。
サキは目を丸くした。
今度こそ、あいつは本当に馬鹿だと思った。
いまのいままで、一応は人間族でも最高権威のひとりの神官長になったくらいだから、修行を積んだ立派な女傑のひとりには違いないのだと思っていたのだ。
しかし、それが全くの勘違いだったことを知った。
あれは、ただロウに愛してもらいたくて仕方がないだけの「雌」だと──。
布に包まれていたのは、真っ黒い色をした男根の張形だった。
あれは、なにを考えて、これを置いていったのか……。
しかし、これは強力な魔道がかかっている……。
魔道具になっているのか……?
サキは何気なく手を伸ばした。
よく見ると、たくさんの手が触れたような痕が無数にあるような……。
それにしても、この男根はロウの一物の勃起状態そのものだ。
スクルズが想像して作ったのだろうか……。
あいつ、何気に好色だな。
「あっ、お気をつけて──」
フラントワーズが慌てたように声をかけた。
そのときには、サキの手はその黒い張形に手を触れていた。
凄まじい衝撃がサキの身体に襲いかかる。
「くわっ、わあああっ、はああああっ」
次の瞬間、サキは絶叫をして、その場に崩れ落ちた。
あり得ないほどの絶頂感が瞬時に襲いかかり、あっという間にサキは達してしまったのだ。
あまりもの強い快感とそれが瞬時に襲ったことで、サキは耐えられずにひっくり返った。
それだけでなく、股間の力が抜けて、じょろじょろと失禁も……。
「うわっ、わっ、わっ」
絶頂はともかく、失禁など……。
サキは顔を真っ赤にして手を股間を覆うが、スカートと下着の下の放尿はとまらない。
尿がサキの服を汚し、水たまりを床に作っていく。
「あら、サキ様も、救世主様の信仰がおありなのですか? これは救世主様の教えに素直であればあるほど、快感が大きいのです。救世主様は、わたしたちが貞操帯で苦しいとき、どうしても我慢できなければ、これをこっそりと触れれば快感がやってくると言われ、置いていかれて……。わたしたちも恥ずかしいですが、これで苦しみを乗り越えられたのは事実ですし……。それに欲望に素直になること……。この奇跡の品はそれをわたしたちに教えてくれるのです」
なにが奇跡の品だ……。
サキは心の中で悪態をついた。
とりあえず、尿が終わったが、ちょっとすぐには立ちあがる気持ちになれない。
いずれにしても、これはただの淫具だ。
しかも、とてつもない魔道が込められている。
まるで、ロウの作る淫具だ。
あいつこそ、ロウの信者だろう。
ロウのすることを絶対的な妄信で受け入れる。
だが、どうして、こんなものを残したのか……?
貞操帯で快感を封じられて抑圧される女たちに役に立つものだと言えば、そのとおりであり、ほかのなによりも、ここの女たちに必要なものだろうが……。
自分の幸せのお裾分けのつもりか……?
だけど、なんでこんなにも露骨な……。
「わたしたちは、救世主様のお言葉を広め、それを受け入れた者にのみ、これに定期的に交代で触れることを許しています。おかげでだんだんと、教えも拡がって来て……」
それは拡まるだろう。
サキは黄色チョークの女たちに媚薬入りの食事を与え、微弱の刺激でいくにいけないもどかしい発情状態のまま放置させて、ずっと苦しめている。
その焦らしの苦しみが、これに触ることで瞬時の快感に変わってしまうのだ。
これが手に入る代償は、スクルズが口走った、ここでの調教こそ心の救いであるというような趣旨のたわ言を受け入れることだが、狂うような淫情状態を脱するためなら、ここの女たちはなんでも受け入れるとも思う。
しかも、さらに、スクルズを直接見た者は、心がそれを信じるように浄化魔道までかかっている。
そして、こういうものは、怖ろしいほどの伝染力を持つものだ。
すでに、かなりの勢いで、少なくとも後宮側では拡がっているらしい。
「もしも、奴隷宮に行っている者に接することができれば、そこにいる者にも、これを拡めたいのです。娘たちにも……。サキ様、どうかわたしたちも、娘たちと一緒に奴隷宮に行けないでしょうか?」
フラントワーズは言った。
その表情はある意味、鬼気迫っているというか、妄信という言葉が相応しい迫力がある。
スクルズの戯言と淫具が、ここの特殊な状況と、追い詰められている境遇の中で信じがたい反応を起こし、それが女たちに常識では考えられない信心を作り上げる……。
これが人間族のいう「信仰」というものか……。
なんとなく思った。
まあ、でもいいか……。
向こうにもこれが拡がるどうかはわからないが、サキの考えていることに対して、都合がいいのは確かかだ。
「手配するよ。まあ、やってみな」
サキは言った
それにしても、失禁をして濡れた下着が気持ち悪い。
サキは醜態を晒した恥ずかしさで、さらに顔が赤らむのがわかった。